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2019年2月20日 (水)

離婚の慰謝料請求は配偶者に対してすべし

「離婚の慰謝料請求は配偶者に対してすべし」なんて、すごく当然のことと思うのですが、最高裁のこの判決を待たなければいけないのは悲しく思います。

日経 2月19日 離婚の慰謝料、不倫相手に原則請求できず 最高裁初判断

最高裁の判決文は、ここです。

東京高裁は、次のようなものでした。

元妻が勤務先会社の男との不貞行為により婚姻関係が破綻して離婚するに至ったものであるから、男は、両者を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い、元夫は、男に対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができ るとして200万円の支払いを命じた。

最高裁は、次のように述べており、その通りであると私は考える。

1) 夫婦の一方は、他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ、本件は、夫婦間ではなく、夫婦の一方が、他方と不貞関係にあった第三者に対して、離婚に伴う慰謝料を請求するものである。

夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。 したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。

第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。

2) これを本件についてみると、前記事実関係等によれば、男は、元妻と不貞行為に及んだものであるが、これが発覚した頃に元妻との不貞関係は解消されており、離婚成立までの間に上記特段の事情があったことはうかがわれない。したがって、元夫は、男に対し、離婚に伴う慰謝料を請求す ることができないというべきである。

私の意見

「不貞行為を理由とする不法行為責任は、離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる。」は、すっきりした解釈と考えます。

恋愛は、自由ですよ。

なお、参考として、最高裁判決文から抜き出したこの事件の時系列経緯を書いておきます。

1994年3月 元夫と元妻は結婚
1994年8月 長男出生
1995年10月 長女出生
ーーーある時期から、元夫は仕事のため帰宅しないことが多く、元妻は男が勤務する会社に入社した。ーーー
2008年12月以降は元夫と元妻の間で性交渉はなくなった。この頃、元妻と男は知り合うこととなった。
2009年6月 この頃から、元妻と男の不貞行為は始まった。
2010年5月 この頃、元夫は元妻と男のことを知った。その後、元妻は、男との関係を解消した。元妻は元夫との同居を続けた。
2014年4月 長女が大学に進学したのを機に、元妻は元夫と別居し、その後半年間、元夫のもとに帰ることも、元夫に連絡を取ることもなかった。
2014年11月 横浜家庭裁判所川崎支部に対し、元夫は、元妻を相手方として、夫婦関係調整の調停を申し立てた。
2015年2月25日 元夫と元妻の離婚調停が成立した。

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コメント

日経新聞の記事
判決によると、損害賠償を訴えた男性は2010年に妻の不倫を認識。不倫に対する慰謝料の請求権の時効(3年)が消滅した後の15年に離婚、不倫相手に約500万円の賠償を求め提訴した。

一般的な訴訟では元配偶者の不倫相手に不倫慰謝料を請求、離婚原因と認定された場合は増額される。今回は時効が成立していない離婚に対する慰謝料を請求していた。
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不倫に対する慰謝料の請求権の時効は3年で、記事から判断する限り、夫は妻の不倫を知ったときは慰謝料の請求を行わず、時効は成立した.
おそらく、この時点では、夫は離婚する気は無かったのであろう.けれどもその後、妻の側から別居を始めて、結果、離婚に至ることになった.
だから夫は、離婚に対する慰謝料を、妻の不倫相手に求めることにしたのである.
言い換えれば、夫が妻の不倫を知ったとき、離婚するつもりであったならば、あるいは結果として離婚に至のではと言う認識があったなら、その時点で不倫相手に対して、慰謝料を請求していたと考えられる.

今一度書けば、
夫は妻の不倫を知ったとき、離婚を考えず、妻に優しく接することにした.だから不倫相手に慰謝料を求めなかった.
けれども、その後、妻の側から離婚を求められ、そして現実に離婚に至ったので、時効の成立してしまった不倫の慰謝料に代えて、離婚の慰謝料を妻の不倫相手に求めることにした.

付け加えれば、
あなたの言われるように、『恋愛は、自由ですよ。』、を理由に慰謝料を認めなかったのではありません.

投稿: rumichan | 2019年2月20日 (水) 23時52分

rumichan さん

最高裁の判決文を読んでください。

投稿: ある経営コンサルタント | 2019年2月21日 (木) 00時00分

<日経新聞の記事>
一般的な訴訟では元配偶者の不倫相手に不倫慰謝料を請求、離婚原因と認定された場合は増額される。今回は時効が成立していない離婚に対する慰謝料を請求していた。

同小法廷は判決理由で「離婚は本来、夫婦間で決められるべき事柄」として、不倫が原因で離婚しても不倫相手が直ちに責任を負わないと指摘。離婚慰謝料は不倫相手が不当な干渉をした結果、やむを得ず離婚したなどの事情があるときだけ請求できると結論づけた。
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1.『恋愛は、自由ですよ。』であっても、不倫に対する慰謝料は認められていて、なおかつ、それがために離婚に至れば、慰謝料が増額される

2.不倫が原因で離婚したにしても、慰謝料は不倫に対して請求すべきであって、
「離婚は本来、夫婦間で決められるべき事柄」なので、不倫相手に慰謝料の請求は出来ない.
(と言う、判決である)

『恋愛は、自由ですよ。』などと、漫画みたいなことを言っていないで、自分が引用した新聞記事を、もっとしっかり読まれたらどうですか.

投稿: rumichan | 2019年2月21日 (木) 01時33分

先に書いた事柄を修正することになるかも知れませんが.
<あなたの記事から引用>
2014年4月 長女が大学に進学したのを機に、元妻は元夫と別居し、その後半年間、元夫のもとに帰ることも、元夫に連絡を取ることもなかった。
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妻が不倫をした頃、二人の子供は、中学生か高校生だった.だから、夫は妻の不倫を知った時、子供への影響を考えて、事を荒立てず済ますことにした.
子供への影響を考えて、妻との離婚はせず、相手の男を訴えて慰謝料を請求することもしなかった、と考えるのが一番自然でしょう.
おそらく夫は、不倫をして別れたという妻を、子供への影響を考えて数年我慢するように、宥めたのだと思います.

数年後、
私の推測ですが、長男が大学に進学して、下宿するために家を出た.そして、長女も同様に大学に進学して、家を出た.
家に残ったのは、夫と妻の二人だけ.
妻は家出をして、夫に連絡を取ることもなかった.....
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夫が妻の不倫を知ったとき、妻の不倫を、思春期の子供に知られないようにした、と考えられます.
それがために、不倫相手を訴えなかったのであり、かつ本来、不倫に対する慰謝料が認められるのであれば、この場合、時効が成立した不倫に対する慰謝料に代えて、離婚に対する慰謝料が認められても、何もおかしくはありません.
3年で時効になってしまうことがおかしいのであり、高裁の判決は状況を考慮した判決だと思います.
『離婚の慰謝料、不倫相手に原則請求できず 最高裁初判断』
つまり、この場合は『原則』が当てはまらないと考えられます.

投稿: rumichan | 2019年2月21日 (木) 01時37分

婚姻解消に伴う慰謝料は、元夫と元妻の2人の間の損害賠償であり、どちらが原因者であり、どちらの責任が大きいのか、どちらの損害が大きいのか等を考慮して、どちらが相手に対して幾らの慰謝料を支払うか決めるべきです。双方が弁護士を起用することもあるでしょう。家庭裁判所で決着が付かないなら、高裁で争っても良いわけです。
今回の最高裁判決が出した基準である「夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときは、その第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負う。」はきわめて妥当と考えます。

投稿: ある経営コンサルタント | 2019年2月21日 (木) 23時33分

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