地方自治体の合併と豪雨災害
朝日新聞の論壇時評に慶応大学教授の小熊英二氏が書かれた「豪雨災害を機に 地方行政の単位、見直す時」というのがあった。(無料で読めるのは、冒頭だけですが、登録すれば1日1記事が読むことができる記事です。)
朝日 7月26日 豪雨災害を機に 地方行政の単位、見直す時 歴史社会学者・小熊英二
豪雨災害があった倉敷市真備町も2005年(平成17年)に合併により真備町から倉敷市となった。市の人口集計表によれば、2018年5月現在の人口は倉敷市全域で482,909人であり、真備地区は22,788人である。市町村の合併の特例に関する法律(「旧合併特例法」)に基づき、平成11年から17年まで多くの地方自治体の合併があった。真備町の合併(倉敷には同時に船穂町も編入された。)も、平成の大合併の一つであった。平成11年3月当時3,232あった地方自治体の数は今やその半数近くの1,718程度のようである。
地方自治体の合併が悪いと決めつける事はできないが、同時に良い面ばかりとは限らない。小熊英二氏は、朝日新聞への投稿記事の中では、例えば、次のように述べておられる。
広域合併は災害に様々な影を落としている。合併された町は、町議会や町役場がなくなり、意思決定機能を失う。物事を決めるのは、遠く離れた中心街にある県庁や市役所、市議会などだ。結果的に復興計画なども、地域の実情と乖離した巨大土木工事などになりやすい。 とはいえ、市役所職員を責めるのは酷でもある。日本は公務員の数が少なく、人口千人当たりの公務員数は英仏やアメリカの半分程度だ。そのうえ広域合併で人減らしを進めたので、非正規職員を含めて業務に忙しく、合併で編入された周辺地域には行ったことがない職員も多い。この状況で、被災地域の事情を十分に理解するのは難しいことだ。 |
災害から逃れる事が難しかった場合でも、災害を軽減する事は可能であった可能性は大いにある。手段は、ダムや堤防のような土木構築物だけに限らない。地方自治体が災害軽減に対して大きな役割を果たせる可能性はある。倉敷市真備町の場合、もし合併していなければ、真備町役場は、真備町の境界から上流1kmに満たない距離にある小田川の水位観測所の水位を必死になって見続け、例え深夜であっても、避難を呼びかけていたかも知れないと思う。真備町の場合が、どうであったかは知らないが、合併に際して、併合される市町村役場は支所と名前が変わり、勤務する地方公務員の数は減少し、住民票や国民年金・国民健康保険・後期高齢者医療保険等の住民サービス関係が主体となってしまうことが多いと理解する。
日本は公務員の数が少ない国であると私もしばしば聞く。政府や地方自治体でないとできない仕事がある。一方で、政府や地方自治体の公務員数は数が多く削減できると声を大にして発言している政治家もいる。どちらが信用できるか?公務員自身も、実は、これだけ重要な仕事をしているのだとアピールすると共に、本当にそのように重要な仕事をし、その重要な仕事をするにあたっての適切な人員数や予算を国民・住民に示し、安心できる住みやすい豊かな社会を作っていくよう尽力願いたいと思う。
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