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2013年8月28日 (水)

核燃料サイクル破綻の警告

朝日新聞に、日米の研究者が今月、日本がこだわる再処理政策を転換する処方箋を朝日新聞社に提言論文として寄せてきたとする記事があった。

朝日 8月26日 「テロの標的に」 日米研究者が「脱再処理」で改革提言

この記事の全文は朝日に会員登録をしていないと読めないのであるが、投稿文は上記の記事の中程部分あるいはこのページの「※論文全文はPDFでお読みいただけます [論文PDF(日本語)] [論文PDF(英語)]」で[論文PDF(日本語)][論文PDF(英語)]にリンクがあり投稿文を読むことができる。なお、英語の投稿文の最後に”This is a short version of a report that is to be published by the International Panel on Fissile Materials, http://www.fissilematerials.org.”とあり、探すとこれがlong versionと思われる。

核兵器に転用可能な高濃縮ウランとプルトニウムの削減についての活動を行っておられる方々であり、その論調は当然なのであるが、投稿文や論文を読み、正しい主張であると思った。興味がある方には、読むことをおすすめしたい。なお、朝日への投稿文と同じ文書は英語のみであるがここでも読むことができる。

私が感じたことを述べると、

1) 使用済み核燃料からプルトニウムを分離することは核戦争・核テロのリスクを高める

使用済み核燃料からのプルトニウム分離は、高速増殖炉の燃料として使用する場合に意味があり、高速増殖炉の目途がない中では意味をなさない。発電用に核燃料再処理したプルトニウムは核兵器転用できないというのは間違いである。長崎原爆はプルトニウム爆弾であったが既に日本は長崎原爆5000発分のプルトニウムを保有している。

日本が保有するプルトニウムは核兵器に使用されないように厳重に保管をせねばならないが、他の国が核燃料サイクルを理由としてプルトニウムの保有を望んだ場合に、日本がこれに反対するなら、日本もその時までには、核燃料サイクル方針を放棄していなければならない。

2) 原発を(例えば2030年代までに)全廃するなら核燃料サイクルはあり得ない

2030年代までに原発を全てなくすと前政権は宣言したが、この時、核燃料サイクルを放棄していない。核燃料サイクル方針を継続することはプルトニウムの分離を継続することであり、原発を廃止する一方でプルトニウムを作り続ければ、そのプルトニウムは核兵器製造を目的としていることになる。前政権は、国民に説明をしなかったが、腹の中ではそのようなことを考えていたのだろうか?

日本以外の世界中の国が高速増殖炉の開発を断念した。一方、日本でも見通しは全く立っていない。使用済み核燃料を、プルトニウム分離をせずに、そのままで保管する方法は存在する。分離済みのプルトニウムも、そのまま保管するかMOX燃料として使用する方法はある。

いずれにせよ、どのような方法であれ、放射能は全く減少せず、厳重な管理が必要であると考えるべきである。

3) 福島事故を安全神話で欺されていたと言うなら、核燃料サイクルは真剣に議論が必要

私は、核燃料サイクルは原発再稼働より問題含みであると考えている。実は、同じようなことを昨年9月17日原子力に関する閣議決定と日本学術会議の高レベル放射性廃棄物処分についての意見で書いたことがある。当時は、民主党政権であったが、核燃料サイクル方針については見直さず、現政権も未だ何の検討もしていない。

一方、現政権は安全が確認された原発から再稼働する方針と述べており、それなら同時に核燃料サイクルをどうするのかの検討をロードマップを持ち実施すべきである。

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コメント

MOX燃料も、リサイクルですが。リサイクルを放棄できないのは、最終処分場がないから。 廃炉とは、リサイクルをやめる事であり、むつ市、六ヶ所村から、即、貯蔵廃棄物の返却が起こる。 一家に一本燃料棒をキャスクル保存するなら。廃炉できるでしょうが。 で、引き受けますか?。いやなら、リサイクルしながら、発電するしかないわけです。ゴミは引き受けないが、言いたいことは言う。 出来たら良いな、あんな夢、こんな夢いっぱい有るけど。 ドラえもんのポケットでも、夢見る。 

投稿: omizo | 2013年8月29日 (木) 20時09分

omizoさん

いつもコメントをありがとうございます。

ウラン燃料であれ、MOX燃料であれ、使用後燃料プールで冷却後発電所においてキャスク保管することは可能だと思います。少なくとも、そのような現実案を検討すべきであり、実現性のない架空の「絵に描いた餅」を国民に説明することは、私は背任行為であると考えます。

投稿: ある経営コンサルタント | 2013年9月 1日 (日) 17時09分

キャスク保管は、福島1では、やっています。今回の津波で損失がなかったのは、幸い。 で、福島2ではやっていないし、他もやっていない。 むつ市のみ。 

東北電力の

Q.使用済MOX燃料は、発電所内に保管するという話だが、永遠に保管するのか。それとも、使用済MOX燃料も再処理できるのか。
使用済MOX燃料の処理の方策については、国の原子力政策大綱により2010年頃から検討が開始されることになっています。このため、当面は発電所内の使用済燃料プールに保管することになりますが、永久に発電所内に貯蔵することはありません。また、使用済MOX燃料の再処理は国内外で実績があり、技術的には可能です。

投稿: omizo | 2013年9月 1日 (日) 21時11分

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