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2013年3月22日 (金)

イラク戦争開戦から10年

米国がイラクへの戦争を開始した日が2003年1月20日であり、あの日から10年を経過した。このブログで多くの場合、新聞記事のリンクを掲げており、今回は東京新聞の3月20日の社説へのリンクとする。

東京新聞 3月20日社説 イラク開戦10年 幻の「大義」が問うもの

21世紀の戦争を考える際にイラク戦争は、そのための参考としての教訓を多く残していると考えるので、思うことのいくつかを書いてみる。

1) 帝国主義戦争の側面

帝国主義戦争とは、大資本が更なる資本の増殖を求めて引き起こす戦争であるとするなら、実はイラク戦争もその範疇に属すると考えられる面がある。すなわち、イラクの原油をめぐるオイルメジャーを中心とした大資本が、その増殖を目的として引き起こした戦争という観点である。将来にわたって、検証されねばならない課題であると考える。なお、現在のイラクの原油生産量は、OPEC Monthly Reportによれば2013年2月は日量3,062千バレルの生産であった。各国別の比較としてBP Statistical Reviewの2011年の生産量を示すと以下のグラフとなる。(原油生産量は情報源により微妙に数字は異なる。)

Worldoilprod2011a
ピンク色の部分がイラクであり、世界の3.3%を占める。日本の石油消費量は2011年において日量4,418千バレルなので、イラクの日量3,000千バレルは、その70%弱であり、かなりの量と言える。イラクの2000年以降の原油生産量をグラフに描くと次の通りである。(左軸がイラクで、右軸が世界生産。単位は千バレル/日である。)

Iraqoilproduction2013a
戦争があった2003年は落ち込んでいるが、順調に推移している。なお、日量3,000千バレルとは、金額にすると現在の原油価格100ドル強で年間約10兆円である。この金は、どこに流れているか。その答えの一つは、Production Share Agreement(PSA)のオペレーターとなっている国際石油資本オイルメジャーへである。それ以外にも群がっている人たちがいると考えて良いと思う。

2) イラクにもたらしたもの

冒頭に掲げた東京新聞社説には、「イラク側犠牲者は兵士、市民合わせて十数万人との民間試算はあるが、正確なデータすらまだない。」とある。今も、戦争の結果引き起こされた治安の不安は継続しており、犠牲者は続いている。CNNの3月19日のニュース イラク戦争開戦から10年、イラク国民の苦しみ続くを読んでも、その悲しみは深い。日本の外務省の海外安全ホームページのイラク地図を見ても「退避を勧告します」が大部分である。これを、アルジェリアの地図と比較すると分かると思います。

イラクの治安の悪さはスンニ派、シーア派、クルド人の対立から生じている図式で済ませられるほど単純ではないと思う。元々、スンニ派とシーア派は仲良く暮らしていたのだから。米国他の多国籍軍による侵攻で多くのイラク人が犠牲になった。やむを得ないと考える人も当然多くいると思うが、親族や友人を殺されたなら、その恨みは大きい。そんな怨念が残っている社会は、不幸である。まして、約10兆円の原油収入を、人口33百万人で割れば、1人あたり年間30万円である。しかし、大部分の人は貧しい。産業が戦争で破壊され、悪い治安は復興の妨げになっている。産業がなくては、働いて収入を得ることもできない。

イラクも何時の日か、復興を果たし、繁栄する日がやってくると思う。しかし、心傷む戦争である。

3) イラク戦争の大義名分

正義無く攻め込んだ戦争であったと思う。米国が理由としたのは、大量破壊兵器の存在であったが、何を大量破壊兵器としたのかさえ不明と思う。濃縮ウランは元々保有していたし、戦争の理由にならない。国際査察で解決すべきことである。毒ガスは、イランとの戦争で使用しており、考えればオーム真理教ですら保有していた。外交で解決すべき事項を解決しなかった悪魔の戦争だったと思う。

9.11の結果生じたアメリカ人の不安心が引き起こした戦争であったと思う。9.11は、戦争では解決しない。もっと、地道な努力・活動によってしか解決しないことと考える。アメリカ人は、イラク戦争から学ぶべきこととして、何をあげているのか、CNNの3月11日の記事 イラク戦争で得られた5つの教訓あたりが代表的なアメリカ人の考え方であろうと思う。

日本は、何故イラク戦争を支持したのか。考えるべき問題と思う。屁理屈戦争であれ他国の戦争を止めさせるのは簡単ではない。しかし、不支持を表明することは簡単である。証拠もないのに、あるとして国民に嘘をついた当時の日本の政権は批判されるべきである。ここに冷泉彰彦氏によるNewsweekの記事「開戦から10年、イラク戦争が変質させた日米同盟 」があり、その中で冷泉氏は「日本が支持することはブッシュ政権に「恩を売る」ことになるという計算」との表現を使用している。

政治家とは、権力者とは、非常に恐ろしい人々であると思います。

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