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2011年11月 6日 (日)

原子力発電コストの固定費と変動費他

原子力発電のコストについては、前提条件をおいて、その前提条件でコスト計算をし、同様な前提条件下で、他の火力発電のコストについても計算し、比較している。新規に建設する場合には、一つの方法と言える。しかし、前提条件を正しく設定できるかと言えば、想定にならざるを得ないのであり、絶対的な正しさはない。他の方法の一つは、有価証券報告書等から実績値を拾い出して、比較・分析する方法である。この方法は、過去について実績として基本的に正しい答えが得られるはず。しかし、原子力発電については、必ずしもそうではない。

例えば、資産除去債務費用がある。資産除去債務費用とは、有形固定資産を将来破棄するに際し、費用が発生する場合、その費用は収益対応で認識すべきと考えれば、減価償却のように処理すべきである。2010年4月から資産除去債務に関する会計基準が適用となった。原子力発電設備については、従来から引当金処理(原子力発電施設解体引当金)で会計処理をしており、大きな差はない。しかし、将来の資産除去債務・費用の金額を、どこまで正確に見積もれるか、はなはだ怪しい。運転による高レベル放射性破棄物の処分地も決まっていない。原発とは、大量の放射性破棄物を生み出す。海洋投棄は出来ず、他の国が引き受けてくれるのではない。原発とは、怪しげなるモノである。

それはさておき、それでも有価証券報告書が前提も明確であり、他の手段よりも信頼性が高い情報が得られると考えられるので、有価証券報告書からの情報で分析を実施する。原発について議論をする際の参考になればと思う。

1) 東京電力の原子力発電コスト

先ずは注目の東京電力の原子力発電コストである。

Tepconclr201111

横軸に原子力の発電量、縦軸に原子力の発電コストをとってグラフを書いたが、発電量が変動しても、コストの変動割合が小さいことが読み取れる。グラフ中の実線は、直線による近似線であり、発電量ゼロであっても、3000億円付近になりそうである。

このグラフから、kWh当たりの単価を考えると、80,000GWhで5500億円なので単価6.9円となるが、60,000GWhで4800億円なら単価8.0円である。2011年4月から8月までの東京電力の原子力の発電量は16,419GWhなので2011年度通年の発電量は30,000GWh程度と想定した場合、発電単価は、総コストを3,500億円とすると、発電単価11.7円となる。

2) 日本全体の原子力発電コスト

日本の54原発、合計48,847MWの設備は、一般電力会社9社と日本原子力発電1社の合計10社で保有されており、いずれの会社も有価証券報告書を発行している。10社の原子力発電コストを抜き出して、グラフを作成したのが次である。

Nuclear201111a_2

発電量は約250,000GWh。それに対する発電コストは2兆円弱であり、発電量の変動に対して大きな差はない。

念のため、各社の原子力発電コストを比較してみる。横軸は、発電量であるが、年間発電量を年間時間数と設備出力で除した設備稼働率とし、縦軸は年間コストを設備出力で除した設備kWあたりのコストとしてグラフを描くと、次の通りである。

Nuclear201111b

発電量(設備稼働率)による発電コストの変動は少なく、設備出力で割り算して算出したkW当たりの発電コストが30,000円から60,000円の範囲にある。同じデータを単純に発電量kWh当たりの発電コストでグラフを書いたのが次である。

Nuclear201111c

固定費が大きく、変動費の割合が小さい場合の、典型的なコストカーブが現れている。

3) 原子力の発電コストコスト計算式

年間kW当たりの発電コストのグラフで描いた近似線の式は、次である。

発電コスト(円/年・kW) = 28,000円 + 20,000円 x 稼働率(0.00)

この式を、発電コスト(円/kWh)に変換するには、年間時間数8760時間と稼働率で割り算をすればよいので、次の式となる。

発電コスト(円/kWh) =            28,000円         +  20,000円
                                  8760時間 x 稼働率(0.00)            8760時間

これらの式の計算結果をグラフに示したのが、上の2つのグラフの実線である。ちなみに原子力のkWh当たりの発電コストは、この式で計算すると稼働率70%と80%の場合は、6.85円と6.28円となる。もし、50%なら、8.68円となる。

4) 火力発電の場合

火力発電の場合の発電コストを東京電力と一般電力10社及び卸売電気事業者の電源開発の11社合計についてのグラフを以下に掲げる。

Thermalg201111tep

Thermalg201111total

燃料費を除く発電コストは、ほとんど変動していないが、燃料費を含めると大きな変動がある。即ち、燃料費の変動が大きく、且つ燃料費がコスト中に占める割合が大きいのである。燃料費の変動は、発電量増減に比例するコスト増減と燃料の市場価格の変動の2つが主要因である。

各社別に比較するために、kWh当たりの火力発電コストについて、燃料費を除く場合と、含む場合について、2008年度、2009年度、2010年度についてグラフを作成した。

Thermalg201111comp_2 

ある一定の範囲に入るが、電力会社による差は存在する。例えば、電源開発の発電コストは2008年度8.33円、2009年度7.03円、2010年度6.69円と最も低い。その理由としては、全てが石炭火力であることが関係している。CO2問題との関係で、新規火力はどうするかという問題もあるし、部分負荷運転を原則実施していないことも関係している。一方、一番高いコストになっているのが関西電力であるが、原子力発電の割合は多い。原発は、固定費割合が大きいため、稼働率を上げることが、単価を下げることにつながる。そして、原発稼働率の上昇は、火力発電の稼働率低下につながる。この関係は、保有する設備構成や各発電機の性能等にも関係し、複雑である。

原発の運転は、常時最大出力で運転している。これは、稼働率を上げる目的もあるが、安全運転確保の為が重要である。このため、夜間は需要より発電量が大きくなり、電力貯蔵のため揚水発電所による揚水運転で水の位置エネルギーとして蓄えている。原子力発電コストを考える場合に、揚水発電に関するコストも考慮する必要がある。なお、揚水発電は電圧や周波数制御の目的も果たしており、大きな要素として原子力発電が関係しているが、原子力のみの目的ではない。

5) 福島事故のコスト影響

内閣府原子力委員会に、2011年9月27日に原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会が設置され(ここ参照)、この小委員会で「原子力発電所の事故リスクコスト」について討議されている。(このWebから資料等をダウンロード可能)

事故による発電コストの上昇について47協同ニュース 10月25日 原発事故1キロワット時最大1円 原子力委がコスト試算のような報道があった。これは、この委員会資料の17ページの表を伝えていると理解する。計算根拠は、単純に損害額を38,878億円とし、それに想定確立と想定稼働率と出力1200MWを使って計算したのである。

本当にこれで良いのかと、同じ資料の5ページを見ると、福島事故損害費用5兆5千億円とある。本エントリー冒頭のグラフから東京電力の原子力年間コストは5千億円であり、この11倍に相当する。仮に、11年間で負担すると、丁度東京電力の原子力発電コストは倍になる計算である。即ち、3)で計算したコストからすると、6円-7円のコスト増である。

仮に日本全部の原発の費用に見込むべきだとすると、2)のグラフの年間2兆円の2.5倍強に相当する。10年で分担すると年間25%アップとなる。

何故このように大きな差が生まれるかというと、原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会の発生確率が、シビアアクシデント2x10E-3となっており、1000年に2回としている。しかし、現実では、70年代に運転を開始した原子炉において40年でシビアアクシデントが発生した。どこかおかしいように思う。原子力委員会の委員を、理性と常識がある人に、変更すべきではないかと思う。

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