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2012年6月11日 (月)

スマートメーター

日経に次の記事があった。(全てを読むには、有料会員限定となっている。)

6月10日 スマートメーター、東電仕様で3つの課題 他電力と統一せず

スマートグリッドとスマートメーターについては、一度書いてみたいと思っていたので、これを機会に書いてみます。

1) スマートグリッドとは

従来の電力網(送電網及び配電網)は、他のシステムと同様で、経験を積み重ねて、発達してきた。電力は、貯蔵されないので、需要=供給となる。但し、無理にそうしていると言うより、物理的性質により、そうなっているというのが正しい。そして、本当のところは、物理の法則で需要=供給が保たれているのである。もし、供給(発電)が多すぎたり、少なすぎたりすれば、周波数や電圧が物理的性質により変動して、自動的・結果的に需要=供給が成立することとなる。

但し、周波数や電圧が変動すると、電力を利用する側で不都合なことは、生じる。そこで、許容範囲内に収まるように、電力会社の系統運用部門が発電所や変電所に指令を出して、一定範囲に収めている。もし、許容範囲を超えて、ある限界に達すると、安全装置が作動して、安全確保が自動的になされる。停電が生じる。当たり前であるが、電気が流れていないないことは、許容範囲外の電気が流れるより安全である。

ところでスマートグリッドとは、IT技術の発達により様々な計器をディジタルで読み取り、ディジタル信号で処理することができるようになったことを利用することである。過去のアナログ時代よりはるかに効率的なシステムを構築できる可能性がでてきる。そして、信号や記録を公開することにより新規参入や新技術の開発が促進され、良い物がより安く手に入る可能性がでてくる。

ちなみに私にとって、今でも、スマートグリッドの定義として、最も好きな定義が次の米国連邦法(Public Law 110-104 Energy Independec and Security Act of 2007)の1301条である。

SEC. 1301. STATEMENT OF POLICY ON MODERNIZATION OF ELECTRICITY GRID.

It is the policy of the United States to support the modernization of the Nation’s electricity transmission and distribution systemto maintain a reliable and secure electricity infrastructure that can meet future demand growth and to achieve each of the following, which together characterize a Smart Grid:
(1) Increased use of digital information and controls technology to improve reliability, security, and efficiency of the electric grid.
(2) Dynamic optimization of grid operations and resources, with full cyber-security.
(3) Deployment and integration of distributed resources and generation, including renewable resources.
(4) Development and incorporation of demand response, demand-side resources, and energy-efficiency resources.
(5) Deployment of ‘‘smart’’ technologies (real-time, automated, interactive technologies that optimize the physical operation of appliances and consumer devices) for metering, communications concerning grid operations and status, and distribution
automation.
(6) Integration of ‘‘smart’’ appliances and consumer devices.
(7) Deployment and integration of advanced electricity storage and peak-shaving technologies, including plug-in electric and hybrid electric vehicles, and thermal-storage air conditioning.
(8) Provision to consumers of timely information and control options.
(9) Development of standards for communication and interoperability of appliances and equipment connected to the electric grid, including the infrastructure serving the grid.
(10) Identification and lowering of unreasonable or unnecessary
barriers to adoption of smart grid technologies, practices, and services.

2) スマートメーター

米国連邦法の1301条の5項にもあるが、スマートグリッドを実現するために、工場、ビル、家庭他需要者側にリアルタイムで自動読み取りができ、それがセンターに自動で流れるメーターの取り付けが必要となる。日本では、多くの一般家庭のメーターは円盤がぐるぐる回っているアナログメーターであり、検針員が月に一度読みに来て、請求書をおいていく方法である。

これがデジタル化すると、どうなるか単純に車の速度計がアナログからデジタルに変わるようなものだが、センターに情報を送る必要があることから、デジタル通信が加わり、更に時間情報も加わる。果たして、将来的に、どれだけの情報が、どのような頻度で通信されるか、まだ何とも言えない。但し、すでに単なるデジタルメーターなら既に採用されてもいる。電化上手は、時間帯により電気料金が異なるが、これはデジタルメーターだから容易なのである。また、工場等の大口ユーザーのメーターは、通信機能があるないにかかわらず、ほとんどデジタル化されていると思う。

3) スマートグリッドが目指すべき世界

上の1)で書いたのであるが、もう少しイメージを書くと、時間帯別電気料金メニューではなく、自由相場電気供給も可能となる。様々な、電気販売会社から、同じ日でも時間により安い料金の会社を選んで購入するのである。期待と異なり高い値で買わざるを得なかったり、取引が成立せず、その時間については、停電を余儀なくされたりとなるかも知れない。

しかし、電気取引価格が上昇すれば、家庭内でスイッチを切り、稼働中の器具を少なくして、電気代の節約につなげたりと、スマートメーターの情報は自分自身でも入手可能なので、それを積極的に利用してうまく対応することも可能となる。電気自動車の充電は、電気価格の安い時にする。高くなったら、逆に売ることもできる。売りすぎて、今度は走れなかったりして。

充電業というビジネスも成り立つかも知れない。安い価格の時に買い、高い価格の時に売るのである。果たして、充電設備費や保守・運転費用を回収することができるかであるが。いずれにせよ、電気の市場取引を発展させ、合理化を進めるには、欠かせない。その他、需要者が消費を落とせば、その分は他に回せるわけで、発電と同じ効果がある。需要を落として、その分を販売することも可能になる。

なお、検針員読み取りシステムの場合は、月に一度が、妥当であるが、通信機能付きでデジタル化すると、頻度を上げられる。連邦法が言っている完全なReal Timeは、可能であっても、精度等でも問題がある。現在日本の電力取引市場は30分で区切った1日48ゾーンで行っているので、当面はこれと同じ30分ごとの積算電力をデータ通信になるはず。しかし、将来的には、5分とか、あるいは1分刻みになるかも知れない。30分刻みだと、変動しても最終的には合計が一致すればよい。しかし、現実には変動するし、システムの安全上、送配電事業者(とは必ずしも限らないが現状では10電力)が、穴埋めをしている。この穴埋め作業のことをアンシラリー・サービス(Ancillary Service)と呼び、多くの電力市場ではアンシラリー・サービスも売買取引の対象となっている。日本は、30分刻みとおおざっぱなこともあるし、10電力が従来から、言わばどんぶり勘定で、提供してきたサービスなので、取り出すことも難しい面もある。いや、まだそこまで日本の電力取引市場や自由化が発達していないというのが正確かも知れない。

4) 経済産業省スマートメーター制度検討会

経済産業省がスマートメーター制度検討会を行っており、ここに資料がある。例えば、2011年2月28日の報告書もこのWebからダウンロードすることができる。

まだ規格化するまでには、固まっていない。例えば、連邦法(2)にサイバーセキュリティーなる言葉があるが、大量のデータを通信する上で、何が最適かの答えは難しい。とにかく、やってみないと問題が顕在化しない面もある。

ちなみに、一人暮らしの高齢者の安否情報に電力の30分刻みでの使用量データがあれば、その高齢者を見守る人には、とても役に立つはずである。世話をしている親族や市町村の福祉担当が、おかしいと思えば手を打てる可能性がある。あるいは、ケアサービスを会社やNPOと契約し、電力情報を流し、安全を高めることもできる。しかし、不必要に流れると、悪用される可能性もある。単に、機械や情報の純技術的な面以外の社会の制度面での検討も必要である。

5) 東京電力のスマートメーター

東京電力がスマートメーター通信機能基本仕様に関する意見募集を3月21日に発表(ここにある。)し、そこに添付のスマートメーター通信機能の基本仕様はここある。

実は、私は、これを読んで、日経記事ほど問題があるとは思わなかったのである。やはり、試験段階であり、これで決定するのではなく、通信手段すらこれから方向を決めねばならない時期なので、この程度かと思った。

6) スマートメーターの設置者が誰がなるべきか

メーターは、電力会社が検定済みメーターを設置すると言うのが常識であった。そこで、自由化されて、東京電力から関西電力かどこかのPPSに切り替えたとする。その時は、メーターを取り替えるのか?あるいは、自由に次々と供給者を変える場合は、どうなるのか?メーターとは、配電線の先についている物であり、配電事業者が設置するとすれば、配電線を持っている会社なので、東京電力となる。

しかし、将来のことを考えると、よく分からない部分がある。ちなみに、Webで見ると、米国カリフォルニアでは、CAISO(California Independent System Operator)が、スマートメーターの仕様を決定している。

電力は自由化をもっと推進していくべきと考える。現状だと、電気料金値上げなんて、世間から冷たい目で見られる。しかし、本当にそれでよいのかと言えば、それほど単純ではない。この際も、東京電力を思い浮かべれば、良いのかも知れない。電気料金を値上げせずに政府に資金援助をさせても、最終的に、その資金を返済できなければ、将来の税金で穴埋めするだけ。喜ぶのは、現在の政治家や、その他の関係者だけではないか。合理的な負担をしないと不幸な社会が生まれるはず。そして、合理的な負担となる仕組みに約立つのが、合理的な市場による市場取引や価格形成と考えるのです。

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