2021年9月20日 (月)

自民党総裁の知的レベル

9月18日に自民党総裁選立候補者討論会が日本記者クラブの主催であり、NHKも中継をしていた。この討論会の全2時間の動画がYouTubeで保存されており、次の日本記者クラブのWebから見ることができる。

2021年09月18日  自民党総裁選立候補者討論会

私のようなコンサルタントからすれば、発言内容には、十分に検討されておらず、問題含みと思える部分も多かったと感じる。有能な政策秘書、アドバイザー、調査・研究員を抱えて、政策の研究・立案をすべきと考えるのだが。

私が思った、自分自身が多少の知識を有しているエネルギー分野のことについて書いてみる。

1)地熱発電

日本には世界第3位の地熱発電ポテンシャルがあり、力を入れて開発すべきとの発言があった。第3位の根拠は、活火山の数は日本には119存在し、活火山の数が米国、インドネシアに次いで第3位だから地熱発電も第3位であるべきとの乱暴な議論のようだ。地熱発電とは地下資源開発と似ている。地下1000m以上の深さ(5000m以上の場合もあるようである)にある地下の熱水(高温高圧で水と蒸気が混ざったH2O)を掘り当てるのである。従い、油田やガス田開発をする人達のビジネスである。そのような場所が日本にどれだけあるのか?下手をすると、環境破壊である。

世界の地熱発電の表を掲げておく。身の丈に合った開発が良いのである。

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2) 小型原発

小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)という原子炉の開発が米国等でなされている。小型にすれば、大型より冷やしやすいので、安全性が高まるという発想である。米国NuScale社のSMRは1モジュールが60MWで、6モジュールで1発電所とすれば360MWになる。

しかし、1,200MWというような大型原発が建設されたのは、安全性の追求からであった。全く逆の発想をしようというのだが、そもそもウランを燃料とする原子力発電所である。危険性がなくなるわけではない。リスク評価ができないものをエネルギー供給計画に組み入れることは間違いである。研究開発を適切に見守るのが、現段階では妥当なことである。

3) プルトニウム政策

ウラン原発を運転すると、プルトニウムが生成され、使用済み核燃料に含まれる。プルトニウム(239Pu )は、ウラン(235 )と同じように核分裂を起こす。従い、プルトニウムも原爆の原料となるが、使用済み核燃料のままだと兵器転用は困難と言われている。日本は、プルトニウム を原子燃料として再処理するとして核不拡散条約(NPT)による承認を受けている。しかし、現実には、再処理したプルトニウムを燃料として消費できる見込みは、どれだけあるか?相当少ないはず。

「日本は使用済み核燃料は再処理するので、使用済み核燃料の問題はない。」としてきた。しかし、この政策が破綻してる。問題先送りは、問題の解決をますます困難とし、解決の代償を大きくすることとなっている。低レベル放射性物質の廃棄ですら、容易ではないのであり、重大問題として取り組むべきである。

4) 太陽光発電と風力発電の出力抑制

九州電力送配電は、太陽光と風力の発電出力抑制指令を出している。石炭火力も出力抑制をすべきといった発言を行った人がいるのだが、当然石炭火力も出力抑制を行っていると私は理解している。その根拠は、電力広域的推進機関が再生エネルギー出力抑制に関する検証を実施しており、その結果報告を正しいと考えるからである。報告書は、このページ にある。

発電の出力調整のフレキシビリティーが高いのは水力である。逆に調整不可能が原子力である。火力は、機械(発電所)により異なるが、機械の性能の範囲内で調整可能である。再生可能エネルギーを割合を増加させていこうとした場合、太陽光と風力について出力抑制を実施しないと導入ができない。太陽光、風力の発電事業者が出力抑制の条件に合意して事業を実施しているはずであり、再生可能エネルギーの増加を目指すという課題を追及すべきと考える。

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2021年7月 4日 (日)

熱海土石流の原因は太陽光発電なのか?

熱海市の傾斜地にある伊豆山神社付近で土石流が発生した。そして、この土石流の原因は太陽光発電の工事にあるとする話を耳にした。

Google Mapで見てみると災害現場の上流側約800m離れたところに工事中の現場が見受けられた。(クリックで拡大)

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Google Earthで調べると2020年12月の写真があり、そこには太陽光発電写真が写っている。(クリックで拡大)

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未だ断定はできない。太陽光発電設備と土砂災害に因果関係があるのか、今後調査をすることは絶対必要と考える。

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2021年3月25日 (木)

原発批判 朝日社説への反論

朝日社説への反論とのタイトルだが、内容の間違い指摘ではない。視野が幾分か狭く、真に考えるべきことが抜けていると思った。ちなみに次の社説である。

朝日社説 3月24日 柏崎刈羽原発 東電に運転資格はない

では、誰がどこの団体・会社が運転するのだと言っても、その答えは難しい。様々な観点から検討を加えて、日本における原発保有・運転・廃棄核燃料と放射性物質管理者をどうすることが最適かを考えねばならない。東電を批判することは簡単である。東電に資格はないという発言には同時に、誰であるべきか、具体的な固有名詞はなくても方向性か何かが示されるべきと考える。そこで、浅はかながら。少し考えてみる。

1)最近の不祥事・問題点

柏崎刈羽原発で社員によるIDカード不正使用という事件があった。その原因分析・改善措置概要がここ にある。あってはならないことだが、どこにでも起こりうる問題である。不正をした社員の責任追及のみならず、制度・システムの責任も追及されなくてはならない。顔認証・指紋認証等も組み込んで厳格性をあげることも考えられたと思う。人間の善意のみを信じては失敗する可能性がある。

柏崎刈羽原発で核物質防護設備である侵入検知装置の損傷や故障という問題があった(新潟日報の記事 東電HD発表による概要 )。どのような検知装置で核物質防護設備とは何かと言っても詳細は発表することにより当該部分の防護が薄くなりかねず、余り発表されないのではと思う。軽微なことかも知れないが、核物質という重大な事項故原子力規制庁が動いたと言うことなのかよく分からない。ひとまずは、原子力規制庁を信頼したい。

ところで、これら不祥事・問題発生を理由として是正措置命令の結果、東電が柏崎刈羽原発を運転できなくなったとしても、核燃料が発電所内に存在し、放射性物質も同様に存在する。本質的な問題解決ではないのである。運転している原発がない福島県もこの発表 のように核物質防護措置に万全を期すように東電に3月16日に申し入れている。

2)株式会社組織自体の問題点

株式会社が原発を保有・運転し、廃棄核燃料と放射性物質管理者としての義務を果たすことの制度上の問題を考えねばならない。原発という安全性を最優先とする基準と株式会社という利益追求組織の整合性である。株式会社は、出資者たる株主は取締役を選任し取締役が経営に携わる。取締役の業績評価と会社の利益が大いに関係する。利益が大きければ、PERは一定としてEが大きくなれば、その分株価Pも高くなる。PBRも同様で、利益が大きければBが大きくなり株価Pも高くなる。そして株主は配当金も受けとれる。

原発を利益追求組織である株式会社が保有・運転することの問題点をよく考える必要がある。そして、このことは使用済み核燃料や高濃度から低濃度までの放射性物質の廃棄とその管理の段階になると、利益を生まず、費用のみが発生する事業となる。株式会社は、収益貢献がない事業においては、コスト削減が最大の関心事となるわけで、安全と言ったって地震、津波、テロのリスクなんて、どの程度まで対策するかと言えば、どうしたってコストを中心に考えてしまう。福島第一原発のトリチウムを含む126万m3の汚染水にしても、大地震によりタンクが破損し大量流出なんてことにならないとは限らない。東電の責任とだけ述べていても始まらないはず。

1955年に原子力基本法等が制定され、原発に積極的な姿勢を示す電力9社と電源開発の対立もあったが、電力、電源開発、メーカーなどの共同出資で1957年11月に日本原子力発電株式会社が設立された。その後、関西電力、東京電力他も原発を保有することとなった。当時、原子力平和利用と言われ、将来的には原子力は低コストのエネルギー源になると期待されていた。

2011年福島第一原発事故を経験した我々には原子力の安全な平和利用は課題が多い、相当先の話であり、安全を達成するための膨大な費用があることを認識したと思う。原発の安全を確保する。そのためには、どのような組織が保有・運転・廃棄をすべきか考えるべきである。私は、特殊法人と思うが、そのためにはその法制定の研究だけでも相当の時間を要し、一刻も早く検討をすべきと考えている。なお、仮に新しく日本で原発を建設しなくても、現存する原発の廃棄物処理で数百年を要するのであり、よく考える必要がある。

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2021年3月15日 (月)

福島原発事故から10年の課題 トリチウム

福島第一原発のトリチウムについては、様々な報道がある。福島原発事故関係のブログを書いたからには、やはりトリチウムについても書いておかねばと思った。

1) トリチウムとは

Wikiはここ にあり、三重水素とも呼ばれる。あの燃料自動車にも使われる元素番号1の水素である。自然界の水素の多くは陽子が1つで電子が1つであるが、トリチウムは陽子は1つと中性子2つが原子核であり、電子が3つある。いかにも不安定な感じであるが、放射性崩壊のベータ崩壊をして電子を出して、中性子が陽子になり、元素番号2のヘリウム(He)になる。半減期が12.32年で1崩壊あたり18.6keVの崩壊熱を出す放射性元子である。

トリチウムが水素であると言うことは、大部分は水として存在する。水、すなわちH2Oの”H”であるが、トリウムがある水とは、2つある水原子”H”のうちの一つがトリチウムであり”T”で現すとTHOという化合物の水である。仮にそんな水を電気分解して水素と酸素を得たならば、水素はHとTが混合した状態である。この”H”と”T” が混じった水素を”H”と”T”に分離することは、できなくはないが、とてもやっかいである。

2) 福島第一原発のトリウム

福島第一原発に存在するトリチウムも水として存在する。トリチウム単体だったと仮定したならば、トリチウム”T”は普通の水素”H”より重いがヘリウム”He”より軽いので、空の上に拡散していく。福島第一原発1~3号機合計でどれだけの量があるかと言うと、2019年10月31日で856兆ベクレル(Bq)と言うわけで、重量にすると私の計算では2.4グラム(g)である。但し、トリチウムが含まれている水の量は、この東京電力のグラフ のように2021年1月で126万m3と言うことである。ここ にグラフがあるが、2月末-3月初めでは1日あたり100m3増加している。 この水の量は雨水の流入と地下水である。

地下水流入はやっかいな問題である。流入してきた地下水はくみ上げざるを得ない。くみ上げなければ、放射性物質を含んだ水が地下水にまぎれて外部に流出する恐れがある。安全の為には地下水が常時流入するようにポンプアップを続けねばならない。「黒部の太陽」という小説・映画でトンネル工事が破砕帯を抜けるにあたり苦労した話がある。しかし、破砕帯の水は外部に、排出する際に処理は不要であり、また切り羽部分の空気圧力を高くして、水の流入量を減少させることも可能であった。福島第一原発は、逆で地下水は外部に漏出できない。地下水対策で実施していることは① 地下水バイパス揚水として発電所西側で地下水をくみ上げ、発電所へ流れる地下水を減少させること、②  サブドレインと称している発電所外側近辺で地下水をくみ上げること③ ①の地下水バイパスの発電所側に凍土方式の陸側遮水壁を建設し凍結して地下水進入防止を図っていることと④ 地表をアスファルト等で覆って雨水の地中への浸透を減少させることをしている。

福島第一原発1~3号機の現状は、事故時の核燃料がデブリとして原子炉格納容器の底部に個体として存在する。このデブリは核分裂はしていないが、核崩壊はしており熱を発している。この熱を進入してきた地下水を利用し、循環させて冷却をしている。使用済み核燃料プールの役割を、破損した原子炉格納容器が果たしている。循環水には大量の放射性物質が入る訳で、セシウムやストロンチウム等の放射性物質を除去(分離)している。流入した地価水相当の量は循環から外に出さねばならず、ALPSと呼んでいる装置で水に含まれている多核種のほとんどを除去しているが、トリチウムはALPSで除去できない。このトリチウムが含まれている水の貯蔵量が126万m3と言うわけである。

3) 対処方法

126万m3は、20万トンのタンカー6隻分に相当する訳で、やはり多い。ダムの貯水量からすると少ないが、ダムには貯蔵できない。何故なら、蒸発させられないから。トリチウムがTHOになっていて、H2OのなかにTHOが混じっている。重量比では1兆分の2がHTOである。HTOの量は重量では小さいが、放射性物質として放射線を発する量としてのベクレルで計測すると126万m3の水はH2Oがゼロベクレルであるのに対し、HTOは856兆ベクレルである。蒸発とは水が気体になることで、気体の中にTHO、すなわちトリチウムが含まれることとなる。なお、H2Oの水素としてではなくHあるいはトリチウムとして溶けているものもある。

処理方法としては、① 気体(水蒸気)として放出する、② 気体(トリチウムを分離した単体)として放出する、 ③ トリチウムを分離しトリチウム単体として気体保管する、④ 地下深く高圧注入する、⑤ 海洋放出する方法と ⑥  タンク管理を継続する方法の6種類ではないかと思う。

放出せずにタンクを増設し、保管量を増やすことも不可能ではない。但し、どこかで一杯になる。安全性を考えると敷地の外には保管したくない。輸送をする場合は、タンクローリーであれパイプラインであれ事故の危険性はある。大型タンクにすると万一の漏出事故の対策を考えると適切な大きさにせざるを得ない。どこまでタンク増設が可能か私には不明だが、検討・研究の価値はあると思う。

なお、トリチウムは半減期12.32年の放射性物質であることから12.32年経過すれば半分の量となり、半分はヘリウムに変化する。トリチウムの放射線量の経年変化を図示すると次のグラフとなる。福島第一原発の汚染水のトリチウムは、崩壊により減少はするが、一方で新たに壊れた原子炉配管や燃料デブリから発生するものもある。差引、どうなるのか私には分からない。

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トリチウムの①の気体として放出すること並びに⑤の海洋放出は、実は世界中の原発で行われているのである。次は、2020年2月10日の多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会の報告書にある図6である。

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日本についても数字がある。福島第一 2010年液体放出2.2兆ベクレル、気体放出1.5兆ベクレル。日本のBWR平均液体放出316億-1.9兆ベクレルで気体放出が770億-1.9兆ベクレルとあり、更に日本のPWRの場合は平均値として液体放出18兆-83兆ベクレル、気体放出4400億-13兆ベクレルとなっている。

PWR(加圧水型原子炉)の方が、トリチウムの発止量・放出量が多いのであるが、この原子力産業協会の放射線に関する基礎知識(118) によれば、ホウ素(ボロン)の使われ方が、PWRとBWR(沸騰水型原子炉)とで使われた方に差があるためトリチウム発生量が異なると言うことである。また、次の日本の原発別の年間トリチウム海洋放出量の図がある。

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トリチウム海洋放出に対する反対が根強いと聞く。しかし、1979年に福島第一原発におけるトリチウム海洋放出量は年間22兆ベクレルという基準値が設定されたとのことである。もし、この22兆ベクレルの海洋放出をするなら、856兆ベクレルの保管中のトリチウムを含む水は33年で処分可能ということである。

なお、上の図からすれば、PWRなみの排出量を認めれば、年間80兆ベクレル程度まで海洋放出可能であり、10年強で処理が終了する。常磐ものというブランド魚という話がある。ここ にふくいお魚図鑑がある。若狭湾には、PWR原発が5発電所あり、いずれも福島第一原発より多くのトリチウムを海洋放出していた。もし、常磐もの魚を消費者が敬遠するなら、若狭もの・ふくいお魚は、どうなるのだろうと思う。

福島第一原発のトリチウム問題を調べていくと、報道されない重要なことの存在に気がつく。福島第一原発の廃炉は、誰もやったことのないことをやっているのであり、行程通りには進まないのが当然であり、その中で安全第一を最重要事項として進めている。この安全第一とは、工事の事故もそうであるが、それと同等あるいはそれ以上に放射性物質の放出リスクに気を付けなくてはならない。福島第一原発事故が起こったときもそうであったが、今も人気取りをもくろんだ間違った政治家の発言がある。関係者の方々は、雑音に惑わされることなく、自らが信じる良心を大事にして任務を続けていただきたいと思う。

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2021年3月12日 (金)

福島原発事故から10年の教訓(3)

2011年3月11日に福島原発事故は発生した。この事態に関する、東京電力福島第一原理力発電所の3月11日発表(これ) は次の様なことを伝えている。

  • ・・・福島第一原子力発電所1号機、2号機および3号機は、午後2時 46 分頃に宮城県沖地震により、原子炉が自動停止。
  • 外部電源が確保できない状態となり、非常用ディーゼル発電機が自動起動。
  • 午後3時 41 分、非常用ディーゼル発電機が故障停止し、これにより1、2および3号機の全ての交流電源が喪失、午後3時 42 分に原子力災害対策特別措置法第 10 条第1項の規定に基づく特定事象が発生したと判断し、第1次緊急時態勢を発令するとともに、同項に基づき経済産業大臣、福島県知事、大熊町長および双葉町長ならびに関係行政機関へ通報した。 今後、非常用ディーゼル発電機が停止した原因等を調査し復旧に取り組む。
  •  1号機および2号機の非常用炉心冷却装置について、午後4時36分に、原子力災害対策特別措置法第15条第1項の規定に基づく特定事象が発生したと判断し、経済産業大臣、福島県知事、大熊町長および双葉町長ならびに関係行政機関へ通報(1号機については第15条第1項を一旦解除したが、再度午後5時7分に適用)

次の文章は国会事故調報告書143ページからの抜粋です。

地震発生から約50分後に来襲した津波によって、多くの非常用ディーゼル発電機や冷却用海水ポンプ、所内配電系統設備、直流電源設備等が浸水した。
以上の結果、1、2、4号機では全電源を、3、5号機では全交流電源を喪失するに至った。さらに、3号機も3月13日2時42分には直流電源が枯渇し、全電源を喪失した。

1) 事故の深刻さ

福島第一原発は地震と津波で大きな被害を受けたが、直流電源(バッテリー電源)を失ったことは、致命傷だった。原発とは、原子炉の中に運転中に人は入れない。温度、水位、圧力等の計器を現場で見れない。電線や途中の中継器を伝わってきた信号が運転室・制御室の計器に表示・記録される。更に一部の重要な機器(例えばバルブ)は、複数の手段で操作が行えるようになっている。直流電源も喪失した事の意味は、お手上げ状態になったことと等しい。

福島第一原発の原子炉の核分裂の継続は停止することができた。その意味では最悪の事態の回避は地震直後の14:46に達成した。残るは、核分裂の結果蓄積されている放射性物質の崩壊熱の除去を続けることである。核分裂もそうであるが、崩壊熱も空気なしの密閉状態で発生するので、冷やされていないと温度は天井知らず。2000°C以上にもなるし、核燃料まで融解してデブリとなっているので3000°C以上にもなったのではと思う。また、水素爆発の水素も高温金属が水と反応して発生したのである。

私は今でも思っているのがが、自衛隊を何故災害派遣により、福島第一原発へバッテリーや電源車を運搬することと福島第一原発の最低限度の作業エリアの津波・地震がれき撤去をしなかったのかと残念である。1号機水素爆発の発生までは、放射線量も高くはなかった。

参考まで、国会事故調報告書の同じ143ページには次の様にある。

電源喪失によって、適時かつ実効的な原子炉冷却も著しく困難になっていた。なぜなら、原子炉冷却、すなわち、高圧注水や原子炉減圧、低圧注水、格納容器冷却又は減圧、最終ヒートシンクへの崩壊熱除去といった、冷温停止へ向けた各ステップの実行とその成否は、電源の存
在に強く依存しているためである。また、前述した発電所構内のアクセス性の悪化は、消防車による代替注水や電源車による仮設電源、格納容器ベントのライン構成及びそれらの継続的な運用において、大きな障害になった。

2) 関係者の義務

当時、政府の原子力災害対策本部長であった首相は3月12日に福島第一原発にヘリコプターで自ら飛んでいくという必要性・有効性を考えるのではなく大衆アピール性を考える人であったし、当時の与党は「政治主導」と言って、役人の言うことを聞かない人達であった。不幸な時代であったと思う。今年も国会議員選挙があるが、投票基準は「政権交代」であってはならない。本質的な「国民のために働く人を選ぶ」を基準にすべきである。

さて、最近公務員の辞職が相次いでいる。本当は、「政治主導」と言っていたバカ内閣での公務員だって、事業仕分けと言ってつるし上げられていた公務員だって、自ら正しいと思うことは、国民のためなら自らの主張を通すべきである。 結果、冷や飯を食わされるかも知れないし、辞職に追い込まれることになるかも知れない。公務員は、憲法12条2項を貫いて、自らの職務において国民に奉仕する者であるべき。

なお、東京電力で原子力に関係した人も同じである。例えば、非常用ディーゼル発電機を地下以外に敷地内の屋外に増設しておけなかったか、或いは電源車をスタンドバイとして敷地内に置いておけなかったか。福島第一原発は、当時としては米GEの設計指針に依存せざるを得ず、津波には弱い面があるレイアウトとなっていたと私は思う。しかし、途中改造は東京電力がすれば良いのであり、どのような検討がなされていたか私は興味がある。

吉田調書には「官邸のバカヤロ」てきな発言があるが、官邸と東京電力との間はどうだったのだろうか?電力会社でも人により政府に頭が上がらない人もいるし、その逆もいる。しかし、福島第一原発事故のような場合には、電力会社としても、これは実現して欲しいということもあると思う。会社を辞める事になっても良い。

3) 危険な原発だからこそ

原発は危険である。だからこそ、運転するなら、廃炉をするなら、廃棄物処理をするなら、危険性を考えて業務・仕事をして欲しい。

原発は危険であると述べた。しかし、考えれば多くの側面を持っている。原爆であり、水爆の元である。原発無くして、原爆無し。核保有国は皆原発を持っている。原発はCO2を発生しないと言うが、厳密には核分裂に酸素も炭素も必要ないのでCO2とは無関係。しかし、建設やウラン採掘、運搬、保守の時には化石燃料を使っている。CO2もリスクであるが、放射性廃棄物もリスクである。核分裂がCO2を出さないとして優れていると単純には言えない。

やはり、様々なことを考えざるを得ないようです。

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2021年3月11日 (木)

福島原発事故から10年の教訓 (2) 責任問題

2021年2月19日国と東電双方に賠償を命じる判決が東京高裁であった。(参考 日経記事

国の責任と言った場合、国とは何であるのかも考える必要がある。国家賠償法の国とは政府のことである。しかし、政府に故意や過失はない。故意や過失は、人間が犯すものであり、国家賠償法では「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたとき」となっている。 しかし、これは政府と地方自治体のみにあてはまるのではない。民間企業でも同じであり、意思を持ち、判断するのは人間である。損害賠償に関しては、政府や企業をして賠償金を支払わせる必要がある。しかし、事故の原因究明・再発防止・調査/研究にあたっては真摯な取り組みが求められる。

1) 原発は危険であることが顧みられなかった

直前のブログで原発とは危険なものであることを書いた。 ところが、多くの人達は原発の安全性を信じていた。 信じてはいなくとも、危険であると声高に主張することは、はばかれた。関係者の多くは、5重の壁とか5重の安全性と主張し、素人からの批判を相手にしなかった。原発専門家とは、原発があることにより仕事や職を得ている人であり、そうである限りは批判は困難であった。政治家も全く同じ。

ローマクラブが「成長の限界」と言う報告書を出したのが1972年であり、地球上の資源の有限性を警告した。1973年末近くから第1次オイルショックが始まり、原油価格は3年後の1975年末には3倍以上となった。原子力が脚光を浴びて当然であり、燃料資源の輸入国である日本にとって原子力が重点施策となるのは当然のことであった。発電に関しては、国産エネルギーである水力は、当時既に可能なポテンシャルの大部分は開発済みであった。原子力は、コスト面からは燃料費の割合は低く、建設やメンテナンスで国内企業に発注される割合は大きい。

世の中の流れに警告を発することは容易ではない。しかし、誰かが危険性・安全性リスクに関して強い警告を発していても良かったのではと思う。

2) 津波

津波の予見可能性と対策に関しては、裁判で論点になっている(参考:福島民有新聞 2020年5月11日記事 )。2002年の地震調査研究推進本部の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」という報告書はこれ と理解するが、この報告書で大津波を予見することができ、津波対策を取る責任があったとまで言えるのか、読んでみて私は相当疑問に思った。

原発は危険である。従い、津波対策は万全でなくてはならないとことは明白である。では、福島第一原発1-4号機の場合に何メートルの津波を想定すべきかは、答えられない。国策として原発を推進しているなら、国の機関として津波の基準を定め、各原発の津波対策を評価して合格・不合格を判断すべきである。電力会社による独自判断で対応させ、失敗すれば所有・運転している電力会社であるという論理構成は無責任と考える。

3) 原発実施者

1955年に原子力基本法が制定され、日本の原子力・原発は、この法律により実施されている。原子力利用に関する政策は内閣府の原子力委員会が企画し、審議、決定することとなっている。

原発を保有・運転しているのは上場会社である民間企業である。私は、これに違和感を感じざるを得ないのである。上場会社は利益を追求せねばならない。上場会社は株式会社であり、意思決定機関を構成する取締役等の任期は2年とかであり短期である。そんな組織が計画から運転まで10年。運転期間50年。廃炉何10年。廃棄物処理100年以上といったような長期の業務を果たすのにふさわしい組織とは思えないのである。核燃料サイクルまで考えれば、300年-1000年と言った期間ではと思ってしまう。そして、取りかかったら、止められないのである。止められない例が、電源開発の大間原発だろうと思う。

日本の原発を今直ちに運転を止めても、今後100年以上見守る必要がある。企業で言えば、収入がないのに、支出が100年以上続くのである。特別な法律を制定し、特殊法人を設立して、問題の無い原発体制を構築する以外に方法はないだろうと思う。逆の言い方をすれば、現在日本で原子力発電所を保有している北海道電力、東北電力、東京電力ホールディングス、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、日本原子力発電、電源開発の11社が原発事業を譲渡して合理的な原発事業を実施できる特殊法人を作ればよいのだろうと思う。なお、原発事業とは発電事業のみを意味するのではない。原発の廃炉事業や廃棄物処理事業も極めて重要な事業である。

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2021年3月 9日 (火)

福島原発事故から10年の教訓(1)

2011年3月11日の東日本大震災の日から10年になろうとしている。東日本大震災の災害・事故で忘れられないことは、東京電力福島第一発電所の津波被害とそれにより引き起こされた放射性物質の拡散・汚染事故である。東電の責任 である。同時に、国の責任であるとしたところで、将来に向けて、我々は何をすべきかが見えてこないと考える。やはり、事故から10年を機会に根本問題を考えてみたいと思う。

1)原子力発電所(原子炉)は、安全か

このそもそもの問に答えるのが第一歩である。そして、その答えは、「原発は危険」となる。例えば、原子炉の最高温度はATOMICAにあるこの表 によれば柏崎刈羽原子力発電所の場合、1710°Cの超高温となっている。PWRの場合は、燃料最高温度を二酸化ウランの溶融点2800°C未満にすると言うことであり、他の原発原子炉でも同じような温度だと思う。原子炉の熱はウラン235が核分裂する際に発生する熱(エネルギー)を蒸気で取り出して蒸気タービンで発電機を駆動して電力を得る。熱は核分裂から発生するが、燃料たるウラン235は運転中の原子炉内にあり、ウラン235の核分裂を制御することにより運転するべき出力(発電)を得る。そして、このウラン235の核分裂とは熱(エネルギー)を発生し、同時に放射性物質を生み出す。(参考: 原子核分裂核分裂でできた物質の片割れはどこに?核分裂原子炉内の生成物 ) 1kgのウラン235 は、核分裂により1kgの他の物質(核分裂生成物)が生まれ、これらは放射線を出す放射性物質である。ちなみに、100万kWの原発を1年間運転したとすると、補充する必要があるウラン235は約1,200kgであり、5%濃縮ウランだと核燃料ベースで24トンの取り替えである。ウラン235 が核分裂生成物になるのであるが、核分裂生成物を燃料棒の内部に完全に閉じ込めることは無理である。5重の壁とか5重の安全性を備えているとしても100%安全にはならない。

2)100%安全の誤解(神話)

福島原発事故を生んだ大きな要因の一つが安全神話(信仰)であったと考える。神話や信仰などと言う言葉は使いたくない。人間は神をつくってはいけない。人間は謙虚であるべきです。真実を見つめ、真実を謙虚に受け止め、努力することが重要です。福島事故の教訓がもたらしたことに、原発近辺の住民避難計画・訓練がある。福島事故以前に誰も言い出せなかった。考えた人はいたと思うが、関係者は口にできなかった。

原発近辺の住民が原発の立地を受け入れていただいていることにより、我々は原発で発電した電気を使える。使うことができた。そう考えたなら、原発近辺の人々が非難するために利用できる高速道路やバス等の輸送手段を受益者の負担により整備することも当然のことのように思える。

今回は、ここまでとします。言いたいことは多くあり、できる限り続けようと思います。

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2021年1月30日 (土)

電力市場に政治は介入してはならない

1月12日のこのブログ に20倍の高値取引を書いたのですが、電力市場に、政治が介入するようなニュースがありましたので。

1月29日NHK「新電力」の料金高騰懸念で支援策 梶山経産相

新電力から電力供給を受けているユーザーで市場価格連動性となっている契約を結んでおられる方もいる。どの程度の数なのかは、企業秘密として公開されていない。しかし、そのようなユーザーでも、電気供給を受けられなくなることはない。何故なら、電線でユーザーにつないで電力供給を行っているのは、新電力ではなく、一般送配電事業者10社です。

電力消費が予想より増加すれば、増加分の火力発電の燃料を追加調達しなければならない。水力は、降雨量が発電量を決めるのであり、太陽光も日照と設備なので、需要への応答はできない。LNGを新たに調達と言っても、長期契約での取引が多いこと、輸送には専用のLNGタンカーが必要であること、そして貯蔵にはLNGタンクが必要である。しかし、それでもLNGの調達は必要であるので、スポット物を購入せざるを得ない。その結果が、次のニュースです。

1月25日 Gas to Power Journal : Japanese utilities buy expensive spot LNG as they need to restock

全文は読めないが、東北電力と九州電力は2月末頃渡しのLNGを百万BTUあたり35ドル-40ドルと言う高値で購入しているようであると報じている。長期契約で10ドルのLNGなのです。東北電力と九州電力の2社だけではないはず。LNGを高値でも購入して、供給義務を果たすことに尽力する企業を賞賛してよいと思います。

1月12日時点ではkWhあたり200円と言ったすごい電力取引所の価格だったのですが、今週になって下がり初め、1月29日は8円程度に落ち着いてきました。需要と供給、それと取引価格は冷静に考えるべきであり、政治が介入することは避けるべきです。

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2021年1月12日 (火)

20倍の高値取引

1年前と比べて20倍に高騰したと聞くと、そんな商品があるのかとなる。しかし、本当にある。電力です。この1月10日の日経記事 のように電力需給の逼迫していることが報道されている。電力は、不足すると、不安定現象が生じて事故が起こる。これを避けるには、どこかを供給停止して需給バランスを保ち安定を確保する。どこかの供給停止とは、その供給先が停電となることである。普通の商品よりややこしい物である。

供給が不足する事態となっているわけであり、当然価格は上がる。日本卸電力取引所なる取引所で卸電力の売買が実施されており、日本卸電力取引所の 2021年1月12日の価格は次表の通りであり、1年前の1月12日の価格の20倍である。

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13時や13時30分からの時間帯では1年前の30倍の価格である。もし、遊休自家発電設備があれば、運転し高値で電力を販売できるチャンスである。なければ、工場を臨時休業とし使用するはずであった電力に相当する分を電力会社にお返しする、即ち逆販売してがっぽり稼ぐチャンスである。電力自由化前は、このようなことは出来なかったが、今は自由である。ユーザーで日本卸電力取引所で取引できる企業は少ないが、電力会社は自由化電力会社を含めすべて取引可能である。ユーザーは、自分が契約している電力会社を通じてとなるが、交渉は可能である。

電力自由化により小売り電力事業に参加した企業は多い。そのような電力小売り企業で自社発電所をほとんど保有しておらず、日本卸電力取引所から調達した電力を販売している企業も多い。販売先開拓の際は、大手電力会社より安い価格ですとして販売先を開拓してきている。契約中でも、高ければ旧一般電力会社に戻る。さあ、現在どうしているのだろうか?20倍になった仕入れ価格で、どう事業を展開しているのだろうか?一過性のものと思う。電力供給事業なんて気楽な事業と思って、今まで楽して金儲けしていた連中はどうするのだろうか?なお、新電力から電気を購入する契約をしていても安定的な電力供給義務は送配電事業者(旧電力会社)にあり、ユーザーは心配することはない。しかし、新電力が供給すべきであった電力量は送配電事業者が把握することができる。自社供給できなかった電力については20倍になった価格を電力会社は支払わねばならない。

実際の受給状況と言っても、電力は貯蔵されないので、供給力と需要状況になるが、参考として中国電力のWeb上のでんき予報の2021年1月11日のグラフを参考に掲げる。

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2019年10月30日 (水)

原子力発電についてはまじめに考えるべき

次の朝日新聞の記事を読むと、東京電力が日本原電にお金を払うのは間違いだと読んでしまう。

朝日新聞 10月28日 安全対策で割高懸念の原電 それでも電力会社が支える訳 (全文を読むには有料記事となっている。)

日本原電の株主構成は次の通りです。

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特殊な会社です。一方、この会社の販売先は、東京電力エナジーパートナー、関西電力、中部電力、東北電力、北陸電力と東京電力パワーグリッドの6社です。東海(1,100MW)と敦賀(1,160MW)の2つの原子力発電を保有している。しかし、2011年度に休止して以後は休止状態が継続しており発電していない。しかし、2019年度の売上高は109,130百万円であり、その内訳は次の通りである。

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原子力発電所とは、発電をしなくても金が掛かるやっかいな物である。かと言って、放っておいて済む物でもない。休止した状態でも放射性物質が大量に存在する。厄介者のおもりを誰がするかと言えば、所有者しかいない。この所有者日本原電が頼れるのは、株主と電力販売の契約がある相手先しかいない。

困ったことである。でも、日本の原子力発電の政策のツケが出ているだけの話である。ここで、東京電力に手を引けと言ったらまさに無責任発言である。日本の原子力発電政策が見える実例でもある。民主党という政党が政権を得る直前の2009年7月の政策集がここ にある。その39ページの右上に「原子力利用については、安全を第一としつつ、エネルギーの安定供給の観点もふまえ、国民の理解と信頼を得ながら着実に取り組みます。」と書いていある。原発に対する当時の代表的・模範的意見だと思う。現在は、どうなのだろうか、廃炉・使用済み核燃料問題・プルトニウム問題・核兵器転用問題・廃棄物処理問題等を含め、国民的議論が必要であると考える。

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