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2013年11月22日 (金)

改正電気事業法の期待と不安

11月20日に、その1週間前の11月13日に成立した「電気事業法の一部を改正する法律」が、公布された。成立時のニュースは、次であった。

日経 11月13日 改正電気事業法が成立 「発送電分離」競争促進へ

上に掲げた日経のみならず、マスコミ報道のほとんどは競争が促進され、電気料金が下がることの期待が述べられている。前進との評価は可能であるが、やはり期待と不安が入り混じるのであり、思うことを書いてみたい。

1) 20日に公布された電気事業法の一部改正の内容

実は、それほど大きな実質的改正はなく、附則11条の「電気事業に係る制度の抜本的な改革に係る措置」が一番の大改正である。附則11条1項1号と2号には、次のように今後の法改正について定められている。(条文を、短縮し、簡単にもしている。)

1 2016年を目途とする電気の小売業への参入の全面自由化を実施し、そのために必要な法律案を2014年の国会に政府が提出すること

2 2018年から2020年までの間を目途に変電、送電及び配電に係る業務(以下この条において「送配電等業務」という。)の運営について、特定の電気供給事業者に対し、不当に優先的な取扱いをし、若しくは利益を与え、又は不当に不利な取扱いをし、若しくは不利益を与えることがないことの中立性の一層の確保を図るための措置並びに電気の小売に係る料金の全面自由化を実施するものとし、そのために必要な法律案を2015年に開会される国会の常会に提出することを目指すものとすること。

他の改正は、2条1項14号の接続供給の定義の拡大および公益的運営推進機関の設立の関係がほとんどである。但し、公益的運営推進機関に関する関係の規定は公布から2年6月以内の施行となっており、2016年4月以降になると思う。

2) 電気の小売り自由化

電気の小売とは何であるか、実は定義がなされておらず、また改正前の電気事業法では使用されていない文言である。普通の感覚であれば、製造業者への原材料の販売は卸売りとなるが、この場合は電力の電気事業者以外への販売を意味していると理解する。

何故なら、附則11条2項に「前項の電気事業に係る制度の抜本的な改革は、中立性確保措置を法的分離(同一の者が、送配電等業務及び電気の小売業のいずれも営み、又は送配電等業務及び電気の卸売業のいずれも営むことを禁止する措置をいう。以下この項及び次項において同じ。)によって実施することを前提として進めるものとする。」とあり、送配電業務と電気の小売業を同時に行うことを禁止することが書かれている。そうなると電気販売のことを電気の小売と考えざるを得ない。

電気の小売が自由化されれば、売ると言う売人がいれば、誰からでも買える。そして、1)に掲げた附則11条1項2号の最後の部分に、料金の全面自由化の目標が書かれている。NTTによる独占を止めた結果、携帯電話の通話料を含め通信料金は安くなった。同じ事が期待できる可能性はある。

3) 自由化の不安

電気とは、エネルギーであり、電線を通しての販売に限られる。しかし、電線は送配電業務を実施する事業者が保有・運営するのであるから、小売り事業者は、他から仕入れ、若しくは製造(発電)した上で、送配電業務者へ輸送・配達を委託することとなる。

それで、うまく行くだろうか?例えば、僻地における高料金があり得るが、送配電業務者に対して地域に関係しない全国均一の送配電託送料金を押しつけるのだろうか?しかし、そんなことは、自由化とは逆方向である。同じように、附則11号5項1号には、送配電業務者に次のことをさせることが書いてある。

  イ 電気の小売業を営む者から電気の供給を受けることができない者への電気の供給を保障すること。

  ロ その送配電等業務を営む区域において一元的に送配電等業務を営むとともに、その供給する電気の電圧及び周波数の値を一定の値に維持すること。

誰も小売りをしなければ、送配電業務者にやらせる。電圧と周波数の値を一定に保つとは、発電事業者が発電に失敗しても、それを直ちに補填せよとの意味である。極めてフレキシブルな電力供給設備を保有していないと実施できない。一方的な義務を押しつけていると思えるし、また簡単ではない。しかし、現実にこの業務を現在実施している一般電気事業者の十電力会社なら可能である。それ以外に、存在しない。

4) 何のための自由化なのか

最終的には、この命題に行き着くはずである。自由化の結果は、力の強い者は、安く買うことができるようになり、弱者は高く買わされる。電力自由化は、2009年に成立した改正でPPSと呼ばれる特定規模電気事業者の参入が認められることになり、50kW以上の電力の自由化が達成された。逆に50kW未満が自由化されていない理由の一つとして、弱者の保護がある。

マスコミは、総括原価でデタラメであると批判する。しかし、家庭向けの電力が使用量が少ない場合に単価が安く、使用量が増加すると単価が高くなっているのは、総括原価であるからであり、販売単価をコスト対応にすれば、大量購入の場合に安くなる。社会的な使命を電力会社に負わせる代わりに、全体としての収支には問題がないようにと制度を運用していたのである。しかし、それには、別の面では不都合があるとして、50kWで線を引いて、それ以上は市場価格とし小売り参入も届け出制にしたのである。(50kWとは、6000ボルトで電気を購入し、需要家が変圧器を保有する場合と考えればよい。)

今回公布の電気事業法改正は、実質まだ何も定めていない。自由化の中身が不明なので、これ以上の議論は無意味と考える。しかし、過度の自由化は、価格不安定のみならず供給不安定や停電の多発等、供給品質にも影響する。私は、現在の状態を残した上で、参入の自由化を行い、新規参入者にも合理的な義務を負担させることが正しいと考える。太陽光発電高価格買い取り制度のような市場を無視し、一部の者のみに利益を与え、多くの消費者に負担を残すことをしてはならない。

また、変な自由化をして、日本の電力をガラパゴス化してはならないと考える。スマートメーターなんて、直ちに取り付ければ良いのだし、30分の時間帯なんて止めて、将来の世界標準と思う5分程度の時間帯取引にすべきと考える。

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