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2011年6月10日 (金)

村上裁判インサイダー取引有罪確定(最高裁上告棄却)に思う

村上世彰被告と彼が実質経営者である(株)MACアセットマネジメントが、証券取引法違反に問われた刑事裁判で、被告人の上告が6月6日に最高裁で棄却され、東京高裁の懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、追徴金11億4900万円の二審判決が確定した。判決の裁判所Web及び判決文は次の所にある。

裁判所Web 最高裁判所判決文

日経は、この判決について、次のような記事を掲載していた。

日経 6月8日 村上裁判が市場に残した課題

1) 判決文を読む際の参考

どのように考えるか、時間があれば、判決文を読むことをお奨めします。(もしかすると、実話なので、小説よりおもしろい。)その際、Webで公開されている判決文は固有名詞がA、Bのようにアルファベット大文字になっている。一方、本事件は、報道等で何度も取り上げられており、固有名詞で読む方が、頭に入りやすく、推測が入るが、A~Gまでの判決文の固有名詞を書いておきます。

A (株)MACアセットマネジメント
B 村上世彰
Bファンド 村上ファンド
C ニッポン放送
D フジテレビジョン
E 堀江貴文
F ライブドア
G 宮内亮治

東京高裁の判決は、裁判所Web 判決文にある。

2) 経緯

本件の経緯を、村上インサイダー取引に直接的に関係ない出来事も参考として加え、時系列で並べると次の通り。

2001年頃より、村上世彰は、村上ファンドによるニッポン放送株式取得を開始

2004年9月10日 フジテレビジョンは、銀行5行からのニッポン放送株式取得を発表

2004年9月14日 村上世彰は、ニッポン放送株式の取得が、更に大きな投資利益拡大につながると判断し、追加購入を決定。

2004年9月15日 村上世彰は堀江貴文、宮内亮治と会談し、ニッポン放送株式について、村上ファンドが18%保有していることから、ライブドアがニッポン放送株式を3分の1取得すれば、ニッポン放送の経営権を掌握でき、たとえ失敗してもフジテレビジョンによるニッポン放送株式の公開買付けなどに応じればリスクはないとして、ニッポン放送株式の大量買い集めを働き掛けた。また、ニッポン放送はフジテレビジョンの株式22.5%を保有しており、フジテレビジョンが複雑に絡み合っていることも説明した。なお、この時点で、村上ファンドが実際に保有しているニッポン放送株式は、11.93%であった。(高裁判決文)

堀江貴文、宮内亮治は、ニッポン放送株式取得のための資金調達検討に入った。

2004年11月8日 この日の会議で、村上世彰は堀江貴文、宮内亮治から、資金の目処が立ったとして、ニッポン放送株式の3分の1取得を目指す旨の決意表明をするのを聞いた。

2004年11月9日~2005年1月26日 村上世彰は、MACアセットマネジメントが運用する投資事業組合等の名義で、ニッポン放送株式合計 193万3100株を合計約99億5千万円で買い付けた。

2005年1月17日 フジテレビジョンは、ニッポン放送株式の5950円でのTOBを発表。

2005年2月8日 ライブドアは、転換社債型新株予約権付社債(MSCB)800億円の発行を発表。引受先はリーマン・ブラザーズ証券。

2005年2月8日 ライブドアは、ニッポン放送株式5%取得を発表

2005年2月8日 ライブドアは、ToSTNeT-1による時間外市場内取引でニッポン放送株式972万270株(29.6%)を取得。(うち、300万株強は村上ファンドより6050円/株で取得)

2005年2月10日 村上ファンドは、ニッポン放送株式157万8220株を市場で平均8747円/株で売却。

2005年2月23日 ニッポン放送は、フジテレビジョンに新株予約権の発行することを発表

2005年3月11日 東京地裁による新株予約権の発行差止仮処分 3月23日東京高裁差止命令

2005年3月24日 ニッポン放送は、保有しているフジテレビジョン株式をソフトバンク・インベストメントに貸出(フジテレビジョンのライブドア支配を当面回避することが目的)

2005年3月25日 ライブドアは、ニッポン放送株式の50%超取得に成功

2005年4月18日 フジテレビジョンとライブドアは、業務提携に合意。結果、ライブドアはニッポン放送株式をフジテレビジョンに譲渡。(譲渡価格は、TOB価格5950円より350円高い6300円/株で、1034億円)フジテレビジョンは、ライブドアの440億円の第三者割当増資を引き受け、12.75%株主となる。

3) インサイダー取引

インサイダー取引とは、内部の人間しか知らないことを利用して、有価証券の売買で利益をあげることです。東証の説明はここにありますが、取締役等が、会社の公表前に、自社の株式を有利に売買するようなことで、当然禁止されている。村上事件では、対象となった株式はニッポン放送株式であり、ライブドアが大量買い付けすることを知って(ライブドアを焚き付けて、そう仕向けたと言えるが)、ニッポン放送株式を買付し、有利に売り抜いたことが問われたのであり、少々複雑である。

しかし、一般の投資家がアクセス不可能な情報を、自分の投資で有利に売買し、言わば、一般投資家にババを引かせる行為は、禁じられるべきであり、罰則の対象にすべきであると私は考える。さもなくば、金融市場、証券市場の正常な発展につながらず、投資家に不利になり、それは同時に企業の資金調達にも不利益をもたらす。そのような観点で、今回の最高裁判決は、歓迎すべきと考える。

一方、日経が指摘した主張・論点は変であると考える。日経は最高裁判断として「公開買い付けなどを会社の業務として行う旨の決定があれば足り、実現可能性があることが具体的に認められることは要しない」と書いているが、最高裁判決文では「上記1(5)から(8)記載の事実に照らし,公開買付け等の実現可能性が全くあるいはほとんど存在しないという状況でなかったことは明らかであって,上記「決定」があったと認めるに十分である。」と述べられており、日経の記述は、少し言い過ぎと考える。

もう一点で、日経は「最高裁が示した基準には、インサイダー規制の範囲が広がり過ぎる」と書いているが、これも上の読み方の問題と、何を実質的な判断基準とするかであると考える。一般投資家にとっては、杞憂に属するが、その会社以外の上場株式への投資行為・活動を目的として、特定の会社の経営者に接近し、懇親を深めることは、問題があると考える。

「もの言う株主」については、私は、大いにものを言って良いと考える。しかし、基本的には、その会社の事業に関してであり、その会社以外の上場株式への投資についてあれこれ言うことは、インサイダー取引に関係する場合があると考える。

4) 市場主義・株式投資

市場主義に賛成であり、発展させていくべきと考える。しかし、ルールなき市場主義は存在してはならないのであり、適正なルールを常に追求し、発展させていかねばならないと考える。

一方で、このライブドア・ニッポン放送株式事件については、村上インサイダー取引以外にも考えさせられることは多い。インサイダー取引の結果、村上世彰、MACアセットマネジメント、村上ファンドは巨額の利益を手にした。最低50億円、もしかして最大100億円位あったかも知れない。

リーマン・ブラザーズも大もうけをしたはず。MSCBで10%以上利益確保したはずと思うから、やはり100億円は手にしただろうと思う。(もしかして、他のInestment Bankや証券会社で、資金使途を知った時に、他の取引への影響を恐れて、尻込みしたところが、あったかも知れないが)

これらの利益は、どこから生み出されたかと言えば、一般投資家の損失でしかなかったはず。ニッポン放送株式は、上場廃止の懸念から株価は下がった。ライブドアは、MSCBの株式転換により発行株数は増加し、株式価値は希釈化した。

では、どのようなルールがと言っても思いつかない。リーマン・ブラザーズがしたことはライブドアとの合意による資金提供であって、2者間の合意である。もし不満なら、そんな合意をするような経営者がいる会社の株を保有しているのを止めればよい。それが市場原理だと言える。投資の判断に経営者についての評価が含まれるのは、当然である。

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