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2011年5月31日 (火)

問題多い休耕田や耕作放棄地での太陽光発電

ソフトバンクの孫正義氏が、休耕田や耕作放棄地での太陽光発電を進めると述べたとして話題になっているが、やはり問題が多いと思います。

47ニュース 5月26日 メガソーラーで新会社設立 孫社長、年内にも着工

1) 農地は食料生産

農地は、人々が生きていく食料を生産する土地であり、農地が余っているなら他用途への転換もあり得る。しかし、農地が足りているか、不足してるかの、検証もなしに他用途に安易に転換することは、問題が多い。日本は、食糧輸入国であることを考えると、農地が余っているとはとても思えない。

休耕田や耕作放棄地が存在する理由は、農地が余っているからではなく、農業生産をしても十分な収入を得られず、一方、生産に携わる人が過疎化や高齢化の進行で減少している。そして、本来であれば、大規模化や機械化により生産性の向上で克服されるべき問題が、日本農業の構造的な問題により進まない。しかも、構造的問題は、複雑な事項が絡みあっていて、簡単に解決するとは言い難い。

結局は、日本農業の政策の方に問題があるにも拘わらず、メガソーラーで農地転用をすると、失敗をする可能性があると思う。

メガソーラーを休耕田や耕作放棄地で実施するのであるなら、同時に休耕田や耕作放棄地については、株式会社による農業を認めることがあって良いような気がする。生育に手間を要しない飼料用作物を開発することもあってよいと思う。

農業に、灌漑と排水は欠かせず、先人達が農業に適する場所として農地をつくり、引き継がれてきた土地が農地である。単なる思いつきで、農地を転用すると将来に禍根を残す可能性がある。

2) 太陽エネルギー

地球が太陽から受ける太陽エネルギーは偉大である。化石燃料も、その昔に光合成の結果として生物に蓄えられた太陽エネルギーが、燃焼時に熱エネルギーに変換させているとも言える。蓄えられた時が、CO2を取り込むエネルギー吸収反応で、燃焼時がCO2を発生するエネルギー放出反応。そもそも、地球温暖化が言われているのは、地表面に届く太陽エネルギーより、地表面からの放出エネルギーが、温室効果ガスにより小さくなる結果である。

では、その太陽エネルギーは、どれほどかと言うことで、次の図がIPCCC(気候変動に関する政府間パネル)2007年の第4次評価報告書第1分冊このページの図です。(下の図はクリックで拡大)

Ipccfaq1fig1 

地球に届く太陽エネルギーは、平方メートル当たり1,370ワット(W)です。地球の表面積は約5億1千万km2であり、球体なので断面積で考えると、175兆kWです。陸地のみを考えると、約50兆kWです。日本の国土面積を38万km2とすると5,200億kWですが、真上からの太陽光ではないので、4,200億kW程度と思います。

しかし、4,200億kWが全て地表に届くのではなく、上のIPCCCの図にあるように約23%は、雲に反射され地表には届かない。地表面に届いた太陽エネルギーも地表を暖めるのに役に立っているのであり、実は温暖化ガスも悪者というよりむしろ善玉の役割を果たしている部分を評価する必要があり、現在の気温が維持できているからこそ、農業が成立し、地球に多くの人類が生存できていると言える。

そもそも、微妙なバランスの上に、地球上の生命が存在し、そして人類が生存しているのである。但し、日本に降り注ぐ太陽エネルギーが最大2,800億kW、平均700億kWであるとしても、相当大きい。日本の電力消費は年間約3,600PJ(ペタ・ジュール)、エネルギー総消費15,000PJ程度である(エネルギー転換消費を除く)ので、太陽エネルギーを平均700億kWとして24時間利用可能とすると2,000,000PJであり、この1%を利用できれば、太陽エネルギーで全てをまかなえることとなる。

3) 太陽光発電による電気

現状の太陽光発電パネルは、ここにシャープのモジュールの仕様があり、最高性能のモジュールで160W、エネルギー変換効率14.3%です。これを1ヘクタールの土地に設置すると、1,400kWとなるが、実際にはメンテナンス・スペースその他も必要であり、敷地面積に対しては500kW-650kWが最大程度のようです。例えば、このプロジェクトでは10haに対して1.8MWなので、180kWであり、このプロジェクトでは14haに対して5,020kWであり、360kWとなる。百万kW級の太陽光発電となると、1haに500kWとして2,000haの敷地が必要であり、山手線内の3分の1となる。

年間発電量は、北杜市のプロジェクトでここに書いてあるように2MWで約2,000,000kWh/年であり、年間約1000時間相当です。仮に百万kWの原子力発電を比較対象として、目標としている80%稼働をしたとすると7,000GWh/年なので、これを太陽光で発電するには、7百万kWの太陽光発電設備が必要であり、山手線内側の倍以上の敷地が必要となる。

年間約1000時間稼働となるのは、夜は発電せず、雨や曇りは発電量が減少し、朝・夕も発電量が少ないことからです。一方、電力消費は、これとは必ずしも一致せず、蓄電池を含めエネルギー貯蔵設備が必要です。

設備費用も、やはり他の発電設備より高額で、メガソーラーであっても5MWで、10億円程度となる。蓄電の費用を除外すれば、15円-20円/kWhが可能かも知れないが、土地代を考えると、必要敷地面積が大きすぎて、経済性は悪い。

一方、砂漠のような土地で、日照条件も良く、元々未利用地であり、環境影響も極めて小さいなら、現状でも採算が成り立つ可能性あり。多分、それは、日本ではないはず。日本が砂漠に太陽光を設置し、その見返りとして、その結果、その土地で節約できた石油の中から幾らかを受けとり、それを日本で使用するといった形が、地球全体から見れば、効果が高くなるかも知れない。

4) 投資

まだまだ開発途上の技術である。それでも、50%のような高効率は無理であるような気がする。仮に100%効率を実現したとしても、百万kW原発相当には1000ha以上必要であり、一方、太陽光設備の設置場所の気温低下がありうると思う。まだ、試験的に設置し、データ入手をして今後の参考とする段階と思う。

一軒家、マンション、事務所、工場等の屋根に太陽光を設置する場合は、敷地問題が基本的にない。屋上緑化や、明かり取り天窓の関係、あるいは太陽光温水熱利用等との競合はあるが、最適利用で解決可能と思う。但し、設置費用やメンテナンス費用においては、一般の屋根はメガソーラーより高くつくはず。

首相は、1000万戸の屋根に太陽光パネルを設置すると述べたと報道されているが、その結果として電気料金が高くなり、低所得者の生活を圧迫するとなるとどうするか。余り、考えなしで、話をしたのだろうと思う。20兆円の投資だろうか?

本当は、投資は、研究・開発にすべきと考える。多分、太陽光発電は、効率アップよりも機器コスト・ダウンの革新技術が生まれ、世界中に普及していくのだろうと思う。液晶テレビが、あっという間に安くなったが、それ以上のコスト・ダウン競争があり得るような気がする。そう考えると今無理に1000万戸の屋根に太陽光パネルを設置するのは、バカだと思う。むしろ技術開発に投資すべきであり、技術開発が盛んになるように、政府は支援すべきである。例えば、世界最速スーパー・コンピューターへの支援である。

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2011年5月27日 (金)

放射線基準はダブル・スタンダード?

よく分からないことばかりですが、特に、次のことについては、そうでした。

朝日 5月26日 女性職員被曝、東電を厳重注意 保安院、7項目改善指示

この記事の中に、「一般人の年間被曝限度の1ミリシーベルトを超えていた。」とある。これを、別の次のニュースと読み比べると、頭が混乱するのです。

朝日 5月23日 20ミリシーベルト、「撤回を」=子ども被ばく量、文科省前で訴え

小中学校などの屋外活動を制限する放射線量上限を年間20ミリシーベルトとした国の暫定方針は高過ぎるとして、・・・暫定値の撤回を求めた。」ですから、小中学生は、福島第一原子力発電所で働く一般の人の20倍の放射線を受けて良いことになる。

原子力安全・保安院の発表は、これです。この発表に添付されている書類もあわせ読んで整理すると次のようになる。

1) 福島第一原子力発電所では、女性19名が働いている。
2) 女性19名のうち、14名が放射線業務従事者であり、5名が非従事者であった。
3) 非従事者のうち2名が、公衆の被ばく限度(1mSV/年)を超えていた。
4) 放射線業務従事者14名中、2名は、本年1月1日から3月31日(第4四半期)の実効線量が18mSVと7.5mSVであり、線量限度(5mSV/3月)を超えている。

放射線業務従事者の線量限度5mSV/3月は、年間にすると小中学生の基準20mSV/年と同一になってしまう。

働く人を放射線から守る必要があり、事業主に対して厳重に注意をし、法律違反にならないよう指導することは重要です。しかし、その基準を小中学生に対する基準と比較すると、矛盾を感じてしまいます。小中学生は、文部科学省で、経済産業省ではありませんなんて、馬鹿なことを言わずに、小中学生の親も納得できる説明をすることも重要と思います。参考まで、原子力発電所で、働く人の放射線量の基準となる電離放射線障害防止規則第4条を掲げておきます。なお、掲載は省略しますが、第7条に緊急作業時における被ばく限度が書かれており、100mSV/年となっています。そして、これが省令で改正され、福島第一原子力発電所に関しては250mSV/ 年となっています。(参考

(放射線業務従事者の被ばく限度)
第四条
事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。

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2011年5月25日 (水)

これから10年の株式投資

大げさすぎるタイトルですが、次の日経記事を読んで考えました。

日経 5月23日 株、「長期投資の時代」は終わったか

現内閣は、電力消費抑制政策、年金・医療保険改革放棄、政府財政悪化放置と、全て悪い方向に走っているように思え、計画経済・統制経済で破綻に進んでいるようにさえ思ってしまいます。でも、何はともあれ、次が1991年1月以降の日経平均株価20年間のチャートです。

Nikkei22520115_2

1990年代の失われた10年は、株価右肩下がりでした。続く2000年代も2007年6月頃をピークに2008年11月にボトムとなり、低迷の10年であったと思います。これからの10年は、下手をすると破綻の10年になってしまう可能性さえあると思います。

電力価格の上昇は確実であり、それ以上に心配なのは、エネルギー政策さえ樹立できないような気がします。日本に残る産業は、何であるのか?最低限、農業と漁業は、存在せねばならないと思うが、本当に心配になる。

日経記事の「表1 東証1部市場の株式投資収益率」は、興味ある表です。20年間の毎年の投資について、同様の表を作成してみました。但し、私の表では、配当のリターンを考慮していません。

Nikkei22520115a

バブルを期待してはならない。やはり堅実に経営をすること。バブルがなければ、投資も堅実経営に向かうのだと思います。ちなみに、上の表の投資収益率は、配当が入っていないので、配当率が株価に対して1%であれば、マイナス1%がプラス/マイナス・ゼロのポジションです。株式は、債券よりリスクが高いのであり、債券利息より高くないと投資できず。結果、平均株価への長期投資は困難な感じです。やはり、ある程度銘柄を厳選することでしょうか。

株式市場が健全であることは、市場金融には極めて重要です。ご都合主義ではない政策も重要と考えます。その為には、民主主義を推しすすめる必要があると思います。

やはり、税制も証券税制を廃止し、一般税制に組み入れ、譲渡損失が生じれば、その分所得を減額し、税金を安くするようにすべきです。利子所得も分離課税を止めて総合課税とし、低所得者に有利な累進税率が適用される総合課税にすべきです。そうすれば、株式も5年以上保有すれば、税率は半分になる。金融関係の税制を、正しい課税にすれば、それだけでも金融市場の活性化になると思います。

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海水注入中断にはガバナンス欠如あり(続き)

次のニュースは、ガバナンス欠如の証明に思えます。

読売 5月25日 海水注入3時間半前、東電が保安院にFAX連絡

午後3時20分ごろ、福島第一原子力発電所は「準備が整い次第、海水注入を始める」と、原子力安全・保安院にFaxしたとのことです。準備が整い次第なので、できる限り速やかに、ちゅうちょせず開始するとの日本語です。

次の発言は、ガバナンス欠如を通り越して、ガバナンスなしでも正常との強弁と思います。(それすら通り越して、屁理屈になっている気すらします。)

読売 5月25日 事前FAXと政府説明は矛盾しない…枝野長官

私は、混乱を避けるために、発電所と政府との連絡窓口は、原子力安全・保安院に一元化していたのだろうと思います。それに基づき発電所はFaxした。しかし、政府首脳には、ガバナンスがなく、そんなことは気にもせずに、無茶苦茶であった。

自分の内部のガバナンスが欠如し、問題があったことを、「矛盾しない」と述べることは、信頼を失うことでしかない。反省を述べることは必要ないかも知れないが、少なくとも欠陥を但し、ガバナンスを樹立せねばならない。福島原子力災害は、政府の人災部分が、どれだけか、政策部分と事故発生後の収拾作業部分と、2つの部分で、今後よく検証・検討する必要があると思います。

今回の、この海水注入検討会議には、原子力安全・保安院の人も出席していたはず。出席していなければ、それも大問題だし、会議開始の冒頭部分で、原子力安全・保安院の人はFaxのことを述べねばならない。述べなかったとしたら、述べることを許さないような雰囲気の会議であったのだろうか?もし、そうだとすると、それも大問題である。会議一つできない、欠陥人間の集まりと思います。もし、これを会社にあてはめたら、重要なことを述べない出席者を叱り倒すし、発言させないような議長は、即刻退任させる。そんな出来事だと思います。

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2011年5月24日 (火)

海水注入中断にはガバナンス欠如あり

福島第一原子力発電所1号機に、3月12日午後7時4分から、海水注入を始めたが、7時25に中断し、8時20分再開ですが、やはり、政府首脳がガバナンスを樹立していなかったことの結果と思います。参考となる日経記事は次です。

日経 5月24日 「可能性ゼロではない」口癖が生んだ誤解 注水中断問題  原発事故対応、官邸と原子力安全委員長の溝

1) 福島第一原子力発電所と原子力災害対策本部の間の通信・連絡手段の確立

官房長官は、この3月11日記者発表で、原子力緊急事態宣言を出したことを述べており、原子力災害対策本部が設置されたのであるから、対策本部と現場である発電所とは、必要な際は直ちに通信・連絡が可能なように体制を確立して然るべきである。対策本部が東京電力本社経由でないとコミュニケーションが取れないということは、お粗末と思う。

私は、発電所にも、首相官邸にも衛星電話があったと思う。官邸と発電所側の双方に、連絡責任者が定められていたのか、Faxも衛星電話で使えたはず。発電所側で、放射線量の高い外部に行くことができないため、衛星電波を受ける必要がある電話が使えなかった可能性もあるが、少なくとも発電所と東京電力本社とは、何らかの方法による通信手段が存在したはず。それを、官邸と発電所の直接連絡に使用することも可能であったと思う。

現場との間に通信・連絡が不十分であることは、旧日本軍の補給なし前線と同じと思う。

2) 「ゼロではない」発言の会議

受け取りようによっては、幅が広いのである。この発言の前後を知らないと、そもそも誤解の多い発言であったのか、誤解する方が悪いのかは、その場にいない者にとっては、議事録もビデオもなしで、判断が困難である。

しかし、そもそも、この会議の目的等が明確ではない。例えば、この5月22日の別紙 3/12 の東京電力福島第一原発1 号機への海水注入に関する事実関係(訂正版)を読んでも、よく分からない。総理は、国会答弁で、同席した東京電力の人が海水注水開始には準備が1時間以上要するとのことで・・と述べており、自由討議であったと思える。自由討議で良いのであるが、重要事項については、大前提として確認をして実施する等をしておかないと会議が混乱する恐れがある。

単純に技術事項の確認であれば、総理が参加すると、支障が生じる場合さえある。会議は、その目的や前提を明確にしておかないと、失敗する恐れさえある。

この5月23日官房長官記者発表を読んでも、会議があったと書いていないし、官房長官3月12日発表では「既に20時20分、着手いたしております」と淡々と述べられているのみである。

不十分な基礎情報で会議は実施されては、ならない。

なお、原子力安全委員会のWebを見ても、私が探した限りでは、本件について、何も書かれていない。原子力安全委員会は、経済産業省を含む全ての省とは独立し、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法24条により「内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができる。」 と定められている。

役に立たない原子力安全委員会(原子力委員会も同様)というのは、政府自身のガバナンスが全くないことと同じとおもう。

3) 海水注入に関する東京電力についての誤報

この47ニュース 3月20日 海水注入遅れたと米紙指摘 東京電力、廃炉を懸念のような報道が当時あった。今は、東京電力が先行して海水注入をしており、それを官邸の会議情報により中断したとの現在の認識である。

米紙としてThe Wall Street Journalをあげているが、例えば、このWSJ MARCH 12, 2011 Japan Fills Damaged Reactor With Seawater にしても、東京電力が廃炉を懸念したためとの表現は見あたらないと思うのである。

別の記事なのであろうが、何故このようなことになるかと言えば、必要な情報開示を実施していないからである。情報開示がなされないのは、ガバナンスがないから、広報体制を築けないのだと思う。例えば、経済産業省原子力安全・保安院にのみ広報活動をさせているが、原子力災害対策本部は、何をしているのだろうか?ここに、「原子力安全委員会において3月11日以降に行った助言の活動について」というのがあるが、原子炉の対策についての活動は、見あたらない。

多くのことについて、素人が、デタラメに動いている気がする。大臣を含め、皆素人である。それを認識して、外部を含め信頼できる人達の教えを受けて、その上で、正しい判断で動けばよいはず。

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2011年5月21日 (土)

東京電力1.2兆円損失の決算発表

東京電力が、2011年3月期の決算発表として連結損失1兆2473億円(単独1兆2585億円)を発表した。

1) 巨額赤字

金融機関を除いて日本企業の過去最大の赤字と報道されている。(例えば、この日経)しかし、私が調べた限りでは、1兆円を超える赤字計上の金融機関の決算が分からない。いずれにせよ、1兆円とは、売上高でもこれを超える企業は、超大企業である。参考まで、現在のメガバンクになる前に、各銀行は、不良債権処理で、平成9年度または10年度に巨額の赤字を計上した。その時でさえ、次の表の通りであり、赤字額は1兆円に届かなかった。(表の最下段の東京三菱銀行の数字を除き、全て連結純損失です。)

Megabank20115

2) 損失1兆2473億円の内容

福島第一原子力発電所事故による賠償金支払いに関する損失は、一切含まれていない。主要因は、災害特別損失1兆205億円と繰延税金資産取崩しにより法人税等調整額が4600億円になったことである。災害特別損失1兆205億円の内訳は次の通りである。

Tepco1f20113b

3) キャッシュフロー(賠償金支払い能力)

現金預金は、単独貸借対照表で1年前の771億円から2兆1344億円へと、2兆億円強増加している。増加した要因には、2010年9月の増資による4468億円のうちで投融資への未充当額が4000億円強ある(このプレスリリース)。また、長期借入金が、連結ベースで返済が3573億円に対して、借入実行が2兆766億円あり、借入金の増加がある。(参考このプレスリリース

一方、災害特別損失1兆205億円のなかで、現金支出が伴っていない損失がほとんどである。災害損失引当金が1年前の928億円から8317億円へと約7400億円増加しているが、今後支出が伴うはず。火力発電所の復旧工事や夏のピーク電源対策としてのガスタービン発電機の建設工事の支出も今後ある。従い、原発事故の対策・対応や地震復旧、夏場電源への設備投資で、相当な金額のキャッシュフローが、これから必要であると思う。

決算説明資料の26ページに社債償還予定額の表があり、2011年度5489億円、2012年度7479億円、2013年度5855億円・・・・・と社債償還が毎年ある。

福島第一原子力発電所事故による賠償金支払いは、幾らまで可能か、官房長官が言うほど、簡単とは思えない。実は、東京電力も今回の決算発表で、「現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。」と述べている。(例えば、これ

首相他は、東京電力に全てを押しつけようとしている。しかし、それで市場経済の下で、成立可能か、大きな疑問があると思う。政府が、政府としての役割を果たさないと、結果的には高いコストとなり、高い電気料金と税金が国民の負担になることを忘れてはならない。

現内閣は、経済音痴の塊と思えて仕方ないのである。選挙の票より、国民の幸せが重要であることを忘れてはならない。13日に発表された政府支援の枠組みは、評判が悪いと私は思っているが、この5月20日ダイヤモンドOnlineの記事 独自入手の極秘資料が暴く国民欺く東電賠償スキーム に編集部が独自に入手した内部資料としての財務状況のシミュレーションが掲載されている。それを見ると驚くなかれ、東京電力の賠償債務として8兆円が負債計上され、同時に機構宛の債権8兆円が計上されている。「機構は、原子力損害賠償のために資金が必要な原子力事業者に対し援助(資金の交付、資本充実等)を行う。」とのことで、東京電力から見れば債権が立てられると考えているのであろうが、「機構から援助を受けた場合、毎年の事業収益等を踏まえて設定される特別な負担金の支払を行う。」という条件であり、実質上返済義務があると考えられる。政府は負担しない案であるから、全額の返済義務を負っていないと政府負担が生じるはずである。

なお、8兆円という数字があったので、東京電力の需要家が8兆円を10年間負担する場合を計算するとkWhあたり2.76円高くなる。20年間なら、その1/2の1.38円となる。高くなることだけは、確実である。恐ろしいのは、不合理な状態を作り出して、不必要に高くなってしまうことである。合理的な運営ルールが重要であり、自由化の推進であり、市場競争の拡大である。そして、原子力は、別体制にして、国民の管理下に置くことであると考える。

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2011年5月20日 (金)

日本電力市場自由化の推進

5月18日の首相記者会見(会見記録はここ)や官房長官による原子力発電のあり方についての発言(日経報道はここ)等がある。日本の電力供給体制について、自由化が現状でも形の上では整備されており、これを改良しつつ推進すべきであると考える。原子力については、現状の体制では、自由化を阻害することとなり、今の旧地域電力会社である一般電気事業者9社と卸売電気事業者(電源開発を含め2社)の事業にしておくべきではなく、新日本原子力発電会社に再編成すべきと考えている。

1) 現状の自由化(自由化されている電力とされていない電力)

電気事業法(以下法と略す。)も、結構読みにくい法律ですが、特定電気事業については、法3条1項において、許可を要しないと定められています。逆の書き方になっているので、頭が変になりそうであるが。

3条1項 電気事業(特定規模電気事業を除く。以下この節(第五条第七号及び第十七条第一項を除く。)において同じ。)を営もうとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

特定規模電気事業とは、法2条1項7号で、特定規模需要に応ずる電気の供給と定められている。特定規模需要とは、電気事業法施行規則2条の2で、沖縄電力の供給区域以外の地域では、特別高圧電線路又は高圧電線路から受電する者であって、契約電力が原則として50kW以上の者の需要となっている。

高圧電線路とは6000Vなので、100V-200Vの受電は自由化されていないが、工場やビルで変圧器を保有し、高圧受電の需要家は自由化されているのです。法2条1項7号を書き出すと次の通りであり、赤字部分を読むとおもしろいことが分かる。例えば、関西電力が東京電力の供給地域で電気供給をすることも念頭にあるのです。

特定規模電気事業 電気の使用者の一定規模の需要であつて経済産業省令で定める要件に該当するもの(以下「特定規模需要」という。)に応ずる電気の供給(第十七条第一項第一号に規定する供給に該当するもの及び同項の許可を受けて行うものを除く。)を行う事業であつて、一般電気事業者がその供給区域以外の地域における特定規模需要に応じ他の一般電気事業者が維持し、及び運用する電線路を介して行うもの並びに一般電気事業者以外の者が行うものをいう

従い、50kW以上の電力は、供給区域の制限もないし、電気供給をするのに、許可も必要がない。電気料金の規制もない。但し、届出は必要(法24条)。電気事業法において、自由競争となっていると言って良いと思います。なお、発電所を含め、機器設備等(電気工作物)は、特定規模供給とは無関係に、技術基準への適合が必要である(法39条)。

2) 送配電線

自由競争と言っても、電気はトラックで運べず、電線が必要である。送配電線は、例えば北海道本州連携線のように電源開発が保有している送電線を除き、一般電気事業者10社が保有している。

そこで、電気事業法は、一般電気事業者に、送配電線網の他社利用に応じることを義務づけている。法24条の3第5項には、「経済産業大臣は、一般電気事業者が正当な理由なく託送供給を拒んだときは、その一般電気事業者に対し、託送供給を行うべきことを命ずることができる。」とある。

電力託送とは、分かりつらい面があるが、A点の発電所からB点の工場に対して、電力を送電しようとすると、A点の発電機で電力を送電線に流す、そして、B点の工場では流されてきた電力を消費することとなる。但し、実際にB点の工場が消費するのは、A点で発電された電力か電力会社の電力か区別できない。また、B点の電気消費が常にA点で送電線に送っている電力と等しいとは限らず、負荷が多少は変化するはず。しかし、電力会社との託送契約で、様々なことを取り決めることは可能で、過不足や許容範囲を超えた変動について精算をすれば、A点からB点まで、電力会社の送配電網を使用して電力を送ったことと同一の効果は得られる。

流通が自由であり、誰もが利用できるのであれば、自由化は達成されたと言ってよいと思う。

3) 50kW以上の自由化電力

自由化されたということは、電力会社の供給義務は、電気事業法の供給義務ではなく、個別の電力供給契約上の義務となったのであり、逆に供給契約において、需給逼迫時の供給量削減の特約を付けることも可能である。電力供給側が、そのようなことを望むなら、消費側は、価格の引き下げや、自家発電を稼働させるための事前通告の様な特約も要求することとなる。このような姿こそ、電力自由化であるはず。

近い将来、スマートメータやスマートグリッドの時代になると思う。日経 5月19日 東芝、次世代送電網でスイス社買収発表 1900億円というニュースもある。自由化をする上で、30分やそれ以下の10分とかの単位でメータを通信を利用して読み、刻々と変化する消費量と送電量を把握すれば、刻々と料金が市場で決定されたり、様々な市場電力取引が可能である。快晴で皆が太陽光で発電したら、その時刻の電気料金が安くなったり、夏の温度の高い日には需要増で電気料金が高くなったりするかも知れない。電気自動車は、料金の安い時を見計らって充電し、もし高くなり、出かける予定がないなら、充電した電気を高く売れるかも知れない。

市場取引による需給や設備投資の合理的な調整が期待できると考える。但し、一方で、電力は生活上の基礎インフラでもあり、ユニバーサル・サービスを確保しておく必要はある。現在、50kW未満が実質的にユニバーサル・サービスとなっているが、自由化を拡大し、下げることが、スマートグリッドとなれば可能である。

現状、50kW未満については、自由化されておらず。例えば、法18条1項や法19条1項がある。

18条1項 一般電気事業者は、正当な理由がなければ、その供給区域における一般の需要(事業開始地点における需要及び特定規模需要を除く。)に応ずる電気の供給を拒んではならない。
19条1項 一般電気事業者は、一般の需要(
特定規模需要を除く。)に応ずる電気の供給に係る料金その他の供給条件について、経済産業省令で定めるところにより、供給約款を定め、経済産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

福島第一原子力発電所の事故による賠償金支払いでの電気料金の上昇が懸念されているが、対応策は自由化の推進による市場競争下での合理的な価格形成の推進と考えます。

4) 新日本原子力発電

原子力発電は、市場競争に組み込むことに問題があると思う。自然エネルギー依存を強めるとしても、簡単に原子力を放棄できないし、仮に放棄した所で、高レベル放射性破棄物、プルトニウム、使用済み核燃料というやっかいな問題が残る。やっかいな問題を一般電気事業者に押しつけてはならないと考える。国策として進めた原子力の負の遺産も国策として解決すべきである。

原子力は明るい未来か、暗黒をもたらす悪魔か、不明な部分があると思う。もしかして、必要以上に怖がるのも負の面であるかも知れないし、一旦事故があると大きすぎる被害という面も、評価が難しい部分と考える。

急に放棄できず、現存する原子力発電所の運転を継続せざるを得ないと思うが、一般電気事業者から切り離して、新日本原子力発電株式会社を設立すべきと考える。50Hz/60HzあるいはBWR/PWRで切り分けて2社にするのが妥当な気がする。

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2011年5月18日 (水)

福島第一原子力発電所の地震、津波直後の対応

東京電力が、5月16日付で、当社福島第一原子力発電所の地震発生時におけるプラントデータに関する報告書の経済産業省原子力安全・保安院への提出についてという長い名前のプレスリリースを行い、その1番目の添付資料であるプラントデータ集というページがあり、種々のデータに関するリンク集となっている。

様々な専門家や研究者が、これを分析し、各自の意見を述べ、将来の役に立てることを望みます。私にも、これを、どう分析し、評価すべきか、分からず、興味があったことについてのみ、少し述べます。

1) 電源車から接続するためのケーブル長は不十分であったのか?

1・2号基運転日誌等からは、全交流電源喪失(SBO)15時37分から41分頃と推定される。その結果電源確保に迫られ、電源車による交流電源の復旧に尽力する。

電源車による応急復旧の状況は、7.各種操作実績取り纏めという資料の5/12ページ表7.1(2)に記載されている。

17時頃、配電部門に電源車の対応を要請。交通渋滞で、電源車が思うように進めず、18時20分頃東北電力の電源車を派遣要請。23時、東北電力電源車到着。12日午前3時には合計11台の電源車が到着済み。12日7時には自衛隊電源車3台も到着。

電源車からの電気はケーブルを敷設してパワーセンター2Cへ接続できたのは、12日15時頃。しかし、1号基爆発が15時36分であり、実質役に立たなかった。

3月12日未明における暗所での、津波による水たまり、障害物散乱、道路マンホール蓋欠落等の劣悪な作業環境と作業中の大津波警報による高台避難により、ケーブル敷設・つなぎ込みに時間を要したとのことである。

しかし、敢えて言いたい。準備は万端であったのか?当初から、パワーセンター2Cへ接続することで進めているから、下見は可能であった。電源車以外に夜間照明車の手配も可能であった。ケーブルは、定検工事用に所内に保管してあった物を使用したが、所外からの入手・手配も検討されたこともある。17時の段階で、下見をし、被害状況を確認し、電源車の駐車位置とケーブル敷設箇所を決定し、必要な資機材を用意することが可能ではなかったのか。

現場を知らない素人の思いつきである。しかし、交流電源があったなら、事故対応は相当違った可能性があると思うし、現場の人は、余りにもよく知っていたはず。私が、思いつくようなことは、当然実施されたはず。なぜ、このようなことになったのか、今後の報告書で突っこんで欲しいと思う。

2) 外部電源の喪失

東京電力の5月16日プレスリリースに東北地方太平洋沖地震発生以降の当社福島第一原子力発電所内外の電気設備の被害状況、外部電源の復旧状況等に係る記録に関する報告書の経済産業省への提出についてというのがあり、この添付資料及び別紙1~10に外部電源関係のことが書かれている。

新福島変電所とは275kVの6回線(大熊線1L~4Lと夜の森線1L、2L)で結ばれており、これに加えて東北電力の66kV送電線がある。この全てが、使えなくなった。しかし、送電線が損傷したのは、夜の森線の27番鉄塔の土砂崩壊による倒壊のみ。東北電力の66kVは、損傷がなかったが、福島第一原子力発電所の方で、ケーブル不具合があった。大熊線は、1Lと2Lでは福島第一の方で、遮断機が地震で損傷。新福島変電所では大熊線2L、3L、4Lの鉄構が傾斜したりした。

この辺りを読んでいると、原子力発電所の送電関係って、こんなに貧弱でよいのかなと感じてしまう。多分、多くのことを考慮して設計されているのであろうが、もしかしたら、原子力発電所には非常用ディーゼルがあり、送電線や変電所は原子力規格で設計されていないのかも知れないと思う。そうだとすると、非常用ディーゼルを信頼しすぎで、原子力の危険性を甘く見すぎであったような気がする。浜岡を始め、他の原発全てについて見直すべきと思う。

ちなみに、別紙6:福島第一原子力発電所所内電源設備の被害状況を見ると、津波で使用不可能となったのは、非常用ディーゼル発電機のみではない。配電盤が全てと言って良いぐらいほとんど使用不可能のピンクに塗られている。浜岡原発も、非常用ディーゼル発電機を屋上に設置するぐらいでは、十分とは言えないと思える。

エネルギー政策を見直すと言っても、原子力を直ちに止めるわけには行かないはず。原子力を使うなら、福島第一原子力発電所の今回の事故から多くのことを学び、生かさねばならない。

3) ベント

ベント開始は、経済産業省のプラント関連パラメータでは、12日の午前10時17分である。どうしてこの時刻になったかの理由について、電源車と外部電源復旧も関係しているかも知れないと思う。ベントをすることにより、外部での作業が中止となるなら、電源復旧が遅れることとなる。外部電源復旧に関する時系列(別紙10)には、「1F1号基ベント並びに爆発により作業待機」の記述がある。

電源を確保し、燃料の冷却をし、ベントを回避する方が、望ましい。水素爆発とベントとの関係をどう評価すべきか分からず、何とも言えないが、複雑な要素が絡み合っている可能性もあると思う。今後の報告書を待ちたいと思う。

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2011年5月17日 (火)

東証社長が反論しましたか

現政権の統制経済・社会主義に不満を積もらせている人が多いと思うのですが、東証斉藤社長が、17日の記者会見で官房長官発言に対する非難を述べたと報道がありました。

日経 5月17日 東証社長、債権放棄要請「論理が立たない」

私なんか、原子力損害の賠償についての政府支援の枠組みについても、市場経済原理に反すると思っており、銀行の貸付債権について、政府が関与することなど、もってのほかと思っています。

4月4日の電力供給は民間企業による市場経済を貫けで書いたが、市場競争により電源開発がなされ、送配電電力流通設備への投資がなされ、供給がなされることを目指すべきです。政府管理による電力供給は、実は、容易です。政府が関与して設備投資を行う場合は放漫経営でも資金借入に支障は生じないこととなる。

政策は、日本の行く末を見つめ、将来の姿を展望して、検討し、立案されるべきです。人気取り政策で、立ち振る舞う人達に政権を委ねることは、間違いと思っています。例えば、弁護士の活動は依頼人のために働くことであり、被告は敵であり、社会性を深く考えなくても良い場合があります。政治家は弁護士ではありません。国民と社会のために働くのです。

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福島第一原子力発電所1号基炉心溶融に思う

福島第一原子力発電所1号基については、早い段階で炉心溶融があったとのニュースがありました。

日経 5月16日 福島第1原発1号機、16時間後に燃料棒の大半溶融

これについて、思うことを書きます。

1) 東京電力発表

東京電力の発表は、ここにあり、その添付資料はここにあります。

炉心溶融については、添付資料の2ページ目に原子炉水位(m)というグラフと炉心最高温度(℃)というグラフがあり、これが分かりやすかった。炉心最高温度は3月11日18:00までは300℃程度に保たれていた。しかし、その直後から温度が急上昇を始め、2時間後の20:00頃に2900℃近くになっている。これを原子炉水位と重ねて見ると、18:00に水位ゼロとなり、燃料頂部まで水位が下がり、20:00の前には燃料下部も水面の上に出てしまった。燃料の周囲は、水ではなく、水蒸気になったはず。

では、炉心溶融についてはというと、東京電力添付資料の3ページ目にあり、19:30頃から燃料の損傷が始まり、19:50には損傷部分の方が多く、翌日12日6:00にはかなりの燃料が溶融していた。そして、12日6:50には、完全に溶融して炉心の定位置にはなかった。

15:30の津波到達後も、少しの間は持ちこたえたが、17:00頃からは、冷却機能を失い、悪い状態に陥っていったようです。

なお、東京電力は、炉心溶融やMelt Downという言葉は使用しておらず、燃料溶融と言っています。炉心溶融と言う場合に、その定義が明確でなく、注意する必要があると思うし、炉心溶融には幅広い意味があると思う。しかし、燃料が操荷されている場所は、まさしく炉心であり、燃料が溶融していることを炉心溶融と呼んでも不都合はないと考え、炉心溶融と呼ぶこととする。

2) 炉心溶融の熱源

東京電力添付資料には、スクラムという言葉が出てくる。スクラムとは原子炉の緊急停止です(参考)。原子炉とは、ウラン235の核分裂によるエネルギーを熱として回収する設備です。スクラムとは、核分裂を停止させることです。スクラムの結果、福島第一原子力発電所1号基は、核分裂が止まった。炉心溶融の熱の発生源は、核分裂そのものではなく、核分裂の結果としての生成物の熱崩壊です(参考)。

原子炉停止後の熱崩壊による熱量が、どれくらいか調べてみると、一つにはこの小出裕章Webに原子炉崩壊熱のグラフがありました。Wigner-Weiの式は、正しくないとの説もあるが、この原子力安全委員会の資料に非常用炉心冷却系の性能評価指針があり、8ページ目の図5のカーブとほぼ一致し、むしろWigner-Weiの式の方がシビアーと思える。そこで、福島第一原子力発電所1、2、3号基の原子炉の発熱量を表にしてみた。また、対数目盛とパーセントのグラフになっているので、1号基についてMWthと時間のグラフも書いてみた。

Fukushimareactorth2011 Fukushimareactor1th2011

崩壊熱は、核分裂エネルギーと比較すると、小さく、そして時間が経過すると発熱量は下がっていく。津波が来た時には、運転時の1%-2%レベルの20MW-30MWまで下がっていたはずである。なお、通常呼んでいるのは、原子炉電気出力MWeであり、原子炉としての熱エネルギーはMWthとしてあらわされ、電気出力の約3倍である。

但し、20MW-30MWの崩壊熱は、無視できるほど小さくはなく、重油換算で1時間に2KL-3KL燃焼する時に発生する熱量である。1号基の定格蒸気発生量は時間2500トン近くあるはずなので、1%レベルの発熱量でも定格圧力下では25トンの水を蒸気に変化させるエネルギーである。原子炉圧力容器の内径を4.7mとすると1mの水面変化が17.3トンに相当する。20MWの崩壊熱で1時間に1.4m程水位を低下させることとなる。

崩壊熱でも、水位を核燃料の下部より下に下げてしまうことが理解できる。一方、炉心冷却の重要性が覗える。なお、現在の崩壊熱の熱量は5MW以下のはずであり、大きな問題はないと私は考える。

3) 電源喪失

電源喪失により福島第一原子力発電所は、炉心冷却の方法を失った。津波で配管が損傷する、あるいは地震で損傷した機器があるかも知れず、報告書を待つこととなるが、電源損失は大きな要素であったはず。

電源損失について非常用ディーゼル発電機が言われているが、福島第一原子力発電所は東京電力新福島変電所と500kVの6回線と66kV2回線があり、更に66kVは新福島変電所の前に東北電力大熊変電所と冨岡変電所につながっていると理解する。これら全ての送電線が地震で使用不可能になったのか、その情報が公開されていないと思う。変電所の安全装置が働いて、地震直後に通電できなくなったことは想像がつく。しかし、設備に被害がなければ直ちに再通電可能である。現実に、多くの東京電力需用者には、停電することなく、電力供給が継続されたのであるから。

今回の津波は、想定を超える津波であり、大丈夫と言われた防潮堤も壊れている。しかし、原子力発電所は、更に上の安全性を考慮して設計されていたのであり、他の設備と同じ設計想定や基準で考えるべきではない。

今回の事故の原因を究明して欲しい。それは、東京電力の人達の使命であると思う。そうしないと、東京電力による人災論が支持を受けてしまう。仮に、人災であるなら、誰のどの組織の人災であるのかを追求して欲しい。勿論、人災が理由である必要はなく、どのようなことが想定外であり、人間の知恵を超える物であったのかと言うことでも良い。

4) 菅政権

変な動きばかり目につく内閣ですが、次のニュースが改めて、気になります。

ニュースポストセブン 3月20日

この中の次の部分です。

経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎・審議官が、「(1号機の)炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」と記者会見で明らかにした。ところが、菅首相は審議官の“更迭”を命じた。
「菅首相と枝野官房長官は、中村審議官が国民に不安を与えたと問題視し、もう会見させるなといってきた」(経産省幹部)

この報道以上には知りませんが、本当であるなら、独裁よりも酷いと思います。自分の都合の良いように、真実を曲げることは、権力者として絶対に許せない。

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2011年5月15日 (日)

原子力損害の賠償の政府支援枠組のハテナ

13日の金曜日に発表された政府支援の枠組みは、やはり、本筋・本質をはずしたポピュリズムの内容と思います。

平成23年5月13日 東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて

1) 政府責任

現内閣は、福島第一原子力発電所の事故対策において、トンデモない間違いばかりしていることを反省すべきと考える。完全に本末転倒になっている。東京電力が、電源喪失で、3月11日午後3時42分に経済産業大臣に原子力対策特別措置法10条1項の報告を行った時点で、私は事故対策の責任は政府に移り、東京電力は対策の実施者になったと考える。

3月11日午後3時42分に、政府は福島第一原発の事故対応に関する全権限を取得した。自衛隊出動も可能となったし、米国他に対して支援要請を行うことも可能となった。しかし、現実には、何も実行されなかった。逆に、混乱さえ与えた可能性があると思う。

私は、原子力発電とは、核分裂を兵器以外に利用している唯一の方法と考える。そして、原子力平和利用(原子力発電)とは、核兵器とイコールではないが、それに近く、共通する部分が多いと考える。放射能、放射線、放射性物質の対策は、核保有国と日本とでは雲泥の差があるはず。原子力発電所の基数も米国104、フランス59と日本の54よりも多い。過去に、大気圏内核実験も核保有国により実行されており、核についての経験は、日本とは比べものにならないはず。

人民の生命・財産を守る政府が相手国の外国政府や政府機関との交渉をすべきである。関係閣僚会合決定として発表された政府の支援の枠組には、政府の役割はほとんどなく、政府の免責を主張しているとさえ私は感じる。

2) 東京電力の今後

このあたりも何ら配慮されていない。現体制を維持し、損害賠償はすべて東京電力の義務に止めようとしていると考えられる。原子力事業者とは、東京電力を含む一般電気事業者9社と日本原子力発電の合計10社であり、この10社が支援機構を設立し、支援機構が東京電力に財務支援を行い、政府は支援機構の資金に関して資金貸付のようなことを行う。

しかし、この方法は、東京電力にとって、メリットがない。支援機構からの資金援助が、借入金なら全額負債であり、一気に負債が増加する。その結果、会社として成り立つか直ちには私にも分からない。他の9社にとっては、迷惑なだけ。

もし、支援機構からの資金援助が資本金であるなら、関係会社を設立して、関係会社に資本を持たせることとなる。実は、私が、堀江貴文の懲役2年6月実刑確定で批判したホリエモンの行為と似ることになる。ちなみに、原子力発電による発電量割合で持ち分を決めるとすると、2009年度と2010年度における東京電力の割合は、25.6%と28.9%である。

正面から取り組めばよいことを、複雑化している。機構の仕組みが入ったところで、東京電力の賠償債務が変わらなければ、貸借対照表の債務の額も何ら変化がない。それを、「原子力事業者を債務超過にさせない。」と理屈の通らないことを述べるべきではない。

3) 国家管理

電力国家管理体制になるように思う。どの部分を読んでも、政府介入が行われると予想される表現が多い。日本は、市場経済による発展を目指しており、今や計画経済や社会主義など、世界中にほとんど存在しない。北朝鮮並みを目指すように思える。

日本では2000年の電気事業法改正により、電力自由化が始まった。現状については、この経済産業省パンフレットが、参考になると思う。

今回の福島第一原発の事故を理由に、政府介入を許し、電力国家管理体制に移行してはならない。電力自由化を推進すべきである。それが、原子力発電の将来を決めることであり、また合理的な電気料金を実現することである。国家管理になれば、電気料金は高くなる。安定供給は得られない。政府が、経営合理化等について監督(認可等)をするなんて、トンデモない話である。

4) 拙速な法はつくるべきではない

そもそも、急がねばならない理由が理解できない。被害者救済なら、こんな法を作らなくても可能である。今回の政府支援枠組みに関する法について、野党がどのように出るのか、国会を通過するのか不明である。

電気料金を上げないための政府支援の枠組などと甘い言葉に乗せられてはならない。実態は、悪魔のささやきと思える。原子力の新規発電会社をつくり、そこに移行することが、問題点を浮かばせることにつながり、本当の解決になると思う。原子力が、コスト高なら、これ以上新規発電所は建設されないであろうし、魅力があり、人々から支持されれば建設される。他の発電所とどんぶり勘定になって管理されても分からない。現状において、電気事業会計規則で合理的になっているとの意見もあると思うが、やはり原子力のみを取りだして別会社として、社債格付けを取得し、社債発行や借入を行う。そのような市場経済を目指して欲しい。別会社にすれば、原子力関連の原発1基1000億円と言われる交付金についても、今より分かりやすくなると思う。

なお、私は、2)で、こんな政府支援の枠組みは東京電力にもメリットはないと書いた。多分、ないと思うが、それ以上に、この枠組みは、日本の電力供給体制の発展には、障害となることが多いと思う。こんな枠組みが成立するなら、いっそのこと東京電力には会社更生法を申請して欲しいと思う。

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2011年5月13日 (金)

東京電力原子力賠償スキームは、根本問題にも目を向けるべし

東京電力福島第一原子力発電所事故の経済被害・損害賠償の枠組みは、12日の閣議で決定されず、持ち越しとなった。

日経 5月12日 首相「さらなる議論が必要」 賠償支援スキーム先送り

表面的なつじつま合わせや、政権維持のためのごまかしではない将来を見通した正しい原子力賠償スキームを打ち立てるべきと考える。賠償スキームが、未定であっても、仮払金は支払可能なはず。仮払金の支払い対象、支払うべき相手と仮払金額を政府が決定し、東京電力に支払を要請すれば良いはずである。賠償スキームは、将来像も念頭に入れた国民の支持を受ける案にすべきである。

1) 電気料金値上げ

官房長官は記者会見で、この日経 5月12日 原発賠償支援策「電気料金値上げによらず」 官房長官強調の記事のように述べたと報道がある。被害者救済を押さえれば、可能と思う。しかし、適切な補償額を支払う場合には、残念ながら、電気料金値上げは避けられないと予想する。勿論、税金で支払えば別であるが、これまでの官房長官の話とは、異なる。

本当に、国民のことを考えるなら、そんな単純な話ではない。残念ながら、現内閣の薄っぺらな思考に思える。

2009年3月末の東京電力の子会社を含まない個別貸借対照表においては、資産総額12兆6430億円、負債総額10兆4824億円で、純資産は2兆1606億円であった。会社を清算すれば2兆1千億円残るので、2兆1千億円まで支払能力があると考えるかも知れない。しかし、現実は、会社を単純には清算できず、例え会社が現在の形で存続しなくても、電力供給を続けることができなければならない。

なお、東京電力の電気事業収支をあらわす個別損益計算書で見ると、2009年度は売上高4兆8千億円、税引後純利益1023億円である。事業収支からの、賠償金支払限度もある。即ち、株主配当を中止するとしても、社債の元利払の継続を確保するのが最低限と考えれば、年間2000億円程度が限度とも思える。東京電力の負担を年間2000億円とする案が一部で報道されたこともあったが、賠償金支払い以前に福島第一の事故処理をせねばならず、下手をすると、事故処理だけで赤字ではないかと思う。

金額を具体的に述べることは困難であるが、全額を東京電力負担としても、それを過去の蓄積と将来の利益から払えなければ、不足分を電気料金値上げで賄う必要がある。このような経済原理を忘れて処理をすると、かえって大きなマイナスとなる危険性がある。

2) 東電責任・政府責任

原子力損害の賠償に関する法律第3条から離れて考えてみる。現在、焼肉店ユッケ食中毒問題がある。生肉は、危ないと多くの人は考えている。同様に、原子力の事故は、危ないと誰もが考えている。原子力の事故は、被害が大きく、あってはならないと、事業者も政府も考えている。福島第一原発事故は、法令違反で起こったのではない。その様な場合、誰が責任を負うべきか、複雑であると考える。

基準の適切さという問題も複雑である。例えば、津波高さ5mあるいは10mどちらが適切かと言えば、安全性からは、10mである。しかし、コストを犠牲にしても、絶対10mが必要として、その基準を採用するには、5mにそれなりの根拠があれば、相当のエビデンスが必要なことが多い。当然10mで絶対大丈夫かとの問題もつきまとう。また、相当前に基準が決定されており、その基準で多くの設備が建設・運転されていたとするなら、変更すると影響が大きすぎて実施が容易ではないこともある。

民間の事業者も、法令遵守は当然であり、その上に可能な限り安全性を確保すべく尽力すべきである。しかし、法令遵守の基となる基準は、中立的で利害・損得に影響されない機関が立案すべきである。福島第一原発は、商業用発電原子炉として建設・運転された。法令遵守の上で、利益追求がなされることにより、国民に貢献するのが目的であった。

基準に欠陥があり、基準が改定されていなかったことにより事故が起こったとするなら、その事故の賠償責任は、政府にあるのではないか。この部分の調査・究明も、事故調査委員会にお願いしたい。

3) 現在の原子力発電体制を維持して良いか

沖縄電力を除く9社の一般電気事業者と日本原子力発電による日本の原子力発電体制(建設中の電源開発による大間原発を加えると合計11社体制になる。)に、大きな問題があると思う。

例えば、エネルギー基本計画 平成22年6月の27ページの「2.原子力発電の推進(1)目指すべき姿」に次のような記述がある。

まず、2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指す(現状:54 基稼働、設備利用率:(2008 年度)約60%、(1998年度)約84%)。さらに、2030 年までに、少なくとも14 基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく。

民主党政権下での基本計画です。そんな政権与党の都合の良いように、右に左に振られていくことが、国民にとって良いことでしょうか。

原子力には、特有の問題がありすぎます。核兵器転用問題、プルトニウム問題、事故時の放射能汚染問題、放射能破棄物問題、テロ問題等です。国営会社が事業をすると、政治家に利用され問題が悪化し、情報開示も悪くなる危険性があり、民間会社による運営にすべきと考える。しかし、現状の一般電気事業者と日本原子力発電による体制ではなく、新日本原子力発電あるいは東日本会社と西日本会社の2社体制のような形の方が良いように思う。

現在の9社と日本原電が原子力発電事業を現物出資することにより新原子力発電会社を設立するのです。そして、流通株式比率35%以上とする上場会社を目指します。東京電力の賠償債務を幾ら東京電力に残し、幾ら新会社に移転するかは、それはそれで検討することとする。利点は、原子力発電のコストが、完全分離されるわけで、原子力単独での議論が容易になるはず。仮に、東京電力の原子力債務を全額引き継いだ場合は、賠償コストも発電コストとなるのであり、それは、それで合理的である。原子力発電コストには、廃炉から破棄物処理、ひいては賠償コストを含め、全てが含まれるべきである。株式上場によるガバナンスの確立を期待します。

また、この新原子力発電会社の財務諸表はIFRSで作成されるべきである。日本政府が電気事業会計規則のような規則を作り、そのような規則による財務諸表の作成を法令で強制することは可能であるが、IFRSによる財務諸表は、日本政府基準で適正監査報告書を入手できるかは、別問題である。核燃料リサイクルや放射性破棄物処理に関する負債が国際的な観点においても、適正に計上されていないとならない。原子力とは、そこまでの、透明性を持った報告がなされるべきと考える。

4) 原子力発電の将来

私にもよく分かりません。一部政治家のものであってはなりません。国民のものです。そのためには、情報開示がなされることです。

このロイターの5月12日の記事「特別リポート:世界の原発ビジネス、「フクシマ」が新たな商機に」は、とてもおもしろい。仏アレバの第3世代炉「欧州加圧水型原子炉(EPR、出力1,650MW)」は地震や津波といった自然災害に備えて複数のバックアップシステムと安全装置が付いており、2001年9月の米同時多発攻撃のような航空機の衝突にも耐える設計で、同社アレックス・マリンチッチ最高技術責任者(CTO)は「フクシマの炉がもしEPRだったなら震災に耐えられた」と言っているとのこと。

世界のビジネスとは、そのようなものです。過去を超えて、発展していかないと、明るい未来はありません。アレバのEPRが、本当に、そのように安全なのかの検証もすればよいと思います。いずれにせよ、被害者に必要な賠償を行うことにより明るい未来が到来するのであり、問題なく賠償の履行が可能なスキームでなければなりません。同時に、それは犠牲の上に成り立つのではなく、これをチャンスに電力供給体制そのものも、よりよい合理的な姿に変えていくべきと考えます。

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2011年5月11日 (水)

浦安原子力発電所は、どうだろうか

東日本大震災において、首都圏で、地盤液状化の被害が一番大きかったのが、浦安市であり、相当広範囲で、液状化の被害があったようです。次の所に地図がありました。

日経 BPニュースセレクト 4月20日 湾岸部の宅地、液状化対策が急務 浦安の教訓

この際、浦安に福島第一原発の代替原子力発電所を建設したらということを、考えてみると頭の体操によいのではと思いました。

浦安に建設するとなると、原発は怖いから嫌だと言われる方が、相当おられると思います。しかし、そうであるなら、原発を福島や他の地方に押しつけるのは、身勝手のエゴになる気がします。安全なら、原発は排気ガスを出さず、出すのは温排水だけなので、浦安で問題がない気がします。

では、浦安原発の利点は、何かといえば、日本で最高の安全が確保されると期待できることです。これも、矛盾がありますが、リスクがゼロではないが、リスクを限りなくゼロに近づけることが可能であれば、浦安に原発を立地させれば、台風対策、津波対策、テロ対策・・・あらゆる対策について万全が尽くされることなり、稼働後に新たな問題が浮上しても、必要な対策が直ちに対策が講じられることになると思います。

何しろ、浦安原発は都心の霞ヶ関あるいは皇居まで16kmです。ちなみに、千葉県庁までは18km、神奈川県庁までは34kmであるが、羽田が16kmで、川崎市の一部は20km圏内に入ります。20kmの範囲が避難区域や立ち入り禁止になると、1都2県の一部が含まれ、影響が多きい。

福島第一原発の事故による放射線漏れも、年末頃には平常に戻り、来年には一部の地域で帰宅も可能になると期待します。しかし、福島第一原発が、再建されるかというと、避難された方にとっては、再建は許し難いことであり、福島第一原発の再建は不可能であろうと思います。

しかし、一方で、福島第一原発が電力供給に必要不可欠な設備であるなら、どこかにその代替発電所を建設せねばなりません。政策立案者が影響を受ける地点に原発を建設することで、国民を説得するというのは、いかがでしょうか?

なお、浦安原発はよくないと考える人は、同時に原発から脱却する案を考える必要があると思います。そのようにして進めないと、結局は同じ過ちを繰り返すと思うのです。

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2011年5月10日 (火)

公正な原子力事故調査委員会の設立を望む

菅首相は、5月10日の総理記者会見で、「独立性、公開性、包括性という三原則で、原子力事故調査委員会を立ち上げる準備を進めている。」と述べました。そのような国民と世界が公正と認める委員会の設立に向け、その第一歩として、正しく委員を選出することを望みたいと思います。記者会見について、首相官邸のWebには現状では動画しかないが、発言及び質疑の記録が、MSN産経のWebにありました。

MSN産経 【菅首相会見】 2011年5月10日 (1) (2) (3) (4) (5完)

原子力事故調査委員会の立ち上げ準備については、(2)の1ページ目にあります。

包括性ということで、制度や関係組織の権限についても事故とどう関係したか調査に含まれると述べられた。その組織とは、首相も含まれると思います。例えば、福島第一原子力発電所の事故を受けて、3月11日のある時点で、首相による原子力緊急事態宣言が出され、直ちに閣議により原子力災害対策本部が設置され、その本部長に首相が就任した。(原子力災害対策特別措置法第15条、16条、17条および官房長官記者発表 平成23年3月11日(金)午後 原子力緊急事態宣言についてを参照。)原子力災害対策特別措置法に従い、期待したように、適切に責任者は行動をしたか、できたか、あるいは、この法は適切であるかも検証させるべきです。政治主導として選挙を意識して、すべき対策をせずにパフォーマンスに及んでいることがあるとすれば、その責任は重大であるし、そのようなことはなかったと明らかにして欲しい。

今回の福島第一原子力発電所の事故は、日本のみならず世界中で、多くの人が予期せぬことであったと思う。報告書は、世界の原子力に役に立つものであるべきであり、日本の事故に対する真摯な取り組みをアピールして欲しいと思う。事故調査委員には、IAEAの委員や外国の委員が参加してよいと思うし、原子力に対して反対論や問題意識を持つ人が入ってよいと思う。

独立性、公開制は、当然のことであり、やはり重要なことは、公正な調査を実施することである。そのためには、進捗報告や中間報告を多く出し、それらに対し寄せられるであろう要望やコメントについても反映を行い、中間で何度も討論会等も実施すべきと考える。

なお、5月10日の総理記者会見で、菅首相はエネルギー政策の見直しについても述べた。これに関して、エネルギー政策の見直しに時間を要して、一向に構わないと思う。事故調査は、原子力の安全についての評価と密接に関係があり、エネルギー政策の見直しを急ぐ必要はないと考える。再生可能エネルギーの利用を可能な限り拡大することと、省エネルギーを推進することに、多くの人は賛成するはずである。コスト問題と不便さがあるが、一方で、エネルギー需給は市場原理で決まるのであり、政策で無理強いして推進することが、正しいとは言えないと考える。むしろ、政策が間違っていた場合には、被害が大きいと言える。

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浜岡原発運転停止については多くの議論を望む

内閣総理大臣の浜岡原子力発電所の運転停止要請の表明および経済産業大臣よりの要請書の対応として、中部電力は、浜岡原子力発電所の4、5号機については、準備が整い次第速やかに停止すること、及び停止中の3号機の当面の運転再開の見送りを発表した。

中部電力プレスリリース 2011年5月9日 浜岡原子力発電所の運転停止要請への対応について

中部電力は、プレスリリースの中で「過度な負担、不利益が生じないよう、経済産業大臣に対し、別紙1のとおり確認をいたしました。」と述べており、別紙1とはこれです。そして、経済産業大臣よりの要請書とは、平成23年5月6日報道発表に添付されている中部電力宛の平成23・05・06原第1号です。

停止後の運転再開は、中部電力の4月20日報告書にある津波に対する防護策及び海水ポンブの予備品の確保と非常用発電機の設置完了とこれらの原子力安全・保安院による評価・確認です。4月20日報告書とは、この中部電力2011年4月20日プレスリリース 浜岡原子力発電所における緊急安全対策について(経済産業大臣からの指示に対する報告)であり、そのなかの項目にある3(1)と3(2)であると考える。

海水ポンブの予備品確保は、2011年4月19日に対応完了と読めたりもするが、いずれにせよ予備品手配に困難はないはず。4月20日プレスリリースの別紙に工程表が記載されており、それによれば非常用発電機の設置完了予定は2012年度初めなので2012年4月頃で、防波壁の設置完了が2014年3月となっている。

この対策で、大丈夫であるのか、この対策とは運転停止を求めるまでの重大な事項であるのか、多くの人々の議論が必要と考える。日本の原子力の安全性については、原子力政策に関する機関である原子力安全委員会や原子力委員会の意見も傾聴すべきであると考えるし、様々な研究者や技術者の意見も聞くべきであると思う。余りにも唐突な要請であると感じるし、この基準が妥当であるなら、他の全ての原子力発電所に対しても適用して、対策が未実行であるなら、運転停止も議論をする必要があると思う。情報を公開して、議論をすべきと考える。

また、運転停止要請には「30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性が87%」との記載がある。東海地震は、地震予知体制が構築されているのではないのか?もし、地震予知が可能なら、予知を受けて、原子炉を安全に停止することができる。浜岡原発の停止を要求するなら、地震予知は不可能であると政府は明言すべきと思う。そして、地震予知に税金は使わないと明言すべきで、今後は地震研究に集中すべきと考える。

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2011年5月 7日 (土)

浜岡原発停止に関して中部電力に望む

中部電力が、簡単に会社対応を決定できないとのことを、当然と思います。

日経 5月7日 中部電、浜岡原発停止の結論持ち越し 8日以降再協議  電力供給や業績への影響大きく

私は、菅首相とは、戦って欲しいと思う。様々な意見があると思う。しかし、首相の鶴の一声で、どうにでもなる日本であって欲しくはない。国民が認める公正・公平な基準があり、その基準に照らし合わせた結果の判断であるなら、その判断が正しいかどうかについては、ある一定の狭い範囲であり、議論をかみ合わせることは可能である。

しかし、基準が訳分からないままに、結論が出されたなら独裁であり、民主国家のすることではない。中部電力が電力供給に全力を尽くすとして、浜岡原発の停止をするとしても、やはり、菅首相の下したのは、どのような基準に基づくか、明確にするように戦って欲しい。

これは、原発賛成、反対を超えた世界である。原発賛成の人も、反対の人も、今回の決定ははなはだ迷惑千万であるはず。基準が不明確であれば、合理性がないのであれば、将来そのような判断は簡単に覆されるからである。力の強い人間が、物事を決定できることとなる。

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浜岡原発運転停止要請は、独裁と感じる

菅直人首相が6日夜の記者会見で「中部電力浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を中電に要請した」と述べた。静岡新聞に、全文が次の通り掲載されている。中部電力の直後のプレスリリースは、単に「本日19時に、運転停止に関する要請を受けました。」とのみある。

静岡新聞 5月6日 菅首相会見全文【浜岡原発関連】

中部電力プレスリリース 2011年5月6日 浜岡原子力発電所の運転停止要請に関するコメント

理由は、東海地震に対する対策ということのみです。東海地震は、ずいぶん前から言われており、浜岡原発には対策がされていると発表されていた。それが、嘘であるなら、どの部分が嘘か明確にしないと、真っ暗闇と思う。

やはり、独裁であると思います。民主党の暗黒独裁政治は、止まる所を知らず、権力でやれることは、全てするように感じる。反論を受け付けないことは悪魔と思える。(浜岡原発停止が正しいかも知れない、しかし、議論なしで決定することは、許されるべきではない。)

原子力発電所を、どうするかは、国民の決めることであり、菅直人が決めることではありません。もし、浜岡原発が危険であり、運転中止すべきだと国民に訴えたいなら、その理由や根拠を説明すべきです。福島第一の報告すら受けていない。浜岡原発は、防潮堤の設置等をするとのこと。しかし、その防潮堤で安全になるのか、全く不明である。私は、菅直人を信じない。図面とデータや計算を示して、初めて評価ができる。

福島第一原子力発電所でベントが遅れたのは何故か?詳細データが示されて、報告がなされなければならない。東北電力の電源車が福島第一に到着したが、地震と津波のがれきに阻まれ、ケーブルが届かず通電できなかったとの報道もある。そうであるのか?

それと、何故自衛隊を福島第一原子力発電所に11日の夕刻頃から投入しなかったのか?福島原発1-4号基の全ての電源が失われたのは、午後3時41分である。壊滅的な危機は、この時に発生し、そのことの通告を経済産業省は受けていたし、事態の深刻さも認識していた。(参考この東京電力プレスリリース)民間企業が自衛隊に要請してはいけない。軍隊である以上は、首相が命令を下す手続きが必要である。自衛隊をヘリコプターを使っても現地に派遣して、がれきの撤去をし、通電させることが重要であったと思う。ベントをする前なので、放射線レベルは通常と同じである。

電源確保をせず、ベントをせず。東京電力は、電源の見通しがつかなくなった時点で、一刻も早くベントを実施したかったはずであると私は思う。何故なら、設備のことを知っている技術者は、その状態や深刻さを一番理解しているはず。原子力災害対策特別措置法10条1項の通知をした後は、重要事項は内閣、経済産業省、保安院の了解を得ないと何もできないと思う。まして、ベントをすれば、放射性物質を空中に放出することとなる。多分、政府内の混乱で、誰も責任をとって判断せず、いたずらに遅れたのだと思う。イラ菅が、拒否した可能性も、もしかしたら、あるのではとさえ思う。平気で翌朝、発電所にヘリコプターで行くのだから。重要性が、どこにあるか、判断できない人と思う。

今回の浜岡原発運転停止について、原子力委員会と原子力安全委員会は、どのような見解を持っているのだろうか。役立たずの委員会と言うことであろうか。国民のための委員会に発言をさせない独裁では、日本を不幸にしてしまう。

日本に存在する稼働中の原子力発電所と現在の状況の表を作成したので以下に掲げる。表の「現状」の欄に記載した日にちは、稼働中の発電所の場合は、前回の点検停止後の稼働日であり、停止中の発電所は停止をした日である。通常の定期点検・燃料取り替えの場合は、3月-5月程度(2月程度の場合もあるが、6月以上の時もある。)また、現在運転中の発電所もいずれ定期点検と燃料取り替えのため、停止が必要。通常は、15月程度の連続運転後定期点検が多いようである。

課題は、現在停止中の発電所について、運転再開を認める際に条件を付すか、あるいは認めないのか、どのようにするにせよ基準は何であるか明確にすべきである。浜岡基準と同じ基準でないと、日本は沈没するのではと思います。

Nuclearplant20115

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2011年5月 4日 (水)

離婚にDNA鑑定?

オサマ・ビンラディンの遺体は、DNA鑑定をした上で、遺体を海に投下したとのことである。9.11事件とは、過去にはなかった現代の事件であり、現代社会が向き合っている事件であると思う。

あまり、このブログに似つかわしくないようであるが、次の3月18日の最高裁離婚判決が、意味するものは、何なのかと思う。

平成23年03月18日  最高裁判所第二小法廷 離婚等請求本訴,同反訴事件 判決 (判決文

事件

離婚に関する争いであり、息子が3人いる。3人のうち次男が、婚姻中に夫でない男と生まれた子どもであり、次男の養育費(月額20万円)の負担について、最高裁まで争われた事件である。

結婚、出産は次の通りであった。

男 1962年生まれ 女 1961年生まれ
結婚 1991年 男29歳 女30歳
長男誕生 1996年 男34歳 女35歳
次男誕生 1998年 男35歳 女36歳
三男誕生 1999年 男37歳 女38歳

二人の結婚が破綻したのは、2004年1月頃であり、判決文には「上告人(男)が被上告人(女)以外の女性と性的関係を持ったことなどから」と書いてある。また「婚姻費用として月額55万円を支払うよう命ずる審判がされ,同審判は確定した。」とある。

審判との関係でか、不明であるが、次男が男の子どもではないことを男が知ったのが、2005年4月。男は、自然的血縁関係にないことを理由に、親子関係不存在確認の訴えを起こした。しかし、認められず。嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない(民法777条)。女が、男の子ではないことを知ったのは、出産から約2月後。

そこで、養育費の分担問題の裁判となり、東京高裁は法律上の親子関係がある以上、男はその養育費を分担する義務を負い、長男及び三男と同額の月額14万円が相当であると判断した。

男は、高額の収入があったと推定する。例えば、男が女に対して生活費として月150万円を1999年頃から破綻する2004年まで渡していた。その後も審判に従い月55万円を渡している。また、離婚に際して、多額の財産分与があると判決文にある。このようなこともあり、最高裁は、女が要求する次男の養育費の分担は権利の濫用であるとして高裁判決を取消した。

感想

民法772条について、2007年2月15日に子どもの父親と題したブログを書いた。民法772条は、離婚の法的成立から300日以内に生まれた新しい夫との子について、その権利保護は単純ではない側面があることを書いた。最高裁も、777条の「嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。」については、当然としている。女が、その事実を告げず、男が知ったのは次男が5歳になった時であり、最高裁は、養育費の負担の請求を、この事件については、女の権利濫用とした。起こるべくして、起こった事件であると思う。なお、男が将来死亡した場合の次男の相続権であるが、嫡出子であることは否定されておらず、私は、長男、三男あるいは新しい妻と生まれる(た)子どもと同一の権利を持っていると考える。(財産分与が、子どもに対してもあり、その際に相続権放棄をしていることもあり得るが)

金持ちでなければ、あてはまらないように思う。しかし、離婚に際して、DNA鑑定なんて話が多くなりそうな気がする。離婚の前には破綻しているのであり、何でも要求するかも知れない。仮に、このような裁判にまでならなくとも、ゴタゴタする話は多くなる気がする。民法が、どうあるべきかは、国会の話ではなく、我々が生活を営んでいく中で編み出されていく知恵という側面を持つ。議員や研究者・専門家の問題ではなく、我々の問題であると思います。

やはり愛でしょうか?愛は、全てを許し、全てを受け止めてくれる。そんな愛の中にいたいものです。

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あいまいな言葉「国」

あいまいな言葉は、使わない方が、よいのだろうと思う。「国」という言葉も、あいまいに使われていることが多く、他の言葉に置き換えられる場合には、他の適切な言葉の方が、よいと思える。憲法記念日にあたって、私の思っていることを書いてみます。

1) 「国」の意味

国には、元来2つの意味がある。地域としての国であり、Countryの意味である。相模(さがみ)・武蔵( むさし)・安房(あわ)・上総(かずさ)・下総(しもうさ)・常陸(ひたち)・上野(こうずけ) ・下野(しもつけ)の国とは、地域の名称であるはず。家康が関八州に移る合意が、秀吉と家康で成り立つのも、地域であったからと思う。

国家Stateの意味でも、使われる。日本と言った場合、それが地域とも重なるので、はなはだ複雑である。しかし、ソマリアのように、その地域を実効的に統治している政府が存在しない場合のStateとは、何であるのか。Stateとは、統治者が、統治している地域と社会の意味であると思う。

中世のように国王のような統治者がいて、隣国との国境は、戦争のたびに変わったりしたこともある。国家Stateとは、統治と一体の言葉と考える。

もう一つ、民族Nationという言葉がある。国連は、United Nationsである。国連加盟国という場合は、Nationではなく、次の第4条のようにState(国家)である。国家が、複数の民族から構成され、一つの民族が複数の国家の国民になっていることもある。

Article 4

  1. Membership in the United Nations is open to all other peace-loving states which accept the obligations contained in the present Charter and, in the judgment of the Organization, are able and willing to carry out these obligations.
  2. The admission of any such state to membership in the United Nations will be effected by a decision of the General Assembly upon the recommendation of the Security Council.

グローバル化した現代においても、法は国家毎に制定される。でも、EUのような取り組みもあり、やがて変わっていくと考えるべきとも思う。

2) 国民主権・三権分立

国民主権と三権分立の考え方において、国という言葉を、使用すると混乱をまねく気がしてならない。日本国憲法は、次の文章で始まる。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

「主権が国民に存する」とは、どのような意味であるか。英訳では”sovereign power resides with the people”となっている。主権とは、国王の統治権の意味であった。国王の統治権のうち法を制定する立法権が議会に移り、法治国家が生まれ、その法の解釈は立法権とは別に裁判所が行う。日本国憲法も、前文の国民主権宣言とともに、第4章で国会を唯一の立法機関とし、第5章で行政権は内閣に属するとし、第6章で司法について記載している。

政府と言うべき時に、国と言っていることがしばしばあると思う。特に、マスコミ等で多いように感じるが、例えば、TVでアナウンサーが「国債は国の債務であり」と言っているのを耳にする。国には、国民も入り、国民が国債を保有していれば、それは国に対する債権であり、複雑である。やはり、国債は政府の債務である。税を払う相手は、政府である。政府とは、主権者である国民が管理する組織であり、立法権と司法権を含まない存在と私は考える。米国の場合、行政権のための大統領選と立法を行う議会の選挙は別であり、三権分立を考えやすい。日本に三権分立がないのではない。国会と内閣は別であり、政府を掌握するのは、内閣である。

国と言ってしまった場合に、内閣やあるいは公務員の仕事が不適切であるのか、法に問題があるのか、立法が社会の実態に適合していないのか、問題点を浮かび上がり難くしてしまう場合があると思う。三権分立を推進し、適切な国会機能を確保し、国民のための政府を作り上げるためには、「国」という言葉を、国民目線ではやめて、政府と使ったり、国会と使ったりするのが適切であると考える。

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2011年5月 2日 (月)

被災者の税金還付手続きの紹介

4月27日に東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律および地方税法の一部を改正する法律案が公布され、公布日から施行されました。

4月27日 日経 税制特例法が成立 所得税減免などで被災者支援

結果、被災により財産を失ったり損害が生じている人は、該当すれば、昨年の税金(本年2、3月確定申告分、昨年12月年末調整分)からも税金還付を受けられることになりました。損失の大きな人は、昨年分を含め5年間所得税と住民税(均等割を除く)を払わなくてもよくなります。所得税や所得が低くできれば、国民健康保険料も安くなるはず。国民年金保険料の減免も受けられる可能性あり。そして、高額医療費の自己負担分も小さくなる可能性があります。

所得税の税還付(雑損控除による方法)について、紹介いたします。

1) 対象となる人

資産について東日本大震災により損失生じている人であり、資産の所有者は、本人以外でも所得金額38万円以下で生計を一にする配偶者または親族分も含めることができます。なお、事業用資産や賃貸資産あるいは山林が東日本大震災で損失を生じている場合については、事業所得、雑所得、不動産所得、山林所得で必要経費の算入をすることになります。

但し、資産についての損失が、(平成22年について還付を申請する場合は)平成22年所得金額の10%以上である人です。所得金額とは何であるかというと、給与所得のみの人は、自分の源泉徴収票の次の欄の「給与所得控除後の金額」です。

Photo

給与の支払額が600万円の人であれば、426万円になっているはずです。この例では、資産の損失額が42万6千円以上であれば、所得税還付が可能となります。

2) 資産の損失金額

対象資産は事業用資産、賃貸資産、山林以外と書いたのですが、それ以外に、生活に通常必要でない資産も対象外です。それらは、宝石、書画、骨董類、別荘等で、これらは平成23年と24年の譲渡所得と損益通算が可能であり、相殺することができます。(所得税法62条)

そうすると、どのような資産が対象となるかというと、住居であった家、家にあった家財そして車が考えられます。例えば、単身赴任していて住民票は別の場所でも家族が居住していたのであれば、対象となるし、家は被害から幸運にも大丈夫であったが、車はダメになった場合も車は対象になります。スポーツカーは、生活に通常必要でない資産かも知れないが、通勤に使っていれば、生活用の資産と言えると思います。

なお、損失金額は、保険金等で補填を受けた後の金額です。また、損失の金額とは、被害を受けた直前の時価と直後の時価の差です。といっても、簡単ではありませんが、10%を残存価額とし、償却年数を通常の1.5倍として計算した残存価額を採用して税務署に通用すると思います。この時の取得価額ですが、実際の取得価額を採用するか、国税庁の地域別・構造別の工事費用表から有利な方を使ってよいと思います。例えば、岩手県で20年間住んだ100m3の木造住宅が津波で家財と共に全損したとし、150万円で購求した3年前の車もダメになったとすると、次の金額になります。家財については、世帯主年齢45歳で、家族構成は妻と子ども一人とします。

家屋の損失=100m3 x 143千円/m3 x (1 - 0.9 x 0.031 x 20年) = 6,320,600円

家財の損失= 1100万円 + 130万円 + 80万円 = 13,100,000円

自動車の損失=150万円 x (1 - 0.9 x 0.111 x 3年) = 1,050,450円

なお、火災保険で家屋500万円、家財200万円の保険金が受け取れることとすると、損失の合計額は13,471,050円となります。そうなると、損失額は所得金額426万円の10%の42万6千円より大きいので、所得税の還付を受けることが可能です。

なお、雑損控除(所得税法72条)の扱いとなりますが、雑損控除として所得金額から控除が可能なのは「損失の金額-所得の金額x10%」(場合によっては、これより大きな金額が可能な場合もありえますが)で、雑損失の金額と呼びます。

3) 還付の方法

厳密には、平成22年の所得税をゼロとし、払いすぎていた所得税を取り戻す方法です。その理屈は、

A. 4月27日公布の法律第4条に、「東日本大震災により生じた損失の金額・・・については、その居住者の選択により、平成二十二年において生じた・・損失の金額として、・・適用することができる。」とあり、東日本大震災は平成23年3月11日に発生したが、損失は平成22年に生じたとして、所得税法の雑損控除を適用できるとしました。

B. 平成22年の所得税は申告も納付も終了している人が多いと思いますが、4月27日公布の法律附則第2条に「この法律の施行の日・・前に平成二十二年分の所得税につき・・確定申告書を提出した者・・は、・・・施行日から起算して一年を経過する日までに、・・更正の請求をすることができる。」となっています。

更正の請求とは、申告金額が大きすぎた場合に、訂正を求める申告です。この用紙を使用して、税務署に提出します。サラリーマンで、確定申告をしていない人でも、更正の請求は可能ですし、逆に勤務先には提出できず、税務署に手続きをしないとなりません。

例にあげた人の場合は、雑損失の金額が13,045,050円なので、426万円の所得をゼロにしておつりが来ます。そこで、このおつりを平成23年以降も使えるようにします。通常の確定申告で、更正の請求でない場合は、この申告書の○の79の「翌年以後に繰り越される本年分の雑損失の金額」に繰越金額を書いて申請します。また、源泉税が適用されないようにするためには繰越雑損失がある場合の源泉所得税の徴収猶予承認申請手続をすればよいはずです。

なお、県民税と市町村民税も、どうように減額されます。所得税について手続きをすれば、住民税にも反映されると思うのですが、念のため市町村の税務担当に聞いてみてください。

4) 何年間所得税が減額されるか?

雑損失の金額の繰越は通常3年間ですが、東日本大震災による損失については5年間となっています。従い、平成22年の更正の請求をした場合は、平成26年分あるいは、所得金額の累計が雑損失の金額に達するまでです。

キャッシュフローで助かるのは、損失の金額ではなく、損失の金額 x 税率であるので、焼け太りになったり、得をしたりはしないのですが、苦しみの上に、更に税を払うという過酷な苦しみからは、解放されます。確定申告をしておらず、源泉税のみの方でも、同じ措置を受けられるので、被災されている方には、検討をお奨めします。

なお、この国税庁のWebこちらの国税庁のWebも、分かりつらい部分もありますが、私も全てを説明できているわけではなく、国税庁の説明も参考にしてください。税務署に問い合わせてもよいと思います。

5) 浦安液状化損失は対象となるか?

私は、浦安液状化による損失は、3月11日の東日本大震災により発生したのであり、対象になると思います。但し、損失額を幾らとするか、損失割合をどう見るか、その辺りには難しい問題があると思います。

一方、東日本大震災に入るかどうかで、長野県栄村、新潟県十日町市や津南町の地震被害があると思います。東日本大震災でなくても、雑損失の扱いを受けることは可能ですが、平成22年としたり、繰越を5年とすることができません。しかし、この財務大臣告示は相続税に関する告示ですが、同じ4月27日公布の法律に関して出された告示です。従い、私は、栄村、十日町市、津南町の地震被害も東日本大震災による被害として大丈夫だと思います。

6) 所得税のおもしろさ

所得税は、おもしろい税です。災害があれば、被災金額をマイナスして、税を減額できたりしますから。これが、消費税だと、そうは行かないのです。被災した人も、同じように税を払うこととなります。範囲を拡大して、預金の税(所得税15%、地方税5%)も、申告をして税の精算をするようにすればよいと思います。預金をするのに、身分証明を求められる一方で、税は精算して返してくれないのは一方的の感があります。

実は、預金の税について法人税では、精算してくれるのです。何故、所得税が精算されないか、不合理と思います。証券税制も同様です。株価が下がって、損をしても、税金に反映されない。損をしたら、その損を所得金額から減額をする。逆に、儲かったら、きちんと累進税率で税金を支払う。それが、大人の世界の税金です。

消費税増税ばかり言われますが、所得税もバランスさせないと、格差拡大につながる懸念もある。そして、勤労意欲・労働意欲にも関係するかも知れないと思います。日本の税は、世界一高い税にならざるを得ない状況と思いますから。政府の債務世界一で、高齢化も世界一だとしたら、世界一高い税でないと政府は破綻する。東日本大震災は、その高い税率を更に押し上げた。そんな風な見方もあり得ると思います。もし、そうでないと思うなら、人に言わなくてもよいので、自分の中で問答してみたらと思います。税は、納税者にとっては低いほどよい。しかし、復興対策を含め政府の負担拡大を望むなら、どこかでバランスしなければいけない。

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