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2011年6月 9日 (木)

原子力事故調査委員会への要求

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の初会合が6月7日にあった。

日経 6月7日 首相「原子力の閉鎖性検証を」 事故調が初会合 初動対応を検証、提言作成へ 原発事故調委員長「100年後に見ても恥ずかしくない中身に」

この事故調査委員会に期待したいが、問題がありそうな気もする。批判を受けて、正しい調査とその報告を是非お願いしたいと思う。

1) 日本の原子力政策

通常であれば、事故調査委員会は、福島第一原子力発電所の事故が対象になるのであろうが、5月18日の首相記者会見で、首相は「近くスタートする今回の事故の調査委員会においては、この長年の原子力行政の在り方そのものも十分に検討していただき、その根本的な改革の方向性を見出していきたいと考えております。」と述べている。

しかし、行政についてのみならず、原子力政策についても、調査・報告をして欲しい。行政とは、制定された法に従い、政府が執行する活動であるなら、それ以上に、現行法に問題点や矛盾点がないかの検討も含めてであり、当然のこととして政令、省令が適正な内容であるか、必要な立法措置が講じられ、政令や省令が適正に出されているかも是非調査・報告して欲しい。

例えば、原子力基本法の第二章は次の通りである。原子力委員会が、その機能を発揮していないと思えて仕方がない。基本法は設置の理由として、「原子力の・・・利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため」と定めている。この原子力委員会のWebを読んでも、同じことである。

   第二章 原子力委員会及び原子力安全委員会
設置
第四条  原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため、内閣府に原子力委員会及び原子力安全委員会を置く。
任務
第五条  原子力委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項(安全の確保のための規制の実施に関する事項を除く。)について企画し、審議し、及び決定する。
 原子力安全委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、及び決定する。
組織、運営及び権限
第六条  原子力委員会及び原子力安全委員会の組織、運営及び権限については、別に法律で定める。

本来であれば、政府とは一線を引き、公聴会を常に開催し、原子力利用政策の基本方針を立案する委員会であるはずが、骨抜きになっているのかも知れない。是非、解明して欲しい。機能を果たしていないなら、その理由を事故調査委員会は明らかにすべきである。

また、原子力安全委員会を別の組織とすべき理由があるのかも検討して欲しい。基本法で「安全の確保のための規制の実施に関する事項を除く。」と安全については、原子力委員会の企画、審議、決定事項から外れ、安全員会に移った。本来、開発や利用と安全とは一体のものである。安全を理由に方針を変更することがあって良いはずが、安全を外すことは奇妙に思えて仕方がない。例えば、公聴会で、原子力利用と安全を、同時に話をしてはならないとなると、国民を欺いているように思える。

5月18日の記者会見で、首相は「日本の原子力行政は、原子力を進めていく立場と、言わばそれをチェックする立場が安全・保安院という形でともに経産省に属している・・」と述べている。経産省という行政機関は、原子力を推進する機関ではないはず。法に従って、行政事務を執行する機関である。原子力の政策は、原子力委員会が立案し、安全・保安院は制定された法に従い、実施されているかを審査したりする行政事務を行う機関のはず。安全・保安院を調査対象とすることに異議はないが、ずっと重要な組織・機関が存在する。

なお、原子力神話と言われるが、もしあるとすれば誰が作ったのか?国民かも知れないという部分があると思う。1973年に第1次石油ショックがあった。多くの原子力発電所が日本各地に建設され、原発依存が増加したのと一致するように思えて仕方がない。1979年のスリーマイル島事故後でも、原発の建設は続いた。1986年のチェルノブイリ事故の後も、続いた。1987年8月に運転を開始した浜岡3号以後2009年12月の泊3号まで数えて24基ある。平均1年1基である。2004年以降についての期間を限定して、世界における原発建設数を数えると21基ある。一番多いのが、中国とインドの5基で、次いで日本が4基。他は、ロシア、韓国、ウクライナが2基で、ルーマニアが1基である。この背景についても、できれば踏み込めないかと思う。

2) 事故原因の究明

正しく究明して欲しい。組織的な面や法的な部分もそうであるが、技術的な面についても正しく追求して欲しい。単純に想定を超えた津波と結論づけて欲しくなく、次のような点も追求して欲しい。

A. 外部電源が長期間失われた原因。夜の森線で鉄塔倒壊があったが、他の大熊線と東北電力線では鉄塔は倒壊していない。発電所の遮断機が地震で壊れた。外部電源が利用できなかった原因に津波は関係していない。地震である。地震の揺れは、想定範囲に入っているのではないのか。また、5号機と6号機のディーゼル発電機は稼働した。詳細は、分かっていないが、5号機と6号機のディーゼル発電機から1号機~4号機が電源を得られなかったのか?電源車についても、全く同じである。

B. 事故対応ヒューマンファクター。ヒューマンファクターが入ると間違いが生じる可能性あり、自動制御で安全方向に向かうよう制御する。しかし、今回の場合は、交流電源喪失により、自動制御が効かなくなったはず。想定外の大きさであれば、対応できないのが当然とも言える。しかし、一方で、例え、想定外であっても、人間であれば、フレキシビリティーがある。電源車が来れば、電気工事関係者が電線路を新設してでも電力を確保できる可能性がある。4号機~6号機は定期点検で停止中であり、工事関係者が発電所にいた。人間が作った機械である以上は必ず故障する。想定外の事態は発生する。最後に頼れるのは、その機械設備をお守りしている人達の能力である。要は、原子力発電は巨大技術でありすぎ、最早ヒューマンファクターで立ち向かうことができないのか、このことについも検討を挑んで欲しいと思う。

3) 原子力事故調査委員会の人選

原子力関係者が含まれておらず、欠陥委員会であると思う。原子力関係者がいると、身内の利益を重んじ、正確な事故原因究明が困難との発想と思う。しかし、素人では、専門家が述べることに対して、それを批判できず、また問題点指摘もできず、間違っていても訂正できない。真実が浮かんでこない恐れがある。

専門家も入れて、正しい人選をすることが重要である。ちなみに、現在のメンバーを官房長官5月27日発表で、書き上げると次の通りであり、偏った人選のように思う。

畑村洋太郎:東京大学名誉教授、工学院大学教授
尾池和夫:前京都大学総長地震学の専門
柿沼志津子:放医研
高須幸雄:元外交官
高野利雄:元東京地検特捜部検察官
田中康郎:刑事裁判を中心とした元裁判官
林陽子:弁護士
古川道郎:福島県の川俣町長
柳田邦男:作家
吉岡斉:九州大学の副学長で科学史や科学基礎論が専門

4) 公開

飛行機事故や列車事故の事故調査より重要な事故調査である。「100年後に見ても恥ずかしくない、よその国から見ても納得してもらえる中身(の報告)にしたいと」畑村委員長が述べたと報道されている。100年後ではなく、現在の我々に対する報告書でなければならない。もし、100年後と述べたのであれば、委員長を辞任いただいた方が良いように思う。よその国についても、同様である。

日本国民が自らの選択を実行するに辺り、高い信頼性を置いて判断できる材料を与える報告書を作成願いたいのである。

原子炉は事故が起こると、その被害は重大であり、これは真理であるはず。事故の可能性をゼロにはできない。ゼロに近づけることはできる。どれだけゼロに近づいているかは、評価による。正しい評価を国民は欲している。そのための、信頼できる情報を与えて欲しいのである。

どうすればよいか。公開である。国民から質問や情報公開請求を受け、それに全て答えるのである。もし、その回答を公開することに支障が生じる場合は、その支障が生じる理由を答える。会議も、特別な事情がない限りは、公開する。今回の福島事故は、多くの人が、政府・内閣は情報操作をし、真実を隠したと思っている。事故調査報告は、信頼性に依存することを忘れてはならない。

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の事務局は内閣府におかれる。そう思って、内閣府のWebを探したが、何も見あたらなかった。やはり失格調査委員会と思える。

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