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2014年11月25日 (火)

原子力発電の議論

日本の原子力発電について衆議院選で、論争があったとしても、単純な賛成論と反対論に終始しそうな気がする。数字を押さえた議論をすべきと思うのであり、有価証券報告書から読み取った数字等を踏まえ、参考数字を提供したいと思います。

1) 原発10事業者の財務諸表上における原子力発電コスト

北海道電力から九州電力までの9社に日本原子力発電を加えた10社を原発10事業者と呼ぶこととします。10事業者は全て監査を受けた財務諸表(有価証券報告書)を公開しており、財務諸表から抜き出した原子力発電コストは次の図表1の通りである。(過去6年間の表を作成した。)

Nuclear201411a

稼働していても、いなくても年間約1兆4千億円です。国民一人当たり1万円以上です。各社差があるようですが、原子力発電の出力(kWやMW)あたりでこのコストを分析するとMW当たり3千万円から5千万円(kWでは3万円から5万円)にほほ入ってくるのです。(図表2参照)

Nuclear201411b

稼働しようとしまいと、運転しようと停止しようとコストはほとんど変わらない。一方、収入はあるかないかの大違いが生じる。(日本原電は、他社への固定料金制の売電ですが、買った方の電力会社と連結合算をすれば、コスト・収益構造は同じ。)結局は、電力会社は原発を一旦保有したならば、少しでも稼働発電させてコストカバーか若しくはコスト以上の収入を得て利益を得ようとするインセンティブが働く。このインセンティブは、基本的には株主も同じだし、電力会社の経営者からすれば、株主利益のためには原発再稼働を目指すとなるのが自然であります。

2) 原発発電のコスト構造(コスト内訳)

もう少し、突っ込んで考えます。そこで、図表1の内訳に入ります。次の図表3は、10社合計での原発発電コストの内訳です。

Nuclear201411c

2013年度については、円グラフでも示した。委託費と言うのは、竜田一人の「いちえふ」の世界です。働く人の被爆線量を管理せねばならず、大勢の外部作業員に依存せざるを得ない。どうしても、委託費が大きくなる。相当の雇用を生み出しているとも言えますが。

蛇足かも知れませんが、固定資産税429億円も相当な税金です。原発設置がある市町村(おそらく県も)にとって、すごい税収で、自主財源ですから有効に活用できる。電力の事業税も一般の事業税と異なり、固定資産額による配分がありますが。

3) バックエンド費用

バックエンド費用については、説明が必要です。図表3のバックエンド費用は、使用済燃料再処理等費、使用済燃料再処理等準備費、特定放射性廃棄物処分費と原子力発電施設解体費の4項目を合算した金額としています。4項目の費用は現在発生している費用ではなく、運転停止後に発生する原子力発電施設解体費や将来発生する使用済み核燃料の再処理費用、放射性廃棄物処分・処理費等です。

解説については、日経テクノロジーのこの解説がよいと思います。当然のこととして、最も合理的な考え方で費用計上し(法令等に基づき)、引当金、積立金、資産除去債務等を計上し、あるいは原子力環境整備促進・資金管理センター(Webはここ)へ資金拠出しています。再処理積立金では、これまでに4.9兆円が拠出され2.4兆円が払い出され、残高としては2014年3月末で約2.5兆円積み立てられている。払い出された2.4兆円の全額が六ケ所村再処理施設を保有する日本原燃(Webはここ)に前渡し金として支払われているのか私はチェックできていませんが、六ケ所村での再処理を前提としているのが境整備促進・資金管理センターと日本原燃の役割と了解しています。

六ケ所村再処理施設の運転時期は未定と了解しているし、そもそもMOX燃料を製造して原発燃料として使用することについて関係者(地元や国民)の合意取り付け見通しがどうかの問題があるし、こんなことで良いのだろうかと思います。

そうなると、原子力発電コスト年間固定費1兆4千億円だって、もっとふくらむ可能性があるように思うし、停止していても費用が発生することから、もし原発を今後稼働させないなら、幾らかかるかを示すべきだと考えます。20兆円-30兆円なんて生やさしい金額ではないような気もするし。

一旦走り出したら、簡単に止められず、止めるには、相当の労力が必要なことがある。原発とは、そのようなものだと思う。おそらくは、うまくコントロールして行かなくてはならない。その限りにおいては、議員・政治家が口を出すことは良くない。合理的に国民が判断するのがよい。原発は、停止していても、そこに核燃料は存在するのであり、危険性は継続している。本質的な危険性が変わらないのであれば、新設はせず、既存の原発だけは運転したらとも思う。

4) 福島第一5・6号機

福島第一5・6号機は、2013年12月18日に東京電力は廃炉を発表し、本年1月31日で廃止となった。福島第一5・6号機は事故が起きた1-4号機と同一の敷地にある。しかし、5・6号機は安全に停止し、事故は起こらなかった。地震により同じように揺れたはずであり、同じ津波を受けたのである。違いは、1-4号機の敷地が基準海面から10mであったのに対し、5・6号機は13mであった。津波は5・6号機でも13m-14.5mまで達した。(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会平成23年11月26日中間報告19ページより。)

1-4号機と5・6号機の敷地の高さの違いが、事故の発生を決定づけたのか?5・6号機の細部を調査・検証すれば、答えが出ると思う。ある意味では、福島第一5・6号機は、東日本大震災にも耐えられた安全な原子力発電所であり、安全が確認された原子力発電所と言える。多分、5・6号機の内部で地震により損傷している箇所もあると思う。又、津波が押し寄せたのであるが、1-4号機のように決定的な事故とならなかったのは何故であるのか。実機で試験をしたのである。またとない、試験結果が得られているのである。

福島第一5・6号機の結果こそ、紙やコンピューターの分析よりも重要なデータを与えてくれる。福島第一5・6号機から学び、結果を世界に発信することが必要であると考える。

感情論(反対であれ賛成であれ)で判断をしてはならない事項がある。原発については、放射性物質の危険性以外に核兵器原料問題と使用済み核燃料処分・燃料リサイクルの問題がある。全てについて、考慮せねばならない。

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