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2013年12月 2日 (月)

燃料電池車(FCV)の評価

第43回東京モーターショーは12月1日に終了した。話題の一つは、トヨタがコンセプト車を出展した燃料電池車(FCV)であった。

日経 11月5日 トヨタ、15年発売の燃料電池車コンセプトを出展へ

トヨタのFCVに関するWebは、ここにある。今回はFCVについての全体的な評価を私なりにしてみたい。

1) FCVとは

ハイブリッド車のガソリン・エンジンが燃料電池に置き換わったようなイメージでよいと考える。燃料電池の燃料は、水素である。水素の反応は、燃焼ではなく、電池の燃料極で水素の電子が燃料極(陰極)に入り、この電子が回路(電動機)で仕事をして空気極(陽極)に回る。その結果、燃料の水素と空気極の酸素が化学反応をして水が生まれる。燃焼ではなく、水が生まれるだけである。

しかし、考えれば、水素が燃焼する場合も、水素と酸素の反応で水が生成されるのであり、CO2は発生しない。結果は全く同じである。水素を燃料とするエンジンを開発しても、同じである。詰まるところ、水素は、燃焼してもCO2は発生せず、水のみの生成である。

ガソリン・エンジンの水素燃料車があったとして、それはクリーン・カーである。従い、燃費(エネルギー効率)で評価すべきと考える。

2) ガソリンエンジンと燃料電池

ガソリン・エンジンの燃料消費量であるが、最良の条件で熱効率35%(燃料消費量では240g/kWh)である。

燃料電池の燃料消費量であるが、上記のトヨタのFCVのWebには「航続距離が830kmに延長(10・15モード)」とあるのみで、ページの下のテクノロジーファイルを見てもそれ以上の詳細は見あたらなかったが、固体高分子型燃料電池と記載がある。そこで日本電気工業会の燃料電池の比較表を探し出した。これによれば、固体高分子型燃料電池は30%~40%と記載されている。

ほぼ互角と言えるが、燃料電池の特性が私にはよく分かっていない部分があるが、ガソリンエンジンについては最良の条件でと書いたように、ガソリンエンジンは回転数とトルクにより動力(kW)あたりの燃料消費量が相当大きく変動する。例えば、停車時には、アイドリングに少しの出力しか出していないが、燃料はある程度消費する。停車時は、kWあたりで考えれば、効率は非常に悪い状態である。しかし、電気であれば、停車時は完全に消費をゼロにできる(実際には、メーター他コントロール関係や安全装置、時にはエアコンで動力を消費するが)。もっとも、ハイブリッド車は、アイドリング時はエンジンが停止しており、わざわざFCVにする必要があるのかとの疑問は残る。

将来的には、燃料電池のエネルギー変換効率が上昇することも期待できると思う。FCVを含め研究はすべきである。

3) 燃料タンク(水素容器)

水素は、液化しようとすれば氷点下260℃以下に冷却しなければならず、液体窒素(-210℃)やLNG(-162℃)より更に低温にする必要がある。液化して貯蔵する場合は、断熱材に容積が取られるため、車で水素を貯蔵するには高圧タンクになる。トヨタのWebには、タンク容量が書かれていないが、70MPaの高圧水素タンクとある。70MPaとは、大気圧が0.1MPaのので700倍の高圧である。そのような高圧のタンクとは、肉厚が相当厚い、従い重いタンクにならざるを得ない。

トヨタの高圧水素タンクを推測するにあたり、エコカーのこのWebに2008年にトヨタが発売したFCVであるトヨタFCHV-advのデータがあり、高圧水素タンク70MPaで156Lとある。第43回東京モーターショーのFCVコンセプト車は、FCスタック(燃料電池)の出力密度は3kW/Lにしたとあるが、高圧水素タンクは同じである可能性が高いと思う。

そこで圧力を70MPaとして球形高圧タンクを仮定し、肉厚25mmでタンク材に発生する応力を計算すると47kg/mm2となった。この場合のタンクは内径664mmで重量は270kgと計算される。応力が47kg/mm2だと普通鋼では強度不足であり、高張力鋼を使っても270kgというような重量になることを意味する。但し、実際は球形タンクではなく円筒形を使用している。外径400mmで長さ1,600mm程度のタンクを横方向に積載していると思う。相当な大きさであると同時に、重量も47kg/mm2の応力で収めるとして240kg程度と計算される。トヨタの説明には、タンクの外側にカーボンファイバー層を巻いていることも書かれてあり、軽量化され、ここまでの重量にはなっていないと思うが、それでもかなり重いはずである。(ちなみに、トヨタFCHV-advancedの車両重量は1,880kgなので、ガソリン車よりは、やはり相当に重い。)

では156リットルの高圧水素タンクに70MPaで水素を充填したとして、満タンでいくら入るかというと5.6kgか5.7kg程度の水素である。即ち容器重量200kgに対して、5.7kgが入るのみである。但し、水素の単位重量あたりの熱エネルギーは非常に大きい。142MJ/kgである。これに5.7kgを掛けると809MJとなる。一方、ガソリンの熱量は34.6MJ/Lなので、60Lのガソリンを充填した場合は、2,076MJの熱量となる。

809MJで850km走行できるなら、水素消費率は0.95MJ/kmである。ハイブリッド車の燃費を32.6km/Lとした場合は、消費率1.06MJ/kmに相当するので、ハイブリッドの約90%と10%低燃費のFCVが燃費競争でごくわずかに勝っていると考えられる。しかし、トヨタが11月20日に発表したハイブリッド車燃費37.0km/Lや、ホンダFITの36.4km/Lと比較すると、それぞれ0.94MJ/kmと0.95MJ/kmであり、高性能ハイブリッドカーにFCVは互角である。

FCVの車両価格は、ハイブリッドカーの10倍程度であると、ハイブリッドカーに完敗と思える。しかし、考えればハイブリッドカーは、ずいぶん優秀と言える。

3) 水素充填ステーション

水素充填は3分程度とトヨタは説明している。なお、156リットル高圧水素タンクの満タン5.7kgは、0℃大気圧状態では、63.8m3である。(0℃大気圧状態の1m3を1Nm3と表す。)

70MPaの高圧水素タンクに充填するためには、70MPa以上の圧力で押し込まないと充填できない。このためのコンプレッサー動力が必要である。この動力エネルギーは、次の式を使用した計算結果でも水素1kgあたり22MJ必要である。

Compressionequation

水素充填ステーションでも既に35MPaや70MPaでの高圧圧縮貯蔵をしているのが通常であり、この22MJ/kg-H2は必ずしも水素充填ステーションで発生するとは限らない。例えば、圧縮水素運搬タンクローリーは現状最大20MPaであり、充填ステーションでこれを貯蔵時またはFCVへの充填時に70MPaにする。そして、水素製造所では、貯蔵および運搬タンクローリーへの充填のために20MPaに圧縮する。

なお、水素充填ステーションへの輸送及び貯蔵を氷点下260℃の液体水素にして行う方法がある。この場合、水素製造所において液化する事となるが、その液化にはエネルギーを必要とする。現在水素液化のための必要エネルギーは50MJ/kg-LH2程度のようである。大型化して効率を上げたとしても30MJ/kg-LH2を下回ることは困難なようである。

水素を製造してからFCVに充填するまでの間に50MJ/kg-H2程度のエネルギー消費は、どのような手段を講じても発生が避けられないと考える。水素の燃焼エネルギー143MJ/kgと比較すると35%が損失になる訳で、水素エネルギーの利用は合理的であるのか、十分考える必要がある。

氷点下260℃の液体水素を利用している輸送手段が一つある。それは、ロケットである。ロケットの液体燃料は、液体水素であり、発射前に充填作業を行っている。ロケットは、143MJ/kgという水素の重量あたりのエネルギーの大きさを利用しており、軽量にすることが重要である特殊な例であると言える。

4) 水素製造

水素の製造方法は大きく分ければ、炭化水素(ガス、石油、石炭)を分解して水素を取り出す方法と水を電気分解して水素を得る方法である。

4-1) 天然ガスからの水蒸気改質

現在もっともコストが安いとされているのが、天然ガスを原料とする水蒸気改質法(Steam Reform)であり、米国では90%がSteam Reformingにより水素が製造されているようである。なお、容積ベースでは1m3の天然ガスから2.1m3-2.8m3程度の天然ガスが生産できるが、エネルギー・ベースで考えると、生産される水素のエネルギーを1.0として、グラフで表すと次の通りである。

Steamreformh2_2

重量では、水素はメタンの元の重量の25%-35%になる。メタン中のすべての水素分が水素ガスになったとしても、メタンの化学成分CH4に含まれている炭素(C)は、水素にはならない。炭素(C)は、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)になる。そこで、CO2排出量の計算をしてみた。

水素1m3の生産に必要な天然ガス量を0.4m3とする。0.4m3をすべてメタンとした場合は、その質量(重量)は286グラムであり、そのうちの炭素分は215グラムである。この炭素CがCO2になると、788グラムとなる。水素1m3の熱量は12.76MJなので、排出係数は61.7g-CO2/MJとなる。そして、これに水蒸気改質によるエネルギー消費分により排出したCO2を加える必要がある。30%増加するとして、80g-CO2/MJ位の排出係数となる。

(実際には、メタン中の水素分がすべて生産される水素となる訳ではなく、水蒸気改質の水の水素分からも生産される水素となる部分がある。但し、合計して考えると、現在の標準的な天然ガスの水蒸気改質による水素生産の原単位、エネルギー必要量、CO2排出量は、ここに掲げた数字に近いはずである。)

水素生産のCO2排出を80kg-CO2/MJとして、FCVのCO2排出を計算する。FCV走行水素消費率が0.96MJ/kmなら、CO2排出は76.8g-CO2/kmとなる。ハイブリッド車の燃費を32.6km/LとしてCO2排出を計算すると、71.2g-CO2/kmが計算できる。FCVは、ハイブリッド車よりCO2を多く排出する自動車となった。更には、貯蔵と運搬のためのCO2排出を加える必要がある。上の3)において、圧縮のためのエネルギーは22MJ/kg-H、液化のためのエネルギーは50MJ/kg-LH2と書いた。これを、すべて電力を動力としたとして電力のCO2排出係数を400g/kWhを使用して計算をすると、圧縮の場合は、17g-CO2/MJ、液化の場合は39g-CO2/MJとなる。即ち、水素利用の場合のCO2排出量は合計97g-CO2/MJまたは119g-CO2/MJとなった。

4-2) 水の電気分解による水素生産

水の電気分解による水素生産の電力源単位は水素1Nm3あたり4.8kWh程度である。天然ガスを燃料としたコンバインドサイクル火力発電の熱効率を55%として、計算すると1m3の水素生産に必要な天然ガス量は0.79m3となり、水蒸気改質法0.4m3の2倍近い量の天然ガスを消費することとなる。CO2排出量も生産だけで、150g-CO2/MJで水蒸気改質法の2倍近いCO2排出となる。

但し、再生可能エネルギーからの電力で水の電気分解を行えば、生産に関して直接的に排出されるCO2はゼロとなる。但し、高いコストの水素となる。仮に、太陽光電力を40円/kWhとすれば水素1Nm3は192円となる。米国でシェールガスを含めHenry Hubの現在の価格mmBTUあたり4ドルでガスを調達し水蒸気改質法で水素生産したならば、水素は熱量ベースで3倍以下と言われており、水素はmmBTUあたり12ドル以下のコストで生産できる。これは、1Nm3あたり0.145ドル、すなわち15円である。輸送費等も関係するが、15円で生産できるモノを192円で生産することは考えられない。将来的に、再生可能エネルギーの発電コストが現在の半分になったとしても、96円である。LNGの輸入価格がmmBTUあたり20ドルであったとしても、水蒸気改質による生産で0.6ドル/Nm3、すなわち65円である。再生可能エネルギーで発電できるなら、送電線に流し、電力として利用することが合理的である。将来、再生可能エネルギーの余剰が発生した場合に、余剰電力による水素生産はありうると考える。

4-3) その他の方法による水素生産

日本に副生水素が存在する。例えば、製鉄所のコークス炉から発生するコークス・ガスには水素が含まれている。コークス・ガス中の水素を取り出して純度を高めれば、FCVの燃料として使用できる。しかし、コークス・ガスは製鉄所内で加熱用他に燃料として使用されており、また発電所の燃料として利用されている。大型コークス炉が存在するほぼすべての製鉄所には○○共同火力(例えば君津共同火力)が存在し、発生する水素はすべて有効利用されている。精油所、石油化学プラントにおいては、水素が発生する。しかし、精油所、石油化学プラントは、水素を原料として必要とするプロセスもあり、ナフサを水蒸気改質等で製造している。従い、余剰水素は基本的には存在しないと考える。

但し、能力100%で操業している訳ではなく、水素生産能力に余力が存在する場合はある。しかし、これを短絡的に余力があるから水素を生産すべきとはならないと考える。日本では、省エネが進んでいると言われる。それは、副次的に生産される副生物や廃棄されていたモノまで、徹底的に有効利用を図っている結果でもある。副生水素を利用すべきとの見解があるが、廃棄されたり、有効利用されていない副生水素が存在するのか、何が有効であるかは、十分検討する必要がある。

最後に、バイオから直接水素を取り出すこともあり得る。まだ将来の利用の可能性追求の研究段階である。そして、もう一つ、原子力による水素生産がある。これは、高温状態の金属が水と接触した際の水素発生反応の利用である。なぜ、原子力かは、そのような高温が化石燃料では得ることが困難であるからである。但し、この高温は、軽水炉では達成できない。福島第一原発が水素爆発を起こしたことは誰でも知っているが、あの水素発生メカニズムである。軽水炉は、火力発電より低い温度の蒸気としている。温度が高いと、危険度は増加すると考えるし、高温ガス炉原子力を使うとしても、その安全試験はどうするのか、課題は多いと考える。

5) コスト

これまで書いたところで、一番安く水素をFCVに充填できるのは、天然ガスを原料とする水蒸気改質法で水素を生産し、液化せずに圧縮水素として輸送、貯蔵する方法である。LNGから水素1Nm3あたりの生産コストを65円とし、圧縮コストを電力kWhあたり20円で計算すると11円/Nm3となる。貯蔵費用が発生し、超高圧タンクの設備費用で相当高いと考えるが、とりあえずゼロと仮定する。その結果は、FCV充填の水素コストは76円/Nm3である。

2)のところで、FCVの水素消費率は0.96MJ/kmとした。0.96MJを水素に換算すると0.075Nm3であり、金額では5.7円/kmである。ガソリン価格を150円/Lとし、ハイブリッド車の燃費を32.6km/Lとすると、ハイブリッド車は4.6円/kmとなる。やはり、ハリブッド車の方がお得な結果となった。現在のLNG価格mmBTUあたり20ドルは高すぎるとの考えもあるはず。しかし、貯蔵コストを初め、水素の流通コストを考慮すると、水素価格76円/Nm3は妥当と思える。

更には、ガソリン価格には揮発油税及び地方揮発油税合計53.8円/Lが含まれている。水素にも、これに対応する税の徴収をしないと、不合理が生じる。即ち、道路にも保守費用は発生するのであり、トンネルや橋の崩落を防ぐ費用は、応分の負担を公平にすべきである。

6) 感想

水素の世界や燃料電池車(FCV)の可能性について、当面の間は経済的合理性を見つけることは、困難であると考える。米国においては、天然ガスを水蒸気改質により水素を生産し、発生するCO2は地下貯留(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)とするクリーンエネルギーを目指す動きがある。米国では、日本と比較し、天然ガスは安く、CCSに適する地下地層も得やすい。FCVの実現も、日本よりは米国の方が早いと思う。だからこそ、トヨタもホンダもFCVの研究に力を入れているのだと思う。

今回、比較対象としたのは、ハイブリッド車である。ハイブリッド車とは、燃料消費の優れた車である。10・15モードが必ずしも、実走行の状態ではないが、同じ基準での比較をする場合に、一定の合理性があると考える。ハイブリッド車でない車の燃料消費も良くなっている。4)で再生可能エネルギーによる発電による水の電気分解からの水素生産を書いた。これと比較すべきは、再生可能エネルギーで発電した電力の蓄電池貯蔵とする電気自動車であると思う。水素充填時間と電気自動車充電時間の差とか、様々な違いはあるが、将来どのようになるか分からない。

水素が、水のみしか排出しないと言うのは、一面的な見方である。水素の将来が明るいのかどうかも不明である。しかし、将来の可能性は十分あるのであり、研究は継続すべきと考える。

7) 参考

水素とメタンの質量と発熱量(HHV)の表を参考として掲げる。計算等の細部に省略した部分もあり、質問がある方は、コメントに書いていただければと存じます。

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