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2013年1月19日 (土)

DOWAの河川水汚染の社会的責任と損害賠償責任

次のニュースがあった。単にDOWAの問題ではなく、我々の暮らしや環境を守るという観点で捉えるべきと思うので、私の考えを書いてみる。

産経MSN 1月18日 DOWA社が賠償拒否、埼玉県など提訴へ

2012年5月19日に利根川の浄水場でホルムアルデヒドが検出され、大規模な取水制限の結果、多くの地域で上水道が断水となり、多数の家庭にも影響が出た。その原因は、DOWAの事業会社DOWAハイテックからのヘキサメチレンテトラミン(HMT)であることが判明している。埼玉県、東京都、千葉県他がDOWAに対して損害賠償を求めたのであるが、賠償拒否というのが今回の報道である。なお、賠償拒否は、既に予想されていたことであり、次のDOWAの2012年12月26日付の発表を読めば、その論拠も書かれている。

DOWA 2012年12月26日 当社子会社「DOWAハイテック(株)」に対する東京都水道局他12団体からの請求について

DOWAが利根川にHMTを流したのではなく、DOWAが廃液処理を委託した高崎金属工業が原因者であり、DOWAに損害賠償の責任はないとする論拠である。

私の意見では、このDOWAの論理を認めることはできず、DOWAが水道事業者のみならず影響を受けた個人や企業全てに対して損害賠償金を支払うべきであるとする。

なお、DOWAとその役員・従業員に対して刑事罰を求めるべきではない。故意や重過失はないと理解するからである。しかし、民事責任については、過失・無過失にかかわらず賠償責任を負うという考えである。いくら注意しても、過失が無くても、他人に迷惑を掛け、財産を損なう可能性がある。それもあり、損害保険が存在し、車を運転する時のラストリゾートが保険である。化学工場や化学品を扱っている場合、相当の気を使わざるを得ない。DOWAがHMTの処理について、必要な配慮を行っていたかどうか、私として、コメントすることはできないが、原因の化学物質がDOWAのHMTである以上、DOWAが損害賠償責任がないとすることはできない。

化学工場においては、そのプロセスや反応及び原料並びに生成される物質、副産物、廃棄物に関しては多くの企業秘密が存在する。企業秘密を公開する必要ない。しかし、危険物については、万全の責任を持って処理すべきである。廃棄物については、毒性や危険性はないか、汚染する恐れはないか、厳格に対処しなければならない。独自技術のため、自社でしか生まれない物質も存在するのである。DOWAのWebにある社長挨拶には「自社の環境保全に力を注ぐだけでなく、廃棄物処理や土壌浄化、リサイクルの事業活動を通じて循環型社会の形成にも貢献しています。」と書かれている。揚げ足をとるわけではないが、CSRや環境社会貢献活動より、ずっと重要なことが、自社の企業活動により社会に迷惑をかけ、損害・損失を与えないことである。

なお、このDOWAのHMTは、こともあろうか飲料水の水源に廃棄されたのである。飲料水の水源とは、人が生きていくために守るべき貴重な資源である。水源の水質汚染行為については厳しく臨むべきと考える。2012年5月12日のブログに書いたように、利根川のダムはHMTを薄めるため大量放水を実施した。2012年9月には利根川水系において取水制限も実施された。(参考:2012年9月7日 47共同ニュース 関東、11日にも10%取水制限 利根川、貯水量減で)渇水も関係しているが、DOWAのHMTを薄めるために実施した5月19日の大量放水がなければ、9月の取水制限もなかった可能性はあると思う。

参考に、2012年1年間の利根川9ダムの合計貯水量の推移グラフを掲げておく。

Tone8dam2012a
貯水量が5月中旬には450,000千m3近くまで達したが、19日の大量放水の実施により380,000千m3程度に減少し、6月初旬に400,000千m3強まで回復したも、それまでであった。一方、9月には130,000千m3弱にまで貯水量は減少した。利根川8ダムと呼んでいるのは、矢木沢、奈良俣、藤原、相俣、薗原、下久保、草木の7ダムと渡瀬遊水池である。

このDOWAのHMT問題は、単にこの事件に限定すべきとは思わない。企業活動が高度化し、新分野が生まれれば、リスクは増大する。企業活動を制限することは社会の発展、社会の幸福につながるわけではない。制限するのではなく、無過失であっても、万一損害を与えた場合は、相応の損害賠償を行うという社会の責任体制を構築すべきと考える。そのような最高裁判決が欲しいと思う次第であり、埼玉県、東京都、千葉県他の地方自治体には最高裁まで頑張って欲しいと思う。

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