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2013年5月24日 (金)

それほど甘くはない米国のガス

米国のシェールガスが日本に来ると各社が報道していた。

日経 5月18日 シェールガス、17年にも日本へ 米政府が輸出解禁

資源エネルギー庁までが、次のような発表をしていた。

資源エネルギー庁 5月20日 米国フリーポートLNGプロジェクトの輸出承認について

こんなにうかれて良いのだろうかと思う次第である。

1) 日米ガス価格

日本のLNG輸入価格と米国のガス価格のチャートを書いた。

Lng20135a

基本的には米国の方が安かったのであるが、2010年以降は米国でガス価格は安くなった。しかし、日本のLNG輸入価格は高止まりであり、現在は百万BTUあたり14-16米ドルぐらいである。一方、米国の天然ガスの代表取引銘柄であるNYMEXのHenry Hubは5月23日でSpot4.18米ドルなので約3分の1である。

2) 価格は需要と供給で決定される

ガラパゴス諸島ではともかくも世界では需給が価格を決定するのである。すなわち、米国のガス価格は米国市場の需給で決まっているのである。シェールガス効果により供給が大きくなり価格が下がった。日本のLNGの輸入価格は長期契約の契約価格が主体であり、原油価格にスライドしている部分が大きい。次のチャートは日本、欧州、米カナダのガス価格の推移である。

Lng20135b

米国とカナダはガスパイプラインが繋がっており、ほとんど同一の市場と言える。ヨーロッパについては主要ガス供給国がロシアであり、ロシアのガスがパイプラインでヨーロッパ各国に繋がっており、そしてヨーロッパの中に北海ガス田も存在する。日本LNGと同一の市場と言えるのが韓国・台湾である。そして、この日韓台の市場に中国とインドも加わってきたのが実情である。即ち、ガスをLNGとして輸入する場合には、長期契約とならざるを得ず、その結果として、同じ市場の仲間になっている。

なお、中国はロシア産のガスをパイプラインで輸入することが可能であり、必ずロシア産ガスとLNGとを上手にかみ合わせてうまく購入する努力をすると思う。インドも、将来イラン産ガスを輸入するかも知れない。そうなるとパキスタンをパイプラインが走るが、パキスタンもその恩恵にあずかるなら問題はない。インドは、アフガニスタンの治安が回復すれば、トルクメニスタンのガスという魅力あるガスを入手できる可能性がある。

結局は、日本・台湾・韓国が一番高いガスを使い続ける可能性が高いと思える。

3) 高く売れる相手に、わざわざ安く売るだろうか

暴騰のチャートにあるようにLNGも4ドルぐらいの時があった。供給コストはその時と変化はない。16ドルで売れれば大もうけをしているのである。資源エネルギー庁の発表には、「一般に液化に約3ドル、輸送に約3ドル」と言っているが、普通の人ならおかしいと思うはずである。

例えば、ここに千代田化工の2012年1月13日のオーストラリア・イクシスLNGプロジェクト受注の発表がある。この中に、年840万トンのLNG液化プラントを150億米ドルで受注したことが書いてある。この150億ドルからLNG液化コストを推定すると百万BTUあたり2.5-3.0米ドルぐらいである。しかし、このNY Times5月17日の記事は、三井物産・三菱商事・GDF Suezが参加する年1200万トンのCameron LNG液化プラントは70億米ドルとも言われている。こらから推定すると液化コストは1.5ドルもしないと思う。2002年にTrinidad and Tobagoの液化プラントが完成した時はLNG液化コストは0.5ドルになったとも言われた。(Trinidad and TobagoのLNGの輸入が日本にあるが、やはり現在は15ドル前後である。)

輸送費にしても3ドルは、べらぼうのぼったくりである。現在LNGタンカーで1日10万ドルと言われている。大きなLNGタンカーであれば20万m3を越えるタンカーもあるが、通常の140,000m3で90,000トン積みとして年11往復航海すれば、百万BTUあたりの運賃は0.7ドル以下であり、1ドルしない。但し、Texasからの輸送だとパナマ運河が通れないことから百万BTUあたり2ドル近くになりそうでもある。

いずれにせよ、価格はコストから決まるのではなく、受給から決まるのである。

なお、米国人や米国産業の立場から考えれば、輸出を理由にガス価格が高くなるなら、輸出に反対するはずである。輸出で儲けて国内を安くしろとの意見は無茶としても、国内の需要まで輸出すれば、国内は供給不足となり価格は上昇する。

資源とは、一義的には存在するその地域の人の物である。しかし、それだけではなく、広く地球に生きる人々の物でもある。そして、現在の人の物でもあるが、将来の人にもそれを利用する権利があるのである。強引にかっさらうことはできない物である。

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