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2016年6月20日 (月)

福島第1原子力発電所炉心溶融について

6月18日に福島第1原子力発電所炉心溶融を書いたが、炉心溶融について読み解いた結果を書くこととする。責任の押し付け合いではなく、事実を事実として認識し、将来に役に立たせるべきと考える。

1) 東京電力及び経産省は3月12日に炉心溶融と発言していた

6月18日のブログにも書いたとおりであるが、3月12日の記者会見で東京電力小森常務は炉心溶融の可能性ありと発言していたし、経産省保安院の記者会見においても炉心溶融を認める発言があった。6月16日付の検証委員会報告書3ページ目(この東京電力プレスリリースからダウンロード可能)の文章中にその旨の記載がある。

2) 3月14日には東京電力は炉心状況をそれなりに把握していた

検証委員会報告書の記載を基に6月18日のブログに書いたが、3月14日炉心損傷割合25%と判定していた。炉心溶融の定義は不明確であるが、炉心損傷割合が5%を超えれば炉心溶融とすることが、東京電力の「アクシデントマネージメントの手引き」にはあったとのことである。

そもそも、現在においても、炉心を見ることはできない。検証委員会報告書にあるが、3月14日以降CAMSガンマ線線量率が測定できるようになったから炉心損傷率の推定が可能となった。ガンマ線は電磁波であり、放射性物質の核種を判断することができる。クリプトンやキセノンの放出率は燃料温度に依存して高くなる。このようなことから炉心状況をCAMSガンマ線線量率の測定により可能になった。

3) 実際の炉心溶融時期

東京電力は2013年3月に「福島第一原子力発電所事故の経過と教訓」との小冊子を出している(このWeb)。この中に1号機の事故の経過(ここ)、2号機の事故の経過(ここ)、3号機の事故の経過(ここ)のページがある。これらのページを見ると、燃料の露出・損傷が1号機では3月11日(20頃?)、2号機では3月14日(18時頃?)、3号機では3月13日(正午頃)に始まっている。燃料が露出すると冷却方法がなくなるのであり、一気に燃料のジルカロイ被覆管も溶融する温度となる。ジルカロイの融点はこのATOMICAの表のように温度2030K(1750℃)であるが、この表の2000K付近に溶解ジルカロイによるUO2の溶解とある。UO2とは原子炉燃料であり3000℃近い融点であるが、ジルカロイとの合金のような形になると2000℃以下で溶解する。即ち、炉心溶融となる。

1号機の炉心溶融は3月11日に生じていたのである。2号機は14日まで3号機は13日までであり、2、3号機が11日の炉心溶融を免れたのは、冷却が2号機は14日の13:25まで原子炉隔離冷却系(RCIC)により、3号機は13日の午前2時40分まで高圧注水系(HPCI)による冷却ができていたからである。しかし、それぞれバッテリーの電気を使い果たした所で運命がつきた。

4) 原子炉停止後の発生熱

原子炉とはウランの核分裂の熱を利用する。福島第一も地震発生で原子炉は停止し、その後核分裂は起こっていない。しかし、核分裂により生成される分裂結果である核分裂生成物(放射性物質)が生まれる。核分裂生成物はα崩壊やβ崩壊を起こし、熱を発生する。コントロールをすることができない核崩壊なのである。

東京電力2013年3月の「福島第一原子力発電所事故の経過と教訓」(このWebのpdf版をダウンロードすると8ページ目の右下に次のグラフがある。

Tepco

このグラフを書き直し、原子炉停止後の崩壊熱の累計も加えて24時間後までのグラフを作成した。

Fcenergy2016

24時間経過しても、それほど低くはならない。どれほどの熱かと言うと、1号機の熱出力は1380MW、2号機と3号機は2381MWであるので、約5時間後に1%程度となるが、その時で14MW、24MWの熱であり、1時間あたりA重油を1.3KLと2.2KL燃焼して得られる熱と同等である。

通常運転の場合の燃料棒の温度分布はこのATOMICAの図が参考資料であり、原子炉核燃料はジルカロイ被覆管の中にあり、ジルカロイ被覆管の外面で400℃程度である。核分裂生成物もジルカロイ被覆管の中で生成されるのであり、ジルカロイ被覆管の外面での冷却がなくなれば直ちに高温となる。冷却がなければ12時間ほどで炉心溶融が起こると私は考える。

福島第一の1号機は津波被害の発生直後直ちにせめて直流電源を自衛隊を使ってバッテリだけでも回復し、最悪はベントでしのぐ必要があったと考える。2号機と3号機はバッテリーが使用可能であった時間内に新規バッテリーを用意すべきであった。

<追記>

2012年3月12日に東京電力は「MAAPコードによる福島第一原子力発電所の事象解析について」(これ)を発表している。その中の解析結果として、1号機炉心露出開始11日18時10分、炉心損傷開始18時50分、2号機炉心露出開始14日17時00分、炉心損傷開始19時20分、3号機露出開始13日9時10分、炉心損傷開始13日10時40分との記載がある。

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コメント

吉田調書
http://www.asahi.com/special/yoshida_report/1-2.html
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 2号機ではいったん13日に、格納容器から排気塔につながるベントライン上の弁を二つとも開け、いつでもベントできる状態にしていたのだが、14日午前11時1分の3号機の爆発で、うち一つが閉じて、開かなくなってしまった。
 午後4時15分に原子力安全委員会委員長の班目春樹から直接電話があり、ベントができないなら原子炉圧力容器のSR弁をすぐに開けろと言われた。が、これも作業を始めてから1時間たったが開かなかった。
 ベントの弁と同様、平素は簡単な操作で開くのだが、125ボルトの直流電源を供給するバッテリーが上がってしまったのか、うんともすんとも言わなかった。
 福島第一原発では、所員の自家用車からはずしてきたり、福島県内のカー用品店で買ってきたりして、12ボルトの自動車用バッテリーをかき集めていた。東電本店や、新潟県の柏崎刈羽原発などほかの発電所からも送ってもらった。それらを10個直列につないで120ボルトのバッテリーにして装着してみたがうまくいかない。

??「ここで何回目かに死んだと、ここで本当に死んだと」

 10個では電圧が定格より5ボルト足りないからと11個つなぎにすれば良いのではないか、いや、これは電圧でなく電流が足りないから120ボルトのバッテリーをもう1セットつくり、2セットを並列つなぎにしたほうがいいのではないか、と試行錯誤を繰り返したがなかなか開かなかった。
 このままSR弁が開かないと圧力容器内の圧力は高止まりし、消防車の低いポンプ圧力では、いつまでたっても炉に水を注ぎ込むことができない。
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ここで言うバッテリは、125V3Aの容量で、車のバッテリはカローラクラスでも28Aあるので、正常なものならば容量不足は絶対にあり得ません.
アクチュエータに津波で海水が染み込んで絶縁不良を起こし動作しなかった可能性が高く、そうならば、正規の正常なバッテリを繋いでも動作しません.
普通のテスターでも、電圧と10A程度の電流は測れるので、弁を作動させながら電圧と電流を測れば、断線しているのか、絶縁不良で過電流が流れているのかはすぐに判断できたはずです.(絶縁不良で過電流が流れていればすぐにバッテリが上がってしまう)

3号機ではSR弁が開かず7時間注水が停止したりしているが、いったい何をやっていたのか?.

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1号機は、操作員の弁の操作ミスで炉内圧力で動く注水ポンプが作動していなくて、炉心露出開始11日18時10分を引き起こしました.
バッテリの問題ならば、この時点ではまだ避難指示が出ていないので、近くのホームセンターへバッテリを買いに行くことが出来ました.
操作員が弁を操作しているとき、集中制御室の表示灯が、消えていたものが点灯してまた消えている.つまり、バッテリに繋がる回路に異状があったと考えられ、単純にバッテリだけの問題ではありません.
ちなみに東北電力に依頼した電源車が11日の22時に到着しています.

投稿: rumichan | 2016年6月21日 (火) 10時48分

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