2009年10月30日 (金)

太陽光発電からの電力買取48円が始まります

1) 太陽光発電電力買取制度

太陽光発電からの48円/kWhでの電力買取が11月1日より始まります。誰が、そんなことを決めたかですが、経済産業大臣です。次の二階経済産業大臣告示です。

2009年8月31日付経済産業大臣告示278号

そんな権限が大臣にあるのかというと、大臣告示には本年7月8日公布の「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」第5条1項の規定に基づくと書いてあり、第5条1項は次の通りです。

第5条1項 経済産業大臣は、特定エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用の適切かつ有効な実施を図るため、特定エネルギー供給事業者が行う事業ごとに、非化石エネルギー源の利用の目標及び次に掲げる事項に関し、特定エネルギー供給事業者の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
一  推進すべき非化石エネルギー源の利用の実施方法に関する事項
二   再生可能エネルギー源の利用に係る費用の負担の方法その他の再生可能エネルギー源の円滑な利用の実効の確保に関する事項
三  その他非化石エネルギー源の利用の目標を達成するために計画的に取り組むべき措置に関する事項

私も、この5条1項が、そんな幅広い権限を大臣に与えているとは、読み切れていませんでした。しかし、電力買取価格のみならず、消費者が負担する太陽光発電買取結果による電気料金の値上げ幅まで、大臣が決定する権限を持っています。法律としては、政府に権限を与えすぎであり、公正な委員会を組成するような内容の法律にできなかったかと思います。なお、消費者負担については、告示278号の5ページ目に「当年度における転嫁の単価については、・・・・」と書いてあり、毎年度設定するとなっています。

ユニバーサルチャージならぬ太陽光サーチャージですが、大臣がそこまでの権限を持つとなると、物価統制のような気がしなくもありません。日本の電力料金は電力会社が経済産業省の認可を受けるが、主体は電力会社という方式(電気事業法19条)でした。即ち、電気事業は公共インフラであるが、事業主体は民間上場企業をとした制度です。更には、2000年の電気事業法改正により、大口電力(現在は50kW。但し、沖縄は2000kW。)は自由化され、大口電力の料金については大臣による認可もないからです。

2) 太陽光サーチャージ

太陽光発電を設置していない人にとっては、電気料金の値上げ幅の方が、気になります。料金関係については、経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会・電気事業分科会買取制度小委員会が、料金に関する検討を行い、結論を出し、その結果、大臣告示となっています。ここに”買取制度小委員会「買取制度の詳細設計について」取りまとめ”と題した2009年8月25日付けの審議結果があります。なお、この調査会や委員会が、どの法令で設立され、どのような権限を保有しているかについて調査できていません。

8月25日付けの審議結果の5ページの一番下に48円の買取価格が書いてあり、サーチャージについては、2ページの脚注に「kWh 当たりの負担額は約0.1 円程度(制度導入当初)」とあり、資料2ページ(17/27ページ)にもう少し詳しい説明があります。但し、10ペ-ジに、「例えば、暦年ベースの買取総額を集計し、次年度に回収するスキームを基本とすることが適当である。」と書いてあり、2010年4月1日からの電気料金値上げです。

2010年4月からの値上げ幅は、0.1円/kWhと予想されます。月に300kWhの電力を消費する家庭であれば、月30円ですが、家庭用の電力のみならず、あらゆる電力が値上がりするので、物価に跳ね返ってくる部分もあると思います。

なお、将来のサーチャージ額ですが、7月12日の太陽光発電による電気料金の値上がりに書いたように麻生総理が4月9日に日本記者クラブで20倍にすると述べたのです。そうなると、逆さや分は20倍の2円/kWhとなり、毎月600円で年間7,200円の負担です。これに物価上昇が加われば、年間1万円今より電気代他出費が増えます。

麻生総理が言うように20倍になるか不明であるし、技術革新により太陽光発電設備も安くなり、買取価格が下がっていくので、逆ざやは単価においては小さくなるはずです。しかし、量の上では、増加するので不明ですが、基本的にエネルギー価格は今後とも上昇を続けると見て間違いはないと思います。

3) 太陽光悪徳商法

やはり太陽光悪徳商法が、はびこっているようです。わざわざ経済産業省が呼びかけていますから。

経済産業省News Release 2009年10月8日 太陽光発電装置に関する消費者保護の取り組みについて

次の国民生活センターの報道資料発表は、悪徳商法の事例が6ケース書いてあります。

国民生活センター 報道発表資料 2009年10月7日 ソーラーシステムの訪問販売のトラブルが増加 -「売電収入」や「補助金」の過剰なセールストークに惑わされないで-

悪徳業者は、裁判でも訴えてくるから、大変です。例えば次の裁判例があります。(これは、70万円から100万円、あるいはそれ以上かも知れませんが、高く売りつけていた例です。)

平成21年9月17日判決言渡 平成20年(ワ)第6050号損害賠償請求事件

4) 太陽光発電の損得勘定

太陽光発電設備の費用は、幾らが妥当かと言えば、2)でリンクを張った2009年8月25日付けの審議結果の資料3ページ(18/27ページ)に書いてある3.5kWの設備で185万円か、それ以下だと思います。

幾ら買取収入が得られるかは、ここにSanyoの説明がありますが、1,169を掛けたのが年間発電kWhとなっています。これに、冷蔵庫等家屋内で消費した電力を引いた残りなので、審議結果の資料3ページは60%としています。そうなると、700を掛ければよいので、3.5kWの設備では年間2,450kWhであり、48円で買取収入が得られれば、117,600円です。年による変動もあるし、屋根が南から少しずれていることもあると思うので、これが最大限なのかも知れません。

いずれにせよ、審議結果の資料3ページ(18/27ページ)は、当然のことですが、実勢の数字です。これを参考にするのがよいと思います。但し、メンテナンスフリーではないことを認識しておいてください。台風が来て、物が飛んできて壊れる可能性もあるし、屋根に上って素人がメンテナンスすることは不可能です。それと、電池は直流ですが、利用や買取の際は交流なので、インバーターやそのコントロール関係もあります。これらも、専門家でないとメンテナンスができず、メンテナンスをすると、その年は買取収入以上の出費になるかも知れません。

将来の姿が見えにくいのですが、エネルギー価格は上昇するとの読みで、20年後を楽しみに投資するのが太陽光発電かも知れないと思います。但し、一方で、買取価格は国民全員による費用分担で支えているのであり、闇雲に進むのではなく、監視を続けて、必要があれば制度改正を行うことが重要と考えます。

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2009年10月26日 (月)

鳩山政権の税制改革

衆院本会議で、鳩山首相就任後初の所信表明演説がありました。例えば、次のリンク先でに全文を読むことができますが、下に抜き出した文章は全くその通りで、賛成します。

Nikketi Net 特集 政権交代 (10/26)鳩山首相が初の所信表明 国政の変革、政治主導で

政党や政治家のためではなく、選挙のためでももちろんなく、真に国民のためになる議論を、力の限り、この国会でぶつけ合っていこうではありませんか。

税制改革については、内閣府に税制調査会を設置することを9月27日の閣議で決定し、既に3回会合を持っています。閣議決定は、ここにあります。

1) 鳩山政権の税制改革の理念

党税調は持たずと言っており、自民党を反面教師にしています。確かに、自民党政権が利益調整政権であったので、利益調整を実施する重要な機能を党税調が持っていました。利益調整をせず、国民のためにまっしぐらに進むとの理念で党税調を廃止したと理解します。

第1回の税制調査会での、鳩山首相の冒頭の挨拶には次の文章がありました。(議事録はここにあります。なお、会議のビデオや資料等がここから見れたり、Downloadできます。)

・・・・・ある意味で「政治とは税なり」と、税の議論こそ政治家が真剣に行わなければならない最大のテーマだと思っておりますが、・・・・・、この国の未来に向けてあり得べき税制の在り方というものを真剣に国民のために議論していただき、結論を得ていただきたい、心からそのことをお願い申し上げます。・・・・

2) 税制改革の方向

第1回の税制調査会で、鳩山首相が10月8日付諮問文府企第241号(ここにあります。)を提出していますが、この諮問を読めば、税制改革の方向が分かります。

A) 番号制度の導入

是非早急に導入してください。国民にとって年金と健康保険は、重要です。税も国民にとって重要であり、統一番号を使って、給付も徴収も合理的に進められるようにすべきで、「消えた年金問題」が過去の失敗例を物語っています。10月26日の「あらたにす」でも、中央大学森信茂樹氏が「「番号」の導入を決断する時」を書いておられました。ここにあります。

B) 所得控除から給付付き税額控除へ

子供手当導入までに、導入するのでしょうか?月額2万6000円を支給するなら、子供2人で年間624千円。給付付き税額控除なら、税額が624千円以下の人は、税金を納付するのではなく、税金とは政府が支給してくれる金銭になる。面白い制度で、色々使えるかも知れないと思います。

一方で、消費税率を上げるために、消費税制度の低所得者に対する逆進性を解消し、負担を軽減するために、給付付き税額控除が言われていた面がある。給付付き税額控除の導入は、消費税率上昇に向かうことを加速するかも知れない。しかし、給付付き税額控除という制度を悪者にする必要はないと思う。

配偶者控除も中止し、夫婦合算課税か、共稼ぎでも専業主婦(夫)でも差がないようにしないと、例えばパート主婦の低賃金のような様々な問題が解決しにくいと思う。社会の変化に税制が対応しないといけないのは、法人税のみではなく、働き方とか生活に密接に関連した部分の税制改革は重要と思う。

給付付き税額控除は、番号制度がないとうまくいかないと思います。

C) 炭素税

ガソリン・軽油の特別税を廃止するなら、その代替となる税を考えるべきと思います。ガソリン・軽油の特別税の廃止については、何故廃止するのか、私は理解できない。一般財源になっているのだから、廃止するより年金・医療に回した方が、国民のためになると思うのだが。

高速無料化も同じで、料金が高すぎるなら、千円高速の廃止を含め合理的な料金が幾らであるかを、国民の前に資料を明示して、議論をするのが最初のステップだと思う。

炭素税も、議論が必要で、CO2削減策とも密接な関連がある。検討は必要であり、諮問は「環境負荷に応じた課税」と言っていますが、私は炭素税だと考えました。でも、来年3月に法を成立させるのは、性急すぎる。もう1年掛けるべきだと思います。そうなると、ガソリン・軽油の特別税の廃止も1年先送りがよいと思います。

D) その他

上記以外に租税特別措置法の見直しやたばこ税の増税がありますが、いずれにせよ、様子を見たいと思います。将来の明るい未来のための税制を作ってもらいたいと思います。

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2009年10月21日 (水)

所得格差の拡大

次の報道からです。

読売 10月20日 日本の「貧困率」15・7%、OECD中4位

1) 貧困者は増加している

上の読売の記事よりは、この厚生労働省のグラフがよく判るのですが、1998年の貧困率は14.6%であったのが、2001年に15.3%となり、2004年は14.9%に下がったものの、2007年は15.7%と右肩上がりです。貧困者とは、所得を低い者から並べて真ん中の者の50%の所得以下である者としています。所得とは、税引後、社会保険負担差し引き後であり、年金を受給している場合は、年金も所得に加え、生活保護費も所得としています。これらを世帯単位でカウントして、その上で世帯の人数の平方根で割り算をした金額です。4人家族で100の所得は、一人あたり50とし、5人家族であれば44.7であり、3年家族であれば57.7です。

2) 各国比較

OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics - ISBN 92-64-05604-1 がここからDownloadできます。このOECD Factbook 2009による各国比較です。なお、OECD Factbook 2009では、日本の貧困率は14.93%としています。(2004年の数字かも知れません。)各国比較をグラフに書きました。

Oecdpovertyrate2007

デンマークやスウェーデンの3倍以上ですから、日本は、貧困者が多いのです。もう少し、観点を変えて、日本の14.93%が貧困層ですが、この貧困層の平均所得が真ん中の所得の人と差が幾らあるかを貧困層所得差(Povery Gap)とOECDは呼んでいます。日本の貧困層所得差は、34.7%であり、これも次のグラフのように、差が大きい方から7番目で、トップクラスです。

Oecdpovertygap2007

OECD Fact Book 2009にジニ係数もあることから、同じようにジニ係数のグラフを作成しました。

Oecdginicoef2007_2 

ジニ係数は、中間所得者を含めた全体の姿における所得格差であり、別の指数として、高所得上位10%に入るための所得金額が、低所得下位10%になってしまう人の所得金額の何倍になっているか(P90/P10)と、真ん中の所得の人の所得金額が低所得下位10%になってしまう人の所得金額の何倍になっているか(P50/P10)を表したのが次のグラフです。

Oecdinterdecile_ratio2007

比較の対象となっている国の中で、日本より所得格差が大きいのはメキシコ、トルコ、ポルトガル、米国、ポーランドの5国のみです。

3) 税制改革

所得格差を縮める一番優れた方法は税であります。高所得者から、税を徴収して、低所得者を優遇する。上の比較グラフを見ると、日本の所得税がいびつであると感じます。高所得者が優遇されていすぎるのです。1億円以上の高額所得者(収入ではなく所得です。)には、現行の最高税率を引き上げて例えば50%の税率を1億円を超える金額については適用する。

民主党政権は、子供手当支給で来年度予算が膨らんでいますが、もし半額支給するなら所得税の扶養家族控除を半額に減額して、増税を図るべきと思います。全額支給の際は、扶養家族手当を廃止すべきで、所得再配分を図っていくべき。そうしないと格差が拡大する一方と思います。租税特別措置法にも手を付けると民主党政権は言っていますが、是非証券税制を一般の所得と合算するように、証券に関する租税特別措置を廃止して欲しいと思います。そうすれば、株が値下がりして売却した場合には、所得から差し引けるので、税が安くなるし、預金の利息も租税特別措置を廃止すれば低所得者は預金で差し引かれている税が戻ってきます。それと、高額相続財産がある人の相続税の増税をすべきです。一定以上の財産を相続することに対して、現状のような低い相続税率で妥当かです。(税率を上げても税収全体に対するインパクトは小さいが、全くの不労所得ですから、一定の住居、農業を含め事業を継続する為の資産を超える相続には、相続税を課さないと不合理性が拡大すると思います。)

上の所得倍率のグラフを見て、P50/P10は一番低いのがチェコで1.74で高いのメキシコの2.86です。一方、P90/P10は、低いデンマークの2.72と高いメキシコは8.53で差が大きく、日本もP90/P10は4.77で高所得者の所得金額が非常に高いのです。貧困層の増加がある一方で、高所得者は高額の所得を楽しんでいる日本。正しい対処をしないと、1000円高速みたいに、変な結果を生み出す政策ばかりしている日本になりかねないと思いました。

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2009年10月14日 (水)

前原さん言っちゃいましたね

自公政権では、大臣がそんなことを言うはずがなかった。でも、

日経 10月13日 「羽田、国際ハブ空港に」 国交相表明、成田など活用焦点

多くの人が、誰かが言い出すと思っていたが、誰も先頭を切りたくなかった。羽田で4本目の滑走路(D滑走路)が完成し、年間の発着能力が現在の約30万回から約41万回に増えることになる2010年10月まで1年になりましたから、直前に言い出したら、混乱は更に大きかったはずで、タイミングとして丁度良かったのだろうと思います。

1) ところでどうなるか

国交省東京空港整備事務所のWeb(ホームページはここ)を見ると羽田の平成15年度離発着回数は300.1千回になっており、完成により増加可能なのは11万便である。(1時間あたりでは、現在の最大29便を41便に増加させることができる。)一方、成田空港は、成田国際空港株式会社の有価証券報告書によれば、2008年度は離発着回数191,331回でした。

現実には、新規あるいは増発の羽田乗り入れ希望国内便もあり、成田に乗り入れたがっている外国の航空会社もあると理解する。

どのように振り分けるかですが、単純なのは、滑走路により区分することです。羽田はA滑走路3,000m、B滑走路2,500m、C滑走路3,000mと工事中のD2,500mの4本であり、成田はA滑走路4,000mと延長工事中のB滑走路2,500mです。3,000mの滑走路で、離陸できる飛行機とできない飛行機と、区別されるかどうかですが、このJLのWebを見てください。これだとB747の離陸滑走距離が3,250mになっています。但し、少し古いので、このNHのWebを見てください。B777の離陸滑走距離が3,580mとなっています。なお、JLもB777を保有しています。ここには離陸滑走距離が書かれていませんでしたが、離陸に関する性能は同じと考えてください。

ところで、B747やB777の場合に、3,000mはダメで、3,500mや4,000mの滑走路が必要かというと、3,580mの滑走距離になるのは、例えばロンドンやニューヨークに飛ぶ時で、シンガポール程度なら燃料積み込み量が55トン程度少なくて済み、機体が軽くなるので、滑走距離は2,500mでも大丈夫となります。従い、滑走路が3,000mあれば、アジアには大丈夫で、オーストラリアやインドも大丈夫と思います。米国西海岸あたりだとは微妙ではないかと思います。

飛行機の性能が関係するので、政治的に変えようとしても変わらない部分です。

2) 羽田と成田

羽田に、それほど多くの国際線が移るかというと、羽田の国際線ターミナルはそれほど大きくはなく、余り多くは移らない気がします。現在の最大の不便さは、羽田と成田の間の移動です。ところで、同じように2010年度完成を目指して成田新高速鉄道が工事中です。(ホームページはここ)最高160km/hで走り、都心と36分で結ぶと言うのです。この都心とは、どこかですが、京成上野又は日暮里です。現在の北総線が空港に延長され、京成が走るのですが、それなら、押上から地下鉄に入れば、京急と連絡され、成田ー羽田が1本の鉄道で乗り換えなしに、高速・短時間で繋げるべきと思います。

成田は、国内線がほとんどなく、地方と外国の間は羽田と成田を使うと、とても不便です。羽田・成田高速鉄道を実現するのが良いと思います。

3) 千葉県問題

千葉県知事や成田市長は、おさまりません。対立は、良くないのです。それでなくとも、成田問題こそ、対立の歴史であったのですから。羽田と千葉県は無縁ではありません。羽田空港に着陸する際に、否が応でも千葉県の上空を3000ftから6000ftで飛ばざるを得ないことが多いのです。深夜便は、東京湾沿いになんとか、海の上を飛んで着陸する計画ですが、風向きの都合で、千葉県上空に入らざるを得ないかも知れない。

対立する必要もないので、話をすれば解決すると思います。

4) 関空問題

関空は、A滑走路3,500mとB滑走路4,000mですから、実はハブ空港として日本で最も好都合な空港です。この滑走路を生かせるかどうかは、関空の経営力なのでしょう。

どうすればよいか。簡単です、日本唯一の東アジアのハブ空港として売り出すのです。その為には、大阪空港(伊丹)を閉鎖して、関空に人が集まるようにする。大阪空港が、存続している理由は、エゴでしかなく、もし存続するなら大阪府に税金の負担を願う。なお、関空の2008年度の離発着回数128千回でした。

どちらにせよ、大阪府が経営をすればよいのであり、前原さんが突き放したのも正しかったのかと思います。大阪府が関空をハブ空港として経営できるか、府税を投入し続けるか、興味があります。

5) 地方空港のハブ選び

地方空港は、インチョンをハブ空港として考えるべきとの気がします。インチョン空港は3,750mが2本と4000mの合計3本の滑走路を持っています。富士山静岡空港も、インチョンに1日2便ですから。それに、富士山静岡空港は、新幹線の線路の上にありますから、静岡県が新幹線駅を建設し、JR東海に「こだま」を止めてもらったら、新幹線と空港とその先のハブ空港に繋がります。現実に財務的に成り立つかどうか検討が必要ですが、地方空港は地方空港としての身の振り方を決めて行かざるを得ないと思います。

所詮、政府なんて信頼できないですから。無理筋は、政権が変われば、反故にされると思った方がよいのです。次の地図は、富士山静岡空港が新幹線の上にあることを示しています。

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2009年9月27日 (日)

亀井さん、こちらのほうはどうするの?

アイフルが事業再生ADRの申請を行い、受理されました。

9月24日 アイフル発表 事業再生計画(案)の概要に関するお知らせ(事業再生ADR手続の正式申込および受理)

本当に大変なのは、どこなのか、金融政策として(単なる政府資金の導入のみならず、法の整備も含め)必要な対象は、何であるのか?そう簡単ではないと思います。そこをしっかりと見極めて実施するのが重要であり、選挙の票のために、政策があるのではありません、

消費者金融を支援しようというのではなく、むしろ次の報道が気になります。

日経 9月21日 貸金業者、1年で32%減 5月末5700社、規制強化で廃業増

業者が廃業した結果、ヤミに潜っているのではないかとの危惧です。業者側がヤミ金融業者となることもあるかも知れませんが、借り手が新規資金に恵まれたとはとても思えず、借り手がヤミ金融に手を出して深みに陥ってしまう恐れです。(アイフルも貸借対照表を見ると貸付残高が減少しています。)

グレーゾーン金利の廃止は、それでよかったかも知れないが、当時心配されたヤミ金融の増加懸念については、対策が施されているのだろうか?対策ができていないと、グレーゾーン金利を廃止ししても意味がないことになってしまう。グレーゾーン金利の返還問題は、裁判で争えばよいだけですが、立法により廃止することは、法律論争ではなく、実社会の経済取引のルールに関与することですから、実際に社会でおこっている減少をウォッチし、モニターを継続し、必要とあれば、次々と手を打つたねばなりません。

亀井さん、あなたは就任早々、モラトリアムなんて発言したのですから、貧困により消費者金融からも相手にされなくなった人達に対するケアも十分していただきたいと思います。

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2009年9月23日 (水)

高熱隧道(黒部第三発電所)

検索語「八ッ場ダム」で、このブログを訪問いただいていく方が、最近増えています。ダム関係を書くに際して、8月22日 ダムの議論の中で、吉村昭の小説「高熱隧道」に少し触れました。そこで、もう一度、高熱隧道を読んでみました。

高熱隧道とは、黒部第三発電所の水力発電所導水トンネルとそれに先立ち掘削完成させる軌道トンネルのことで、温度140℃(最高165℃)というダイナマイトの自然発火温度を超えた岩盤を相手に、熱水が噴き出してくる中を掘削した極めて難工事で完成したトンネルです。掘削といっても、トンネルボーリングマシン(TBM)があるわけではなく、人力によりドリルで穴を開け、そこにダイナマイトを差し込んで、発破により岩盤を崩し、崩した岩盤(ズリ)をトンネル外に出していく工事でした。当然人力で、トラックはなく、トロッコです。軌道トンネルとは、ダム建設時は、資材運搬用、完成後はメンテナンス用のトロッコ軌道です。

そのトンネル場所は、次のYahoo地図を見てください。トロッコ電車で有名な黒部峡谷鉄道がありますが、その終点が欅平です。欅平に建設した水力発電所が黒部第三発電所であり、そこから約6km上流(南)に行った地点に建設したのが仙人ダムであり、仙人ダムと欅平間を結んでいるトンネルの阿曽原谷と仙人ダム間の部分が高熱隧道です。隧道は、2つへ移行してあり、1つは水が流れており、人は入れませんが、もう1本も公開されていないので、通常は入れません。

地図の上の端に欅平があり、下の端に仙人ダムや黒四地下発電所という文字が見えると思います。高温部分は、地図の真ん中あたりにある、阿曽原谷や阿曽原小屋と書いてあるあたりから、仙人ダムまでの705mです。(欅平から水色の点線が下に出ているのが見えますが、これが水路トンネルです。点線が2本見えるのは、黒部第三発電所用と新黒部第三発電所用の2本あるからです。)

発電所着工が昭和11年です。当時の状況は、満州国建国宣言昭和7年、日本の国際連盟脱退昭和8年です。昭和11年に入ると、2.26事件がありました。翌年の昭和12年には盧溝橋事件が発生しています。日本が、軍事国家の色彩を強め、経済の上では、大不況を軍事支出増加の経済対策で、国家統制による社会主義色を強めていった時代です。米国の日本向け航空ガソリンの輸出禁止が昭和15年9月、石油前面輸出禁止が昭和16年6月で、そのような状態を政府首脳部は予想していたはずで、戦前の日本のエネルギー開発政策として、大規模水力の開発は欠かせなかった。同じような時期に着工され完成したのが東京電灯の信濃川発電所です。

吉村昭は「高熱隧道」で、限界に挑んだ人達、限界まで挑まざるを得なかった人達を小説の中で、描き出していると思いました。ちなみに、読んでいて、次のような文章には、すごさを感じました。

「日本電力でも、地質学者の意見に不信感をいだいている。大石教授の言うようにこれから掘り進んだ場合、温度が低くなるというような期待も全く持ってはいない。むしろ、温度は上がる一方だろうという意見が圧倒的だ。それに仙人谷から進んでいる本抗の抗道も、摂氏80度まで上がっているのを考えると、今のままのルートでは火の中の玉の中へ突っこんでゆくようなものだ。それで、日本電力でもルート変更を考えてくれたわけだ。

技師と人夫。そこには、監督する者と従属する者という関係以外に、根本的に異なった世界に住む者の違和感がひそんでいる。それは、一言にしていえば、技師は生命の危険にさらされることは少ないが、人夫は、より多く傷つき死ぬということである。と言うより、人夫たちには、死が前提となっているとさえいってよい。ある工事がはじまる時、その予算の中の雑費という項目には弔慰金に該当するものが必ず組みこまれている。死はあらかじめ予定されている事柄であり、しかも、それはより多くの人夫の死に対して支払われるような含みをもっているのである。

工事を強引に推しすすめることに、むろん藤平も異存はなかった。人夫たちの体は完全に熱に順応し、坑内の熱さに堪えられなかった者は一人残らず下山してしまっていて、工事現場にはたとえ痩せきってはいても強健な体をもった人夫たちだけが残されている。日当も普通賃金が1円80銭の相場なのに、いつの間にか割増金が加えられて、1日7円から8円の金額が支払われるようになってきている。かれらは岩盤温度が何度に上昇しようとも、日当さえ割額していけば作業をつづけてくれるにちがいなかった。

今は昔の物語です。しかし、もしかしたら、そんな極限状態が今でも、存在しているし、これからもずっとある気がします。だから、吉村昭が小説として残したかった。

参考事項をもう少し書くと、小説に出てくる佐川組とは佐藤組で、今の佐藤工業と思います。佐藤工業は、2002年3月に会社更生法を適用申請をしましたが、2009年9月7日に更生手続の終結をしました。(佐藤工業の発表)おめでとうございます。他社にない高度な技術力とかKnow Howとかを持っていると、不況下で同じように苦しいが、再生する潜在力はずっと高いと思います。

黒部第三発電所と言うからには、第一、第二があるはずで、第四が黒四で有名な発電所です。実は、黒四発電所は、黒部第三発電所のダムである仙人ダムの少し上流で、そこから10km以上離れた地点にある黒部ダムからの水で発電しています。黒部第一発電所という名前の発電所はなくて、柳河原発電所が第一に相当します。(現在の新柳河原発電所は、国交省宇奈月ダムの建設により建て替えられた発電所ですが、同じ場所(柳原駅)にありました。参考に表にしてみました。

Kurobehydro

新黒部川第二、第三という発電所が、昭和41年と昭和38年に完成していますが、これは黒部ダムの完成によりピーク時間の発電量を増加させることができるようになり建設したと理解します。ピーク時間の発電量を増加させると、ピーク時間帯以外で発電量が同じだけ減少してしましますが、電力という物は、貯蔵が不可能であることから、大きな意味を持ちます。

新黒部川第三発電所の導水トンネルも、旧トンネルとほぼ並行して掘削されています。同じような高熱問題がありました。見ていませんが、地熱に挑む-新黒部第3発電所導水路-という記録映画が、存在します。170℃との説明があり、難工事だったと思います。

日本電力が黒部第三発電所の発注主ですが、当時の電力会社大手は、東京電灯、東邦電力、大同電力、日本電力、宇治川電力、関西共同火力といった会社でした。当時は、軍需工業が起り、電力が不足するから、国家の手において豊富な電力を開発せねばならない、そして、戦時においては電力は国家が統制すべきであるとの考え方でした。経済分野の多くで国家統制経済に向かおうとしていた中、電力はその先頭を走っていました。昭和13年に電力管理法、日本発送電株式会社法が成立し、これらに基づき日本発送電株式会社が昭和14年に設立されたのです。日本電力も日本発送電の出資者となり、黒部第三発電所は日本発送電に引き渡されました。

黒部川の開発の歴史に関しては、この宇奈月町商工会のWebに纏まっています。但し、新黒部川第二、新第三や宇奈月ダムについては、触れられていませんが、黒三発電所のWeb Pageはあります。この日本ダム協会の仙人谷ダムの建設に関するWeb Pageには、もう一つ「内田すえの、此川純子、堀江節子著『黒部・底方の声-黒三ダムと朝鮮人』(桂書房・平成4年)」の書があることが書かれています。図書館で借りないと読めないようですが、時代からして、朝鮮人の人夫が当然働いていたと思います。

黒部第三発電所は、黒四発電所よりはるかに多い300名を超える犠牲者(単純比較はできませんが)を出して建設されました。今も水という自然エネルギーのみで、CO2を排出せずに発電をしています。おそらく何百年あるいは、それ以上の長期にわたり発電をすると思います。仙人ダムは、総貯水量682千m3の小さなダムです。自然保護と産業開発との調和という観点では、優れたプロジェクトであると思います。なお、仙人ダムへ行くには欅平から片道5-6時間、そして帰りに4-5時間かかります。欅平に宿泊して、日帰りするか、阿曽原小屋に泊まる必要があります。そうなると仙人池や剣岳も含めて行く方がよいのでしょうね。もう一つは、仙人ダムから黒部ダムへ行く方法がありますが、こちらは、もっと距離が長いし、徒渉をする必要があるかも知れず、大変でしょうね。

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2009年8月23日 (日)

大蘇ダムの漏水問題

ダムから水が漏れる。正確には、ダム湖からの水漏れであり、ダムから水が漏れるなら、ダム欠陥工事です。でも、多くの人は、ただ事ではないと考えると思います。しかし、考えようによれば、地表は水が漏れて当たり前で、水が漏れなければ、地下水は干上がります。従い、漏水も程度問題でありますが、タイトルにあげた大蘇ダムについての概況として次の大分合同新聞の記事を掲げます。

大分合同新聞 4月17日 たまらぬ水、あふれる怒り 大蘇ダム問題 

どう考えるかですが、ややこしさを理解するために少し新聞記事を掲げます。

7月29日 朝日 鳩山代表、熊本で大蘇ダム中止を示唆 「ムダなダム」
毎日(熊本) 7月31日 大蘇ダム:「計画通りの水確保」 九州農政局、秋に方針 /熊本

直ぐ前のダムの議論で、評価の必要性を書きましたが、大蘇ダムについての評価を私もできていないので、何も言えません。どのようなダムであるかについて私が調べたことを書いてみます。

1) 大蘇ダムの場所

大蘇ダムの場所は、熊本県阿蘇郡産山村なのです。大蘇ダムは、灌漑用水の取水を目的としたダムですが、灌漑用水を利用しようとする農地の大半は、竹田市荻町を初め大分県なのです。九州で、熊本県は、有明海に面しており、大分県は豊後水道に面しています。しかし、阿蘇山の近くは分水嶺が県境ではなく、少し熊本県に入っていることからのややこしさもあります。

下に、大蘇ダムを中心位置のYahoo地図を掲げます。大蘇ダムの南東が竹田市荻町になりますので、興味ある方は地図を動かして確認してみてください。JR肥後線に豊後萩という駅がありますが、その一帯です。

2) 竹田市荻町

竹田市荻町をYahoo航空写真で豊後萩駅を中心位置として、出しておきます。航空写真だと、農地であるか、山林であるかの見分けが簡単で、竹田市荻町には農地が多いことが分かります。

竹田市荻町の農地への農業用水の供給をどうしているかですが、荻柏原土地改良区(ホームページ)という土地改良法に基づく法人があり、竹田市荻町の南西にある大谷ダムの水を配分しておられます。荻柏原土地改良区のホームページを読むと、高原の農地の開発、水確保の歴史が書かれています。

3) ダム水漏れの状況

一番解りやすいのが、荻柏原土地改良区のWebに水土里ネット広報があり、その平成20年3月31日発行(No. 43)に次のグラフがありました。平成18年や平成19年は8月は400万トン以上貯水され、総貯水量430万トンのダムですから、ほぼ満水なのです。しかし、3月末に向けて貯水量が直線的に減少して、7月初めまでは実質ゼロ状態というわけです。

Midorinet

そこで、これでは、水田米作の水としては役に立たないとなります。一方、農水省の言い分ですが、実はWebから大蘇ダムやこの事業の名称である大野川上流かんがい排水事業の関連の情報が消滅してしまっているのです。その中で、見つけ出したのが、この九州農政局国営事業再評価第三者委員会(第2回) 議事録平成21年6月19日です。

水土里ネット広報とほぼ同じことが書かれていますが、「計画受益面積2,158ha のうち1,360ha を若干超えるぐらいに対しては10 年に1回程度の渇水時に対しても用水を安定的に供給できる見通しである。」となっています。

上のグラフが正しいとすると、農水省の説明が、甘すぎるように思えるのですが。

4) 感想

結論は書けないので、感想を書きます。大蘇ダムの漏水は初めから予想されていたはずです。火山中腹の土質は、水を通しやすい。荻柏原土地改良区の広報に書いてありますが、大野ダムも随分漏水するのです。ダム流入量0.35m3/秒で漏水量0.15m3/秒の記載は、40%以上の漏水となります。

漏水を見込んで、大蘇ダムの貯水容量等を決定しなければいけないのを、軽率でありすぎたのではと思います。このあたりの資料は全て存在するはずなので、検証可能なはずです。

それと、農業に関する基本プランは、どうであったのかと思います。米と野菜等の農地区分は、どうあるべきなのか、そのような基本案があってしかるべきだろうと思います。

政府は書面での約束はしていないでしょうが、荻柏原土地改良区の人達を含め大蘇ダムから農業用水供給を受けたいと思う人達に対して、約束に近い期待を与えていたのではと思います。そうであれば、責任論ではなく、契約の履行義務として、政府は水を供給するか、金銭で賠償するかの義務があると私は思います。

大蘇ダムが不要か必要か、何も解りません。代替案すら知識がありませんし。リスクについて適切な対処をしなかったと思います。食糧自給を唱えるなら、農業用水の確保は、極めて重要な課題であると確信します。

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2009年7月12日 (日)

太陽光発電による電気料金の値上がり

こんなタイトルで書き始めると驚かれるかも知れません。次のニュースです。

日経 7月9日 太陽光発電、電力買い取り価格を2倍に 経産省小委が初会合

太陽光発電を高く買うための、財源をどうするかというと、電気料金の値上げです。検討されている案は、普通の家庭で、月に100円、年1,200円です。そこまでして、太陽光を普及させる必要があるのか、国民的な合意が形成されているのか等を書いてみます。なお、毎日新聞のWeb記事には、値上げ部分も書かれているので、毎日の記事も掲げておきます。

毎日 7月10日 太陽光発電:余剰電力買い取り義務化、年内に--経産省

1) 経済産業省総合資源エネルギー調査会買い取り制度小委員会

経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会が買い取り制度小委員会を発足させることを、5月25日の委員会で決定し、その第1回の買い取り制度小委員会が7月9日に開催されました。その結果開催された小委員会討議についての報道です。議事録は、未だWebにないのですが、情報を総合すれば、ほぼ全容は掴めます。(なお、開催通知はここにあります。設置に関するメモはここ

例えば、次の発言が5月25日開催の総合資源エネルギー調査会における伊藤委員(電機事業連合)の発言です。

伊藤委員
系統対策に関して、現時点の技術においては、4月に麻生総理の演説でも述べられた「2020年に太陽光発電20倍」という大量の太陽光発電を系統側に受け入れることは不可能。日射量や気温の変化等の条件を加味しながら全国の様々な条件にてデータを収集し分析を行う必要がある。コスト面、時間の面でも時間がかかる。
負担と水準について、数十円~100円程度とはあくまで標準世帯の価格であるがどうしてもその値が一人歩きをしてしまっている。家庭用のみでなく、産業用、公共用の負担分についてもしっかり計算をすべき。国がしっかり説明責任を果たすべき。

様々な課題があるのは確かで、国民的コンセンサスを得ないと大変です。政治家に決着させようとすると、政府負担=税金投入から増税になります。税で払っても負担方法の1種なので、同じかも知れませんが、競争原理や経済合理性が働かなくなって国民負担が増加することになりかねません。

2) 総論賛成・各論反対

CO2削減については、総論では多くの賛成があるものの、具体策になると、他の更に効果的な方法があり、自分・自社はやれることを精一杯努力しているとの議論になります。私は、公平にするために、炭素税を課して、炭素税の財源で、CO2削減の様々な政策を実施すべきとの意見です。

太陽光発電買取制度についても、貧困層の犠牲・負担による富裕層優遇になる恐れもあります。即ち、自宅の屋根に太陽光発電を設置して高値電力販売が可能なのは、1戸建てに住む富裕層であり、アパート暮らし・マンション暮らしの貧困層は電気料金値上げで生活が苦しくなると言う考え方です。

7月10日のエントリー 原油価格の安定化(か?)で、原油を初め鉱物資源は有限であると書きました。一方、太陽は人類より長く存在し、その利用に価値があるのは確かです。一方、現在太陽光エネルギーを全く利用していないのかと言うと、水力が利用できるのは、太陽が地球に降雨をもたらしていることからであり、風力も同じです。植物は、光合成により太陽のエネルギーで空気中のCO2を有機物に変化させているのであり、バイオマスの利用と言っても実はそのエネルギーは太陽から来ています。だから、太陽熱・エネルギーの利用とは、太陽電池に限らないのです。本当に何が良いのだと言うことを研究すべきと考えます。そのためには、多くのことを試すべきと考えます。

3) 太陽光発電計画

麻生総理が4月9日に行った日本記者クラブでの「新たな成長に向けて」というスピーチがあります。その中で、麻生総理が次の発言をしています。

《(1)太陽光世界一プラン》
 その第一として、最も力点を置きたいプロジェクトの一つが、太陽光世界一プランであります。太陽光発電の規模を、2020年までに今より20倍にします。

今現在いくらあり、どうなるの?でありますが、ここに、経済産業省資源エネルギー庁の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の平成19年度の施行状況について」というNews Releaseがあり、2008年3月末で太陽光発電は合計1,432,407kWとなっており、平成19年度の太陽光発電から電力会社等に販売された電力量は660,625,835kWhです。平成19年度の年間設備増加量が202,698kWでしたから現在は1,700MW程度でしょうか?麻生総理は、これを34,000MWにすると言ったのです。同じ率で電力供給が増加する場合は、13,000GWh以上になるし、公共施設に設置した場合は、電力消費をはるかに超えて発電する設備となる可能性もあり、15,000GWh位になるかも知れません。

日本は、現在いくら発電して、いくら消費してるかは、次の表を参照下さい。(資源エネルギー庁の統計から作成しました。)

   平成20年度 日本の電力供給と需要バランス (単位:GWh)
単位:GWh 10電力 卸電力 自家発等 合計
水力 56,135 19,224 7,243 82,602
火力 486,884 102,709 167,474 757,067
原子力 235,161 10,446 0 245,607
新エネルギー 5 0 2,843 2,849
合計 778,185 132,379 177,560 1,088,124
他社購入/(▲)卸販売 167,621 ▲113,891 ▲47,686 6,043
揚水発電電力消費 ▲7,766 ▲1,279 0 ▲9,045
自家消費 0 5,097 102,510 107,607
家庭向け等 285,283 0 5 285,288
事務所・小規模工場 46,756 0 1 46,757
6kV以上の自由化電力 556,895 12,115 26,875 595,884
販売電力合計 888,935 12,115 26,880 927,929
電力消費量合計 888,935 17,211 129,390 1,035,536

もし、15,000GWhを現在より24円/kWh高く買うとして、それを1,000,000GWhの消費で平均分担するならば、0.36円/kWhとなります。しかし、そんな単純な計算でよいかというと、電力安定供給の投資が追加で必要なので、相当に大変な計算(シミュレーション)が必要です。例えば、上の表の10電力と卸電力の設備の合計は、233,623MWです。これで、揚水発電の電力消費を差し引いても901,520GWh年間電力供給を行っています。勿論、太陽光の場合は、家庭内で消費した後の電力なので、家庭内消費を加える必要がありますが、それでも35,000GWh程度です。同じ新エネルギー・再生可能エネルギーでも、風力発電やバイオマス発電は、それぞれ設備1,816MWと1,924MWに対して、発電量は2,744GWhと3,165GWhです。一方、太陽光は34,000MWで、15,000GWhですから、とても効率の悪い発電です。

何故かというと、太陽がある時だけの発電だからです。「雨が降れば、お休みで!」という歌の通りで、また夜もお休みします。そういう太陽光発電の休憩時バックアップが必要なのです。バックアップは無料ではありません。例えば、家庭に太陽光発電を設置しても、電力会社から供給を受けるための電線は必要です。

4) 太陽光発電メーカ

3.5kWの住宅用太陽光発電設備を設置するとして、現在新築で185万円、既築設置で225万円程度のようです。(参考資料)太陽電池メーカには、どのような会社があるかですが、ロイター 6月29日 太陽電池の国内特需で日本メーカーに復権の機運は多少日本メーカに気を使った書き方かと思いますが、この記事にあるように、独Q-Cells SE、米 First Solar, Inc.、中国Suntech Power Holdings Co, Ltdが1位から3位までです。例えば、中国Suntech Powerは江蘇省無錫市にあり、2001年に設立、2002年に事業開始した会社です。業績は下のグラフのように、右肩上がりの高成長です。ニューヨーク証券市場に上場し今や世界企業で、資金調達でも、問題はないはずです。

Suntech_power20097

世界不況克服に向けて日本から世界の太陽電池メーカへの事業促進策です。世界中のメーカが競争してくれないと、価格は下がりませんから、世界メーカの競争が日本で生じることは歓迎すべきです。さもないと、日本メーカも日本でしか通用しない田舎会社となり、GMの後を追いかけることになると思います。

なお、設置を計画されておられる方は、メンテナンスのことは、十分納得するまで業者と打ち合わせして下さい。素人には、メンテナンス不可能です。例えば、太陽電池で発電するのは、直流です。それを回路で交流に変換します。3.5kWの出力は、火災を発生させるに十分ですし、点検のために屋根に上るのさえ、普通は無理です。50年間無償修理を約束させ、支払いは50年分割払い、メンテナンス不履行時支払い相殺可能とか交渉しますか?多分、業者は受けないでしょうね。しかし、そのぐらい真剣な検討をすべきと思います。

5) CO2削減は容易ではない

書いてきたように、CO2削減は容易ではありません。地道な努力が必要です。

一つの、例として太陽光発電に類似した設備に家庭用燃料電池エネファームとか称するのがあり、補助金も出るようです。燃料電池だから、CO2は出ないと勘違いをされておられる方もいると思います。しかし、燃料に都市ガスを使用するのですから、CO2を排出します。都市ガスの主成分はメタンCH4であり、Cが存在します。燃料電池としては、CO2を発生しないものの、水を加えてH2を製造し、化学式で書けば次の反応です。きちんとCO2を排出します。

CH4 + 2H2O → 4H2 + CO2

ちなみに、1立方メートルの都市ガスで、2.2kg強のCO2をエネファームは排出します。そのまま、都市ガスを燃焼する場合と全く同じです。そんな話、聞いたことないって!イエ、パナソニックのWebにも次の説明があります。

水蒸気改質法で水素を取り出す場合、炭素を含んだ化石資源からの改質であるため、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)が発生します。一酸化炭素(CO)は燃料電池の化学反応に悪影響がありますので、水を加えた変性反応や、酸素を加える浄化反応などで、二酸化炭素(CO2)に換えます。

エネファームと太陽電池の双方を設置すると、家庭で必要とする電力をはるかに上回る電力が発電できる。エネファームは、46円/kWhの対象ではない。そこで、家庭内の部分は、エネファームで発電し、太陽光発電部分を全量46円/kWhで売ろうという不逞の輩がいるようです。相当な悪人で、エネファームでさえ、何らCO2の発生を少なくする設備でないにも、拘わらずその上を行くのです。

エネファームは、発電だけをとれば、発電効率33%とディーゼル発電よりも、はるかに発電効率が悪く、CO2大量発生設備です。何故、エコになるかというと、温水を作るから、温水と発電を合算すれば熱効率が上昇し総合効率で計算してエコとなります。但し、好きな時に温水が作られるのではなく、発電時のみです。温水なので、貯蔵が可能というわけです。エネファームの場合は、1日10kWh発電するとして、1日350リットル程度の温水が生産される。タンク容量が200リットルとかですから、毎日350リットル不必要であろうが、温水をせっせと使いまくる生活になります。夏は温水が余り、冬は温水が足りないということもあり得ます。所詮ガス代を払うのですから、温水は不要でも使わにゃ損となるかも知れません。考え方次第ですが、どちらにせよ、エネファームと太陽電池と双方設置のキチガイ沙汰は防止するようにせねばなりません。

ちなみに、資源エネルギー調査会新エネルギー部会の議事録等もそのような事態は防ぐ方向になっています。なお、太陽光発電促進のための、電気料金値上げについて、その方向ではありますが、値上げ幅を含め、例えば、自家発電・自家消費のユーザーにも負担させるのか、6kV以上の自由化電力についてどうするか等、様々な部分が未だ決まっていません。しかし、多くの人が感心を持つべきだし、うまい話ばかり聞かされていたが、実は全員に負担がくると驚かれる方もいると思うので、少し長くなりましたが本エントリーを書きました。

今度の政権は、まじめに炭素税導入をしてくれないかな。そうすると、こんなゆがんだストーリーから少し楽になれるかも知れないのに。

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2009年7月10日 (金)

原油価格の安定化(か?)

7月 3日のエントリー 日本航空と全日空の比較の中で、シンガポール渡しのジェット燃料の価格チャートを掲げ、日本航空の燃油価格ヘッジのことを書きましたが、原油価格が乱高下をしている現状であります。

1) 原油価格

2001年以後の原油価格チャートを掲げます。

Uscrude20097

8年半の価格の動きですが、どう感じますか?これを見れば、株なんてバカらしくやってられないよと感じるかもしれません。次に、本年1月1日以降の原油価格チャートを掲げます。なお、こちらはOPEC原油バスケット平均価格としました。(価格は、基本的に同じです。別の価格も出しておこうと掲げました。)

Opec_crude200907

そして現在の原油価格として次のブルームバーグ・ニュースを掲げます。

7月10日 NY原油時間外:週間ベース1月以来の下落率に-ドル高で魅力薄れる

今年になってからの価格は、40ドルから始まって現在60ドルですから、半年で50%高です。

2) 原油需給量

一方、需給量は、それほど変動していないのです。原油生産量のグラフが次の通りです。

Worldoilprod2007

生産日量が73百万バレルであり、年間42億キロリットル強に相当します。8年半の間で生産量の最小と最大の差は10%です。一方、価格は9倍です。原油は、食料と同じように重要です。いくらが正当な価格かは、誰も言えないが、価格変動が大きすぎると思えます。

3) 市場価格コントロール

株なんかやるより、原油で儲けた方が簡単だと1)で書きました。しかし、株と異なるのは、タンクが必要なことです。従い、もしやるなら先物の売買のみに徹することです。それと、日本航空と全日空の比較で書いた石油製品に関するデリバティブ取引から生じる原油や石油製品の先物市場に対するインパクがあると思います。デリバティブ取引は、金融商品であり、原油等を渡したり、引き取ったりせずに、契約した条件での差額決済です。デリバティブ取引を提供した証券会社等は、リスクを取るわけではないので、何ならかの形で先物商品市場等に繋ぎます。デリバティブ取引を否定はしませんが、行き過ぎると実需を超えた架空取引による市場価格の乱高下を生み出すと思います。

本日、商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部改正が公布されました。経済産業省の法案国会提出時の2009年3月3日プレスリリースがここ説明)にありますが、「市場及び相場操縦手法の国際化、複雑化等に対応するため、相場操縦行為に関する罰則を整備するとともに、海外当局との情報交換手続を規定することにより、国際的に協力して市場を監視できる仕組みとします。」と言っておられます。

米国の場合は、商品先物市場を監視するのがCFTC(Commodity Futures Trading Commission)です。CFTCが、原油等の市場監視を強化するとして7月7日に声明を発表しました。”Aggregate Position Limits and Review of Hedge Exemptions for Energy Futures Markets”と言っておられます。日経の記事とCFTCの声明は次の所です。

日経 7月8日 原油先物の持ち高制限、米取引委が導入へ 市場の透明性高める

CFTCの声明 July 7, 2009 Statement by Chairman Gary Gensler on Speculative Position Limits and Enhanced Transparency Initiatives

原油価格はエネルギー価格の中心であり、世界中の人々の生活と産業に影響を与えます。一国での取り組みは意味がなく、少しでも対策を見つけていただければと思います。もしかしたら、世界不況の原因はサブプライムではなく、原油価格ではないかと思ったりします。

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2009年7月 6日 (月)

アマゾンのネットビジネス

前のエントリーの続きです。アマゾン(Amazon.com Inc.)のForm 10-K (Annual Report)を読んでいると、ネットビジネスは未だ更に拡大すると思いました。最近3年間の業績と売上、営業利益のグラフを掲げます。

アマゾン(Amazon.com Inc.)の最近3年間業績(単位:百万米ドル)
2006 2007 2008
売上高 10,711 14,835 19,166
売上原価 8,255 11,482 14,896
売上総利益 2,456 3,353 4,270
販売費及び一般管理費 1,956 2,504 3,177
営業利益 500 849 1,093
ストックオプション対価費用 101 185 275
その他収入(費用) ▲10 ▲9 24
税引前利益 389 655 842
その他営業外収入(費用) ▲12 5 59
法人税等 187 184 247
持分法利益(損失) 0 0 ▲9
当期純利益 190 476 645

次は、米国内と米国外の2つのセグメントに分けた売上高と営業利益のグラフです。うらやましくなる右肩上がりです。

Amazon20068

本屋の店舗以上に本の種類があり、ネットで探せて、注文して、配達してくれる。日本国内については、地方格差を一気に相当解消してくれました。感心します。

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2009年7月 3日 (金)

日本航空と全日空の比較

次の2つ最近のニュースが、興しろいと思いました。

日経 7月1日 日航、政投銀などと1000億円の融資契約締結

日経 6月30日 日航優遇「公平性欠く」 全日空、国交省に申し入れ

そして、全日空は、この7月1日のプレスリリース「新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ」の通り、537,500,000株の増資を発表。この増資により払込を受ける金額は、本日の株価320円を基準にして90%を払込金額にすると、1548億円となります。

次の様な、日本航空と全日空を「財務格差一段と 増資か公的融資かで明暗」なんて記事もあったので、両社を比較してみました。

日経 7月2日 全日空・日航、財務格差一段と 増資か公的融資かで明暗

1) 2009年3月期業績

日本航空と全日空の連結損益計算書は次の通りです。

Jalana20097

収入の規模からすると、全日空が71%なので、適切な比較が可能と考えます。また2社とも収入のなかで航空輸送収入が88%を占めています。(両社とも、航空輸送収入のグループの内部収入を含めていますが、旅行事業への内部収入と思いますから、実質航空輸送収入でよいと思います。)今年度と昨年度の航空輸送収入を2社についてグラフにしたのが次です。

Jalanarev20097

国内輸送に関する収入は両社ともほぼ同じで、国際線輸送に関する収入で日本航空が全日空より大きく、旅客収入は2.4倍です。ちなみに、収入を輸送した人数と距離および重量と距離で平均単価を求めると次の表になりました。距離が長いと単価は安くなるはずなので、簡単には言えませんが、日本航空の国際線旅客はほんの少し安いのでしょうか。そして、国内線は、その逆の感じです。いずれにせよ、それほど大きな差があるようには、感じません。

日本航空と全日空の旅客と貨物の平均収入単価
JAL 2008/3 JAL 2009/3 ANA 2008/3 ANA 2009-3
国際旅客(円/人km) 12.5 13.5 14.6 15.0
国際貨物(円/トンkm) 43.0 43.6 42.9 41.7
国内旅客(円/人km) 21.3 21.3 18.5 18.6
国内貨物(円/トンkm) 70.3 76.5 68.7 71.2

2) 両社の航空輸送事業収支

航空輸送事業の事業収支を書いたのが次の表です。(航空輸送費用には、航空輸送事業に関わる販売費及び一般管理費も含んでいます。)

Jalanaplf20097 

さほど、変わらない感じですが、日本航空は609億円の損失で、全日空は48億円の利益です。一つ言えるのは、燃油費が、日本航空の場合は、収入の落ち込み6.0%に対して23.4%の増であり、一方全日空の場合は、収入の落ち込みは5.5%と日本航空と余り変わらないが、燃油費は14.0%増で押さえることができています。

収入単価の低い国際線が多い日本航空に、燃料単価の上昇インパクトは大きくなることがその要因と思います。一方、航空機減価償却費と賃貸料は燃料単価の影響は受けず、長距離の国際線が多い日本航空の方が、コスト中に占める割合も低く、日本航空が償却費・賃貸料合計で10.0%で、全日空は13.9%です。なお、両社の保有航空機の比較表も作成しました。

Jalanaplane20093 

このあたりから言える一つのことは、新素材を多く使用した軽くて燃油費が安くて済む航空機に機材を変更していくことが、経営戦略として欠かせない。全日空も今回発表した増資の資金使途は、航空機購入を含む設備投資資金に充当と言っています。ちなみに、全日空はボーイング787型機を55機購入するとしており、総投資総額は7181億円。今回の増資額の4倍以上になります。発表から計算すると飛行機の単価は777型機が150億円、787型機130億円となります。

3) 両社の貸借対照表

2009年3月末の両社の貸借対照表を示したのが次のグラフです。Jalanabs20093

売上規模が日本航空2兆円で全日空1.4兆円ですから、総資産額が売上高にほぼ一致するあるいはより大きい会社です。

なお、日本航空の2009年3月末期の財務諸表において、ファイナンス・リース取引を、有形固定資産とリース債務として貸借対照表に計上せずに、賃貸借取引として処理しているリース取引があり、注記情報からこの部分を、比較の目的で資産・負債に組み替えました。この結果は、資産増2806億円、負債増2886億円となり株主資本が80億円減少となっています。このベースにおける両社の借入金、社債、ファイナンス・リース取引を抜き出したのが、次の表です。

Jalanaltloan20093

債務について、一つ言えるのは、1年以内に返済期限、償還期限が来る長期資金債務が日本航空に2,259億円あり全日空の1,229億円の倍近くあることです。日本航空は、この返済・償還のための資金が必要です。

4) 燃料ヘッジの失敗

これまで見た範囲では、それほど大きな差はなかったのですが、貸借対照表における両社の純資産の部が次の通りです。

Jalanaequity20093

貸借対照表全体で見ても、3)に掲げたグラフのように、日本航空の純資産の部は小さいのですが、その原因は、評価・換算差額等にあり、その中でもマイナス2018億円と圧倒的マイナス金額を誇っているのが、繰延ヘッジ損益です。

流動負債として計上されているデリバティブ債務1263億円と関係があり、多分内訳としては出ていないが、固定負債はその他固定負債1793億円の中に隠れていると思います。その他固定負債が前年度末より703億円増加しているので、合計すると1966億円になり2018億円に近くなります。

Webでは見つかりませんでしたが、2009年3月3日の日経で「相次ぐデリバティブ損失 原油乱高下でヘッジ裏目」と題して、2008年12月末時点で日本航空が約2,400億円、全日本空輸が約1,000億円の繰延ヘッジ損失が発生していると報じられています。そこで、これが何かですが、次のジェット燃料価格のチャートを見てください。

Jetkeroseneprice20095_2 

燃油に関するデリバティブ取引とは、先物の燃油価格をあらかじめFixしてしまうことと考えてください。もし、将来の市場価格が上がれば、購入価格上昇を避けられるが、逆に下がってしまえば、高値の燃油を購入することとなります。日本航空の消費する年間燃油量は、45百万バレル程度と推定されます。このうちデリバティブ取引で押さえているのが決算説明会資料からすれば、80%-90%になるようです。そうなると、36百万バレル-40百万バレルが1年以内にデリバティブ取引の決済となるはずで、US$35/バレル程度の値差になると思われ、デリバティブで押さえたのは、平均US$90-US$100/バレルでしょうか?実際のオペレーションでは、期間の長短が組み合わさっており、金額としては「価格差X数量」であるので、3月末時点で存在したデリバティブ取引に関わる対象燃油量はもっと少なく、一方更に高い価格で押さえている可能性もありますが、実態は、分かりません。日本航空は、2009年度の計画を燃油価格をUS$76.2/バレルで作成しているので、このデリバティブ取引がなければ、もっと利益が出る計画であったはずです。

いずれにせよ期末時価で損益を換算すると赤字が2018億円増加するということです。燃油価格が上昇するとデリバティブ取引による損失が少なくなるわけですが、一方、会社全体としてどうなのか?単純では、ないはずです。例えば、世界景気がよくなれば、国際線を運行する航空輸送事業は利益が見込めるのであり、その場合は、国際的燃料価格は上昇するはずです。本来、マーケットは、それ自身の中に、オフセットの方向に働く部分があります。例えば、円高で輸出企業は打撃を受けるとしても、実は輸入原材料や輸入原材料から作られる物は、価格が下がることになります。本来複雑な要素が絡み合っているにも拘わらず、どの時点でFixしているか等よく知らないので言えない部分が多いのですが、80%-90%をデリバティブ取引で固定してしまうのは、行き過ぎであると思います。

本来は、経営者が説明すべきです。コンプライアンスや内部統制が完璧であっても、経営者はその経営判断についても問われるのであり、株主代表訴訟がそのために存在すると私は思っています。

5) 退職給付引当金、退職給付費用

退職給付引当金、退職給付費用に関して、日本航空と全日空で差があるので、見ておきます。次の表を、2009年3月期財務諸表の注記から抜き出して作成しました。

Jalanaemplob20093

日本航空の方が数字が随分大きいのですが、その原因には退職金、年金の水準のみならず他の要素も入ってくるので、よく解りません。そして、費用とした671億円も販売費及び一般管理費に退職給付費用は119億円しか計上されておらず、残る552億円はどうしたのか、私は掴めていません。

退職給付については、日本航空の大きな課題のはずです。従業員にとって水準を下げることは、受け入れることはできないと思います。但し、一方で、年金資産が4000億円存在することは、会社にとっても従業員にとっても強いことと思います。

なお、退職給付債務から年金資産を差し引くと、退職した従業員を含めた債権金額となりますが、これも同じく4000億円です。GMを考えれば、最悪は年金債権の一部を出資株式に転換し、組合が取締役を出すのも面白かったりして。4000億円は、株主資本より金額が大きいのですから。

6) 政府保証の政策投資銀行からの借入

日本政策投資銀行等からの総額1000億円の借入で、そのうちの政策投資銀行約600億円の80%について政府保証を得ることについては、おそらく数多くの交渉の結果として、そうなったはずで、それで良いと思います。

但し、日本航空から政府に対して正当な保証料が支払われる必要があると思います。保証料がどうなっているか、調べずに書いていますが、民間会社に保証料免除はおかしいと思います。中小企業も、信用保証協会に保証料を払っていますし。

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2009年6月29日 (月)

インサイトvsプリウス、そしてi-MiEVとティーダを比較しました

エコカー減税とエコカー補助金により、落ち込んでいる新車販売も、エコカーについては販売増は期待できると自動車メーカー各社は懸命にエコカーの販売に力を入れていると思います。ちなみに、次の表が2009年5月と5月までの自動車販売台数であり、昨年より落ち込んでいます。

新車販売台数(2009年5月実績)    自販連・全軽自協・輸入組合調べ
ブランド 2009年5月販売台数 本年累計
(a)
前年累計
(b)
増加率
(a)/(b)
乗用車 トラック・バス 合計
ダイハツ 32,718 8,990 41,708 259,747 289,853 -10.4%
日 野 0 1,134 1,134 9,865 18,221 -45.9%
ホンダ 35,700 1,830 37,530 230,975 276,920 -16.6%
いすゞ 1 1,855 1,856 14,203 26,813 -47.0%
レクサス 1,815 0 1,815 7,444 12,788 -41.8%
マツダ 10,523 2,122 12,645 78,076 115,726 -32.5%
三 菱 6,457 2,749 9,206 64,047 91,513 -30.0%
三菱ふそう 0 1,246 1,246 9,564 16,305 -41.3%
日 産 32,189 5,673 37,862 243,733 328,704 -25.9%
日産ディーゼル 0 324 324 2,253 5,303 -57.5%
スバル 6,987 3,809 10,796 69,701 94,877 -26.5%
スズキ 34,307 9,340 43,647 277,468 305,619 -9.2%
トヨタ 72,277 8,226 80,503 472,773 667,938 -29.2%
外国車 11,621 150 11,771 64,604 88,599 -27.1%
合計 244,595 47,448 292,043 1,804,453 2,339,179 -22.9%

1) 比較するエコカー

エコカーで比較するなら、インサイトプリウスを外すことはできず、そして2009年7月下旬から売り出す三菱i-MiEVを対象に加えました。日産も、減税・補助金対象となる車があると宣伝しており、その中でティーダを加えました。次の表が、カタログ等のデータから抽出した比較表です。(三菱i-MiEVは、軽自動車アイを電気自動車に変更しているので、他の3車種との同一ベースでの比較とはならないのですが、電気自動車ということで対象にしています。)

車種 INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV
タイプ G L 15M
メーカ希望小売価格
(消費税込み)円
1,890,000 2,050,000 1,674,750 4,599,000
10.15モード燃料消費 30km/L 38km/L 20km/L 125Wh/km
全長 mm 4,390 4,460 4,250 3,395
全幅 mm 1,695 1,745 1,695 1,475
全高 mm 1,425 1,490 1,535 1,610
ホイールベース mm 2,550 2,700 2,600 2,550
最小回転半径 m 5.0 5.2 5.2 4.5
車両重量 kg 1,190 1,350 1,150 1,100
室内 長 mm 1,935 1,905 2,035 1,790
幅 mm 1,430 1,470 1,390 1,270
高 mm 1,150 1,225 1,240 1,250
電池 容量(kWh) 5.75 6.5 N/A 16
タイプ ニッケル水素電池 ニッケル水素電池 リチウムイオン電池
電圧 (V) 100 650 330
モーター(最高出力kW) 10 60 47

価格については、電気自動車i-MiEVが他の車の倍以上であること以外は、こんなものかなと感じる感覚です。大きさはi-MiEVを除いて、ほぼ同じです。なお、i-MiEVは乗車定員4名です。

2) コスト比較

エコカーと言っているのですから、燃費等を含んで比較しなくてはなりません。次の表が、上記のメーカ希望小売価格にガソリン代を1リットル150円であるとして仮定して、10万キロメートル走った場合の、購入費と燃料費を計算した結果です。

INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV i-MiEV
の前提
想定走行距離 100,000 100,000 100,000 100,000
10.15モード燃料消費 30 38 20 125 Wh/km
10万km燃料消費量 4,000 3,158 6,000 15,000 kWh
ガソリン150円/リットル 600,000 473,684 900,000 300,000 20円/kWh
購入費 1,890,000 2,050,000 1,674,750 4,599,000
合計 2,490,000 2,523,684 2,574,750 4,899,000

10万kmの実際走行に要する燃料消費は、10.15モードの20%増と仮定しました。i-MiEVは、ガソリンを消費しないことから、電力料金を20円/kWhとし、同じように20%のマージンを加えました。

結果は、INSIGHTとPRIUSがほぼ横並びです。そこで、今度はガソリン価格を100円から200円の範囲でグラフを書いてみました。

Insightprius20096

INSIGHTとPRIUSの線が交差するのは、1リットル190円です。ホンダvsトヨタのおもしろさを感じます。10年間の平均ですから、190円は高いかも知れないし、利息を考慮した時間価値を考えるとホンダがより有利。しかし、トヨタは、負けまいとPRIUSを最大限値下げして対抗していると思います。このグラフの比較で言えば、日常的に車を使い10万キロ以上走行するのであれば、PRIUSが有利で、土日のみの使用であれば、INSIGHTが有利かと思います。

3) メンテナンスを含んだコスト

ハイブリッドカーは、自分でメンテナンスはおろか、通常の自動車修理工場でもメンテナンス不可能と思います。1)に書いた表でPRIUSとINSIGHTを比べると、電池容量、電圧、モーター出力全てPRIUSが大きい値です。(電圧は、i-MiEVより高い。)通常の車の修理工場ではメンテナンスができず、メーカ指定・適合店でないとメンテナンスが無理だから、HiTech製品につきものの現象です。そうなると、INSIGHTとPRIUSのメンテナンスについては、価格や条件は同じかも知れませんが、可能性としては、PRIUSの方がHiTechだから、少しメンテナンスも高くつくかも知れません。

HondaファンはINSIGHT、ToyotaファンはPRIUSを選ぶのが間違いないでしょう。そうでない人は、色々悩んで考える。いずれにせよ、購入の際に、納得するまで、質問するのがよいと思います。現状では、納期が長くて、嫌なことを言うやつには、売ってくれないなんて変な気を回す必要はないはずです。

4) CO2排出・環境評価

10万km走行するとして、走行時に排出するCO2を計算しました。計算は、ガソリン発熱量34.6MJ/l、ガソリン炭素排出係数18.3tC/TJ、CO2換算44/12としました。

なお、製造時にCO2の排出はあり、さらには鉄板等の材料製造時のCO2,鉄鉱石や石炭の採掘・運搬に関わるCO2排出等を含んだLife Cycle Assessmentが必要です。そこで、PRIUSの環境仕様というページにCO2 LCA評価という絵があり、これをにらんでPRIUSの製造に係わるCO2排出量を3,000kgとしました。大雑把ではありますが、製造に係わるCO2は車体重量に比例するとして、INSIGHT、TIIDA、i-MiEVの製造時CO2を計算しました。結果は次の表の通りです。

なお、i-MiEVの走行時CO2排出量は、東京電力の販売電力kWhあたりのCO2排出量425kg/MWhを使いました。

INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV
走行時CO2排出量(kg) 9,287 7,332 13,930 6,375
製造時CO2排出量(kg) 2,644 3,000 2,556 2,444
合計(kg) 11,931 10,332 16,486 8,819

またしても、INSIGHTとPRIUSの激しい競争です。一見、i-MiEVが低そうですが、i-MiEVは1回の充電で160kmの走行距離であり、これを伸ばすには電池を大きくする必要がある。そうなると、重くなる。価格が上がると同時に、燃費も悪くなる。更に言えば、石炭で発電をしたならば、INSIGHTやPRIUSに負けるのみならず、TIIDAとも良い勝負になってしまいます。

数字を使わずに感覚で考えてしまう場合の環境問題の恐ろしさです。電気自動車は排ガスを出さないから、クリーン。しかし、その電気は、どうやって作ったの?です。同様な、説明がこの環境省のWebにある低排出ガス車の開発 (トヨタ自動車)にありました。20ページですが、燃料電池車は燃料製造時のCO2排出量が多いため、ハイブリッドカーよりもCO2排出量はLife Cycle Assessmentをすると多くなるとあります。

イメージで、環境を考えると誤ります。環境は数字を使って考えないといけません。

5) エコカー減税とエコカー補助金

どうでも良い話かも知れませんが、エコカー減税とエコカー補助金の法的根拠について触れておきます。エコカー減税は、本年3月31日公布の地方税法改正(法律第9号)の第12条の2の2(自動車取得税の減税)と同日の3月31日公布法律第11号の中の租税特別措置法第90条の12(自動車重量税の免税等)によるものです。全額免税となるのは、電気自動車、ハイブリッドカー、CNG車、高性能ディーゼル車です。ガソリン車は、燃費性能により75%免税又は50%免税あるいは適用が受けられないかです。

エコカー補助金は、5月29日に成立した平成21年度補正予算による環境対応車普及促進事業費 357,216百万円です。その内容は、この経産省、国交省の説明にあります。ハイブリッドであるかどうかは関係なく、燃費基準達成車には補助金が出ます。最も大きな補助金を受けられるのは、大型トラック・バスで90万円(中古からの乗り換えの場合は180万円)です。

自動車取得税と自動車重量税の免税あるいは軽減が受けられるのは、乗用車のみならず基準を満たせば、トラック・バスも可能です。

ちなみに、2007年度の温室効果ガスの排出量確定値が2009年4月30日に発表されました。温室効果ガスの総排出量は1,374百万トン。うち非エネルギー起源を含めCO2が1,304百万トン。運輸部門のCO2排出量が249百万トンです。このうち乗用車が126百万トンで、貨物車が90百万トンです。合計で、日本全体のCO2排出量の16%強となります。ここをねらい打ちでしょうか?

中には年間10万km以上走行するトラックもあるわけで、リッターあたり4kmの燃料消費率を5kmに伸ばすことができれば、年間5,000リットルの節約となります。金額では年約50万円。CO2で年約13トンの節約です。だから、積極的に免税、税軽減、補助金を推進すべきだと言えます。問題は、財源です。今は、一般財源を使っており、継続するには、私は、炭素税を他の省エネ・低炭素政策財源用も含めて導入すればよいと思っています。かつては、石油業界は炭素税に真っ向から反対していました。しかし、現在は、そんな強い反対はできない。昭和シェル石油は、このように太陽電池をやっていますし。どの企業も、既得権益を守るより、新しい世界にどう立ち向かうかがより重要な時代です。

ところで電気自動車の場合、ガソリン税と軽油取引税を現状では払わずに済みます。電気自動車が多くなってくると、道路予算の財源はどこからもってくるのでしょうか?

6) これから

これからも未だ開発が進むと思いますが、ToyotaとHondaはすごい会社であり、F1レースを日本でしているような気がしました。i-MiEVの車体重量は、1100kgですから、軽4輪「i」の900kgと比較すると200kg重くなっています。エンジンが電気モーターに置き換わり、電池が搭載された結果ですが、電池の開発とブレーキ作動時の発電をしてのエネルギー回収を含む電気関係のコントロールがハイブリッドカーと電気自動車のキイポイントだと思います。

ハイブリッドカーは、現状では日本生産でしか対応できない。海外生産をする場合、Hondaの方が、HiTechを押さえている分だけ、有利ではないかと思うのです。いずれにせよ、米国メーカはハイブリッドカーを生産できない。ヨーロッパメーカもディーゼルに力を入れていた分だけ、対応が遅れている。当面世界でToyotaとHondaの2社独占が続くのではないか。多分、HiTechの度合いが少し低いHondaの方が、海外生産も台数増産も対応が容易である気がします。

ハイブリッドカーになると下請け企業も変わってくる。現在、PRIUSの電池はパナソニックでINSIGHTが三洋電機。双方ともニッケル水素電池。車メーカか電池・電気制御メーカか、どちらの技術力が高いかによっても、主導権は異なってきて、これからの絵は微妙に変わる。ハイブリッドカー、電気自動車、水素燃料電池車がこれからどのような戦いになっていくのだろうか。最も、電池素材となる希少金属の問題もあり、その点では俄然中国有利になったりして。

2)に掲げたグラフにおいて、ハイブリッドが有利ですが、比較しているTIIDAは非常に良い燃費の車なのです。グラフは、税優遇や補助金を計算に入れていない比較ですから、ハイブリッドカー恐ろしきやです。先進国間の貿易で、車に関税・非関税障壁は存在しないし、エコカーですから、皆賛成する。内燃機関と電動機の2つのエンジンを持ち、その上に燃料タンクと電池を持つ2重投資の見本みたいに思えたハイブリッドカーでした。今では、こんな姿になっているのですから、これから先はいよいよ分からないかも知れませんが。

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2009年6月26日 (金)

新生銀行とあおぞら銀行の合併の絵

株主総会では、新生銀行はあおぞら銀行との合併を考えていないとされていたと思いますが、本日は、次のように報道がありました。

日経 6月25日 新生・あおぞら銀、池田・前足利銀頭取に新社長打診 来秋合併へ

両行のプレスリリースは、ここここにあり、両行とも話し合いを持っていることは、認めておられます。そうなると、合併ができないとなると逆に不信感を持たれることになるのが懸念されます。合併の実現までには、1年近く要するのは、当然ですが、産業界や一般個人等に対する融資を含め、より一層の社会に対する金融サービスを向上させるための合併となるよう尽力願いたいと思います。

1) 合併比率1:1

上の日経を含め他の記事も合併比率1:1を報道しています。本日(6月25日)の東証終値で、新生銀行が161円で、あおぞら銀行が154円ですから、1:1はよい所と思います。ちなみに、過去6月間の株価の推移も同じような感じです。

20096chart_2

2) 合併後の資本金

発行済み株式の状況は次の通りです。下の表には、煩雑になりすぎるので書けていませんが、新生銀行についても、普通株式のうち269,128千株を預金保険機構が200,000株を整理回収機構が保有しています。両銀行とも、預金保険機構と整理回収機構の資本が入っています。

   発行済み株式の状況 (単位:千株)
新生銀行 あおぞら銀行
発行済み普通株式 2,060,347 1,650,147
自己株式 96,427 155,888
株主保有普通株式 1,963,919 1,494,259
第4回優先株式(預金保険機構保有) 0 24,072
第5回優先株式(整理回収機構保有) 0 258,800

新生銀行・あおぞら銀行のどちらが存続会社になるか不明ですが、株価を160円として合併により生じるのれんを計算すると、次の表のように、株主資本の方が金額的に大きく負ののれんとなりました。なお、新生銀行を存続会社とした場合の、あおぞら銀行の優先株については、残余財産を分配する場合の1株あたりの金額第4回優先株式1000円、第5回優先株式600円で計算をしています。

単位:百万円 新生銀行 あおぞら銀行
株主資本の金額(2009年3月末)
 個別財務諸表 601,750 527,271
 連結財務諸表 600,147 534,158
株価160円の場合の株主保有株式価額 314,227 239,081
優先株価額 179,352
株主保有普通株と優先株の合計価額 314,227 418,433

負ののれんが発生する場合は、昨年12月26日改正の企業結合に関する会計基準が平成22年4月1日以後の適用なので、負ののれんは直ちに特別利益として認識することになると理解します。この利益は税務上は益金ではないので、全額株主資本となるものの、増加する資本金と資本剰余金がその額だけ小さいのですから、お遊びのように思えます。

3) 株主構成

現在のまま移動がないとすると、次の表のようになります。あおぞら銀行の最大株主が米国のPrivate Equity Fundで、あおぞら銀行の最新データは、株主総会が終了しておらず、有価証券報告書が見れていないのですが、過半数の株式を保有していると思います。一方、新生銀行のSATURN・・・・という株主も米国のPrivae Equity FundのJ.C. Flowersであり、J. クリストファー フラワーズ氏は、ファンド創設者と理解します。

新生銀行とあおぞら銀行合併後の株主構成試算(単位:千株)
新生銀行 あおぞら銀行 合併後
サーベラス 821,469 821,469 23.8%
SATURN Ⅳ SUB LP 322,964 595,418 17.2%
SATURN JAPAN Ⅲ 110,449
J. クリストファー フラワーズ 91,297
SATURN V C.V. 70,708
預金保険機構 269,128 269,128 7.8%
整理回収機構 200,000 200,000 5.8%
オリックス 149,975 149,975 4.3%
ゴールドマン・サックス 68,000 68,000 2.0%
その他 831,373 522,815 1,354,189 39.2%
合計 1,963,919 1,494,259 3,458,179 100.0%

株主を見ても、両銀行は共通性があるように思えます。

4) 合併後の貸借対照表の資産

次のような感じになりました。

20093mergbs

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2009年6月24日 (水)

新生銀行の執行役報酬1億4千万円から6350万円に下がったの?

次のブルームバーグの記事によれば、新生銀行の執行役の2008年度の報酬は平均6350万円であったとのこと。

ブルームバーグ 6月23日 新生銀:執行役の報酬5-15%削減-株主総会で社長表明

さて、2009年6月4日に開催された参議院財政金融委員会において共産党大門実紀史委員の質問に対して金融庁監督局三國谷勝範局長は、次のように答えておられました。議事録は、国会図書館のWebからも取れますが、大門実紀史委員の質問と答弁部分の議事録をここ (文字化けの場合は、エンコードを日本語にしてみて下さい。)に置いておきます。

○政府参考人(三國谷勝範君) 両行から公表されております経営健全化計画によりますと、両行の常勤役員に対する役員報酬の一名当たり平均額は、二十一年三月期の計画値を見ますと、あおぞら銀行においては四千八百万円、新生銀行においては一億四千百万円となっているところでございます

ブルームバーグの記事は、23日に開催された株主総会における会社の答弁と理解します。一方、参議院財政金融委員会における政府参考人の発言は正しいとしか考えられません。1億4千万円と6350万円は、倍半分以上の差があるが、両方とも正しいとすべきと思います。そうであれば、1億4千万円は、計画値であり、6350万円が実績値と推察されます。そうなると、新生銀行は1430億円の赤字だったから、執行役の報酬は1億4千万円から6350万円にダウンしたと推察されます。

しかし、そう単純ではない可能性もあります。即ち、この新生銀行のWebから2009年6月23日開催の第9期株主総会資料がダウンロードできますが、その中の提供書面(事業報告)24ページには、執行役の報酬等総額として2,776百万円となっており、執行役の人数は27名(内退任済み11名)となっています。単純平均でも1億円以上です。ストックオプションの対価を費用としているので、27.7億円が全て現金で払われているのではないが、いずれにせよ高額報酬と多くの人が感じる水準と思います。

新生銀行の業績や財務状態については、6月17日の銀行の比較を参照いただければと思います。

一方、大門委員の質疑の中にあおぞら銀行のある支店の契約社員で働いておられる人のことについての発言が出ていますが、大変ですね。こちらは、あおぞら銀行で、新生銀行ではないのですが、この収入の雲泥の差は、どう考えればよいのだろうと思ってしまいます。

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2009年6月 9日 (火)

劣後債

劣後債に関する興味ある記事がありました。

毎日 6月7日 劣後債:個人投資家に人気 超低金利の中で利回り高く

利回り高くは、その通りです。しかし、全てが甘いのか、落とし穴はないのかと言うことで、記事にあるなかでの、金額が一番大きな東京三菱UFJ銀行を例として書いてみます。

1) 安全性

毎日の記事に書いてある劣後債は、メガバンクの金融機関ばかりですから、預金保険の対象ではないが、変な社債よりよっぽど安全です。しかも、株式と違い、元本が確定しています。

通常の社債と何が異なるかと言えば、この三菱UFJ銀行の資本性証券の説明ページの「劣後債権について」の次の劣後事由の説明にあります。劣後事由の発生により、元本も利息も払われなくなりますが、そんな事態は、発生しないと考えてよいのだろうと思います。

■ 劣後事由について
現在、当行が発行する劣後債には劣後事由として以下の3つがあげられています。

1. 破産手続の開始
2. 会社更生手続の開始
3. 民事再生手続の開始
劣後事由が発生すると停止条件が成就するまで劣後債の元利金支払いはなされません。

2) リスクと不便

劣後事由の発生がリスクです。それ以外には、ないと思います。但し、不便なことは、あるかも知れません。国債は勿論、一般の社債よりも中途で換金しようとする場合に、売るのに時間がかかったり、思ったより安く売らざるを得なかったりする可能性はあります。

それ以外に、不便なのは、株式のように価格上昇益がほとんど期待できないことでしょう。劣後事由が発生したら、株式よりは期待が持てるかも知れないが、元本が返済されない。この点については、株式と余り大きな差はない。価格変動を楽しむなら株式であり、手堅く収益を確保するなら劣後債と思います。

もう一つは、期限前償還オプションがついていたりします。発行者がオプションを持つのであり、市場金利が安くなり、新たに低い金利の劣後債が発行できるなら、新たに発行して、高い劣後債を期限前償還すれば利子負担が少なくなります。これを劣後債保有者から見ると、市場金利が安くなれば、固定利息の債権は価格が上昇します。しかし、上昇益が得られないうちに、償還されて元本が戻ってくる形です。ここに東京三菱UFJ銀行の行公募劣後債発行実績がありますが、発行から3年-5年を経過すると銀行に期限前償還の権利が発生するのがほとんどのようです。

なお、市場金利が上昇すれば、当然劣後債発行者は期限前返済をしないわけで、途中でもし有利になれば、期限前返済をするという一方にのみ強みがあるわけですが、それ故オプションであり、それを承知で投資家は投資をするわけです。

3) 劣後債は有利?不利?

東京三菱UFJ銀行の公募劣後債発行実績の一番最近である2009年3月13日に発行したリテール向け第19回期限前償還条項付無担保劣後社債の利息は2.75%です。これに対して、東京三菱UFJ銀行の普通社債の発行実績がここにあり、2009年4月9日発行の第104回債が5年満期ではありますが、利息は1.34%です。同じ東京三菱UFJ銀行の定期預金と比べると300万円以上の10年満期で0.6%ですから、定期預金よりは利率は高いのです。

定期預金は、預金保険があるしと言うわけで、うまく作られている。だからこそマーケットですが。

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2009年6月 2日 (火)

GMの連邦破産法11条申請に思う

ついにGMが連邦破産法11条の申請をNY時間6月1日午前8時に提出しました。

Washington Post June 1, 2009 GM Files for Bankruptcy Protection
日経 6月1日 GM、破産法適用を正式に申請

前日の政府発表を受けての記事を2つ紹介しておきます。

日経 5月31日 米加政府、GMに3.8兆円追加支援 米政府が「破産法」正式発表
WSJ June 1, 2009 New Era in Autos as GM Set for Bankruptcy

予想通りとも言えるのですが、数年前だったら全く考えられなかったことです。私自身、ファニーメイとフレディマックに関連して米国自動車ビッグスリーのことで、資本主義と社会主義を書いたのが昨年9月9日でした。資本主義と社会主義の観点での、私の勝手なつぶやきを書きます。

1) 残るフォードはどうなるか

クライスラーが連邦破産法11条を申請したのが、一月前の4月30日でした。そこで、政府支援なしで頑張っているフォードですが、2009年1月-3月の第1四半期の業績は、次であり、大赤字、かつ債務超過です。

Ford Motor連結損益計算書
2009年第1四半期(単位:百万米ドル)
自動車売上 21,368
金融収益 3,410
収益合計 24,778
自動車売上原価 21,662
金融コスト、一般管理費 6,065
売上原価及び一般管理費 27,727
営業外収益費用 1,329
税引前四半期利益 ▲1,620
法人税等 ▲204
当四半期純利益 ▲1,416
少数株主損益 11
Ford Motor純利益 ▲1,427
出所:2009年5月8日SEC提出フォーム10-Q

Ford Motor連結貸借対照表
2009年3月31日(単位:百万米ドル)
現金・現金同等物 21,093 買掛金 12,882
売却可能有価証券 20,363 未払費用・前受収益 54,429
金融債権 84,008 借入金及び社債 145,586
有形固定資産等 23,779 その他負債 6,714
その他資産 77,670 負債の部合計 219,611
資産の部合計 203,134 資本金 24
資本剰余金 10,985
その他包括利益累計 10,624
自己株式 180
出所:2009年5月8日SEC提出
フォーム10-Q
利益剰余金 17,782
Ford Motor株主資本 ▲17,577
少数株主持分 1,100
純資産の部合計 ▲16,477
負債及び純資産合計 203,134

自力で頑張るには、苦しすぎる内容だと思います。一方で、GMやクライスラーが政府の支援を受けるわけで、競争がどうなるかの点があると思います。即ち、国営GMやクライスラーより、民営フォードは民間経営による競争力を発揮して、勝ち残るのかであります。勿論、将来のことは分かりませんが、フォードも何時政府に鳴きに行ってもおかしくないのであり、その時は政府も支援せざるを得ない状態であると思います。

資本主義のような社会主義のような不思議な状態と思います。

2) UAW、年金、医療保険問題

12月18日のブログ自動車産業の今後で、”ビッグスリーについて「労働者1人当たりに1時間平均73ドルのコスト」で、「日系メーカーの場合は1人1時間当たり労働コストは平均49ドル」という情報があります。”と書きました。

日経の3月9日の記事フォードとUAW、賃下げなど正式合意 GMとの交渉に影響もには、「ビッグスリー(米自動車大手3社)の現役従業員の労務費(手当含む)は時給換算で日本メーカーより10ドル程度高いとされる。」との文章があります。

いずれにせよ、ビッグスリーの人件費が高いのは事実であり、その原因はUAWが高い賃金を要求したからかとも言えるのですが、結果として高いコストになってしまう年金や医療保険をUAWは要求せざるを得なかった面があると考えます。政府の年金制度や医療保険が薄い場合は、労働者・組合員が安心して働けるようにするには、雇用主に応分の対応を求めざるを得なくなる。

ニクソン以来小さな政府を掲げ、民間活力を掲げ、社会保障を政府の制度から、民間の制度に移行させてきた。公的医療保険がなければ、退職者医療保険を整備せざるを得ない。民間医療保険は、治療方法を保険会社が保険契約の内容に応じて、決定するのですから、合理的であり、モンスター・ペイシェントは生まれてこないと言えるのですが、一方で、金が医療を決定する全てとなる世界です。保険会社は利益を追求せざるを得ないのであり、弱肉強食の世界が生まれてきます。

決して、保険会社が悪いのではないのです。小さな政府にして、政府の仕事を解放していまったことが問題だと思います。何を、どの部分を政府に残し、どの部分を民間の利益追求・競争市場に委ねるかは、個々の問題ですが、少なくとも「民にできることは、民がする。」は、大間違いです。その結果が、米国自動車産業問題の一つの原因になっていると私は思います。

3) 将来

米国自動車産業はどうなるのだろうか。少なくとも、米国が当分の間車社会であり続けることには、間違いがない。しかし、誰が車を供給するかは、ホンダ、トヨタの2社が一番可能性がありそうな気がするのです。理由は、世界でまともにハイブリッドカーを生産している会社だから。即ち、そのような開発力を持っているからです。

あるコンセプトの製品を作ろうとすると、相当な開発力が必要と思います。莫大な研究開発費を投入し、しかも成功させる力が必要ですから。多分、多くは失敗するのでしょうが、失敗を乗り越えての成功ですから、相当の金食い虫と思います。

国営となってしまったGM、クライスラーには難しいだろうし、フォードも生き続けるのが精一杯で、研究開発までは手が回らないはず。本当にホンダ・トヨタが米国や世界で大躍進となるかどうかは、分かりませんが、可能性はあるだろうと思うのです。

そこで、ホンダ・トヨタがいる日本の将来ですが、明るくあり続けるとは限らないのです。年金・医療保険を考えれば、将来は暗い可能性があります。「税金を高くすると、高額納税者が外国に逃げていって、日本の税収が減る。」とのバカなことを言う人がいます。外国に逃げていっても構いません。日本国内に所得の源泉があれば、日本での課税が可能です。本当に逃げていったら困るのは、頭脳です。もし、技術者や医師や高度技能者等、その人がいたら多くの貢献をする人達が日本から逃げていったら日本の将来は暗いのです。

年金や医療保険の制度が崩れてきたら、そんな国から、そのような人達は簡単に出て行きます。外国でだって高給で仕事に就ける人達だからです。住みよい社会を作ることが非常に重要なことと思います。ビッグスリーが、このような事態になった最大の原因が社会保障制度を小さくしすぎてしまった米国社会にあるのではないかと思ったことから書きました。

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2009年5月27日 (水)

ソフトバンク社債

検索フレーズランキングが、私のブログの右欄の下に出ていますが、「ソフトバンク社債」が検索フレーズの1位と3位にあります。何故だろうと思ったのですが、次のソフトバンクの第27回無担保社債600億円の発表が5月26日にあったからでしょうか。

ソフトバンク 2009年5月26日 第27回無担保社債発行に関するお知らせ

購入者全員に、福岡ソフトバンクホークス・エコバッグのプレゼントがあるほか、抽選で20組40名様に2010年シーズンのホーム開幕戦のペアチケットおよび開幕戦当日のホテルペア宿泊券をプレゼントする懸賞を付けております。」ということで、興味ある社債です。

一方で、甘い誘いには気をつけろとの格言もあるので、次のKDDIがその6日前の2009年5月20日に発表した300億円の第14回社債と200億円の第15回社債と比べてみました。

KDDI 2009年5月20日 KDDI株式会社社債の発行について

ソフトバンク社債 KDDI300億円 KDDI200億円
発行総額 600億円 300億円 200億円
各社債の金額 100万円 1億円券の1種 1億円券の1種
利率 年5.10% 年1.278% 年1.969%
払込金額 100円につき100円 100円につき100円 100円につき100円
期限 2年 5年 10年
償還期限 2011年6月10日 2014年5月29日 2019年5月29日
取得格付 BBB
(日本格付研究所)
A+
(格付投資情報センター)
A+
(格付投資情報センター)

一般投資家を対象としたソフトバンク社債と社債金額を1億円としたKDDI社債の差はありますが、3%の利率差は500億円に対しては、金利年額差は15億円ですから、大きいですね。

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2009年5月22日 (金)

GDPから見る日本経済

内閣府が5月20日に、2009年第1四半期のGDP速報値を発表し、実質GDPの前期(2008年第4四半期)比で、年率換算マイナス15.2%であり、予想より大きかったと話題になっています。

日経 5月20日 GDPマイナス15.2% 1―3月実質年率、戦後最大の減少

1) 民間企業の設備投資の落ち込みが最大の理由

前期比と言った変化ではなく、過去からの推移を見て見るべく、1994年からの15年間にわたる四半期GDPの推移をグラフにしました。なお、季節調整をした数字であり、年GDPに換算してあります。

Gdpnominal20091q

次のグラフが、名目GDPではなく、実質GDPで表したグラフです。(名目GDPと実質GDPの差は、GDP Deflatorのかけ算ですから、総合物価調整をしたのが、実質GDPと考えて下さい。)

Gdpreal20091q

2008年第2四半期から急降下カーブで下がっています。GDPの主要内訳として、民間最終消費支出、民間企業設備支出、政府最終消費支出、公的固定資本形成支出、純輸出(輸出-輸入)も表示しました。最近の急降下の主要因は、民間企業設備支出と純輸出であることが分かります。

実質GDPの前四半期からの変化額を2006年以降について、表したグラフが次です。

Gdprealchange20091q

民間企業設備支出と純輸出の落ち込みが2008年半ばより大きかったことが分かります。そうなると、余りにも当たり前でありすぎて、あわてることなどなく、これまでの取り組みをしっかり続ければよいと思いました。

2) 米国との比較

日本のみの経済状態で考えるより、広く考える必要があります。そこで、同じようなグラフを米国について作成しました。

Gdpusreal20091q

日本より落ち込みが小さいようです。比較のために、1999年第1四半期を1.0として重ね合わせたグラフを書きました。

Japanusgdp20081 

このグラフを見ると、米国が景気が良かったように見えます。しかし、GDPは人口が多ければ、比例して多くなると考えるべきなので、一人あたりの実質GDPとして同様にグラフを書きました。

Japanusgdpcapita20081 

カーブが異なってきました。実質は、日本の方が良かったのです。但し、生活実感としては、決して楽ではなかった。そこで、今度は、個人消費支出の一人あたりのカーブを、このグラフに追加しました。

Japanusgdppersocapita20081

一人あたりの個人消費を比べると、米国の方が、日本より良かったことになりました。

3) 日本の景気を良くするためには賃上を目指せ

冒頭から2番目のグラフのように、日本経済は、輸出が支え、輸出増による民間の設備投資の伸びに依存した部分が大きかったのです。一方で、個人にはお金は回らず、非正規雇用の拡大もあり、直ぐ上のグラフのように、個人消費は低迷を続けました。なお念のため、米国個人消費には、住宅支出は含まれていないので、サブプライムのバブルは入っていないことを申し添えます。

今や、労働組合は正規雇用者の保護に役立つ程度で、労働市場の健全発展や個人消費拡大には余り期待できないと思います。上のグラフが、それを証明しているような気がします。

現状の日本経済については、輸出減少による民間設備投資の沈滞であり、悲観する必要は何もないと思います。今回のGDPマイナス15.2%を受けて、賃金値下げによる労働者への負担を行うと、真っ暗闇に突入していきそうです。むしろ、雇用を守るのは当然のことで、労働賃金上昇を目指して、創意工夫をしていくべきと考えます。なお、発展のためには、リストラが必要です。日本語で、リストラと言うと、マイナスイメージがありますが、プラスのリストラをすべきです。雇用調整があり得るかも知れないが、雇用保険の適用拡大等を実施して、夢のある日本を作っていくべきと思います。

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2009年5月16日 (土)

与謝野大臣の発言

民主党の代表選出選挙を前にしての与謝野大臣の発言が面白い。

「岡田さんは逃げない。鳩山さんは逃げる」
日経 5月15日 「鳩山さんは逃げる」 与謝野財務相、消費増税否定を酷評から)

岡田氏のくそまじめさに、つい口に出てしまったのかなと思います。民主党は、基礎年金の全額税負担を言っているのですから、増税なしで絶対無理と私は思います。貧困社会を無くすためには、増税して政府が所得再配分をし夢のある社会にしていかないと、日本の行く先は暗いと思います。

税の面では、90年代から暗い時代が約20年も続いて、やっと岡田氏のような表現をする政治家が現れてきたのかとの思いです。政治家が税を徴収しないと言ったら、そんな人に投票しますか?私は、そんなことを言ったら、その政治家は初めから失格だと思います。何故なら、何もしない、何もできない政府になるからです。強盗や殺人はやり放題。金はごまかし放題。搾取し放題。力が全てで、最貧の人々が蔓延する社会になります。

多くの人が合理的と考える考える社会、そのルールに従いたいと思う社会、を実現するためには、社会の構成員が政府をつくり、政府を合理的に運営して、実現するはずです。

税については、デタラメが通ってきた日本社会と思うからです。

次の表が所得税、法人税、消費税の税率の推移です。財務省のWebにある所得税の推移表に少し手を加えました。

 

49年
1974

59年
1984

62年
1987

63年
1988

元 年
1989

7 年
1995

11年
1999

19年
2007

所得税率 %  万円 %  万円 %  万円 %  万円
10 10.5 10.5 10 10(~ 300) 10(~ 330) 10(~ 330) 5(~ 195)
12 12 12 20 20(~ 600) 20(~ 900) 20(~ 900) 10(~ 330)
14 14 16 30 30(~1,000) 30(~1,800) 30(~1,800) 20(~ 695)
16 17 20 40 40(~2,000) 40(~3,000) 37(1,800~) 23(~ 900)
18 21 25 50 50(2,000~) 50(3,000~)   33(~1,800)
21 25 30 60       40(1,800~)
24 30 35          
27 35 40          
30 40 45          
34 45 50          
38 50 55          
42 55 60          
46 60            
50 65            
55 70            
60              
65              
70              
75              
住民税の最高税率 18% 18% 18% 16% 15% 15% 13% 10%
住民税と合わせた
最高税率
93% 88% 78% 76% 65% 65% 50% 50%

税率の刻み数
(住民税の刻み数)

19
(13)
15
(14)
12
(14)
6
(7)
5
(3)
5
(3)
4
(3)
6
(1)

法人税率

40% 43.3% 42% 42% 40% 平2から37.5%
平10から34.5%
30% 30%

消費税+
地方消費税

0% 0% 0% 0% 3% 3% 平9から5% 5%

所得税は1974年以来税率を下げてきています。1999年と2007年とを比べると、2007年に上がっているように思えますが、(高所得者に対して)住民税を下げているから、実質は変わりません。本当は、この時、定率減税を廃止したから、低所得者に対しては、増税となり、現在に至っています。

法人税は、法人地方税が加わり、更に事業税もあるので、目安税率としては1.3倍ぐらいを考えれば良いだろうと思います。

消費税の導入は、平成になる直前の1988年(昭和63年)12月に法が成立し、1989年(平成元年)4月からの施行で、竹下内閣の時でした。その後、細川内閣の時代に突然福祉目的税として7%が提案され、つぶれ、橋本内閣の時に、1997年(平成9年)から地方消費税と合わせて現在の5%となりました。

所得税と法人税は、小渕内閣の1999年(平成11年)に、景気対策として負担軽減措置を導入して、暫定的に税率が引き下げられた。特別経済対策と思っていたら、小泉内閣の時に、この税率が恒久税率になってしまった。

小泉内閣の路線は、小渕内閣時代の減税政策と財政支出拡大で膨れあがった財政赤字をとりあえずは、支出を切り詰めていったことである。財政支出を切り詰めれば、そのしわ寄せは弱者に行く。その結果が、現在だと思います。そろそろ限界が来ているように思います。多分、与謝野氏も私と同じように感じているのだろうと勝手に思いました。

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2009年4月21日 (火)

東芝の繰延税金資産取崩による損失

日立の次は、東芝を書きます。

東芝は、4月17日に2008年度 業績予想の修正を発表しました。

日経 4月17日 東芝、営業赤字は2500億円に縮小 09年3月期

東芝の発表説明会資料は、ここからDownloadできます。

この発表において、本年1月の業績予想に対して、営業損益と税引前損益は、それぞれ300億円と500億円の改善の数字を予想したものの、最終損益は逆に700億円の悪化(損失拡大)を予想しました。

700億円の損失拡大の理由は、繰延税金資産です。

繰延税金資産とは、前払い税金であり、税効果会計に係わる会計基準の(注5)には、次のように書かれています。

繰延税金資産は、将来減産一時差異が解消されるときに課税所得を減少させ、税金負担を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない。

1) 東芝の繰延税金資産

東芝が2008年3月末の連結貸借対照表で計上していた繰延税金資産、繰延税金負債は次の金額でした。

繰延税金資産(流動)      1485億円
繰延税金資産(固定)      2858億円
繰延税金負債(流動及び固定) 807億円

差し引き 繰延税金資産    3536億円

2009年3月期において、第3四半期までで、繰延税金資産は3536億円から、4300億円へと464億円さらに増加していたとのことです。この4300億円の繰延税金資産のうちの地方税(道府県民税、市町村税、都民税)相当分の850億円を資産計上せず、2009年の損失(2009年としては、結局は639億円の損失)として計上するとの発表です。(発表説明会資料の7ペ-ジ目参照)

地方税についての繰延税金資産を取り崩すこととした理由は、地方税については、「連結納税制度の適用がなく、単独の課税所得が現在の経済環境では厳しい状況の為、一括で取り崩し」との説明ですが、今ひとつ納得がいかない部分があります。即ち、赤字の連続で支払い済みの地方税を相殺するような課税所得が生まれないと見込まれる子会社も存在するでしょうが、全体からすれば将来の利益は見込めるはずです。赤字のまま閉鎖となる会社は、利益金額では少数派と思うからです。

これ以上の議論は、私も情報を保有していないし、監査法人が的確な仕事をされるのであり、最終的な報告を待ちたいと思います。

2) 監査の重要性

4月2日の2008年度は上場企業倒産が最悪の45件で、ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)を書きました。ゴーイング・コンサーンが検討の対象になった場合には、繰延税金資産なんて考えられないと思います。

企業が赤字になれば、赤字が繰越損失金となり将来の税金を減額していくれると期待します。しかし、課税所得が生まれてくるとの確証が無くては、資産として貸借対照表に計上するのは正しくないはず。

M&Aで成長を続けた企業が、不況に入り、急成長を遂げた故に、脆弱性が問題となる企業もあると思います。M&A企業の特徴は、資産として「のれん」を計上していることが多い。「のれん」は、現在の日本の会計基準で毎期規則的な償却をすることが必要ですが、同時に固定資産の減損会計の対象でもあります。固定資産の減損会計を適用し、評価するには、将来のキャッシュフロー予測は必要不可欠です。

ビジネスの仕組みが複雑化してきたからには、企業の財政状態や営業成績を表す財務諸表も、それに適応して対処する必要がある。会計士の方々、大変ですが、頑張ってください。経済や金融を支えるインフラそのものと思っています。

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2009年4月20日 (月)

日立の省エネ冷蔵庫の不当表示に思う

日立の省エネ冷蔵庫における不当表示で、公正取引委員会が不当景品類及び不当表示防止法第6条第1項の規定に基づく排除命令を出したとのニュースがありました。

共同47ニュース 省エネ冷蔵庫で不当表示 日立ブランド9機種

1) 日立のガバナンス及びコンプラの欠如

日立アプライアンスは、株式会社日立製作所が全株を保有する子会社であり、日立製作所のガバナンス及びコンプラが不完全であることを証明したような形となりました。その結果、市場の信頼を失った部分は、大きいと思います。

ガバナンスやコンプラは、1%欠陥があっても、致命的な問題になりうると言えます。しかし、今回の、日立の問題は、「昨年9月から同樹脂を使う計画だったが、技術的な問題から遅れた。この情報が宣伝部門に伝わっていなかった。」とありますが、製造部門もその製品がどのような販売広告・宣伝がなされているか知っているはず。知ることは、義務であると考えます。見て見ぬふりをした関係者が多くいたのではないかと疑いを持ってしまいます。

日立が信頼を回復したいなら、この疑いを晴らせてくる解明をして欲しいと思います。

2) 省エネ大賞

省エネ大賞とは、平成17年度まで財団法人省エネルギーセンターが実施していた制度を平成18年度から経済産業省が主催者となり、実施している省エネのコンペティションです。ここに平成20年度省エネ大賞の平成21年1月28日経済産業省発表があり、問題の日立の製品は平成19年度の省エネ大賞でありこの経済産業省の平成20年1月17日の発表の(3) 省エネルギーセンター会長賞 (12件)の一番上に記載されています。

政府が経済産業大臣賞、 資源エネルギー庁長官賞等を出して、省エネを推進することに異存はありません。

しかし、この事態をどう考えるべきか?本当に政府がすべきことなのか?かといって、財団法人省エネルギーセンターがすべきことかとと考えると複雑です。この財団法人の役員を見ると日立製作所の方が理事としておられます。企業が財団を設立して、財団が企業の枠を超えて活動することに異議はありません。しかし、省エネ大賞のような中立的な評価を行う場合、理想としては、資金的にも政府や企業から独立した評価専門の機関が行うのが良いと考えます。

今後、省エネやCO2削減に更に取り組むといった場合に、企業から独立していた方が公平であり、省エネ推進にもっと有効であると思います。

3) モニタリング

省エネやCO2削減と言った場合、製品を評価するのみでは終わらず、モニタリングを継続することにより、正しい評価が下せます。モニタリングなしでは、一面を捕らえただけであり、正確ではありません。

独立した評価専門の機関と言ったのは、そのようなモニタリング制度を整備していく観点もあります。

4) 今回の日立事件

発覚経緯について、未だ報道がないようで、私も判っていません。公正取引委員会への内部通報でしょうか?もし、そうだとするなら、余りにも日立のレベルが低すぎると思えます。即ち、内部通報が行われるからには、その事実にある程度の数の日立の人達が気づいていたはずと思えるからです。

一方、日立アプライアンスのプレスリリースがここにあり、次のように書かれています。

「フレックス真空断熱材」の芯材の原材料に廃棄された冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用しており、また、この樹脂を使用することにより、「フレックス真空断熱材」の製造工程において排出する二酸化炭素の量を、当該樹脂を使用しない場合と比べて約48パーセント削減しているかのように表示したが、実際にはリサイクル樹脂の使用は一部機種・期間(添付資料参照)においてのみのものであり、また、実際の二酸化炭素の削減率も表示の数値より小さかったこと。

これを、省エネ大賞を受賞した際の、次の「申請者による概要説明」と比較してみます。リサイクル樹脂などとどこにも書かれていません。そうなると、省エネ性能は、ほとんど変わっていないように思えます。問題は、過大広告であったとなります。しかし、この場合でも、ガバナンス及びコンプラに問題があることには変わりはないと考えます。

省エネ大賞への申請者による概要説明

本冷蔵庫シリーズは、省エネと省スペース大容量を兼ね備えている「まんなか冷凍」構造であり、さらに独自の省エネ技術を採用している。省エネ技術では、2006年に採用した技術(ダブルクール冷却、マルチセンシング)に加え、独自の新技術として門形構造、立体成形真空断熱材の採用やコンプレッサーおよび真空断熱材の高性能化を図った。これにより、R-X6000では外形寸法がほぼ同じ前年機種のR-W5700に対し内容積を約6%拡大しながら、消費電力量では約20%の省エネ化を進めた。

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2009年4月12日 (日)

政府経済対策による将来の増税

政府は大型の経済対策を、4月10日に発表しました。麻生総理の記者会見がここにあり、その際の記者会見での配付資料はここにあります。

詳細については、この内閣府のWebの「経済危機対策(平成21年4月10日)」からDownloadできます。

効果がないとは言いませんが、様々な議論があると思います。金額ばかり目立って、中を読むと何をするのか分からないのが私にとっては、ほとんどです。例えば、雇用対策として、事業費2.5 兆円(国費1.9 兆円)や、企業の資金繰り対策として事業費41.8 兆円(国費3.0 兆円)と書いてあり、その具体的な政策を読み取ろうとしても分からない。医療・介護として1兆円が割り振られているが、こんなことをするなら、批判の多い医療費削減政策を正しいのかどうか、再検討することが重要だと思います。

将来の増税も検討すべきはずです。例えば、医療費削減政策は、小泉改革が「私の内閣では、増税をしない。」の前提で始めたことであり、その前提を外すなら、思いつきの政策より、正しい政策を実施すべきです。

いずれにせよ、財政出動15兆円なら、将来に15兆円の増税が待っています。実態から言えば、今でも5%程度の消費税増税が予定されているのだろうから、近い将来に15%位の消費税率になっても、不思議ではない状態なのだと思います。

経済対策を講じることについては賛成します。しかし、税金を投入するのであるからには、将来の増税になるのであり、増税負担以上の成長が見込めるのであれば、問題もありません。一方、経済対策という名前を借りて、一部の層のみがその利益・恩恵を受け、将来の負担が広く納税者にのしか掛かるなら、悪い政策です。この様な経済対策を「自分には余り関係がないが、損はしないだろう。」なんて受け止めては危険です。将来の増税以上の恩恵が得られるかをよく考える必要があります。

最近では、米国において、AIGのボーナスの件で議論がありました。米国において、金融安定化法の時も、不良資産救済プログラム(TARP)の時も、一番の議論は納税者の負担でした。日本人は、税金に対して甘いとも思わないのですが。しかし、利益誘導政治で自分に利益が来ると思うのは、もっと甘いことであり、可能性としては、他の人達がそれをすることも許すことに繋がる。公平な政治を望むべきです。そのためには、公平な評価が重要です。

それからすると、4月12日のMSN産経ニュースですが、【日本の議論】高速道路1000円は“天下の愚策”かがありました。第2次補正予算で成立したのですが、この平成20年度補正予算(第2号、特第2号及び機第2号)等の説明の6ページの「( 5 ) 地域活性化対策費」として「① 高速道路利活用推進対策費 補正第2 号追加 500,000(百万円)」とあります。5000億円ですから、一人あたり8千円として4人家族であれば、1家族3万円強の負担をするわけです。

本来は、高速道路の料金は何円が適切かの検討が最初にあり、当然その検討において高速道路と鉄道との関係や今後の交通システムの整備が検討されるべき。第2次補正予算は、どさくさに紛れて国会を通ったと思います。民主党が、高速道路ゼロ円を掲げ、それに対して自民党が1000円で対抗したとしか思えない。こんな夢のない、国民の幸せを無視した泥沼人気合戦をする政治でよいのかと思います。

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2009年4月 3日 (金)

ついに米ドル100円ですね

本日、米ドルが100円になりました。日経とブルームバーグを掲げておきます。

日経 4月3日 円続落一時100円台、米経済底割れ回避の見方 5カ月ぶり

ブルームバーグ 4月3日 東京外為:円下げ渋り、米雇用統計警戒や株失速で-一時5カ月ぶり安値

1年前の2008年4月1日からのチャートを書くと以下の通りです。

Usdforex20094_2

円安為替は、自動車やエレクトロニクス関係の輸出依存製造企業にとっては、歓迎すべきことです。一方で、日本経済にとっては、何とも言い難い面もあります。物価の下がり局面は、これで止まり、上昇に向かう可能性もあると思います。

ロンドン・サミット(G20)との関係で考えると、ここに共同声明(Leaders’ Statement 2 April 2009)があります。声明文は、多岐にわたっており、29番まで文章があり、抽象的な部分が相当多いのですが、それでもこの声明の内容を実現する場合の主役は20ヶ国のうちでも米国、中国などが浮かんできて、日本は米国や中国の需要増の恩恵を受けて生産・収入が増加する国になるような気がします。

世界を見渡して、世界が本当に望むものを作り出すことが真の成長をもたらす気がします。

いつものように、NHKに対する愚痴になりますが、NHKニュース 4月3日 5時18分 金融サミット 首脳宣言を発表は「先進国と新興国が来年末まで総額で5兆ドル規模の経済対策を実施することで、世界経済の成長率を4%押し上げるなどと、具体的な数値を掲げて世界経済を回復軌道に乗せるとする首脳宣言を発表しました。」なんて言っていますが、NHKて、英語は大丈夫かな。それとも、私の英語がダメなのかと思ってしまいます。

世界のGDP合計が60兆ドルを少し超える規模です。これが4%成長するなら、2.4兆ドル増加する。そのために、5兆ドルの支出をする。NHKのロジックは変だと思います。

次の、6がNHKが参考にした文章のはずですが、4%は成長率ではなく、財政支出のことであり、文章としてはGreen Economyへの移行を促進する、と私は読みます。

6. We are undertaking an unprecedented and concerted fiscal expansion, which will save or create millions of jobs which would otherwise have been destroyed, and that will, by the end of next year, amount to $5 trillion, raise output by 4 per cent, and accelerate the transition to a green economy. We are committed to deliver the scale of sustained fiscal effort necessary to restore growth.

世界の経済成長に関する文章としては、次の10を、2010年までに2%以上の成長率となるように、何が何でも努力すると読みます。

10. Last month the IMF estimated that world growth in real terms would resume and rise to over 2 percent by the end of 2010. We are confident that the actions we have agreed today, and our unshakeable commitment to work together to restore growth and jobs, while preserving long-term fiscal sustainability, will accelerate the return to trend growth. We commit today to taking whatever action is necessary to secure that outcome, and we call on the IMF to assess regularly the actions taken and the global actions required.

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2009年1月 8日 (木)

100年に1度の不況なのか?

100年に1度の不況というような言葉が使われることがあります。本当なのだろうか?と疑問を持ちます。東洋経済 1月6日 100年に1度? 未曾有の危機は恐慌につながるか?! しかしデータが語るものはも、そのような疑問を書いていました。私も、そうなんです。

1) 近年の不況

手っ取り早い比較として昭和31年以降の毎年度の前年度実質GDP伸び率を経済成長率として、次のグラフを書いてみました。データは、内閣府の国民経済計算からです。

31_2

経済成長率で捉えると、昭和31年度以降でマイナス成長が記録されたのは、2001年度、1998年度、1974年度の過去3回であり、2008年度もマイナスの記録となるのは、ほぼ確実です。1998年度と2001年度にかけては、一つの日本の景気の谷であり、不況が続いた時期でした。おもしろいのは、1998年は小渕氏が小泉氏を破って自民党総裁となり、小渕内閣が発足した年であり、2001年は逆に小泉氏が自民党総裁となり長期の小泉政権が発足した年です。この1998-2001年度不況はバブル崩壊の余波が約10年続き、失われた10年と呼ばれる日本経済回復のための時期であったと言えます。

バブル経済の絶頂期は1998-1990年度であり成長率は、6.0%、4.4%、5.5%を記録しました。

その前の1974年度は、1971年のニクソンショックによる外国為替の変動相場制への移行、1973年の第一次オイルショックや狂乱物価の影響を受けての不況でした。但し、日本経済のファンダメンタルは強い成長力に支えられていたことから、それほどの影響はありませんでした。

昭和31年度以降の経済成長率推移から判断すれば、1990年以降は安定成長経済に入ったと考えます。従い、安定成長期に高度成長を目指すと失敗する。着実な安定成長を目指すことにより、真の発展を遂げることができると思います。その意味では、行き過ぎた自由主義は経済格差を大きくし、歪みを増す。むしろ、安定成長を目指すことを考えれば、今の不況は大したことではなく、単なる調整期に過ぎないと思います。

2) 終戦不況

昭和20年以降の終戦後の混乱期は、深刻な不況であった。生産能力自身を失っていたことから、今とは比較ができない程の大不況と考えます。衣食住に、事欠いたのであり、戦争が終わったことの喜びがあった。平和のありがたさがあった。だから、そんな経済的に恵まれていなかった時代であるにも拘わらず、民主主義と平和日本の再建に向けて人々は生きていったと思います。

米国はいざ知らず、日本とヨーロッパやあるいは中国を初めアジア諸国にとっても、第2次大戦直後は、今と比較的ないほど物資がなかった。食料がないと言うのは、経済的には最も大変なことです。終戦は今から60年少し前のことですから、100年に1度の不況との表現は間違っていると思います。

3) 昭和大恐慌

昭和大恐慌の時代とは、狭義では1929年ニューヨーク株価大暴落以後を世界不況と捉え、世界不況の日本への影響である。しかし、1919年に終了した第一次世界大戦後の復興需要がヨーロッパ諸国の復興と共に落ち着きを見せ、日本の産業が不況に入いっていたこと、1923年の関東大震災、その後の震災恐慌、金融恐慌があり、1923年頃から長期に暗闇に入っていた状態と考えるべきと思う。小林多喜二の蟹工船が発表されたのが、1929年であった。満州国建国宣言がなされたのが1932年であるが、満州国に関しては日本の不況対策の意図も含まれていたと思います。

昭和大恐慌の時代とは1923年頃から戦前一杯続いていた大不況であり、言わば大不況の結果が日華事変であり、米国戦であったと思う。植民地経営で不況脱出を計ろうとしていた。最後には策が尽き、貿易で輸出入とも最大の相手先であり経済のパートナーである米国と戦争をすることで打破しようとしてしまった。

経済面のみでの判断で動くものではなく、政治体制や制度が絡んでいるが、富国強兵の方針を転換することができない硬直的な対応により、入り込んだ不況から脱出する手段を講じることができず、泥沼状態にあったと考えます。

すくなくとも、今は自由に判断が下せ、政策実行ができるのであり、昭和大恐慌と比べれば実に抜け出しやすい状態である。逆に政策的に失敗すると昭和大恐慌になってしまうという教訓を学ばねばならない。

4) 大政奉還・江戸城開城

徳川の世が終わったことは、武士の消滅である。地方の藩が直ちに消滅したわけではないが、江戸幕府は江戸城開城と共に消滅したのであり、江戸における徳川幕府と藩の江戸屋敷の経済需要は消滅した。職人の多くは受注を極端に失ったはずである。農業が経済の大部分であったはずであるが、第2次産業、第3次産業では大きな需要減が生じ大不況になったと考えられる。

大日本帝国憲法の発布が明治22年、第1回帝国議会開会が翌年の明治23年である。明治2年に版籍奉還がなされ明治政府が存在し、勅令でなんじゃかんじゃ可能であったかも知れないが、近代的な法制度は憲法なしで存在できない。景気対策も様々な法がインフラとして存在するから可能である。

大政奉還・江戸城開城は1867年、1868年であり140年以上経過し、100年に1度の比較対象にならないが、未だ日本は産業革命以前の状態であったのであり、経済へのインパクトは今の不況とは比べものにならないほど大きく、しかもコントロールする手段も当時はほとんどなかった。

少なくとも今の状態は、大政奉還・江戸城開城と比べれば、月とスッポンであり、大したことはない。100年に1度などと大騒ぎをするよりは、じっくりと正攻法で望めばよいと私は考える。

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2008年12月26日 (金)

税制改革中期プログラムを考える

政府は、12月24日の閣議で”持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた「中期プログラム」”(以下、税制改革中期プログラムと呼ぶ)を決定しました。

閣議決定された税制改革中期プログラムはここにあり、日経のニュースは次でした。

日経 12月24日 消費税上げ「11年度から」 税制改革の中期プログラムを閣議決定

中期展望については、やはり基本的な部分の見直しも重要であります。報道では、日経のみならず、消費税増税のみがハイライトされすぎており、もう少し税体系を含めて考えるべきと思うことから、以下書き進めます。

1) 平成21年度予算

平成21年度予算も12月24日の閣議で政府案が決定されました。

日経 12月24日 09年度予算案を閣議決定 一般歳出、過去最大の51兆円

予算フレームは、ここにあり、次の表の通りです。(四捨五入による端数の過不足あり。)

平成21年度予算    (単位:兆円)
歳出 歳入 歳入前年度 増減
一般歳出 51.7 租税及び印紙収入 46.1 53.6 -7.5
地方交付税交付金等 16.6 その他収入 9.2 4.2 5.0
国債費 20.2 公債金 33.3 25.3 7.9
歳出合計 88.5 歳入合計 88.5 83.1 5.5

歳出が5.5兆円増加し、税収が7.5兆円減少するが、これを特別会計からの繰入4.2兆円実施し、その上で国債による資金調達を7.9兆円増加するという一般予算です。なお、前年度歳入の53.6兆円は当初予算であり、補正後の税収予想は46.4兆円であり、今回の政府予算案とほぼ同じです。ちなみに差はこの表にありますが、21年度予算と20年度補正との差で大きいのは、揮発油税の一般財源化により7710億円増を見込むが、法人税の減少を6150億円予想しています。

多分不況により、法人税の歳入落ち込み幅は更に大きくなると私は予想します。

2) 主要税

税収46.1兆円の内訳は、この表にあり、次の通り所得税、法人税、消費税の3税で78.6%を占めます。

  税額(兆円)   割合
所得税 15.57 33.8%
法人税 10.54 22.9%
相続税 1.52 3.3%
消費税 10.13 22.0%
酒税 1.42 3.1%
たばこ税 0.84 1.8%
揮発油税 2.63 5.7%
その他の税 2.46 5.3%
印紙収入 0.99 2.1%
合計 46.10 100.0%
所得税のうち源泉徴収分は12.7兆円、確定申告分は2.9兆円です。

但し、所得税、法人税、消費税は、実は本質に大きな差はないとも言えます。法人は事業活動における中間的な存在であり、最終的には個人に何らかの形で帰属すると考えることができるからです。消費税は、基本的には所得税の変形として個人が間接税として負担する所得税であるとも言えます。

3) 所得税

税制改革中期プログラムでは、次のように述べています。

個人所得課税については、格差の是正や所得再分配機能の回復の観点から、各種控除や税率構造を見直す。最高税率や給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除の検討を含む歳出面も合わせた総合的取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討する。金融所
得課税の一体化を更に推進する。

高所得者の税負担を引き上げと中低所得者世帯の負担の軽減があり得ると私は読みました。なお、所得税については、消費税や社会保険料負担と同時に考えた方がよいと思います。

4) 消費税

消費税が何故所得税と同じ個人の負担かというと、所得税法の構造として5条で個人事業者と法人は消費税を納付する義務があると規定されていますが、同時に30条で「事業者が国内で行う課税仕入れに係わる消費税額を、課税標準に対する消費税額から控除する。」と定められており、更に52条、53条により控除する金額の方が大きければ、超過額の還付を受けられます。言わば、事業者は政府に成り代わって販売先より消費税を徴収し、税務署に納付する役割をしているようなものです。そして、支払った消費税は控除(又は還付)されるのですから、工場等の設備投資で多額の消費税の支払いがあっても、精算することにより企業負担にはなりません。(厳密には、課税売上割合が95%未満でありば、企業負担は存在するが、最終的には売値に転嫁しているとも言えます。)

一方、消費税と所得税を比較した場合、所得税は累進税率構造や所得控除等があるので、所得再配分の機能を果たせるし、住宅所得特別控除のように、景気対策等政策手段としても使えフレキシビリティーが高いと言えます。基本的には、消費税よりも所得税が優れているというのが古典的な理論であったのですが。最近は、どうも・・と言う具合です。しかし、決定するのは、国民です。お上でも政治家でもないのであり、税は国民が負担するのであり、国民が決定すべきです。

更に参考資料を国税庁の統計情報から作成しました。このWebあたりから入手したものです。

民間給与実態調査結果から作成した年間給与水準(ボーナス・残業込み)のグラフです。なお、民間給与の調査であるので、公務員は対象となっていません。

H19

男と女でピークが異なっており、女の場合は100万円から200万円の人が一番多く、男では300万から400万円と400万円から500万円がほぼ同じで、この辺りが一番人数が多い。なお、グラフ上では1000万円から1500万円の部分に小さなピークがありますが、これは区分した幅が1000万円以下では100万円であったのが、1000万円を超えてから500万円刻みになっているからで、実際にはなだらかな減少カーブと思ってください。

次が、給与水準と各給与水準の人が納付している税額を表示した円グラフです。

H19_2

900万円から1000万円の部分をピンク色にしましたが、1000万円以下は人数では94.9%です。1000万円以上の人は人数では5.1%ですが、税額では46.6%です。

給与所得なので給与所得控除が適用されるのですが、とりあえず給与金額別の負担率を見るために、税額を単純に給与総額で割り算したパーセンテージが次のグラフです。

H19_3

800万円以下は5%にもならないのですが、これは給与所得控除と扶養控除等の所得控除があるからです。但し、地方税及び厚生年金保険料や健康保険料が強制的に天引きされるのですから、各個人が実際に負担として感じるのは、このグラフの税率ではありません。地方税は10%一律で、厚生年金保険料7.675%、健康保険料(協会けんぽの場合)4.1%です。従い、上の税率グラフに20%程度負担率が増加するような具合と思います。

保険料は保険なので高所得になっても一定額で所得比例ではなく定額となります。一方、健康保険が国民保険になると所得が低い場合に、負担増になると思います。

非常にやっかいで複雑ですが、所得税のみで論じてしまうと、低所得者は税の負担が低すぎるといった類の話になる恐れがあります。変な逆説を言えば、「低賃金労働者がいるから、高所得者が高所得を享受できる。」みたいな部分もあると思います。次のような報道もありますが、一つの方法と思います。

日経 12月25日 基礎年金の財源、全額税方式に 自民・民主の議員7人が改革案

次に各給与水準別に人数が増加しているのか減少しているのかを見てみます。男、女、男女合計の3種類のグラフを掲げます。

H19_4

H19_5

H19_6

赤線の100万円~200万円のクラスが男女とも増加しています。格差拡大は、低所得者層の増加により生じているような気がします。各給与水準クラスの人数分布推移を男女別に表したのが次のグラフです。

H19

H19_2

男女で分布が異なっており、女性の場合は、低いクラスが多い。多分、パートで働いて、且つ所得金額を自ら制限しておられる方も多いのではと思います。給与所得の場合は、103万円の壁(給与所得控除65万円と基礎控除38万円の合計)や130万円の壁(夫の健康保険・社会保険の3号被保険者になる生計維持基準)があり、バカなことになっていると思います。

既得権益を保護しすぎると全体が不幸になる危険性があると思います。男女関係なく働き、各人が自己の能力を発揮できる社会にしないと、人口減少の日本に明るい未来が開けない気がします。

なお、税制改革中期プログラムでは、消費税について次のように述べています。

消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額がいわゆる確立・制度化された年金、医療及び介護の社会保障給付と少子化対策に充てられることを予算・決算において明確化した上で、消費税の税率を検討する。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等総合的な取組みを行うことにより低所得者の配慮について検討する。

5) 法人税

税制改革中期プログラムの文章は次です。

法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベースの拡大とともに、法人実効税率の引下げを検討する。

「社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意」なんて、これでは消費税増税して法人税を安くするみたいで、企業は良いでしょうが、日本国民はこれでOKなの?と思います。

次に、国際的な税率比較ですが、この財務省の比較によれば日本と米国はほぼ同じで高いのです。米国と同じであれば、良いのでは思うのですが。それと、実効税率は40.69%で正しいのかと思います。即ち、次の式で計算すると確かに40.69%となるのですが、例えばトヨタの2008年3月期の連結損益計算書は、税引前利益2兆4372億円に対して法人税等の負担は9115億円です。これからすると37.4%です。研究開発費の法人税の特別控除の適用があったりするからと思いますが、各種の優遇策と企業が政府及び地方自治体から受けているサービスも合わせて考えないといけないと思います。

実効税率=(法人税率30% x (1 + 地方税率20.7%) + 事業税率7.56%)/(1 + 事業税率7.56%)

法人税についての議論で、「税率が高すぎると外国に逃げてしまう。」との主張があります。そこで思い浮かぶのが、Ikeaという家具屋さんです。北欧スウェーデンの家具として売っていますので、本社はスウェーデンと思っておられる方が多いのではと思います。しかし、本社はオランダなのです。多分、その理由は税務対策、節税にあると思います。

その様なことが、例えば、トヨタで可能でしょうか?Ikeaは、非上場会社です。だから、そんな大胆な戦略も可能ですが、トヨタ本社はオランダになりましたなんて言ったら、日本ではたちまちホンダに負けてしまったりして。そう言えば、経済財政諮問会議でトヨタ出身の方が法人税率の引き下げを言っておられたように思いました。

仮に外国に逃げたとして日本で納付する法人税が減るのでしょうか?原則変わらないはずです。日本法人であれば、全世界所得が課税所得となるが、持ち株会社を外国に移せば、海外生産の所得は日本の法人税は課せられません。しかし、日本法人又は日本法人の子会社・孫会社である故に、日本の法人税がかかる場合は、外国税額控除の適用となります。これ以上は、どちらの税率がどうとか細かい議論になるし、更には本当に節税を計る場合は、租税条約の抜け穴の利用やタックスヘブンの利用をするので、猛烈に複雑となります。

税は日銀の金利ではないので、下げた場合の恐ろしさは奈落の底的な感じがあると私は思います。いずれにせよ、税の中期政策は国民にとって重要な課題です。

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2008年12月18日 (木)

自動車産業の今後

不況が拡大していると思います。次のようなニュースもありました。

日経 12月17日 ホンダの今期下期、1900億円の営業赤字に 上場以来初の減配

ホンダの発表は、2008年度業績予想の修正2008年度業績予想プレゼンの通りです。2008年度12月間の通期の純利益予想は連結1,850億円の利益で、単体550億円の損失となっています。ホンダは、海外生産が多い会社であり、連結売上高のうち四輪生産台数365万台のうち、北米で44%、アジアで22%であり、国内での16%より大きな数字になっています。

前回の発表数字と比較すると連結で純利益が3,000億円の減少であり、単体の純利益が2,030億円減少して赤字転落なので、国内生産に係わる赤字増が連結利益減少の70%近い要因と考えられる。単体売上は、国内生産が主体のはずであり、そのなかで輸出が70%を超えています。今回の修正における、通期ベースの売上を比較すると、輸出の減少が13.4%であり、国内の減少が7.3%です。四輪の台数では、輸出減少11.1%で国内販売減少が4.1%となっています。

他の自動車会社を見ると、日産の12月17日のニュースは次でしたし。

日経 12月17日 日産、国内の減産拡大 非正規社員ゼロに

トヨタも北米減産のニュースはありましたし。

日経 12月8日 北米で追加減産、トヨタが意向 4工場対象

米自動車ビッグスリーが、どのような道をたどるのか、未だ不明点が多いが、UAW(全米自動車労組)とどのように話がまとまるか、全産業において米国の労働組合がこれからどのようになるかが一つのキイポイントだと思います。ビッグスリーについて「労働者1人当たりに1時間平均73ドルのコスト」で、「日系メーカーの場合は1人1時間当たり労働コストは平均49ドル」という情報があります。単純比較はできないものの、生産コストにおいてビッグスリーが不利になっていると思います。新参メーカーはデトロイトを避け、UAWに属さない人を雇用しても、歓迎される地域に生産拠点を置くことができた。ビッグスリーは、そんなことをしたくて不可能であった。UAWも、組合員を守ることができなければ、存在意義はなくなるのであり、現実に医療保険が切り捨てられていこうとしていた米国において、UAWが何もしないことは許されなかった。

一方、日本では、派遣・非正規社員の削減が連日報道されています。無責任経営とも言えるし、不況の時は雇用数を減少するのが当然であり、派遣・非正規社員は調整弁であるとする考えもあるはずです。実は、昔から日本でも工場に出入りする人材提供下請けが存在し、不況の時には調整弁の役割を果たしていたと思います。その当時は、正社員は終身雇用で、肩たたきすらほとんどなかった。しかし、給料は下請けの方がよかったりして。調整弁を無くすことは困難だろうと思います。しかし、調整弁=派遣・非正規社員というのは、余りにも能がない話で、もしそうするなら、正社員の数倍の給料で働いてもらうこととするとか、働く者が納得できる制度にすべきと思います。

日経 12月17日 「雇用保険料引き下げやむを得ず」 厚労省が報告書素案なんてニュースがありますが、保険料を下げるよりも、給付を厚くする方が、重要ではないかと思います。わがまま・無能力経営者は日本の法人税が高いから競争力が失われていると言います。企業の競争力は、法人税率が主要因で決まるのではなく、複雑な要素で決まってくるし、有能な人材なんて法人税より重要です。例えば、日本は治安が良い国であり、そのことから治安面でのコストは日本では安くついているはずです。同様に、不況になり不幸にも解雇されても、ある程度の支援を受けれられるなら、安心して働ける豊かな国になるはずです。企業も恩恵を受けられる。国民も幸福。そのように税を有効に使うことを考えるべきと思います。

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2008年12月13日 (土)

オリックスの懸念

「火のない所に、煙は立たない。」でしょうか?オリックスの次のような、プレスリリースは気になってしまいます。

12月5日 証券取引等監視委員会への調査依頼について
12月9日 短期流動性について

Yahoo株価チャートを見ても、この6月間右肩下がりです。

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1) 5年もの借入には13%以上の金利上乗せ必要

J-CDSの5年CDS(Credit Default Swap)のオリックスの参考値が1312.5ベーシスポイントです。年率の%では、13.125%です。通常金利に、これだけ上乗せしないとオリックスは資金調達ができないと考えるべき参考値です。

J-CDSの説明は、このCDS参考値公表制度要領(PDF)をご覧下さい。東京金融先物取引所が、発表している参考値です。CDS参考値は、このページから見れます。ちなみに、オリックスも6ヶ月前の6月中頃は1%強でした。6月以降の推移は、以下の通りです。

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10月頃から急激にCDS参考値が上昇したのが分かります。CDS参考値は、貸倒リスク(倒産リスク)参考値とも言えるでしょう。オリックスの1312.5を分かりやすいように、他の会社と比較すると、自動車メーカーはトヨタ202.2、ホンダ231.4、日産514.8であり、低い会社として関西電力、中部電力、東京電力は46.0、46.0、46.66があります。

正直、1312.5は高いです

2) オリックスの財務内容

ここに第2四半期報告書があります。2008年9月末までなので、CDS参考値が高くなる前です。しかし、貸借対照表は現在もほぼ同じと考えられます。8.9兆円の資産のうち、3.6兆円が営業貸付金で、リースは2.1兆円で、有価証券が1.2兆円あります。純資産が1.2兆円で、負債が7.6兆円です。負債の中で、短期借入金1.3兆円と長期借入金4.5兆円があります。

問題は、短期借入金のなかにC/P(コマーシャル・ペーパー)も入っていると思いますが、返済をするための資金調達のコストは、金利上昇が避けられないと思えることです。もし、5年CDS参考値が13%故、5%高くつけば、650億円の年間金利負担増であり、10%高ければ1300億円増です。赤字転落の可能性もあります。

有価証券の中に、日本・海外の地方債が2575億円あるのですが、CDO(Collateral Debt Obligation、オリックスはモーゲージ担保証券と呼んでます。)が4946億円あります。このCDOの中身は不明ですが、CDS参考値が13%になっている理由は、このCDOかも知れない。あるいは、営業貸付金3.6兆円の不良債権の割合が高いのかも知れない。このあたり、無責任に勝手なことを言ってはならず、慎まねばならないのですが、オリックスのCDS参考値1312.5ベーシスポイントから想像をたくましくしました。

3) 他にCDS参考値の高い会社

オリックスより高い会社があります。アイフル2870、武富士2480で、プロミス1300はほぼ同じ。他に1000以上の会社は、日本航空1550や、最近高くなってきて有名なソフトバンク1011が見受けられます。

消費者金融も大変なのですが、オリックスより貸付金利が高いはずなので、少しはましかな。でも、2000以上なんて、消費者金融が資金調達をサラ金からしているような感じに思えます。

4) 金融機能強化法の成立

金融機能強化法(賞味期限延長法)が12月12日日経 金融機能強化法が成立 予防的な公的資金の注入可能にの報道のように成立しました。12月10日のエントリーで書いたように、金融機能強化法が対象としているのは、金融機関であり、ノンバンクは対象外です。しかし、この日経12月12日 政投銀、CPを直接購入 政府検討、企業の資金繰り支援のように、政策投資銀行が企業のC/P(コマーシャルペーパー)を購入することもするようです。そうすれば、優良大企業の資金援助は可能です。

オリックスは、どうするかですが、オリックスの資金貸付先の支援も必要だから、多少は援助すべきと思えます。但し、市場を無視してはならず、その場合は、CDS参考値並の市場貸付金利でC/P買い取りをすべきと考えます。

オリックスはあおぞら銀行の株式を保有しており、9.09%保有株主です。しかし、政府支援は、あおぞら銀行に直接すべきです。

重要なのが、中小企業の金融支援ですが、私は金融機能強化法でするなら、信用金庫、信用組合といった本来の中小企業金融を行うべき金融機関を強化して実施すべきと考えます。但し、必要に応じて、信用金庫、信用組合の再編を推進し、合理的に金融がなされるようにすべきです。

5) ヤミ金融

心配なのが、ヤミ金融です。消費者金融の財務状態を調査していませんが、アイフル2870、武富士2480のCDS参考値なんて、利息制限法より高いので、資金調達が失われたと同然。タダでさえ、グレーゾーン金利の返還をする必要があるのに、新規消費者ローンなんて考えられない。

その結果が、どうなるのか。ヤミ金融がはびこることを恐れます。ヤミ金融なんて、消費者金融のように優しくはないです。グレーゾーン金利や出資法違反金利を取り戻そうとしても、不可能に近い。一方で、藁をも掴まざるを得ない人はいると思います。

ここは、地方自治体等で、生活支援金融をされておられる人達に是非頑張ってもらいたいと思います。政府も、金融機能強化法、大企業C/P買い取りのみならず、生活金融支援を頑張ってもらいたい。麻生総理の緊急記者会見なんてありましたが、残念ながら生活金融支援については、ほとんどないと感じます。自殺者多発なんて、嫌です。

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2008年12月12日 (金)

サイゼリヤのデリバティブの恐ろしさ

サイゼリヤがデリバティブで153.1億円の損失を出しました。

日経 12月10日 サイゼリヤ、デリバティブ契約解除で損失153億円 全取締役を減俸に

サイゼリヤ 12月10日発表 デリバティブ契約解約に関するお知らせ

見逃してしまいそうですが、このデリバティブ取引は52百万豪ドルの円との為替スワップでした。従い、1豪ドルを65円とすると、34億円足らずの取引で153.1億円の損失になっています。目的が外貨変動為替ヘッジであれば、あり得ないような損失金額なので、少し分析します。

1) デリバティブ契約の内容

デリバティブ契約の内容については、この11月21日のサイゼリヤ発表 デリバティブ評価損発生見込みに関するお知らせに書かれています。2種類のデリバティブ契約があり、2007年11月22日と2008年2月7日に締結され、それぞれの契約締結時の豪ドルの為替レートは105.83円と98.93円でした。サイゼリヤは、オーストラリアから牛肉等の輸入があり、豪ドルを安く入手できれば、豪ドル決済の仕入れ価格も安くなります。そこで、これら2本のデリバティブ契約ではサイゼリヤが豪ドルを78円と69.9円で入手可能な契約としました。

但し、豪ドル為替レートが万一78円(もう一つの契約では69.9円より豪ドル安/円高になった場合は、比例級数的に逆に豪ドル高/円安の為替レートでサイゼリヤは円対価を支払う契約でした。金額は、2007年11月22日の契約は24百万豪ドルで2008年12月1日から2010年11月1日まで毎月百万豪ドルであり、2008年2月7日の契約では28百万豪ドルで2008年8月から2011年3月まででした。

チャートで示すとよく分かるので、チャートを作りました。(2007年11月22日の契約についてです。)

200812a

青のAUDスポットレートが、実際の豪ドル為替レートの動きです。デリバティブ契約を締結した頃は、豪ドルは100円程度であったので、まさか78円以下になるとは思っていなかった。しかし、2008年9月に悪夢の78円以下に突入した。しかも、この契約のスワップ時期は2008年12月からなので、読みと結果は全く逆に出てしまった。

基準為替レート78円以下になると比例級数的に豪ドル高/円安為替になるのですが、それを示したのが次のチャートです。これは、今後の為替が1豪ドル=65円で推移したと仮定してデリバティブ契約によるレートを計算したものです。

200812b

レートの上限である600円/AUDに2009年8月以降は張り付きました。

2) 教訓

上記の様な結果になったことから、反対取引を組んで、契約解除する以外に選択はなくなったと思います。これが、34億円足らずに相当する外貨変動為替ヘッジで、その5倍近い金額の153.1億円の損失を生んだ理由です。

デリバティブは、リスクヘッジに使用するものです。多分、サイゼリヤの経営者もレストランのメニューは円建てであり、豪ドルを78円や69.9円で固定して為替リスクをヘッジしたつもりでいたと思います。しかし、これはヘッジではありませんよね。

決して、「後出しジャンケン」で言っているのではありません。上のチャートは、ファイナンスのことが少し解っている人であれば、書けたのです。そして、チャートを書いたり、確率を計算したりして、リスクの度合いを予想できたのです。それと、インベストメントバンクの手の内を、ある程度は読むことができるのです。少しでも読めれば、落とし穴に気づいたりします。

ファイナンスコンサルタントでも経営コンサルタントでも良い、自社に人材がいないのであれば、外部の専門家に少しだけでも相談することと思います。サイゼリヤがデリバティブ契約を締結した相手は、この金融庁の行政処分により業務改善命令が出されたBNPパリバですが、さすがBNPパリバで、このようなデリバティブを作られたと思います。考えれば、ハイリスク・ハイリターンのデリバティブなんて、簡単なのかも知れません。不況になるほど、「貧すれば鈍する」に陥ってしまいやすいかも知れないので十分注意してください。

株主代表訴訟の訴えがあっても問題がないように経営をすることは重要です。このようなデリバティブ取引を実行する際は、そのデリバティブを持ってきたインベストメントバンクの説明のみを聞かず、他のファイナンスに詳しいコンサルタント等の意見も聴取して、経営者として判断することをお奨めします。日本は、金融商品を販売する際にはリスクについて十分に説明することを金商法が義務づけていますが、考えれば矛盾する点が少しあると思います。むしろ、同業者でない利害関係のないコンサルタントの意見が、私からすれば、よいと思います。

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2008年12月10日 (水)

金融機能強化法の改正案が12日成立の見込み

金融機能強化法の改正案が成立する見込みとなりました。

日経 12月9日 金融機能強化法の改正案、12日に成立へ 自民、民主が合意

1) 成立に合意と言うが

面白いですね。報道では「11日の参院財政金融委員会で採決するが、この委員会とその翌日の12日に開催される参院本会議では野党の反対多数で否決され、同日中の衆院で再可決成立することで固まった。」と言うのですから。

中身より、メンツみたいな感じでしょうか?

2) 改正と言うが

改正と言うが、賞味期限延長法の様な気がします。例えば、この法案に書いてあるのは、次の第3条第1項のような条文です。分かりやすいように、その下に、第3条第1項を掲げておきますが、「平成20年3月31日まで」を「平成24年3月31日まで」と変更しただけです。

第三条第一項中「平成二十年三月三十一日」を「平成二十四年三月三十一日」に改め、「第十五条第一項」の下に「及び第三十四条の二」を加え、同条第二項中「平成二十年三月三十一日」を「平成二十四年三月三十一日」に改める。

預金保険機構(以下「機構」という。)は、金融機関等(銀行持株会社等を除く。以下この章において同じ。)から平成二十二十四年三月三十一日までに当該金融機関等の自己資本の充実のために行う株式等の引受け等(当該金融機関等が銀行等である場合にあっては、株式の引受けに限る。)に係る申込み(第十五条第一項並びに預金保険法 (昭和四十六年法律第三十四号)第五十九条第一項 、第六十九条第一項、第百一条第一項及び第百五条第一項の規定によるものを除く。)を受けたときは、主務大臣に対し、当該金融機関等と連名で、当該申込みに係る株式等の引受け等を行うかどうかの決定を求めなければならない。 

3) 農林中央金庫

上に掲げた第3条1項に該当する金融機関等とは

1 銀行、2 長期信用銀行、3 信用金庫、4 信用協同組合、5 労働金庫、6 信用金庫連合会、7 信用協同組合連合会、8 労働金庫連合会、9 農林中央金庫、10 農業協同組合連合会、11 漁業協同組合連合会、12 水産加工業協同組合連合会、13 銀行持株会社等ですが、最後の銀行持株会社が除かれていることから12種類ですが、色々あるものです。

この法案は、11月5日衆議院財務金融委員会で可決された際に附帯決議がなされています。附帯決議の内容は、続きを読むに入れておきましたが、農林中央金庫と新銀行東京に関連して附帯決議がなされています。

そのうちの一般の人に馴染みが薄いのが農林中央金庫です。馴染みが薄いのは、当然のことで、何故なら出資者は会員である農業協同組合(JA)、漁業協同組合(JF)、森林組合(森組)、およびそれらの連合会、その他の農林水産業者の協同組織等で2008年3月31日現在で4,260団体ならびに優先出資者となっている金融機関、証券会社等です。現在の資本金2兆160億円のうち、会員による出資金が1兆9910億円で98.8%が会員による出資です。また、預金が2008年9月30日現在で38兆3119億円ありますが、この預金の大部分は会員である出資者で、そのうちでも農業協同組合関係が85%以上を占めています。

農林中金の2008年9月末の連結貸借対照表がここにありますが、その概略は、純資産が2.4兆円(うち資本金が2.0兆円)で負債が55.6兆円です。そして、この負債と純資産の合計58.1兆円に対する資産は、貸出金8.8兆円、有価証券32.9兆円、それら以外が16.4兆円であり、56.7%が有価証券での運用です。

農林中金は、農林中央金庫法により設立された法人であり、農林中央金庫法第1条には、「農林中央金庫は、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合その他の農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関としてこれらの協同組織のために金融の円滑を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資することを目的とする。」とその目的が定められています。農林水産業と農林水産業者のための組合組織としての金融機関であり、農林水産事業に資金貸し付けがなされるのが本来の姿であると思います。しかし次の表(農林中金ディスクロージャー誌より)のように、貸付金の相手に農林水産事業者は少なく、しかも貸付金より有価証券が大部分といびつな形になっています。

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日本の農業は、自給率が低下し、働き手が高齢化し、価格競争力が多くの農産物で失われておりと悪循環に陥っていると思います。その結果が、農林中金の財務状態であり、預金はあるが、その運用は有価証券となっているという変な形になっていると考えます。有価証券が多い為に、2008年9月末のその他有価証券評価差額金は1兆円のマイナスです。その結果は、この1兆円を超える資本調達です。仮に32.9兆円の有価証券が10%価値が下がれば、3.3兆円なので、増資後の純資産が1兆円増加しても3.4兆円なので、ほぼ同じです。最も、1兆円キャッシュが増えても、どうするかまた問題が増えます。有価証券の明細を分析していないので、これ以上述べることはしませんが、実情は大変だと思うし、その原因が日本の農林水産業の構造的問題に起因しており、経営が悪かったと単純に言える状態ではないことを指摘しておきます。農林中金に関しては、金融機能強化法なんてレベルではない、農林水産業振興基本法のようなものが必要ではないかと思います。

4) 金融機関に対する資本増強

金融機能強化法の改正案が成立するのでしょうが、実際に個別の金融機関の再編や資本増強は何時になるのか興味があります。即ち、現在の状況では、自民党は衆議院選で負ける可能性があります。そうなると、今回民主党が反対するものの、実は資本増強時の与党は、民主党、あるいはXX連立だったりして。そう考えると、皮肉の皮肉、訳が分からない。

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2008年11月19日 (水)

日本経済の予測

11月17日に内閣府が、国民経済計算の速報値である四半期別GDP速報を発表しました。ここから辿れます。日経の解説は次の通りですが、私もこれからの日本経済をこの速報をベースに考えてみます。

日経 11月17日 2008年度は実質0.3%減、7年ぶりのマイナス成長に・NEEDS予測

1) 2008年度はマイナス成長

2008年7月~9月のGDPの前期比伸び率はマイナス0.4%でした。ここ10年余りの間の2005年度からの毎四半期GDPの前期比伸び率は、次のグラフの通りです。ちなみにボトムは1998年1月~3月のマイナス7.6%で、その次が2001年7月~9月のマイナス4.3%でした。2008年4月から6月がマイナス3.7%であったのですが、とりあえずは1998年1月~3月や2001年7月~9月ほどは悪くないといった現状です。

Gdp200811_2 

年間でどうなるかの予測ですが、2008年10月から2009年3月までの期間の四半期GDP成長率(年換算)を横軸として2008年度の年間成長率の予測計算の結果を現したのが、次のグラフです。

Gdp200811_4 

2008年7月~9月と同じマイナス0.4%が続く場合は、2008年度の成長率はマイナス0.3%弱となり、マイナス2.0%程度で続く場合は、年度の成長率はマイナス2.0%程度になると私の計算は予測しています。2008年10月から2009年3月の下半期は、上半期の成長率よりも低くなると考えられ、日経のマイナス0.3%の予測より厳しいと私は予想します。

2) 2008年7月~9月のGDP

2006年10月からの2年間8四半期の間の要素毎の寄与度(前期比年換算)をグラフにしてみました。ピンクの棒が輸出から輸入を差し引いた純輸出ですが、2008年1月~3月までは輸出がGDP成長を牽引していました。2008年4月以降は輸出がマイナスの要因となっています。(なお、各寄与度を全て合計すると、全体の伸び率と一致します。)

Gdp200811

民間設備投資は2008年に入った頃よりマイナスであり、2008年7月~9月でプラスであったのは、民間最終消費支出と民間住宅投資でした。

3) 個人所得の見込み

厚生労働省の勤労統計調査の現金給与(全産業)の前年同期比を、一番最初の四半期GDPのグラフと同じ期間について表示したのが次のグラフです。本年初めは、1.5%程度となったこともあったのですが、再びゼロに近くなりました。

200811

次のグラフは、内閣府の国民経済計算の雇用者報酬と厚生労働省の勤労統計調査の現金給与(全産業)の四半期データの前年同期比を同一グラフで表示したものです。

200811  

雇用者報酬と現金給与は、統計の手法が異なっていますが、ほぼ同じ傾向でした。2008年1月~3月をピークに下がってきています。厳しい経済情勢の中、それほど上がるとは思えず、むしろ下がる可能性があると思います。

やはり全体的に暗いと思います。一つには、内需拡大と言っても、日本は国債・公債の残高が大きすぎて、これ以上増発すると金利上昇が発生し、国債のジャパンプレミアムなんてなったらいよいよ暗くなるなと思ってしまう。小さい政府の場合は、政策としてできることは限られてしまうが、国債残高が膨らんでいるから、いよいよ何もできないと思う。

そうなると、米国においてオバマ新大統領景気が発生してくれたり、今や世界の消費の中心地中国の景気上昇の恩恵が日本に回ってくるのを期待するしかないのかも知れない。G20の結果を考えると、日本って決して明るくないんですよね。合意声明文を読んでも、日本がリードできる部分がほとんどなくて、ついて行くの大変だなと思うようなことばかり。ついて行かないと取り残されるのですから、日経のマイナス0.3%の予測はオプティミスティック過ぎるだろうなと思ってしまいました。

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2008年11月16日 (日)

これからの経済対策

すこし大げさすぎるタイトルを付けてしまいました。20国首脳会議(G20)が終了しました。次のホワイトハウスのWebにその宣言文があります。日経、ロイターの英語と日本語の記事も掲げておきます。

Office of the Press Secretary, November 15, 2008 The White House: Declaration of the Summit on Financial Markets and the World Economy

日経 11月16日 金融安定化へ「あらゆる追加的措置」 金融サミット
ロイター 11月16日 金融サミットでは追加的措置強調、市場は即効性乏しいと評価
Reuter Nov 16, 2008 World leaders urge fast action on financial crisis

具体的内容が薄く抽象的事項が多い合意であるとの批判はありますが、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、トルコ、英国、米国そしてEUの20国という多くの国の政府(EUも通貨を発行していることから政府としておきます。)による合意であり、抽象的表現が多くなるのはやむを得ず、むしろG20で集まって会議をし、合意をしたことに意義があることと思います。

11月10日のバラク・オバマ政権のCHANGE政策の中で、「オバマ政権の経済政策の課題は、マネーゲーム資本主義に対するルール整備であると思う。ルール整備は、規制ではない。参加者に対する公平なルールであり、公平なルールこそが自立的な発展をもたらすのである。」と書きました。経済政策は、容易なものではなく、政府が下手な関与をすることが悪影響をもたらすこともあります。何もするなということではなく、必要なルールを整備し、正しい監視を行い、必要なコントロールをすることであるからです。

本日、harry_gさんのブログヘッジファンドと金融危機(議会証言より)が、11月13日米議会にヘッジファンドのマネージャが呼ばれ、証言した内容について書いておられます。ブログの記述は、少し長いのですが、非常に面白く、金融に関心がある方には、一読することをお奨めします。

例えば、次のようなことを書いておられる部分があります。

Q あなた方の中には、サブプライム危機の発生を予想して大きな利益を上げた人がいるが、ウォール街とワシントンが完全に見過ごしたと言える金融危機を、どのようにして察知し、また回避することが出来たのか?(注:Paulson、Herbingerが特に大きな利益を上げたと言われています。)

A 一生懸命働くこと、格付機関から独立した、独自のリサーチを行うことで、ミスプライシングを発見すること。明らかにAAAではない債券に、AAAの格付が与えられていた。(Paulson氏)

私は、知りませんでしたが、1年以内保有の株式等の売却益について、米国では高い税率になるようですね。面白いと思います。日本では、法人と個人とで扱いがずいぶん異なり、法人の場合は、通常の所得の扱いです。個人の場合は、租税特別措置法により別扱いとなり、株式の保有期間に拘わらず同一で低い税率です。デイトレーダーを非難した人がいましたが、1年未満は高く、1年以上については低い税率にする等して長期保有を有利にすれば良いと思います。

でも、租税特別措置法の特例を中止すれば、通常の累進税率の摘要となり、長期保有の場合は税率がその1/2になりますが。ただ、この場合の長期保有は5年以上です。だから、当面の措置として、租税特別措置法で上場株式や投資信託、債券等について1年を適用することにしても良いのです。カラ売り規制なんて変なことをしても、弊害もあるのであり、短期売買についての税率で対応する政策の方が賢いように思えます。又、その方が、変な仕手戦の防止や反社会的勢力への対応にも有効だと思いますが。そして、何よりも、会社の正常な発展を支援する長期的観点の投資家を優遇することになります。

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2008年11月 9日 (日)

定額給付金の行方

定額給付金に関するニュースを見てみると、

日経11月7日 経財相、定額給付金の辞退案に反対 政府内で意見の違い
日経11月9日 ゆれる麻生節 歯切れはいいが…調整不足を露呈

と言う現状ですが、この行方は、どうなるのかなと思います。

(1) 所得税

定額給付金を受領したら、所得税や住民税はどうなるのでしょうか?雑所得として、課税所得に算入されるのか、それとも宝くじのように、非課税所得になるのでしょうか?

ちなみに、宝くじについては、「当せん金付証票法」13条により所得税を課さないと定められています。定額給付金を配布するとなると、その配布を実施する法律で、「所得税を課さない。」と定めるのでしょうか?

あるいは、雑所得として扱われるなら、給与等の金額が2千万円以下の給与所得のみの人は、所得税法121条により確定申告を要しない所得となり、実質非課税となります。支払われる対象者が、各個人であれば、本人の所得がなければ、配偶者が高額所得者であっても所得税・住民税の課税はないこととなる。

もっとも、「高額所得者に辞退を呼びかける形」よりは、まだ良いかも知れない。税の上では、辞退しましたと宣言し、実際には受領するといった形を防止する策が、ボランティア的制度だと構築できるのかなと思いますから。

それからすると、定額給付金を支給するには、法律を制定する必要があるのだから、「速やかに実施するためには・・・」との議論もおかしいと思う。住民税は、賦課方式で、市町村課税当局から各個人に納付書が送付されている。何故、納付書の送付が可能かと言えば、各個人の所得が捕捉されているからであり、高額所得者を対象外とすることも容易に可能なはず。この辺りも、今後国会に移れば議論されるのかなとも思います。

(2) 根本解決

定額給付金の効果はともかくとして、根本解決とは思えない。もし、根本解決なら、将来にわたっても継続すればよいのですが。消費税か何かで「増税をして、後で毎年一人12,000円をキャッシュ・バックしまーす。」なんて、どこかのキャンペーンみたいです。

税金はキャッシュ・バックのために集めているのではないはず。思うに、今の日本の問題として、農業人口の高齢化と若年層労働問題がある。若年層労働問題とは、フリーター・低賃金・不安定雇用の問題である。若年層労働問題の原因は、若年層の問題ではなく、社会の問題であり、政治の問題であると考える。この解決のために、若年層を農業に引き寄せることである。農業問題は、食糧問題のみならず自然環境問題でもあるはずだし、日本の地方を維持していくに重要な問題である。

高齢化した農業従事者を助け、農地を借り受け、耕作・生産・出荷する。現状において、採算性を見込むことは困難と思う。そこで、そのような組織、法人をつくり、活動することを税金で支援する。その組織・法人は若者を雇用し、OJTで訓練する。若者は、日本の農業の将来像を考え、発展させる。そんな夢に向けての支援活動も税金の一つの使い方ではないかと思います。

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2008年11月 6日 (木)

小室哲哉事件の特捜のねらい

本日は、toshiさんのブログが、私のブログが書いたことに触れて書き出しておられたので、驚きました。

toshiさんのブログや会計ニュース・コレクターさんのブログもなんとなく触れておられました。年利60%の高利資金貸付が存在していたとなると、その証拠を確保するために特捜が動いたのかなと、私は思いました。

日経 11月5日 小室容疑者、年利6割で借金 現金入手急ぎ犯行か

読売 11月4日 小室哲哉容疑者ら3人逮捕、著作権巡り5億円詐取の疑い

日刊スポーツ 11月5日 小室哲哉容疑者逮捕、悪質手口明るみに

A. Cホールディングスのホームページはここにあります。2008年3月末中間期の連結貸借対照表をみると、資産152億円で、そのうち現金預金が34億円、土地25億円、投資不動産22億円で、その他が71億円です。一方、これ対し、負債は12億円であり、純資産額が139億円の負債がほとんどない会社です。

日刊スポーツには、「かつて仕手戦の舞台となった投資・建設事業持ち株会社から“高利融資”を受け・・・」とあり、年利60%相当の融資があったのでしょうが、おそらく単純な金銭消費貸借契約ではなく、株式の現先売買を組み込んだ複雑な目くらましの契約で、その資金使途も相当特殊であった気がします。そうであれば、特捜が小室事件で乗り出してきたのが、分かります。

それと、日本経済も不況に入ろうとしていますが、生じる現象は下請けいじめです。銀行の貸し渋りは、貸倒懸念先に真っ先に生じるが、下請けいじめは場合によっては、下請け全社に対してです。いじめられている会社は、発注先から「景気が回復すれば、元に戻す。」と言われれば、受けざるを得ない部分があり、自分自身の役員報酬なんて、とっくの昔にあきらめているが、さらに地獄に堕ちていく。それを、ヤミ金融が待ち受けているとしたならば。特捜のもう一つの狙いは、ヤミ金融に対する一罰百戒なのでしょうか?

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2008年11月 2日 (日)

日銀利下げと株価

10月31日に開催の日銀の政策委員会は、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を年率0.3%前後とすることを決定しました。日銀発表は以下です。

日銀発表 10月31日 金融政策の変更等について

1) 賛成・反対は4:4ではなく7:1の多数賛成?

当初ニュースを知った時、4:4の同数で、現状維持の委員が4名おられたが、賛成者に白川総裁が回っていたから、この引き下げが決定したのかと思いました。でも、このロイター・ニュース10月31日 日銀が政策金利0.3%に引き下げ、総裁「1カ月で経済・金融変化」によれば、「決定に反対したのは4人だったが、白川総裁は決定会合後の会見で、このうち3人は0.25%への利下げを主張したことで反対に回ったことを明らかにした。1人は現状維持だった。」と報道しています。

0.5%から0.3%とするか、更に引き下げ幅を大きくして0.25%にするかについては、それほど大きな違いはなく、今後の金利政策の柔軟性を高めておくためには、0.25%より0.3%の方が、一応は大きかったかなと思う程度です。いずれにせよ、政治的圧力とは無関係に、日銀独自の判断として政策委員会の決定をされたと思うことから、支持いたします。

参考まで、ロイターに2005年1月からの政策金利と消費者物価上昇率のグラフがありました。ここをクリックすると出てきます。

2) 金利引き下げの影響

私は、一番インパクトがあるのが、為替レートと考えます。為替レートは、いくらが妥当なのかは極めて難しいのですが、不況下の円高というのは、望ましくないというか、普通ではないことと思います。今の日本の不況は、その原因が米国発だと麻生総理は言っておられますが、私にすれば、そんな単純ではなく、10月22日に世界は大不況に突入か?で書いたように、もっと広範囲な地球規模の世界同時不況であり、むしろ日本は今のところ傷が未だ浅い状態のような気がします。

世界が同じように不況になるなら、外国為替レートは動かないはずですが、金利の影響があり、米ドルやユーロが利下げをした中で、円金利を据え置いたままでいると、どうしても円に資金が集まり、その結果円高が進行すると考えます。

3) 株価と外国為替レート

最近のマーケットは、株安と円高の同時進行です。株価と為替を同じチャートで重ねて見るとよく分かります。左軸は日経平均で、右軸が米ドル為替レートです。

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8月初めまでは、為替レートは比較的安定しており、株価は緩やかな下降であった。それが、8月に入ってから動きはほぼ同一となり、9月末頃から急激な下落となっていった。ユーロについても、同様にチャートを作ってみましたが、ほぼ同じです。

Nikkeiexreuro0811

円高となっているのは、円を買う動きの方が活発であることが、その原因のはずですが、その円資金がどのような形で保有されているのか、現状がよく見えていません。とりあえず円高の流れを抑制するとなると政策金利を低くすることでの対処しか有効でないような気がします。

1米ドルが100円を切り83円位までいったのは、1995年5月頃でした。1990年代の為替と短期金利、長期金利がどうであったかのチャートを掲げておきます。ちなみに、1995年5月に月間平均レートが83.19円/U$となり、この時のオーバーナイト金利(月平均)は1.31%でした。為替が100円/US$に戻ったのは、1995年10月であり10月のオーバーナイト金利は0.47%でありました。

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2008年10月31日 (金)

景気対策、定額給付金、消費増税

麻生首相が30日の総理大臣記者会見で経済対策を発表しました。

記者会見での発表は、この首相官邸のWebにあります。報道されている次の定額給付金や消費増税の部分もあります。

定額減税については給付金方式で、全所帯について実施します。規模は約2兆円。詳細は今後詰めてまいりますが、単純に計算すると、4人家族で約6万円になるはずです。

景気回復期間中は、減税を時限的に実施します。経済状況が好転した後に、財政規律や安心な社会保障のため、消費税を含む税制抜本改革を速やかに開始します。そして、2010年代半ばまでに、段階的に実行させていただきます。本年末に、税制全般につきまして、抜本改革の全体像を提示します。簡単に申し上げさせていただけるのなら、大胆な行政改革を行った後、経済状況を見た上で、3年後に消費税の引き上げをお願いしたいと考えております。

1) 定額給付金

私にとっては、何故かすっきりしません。記者会見での発表には、正規雇用の奨励についても触れているが、1回限りの政策ではない根本問題・構造的問題の解決への取り組みが重要と考えます。

例えば、このJ-Cast News「敷金・礼金・仲介手数料ゼロ」 その裏に潜むとんでもない事態ですが、 「敷金・礼金・仲介手数料・リフォーム費用0円」をうたう不動産会社・スマイルサービスの賃貸トラブルにおいて弱い立場の賃借人が理不尽な目にあっていると書かれています。内容については、十分あり得ることと思います。

問題の根本部分は、被害者弁護団の弁護士の話のように「契約を結んでいる人の多くは、把握している限りでは、若い人で収入が安定していない人、非正規雇用の人だ」であり、そのような人達にとっては、定額給付金として1人1万5千円を受け取るより、安定した雇用の方がよほど嬉しいと思います。しっかりした雇用対策が、経済対策の上でもより重要と思います。

2) 消費増税

記者会見の発言は、消費税に限っておらず、消費税を含めた税制全般についての見直しであり、私は賛成します。但し、税制改正は、それを決めた時の強者に都合がよい税制になることが危惧され、弱者も含めた真に公平・公正な税制になるように時間を掛けて多くの国民の参加を得て決定していくべきです。税のみならず、年金と健康保険を含め総合して解決を計るべきと考えます。

なお、定額給付金が2兆円とすれば、消費税に換算すると約1%です。定額給付金への賛成は、景気が良くなったある1年について消費税増税1%をすることと思えば良いのです。所詮、誰かが定額給付金を負担してくれるわけではなく、税金がその税源ですから。

3) 日本の将来

良い方向に行っているのでしょうかね。例えば、日本政府・地方自治体の債務金額の規模は世界一です。この意味することは、将来世界一高い税率の国になることを意味します。もし、そうならないのなら、逆に年金、医療、インフラ、政府・自治体からのサービス最悪の国です。コストとベネフィットの関係が成立するわけで、当然のはずです。

世界経済フォーラムが今月8日に「2008-9年版世界競争力報告」を発表しました。ご存じの通り、日本は1つ順位を下げて9位になっています。世界経済フォーラムの評価が正しいのかという問題はありますが、日本の機関による評価より第三者的評価になっていると言えるのか知れません。

報告書は世界経済フォーラムのこのページ The Global Competitiveness Report 2008-2009 からダウンロードできます。50位までの国と評価点数を棒グラフで書いてみました。

Wefrankingglobalcompetitiveness20_2

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2008年10月30日 (木)

ソフトバンク750億円社債デット・アサンプションによる損失

ソフトバンクは、29日に第2四半期の連結業績並びに平成21年3月期、平成22年3月期の連結営業利益見通し等の発表を行いました。

ソフトバンク プレスリリース 2008年10月29日 平成21年3月期、平成22年3月期の連結営業利益見通し等に関するお知らせ

但し、経常利益や臨時損益を含んだ純利益については、触れられておらず、プレスリリースの中では、次のように記載されています。

連結売上高は、携帯電話端末の販売手法によって大きく変動するため、業績予想の公表は困難な状況にあります。また、連結経常利益および連結当期純利益の業績予想は、当社が投資有価証券を多数保有していることや、ファンドを通じた投資を行っていることから、市場環境の影響を受けやすく、持分法投資損益および特別損益の予測がしづらいため、現時点における公表は困難な状況にあります。

しかし、今期の平成21年3月期においてデット・アサンプションに起因する750億円の損失発生の可能性が大きいと考えられることから、書いています。

1) 750億円損失の原因

平成21年3月期第2四半期連結業績として、ソフトバンクはこの決算短信を発表しました。決算短信の26ページから、連結貸借対照表の注記事項の記載があり、その2番目の項目である偶発債務として、750億円の損失発生の可能性が書いてあります。

当該部分の全文は続きを読むに入れましたが、どのような取引であったかと言うと、2010年8月と9月に満期償還となる社債に対して、期限前償還をしたいが、社債の満期日前の償還は困難であるため、金融機関と信託契約を締結し、償還資金を信託により運用し、その運用益と運用返済資金で社債が償還されるように仕組み、社債を期限前償還することと同一効果になるようにした。但し、金融機関との契約は信託契約であり、金融機関は管理者に止まり、全リスクはソフトバンクが負担する。

貸借対照表上は、社債債務は、金融機関に支払った資金で償還される予定であることから、双方とも認識せずに、注記として記述した。損失金額が750億円と想定される理由は、「デフォルトが8銘柄以上の場合は全額の75,000 百万円が減額される」と書いてあり、既に6銘柄のデフォルトが発生していることから、全部で160 銘柄の構成なので、2009年3月までに、今後2銘柄以上のデフォルトが発生する可能性が残念ながら存在すると思われるし、満期日の2010年8/9月まで無事に過ごせると思うのは楽観的すぎると感じたからです。

2008年5月27日の武富士の300億円に思うで、武富士の実質的ディフィーザンスによる300億円の損失を書きましたが、ソフトバンクの750億円損失も基本的には全く同じです。

2) 信託契約により投資した資産

投資した資産は、英国領ケイマン諸島に設立された特別目的会社(SPC)が発行した債務担保証券と書いてあり、サブプライムで有名となったCDO(Collateralized debt obligations)です。CDO自身、サブプライム・ローンとは限らず、色々な貸付金、債券がその対象となります。このNikkei Net IT Plusの記事 10月29日 ソフトバンク、営業最高益も金融不安で最大750億円の損失リスク 4―9月決算には、「アイスランドの銀行やリーマン・ブラザーズ証券など6銘柄が債務不履行(デフォルト)となっており」と記載されており、従来であれば優良投資債券が組み込まれていたのだろうと思います。アイスランドの銀行やリーマンなんて、少し前なら超優良先と皆が思っていましたから。

しかし、160 銘柄で8銘柄以上デフォルトの場合に全額減額なので、やはり大きなレバレッジが仕組まれていたと言えます。もし、レバレッジ1であれば、8/160である5%減額で済むわけですから。CDOとは、レバレッジを、好きなように組める仕組みです。デリバティブの恐ろしさを見せてくれています。現在の世界的金融不況については、改めて書きたいと思っていますが、何故米国発金融不況が生じたかは、デリバティブという金融派生商品に起因する所が大きいと思います。

3) ディスクロージャー

現時点では、デフォルトになったのは6銘柄であり、7銘柄になると損失発生の様なので、ディスクロージャーについて問題があるとは思いません。しかし、デフォルトになる可能性があるなら、引当金を計上しておく必要があり、本決算においては、引当金も問題になるであろうし株主に対する更なる説明を必要だろうと思います。2009年3月期は、デフォルトになっていなくても、引当金を計上し損失を認識することはあり得ると思います。

一方、このデット・アサンプションを実行した時期ですが、2007年3月期の貸借対照表から注記が始まっているので、2007年3月期と考えるが、ソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収したのが2006年4月であり、これ以降2007年3月までのプレスリリースを見ても、このデット・アサンプションについての発表がありません。社債そのものは、1998年、2000年発行なので、ボーダフォンによる買収前のJ-フォンの時代のはずです。そうなると、ソフトバンクはデット・アサンプションが実施された状態のボーダフォン日本法人を購入したと思われます。

M&Aが行われた会社の財務諸表って難しいと思いました。一方、M&Aをする側にとっては、相手先がデリバティブ取引を持っていた場合に、そのリスクを短期間のデューデリで、どこまで分析できるのかなと思います。一見してうまく仕組まれているが、思わぬ落とし穴があったりして。

2007年3月期のソフトバンク連結貸借対照表の偶発債務に関する注記も続きを読むにおきました。

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2008年10月29日 (水)

会計の独立

会計は、時の権力の都合により左右されてはいけません。現実を冷静に報告するための基準です。

10月28日に企業会計基準委員会は、実務対応報告第25号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」を公表しました。10月17日の金融資産の時価評価に関連して2) 日本基準の現状 のなかで紹介した案を、正式なものとして一部修正したものです。この企業会計基準委員会のWebからダウンロードできます。(但し、公開から2ヶ月間経過後は会員のみの閲覧となります。)

会計基準委員会は、同時に「債券の保有目的区分の変更に関する論点の整理」についても、コメントを11月14日までに募集することを目的として公表しました。こちらは、10月17日の金融資産の時価評価に関連して1) 国際会計基準の動向のなかで紹介した国際会計基準委員会(IASB: Internatinal Accounting Standards Board)の基準改訂(AMENDMENTS TO IAS 39 AND IFRS 7)に関連しての日本の会計基準の扱い方についての論点の整理で、会計基準委員会は、11月4日正午までのコメントの募集としています。この企業会計基準委員会のWebからダウンロードできます。

上記の「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」にしろ「債券の保有目的区分の変更に関する論点の整理」にしろ、読んでみると一般の人にとっては、重箱の隅のようなことであり、むしろ「なぜそんな細かいことが重要なのか?」とさえ思えてくるのではないでしょうか。言葉として好きではありませんが、「時価会計」の範疇を崩すものではありません。

ニュースを眺めると、次のようなのがあります。

MSN産経 10月29日 【麻生首相ぶら下がり詳報】時価会計緩和「検討してみたら」(29日午前)

毎日 10月29日 首相VS記者団:時価会計「こだわる必要あるのかね」 10月29日午後0時4分~

麻生首相が「時価会計緩和を検討してみたら」と発言したとのことです。株式の満期とは、何でしょうと思ったりします。首相、記者団が、それぞれどこまで理解ができて発言しているのか不明ですが、企業会計基準委員会が、そんな動きには動じずに、自らの任務を果たしておられるのは、重要なことと考えます。

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2008年10月28日 (火)

時価会計について

日経が次の10月27日の「時価会計「凍結」の意味を考える」という社説で、私の意見とはずいぶん異なることを述べられました。

日経社説 時価会計「凍結」の意味を考える(10/27)

日経ともあろう者がと思ってしまうので、少し書きます。

1) 時価とは

次の文章が、企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準の時価の定義です。

時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(市場価格)に基づく価額をいうこととした。また、デリバティブ取引等において、個々のデリバティブ取引について市場価格がない場合でも、当該デリバティブ取引の対象としている何らかの金融商品の市場価格に基づき合理的に価額が算定できるときには、当該合理的に算定された価額は公正な評価額と認められる(第6項参照)。

なお、金融商品の種類により種々の取引形態があるが、市場には公設の取引所及びこれに類する市場の他、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等が含まれる。

時価とは、公正な評価額であります。寿司屋の時価とは違います。日経は、曲解し「「活発な取引に基づかない取引価格は公正価値を表さない」として、経営者の判断を加えた理論値での評価も認めた。」としていますが、従来から認められていたとも言えます。だからこそ、10月17日の私の金融資産の時価評価に関連して2) 日本基準の現状 のなかで紹介したように、企業会計基準委員会が発表したのは「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い(案)」です。会計基準の解釈・運用に係わる実務上の取り扱いに関する指針の案です。

2) 時価主義vs取得原価主義

食品の安全性に起因した様々な問題が報道されています。もし、報道されなかったら、発表されないなら、安心して食物を手にすることができません。投資先の企業が、タイムリーに重要事項を発表していくれ、会計期間毎の財務報告をしてくれるから、投資ができるのです。

考え方として、取得原価主義で貸借対照表を表示するが、時価情報と時価と原価の差額を注記する方法を採用しても、本質的な違いはないとも言えます。しかし、何故唯我独尊で世界と異なる方法を採用するのか理解に苦しみます。鎖国せよ!と言うなら別ですが、世界の中で発展していくのであれば、世界の多くの方々と共通語でコミュニケーションが取れるようにすべきです。

3) 米国における見直し

日経社説は、「米国の金融安定化法は米証券取引委員会(SEC)に時価会計凍結の権限を与えた。」と述べています。それは、事実と異なりますよと言いたい。金融安定化法(Emergency Economic Stabilization Act of Act 2008)の133条がその条文です。(条文は続きを読むに入れておきます。法律全文はここにあります。)

法は、SECが見直しをすべきと言っているのですが、その見直しを実施する対象はFASB基準157番の公正な評価(Fair Value Measurements)であり、今回の対象企業は金融機関についてです。金融安定化法133条の私の理解が間違っているでしょうか?条文を読んでみてください。

なお、日本語の会計用語としての時価は、Fair Valueの意味です。Market Valueではありません。

恐ろしいのは、世界の動向を読み間違えることです。さもないと日本は奈落の底に転落する危険性があると思います。日経が社説で間違えるなど、私はトンデモナイと言いたいのですが。それとも、私の読みや理解が間違っていますか?

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2008年10月24日 (金)

都立墨東病院における妊婦死亡

マスコミが「たらい回し」と言いたがる事件が報道されています。(今回は、次の読売のように「受け入れを断られ」との表現を使っている報道が多いようですが。)

読売 10月22日 脳出血に「対応できぬ」と7病院が拒否し、妊婦が死亡

今回の出来事についての多くの意見は次の読売の社説に代表されると思います。

妊婦搬送拒否 一刻も早い医療改革が必要だ(10月23日付・読売社説)

細部は、余り掴めていませんが、それでも気になることがあるので、書いてみます。

1) 東京都の病院戦略

東京都(病院経営本部)は、本年1月31日に「第二次都立病院改革実行プログラム」を策定し、ここに発表しています。気になる項目としては、次のような項目があります。

  • 「東京ER」の設置・運営(広尾病院、墨東病院、府中病院)
  • 「東京DMAT(災害医療派遣チーム)」の設置(広尾病院、墨東病院、府中病院)
  • PFI手法による再編整備の推進
    6 経営力の強化
  • 経営管理の取組
  • 経営の効率化及び経営分析力の向上など
    7 都立病院の新たな経営形態の検討

    広尾病院、墨東病院、府中病院をERやDMATを含め中核的な病院と位置づけ、整備していく方針と理解します。そして、一方で、経営力の強化を掲げ、この資料の最終ページ(104ページ)には、一般地方独立行政法人にすることも20年度から十分な検証を実施すると記載されています。

    広尾病院、墨東病院、府中病院を含む、病院経営収支の2006年度の実績は、8月21日の自治体病院の経営指標の実績(その3)に記載の表にありますが、他の都道府県と比較すると赤字幅は小さいと思えます。

    ERを営利事業として実施することが果たして社会にとって良いのだろうか。政府や地方自治体が、これだけは、国民・住民の福祉のために、確保するのだという方針が最初にあるべきと考えます。当然そのための税金支出が伴います。「民間の手法」と言う言葉が、医療の面で使われることがありますが、「民間の手法」イコール「損をする事業は取り組まない。取り組めない。」であることを忘れてはなりません。「民間の手法」を適用するのであれば、損失が発生する事業については、必要な補助金を支出して、その事業を支えるというコミットメントをすることです。

    2) 墨東病院のケース

    都立墨東病院のホームページの「お知らせ」から、「産科の外来診療の縮小について」をクリックすると次の文書が現れます。

                  産科の外来診療の縮小について
    当院の産科におきましては、医師の欠員が生じたため、平成18 年11 月13 日(月曜日)からしばらくの間、外来診療を縮小いたしますのでご了承下さい。
    ● 予約のある患者様、救急の患者様につきましては従来どおり診療いたします。
    ● 予約のない初診患者様は紹介状の有無に関わらず、新規の予約受付及び予約外受付診療は行なっておりません。お近くの医療機関を受診されるようお願いいたします。
    ● 予約外の再診患者様、再診予約をするか、総合案内でご相談下さい。分娩予約のある場合に限り医師に確認のうえ判断いたします。

    平成18 年11 月13 日からと書いてあるので、2年前からこの文書が掲げられていたと思います。一方で、この文書の29ページによれば、墨東病院は東京都立病院で最も周産期医療が充実した病院に思えます。医師不足であっても、報酬を高く、待遇を良くすれば、医師は働いてくれると考えるのが、民間の考え方です。

    墨東病院のケースを考えると、猛烈な矛盾があるように思えます。医師を大東亜戦争の日本兵のように、赤紙一つで招集し、前線に無理矢理送り込むような扱いをしては、いけません。医療の充実のためには、合理的に対処することが必要かつ重要です。

    3) 五の橋産婦人科

    墨東病院と五の橋産婦人科は、すごく近く、500mも離れていないと思います。墨東病院はここで、五の橋産婦人科はここです。しかも、五の橋産婦人科のドクター紹介には、「院長 川嶋 一成 埼玉医科大学卒 墨東病院勤務の後、平成9年当院院長に就任」と書いてあり、五の橋産婦人科の医師の方々は、墨東病院の産科の実情はよくご存じであったと思います。

    このあたり、何をどう考えるべきかですが。墨東病院も、五の橋産婦人科も、遺族から訴訟を受けるリスクを考えて、記者会見に臨んでいるように感じてしまうのです。結果は、妊婦さんが亡くなったのですが、本当は、1時間強で受け入れができた成功例ではないかと思うのです。墨東病院も当直ではなかった医師を自宅から呼び出して対応したのですから。多分、最初の電話で、墨東病院も勤務に就いていなかった医師を呼び出したが、念のために、別の受け入れ先を探そうと墨東病院と五の橋産婦人科は協力して尽力した。(墨東病院の産科医は、別の妊婦のために手が離せなかったと思いますが)

    私は、墨東病院の関係者も五の橋産婦人科の関係者も、妊婦と赤ちゃんのために全力を尽くされたと思います。非難するのではなく、感謝し、激励するのが本当の姿だと思います。

    4) 週刊文春

    今回の報道は、TV、新聞が第一報です。しかし、23日の発売とおもいますが、週刊文春10月30日号のルポ「産婦人科の戦慄」に、この出来事が詳細に書かれています。この意味するところは、何でしょうか?入院したのが、10月4日です。10月4日から10月22日までのどこかの時点から週刊文春の記者は取材をしていたはずです。そして発売日の前日に、TVや新聞にリークしたのではと疑います。目的は、週刊文春のその記事をハイライトし、販売部数を伸ばすためです。

    マスコミが悪いと言っても始まりません。報道内容が事実であれば、非難することが賢いと思いません。但し、マスコミに振り回されることなく、それぞれの重要性を私たち自身がよく考える必要があると思います。

    医療の問題は、医師不足なんて簡単な言葉では解決できない底深さを感じます。例えば、「医療費を削減しつつ医師不足も解消する。」なんて標語を聞いても、それは政治家と政治家にしっぽを振る官僚の言葉でしかないと思ってしまいます。しかし、一方で、具体論になればなるほど、難しさを感じます。

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    時価会計

    尾を引いているようですね。日本公認会計士協会も、10月23日付けで「時価会計等に関する所感」と題して会長声明を公表されました。

    平成20年10月23日 日本公認会計士協会 会長声明「時価会計等に関する所感」

    ちなみに、声明の中には、次の文章もあります。

    日本公認会計士協会は、会計基準が、企業の実態を反映する鏡であり、投資家に対して意思決定情報を提供するための財務諸表に関する基準であることから、金融市場の混乱を契機に金融商品の時価評価を凍結することは、到底、賛同できないと考えている。

    会計とは、企業の財政状態や業績を計る物差しです。ユーザーである投資家に有用な意志決定情報を提供する物差しでないと意味はありませんから。

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    2008年10月22日 (水)

    世界は大不況に突入か?

    サブプライムによる金融面における影響、あるいは住宅関連の不況については、誰もが認識しているところです。一方、別の面で実体経済の不況が進んでいるように思え、本エントリーを書いています。

    1) バラ積み船の船賃下落

    9月9日に価格下降にどう立ち向かうかを書き、その際にInvestment Tools.comで紹介されているバラ積み船の船賃指標であるBaltic Indexのチャートをコピーして掲げました。現在のチャートと9月9日のチャートを以下に掲げますので、比べてみてください。(上が現時点で、下が1月半ほど前です。

    Balticexchange081022jpg_3

    Balticexchange0809

    9月9日頃は5,663であったのが、1月と20日弱で1,292と4分の1弱に下落しており、最高時と比べると、その10分の1近くです。

    対象となっているバラ積み船とは、大きな船では300mもあるケープサイズの30万トン積のような船から、パナマ運河最大級のパナマックスと言われる8万トン積の船、あるいはもっと小さいハンディーサイズと呼ばれる4万トン積程度の船とか色々あり、石炭や穀物を主たる貨物として運搬する船です。

    何故そんなに安くなっているかは簡単です。荷物が無いから、相場が落ちただけです。バラ積み船の市況は、大きく変化しますが、現状の落ち込みは誰もが予想しなかったレベルと思います。

    2) 経済の鏡

    実際には長期用船もあるので、Baltic Indexが直ちに運賃に結びついていない場合もあるはずです。そして、Baltic Indexが1/4になったから、荷動き量も1/4になっているわけではありませんが、原材料の世界的な貿易量は減少していると言えます。このことは、同時に生産量も落ち込んでいるし、製品の貿易量減少にも繋がっていくし、同時に製造業の売上減少、業績悪化に結びつくはずです。しかも、それが世界的な規模で起こっていると私は考えます。そうでないと、このような大きなBaltic Index下落にはならないと思うからです。

    3) 日本経済

    闇みたいな可能性もあるのではと懸念します。10月20日の日経ですが、次のニュースがありました。

    新日鉄の減益幅縮小、JFEは一転増益 今期見通し

    原材料や燃料の価格下落があり、業績が改善したことを報じていますが、10月22日には鉄鋼大手、3年ぶり減産 自動車向けなど低迷と言った報道があります。利益増加は、原材料価格と製品価格の下落のタイムラグにより生じているだけで、大きな方向は、生産量減少に向かうと思います。

    例えば、数ヶ月前には、トラック輸送業界が軽油値上がりにより利益が生まれないとの話がありました。これからは、仕事がない、そして廃業・倒産といった暗い傾向が始まるように思えるのです。

    4) 対策

    輸出依存が多い企業は、売上減少に見舞われる気がします。輸出依存とは、直接輸出のみならず間接的な部分も含めてです。

    数年以上前ですが、リストラという言葉を良く聞きました。日本のリストラの多くは、企業の体質改善ではなく、単なる人減らし、正規社員減らし、中高年高給社員の首切りでしか無かった場合が多かったのではないかと気になります。これらのリストラは企業の業績を一時的には良くしても、長期的な改革策ではないからです。

    不況時には何をするか?研究開発と思います。企業の投資とは、設備投資のみにあらず、研究開発への投資は極めて重要です。その企業が、他企業には負けない分野、負けたくない分野で、研究開発投資をするのです。それで、絶対とは言えないでしょうね。うまくいかずにやはり倒産するかも知れません。でも、研究開発の成果は例え倒産しても残ってくれる可能性があるし、夢があります。何もしないでいるより、研究開発に突き進んで、倒産したなら、やるだけやって倒産したので、ある満足感が得られるかも知れません。人員減らしより、よほど楽しいですよ。

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    2008年10月21日 (火)

    会計処理ルールの緩和に関する報道

    10月17日に金融資産の時価評価に関連してを書きましたが、その続編です。

    10月20日(月)金融庁で17:02から17:23に掛けて、佐藤金融庁長官の記者会見がありました。

    金融庁の記者会見の概要

    この記者会見について、朝日はこの記事 銀行の自己資本比率、有価証券評価損の取扱い検討中=金融庁長官で、「国際的な整合性を考慮しながら検討していくとしている。」と報道しました。日経は、この記事 金融機能強化法改正案「モラルハザード助長防ぐように」 金融庁長官で記者会見について報道していましたが、特に金融資産の時価評価については、触れていませんでした。

    10月17日時点より報道も少し落ち着いてきているのかなと思いました。

    金融庁の記者会見概要は、1問1答形式ですが、バーゼル合意に関係しての見直しの検討と思います。当該部分を続きを読むに入れました。

    バーゼル合意(バーゼルII:Base II Accord)とは、銀行活動がグローバル化した結果、世界的な統一基準で銀行について管理規制していくための合意です。ここに金融庁の説明があり、ここに日銀の説明(少し古いが他の説明より解りやすい。)があり、ここにWikiの英語版があります。

    金融庁の説明にあるように、海外営業拠点を有する国際統一基準行は自己資本比率8%以上ですが、そうでない地銀等の国内基準行は4%が基準値です。可能性としては、国内金融のみを行う銀行に関してのルールの緩和はあり得るのかも知れないと思います。一方、メガバンク等の国際統一基準行については、国際的に統一した基準で対処しないと、国際的な金融恐慌に陥ってしまうので、日本だけがと言うようなことは絶対になく、時価評価を実施して、その国の政府が対処し、国際的にも対処すると言うことになると思います。更には、途上国の金融機関だって、そうなる可能性はあるし、現実にアイスランドの銀行については、国際的に助けなくてはならなくなっていますが、これも時価で評価された結果があるから可能なことです。

    なお、バーゼル合意による銀行の管理規制と銀行を含む企業の財務諸表の会計基準とは話が異なりますし、適用するルールも多少異なりますので、この点を混同すると話が混乱します。

    続きを読む "会計処理ルールの緩和に関する報道"

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    2008年10月17日 (金)

    金融資産の時価評価に関連して

    金融資産の時価評価や時価会計に関連しての報道が多くなっていますので、私自身の整理の意味もあり、書かせていただきます。

    1) 国際会計基準の動向

    日経の記事と国際会計基準委員会(IASB: Internatinal Accounting Standards Board)の発表は次の通りです。

    日経 10月14日 金融商品の時価評価、規則の一部を緩和 国際会計基準審議会

    IASB Press Release 13 October 2008 IASB amendments permit reclassification of financial instruments

    IASBの改訂した基準(AMENDMENTS TO IAS 39 AND IFRS 7)そのものは、ここにあります。一言で言えば、米国基準で許されていた金融資産の保有目的区分の振り替えと同じような区分振り替えを認めたのです。改定基準を読んだ私の理解は次の通りです。

    国際会計基準(IASとIFRS)は、金融資産を次の4つの保有目的区分に分けています。(国際会計基準は連結財務諸表を主たる対象としているので、子会社株式及び関連会社株式はIAS27の適用となります。)
    (a) financial assets at fair value through profit or loss(売買目的金融資産)
    (b) held-to-maturity investments(満期保有目的投資)
    (c) loans and receivables(金銭債権)
    (d) available-for-sale financial assets(その他金融資産)

    評価方法は、(a)は時価評価を行い、評価差額は当期の利益。(b)と(c)は双方とも、利息法を採用しての償却原価法を適用する。従い、(b)と(c)に実質的な差はないと理解します。(d)も時価評価であるが、時価評価は洗い替え法を適用し、評価差額は包括利益とする。

    今回は、次のような区分変更の内容と理解します。
    (i) 保有している(a)売買目的金融資産が近い将来において売却しないことが確実であれば、他の区分(b)~(d)への振り替えを認める。但し、他の区分から(a)売買目的金融資産への振り替えは認められない。
    (ii) 金銭債権のカテゴリーを満たしていたが、(a)売買目的金融資産としたした金銭試験は今後相当期間または満期まで保有する予定であるなら、(b)金銭債権への振り替えを認める。
    (iii) デリバティブについては、保有目的区分の振り替えは認められない。

    日本の会計基準で例えれば、売買目的有価証券を満期保有目的の債券又はその他有価証券への振り替えを認めたのである。実際には米国基準(GAAP)との調和を図るために、米国基準に合わせた。また、無条件に振り替えを認めたのでもないはずです。

    2) 日本基準の現状

    日本基準を作成している企業会計基準委員会の発表は次の通りです。

    企業会計基準委員会 10月16日プレスリリース 時価評価とその算定を巡る会計基準等について

    そして、このプレスリリースにある本日公表の実務対応報告公開草案「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い(案)」ここにあり、ページの下のダウンロードボタンを押すとダウンロードできます。

    ダウンロードして読むと解りますが内容は、以下についてのQandA形式による解説についての公開草案であり、基準の変更ではありません。
    Q1 時価の概念
    Q2 市場価格が実態を乖離していた場合の時価
    Q3 市場価格を時価とみなせない場合の、合理的な見積りに基づいて時価を算定する場合の留意する事項

    国際的な会計基準における金融資産の保有目的の変更についても近々発表されるとおもいますが、上記の1)をフォローするような案と思います。

    3) 新聞報道

    新聞のみを読んでいると誤解を起こす恐れがあると思います。

    日経 10月17日 日米欧、時価会計一部凍結へ 金融危機封じへ非常手段
    朝日 10月16日 金融商品の時価会計適用、日本も緩和へ 欧米と協調
    MSN産経 10月16日 時価会計、金融商品で適用緩和へ 企業会計基準委員会
    毎日 10月17日 佐藤・金融庁長官:時価評価会計、日本も見直し

    例えば、次のような例です。

    日経: 「市場の混乱を受けて時価会計凍結を検討する米国」

    朝日: 「金融危機で価格が著しく低下している商品については、決算期ごとに損失処理しないで済むようにする。」

    MSN産経: 「株式や債券などを、時価で評価する「投資目的」から、取得時の価格(簿価)で評価できる「満期保有」に切り替えることを認める方向で検討する。」(株式には満期が存在しないため、満期保有は概念として存在しません。)

    毎日: 「大きく値下がりした金融商品について決算上、取得時の価格(簿価)での計上も認めることなどが柱となる見通し。」

    さすがに、企業会計基準委員会がプレスリリースを出しました。お笑いだなあ!

    企業会計基準委員会 お知らせ 金融危機対応に関する報道について

    ・・時価会計一部凍結や金融商品の時価会計の適用の緩和を決定したかのような記事が出されていますが、憶測記事であります。

    そして「私どもでは、欧米の動向を踏まえつつ、金融資本市場の健全性・透明性の確保に寄与できるよう、早急に検討していくこととしております。」と締めくくっておられます。

    4) 金融商品の時価評価の重要性

    大和生命保険は10月10日、東京地裁に更生特例法手続き開始を申し立てをしました。もし、申し立てをしなければどうなっていたでしょうか?可能性としては、更に資産内容が悪くなり、一方で保険金は保険契約通りに支払われ、満期未到来の保険契約者の受取金額は更に低くなっていた可能性が高いと思います。善意に解釈すれば、大和生命保険の経営陣もある程度頑張ったが、これ以上自力で頑張りすぎると保険契約者の損失を拡大してしまう。損失拡大を未然に防ぐために裁判所に更生特例法手続き開始を申し立てた。

    資産状態が良いか悪いかは、時価評価をしないと無理です。金融資産としては、預金ぐらいしかないメーカーではありません。金融機関の資産はほとんど全てが、貸付金、デリバティブ、CDOその他の金融資産です。これを時価評価しなかったら、そして時価評価した結果が公表されていないなら、安心して預金やその他の取引ができません。同じことが、外国の投資家や取引先、預金者からも言えるわけで、信頼できる財務諸表を開示できないことは、金融機関にとっては死を意味します。現在、政府資金(公的資金との言葉が使われていますが、公的資金と言うと誤魔化されるので、政府資金と言います。)の銀行への注入が検討されていますが、大前提は再建可能であることであり、そのベースとなる信頼できる財務諸表が存在することです。

    この16日の日経記事「金融相「中小融資円滑に」 銀行トップら23人と異例の会談」には、「地方銀行からは時価会計凍結を求める声も出た。」との文章があるのですが、驚きです。そんなことを言ったら、その銀行の預金を引き上げるリスクがあるのですが、預金取り付けリスクがあると思いますが、どのように考えたのでしょうと思います。

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    2008年10月14日 (火)

    自社株購入は賢いのかバカなのか

    本日(10月14日)、この官報号外により、政府は自社株購入緩和の内閣府令第61号を出しました。官報号外を出してまでの素早い対応です。

    昨日の日経の記事は、この金融庁、自社株買い規制の緩和策発表 14日から実施です。金融庁の14日の発表はこちらにあり、内閣府令第61号である有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の特例に関する内閣府令はこちらからダウンロードできます。

    変更点は、有価証券取引等規制府令の17条であり、取引所の取引終了時刻の直前30分間の規制の除外と100分の100への変更で、本年12月31日までの適用です。続きを読むに、17条を入れておきます。

    (1) 制限なく自社株を購入できるか

    当然"NO"であります。まず第1点は、会社法による自社株購入の規制です。会社法156条により自社株購入は、株主総会の決議が必要です。但し、定款に定めがあれば、上場会社は取締役会決議で自社株購入が可能です。

    そして、会社法461条により、分配可能額を超えて自社株購入ができません。

    「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令」は、取引所の正常な運営確保のためのルールであり、今回はこれを少し緩和するのです。従い、月間平均売買単位数の規制は残っておりますし、他の規制についても同様です。

    (2) 自社株購入は意味があるか

    自社株の株価を上げることができれば、増資し資本充実を計る際に、同じ株数の増資に対して、多額の資金を得られるというメリットがあります。取締役にとっては、高い株価の方が高い役員報酬を提案しやすくなる。

    しかし、無理に高く買っても、その後に値下がりすれば、何もならないはずです。すなわち、200で買っても、その後100に値下がりするとどうなるかですが、100の株価で増資すれば100しか資金が調達できないから、倍の株式数の増資が必要となり、株の希釈化を生んでしまう。その結果、更に株価が下がる恐れもあります。

    そもそも自社株を買うと言っても対価を払うのですから、キャッシュは社外に流出します。自社株購入資金を借入金で調達すれば、資金コストは発生することとなります。最も、購入した自社株に対して配当金負担がなくなるから借入コストと配当金負担の比較です。

    例えば、1000円の株価に対して年間30円配当をしていれば、3%であり、配当は税引後利益からで、借入金利は税前なので一見有利です。しかし、有利且つ安定した借入をするには、資本・負債比率や会社の業績もあったりするので一概には言えません。やはり総合判断が必要です。

    言えることは、自社株が安いと判断できるのであれば購入したらよい。しかし、無理に買いを建てて、実力以上に株価上昇した自社株を購入してしまっては、バカみたい。当たり前のことですが、今回の規制緩和は基本構造に変化を与えるものではなく、実質の状態・環境は以前と同じです。経営者の皆様、賢く立ち回ってください。自社の本業を発展させて社会貢献することが最善の策です。

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    2008年10月11日 (土)

    ニューシティ・レジデンス破綻から感じるJREITの不安(補足)

    ニューシティ・レジデンス破綻から感じるJREITの不安について、不十分な点がありましたので、補足します。

    1) 減価償却費と借入金返済の関係

    利益=収入 ー 費用 ー 減価償却費
    キャッシュフロー=収入 ー 費用 ー 借入金返済額

    と書きましたが、減価償却費も費用であるので、厳密には次の式が正しいことになります。

    利益=収入 ー 費用
    キャッシュフロー=収入 ー (費用 ー 減価償却費) + 借入金借入額 - 借入金返済額

    あるいは次のようにも表せます。

    キャッシュフロー=(収入 + 借入金借入額 ー 借入金返済額) ー (費用 ー 減価償却費)

    企業にとって、借入や返済に伴うキャッシュフローは損益の額に影響を与えない。一方、減価償却は損益では費用ですが、キャッシュフローは伴わない。固定資産の取得についても、同様であり、キャッシュフローと損益は事業年度毎の計算では、一致をしない。

    但し、全額を借入金で調達しているのではなく、出資と借入金の組合せであり、NCR投資法人の場合はほぼ50:50でした。もし、借入金ゼロでやっていれば、安全で常に100%配当も原則可能です。一方、低金利で借入金が調達できれば、レバレッジを効かせて、投資主に対する配当を高めることができます。

    2) NCR投資法人の場合

    具体的にNCR投資法人の場合を見てみます。なお、NCR投資法人の有価証券報告書からの数字ですが、池袋のタワーマンションは含まれていません。また、最新データは2008年2月までです。

    Jreitncr0810_5  

    上記の表で想定元本返済額については、今後の返済期間を30年と想定して、有利子負債額を30で割り算し、それを6月にするため更に12/6を掛けて2倍にしました。

    配当可能なキャッシュとは、借入等が全くなかった場合に手元に残るキャッシュであり、新規資産購入等の投資をすればが手元からその分のキャッシュが少なくなるし、借りれや新規出資を受ければ、増加することとなります。純利益額と同額の配当を実施し、法人税を払わないようにしていたのですから、結局は表の最下欄の金額のキャッシュを新規借入と新規出資で調達し、ネズミ講的に配当をしていたこととなります。

    資金繰りは利益100%配当の実施のために、常に火の車であった訳で、NCR投資法人の場合は、池袋のタワーマンションが倒産のトリガーになったのだと思います。

    3) JREITの今後

    常に債権者に対する債務である借入金の返済が優先しますが、NCR投資法人については、民事再生法による再建が認可されたと考えた場合、新規借入は困難と予想します。すなわち、90%超の配当による再建案は実現困難と思います。すなわち、法人税を支払うこととなり、配当は激減すると思います。また、賃貸マンションの管理・保守を節約したら、賃貸料が減少するわけで、費用の節約余地も少ないと想像します。

    唯一は、不動産市況が回復し、高い賃料を取れる時が来れば、再び法人税がかからないメリットを生かしての高いリターンが取れるのかも知れません。このことに関して、ファンダメンタルな世界では、人口減少社会、高齢化社会により需要減があるかも知れないことと、今の国債の乱発が将来の高インフレとなり、名目貨幣価値に対して資産価値が上昇する可能性だと思います。

    90%超の配当は、株式会社ではあり得ない世界です。何故なら、株式会社は配当の都度通常は利益準備金を配当額の10%計上しなければならないからです。(会社法445条)そもそも考え方が異なる株式会社と比較することに無理はありますが、株式会社の場合は、利益が計上できても、全額を配当とせず、次の事業のための投資資金に回したり、あるいは不況の際の安全弁として手元に資金を残したりします。

    JREITは90%超の配当による節税を目指すこととなり、不況に対して、市況の悪化に対して、弱い体質を持っていることを認識し、JREITの投資をすべきであるというのが、私の考えです。それと、格付け情報に頼ってはいけません。自分で、会社の財務状態を調査し、特にキャッシュフロー計算書は十分に読みこなすべきと考えます。

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