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2014年11月23日 (日)

水素価格1キログラム当たり1100円の妥当性

既に1週間以上を経過したのだが、岩谷産業が燃料電池車(FCV)向けの水素を1キログラム当たり1100円で販売するとのニュースがあった。

日経 11月14日 谷産業、FCV向け水素の商業販売価格を決定 普及後押し

FCVの水素消費が110km/kg(水素)であれば、1100円を110kmでの割り算だから、走行1km当たり10円となる。ガソリン価格が155円/リットルとし燃料消費が15.5km/リットルなら1km当たり10円で同じである。ところで、ガソリン車の燃料消費15.5km/リットルは、どうなのだろうか?以下おもしろい試算をしてみたい。

1) FCVの水素消費

トヨタのFCVのWeb MIRAIを見ると燃料タンクは容量122.4L、圧力70MPaとある。そしてタンク内圧力10MPaからの充填で走行距離650kmとある。もし、水素消費110km/kgなら5.9kg充填できたこととなる。2016年以降の新規格の水素ステーションで充填した場合は、走行距離は約700kmとなる見通しともあり、ややこしいが、容量122.4L、圧力70MPaで最大充填したとして7kgが精一杯で、安全を考えれば少ない方が良いはず。

FCVに取り立てて魅力を感じる点はないように思える。

2) 水素価格1100円は税金を含まない

前置き部分で書いたように、1km当たり10円なら、ハイブリッド車や低燃費車の方が有利である。その上、自らは税金を払わずに、ガソリン車や軽油車に道路維持費を分担させることはけしからん様に思う。重量は、ガソリン車の倍の2トンもあるのに。

3) 水素製造コスト

2013年12月2日のブログで書いたのであるが、天然ガスの水蒸気改質による製造が一番コストが安い。水蒸気改質とは、エネルギーも消費するし、設備も必要である。通常は、熱量当たりで水素コストは原料天でガスの3倍になり、これより低ければ、低いほど優秀な高効率設備と言われている。

日本における天然ガスコストであるが、東京電力のWebを見るとLNGの2012年度販売量は1,201千トンで販売高は94,127百万円である。これから計算すると、LNGは1kgあたり78.37円となる。但し、水素は重量当たり熱量がLNGの2.5倍から2.6倍である。従い、水素製造コストが原料LNGの3倍であるとすると水素は1kg当たり611円となる。

輸送費や貯蔵費に利益も確保せねばならず、611円の製造原価が販売価格としては1100円になると言われれば、そんなものかなとも思う。

4) 水素のCO2発生量はガソリンより多い

FCV自身は水素を排出せずとも、天然ガス水蒸気改質はCO2を排出する。熱量MJの水素に対してのCO2排出は80g-CO2程度と以前計算した。ガソリンのCO2排出量は、熱量MJ当たり67g-CO2程度である。即ち、水素は約20%程CO2を多く排出するのである。

欺されてはならない。イメージと事実は異なるのである。

5) 再生可能エネルギーによる水素製造

プロセスではCO2排出が排出されない。可能性がない訳ではない。しかし、電気分解による水素製造時の電力消費は1kgの水素製造に対して53kWh程度であるとすると、太陽光発電の買い取り価格が現行32円/kWh(消費税不含)であるので、これを使うと1,696円である。

LNGからの水素製造の2.7倍であるが、FCVで環境対策と言う人には、1,696円で水素を買っていただくのも一つの方法かも知れない。もっとも、水素の流通コストを考えると2,000円以上になるように思う。しかし、それなら電力自由化(50kW以上は現状でも自由化済み。)でCO2無発生の電力として自由取引にするのも方法かも知れない。

打出の小槌は存在しない。一方、ダマシは存在する。将来の研究課題であることを、さも現実のように誤解して税金を投入したり、課すべき税を減免することは、正しい対処ではない。

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コメント

以前にも書きましたが、リチウムイオン電池は0度以下になると、イオンが金属に変化してしまい、-10度で全く充電できなくなってしまいます.
大阪でタクシーに日産の電気自動車を導入したのですが、客待ちの時、運転手は使い捨てカイロで暖をとっているそうです.
日本の北海道でも、一年の内、半年以上暖房を必要とするのですが、このような土地では、以上二つの点から、今のところ電気自動車の実用化は不可能です.
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水素自動車もエナファームも、原理的に同じはずで、大きな違いは自動車の場合、水素を高圧で貯蔵しなければならない点に有ると思います.この点にかかわるエネルギーの問題が、将来改善されて行くならば、水素自動車にそれなりのメリットを見いだすことが出来るはずです.
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オイルショックにより日本のアルミ精錬の産業は壊滅しましたが、一社、日本軽金属の蒲原工場だけは残り、現在でも操業を続けています.
理由は簡単で、この工場は富士川水系に10万KWの自前の発電所を持っていたからです.

アイスランド
この国は、水力発電と地熱発電で電力の全てを賄うことが出来る国で、近年はアルミ精錬が重要な産業になっています.
(島国なので電気が余っても直接輸出することは出来ないのですが、アルミは電気の塊で、結果、アイスランドは電力を輸出していると言えます)
それに加え、この国は水素自動車の実証実験も行っているのか、行おうとしているのか、力を入れている国なのです.

先に書いたように、リチウムイオン電池は寒冷地では性能が低下し、なおかつ暖房用に電力を必要とする土地では、容量的に不足で全く使い物になりません.
日本のアルミ精錬が滅んだように、水素自動車も電気代が高く暖かい地方では、技術革新が進んでも採算が合わないかもしれませんが、けれどもアイスランドに限らず、カナダ、シベリアのような電力の豊富な寒冷地では、将来性のある技術であると思われます.
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ガソリンスタンドの建設費がおおよそ1億円程度からに対して、水素スタンドは3億円程かかるそうなので、簡単には普及しません.
けれども、バス、あるいは特定の地域を走るトラック等を対象にする場合には、大きな問題にはならないはずです.
トヨタは多分にカルフォルニア州の規制を意識しているので乗用車を出してきましたが、ベンツはバスを出すはずで、こちらの方が正解だと思います.

これは私の希望的観測なのですが.
LNGのようにメタンガスを液化して、車が走りながら水素に分解するようにすれば、エネファームと全く同じになり、100%利用しないにしても、寒冷地では熱も有効に利用することになります.
スペース的に乗用車は無理にしても、ドイツ等のヨーロッパの街では、連接車体の大きなバスが走っているので、こちらの方が実用性が高いのではないでしょうか.

投稿: rumityan | 2014年11月29日 (土) 23時13分

rumityan さん

多くの書き込みをありがとうございます。

それぞれの事について課題が多いのは当然であるし、個別の課題を検討・評価して進めることだと思います。経済性が低い場合には、研究・開発として取り組むべきです、問題をすり替えたりすべきではないと考えます。

本当に燃料電池が効率的なエネルギー源・エネルギー転換・利用手段であるなら、LNGを現在のようなガスタービン複合発電ではなく、燃料電池で発電して家庭や工場に送配電すればよいはずです。

LNGは、日本ではバスには使われています。CNGバスと言うのがそうであって、LNGはガス化する際に高圧でガスを取り出しやすいので、そのメリットも活かしていると思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2014年11月30日 (日) 12時38分

日本ではエネファームは家庭用しかありませんが、アメリカでは発電所用の大規模なものが実用化されています.
熱を有効に利用できるのであれば、エネファームの総合的な効率は、90%を越えているはずです.

投稿: rumityan | 2014年11月30日 (日) 18時04分

rumityan さん

コメントをありがとうございます。アメリカで実用化されていり燃料電池発電所は知りませんでした。

2012年11月 2日 のブログ
http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-c244.html
で書いたこともあるのですが、日本の家庭用の燃料電池(エネファーム)もお湯への利用エネルギーも加えると80%以上の効率になる。但し、熱効率95%の湯沸かしも存在する。一方、消費電力の3倍のエネルギー相当のお湯が得られるのが、エコキュートである。(外気とのエネルギーのやりとりがあるからですが)
お湯が介在するとややこしいですね。

投稿: ある経営コンサルタント | 2014年11月30日 (日) 23時58分

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