2022年7月 3日 (日)

原子力発電をどう考えるべきか

1)最高裁6月17日判決

最高裁は、6月17日に東京電力福島第1原発事故の避難者らに対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を認めなかった。

判決文は、ここここにありますが、国会賠償とは、どのような場合に認められるのか、考えさせられる。1条1項の条文は「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは」となっており、曖昧である。福島第1原発の被害者補償は、政府が東京電力に資金を供与し、その資金で避難者・被害者補償を行うという方法が採られている。裁判で争っても、被害者が東電に加えて国からも賠償金を受け取れるとは考えにくいと思う。金額が十分かという金額面については、別次元のこととする。

菅野博之裁判官は、補足意見として次の様に述べておられる部分がある。

私は、基本的には、原子力発電は、リスクもあるものの、エネルギー政策、科学技術振興政策等のため必要なものとして、国を挙げて推進したものであって、各電力会社は、いわばその国策に従い、関係法令(「原子力基本法」、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」、「電気事業法」、「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」等)の下、発電用原子炉の設置の許可を受け、国の定める諸基準に従って原子力発電所を建設し、発電用原子炉を維持していたのであるから、本件事故のような大規模な災害が生じた場合は、電力会社以上に国がその結果を引き受けるべきであり、本来は、国が、過失の有無等に関係なく、被害者の救済における最大の責任を担うべきと考える。国策として、法令の下で原子力発電事業が行われてきた以上、これによる大規模災害については、被害者となってしまった特定の人達にのみ負担をしわ寄せするのではなく、損失補償の考え方に準じ、国が補償の任を担うべきであり、それは結局、電力の受益者であって国の実体をなす我々国民が広く補償を分担することになると考える。
だからこそ、これに近い仕組みとして、原子力損害の賠償に関する法律が設けられており、原子力損害については、・・・

私もこのような考えである。原子力発電所とは原爆の兄弟・姉妹である。核分裂という全く同じ物理現象を利用する。核分裂とは熱エネルギーと放射線を発する放射性物質を生み出す。極めて危険であり、人に有害な反応である。しかし、莫大なエネルギーが取り出せることから、核分裂反応をうまくコントロールし、放射性物質を閉じ込めることができれば魅力的というか、莫大な富をもたらす可能性がある。

原子力発電所を建設し、運転して、電力を得るかどうかは、人間が決めれば良い。危険として、やめるのか。やるなら、どのようにしてコントロールしつつやるのかである。やるばあいは、規制について強制力を持ってやらねば恐ろしい。有効な法の下で実施する必要があると考えれば、法を制定できる国単位での実施しかないだろうと思う。

2)原発に関する最近の国際動向

世界的な温室効果ガス排出削減への動きに加えて、ロシアによるウクライナ侵略以後高まったオイル・ガス供給不安により原発建設が脚光を浴びつつあると思っている。日本であまり報道されなかったと思うが、岸田総理がロンドンで5月5日に行った基調講演で、原発について次の様に述べている部分がある。(首相官邸のこのページ

「喫緊の課題である気候変動問題に加え、世界全体でのエネルギーの脱ロシアに貢献するためにも、再エネに加え、安全を確保した原子炉の有効活用を図ります。」

原発の世界的な見直し動向に対して、日本がどうしてもしなければいけないことがあると思う。それは、福島第一原発で放射性物質の拡散を防ぐことができなかったのかである。津波で非常用電源が壊れた。しかし、緊急で電源を準備できなかったのかである。もし、かくかくしかじかのことを実施していれば、シナリオは、どう変わっていたのか。折角福島原発事故による放射性物質拡散を経験したのである。日本しか実施できない研究であると思う。

3)参議院選挙での各党の原発政策

参議院選挙での各党の原発政策を見てみた結果である。

自由民主党

政策パンフレット

“脱炭素”を成長の起爆剤にする(13ページ)

安全が確認された原子力の最大限の活用を図ります。

立憲民主党

政策を知る

環境・エネルギー

原子力発電所の新増設は認めません。廃炉作業を国の管理下に置いて実施する体制を構築します。

公明党

マニフェスト2022

経済の成長と雇用・所得の拡大(33ページ)

原子力発電に関する取り組みについては、国民の理解と協力を得ることが大前提であり、説明会などを通じた情報提供・公開の徹底等を図りつつ、国が責任を持って進めます。

日本維新の会

日本維新の会維新八策1.基本政策2021

原子力政策(22ページ)

小型高速炉など次世代原子炉の研究を強化・継続します。

日本共産党

2022年参議院選挙政策

(4)気候危機の打開――原発即時ゼロ、石炭火力からの撤退。純国産の再エネ(14ページ)

即時原発ゼロ、石炭火力からの計画的撤退をすすめ、2030年度に原発と石炭火力の発電量はゼロとします。

国民民主党

政策パンフレット

4 自分の国は自分で守る(12ページ)

法令に基づく安全基準を満たした原子力発電所は再稼働するとともに、次世代炉等へのリプレース(建て替え)を行います。

原子力についての政策のみで投票先を決める人は少ないと思う。また、原発なんて、政治家が口を出してはいけない分野であるとも思う。しかし、法律の関与なしの野放し状態で進めることはできない。原子力とはプロメテウスの火である。なくなりはしないのだろうな。そう考えると、バカには関与させたくない。これからの政治・民主主義においては、正しい意見を尊重する議員を選出すると同時に、そのような人を育て、且つ役所や企業に於いても、そのような人が活躍する社会を築いていかねばならないと思う。

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2022年3月 4日 (金)

原子力発電所が外国の軍隊に占拠される

ロシア軍がウクライナの原発を占拠なんて、考えてもみなかった。

Bloomberg 3月4日 ロシア軍がザポロジエ原発を占拠、ウクライナはIAEAに支援要請

原発をテロリストが襲撃することは、あり得るとして、日本の原発でも計画をしていたはずである。外国の軍隊が占拠するなんて、思いも寄らなかった。軍隊とは、独立国が独立国として存続するための機関であり、理性も働いていると考える。でも、考えれば、今回のロシアのウクライナ侵攻に際して、プーチンはナチスという言葉を発していたことがある。自分のことを意味してではなかったが、翻れば、今のプーチンはヒットラーの様な狂気に駆られているように思える。

何故原発を占拠したか、このNHKニュース は「電力施設を握って電力を止めるなどして市民生活に影響を与えることで、ウクライナ軍の戦力、ウクライナ政府の戦意をそぐことにつながります。」と言っているが、発電を停止し、ウクライナを停電と電力不足に陥れることはできるが、そんなことに加えて放射性物質をウクライナはおろかモルドバ、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、スロバキア、ポーランドなんて地域にも放射性物質が降り注ぐと脅かしているのだろうか。ザポリージャ原発の位置は47.511117427528056N, 34.58536185087585Eです。ザポリージャ原発からルーマニアのブカレストまでは740km、モルドバのキシニョフまでは440km、ポーランドのワルシャワまでは1000kmです。

原発をどう考えるべきか、本当はない方が、良いんでしょうが、現在世界の33カ国で稼働している。運転を中止しても、放射性物質を安全な状態に管理し続ける必要がある。複雑な原発である。核兵器はいけないが、核の平和利用(原発)は良いことであり、推進するなんて、単純には行かない。しかし、核共有の検討なんて、キチガイじみたことを発言した元バカ首相がいるから世界は驚きであるが。人間が管理することが困難な領域が拡大しつつあるのだろうか?むしろ、管理について考えが及んでいなかった分野が存在するということと理解する。

昨年10月11日に世界の原子力発電というブログ を書いた。その中の世界の国毎の原子力発電所の表を再掲する。ウクライナは世界で7番目(日本は12番目)の原発大国であり、原発が供給電力の51%を占める。

Worldnuclearplant2022

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2021年12月12日 (日)

小型モジュール式原子炉(SMR-Small Modular Reactor)

日立GEニュークリア・エナジーは、小型モジュール式原子力発電プロジェクトのテクノロジーパートナーに決定したと12月2日に発表した。会社による発表は次です。

日本語の発表

英語の発表

日本語の発表は日本法人である日立GEニュークリア・エナジーである。英文は米GEであり、日立GEニュークリア・エナジーをallianceと表現しており、法人格は持たない企業連合の意味でしょうか。なお、カナダではGEH SMR Technologies Canada, Ltd.というオンタリオ法人が存在する。

1)日本の報道

比べると結構おもしろい。

日経新聞は、ここ にあり、有料記事であるが、小型モジュール炉(SMR)に関するまとまった記事と思う。

読売新聞は、ここ にある。NHKはここ にある。朝日新聞はここにあるが、私は支離滅裂の感ありと思ってしまう。 記事には「放射性廃棄物が出ることは従来の原発と同じだ。」なんて記述があるが、プルトニウム問題も含め原発の本質は変わっていないにも拘わらず、これでは混乱を引き起こすだけと思える。なお、日立GEニュークリア・エナジー による発表は、 テクノロジーパートナーに決定したという表現であるが、報道各社は受注したと発表している。私は、電力会社Ontario Powerからの単純なプラント請負工事の受注ではないと思っている。

2)オンタリオハイドロの小型モジュール炉(SMR) BWRX-300

BWRX-300という小型モジュール炉(SMR)についての契約であるが、この記事(Power Engineering) からBWRX-300は電気出力300MWで熱出力1,500MWのBWR(沸騰水型原子炉)と理解する。原子力百科事典(ATOMICA)に掲載されている沸騰水型原子炉(BWR)の基本仕様(02-03-01-02) によれば電気出力460MWの熱出力は1,356MWで、800MWが2,381MWとなっている。即ち、同じ電力を得るための熱出力は従来型のBWRより大きい。熱効率で考えれば、燃料を多く消費する効率の悪い発電所である。また、そうなるとプルトニウムや使用済み核燃料も多く出るように思える。但し、電気出力を抑えることにより、安全性を高めている設計を採用しているのかも知れない。核兵器原料であるプルトニウムが生産されることに変わりはない。

建設されるのはOntario Powerの Darlington原子力発電所であり、4基が稼働中。合計出力3,512MW。原子炉はCANDUである。その位置は、次の地図の地点である。 トロントの東方約55km。直線距離で米国ニューヨークまで520km。首都ワシントンまでは570km。東京から青森または熊本までの距離である。

3)日本での小型モジュール式原子炉(SMR)の建設

私は、慌てふためく必要はないと思う。30年後の2050年ゼロエミッションを目指して、と言うより、この標語=かけ声を利用して、各社は競争を繰り広げており、この競争は益々激しくなる。トランプさんのような人が現れて巻き返しがあることもあり得る。まっすぐな直線の道とは余り思えない。そんな中で、SMRがどうなるか、所詮原発である。使用済み核燃料を含め高レベル廃棄物は発生する。

使用済み核燃料には1%程度の燃え残りウラン235が1%含まれ、さらにウラン238が変化したプルトニウムが1%程度存在すると言われている。日本原子力文化財団のこのページの説明 によれば、高レベル放射性廃棄物は数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、隔離する必要があるととのこと。年間1.4トン発生しているとある。

じっくりと考える必要があると思います。

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2021年10月11日 (月)

世界の原子力発電

次の様なニュースがあるが、「中国を含めて再生可能エネルギーが急拡大して発電量が増える中、原子力の役割は低下している」とまで指摘するのは、言い過ぎとも思える。

中日新聞 9月28日 中国、第2位の原発大国に 仏の発電量抜き、米に次ぐ

世界全体を正しく把握するためには、各国の原発に関する統計データをチェックすべきである。次の表は、2020年末における各国の原子力発電所であり、国際原子力機関(IAEA)の統計からである。

Nuclearworld202110a

日本において原発2基合計2,653MWが建設中になっているが、この2基とは電源開発大間原発と中国電力島根原発3号機である。

上の表は、2020年の原発発電量であり、前年との比較が次の表である。国毎のばらつきがあり、個々の状況を調べないと変動要因まで言及することは難しいと考える。

Nuclearworld202110b

原発の発電量を1990年の発電量からグラフで表したのが次である。このグラフからは、中国の近年に於ける発電量の増加は大きいと言える。また、原発発電量が減少傾向とまでは言えないと考える。また、一番上の表に建設中の原発も記載したが、バングラデシュでも原発を建設中であり、中国では建設中の原発が13基で12,565MWある。このうちには642MWの高速増殖炉もある。

Nuclearworld202110c

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2021年9月30日 (木)

核燃サイクルはまずは議論を開始せよ

自民党総裁選は終了し、岸田文雄氏が総裁に選出された。9月10日のエコノミストOnlineに次の記事があった。

「核燃サイクルはやめるべきだ」「青森県に保管料を払え」河野太郎氏が示した首相の決断

破綻している核燃料サイクルを維持する意味は、どう考えてもない。河野氏が言うとおりである。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃止措置は2018年3月に認可され、プルトニウムを燃料とする原発建設の計画はない。MOX燃料を既存の原発で使用するとしても、どれだけのプルトニウムを消費するか、少ない量と思う。

しかし、問題はそれだけではない。プルトニウムこそ原爆の原料であり、長崎原爆のプルトニウム量は10-15kgで核分裂を起こしたのは、そのうちの1.2kg程度であった(このIAEAのINIS )。100万kWの原発が1年間の運転で生み出すプルトニウムの量は200kg 程度である。多いと思えるが、交換する量が35-40トンであるので、プルトニウムは0.5%程度。MOX燃料だと4-9%と言うわけで、原発でどれだけ使用するか不明であるのにプルトニウムの濃度を上げれば、核兵器転用のリスクをあげるだけと思える。

方針の転換は大変である。まずは、研究をすべきである。研究とは、技術課題のみに限らず、政府内部、地方自治体、住民・国民、関係する企業、国際的な関係も含めて方針転換について議論をすべきである。どう考えても非合理と思える核燃料サイクルが維持されてきたのは何故か?誰も猫にスズを付けたがらなかったからなのか。スズを付けることは、それほど大変なのか。研究・議論しないと分からない。

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2021年9月21日 (火)

放射性廃棄物を海外処分なんて、良いんですか?

恐ろしいニュースだと考える。

Yahooニュース朝日 9月19日 放射性廃棄物、海外処分に道筋 規制緩和で大型機器の「輸出」可能に

「廃炉が相次ぐなか、低レベル廃棄物である一部の大型機器について、処分を海外業者に委託できるように輸出規制を緩和する」と述べられているが、低レベル廃棄物とは、実はこの原子力科学研究所の放射性廃棄物のレベル区分についての表 を見ると、 再処理施設で発生するガラス固化体のみが高レベル放射性廃棄物であり、これ以外は全て低レベル放射性廃棄物となっている。日本の原発廃炉工程で出てくる廃棄物は、高レベルに該当せず、全て低レベル放射性廃棄物の扱いである。

低レベル廃棄物とは原発の廃棄物だから、一般的感覚からすれば、高レベルの放射線廃棄物が含まれる。表においては、低レベル廃棄物と呼んでいるものの中でも、放射線レベルの高い廃棄物は余裕深度処分となっている。朝日の記事にある「蒸気発生器」や「給水加熱器」の放射線レベルがどれくらいか不明だが、双方とも熱交換器であり、結構放射線レベルは高いかも知れない。

いずれにせよ原発の廃棄物を簡単に輸出なんて考えて良いはずがない。使用済み燃料を含め、原発の運転から生じた廃棄物は、その原発が存在する国の中で処分すべきである。朝日新聞は、原発賛成の意見、いやそうではない国家対立扇情方向という報道機関として恥ずべき論を出し始めたと思った。

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2021年9月20日 (月)

自民党総裁の知的レベル

9月18日に自民党総裁選立候補者討論会が日本記者クラブの主催であり、NHKも中継をしていた。この討論会の全2時間の動画がYouTubeで保存されており、次の日本記者クラブのWebから見ることができる。

2021年09月18日  自民党総裁選立候補者討論会

私のようなコンサルタントからすれば、発言内容には、十分に検討されておらず、問題含みと思える部分も多かったと感じる。有能な政策秘書、アドバイザー、調査・研究員を抱えて、政策の研究・立案をすべきと考えるのだが。

私が思った、自分自身が多少の知識を有しているエネルギー分野のことについて書いてみる。

1)地熱発電

日本には世界第3位の地熱発電ポテンシャルがあり、力を入れて開発すべきとの発言があった。第3位の根拠は、活火山の数は日本には119存在し、活火山の数が米国、インドネシアに次いで第3位だから地熱発電も第3位であるべきとの乱暴な議論のようだ。地熱発電とは地下資源開発と似ている。地下1000m以上の深さ(5000m以上の場合もあるようである)にある地下の熱水(高温高圧で水と蒸気が混ざったH2O)を掘り当てるのである。従い、油田やガス田開発をする人達のビジネスである。そのような場所が日本にどれだけあるのか?下手をすると、環境破壊である。

世界の地熱発電の表を掲げておく。身の丈に合った開発が良いのである。

Geothermal20219_20210920011801

2) 小型原発

小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)という原子炉の開発が米国等でなされている。小型にすれば、大型より冷やしやすいので、安全性が高まるという発想である。米国NuScale社のSMRは1モジュールが60MWで、6モジュールで1発電所とすれば360MWになる。

しかし、1,200MWというような大型原発が建設されたのは、安全性の追求からであった。全く逆の発想をしようというのだが、そもそもウランを燃料とする原子力発電所である。危険性がなくなるわけではない。リスク評価ができないものをエネルギー供給計画に組み入れることは間違いである。研究開発を適切に見守るのが、現段階では妥当なことである。

3) プルトニウム政策

ウラン原発を運転すると、プルトニウムが生成され、使用済み核燃料に含まれる。プルトニウム(239Pu )は、ウラン(235 )と同じように核分裂を起こす。従い、プルトニウムも原爆の原料となるが、使用済み核燃料のままだと兵器転用は困難と言われている。日本は、プルトニウム を原子燃料として再処理するとして核不拡散条約(NPT)による承認を受けている。しかし、現実には、再処理したプルトニウムを燃料として消費できる見込みは、どれだけあるか?相当少ないはず。

「日本は使用済み核燃料は再処理するので、使用済み核燃料の問題はない。」としてきた。しかし、この政策が破綻してる。問題先送りは、問題の解決をますます困難とし、解決の代償を大きくすることとなっている。低レベル放射性物質の廃棄ですら、容易ではないのであり、重大問題として取り組むべきである。

4) 太陽光発電と風力発電の出力抑制

九州電力送配電は、太陽光と風力の発電出力抑制指令を出している。石炭火力も出力抑制をすべきといった発言を行った人がいるのだが、当然石炭火力も出力抑制を行っていると私は理解している。その根拠は、電力広域的推進機関が再生エネルギー出力抑制に関する検証を実施しており、その結果報告を正しいと考えるからである。報告書は、このページ にある。

発電の出力調整のフレキシビリティーが高いのは水力である。逆に調整不可能が原子力である。火力は、機械(発電所)により異なるが、機械の性能の範囲内で調整可能である。再生可能エネルギーを割合を増加させていこうとした場合、太陽光と風力について出力抑制を実施しないと導入ができない。太陽光、風力の発電事業者が出力抑制の条件に合意して事業を実施しているはずであり、再生可能エネルギーの増加を目指すという課題を追及すべきと考える。

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2021年4月10日 (土)

福島第一原発の処理水は海洋放出へ

政府は、福島第一原発のトリチウムを含む処理水を海洋放出する方針を固めたとのことである。

日経 4月9日 福島第1原発の処理水、海洋放出の方針 政府

決定を先送りして解決する問題ではなく、海洋放出以外の選択は馬鹿げたことだと思う。

3月15日のブログ(ここ )の中で、国内外の原子力施設からのトリチウム年間放出量国内の原子力発電所からのトリチウム海洋放出量 のグラフを掲げたように、原発からはトリチウムの海洋放出や空中放出は行われているのであり、今回の方針が初となるのではない。おそらく、海洋放出する量は福島第一原発の従来からの放出管理目標値である年間22兆ベクレルとするのであろうか。

年間22兆ベクレルの放出で考えても、次のグラフのように処理をするには28年を要する計算となった。貯蔵量が少なくなれば、ゼロとはならないが、リスクは低くなる。

Fukushima3h20213a

処理水の将来量は、よく分からないが、放出する22兆ベクレルより大きければ、追いつかない。但し、トリチウムが崩壊してヘリウムになる分の減少はある。22兆ベクレルは従来からの放出管理目標値を適用した数値であるが、それでも加圧水型原発(PWR)からのトリチウム原発より遙かに小さい。大飯原発なんかだったら、その数十倍の量のようである。福島の魚に対する影響はないとしか言いようがないのかな。

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2021年3月25日 (木)

原発批判 朝日社説への反論

朝日社説への反論とのタイトルだが、内容の間違い指摘ではない。視野が幾分か狭く、真に考えるべきことが抜けていると思った。ちなみに次の社説である。

朝日社説 3月24日 柏崎刈羽原発 東電に運転資格はない

では、誰がどこの団体・会社が運転するのだと言っても、その答えは難しい。様々な観点から検討を加えて、日本における原発保有・運転・廃棄核燃料と放射性物質管理者をどうすることが最適かを考えねばならない。東電を批判することは簡単である。東電に資格はないという発言には同時に、誰であるべきか、具体的な固有名詞はなくても方向性か何かが示されるべきと考える。そこで、浅はかながら。少し考えてみる。

1)最近の不祥事・問題点

柏崎刈羽原発で社員によるIDカード不正使用という事件があった。その原因分析・改善措置概要がここ にある。あってはならないことだが、どこにでも起こりうる問題である。不正をした社員の責任追及のみならず、制度・システムの責任も追及されなくてはならない。顔認証・指紋認証等も組み込んで厳格性をあげることも考えられたと思う。人間の善意のみを信じては失敗する可能性がある。

柏崎刈羽原発で核物質防護設備である侵入検知装置の損傷や故障という問題があった(新潟日報の記事 東電HD発表による概要 )。どのような検知装置で核物質防護設備とは何かと言っても詳細は発表することにより当該部分の防護が薄くなりかねず、余り発表されないのではと思う。軽微なことかも知れないが、核物質という重大な事項故原子力規制庁が動いたと言うことなのかよく分からない。ひとまずは、原子力規制庁を信頼したい。

ところで、これら不祥事・問題発生を理由として是正措置命令の結果、東電が柏崎刈羽原発を運転できなくなったとしても、核燃料が発電所内に存在し、放射性物質も同様に存在する。本質的な問題解決ではないのである。運転している原発がない福島県もこの発表 のように核物質防護措置に万全を期すように東電に3月16日に申し入れている。

2)株式会社組織自体の問題点

株式会社が原発を保有・運転し、廃棄核燃料と放射性物質管理者としての義務を果たすことの制度上の問題を考えねばならない。原発という安全性を最優先とする基準と株式会社という利益追求組織の整合性である。株式会社は、出資者たる株主は取締役を選任し取締役が経営に携わる。取締役の業績評価と会社の利益が大いに関係する。利益が大きければ、PERは一定としてEが大きくなれば、その分株価Pも高くなる。PBRも同様で、利益が大きければBが大きくなり株価Pも高くなる。そして株主は配当金も受けとれる。

原発を利益追求組織である株式会社が保有・運転することの問題点をよく考える必要がある。そして、このことは使用済み核燃料や高濃度から低濃度までの放射性物質の廃棄とその管理の段階になると、利益を生まず、費用のみが発生する事業となる。株式会社は、収益貢献がない事業においては、コスト削減が最大の関心事となるわけで、安全と言ったって地震、津波、テロのリスクなんて、どの程度まで対策するかと言えば、どうしたってコストを中心に考えてしまう。福島第一原発のトリチウムを含む126万m3の汚染水にしても、大地震によりタンクが破損し大量流出なんてことにならないとは限らない。東電の責任とだけ述べていても始まらないはず。

1955年に原子力基本法等が制定され、原発に積極的な姿勢を示す電力9社と電源開発の対立もあったが、電力、電源開発、メーカーなどの共同出資で1957年11月に日本原子力発電株式会社が設立された。その後、関西電力、東京電力他も原発を保有することとなった。当時、原子力平和利用と言われ、将来的には原子力は低コストのエネルギー源になると期待されていた。

2011年福島第一原発事故を経験した我々には原子力の安全な平和利用は課題が多い、相当先の話であり、安全を達成するための膨大な費用があることを認識したと思う。原発の安全を確保する。そのためには、どのような組織が保有・運転・廃棄をすべきか考えるべきである。私は、特殊法人と思うが、そのためにはその法制定の研究だけでも相当の時間を要し、一刻も早く検討をすべきと考えている。なお、仮に新しく日本で原発を建設しなくても、現存する原発の廃棄物処理で数百年を要するのであり、よく考える必要がある。

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2021年3月15日 (月)

福島原発事故から10年の課題 トリチウム

福島第一原発のトリチウムについては、様々な報道がある。福島原発事故関係のブログを書いたからには、やはりトリチウムについても書いておかねばと思った。

1) トリチウムとは

Wikiはここ にあり、三重水素とも呼ばれる。あの燃料自動車にも使われる元素番号1の水素である。自然界の水素の多くは陽子が1つで電子が1つであるが、トリチウムは陽子は1つと中性子2つが原子核であり、電子が3つある。いかにも不安定な感じであるが、放射性崩壊のベータ崩壊をして電子を出して、中性子が陽子になり、元素番号2のヘリウム(He)になる。半減期が12.32年で1崩壊あたり18.6keVの崩壊熱を出す放射性元子である。

トリチウムが水素であると言うことは、大部分は水として存在する。水、すなわちH2Oの”H”であるが、トリウムがある水とは、2つある水原子”H”のうちの一つがトリチウムであり”T”で現すとTHOという化合物の水である。仮にそんな水を電気分解して水素と酸素を得たならば、水素はHとTが混合した状態である。この”H”と”T” が混じった水素を”H”と”T”に分離することは、できなくはないが、とてもやっかいである。

2) 福島第一原発のトリウム

福島第一原発に存在するトリチウムも水として存在する。トリチウム単体だったと仮定したならば、トリチウム”T”は普通の水素”H”より重いがヘリウム”He”より軽いので、空の上に拡散していく。福島第一原発1~3号機合計でどれだけの量があるかと言うと、2019年10月31日で856兆ベクレル(Bq)と言うわけで、重量にすると私の計算では2.4グラム(g)である。但し、トリチウムが含まれている水の量は、この東京電力のグラフ のように2021年1月で126万m3と言うことである。ここ にグラフがあるが、2月末-3月初めでは1日あたり100m3増加している。 この水の量は雨水の流入と地下水である。

地下水流入はやっかいな問題である。流入してきた地下水はくみ上げざるを得ない。くみ上げなければ、放射性物質を含んだ水が地下水にまぎれて外部に流出する恐れがある。安全の為には地下水が常時流入するようにポンプアップを続けねばならない。「黒部の太陽」という小説・映画でトンネル工事が破砕帯を抜けるにあたり苦労した話がある。しかし、破砕帯の水は外部に、排出する際に処理は不要であり、また切り羽部分の空気圧力を高くして、水の流入量を減少させることも可能であった。福島第一原発は、逆で地下水は外部に漏出できない。地下水対策で実施していることは① 地下水バイパス揚水として発電所西側で地下水をくみ上げ、発電所へ流れる地下水を減少させること、②  サブドレインと称している発電所外側近辺で地下水をくみ上げること③ ①の地下水バイパスの発電所側に凍土方式の陸側遮水壁を建設し凍結して地下水進入防止を図っていることと④ 地表をアスファルト等で覆って雨水の地中への浸透を減少させることをしている。

福島第一原発1~3号機の現状は、事故時の核燃料がデブリとして原子炉格納容器の底部に個体として存在する。このデブリは核分裂はしていないが、核崩壊はしており熱を発している。この熱を進入してきた地下水を利用し、循環させて冷却をしている。使用済み核燃料プールの役割を、破損した原子炉格納容器が果たしている。循環水には大量の放射性物質が入る訳で、セシウムやストロンチウム等の放射性物質を除去(分離)している。流入した地価水相当の量は循環から外に出さねばならず、ALPSと呼んでいる装置で水に含まれている多核種のほとんどを除去しているが、トリチウムはALPSで除去できない。このトリチウムが含まれている水の貯蔵量が126万m3と言うわけである。

3) 対処方法

126万m3は、20万トンのタンカー6隻分に相当する訳で、やはり多い。ダムの貯水量からすると少ないが、ダムには貯蔵できない。何故なら、蒸発させられないから。トリチウムがTHOになっていて、H2OのなかにTHOが混じっている。重量比では1兆分の2がHTOである。HTOの量は重量では小さいが、放射性物質として放射線を発する量としてのベクレルで計測すると126万m3の水はH2Oがゼロベクレルであるのに対し、HTOは856兆ベクレルである。蒸発とは水が気体になることで、気体の中にTHO、すなわちトリチウムが含まれることとなる。なお、H2Oの水素としてではなくHあるいはトリチウムとして溶けているものもある。

処理方法としては、① 気体(水蒸気)として放出する、② 気体(トリチウムを分離した単体)として放出する、 ③ トリチウムを分離しトリチウム単体として気体保管する、④ 地下深く高圧注入する、⑤ 海洋放出する方法と ⑥  タンク管理を継続する方法の6種類ではないかと思う。

放出せずにタンクを増設し、保管量を増やすことも不可能ではない。但し、どこかで一杯になる。安全性を考えると敷地の外には保管したくない。輸送をする場合は、タンクローリーであれパイプラインであれ事故の危険性はある。大型タンクにすると万一の漏出事故の対策を考えると適切な大きさにせざるを得ない。どこまでタンク増設が可能か私には不明だが、検討・研究の価値はあると思う。

なお、トリチウムは半減期12.32年の放射性物質であることから12.32年経過すれば半分の量となり、半分はヘリウムに変化する。トリチウムの放射線量の経年変化を図示すると次のグラフとなる。福島第一原発の汚染水のトリチウムは、崩壊により減少はするが、一方で新たに壊れた原子炉配管や燃料デブリから発生するものもある。差引、どうなるのか私には分からない。

Tritium20213

トリチウムの①の気体として放出すること並びに⑤の海洋放出は、実は世界中の原発で行われているのである。次は、2020年2月10日の多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会の報告書にある図6である。

Tritium20213w

日本についても数字がある。福島第一 2010年液体放出2.2兆ベクレル、気体放出1.5兆ベクレル。日本のBWR平均液体放出316億-1.9兆ベクレルで気体放出が770億-1.9兆ベクレルとあり、更に日本のPWRの場合は平均値として液体放出18兆-83兆ベクレル、気体放出4400億-13兆ベクレルとなっている。

PWR(加圧水型原子炉)の方が、トリチウムの発止量・放出量が多いのであるが、この原子力産業協会の放射線に関する基礎知識(118) によれば、ホウ素(ボロン)の使われ方が、PWRとBWR(沸騰水型原子炉)とで使われた方に差があるためトリチウム発生量が異なると言うことである。また、次の日本の原発別の年間トリチウム海洋放出量の図がある。

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トリチウム海洋放出に対する反対が根強いと聞く。しかし、1979年に福島第一原発におけるトリチウム海洋放出量は年間22兆ベクレルという基準値が設定されたとのことである。もし、この22兆ベクレルの海洋放出をするなら、856兆ベクレルの保管中のトリチウムを含む水は33年で処分可能ということである。

なお、上の図からすれば、PWRなみの排出量を認めれば、年間80兆ベクレル程度まで海洋放出可能であり、10年強で処理が終了する。常磐ものというブランド魚という話がある。ここ にふくいお魚図鑑がある。若狭湾には、PWR原発が5発電所あり、いずれも福島第一原発より多くのトリチウムを海洋放出していた。もし、常磐もの魚を消費者が敬遠するなら、若狭もの・ふくいお魚は、どうなるのだろうと思う。

福島第一原発のトリチウム問題を調べていくと、報道されない重要なことの存在に気がつく。福島第一原発の廃炉は、誰もやったことのないことをやっているのであり、行程通りには進まないのが当然であり、その中で安全第一を最重要事項として進めている。この安全第一とは、工事の事故もそうであるが、それと同等あるいはそれ以上に放射性物質の放出リスクに気を付けなくてはならない。福島第一原発事故が起こったときもそうであったが、今も人気取りをもくろんだ間違った政治家の発言がある。関係者の方々は、雑音に惑わされることなく、自らが信じる良心を大事にして任務を続けていただきたいと思う。

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