失格に相当する安倍首相発言
裁量労働制に関する発言であるが、そもそもの発言は、1月29日の午後の衆議院予算委員会での立憲民主党長妻委員に対する次の安倍首相の答弁です。
『その岩盤規制に穴をあけるには、やはり内閣総理大臣が先頭に立たなければ穴はあかないわけでありますから、その考え方を変えるつもりはありません。
やはり内閣総理大臣が先頭に立たなければ穴はあかないわけでありますから、その考え方を変えるつもりはありません。 それと、厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということは御紹介させていただきたいと思います。
その上において、・・・・』
「御紹介させていただきたいと思います」と言っておきながら、実は何も紹介をしていない。衆議院の議事録と国会TVで確認したが、これで終わっていた。調べていくと、とんでもない発言であり、野党を含め国民を陥れようとした悪意の発言であると推測するに至った。
1) 裁量労働制で働く人の労働時間は、一般労働者よりも長いのが事実
ここに、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が、平成25年11月中旬から12月中旬に実施した裁量労働制に関して労働者に対するアンケート調査を実施しての報告書(裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果労働者調査結果)がある。私が、調べた限りでは、これが唯一の公表されている資料である。
ずばり、この報告書の図表4-6(22ページ)が次である。
この図表4-6は、専門業務型裁量制の場合は月に200時間以上の実労働時間となっている人の割合が52.2%と語っている。毎日8時間、月に22日間働く場合の月間労働時間は176時間である。企画業務型裁量制の場合の月に200時間以上は43.3%で、通常の労働時間制では30.4%である。
2) 真っ赤な嘘の安倍答弁
その後の委員会の質疑の中で、厚労省の「2013年度労働時間等総合実態調査」の結果であるとして、裁量労働制で働く人の労働時間は1日平均9時間16分、一般労働者の平均は9時間37分との安倍・加藤の説明になってきた。
そこで、引用した厚労省の調査であるが、これが実は1)で紹介したJILPTの調査である。報告書に記載はないが、報告書の概略版が存在し、それが2013年11月18日の第105回労働政策審議会労働条件分科会での資料No.2-3(これ)である。次のページが、その最終ページであり、企画業務型裁量制の実働平均時間9時間16分との記載がある。
しかし、9時間16分が、どのような計算で算出されたのかは不明である。報告書には記載がない。数字を誰かが勝手に算出し、しかもその計算方法や計算の合理性についての一切の説明がないのである。落第論文か無理矢理のこじつけである。
次に9時間37分の嘘であるが、この民進党の2月15日のWebに『「働き方改革虚偽データ疑惑」野党合同ヒアリング』というのがあり、その中の配付資料というに次がある。
クリックすると拡大するが、右端に1時間37分とある。これに1日の労働時間8時間を加えると9時間37分になると言うのが根拠である。しかし、厚労省の調査や統計を幾ら探してもこの表は浮かび上がってこない。更に、8時間を加える事の根拠はない。7時間労働の人も存在する。平成25年度労働時間等総合実態調査(この報告書)では、法定時間外労働の実績として1年の平均78時間30分(表28)、1月の平均13時間27分(表32)とある。即ち、年間250日、月間22日として1日平均の法定時間外労働時間の平均は19分あるいは37分となる。
3) 悪人
安倍や加藤は野党のみならず国民に偽データを提供し、騙そうとする極悪人である。大東亜戦争を仕掛けた東条英機等と同罪である。
岩盤規制に穴をあけるとは極悪人の表現である。労働者の労働時間や労働条件の改善については長期間労働者が戦ってきて手にした保護が存在する。それ故に、規制があるわけで、必要な規制は存続せねばならない。
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