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2011年8月25日 (木)

放射能に関する整理メモ(その1)

東日本大震災から5月半になる。福島第一原発の放射能漏れは、ある程度まで落ち着いてきており、沈静に向けて関係者が今後とも努力することにより、何時の日か、収束することと期待する。しかし、原発から飛散した放射性物質は、幾分か離れた土地でも、多少は留まり、その放射能汚染が持続する可能性はある。いずれにせよ、これから放射能汚染や除染が一つの大きなテーマになると思うので、我が知識の範囲内で整理メモを書くこととする。

1) 放射能

本当は、放射能は存在しない。存在するのは、放射線と放射線を出す放射性物質である。でも、放射能という言葉は、放射性物質と放射線を総称して使用するには、便利であり、やはり、総称として放射能という言葉も、私は、使うこととする。

2) 放射線

放射線と言っても、何か線があるわけではない。何かと言えば、このATOMICA辞書が簡潔な説明であるが、アルファー線、ベータ線、ガンマ線、中性子線、陽子線等である。目に見えないと言われるが、完全に見えないのはベータ線である。何故なら、ベータ線は電磁波・X線・光子の類であり、エネルギーは持っているが、質量がないからである。

では、他のアルファー線、ベータ線、中性子線、陽子線はと言うと、それぞれ、陽子2個と中性子2個のヘリウム原子核のアルファー線、電子のベータ線、そして中性子、陽子と言った原子を構成する物質である。ちなみに質量(重量)は、アルファー線の粒子が6.65x10-24グラム、中性子線と陽子線はその4分の1、ベータ線は更にその1836分の1である。(とても小さくて普通では見えない。)

3) 放射性物質

放射線を出すのが放射性物質です。放射性同位元素という言葉もあり、ほぼ同一の意味です。原子を構成する主体は、陽子、中性子、電子であり、陽子の数により元素が決まる。元素が異なれば、陽子の数が異なる。しかし、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子が存在し、この中で不安定な陽子・中性子・電子の構成割合となっている原子は、より安定する原子に変化・変移・崩壊しようとする。

この変化が、核崩壊と呼ばれるアルファー崩壊やベータ崩壊、あるいは核異性体転移である。核崩壊の際には、放射線を出す。安定的でない原子が核崩壊するのであり、このような原子が放射性同位元素と呼ばれ、放射性物質である。核種というのは、それぞれのことであり、安定的な原子も放射性同位元素も全て含まれる。一つの元素について、実は極めて多くの核種が存在する。例として、これがセシウムの元素テーブルであり、多くの異なった中性子の元素が存在する。安定的な構成のセシウムはCs133であるが、現在福島事故の結果各地で検出されている放射性物質はCs134やCs137である。セシウムの陽子の数は、55なので、それぞれの中性子の数は、78、79、82である。

ところで、核崩壊は核分裂ではない。原発は、ウラン235の核分裂エネルギーを利用している。ウラン235は、中性子を捕獲して、核分裂をするが、核分裂の結果、2つ(時には3つ)の元素に分裂する。どのような元素かというと、ATOMICAには、このようなテーブルがある(FPは、Fission Products:核分裂生成物の略)。放射性物質は、自然界にも存在するが、核分裂の結果、大量に作られる(出来てしまう)。実は、この大量の出来ちゃった物質の処理は、原発を利用する際の、従来からの大問題で、今後も未解決の大問題です。

4) ベータ崩壊

アルファー崩壊をするのは、ラジウム、ウラン、トリウム等元素番号の大きい原子である。

福島事故で名前があがっている核種は、ベータ崩壊をする核種であり、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137、テルル129m等があり、年代に測定に使う炭素14もベータ崩壊をする核種である。ちなみに、これらの核種についての表を次に作成した。(参考にした日本原子力研究開発機構 核データの表のホームここはである。)

ベータ崩壊の際には、ベータ線を出すと共に通常はガンマ線も出す。厳密には、セシウム137はベータ崩壊に際して、95%がバリウム137mを経由し、バリウム137mがガンマ崩壊をしてバリウム137に核異性体転移する。バリウム137mの半減期は2.55分。

いずれにせよ、上の表に掲げた崩壊後の元素は、安定核種である。表を眺めると、当然のことであるが、半減期の短い核種は、少量で同じ数の核崩壊(ベクレル:Bq)が生じる。また、崩壊に際して、崩壊数が同じでも、放出するエネルギー量は核種により異なる。(ベクレルが同じでも、シーベルトは異なる。)

次に、半減期についての参考が次のグラフです。

Csiint20118_2

セシウム134の半減期は2.06年である。セシウム134は2.06年を経過すれば100が50になるが、その時点で半減期30.04年のセシウム137は、100が95.3にしかなっていない。

実は、これが、除染問題である。放射性物質は、減少しない。核崩壊することにより安定し、核崩壊は時間のみに左右される。熱を加えても、叩いても、空気を除いても、埋めても、何の変わりもしない。除染とは、ただ別の場所に移動させるだけであり、新たな場所で、放射線を出す。初期の時点で、ヨウ素131が水道水等で検出されたが、ヨウ素131は半減期が8.02日であり、既に百万分の1程度に減少している。テルル129mも同様で、30分の1程度になっている。今後のこととして、10年程度では、90%程度にしか減少しないセシウム137のことも考慮した対策が必要であると思う。

なお、参考まで、核分裂とは、たった一つの原子で200MeVと言われており、セシウム134で2MeV程度なので、核分裂は約100倍のエネルギー(熱)を出す。

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