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2013年7月24日 (水)

東京電力財務諸表から読み解く福島原発事故

原子力発電所の再稼働や除染が今後の焦点として浮かび上がってくると思うのですが、福島原発事故を東京電力の財務諸表を読み解いて分析して考えることも必要であると思います。そこで、私なりに東京電力財務諸表から読み解き、分析を加えて、原発事故について考えてみることとしました。

1) 東京電力の業績

東京電力の業績を損益計算書から抜き出したのが次の図表1です。(クリックすると拡大します。)原発関連の分析を目的としていることから、連結財務諸表ではなく、東京電力の個別財務諸表からの抜き出しとしている。

Tepco20137a_2

2009年3月期決算においても災害特別損失563億円を計上しているが、この特別損失は新潟県中越沖地震により被災した柏崎刈羽原発の復旧費が中心であった。

2011年3月の東日本大震災からは、2011年3月末の決算を含め連続3期当期純利益は赤字である。(図表1において、費用や支出は全て赤字で表示している。)

2) 貸借対照表の推移

このような赤字続きの中、貸借対照表がどう推移したかを図表2として以下に掲げた。

Tepco20137b 

2012年3月末で利益剰余金はマイナスとなっており、累積損失となっている。2013年3月末において累積損失は1兆3千億円となり、資本金と資本剰余金合計の1兆1446億円を超過した。しかし、2012年7月に原子力損害賠償支援機構が優先株による1兆円の増資を払い込んだことから、債務超過にはならず、2013年3月末の純資産の部は8317億円となった。なお、原子力損害賠償支援機構が引き受けた優先株は議決権が付されており、東京電力株主議決権のうち現在50.10%は原子力損害賠償支援機構が保有している。

3) 原子力損害賠償支援機構法

原子力損害賠償支援機構とは、原子力損害賠償支援機構法により設立された法人である(ホームページはここ)。原子力損害賠償支援機構は、事故により原子力事業者が賠償をするために必要な資金を交付するために設立された法人である。東京電力への資金交付実績は図表3の通りである.

Tepco20137c

交付された資金が、財務諸表にどのように反映されているかと言うと、損益計算書において原子力損害賠償支援機構資金交付金としての特別利益として認識され、原子力損害賠償費として特別損失がもう一方で費用認識がなされている。貸借対照表においては、交付金の未収入額と賠償金の未払い額が認識されているだけで、交付金の返済については認識されていない。

もし、交付金の返済を認識したならば、2013年3月末で2兆2313億円の債務を追加認識せねばならず、更に先月の6月25日に経産大臣に認定された特別事業計画によれば図表3の累計交付額は2014年3月末までに累計3兆7893億円になる予定である。それでも、際限なくふくらんでいく可能性はある。何故なら、政府や地方自治体が実施している除染費用は全て東京電力負担となっているから。(やたらと長い名前の法律であるが、2011年8月31日公布の「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」で定められている。)

国会で法律が制定されているのであるから、その法の定めに従う以外に方法は他にない。ところで、原子力損害賠償支援機構法は交付を受けた資金について、どう定めているかというと、第52条で「負担させることが相当な額として機構が事業年度ごとに運営委員会の議決を経て定める額」を原子力損害賠償支援機構に支払うことを定めている。期限は明確ではないが、支払義務があると解釈すれば、債務を認識すべきように思う。しかし、東京電力は、「機構が定める特別な負担金を支払うこととされているが、その金額については、当社の収支の状況に照らし会計年度ごとに機構における運営委員会の議決を経て定められるとともに、主務大臣による認可が必要となることなどから、計上していない。」とし、監査法人もこれを認め、大株主の原子力損害賠償支援機構も承認しているのである。

4) 倒産がない会社

東京電力は、あるいは、原子力発電所を保有、運転している会社は倒産をさせることができない。倒産させれば、財政余力はなくなり、賠償金は払えなくなる。それどころか、原発の維持ができなければ、福島事故以上の放射性物質が世の中にまき散らされる。

一方で、4兆円・5兆円以上にのぼるであろう負債を年間2000億円足らずの利益しか出せない会社が返済できるであろうか?

倒産が考えられない以上、無理に債務超過にすることもないのかも知れない。一方で、実態は、債務超過であるとして、どうどうと債務超過の財務諸表を作成して世の中に問うのが正しいようにも思う。

日経 7月19日 東電、管理職に一時金10万円 離職者増に歯止めとのニュースもあった。管理職のみならず有能・優秀な人材が離れていっているなら、恐ろしいことである。原発とは、特殊なモノなのである。放置することができない。福島原発事故から学ぶべきことは、まだまだ多いし、政治家にごまかされることなく、正しく考えるべきと思う。5兆円以上かも知れないが、いずれ日本国民が負担することになると言うか、それ以外の道は出てこないように思う。「一義的に東京電力が負担」なんてのは、一瞬の気休めと考えるべきであり、本質的なアプローチを当初からすべきであると考える。

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コメント

東電の事故処理、冷却処理のはなしだけでなく、むつ市、六ヶ所村の一時貯蔵、再処理施設維持の問題もあるのです。原発をやめるという事は、上記の問題が浮上してくるのです。
 現在に一時貯蔵されている、燃料棒を引きとれとなること。 誰も引き取らないなら、原発を維持するしかない。

研究炉のMo99もあきらめる。こちらの燃料棒は米国貸し出しですから、米国が引き取っることには、なっていますが。それも2022年まで。

投稿: omizo | 2013年7月25日 (木) 22時07分

omizo さん

コメントをありがとうございます。

原発の話は、除染、廃炉のみならず、高濃度・低濃度廃棄物、使用済み核燃料廃棄、核燃料サイクル等を含めあらゆる問題を解決せねばならず、除染、廃炉をして終了にはならない。従い、東京電力のみの問題ではない。

私が、書いたことは、ほんの一部のことであるのですが、その一部の事さえ、十分には認識されていないし、報道も、ほんの表面のことしか伝えていないように思うので、少し書きました。

投稿: ある経営コンサルタント | 2013年7月25日 (木) 22時26分

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