« 原子力事故を官邸が独断 | トップページ | オリンパスは、謎が深まるばかり »

2011年10月31日 (月)

TPPについて

TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership)の交渉参加について、できるだけ早期に結論を出すと、野田首相は10月28日の第179回国会における所信表明演説で述べています。(演説はここ

1) 経団連の賛成論

企業発展、産業発展を、国境を越えた市場原理で追求すると考えた場合、TPPのような推進方法は、望ましいと考えて当然と思います。経団連の決議書は、短いが、これのはずです。

2) 農協

JAグループの「なるほど!なっとく!TPP」というパンフレットがここにある。これが農業関係者の意見の集約と言えるように思う。即ち、日本は既に相当多くの農産物の輸入が自由化されており、これ以上の解放は、日本農業の破滅につながるとの意見が主体と考える。

3) 医療

農業と医療分野で反対論が多いと理解する。ちなみに、日本医師会の意見はこれである。一方このことについて、日経社説 10月25日 丁寧な説明でTPPへの誤解なくそう は、「医療・保険に関しては、混合診療の解禁や企業の医療参入が進み国民皆保険制度も崩壊しかねないと心配する声がある。このため医師会など医療関係者は交渉参加に反対しているが、実際の交渉ではこれらは協議の対象ではない。」と述べている。

しかし、医療に携わっている医師等の心配は、「TPPにより、株式会社の医療参入など規制緩和が実施されるようなことになると予想され、民間企業や投資家にとって魅力的な市場となるかも知れず、それがお金がなければ医療が受けられないことにつながり、国民皆保険制度も崩壊しかねない。医薬品にしても、アメリカは価格を低く抑える制度の見直しを迫り、市場価格となる可能性がある。締結されれば、医療分野にも大きな影響が考えられる。」と言うようなことと理解する。

4) 私の考え

実は、TPPにある本質は、日本が追求していく将来像と思う。即ち、世界中の人々が交流し、平和な世界を築く。民族や国境による差別がない。ヒトもモノもカネも自由に動き、皆が豊かになる。しかし、そんな世界が、そう簡単に来ることはない。現実には、国境があり、格差があり、産業構造や人々の暮らしも国・地域・場所・階層により異なる。急激に変化を求めても、格差や歪みの拡大となり、失敗につながる。

理想を求めることを止めてはならない。少しでも、前進させる必要がある。その一環としてTPPを捕らえるなら、交渉に参加すべきとなる。一方で、TPPが全てではない。WTOを、どう考えるか?二国間交渉で進める方法もある。また、TPP交渉に今回参加せずとも、いずれは同じような事態が発生するであろうし、世界における国境は低くなり、ヒトもモノもカネの動きは活発化していくことは間違いがないと思う。

TPPもそうであるが、背景に政治不信があると思う。政治家が、自分自身の都合の良いように動き、国民の幸せを二の次にしてしまう恐れである。民主党は、政権を取ったら裏切ったとの思いをしている人もいると思う。そして、多くの人は、政治家とは、そんなものだと思っているようにも感じる。TPP交渉参加よりも、政治を国民の手に取り戻すこと。国民が参加する政府を樹立することが重要と思う。その一つの手法は、私には、小選挙区制を無くし、中選挙区なり、比例代表を多くすることであるが、それのみで解決はしない。要は、情報開示を進め、国民の意見を反映する制度をつくっていくことである。

農業問題も、TPPに係わらず、高齢者問題、後継者問題、小規模農業からの脱出問題、日本農業の競争力問題がある。そして、これらと共に、国土保全、緑地確保も重要である。里山が美しいと言っていても、それだけで維持することは不可能なはず。工業化の発展と共に、手を付けねばならなかったことを、そのまま置き去りにしている。農業従事者の選挙投票と政治家との問題もあるが、それだけではない。製造業、建設業、商業他も、兼業農業従事者の安い人件費を利用するのに都合が良かったりした。複雑に糸が絡み合っている状態である。そんな中、誰が今後の農業プランを作っていくのか?農水省の役人や、政治家に任せると、圧力に負け、結局は良くならないように思う。やはり、農業従事者自身が、TPPに耐える農業を作るにはどうするか、日本の農業はどうあるべきかのプランを作り、国民の支持を得るべく、それを開示し、国民・消費者を含めた議論をして、プランを改良していくべきと考える。

政府補助金、税金投入が増加してもよいと思う。合理的であれば、国民・消費者・納税者も賛成するはずである。また、合理的なら、農産物価格が安くなり、安全性が増し、おいしくなると思う。

医療保健は、その国の制度であり、国会で決める制度であり、その国の主権に属することと考える。その意味で、医療保険がTPPで崩れることはないと考える。しかし、医療保険(国民健康保険、健康保険、公務員共済等、後期高齢者医療保険、介護保険)の財政は危機状態である。さらに高齢化と先進医療の費用増加により、瀕死状態に近々なってしまうことを懸念する。従い、TPP反対なんて悠長なことを言ってられないほどの危機状態であるように思う。

ちなみに、10月25日に最高裁で混合診療に関する判決があった(ここ参照。)。この最高裁判決は、単純に混合診療を否定したのではなく、特定療養費に係る制度により保健対象外診療を保険給付対象としていることがある。混合診療については、現制度の不明瞭さもあるが、医療費財政を国民的議論で進める必要性を感じる。株式会社参入について、医療法は、医療法人は社団法人または財団法人と定め(39条)、54条で剰余金は配当禁止としている。ちなみに、法人税はかかるのである。特定医療法人でなければ、相続税も出資者に課される。複雑であるが、医療を金儲けの道具とすることにつながるとして、株式会社の参入を認めないとする人も多い。

それからすると米国の医療費は、日本の倍ぐらいなので、日本の制度を何とか維持して欲しい。しかし、どのようにすれば、良い医療が、安心して、安い費用で受けらるることを維持できるのかよく分からない。国民的議論が必要であるが、それは正しい情報が適切に開示されて可能となる。国により、制度の差が大きい。自由化を進めた国があるのであれば、その国の良い点や悪い点等の情報を知りたい。米国では、高齢者と低所得者以外は、医療保険は民間保険会社である。このことについて、ある時聞いたのは、その人が加入している保険により選択できる治療方法や医療機関が異なる。持病があれば、保険料は高くなり、安い保険料しか払っていなければ、保険ではここまでしか認められないとなる。民間保険であれば、当然と言えるが、制度として何がよいのか、財源に限りがある以上、選択をせざるを得ない。

5) 結論

TPPをTPPの問題としてのみ受け止めるのは、解決を誤ると思う。深い問題を含んでいる。これを機会に、よりよい社会とよりよい世界を目指して一層の努力をしていきたい。

|

« 原子力事故を官邸が独断 | トップページ | オリンパスは、謎が深まるばかり »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/200131/53132541

この記事へのトラックバック一覧です: TPPについて:

« 原子力事故を官邸が独断 | トップページ | オリンパスは、謎が深まるばかり »