2016年12月29日 (木)

やはり話題は年末も東芝だった

一旦踏みはずれると、どんどんと行ってしまう。そう思えてしまう東芝の数千億円損失事件です。

東芝プレスリリース 12月27日 CB&Iの米国子会社買収に伴うのれん及び損失計上の可能性について

日経 12月28日 東芝に厳しい視線「減損3000億円規模」の見方も 

東芝の2016年9月30日における株主資本合計は3632億円なので、2017年3月末には債務超過に近くになるかもと予想される。

株価チャートを見ると次の通りである。

Toshiba201612aToshiba201612b

株価は奈落の底へと向かっている雰囲気もある。

何が原因なのだろうと考えると、やはり原子力に対する過度の投資判断と考える。原子力はCO2排出がなく、コントロールがうまくできれば、低コストでクリーンなエネルギーが得られる。そして、コントロールの部分こそ、技術であり、東芝はこの技術に賭けたと言える。WHとは原子力潜水艦の動力を原子力に置き換える事に成功した会社である。

原子力をコントロールすると言葉で言うのは簡単である。しかし、技術とは人間があみだしたものである。神ではない故、不完全である。ビジネス用語で言うなら、リスクがある。しかも、原子力に関するリスクは確立を低くする事ができても、ゼロにはできず、発生すると損害額・被害額・賠償額は膨大である。

もう一つの観点は米国社会である。米国社会では、責任者・原因者の損害賠償・現状復帰義務をとことんまで追究する。そして、そのような責任や義務についての仕組みが社会を発展させる原動力になっていると考える。だから、スリーマイル島事故後には、全ての新規原発建設が中止となった。Too Large Risksであると、事業者が中止を決定したのである。日本は、社会主義国であるようで、役人と政治家が密室で原発推進を決定し、それを上場企業である電力会社に建設させ運転させる。そして事故発生の全責任は電力会社であるとの法律までつくる。免責が保証された日本の原発市場でビジネスをしてきた東芝が米国や世界でビジネスをできるとは思えない。ところが、日本のビジネス感覚で世界に、こともあろうか、原発で出て行った。

CB&Iであるが、東芝が興味を持ったのはStone&Webster(SW)である。SWは、Engineering会社であり、ゼネコンである。WHとSWが東芝の傘の下で、米国で原発の設計・機器供給から建設まで全てできる。このことの付加価値を東芝はねらった。しかし、現実は甘くはない。SWも技術者がいて価値がある。技術者が離散すれば、価値ゼロである。一方、仕事もなく、原子力技術者に高給を払い続ける事は難しい。CB&Iが、更に東芝の足を引っ張る可能性もある。

2016年8月29日の日経ビジネスの有料記事であるが、原発失敗が生んだ負の連鎖 東芝、1兆円リスクの震源地(記事はここ)があった。フリーポートLNGプロジェクトに嵌っていると言うのだ。米国のLNG事業は、日本とは全く異なるビジネスであり、プロジェクトである。この2016年8月15日の電気新聞の記事も東芝がフリーポートLNGを年間220万トン引き取る約束をしていると報道している。220万トンとは、金額では1000億円規模である。これが、半額になったり、3倍ぐらいの価格になったりと激しい値動きをするのである。日経ビジネスの1兆円リスクと言うのもデマとして片付けられないのような内容である。

これから東芝は、どうなるのだろうかと思う。

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2016年3月 7日 (月)

水素エネルギー供給の一大生産地なんてあるの?

東日本大震災から5年目となるが、水素エネルギーってエネルギーの主役になるには、ほど遠いと思うのだが、首相は3月5日に福島県を訪問し、視察後『福島を、日本中に水素エネルギーを供給する一大生産地に、未来の水素社会を開く先駆けの地としていきたいと考えています。』なんて述べた。スピーチ文は、次の首相官邸のWebにある。

平成28年3月5日 福島県下訪問

水素は、宇宙全体では多く存在し、星間ガスや銀河間ガスの主成分(密度は低い)であるが、地球上にも水素単体としては大気中にも存在する。しかし、容積比でたったの0.00005%(0.5ppm)であり重量比だとその15分の1程度となる。多くの水素は酸素と結合した水の状態や動植物あるいは化石燃料として存在する重要な物質であり、人が生きていくための貴重な物である。

0.00005%の物質を抽出するのは大変であり、相当のエネルギーを必要とする。例えば、メタンはCH4なので元素の数では4分の3が水素であり、重量比でも25%が水素である。しかし、メタンから水素を分離するのもエネルギーを必要とするわけで、水素をエネルギー源として使用する目的なら、メタンをそのままエネルギーとして利用した方が大きなエネルギーが得られる。貯蔵にも輸送にもメタンの方が容易でコストも安いし、安全である。メタン以外に石油も考えられるが、これとて同じで水素を経由せずに直接エネルギーとして利用した方が、効率も良く、優れている。

では、CO2排出の面ではと言うと、これもメタンや石油の状態で利用した方が、CO2排出量が少ない。水素はクリーン・エネルギーと言うが、水素製造時に発生するCO2排出を無視した場合である。

この読売の記事 3月5日は、首相のスピーチを報道しており、『風力など再生可能エネルギーで水を電気分解すれば、CO2削減につながる。』としているが、当然のことであるが、電気分解で消費する電気エネルギーと製造された水素のエネルギーを比較すると、製造されたエネルギーの方が小さい。再生可能エネルギーによる電力は、そのまま利用した方が賢いのである。従い、再生可能エネぎーが相当に安く、消費できないほど発生した時に、水素でも製造して蓄えておくというような使い方になる。

なお、車のエンジンはそれほどエネルギー効率が高いわけではない。それ故に電気自動車が注目されるのであり、水素自動車も水素電池の方が車のエンジンよりは効率がよいので、総合効率・コストでは水素自動車が有利になる可能性は将来においてはある。

水素エネルギーの研究や技術開発は進めるべきと考えるが、水素エネルギー供給の一大生産地というのは、あまりにも現実を無視した虚構発想と考える。

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2015年5月10日 (日)

九州電力の再生可能エネルギー発電設備の出力制御実施

九州電力が、種子島で再生可能エネルギー発電設備の出力制御(制限)を5月5日に実施したとのニュースがあった。発表した。

日経 5月7日 九電、種子島で再生エネ発電の出力制限実施 5日、全国で初

出力制御(制限)の実施は全国の電力会社で初めてと報じられており、出力制御(制限)はどのようなことであり、何故実施されたか、また将来日本各地に広がるのかを考えてみたいと思います。

1) 九州電力の発表

九州電力の発表はここにあり、9時から16時まで1.0MWの出力制御を実施したとあります。

2) 九州電力の説明

九州電力は4月28日にこの発表をしており、添付されているこの説明に必要性等が書かれている。その4ページに5月3日の需要予想が書かれており、昼間は15MW程度と予想されており、ピークは19時頃に22.5MW程度になる見込みとのこと。

種子島は、九州本土や他の島とは送電線でつながっておらず、島内において発電と消費が完結している。種子島の発電設備は、説明5ページにあり、ディーゼル発電が合計で9基40.5MWと太陽光発電10.739MW及び風力0.66MWの合計11.399MWの再生可能エネルギー発電設備があり、発電設備合計では51.9MWである。これに加えて、蓄電池3MWが存在する。

太陽光発電及び風力発電は、出力変動が激しい発電設備であり、運転には太陽光発電や風力発電の出力変動を吸収する仕組みが必要である。この吸収する役割を担っているのがディーゼル発電と蓄電池である。4ページの図にあるように九州電力は昼間の電力供給を6MWディーゼル2基と3MWディーゼル1基を50%出力で運転しディーゼルで7.5MWを確保し、15MWの需要であれば、7.5MWが太陽光と風力になる。この太陽光と風力の7.5MWが変動しても、ディーゼルを最大出力にすれば7.5MWを生み出せるとの計画である。ディーゼルのガバナーによるコントロールであるが、応答特性を補完する目的で、蓄電池も設置し、周波数安定を含め万全を期している。それでも1.0MW分の太陽光は出力制御せざるを得なかった。

3) 日本各地に広まるのか?

種子島については、太陽光と風力の割合を50%以内とし、50%を越える場合や、通常以上の変動が予想される場合は、再生可能エネルギー発電設備の出力制御をするというのが九州電力の方針と理解する。なお、出力変動を吸収できなかった場合は、どうなるかというと、九州電力は需給バランスの確保が困難と表現していますが、別の言葉で言うと、停電です。しかも、種子島全島停電もあり得る。発生すると、予期せぬ通知なしの停電であり、場合によっては大変です。

では九州本土や他の電力会社の場合はと言うと、その話の前に、種子島で対応能力が高いことが一つ認識しておく必要がある。それは、出力変動を自らが行って電力系統の安定に貢献する能力が高いディーゼル発電が電源設備の主体であることです。一方、そのような能力が全くないのが、原発です。次いで石炭火力も、短時間の出力変動への対応は能力が低いのです。逆に出力変動能力が非常に高いのが水力です。北海道、本州、四国、九州は水力があり、揚水発電も上池に水があれば、一般水力と全く同じです。

なお、送電線容量により制約を受けることもあり、実際に太陽光と風力が何パーセントになった時に出力制御をせざるを得なくなるのかは、シミュレーション等を実施しないとならない。しかし、太陽光と風力がある限界以上になった時には、出力制御をせざるを得なくなるのは確かです。

でも考えれば、電力供給において、出力制御は当然のことです。原子力以外は、皆やっているのですから。再生可能エネルギーの中でも、大規模水力は出力制御が、その中心的役割とも言える面がある。

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2015年5月 2日 (土)

将来の電力コストと電源構成

将来の電力コストと電源構成はと、問われたならば、そんな難しいことは私には分かりませんと答えるのが、この問題に対する正解であると考える。

しかるに、経済産業省は原子力発電比率を20~22%とし、原子力が発電として最も安いコストとする報告を出したとのマスコミ報道が多くある。例えば、次のような報道である。

日経 4月28日 原発比率、30年に20~22% 電源構成案を公表 経産省、再生エネは倍増

読売 4月28日 発電コスト、最安は原子力…経産省が試算示す

どの報道も同じような内容であり、他の報道は省略する。なお、問題はそもそも論にある。すなわち、日本の電力供給は計画経済・統制経済ではないことである。それなのに何故という疑問である。

役所がすべき仕事は、統計を整備し発表し、国民と産業に必要な電力が供給されるようにルールを整備する案を考えることである。この点を含めて本問題は考える必要がある。その為には、マスコミ報道ではなく、直接に経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会と発電コスト検証ワーキンググループの資料を読む必要がある。双方共経産省のこのWebからダウンロードが可能である。その中で、マスコミ報道の元となっている4月28日資料の長期エネルギー需給見通し 骨子(案)はここにあり、4月27日の長期エネルギー需給見通し小委員会に対する 発電コスト等の検証に関する報告(案)はここにある。

資料は、報告書の体裁ではなくプレゼンペーパーの体裁であり、論理が明確ではなく、羅列状態である。当面は討議資料としてしか読むことができないが、計画経済ではないから、将来の電源構成を決めることは役所の仕事ではなく企業競争の結果である。しかし、一方で業界を意図的にリードしたいのだと読めてしまう気もする。国民としては、一つの参考資料である。豊かな日本を作るために、自らの意見を述べることが正しいと考える。

ちなみに、原子力について、経産省プレゼンペーパーは何と言っているかを参考として以下に記載する。

原子力発電コスト10.1円/kWhは本当か?

「各電源の諸元一覧」とするこれが全ての電源のコスト計算の前提となっている。原子力については稼働率を60%、70%、80%の3通りで実施したとあるが、10.1円が計算された根拠が結局は不明である。稼働率により原子力発電コストは、大きく変動するのである。次の表は、日本原電を含む原子力発電10社の原子力発電とコストの実績である。

Nuclear20155

今回のコスト予想計算は、10.1円であり、安全対策費等を見込んだ結果、2010年度の6.47円より高くなっており、妥当と思える。しかし、その2010年度でさえ稼働率は66.5%であった。即ち、60%、70%、80%の3通りは、いかなる根拠で選ばれたのか不明であり、希望数字を書いたと思える。

従来から原発は無事故を大前提とし、需要追従の運転はせず、常時設計出力で運転し、異常があれば停止する運転をしていた。定期点検でも徹底的に検査をし、稼働率を上げることよりも安全確保を最優先で管理していた。今後、運転する場合は、従来よりも更に一層の安全を目指すのである。そう考えると、70%、80%の稼働率はキチガイである。10.1円が稼働率80%の場合とするなら、40%となった場合は、20.2円である。そうなると石油火力や太陽光と風力に次いで高コスト電源となる。

原子力発電は、大リスクの塊である。従い、原子力依存度は可能な限り低くしておくのが、経済的に最も有利な選択であると考える。

実は、10.1円だって、80%の稼働率が実現できたとしても、そもそも不確実な数字である。核燃料再処理費が0.5円で高レベル廃棄物費用が0.04円としているが、六ヶ所村再処理工場の見通しも「もんじゅ」の見通しもないのに費用が計算しており摩訶不思議なのである。低レベルの除染廃棄物の処理場で困っているのに、どうして0.04円で高レベル廃棄物を処理できるのか、鬼が笑う以上のばかげた計算と思える。

数字には、前提や仮定がつきものである。考える際の一つの参考であり、また前提や仮定を別の数字に変化させて様々なことを考える必要がある。ビジネスとは数字は変化することを前提に考えねばならず、電力供給も一つのビジネスである。

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2015年1月 7日 (水)

トヨタは何故燃料電池関連の特許実施権を無償提供するのか

すこし驚くような発表をトヨタが行った。

日経 1月6日 燃料電池車、トヨタ「陣営」作り 特許無償公開

トヨタの発表は次の所にある。

1月6日 発表 トヨタ自動車、燃料電池関連の特許実施権を無償で提供

トヨタは、燃料電池自動車(FCV)の普及に向けた取り組みの一環として、約5,680件の燃料電池関連の特許(審査継続中を含む)の実施権を無償で提供すると発表している。企業が保有している特許実施権を他社が使用することについて、使用料の支払いを求めないということで、英語のNews Release(こちら)には”royalty free”との言葉がある。完全な無条件とはしておらず、英語のNews Releaseでは”Companies interested in Toyota’s fuel cell-related patents will negotiate individual contracts with Toyota.  Additional details, including licensing terms and application process, are available upon request.”との文章が最後にある。

それでも、何故なのか、考えてみた。

1) 燃料電池自動車(FCV)の欠点の多さ

将来はいざ知らず、現時点においては、やはり欠点は多いのである。車体価格がトヨタのMIRAIは消費税込み7,236,000円である。プリウスの2,232000円と比べると、3倍以上の価格である。乗車定員は後部座席が2名のため運転手を入れて4名。車のサイズは、全長 4,890mm × 全幅 1,815mm × 全高 1,535mmであり、プリウスの 4,480mm ×1,745mm × 1,490mmより、全ての面で図体がでかい。価格が高く、図体でかく、乗車定員は少ない。

燃費は、MIRAIの一充填走行距離(参考値)が約650kmで、水素タンク内の圧力10MPaからの充填とのことであり、タンク内容積122.4Lを65MPaまで充填したとすると、水素量は約6kgである。kg当たり1100円とすると6600円である。即ちkm当たり10.1円である。プリウスの燃料消費量をL当たり30.4kmとすると、ガソリン150円でkm当たり5円、ガソリン200円でkm当たり6.6円である。仮に、一般的な車の燃費としてL当たり20kmとするとガソリン150円で7.5円である。

燃費性能が悪く、その上車体価格は3倍以上で、燃料補給ステーションは限られている。そして、5人乗車ができない。趣味で買うとしても、一般の人にはお勧めできない。将来の夢であり、その頃には、軽自動車は、もっと進化しているかも知れない。ハイブリッドも電気自動車もディーゼル車も、進化しているはずである。

2) 環境性能は決して良くない

トヨタのWebには、FCVのCO2指数はハイブリッド車の600に対して500であり、20%優れていると記載がある。

私が把握している天然ガス水蒸気改質法のCO2排出量は80g-CO2/MJ程度である。FCVが6kgで650km走行するとする前提でkm当たりのCO2排出量を計算するとkm当たり105gとなる。一方、プリウスのガソリン消費量をL当たり30.4kmとすると、CO2排出量はkm当たり76gである。L当たり20kmの車のCO2排出量は、115gと計算されるので、FCVのCO2性能はごく普通の自動車並である。

トヨタの嘘つきとまで言わないが、トリッキーであるとは言わせて貰う。前提条件を記載しないのは、犯罪行為であると。なお、天然ガス水蒸気改質法による水素製造は、現状で最も安く水素製造を行える方法である。工場から自然漏出している水素があるなら、それはCO2排出ゼロと言えるが、それでもしっくりとはしない。なお、再生可能エネルギーで発電して電気分解により水素をCO2排出なしで入手する方法はあるが、洋上風力に可能性があるとしても、ほど遠い話である。

3) 道路財源

中央高速天井板落下事故ではないが、老朽化している橋梁があるし、道路はメンテナンスを必要とし、道路の改良や新設も必要である。現在ガソリンには1L当たり48.6円の揮発油税が課せられている。プリウスの燃費で考えれば、km当たり1.6円の道路負担費用を払っている事になる。

FCVの車体重量はMIRAIで2,070kgであり、プリウスの1,675kgより重いのである。応分の負担としてMIRAIにもkm当たり1.6円の道路負担費用を払っていただくことにすると、水素1kg当たり173円の道路水素税を課さねばならない。1回に水素6kgを充填する場合は、1,040円の税である。

日本では現状水素は無税である。しかし、FCVの台数が増加すると、放置できない。ヨーロッパは、どうするであろうか?FCVの推進策を採用しないなら、応分の道路税負担が当然である。米国では、そもそもガソリンに対する道路税が存在しないので、燃料費の観点で、初めからFCVは対象外と思う。

4) トヨタの策略

ここまで書くと、私にとっては、FCVの販売は当面見込めないとの結論に達してしまった。販売が見込め、他メーカもFCVに乗り出すなら、特許使用料で収入が期待できる。しかし、製品の市場販売の見通しが暗ければ、研究開発費を支出しただけである。相当先の技術なら、その時点で皆は、どの技術を採用するか考える。或いは、その頃には、他社が新規技術で更に有効・有用な技術を開発しているかも知れない。

このように考えると、トヨタの考え方について私なりに納得がいった。FCVが今後どうなるか興味深く見つめたい。なお、技術開発を全ての会社は推進すべきである。トヨタのFCVが今後どうなるか分からないが、技術開発がトヨタに残したものは大きいと思う。

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2014年12月22日 (月)

大間原発で問われるもの

日経が12月21日の社説で「大間原発審査で問われるもの 」と題する社説を掲載していた。

日経 12月21日 社説 大間原発審査で問われるもの

私としては、単に原発審査ではなく、大間原発に関して問われるべき事項を書いてみたい。

1) 利益とリスク(狭義)

本来は、原発の利益とリスクを問わねばならないが、この項ではシンプルに電力に関する利益とリスクについて考える。多くの人は、発電会社である電源開発(株):Jパワーであると考えると思う。しかし、それほど単純ではない。

日本における電力自由化が一般家庭についても適用されるのが2016年5月の予定であり、この時に現在の一般電気事業者、卸電気事業者、PPSの区分はなくなり、小売電気事業者、送配電事業者(厳密には一般、送電、特定の3区分)と発電事業者の区分となる。

Jパワーは、2016年5月の自由化前までは卸電気事業者であり、卸電気事業者に該当するのは、Jパワーと日本原子力発電である。Jパワーも日本原子力発電も卸電気事業では、10電力である一般電気事業者に卸売りをしている。その卸売り販売の方法は、長期契約であり、コストプラスフィーのような形である。だからこそ、Jパワーの電力卸販売平均価格は2014年3月期でkWhあたり8.08円である。

大間原発の電力卸販売契約は、どのようになっているのであろうか?私も知らない。しかし、同じ卸電気事業者で原発の電力を卸売りしている日本原子力発電と同じとすると、考えてしまう。次の表が、日本原子力発電の売上・利益である。

Japc201412a

原子力発電とはほとんどが固定費であるため、コストプラスフィーのような販売の場合には、このように利益は少額かも知れないが安定的なビジネスが生まれる。Jパワーの大間原発も、日本原子力発電と同じような電力卸販売契約が既に締結済みであると思うのである。その場合は、大間原発が反対運動により稼働しなくても、Jパワーは一定の利益を確保し、一方で一般電気事業者と消費者は電気料金で大間原発分の高い電気料金を支払うこととなる。

2016年5月の自由化以後は、10電力の一般電気事業者は一般送配電事業者となる。おそらく、原発の電力引き取り義務が一般送配電事業者に行くと思うのだが、いずれにせよ単純にJパワーの責任とリスクにはならないと思う。大間原発のリスクは国民であることを認識して判断をする必要がある。大間原発の電力販売契約は公開すべきと考える。

2) 大間原発は未だ核燃料未装荷

大間原発は未だ核燃料は装荷されていない。従い、今なら、ただの鉄とコンクリートであり、廃棄簡単である。しかし、一旦核燃料が装荷されたなら、放射性物質を含む高濃度放射性廃棄物が生まれる。日本において、放射性物質が大量に存在する場所を作るかどうかは、国民の判断だと思う。

3) 大間原発は最新原発

大間原発は最新原発である。その点からすれば、最も運転中のリスクも低く、もしかしたら飛行機が原発に激突しても大丈夫かも知れないと思う。原子力規制委員会は12月17日に関西電力の高浜原子力発電所3、4号機の再稼働に関する審査書案を了承したが、高浜原子力発電所3、4号機は1985年に運転を開始した原発である。

民主党が政権に就いた時は、2030年時点での将来案は原発発電割合50%であった。時代は、あの時とは、変わっている。安全原発再稼働論にしても、どの原発を稼働し、将来に向けてどうするのかの将来構想なくして、再稼働をすすめるのではなく、安全性を原発毎に評価して、その結果を国民に発表することも重要と考える。以前、菅政権時代にストレステストなるものを実施した。その結果、何が判明したのか、テスト結果がどう使われたか全く解らない。あのような無駄なことをすべきではない。

4) 大間原発はMOX燃料専焼

日本の原発は発生したプルトニウムを全量再処理して再度核燃料として使用する核燃料サイクル案で運用している。現状、運転をしていないのでプルトニウムは生産されていないが、それでも核分裂性プルトニウムが英国と仏国における保管量を入れると30トン存在する。もんじゅの見通しが立たない状態で、核燃料サイクルを続けるならMOX燃料を軽水炉で使用することは、どうしても必要となる。その場合、大間原発ならMOX燃料専焼で設計されているのであり、他の原発でMOXを使うより安全かも知れない。

本当の所は、私も解らない。大間原発とMOX専焼を私にも解るように説明を求めたい。

それと共に、重要なことは、核燃料サイクルである。プルトニウムは廃棄するとしても問題であり、保管するとしても問題が大きい。プルトニウムこそ核爆弾の原料である。使用済み燃料を直ちに核爆弾の原料として使用できる訳ではないが、核爆弾に加工する技術ハードルは今や低いと私は思っている。どのようなテロリストからも安全に保管せねばならない。また大間原発でMOXを使ったとしても、その使用済み燃料にはプルトニウムが存在し、それを再びMOX燃料へと加工する再々サイクルが始まる。

考えれば、原発とはやっかいなモノである。大間原発の運転開始までに日本の核燃料サイクルの方針を確立するまでの必要はないと考えるが、核燃料サイクルをどのように考えていくかのロードマップは作る必要があると考える。検討に関するロードマップなしで、原発再稼働は問題が大きいと言いたい。

5) 政治家ではなく国民が決定すべき

無責任な政治家に任せてはならない。2012年9月であったが47ニュース 【大間原発の継続容認】枝野経産相、青森知事に表明  島根3号機も念頭にとのニュースもあった。私が上に書いたようなことを、どのように考えていたのかと思う。

政治家とは人気取りと選挙票のことしか頭にない人達である。そのような人に依存してはならない。国民が判断する。国民が判断できるように必要な情報が国民に届くようにして欲しいのである。

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2014年11月23日 (日)

水素を洋上風力発電で製造するという話からの派生

水素を洋上風力発電で製造するという話を聞きました。国立環境研究所の次のWebにもあります。

日本に適した洋上風力発電システムの検討

このWebの中に「発電単価は、資本費、燃料費、運転維持費の合計額を発電電力量で除した数値ですが、現状では1kWhあたり16.6円となり」とあります。

さて、1kgの水素電気分解に必要な電力を53kWhとすると、880円となります。電気分解装置に関する設備費用や保守・運転経費を加えると最終的にいくらの金額になるか不明ですが、岩谷産業が販売しようとする水素1キログラム当たり1100円以下で製造できる可能性はあるような気がします。そうなると、設備製造・建設・運転・保守に関してはCO2発生はあるものの、かなり低いレベルのCO2発生量に押さえられるのではと期待します。

なお、驚きは11月1日のこのブログで紹介した洋上風力の買取価格(36円+税)での20年間固定料金です。16.6円で発電して、倍以上の36円で20年間の販売が実現する。こんな制度を許して良いのでしょうか?再生可能エネルギーによる電力の固定価格高値買取は廃止し、市場競争による正常な姿に戻すべきと考えます。

再生可能エネルギーの電力固定価格高値買取制度を支持しておられる方には、原発神話はこりごりとしている人が多いようにも思います。再生可能エネルギーの電力固定価格高値買取制度が明るい未来を作ると言うのは、原発神話と同じような類と思います。

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水素価格1キログラム当たり1100円の妥当性

既に1週間以上を経過したのだが、岩谷産業が燃料電池車(FCV)向けの水素を1キログラム当たり1100円で販売するとのニュースがあった。

日経 11月14日 谷産業、FCV向け水素の商業販売価格を決定 普及後押し

FCVの水素消費が110km/kg(水素)であれば、1100円を110kmでの割り算だから、走行1km当たり10円となる。ガソリン価格が155円/リットルとし燃料消費が15.5km/リットルなら1km当たり10円で同じである。ところで、ガソリン車の燃料消費15.5km/リットルは、どうなのだろうか?以下おもしろい試算をしてみたい。

1) FCVの水素消費

トヨタのFCVのWeb MIRAIを見ると燃料タンクは容量122.4L、圧力70MPaとある。そしてタンク内圧力10MPaからの充填で走行距離650kmとある。もし、水素消費110km/kgなら5.9kg充填できたこととなる。2016年以降の新規格の水素ステーションで充填した場合は、走行距離は約700kmとなる見通しともあり、ややこしいが、容量122.4L、圧力70MPaで最大充填したとして7kgが精一杯で、安全を考えれば少ない方が良いはず。

FCVに取り立てて魅力を感じる点はないように思える。

2) 水素価格1100円は税金を含まない

前置き部分で書いたように、1km当たり10円なら、ハイブリッド車や低燃費車の方が有利である。その上、自らは税金を払わずに、ガソリン車や軽油車に道路維持費を分担させることはけしからん様に思う。重量は、ガソリン車の倍の2トンもあるのに。

3) 水素製造コスト

2013年12月2日のブログで書いたのであるが、天然ガスの水蒸気改質による製造が一番コストが安い。水蒸気改質とは、エネルギーも消費するし、設備も必要である。通常は、熱量当たりで水素コストは原料天でガスの3倍になり、これより低ければ、低いほど優秀な高効率設備と言われている。

日本における天然ガスコストであるが、東京電力のWebを見るとLNGの2012年度販売量は1,201千トンで販売高は94,127百万円である。これから計算すると、LNGは1kgあたり78.37円となる。但し、水素は重量当たり熱量がLNGの2.5倍から2.6倍である。従い、水素製造コストが原料LNGの3倍であるとすると水素は1kg当たり611円となる。

輸送費や貯蔵費に利益も確保せねばならず、611円の製造原価が販売価格としては1100円になると言われれば、そんなものかなとも思う。

4) 水素のCO2発生量はガソリンより多い

FCV自身は水素を排出せずとも、天然ガス水蒸気改質はCO2を排出する。熱量MJの水素に対してのCO2排出は80g-CO2程度と以前計算した。ガソリンのCO2排出量は、熱量MJ当たり67g-CO2程度である。即ち、水素は約20%程CO2を多く排出するのである。

欺されてはならない。イメージと事実は異なるのである。

5) 再生可能エネルギーによる水素製造

プロセスではCO2排出が排出されない。可能性がない訳ではない。しかし、電気分解による水素製造時の電力消費は1kgの水素製造に対して53kWh程度であるとすると、太陽光発電の買い取り価格が現行32円/kWh(消費税不含)であるので、これを使うと1,696円である。

LNGからの水素製造の2.7倍であるが、FCVで環境対策と言う人には、1,696円で水素を買っていただくのも一つの方法かも知れない。もっとも、水素の流通コストを考えると2,000円以上になるように思う。しかし、それなら電力自由化(50kW以上は現状でも自由化済み。)でCO2無発生の電力として自由取引にするのも方法かも知れない。

打出の小槌は存在しない。一方、ダマシは存在する。将来の研究課題であることを、さも現実のように誤解して税金を投入したり、課すべき税を減免することは、正しい対処ではない。

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2014年6月26日 (木)

燃料電池車FCVは問題大

マスコミ各社は燃料電池車を究極のエコカーだと言う。例えば、次の日経記事のように。

日経 6月26日 究極のエコカーで主導権 燃料電池車、トヨタ市販へ 14年度中に

私は、2013年12月2日に次のブログを書いた。

燃料電池車(FCV)の評価

12月2日のブログで燃料電池や水素のことを相当書いた。そこを読んでいただければ分かるが、燃料電池車には様々な問題がある。

水素の作り方は、どうするのか?普通は、天然ガスからCO2を排出し、エネルギーを消費して製造するのである。CO2を排出するのを避けたいなら、風力や太陽光で発電した電力を使って水を電気分解する方法もある。しかし、電気分解や水素というような媒体を介するなら、電池に貯めて電気自動車で使ったり、通常に電気として利用した方が効率がよいはずである。

詳しくは、12月2日のブログを読んでいただければと思うが、ところで「エコカー」とは何であろうか、Economic Carという意味なのだろうか?700万円もするのがEconomic Carなのだろうかと思う。どうも、環境に優しいとの意味があるようである。何故なら、東京商工会議所がエコ検定というのをやっており、Web(ここ)には、Certification of the Environmental Specialists [Eco Test]と書いてある。Environmental(環境)がECOになるなんて、どう考えても頭が狂ってします。

「水素はエネルギーの貯蔵方法として活用が可能かも知れない。しかし、現状においては経済性に問題があり、将来のエネルギー貯蔵に関する可能性としての研究段階である。」というのが私の考えです。環境に良いとも、悪いとも、残念ながら判断する材料を持ち合わせていません。

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2013年12月 2日 (月)

燃料電池車(FCV)の評価

第43回東京モーターショーは12月1日に終了した。話題の一つは、トヨタがコンセプト車を出展した燃料電池車(FCV)であった。

日経 11月5日 トヨタ、15年発売の燃料電池車コンセプトを出展へ

トヨタのFCVに関するWebは、ここにある。今回はFCVについての全体的な評価を私なりにしてみたい。

1) FCVとは

ハイブリッド車のガソリン・エンジンが燃料電池に置き換わったようなイメージでよいと考える。燃料電池の燃料は、水素である。水素の反応は、燃焼ではなく、電池の燃料極で水素の電子が燃料極(陰極)に入り、この電子が回路(電動機)で仕事をして空気極(陽極)に回る。その結果、燃料の水素と空気極の酸素が化学反応をして水が生まれる。燃焼ではなく、水が生まれるだけである。

しかし、考えれば、水素が燃焼する場合も、水素と酸素の反応で水が生成されるのであり、CO2は発生しない。結果は全く同じである。水素を燃料とするエンジンを開発しても、同じである。詰まるところ、水素は、燃焼してもCO2は発生せず、水のみの生成である。

ガソリン・エンジンの水素燃料車があったとして、それはクリーン・カーである。従い、燃費(エネルギー効率)で評価すべきと考える。

2) ガソリンエンジンと燃料電池

ガソリン・エンジンの燃料消費量であるが、最良の条件で熱効率35%(燃料消費量では240g/kWh)である。

燃料電池の燃料消費量であるが、上記のトヨタのFCVのWebには「航続距離が830kmに延長(10・15モード)」とあるのみで、ページの下のテクノロジーファイルを見てもそれ以上の詳細は見あたらなかったが、固体高分子型燃料電池と記載がある。そこで日本電気工業会の燃料電池の比較表を探し出した。これによれば、固体高分子型燃料電池は30%~40%と記載されている。

ほぼ互角と言えるが、燃料電池の特性が私にはよく分かっていない部分があるが、ガソリンエンジンについては最良の条件でと書いたように、ガソリンエンジンは回転数とトルクにより動力(kW)あたりの燃料消費量が相当大きく変動する。例えば、停車時には、アイドリングに少しの出力しか出していないが、燃料はある程度消費する。停車時は、kWあたりで考えれば、効率は非常に悪い状態である。しかし、電気であれば、停車時は完全に消費をゼロにできる(実際には、メーター他コントロール関係や安全装置、時にはエアコンで動力を消費するが)。もっとも、ハイブリッド車は、アイドリング時はエンジンが停止しており、わざわざFCVにする必要があるのかとの疑問は残る。

将来的には、燃料電池のエネルギー変換効率が上昇することも期待できると思う。FCVを含め研究はすべきである。

3) 燃料タンク(水素容器)

水素は、液化しようとすれば氷点下260℃以下に冷却しなければならず、液体窒素(-210℃)やLNG(-162℃)より更に低温にする必要がある。液化して貯蔵する場合は、断熱材に容積が取られるため、車で水素を貯蔵するには高圧タンクになる。トヨタのWebには、タンク容量が書かれていないが、70MPaの高圧水素タンクとある。70MPaとは、大気圧が0.1MPaのので700倍の高圧である。そのような高圧のタンクとは、肉厚が相当厚い、従い重いタンクにならざるを得ない。

トヨタの高圧水素タンクを推測するにあたり、エコカーのこのWebに2008年にトヨタが発売したFCVであるトヨタFCHV-advのデータがあり、高圧水素タンク70MPaで156Lとある。第43回東京モーターショーのFCVコンセプト車は、FCスタック(燃料電池)の出力密度は3kW/Lにしたとあるが、高圧水素タンクは同じである可能性が高いと思う。

そこで圧力を70MPaとして球形高圧タンクを仮定し、肉厚25mmでタンク材に発生する応力を計算すると47kg/mm2となった。この場合のタンクは内径664mmで重量は270kgと計算される。応力が47kg/mm2だと普通鋼では強度不足であり、高張力鋼を使っても270kgというような重量になることを意味する。但し、実際は球形タンクではなく円筒形を使用している。外径400mmで長さ1,600mm程度のタンクを横方向に積載していると思う。相当な大きさであると同時に、重量も47kg/mm2の応力で収めるとして240kg程度と計算される。トヨタの説明には、タンクの外側にカーボンファイバー層を巻いていることも書かれてあり、軽量化され、ここまでの重量にはなっていないと思うが、それでもかなり重いはずである。(ちなみに、トヨタFCHV-advancedの車両重量は1,880kgなので、ガソリン車よりは、やはり相当に重い。)

では156リットルの高圧水素タンクに70MPaで水素を充填したとして、満タンでいくら入るかというと5.6kgか5.7kg程度の水素である。即ち容器重量200kgに対して、5.7kgが入るのみである。但し、水素の単位重量あたりの熱エネルギーは非常に大きい。142MJ/kgである。これに5.7kgを掛けると809MJとなる。一方、ガソリンの熱量は34.6MJ/Lなので、60Lのガソリンを充填した場合は、2,076MJの熱量となる。

809MJで850km走行できるなら、水素消費率は0.95MJ/kmである。ハイブリッド車の燃費を32.6km/Lとした場合は、消費率1.06MJ/kmに相当するので、ハイブリッドの約90%と10%低燃費のFCVが燃費競争でごくわずかに勝っていると考えられる。しかし、トヨタが11月20日に発表したハイブリッド車燃費37.0km/Lや、ホンダFITの36.4km/Lと比較すると、それぞれ0.94MJ/kmと0.95MJ/kmであり、高性能ハイブリッドカーにFCVは互角である。

FCVの車両価格は、ハイブリッドカーの10倍程度であると、ハイブリッドカーに完敗と思える。しかし、考えればハイブリッドカーは、ずいぶん優秀と言える。

3) 水素充填ステーション

水素充填は3分程度とトヨタは説明している。なお、156リットル高圧水素タンクの満タン5.7kgは、0℃大気圧状態では、63.8m3である。(0℃大気圧状態の1m3を1Nm3と表す。)

70MPaの高圧水素タンクに充填するためには、70MPa以上の圧力で押し込まないと充填できない。このためのコンプレッサー動力が必要である。この動力エネルギーは、次の式を使用した計算結果でも水素1kgあたり22MJ必要である。

Compressionequation

水素充填ステーションでも既に35MPaや70MPaでの高圧圧縮貯蔵をしているのが通常であり、この22MJ/kg-H2は必ずしも水素充填ステーションで発生するとは限らない。例えば、圧縮水素運搬タンクローリーは現状最大20MPaであり、充填ステーションでこれを貯蔵時またはFCVへの充填時に70MPaにする。そして、水素製造所では、貯蔵および運搬タンクローリーへの充填のために20MPaに圧縮する。

なお、水素充填ステーションへの輸送及び貯蔵を氷点下260℃の液体水素にして行う方法がある。この場合、水素製造所において液化する事となるが、その液化にはエネルギーを必要とする。現在水素液化のための必要エネルギーは50MJ/kg-LH2程度のようである。大型化して効率を上げたとしても30MJ/kg-LH2を下回ることは困難なようである。

水素を製造してからFCVに充填するまでの間に50MJ/kg-H2程度のエネルギー消費は、どのような手段を講じても発生が避けられないと考える。水素の燃焼エネルギー143MJ/kgと比較すると35%が損失になる訳で、水素エネルギーの利用は合理的であるのか、十分考える必要がある。

氷点下260℃の液体水素を利用している輸送手段が一つある。それは、ロケットである。ロケットの液体燃料は、液体水素であり、発射前に充填作業を行っている。ロケットは、143MJ/kgという水素の重量あたりのエネルギーの大きさを利用しており、軽量にすることが重要である特殊な例であると言える。

4) 水素製造

水素の製造方法は大きく分ければ、炭化水素(ガス、石油、石炭)を分解して水素を取り出す方法と水を電気分解して水素を得る方法である。

4-1) 天然ガスからの水蒸気改質

現在もっともコストが安いとされているのが、天然ガスを原料とする水蒸気改質法(Steam Reform)であり、米国では90%がSteam Reformingにより水素が製造されているようである。なお、容積ベースでは1m3の天然ガスから2.1m3-2.8m3程度の天然ガスが生産できるが、エネルギー・ベースで考えると、生産される水素のエネルギーを1.0として、グラフで表すと次の通りである。

Steamreformh2_2

重量では、水素はメタンの元の重量の25%-35%になる。メタン中のすべての水素分が水素ガスになったとしても、メタンの化学成分CH4に含まれている炭素(C)は、水素にはならない。炭素(C)は、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)になる。そこで、CO2排出量の計算をしてみた。

水素1m3の生産に必要な天然ガス量を0.4m3とする。0.4m3をすべてメタンとした場合は、その質量(重量)は286グラムであり、そのうちの炭素分は215グラムである。この炭素CがCO2になると、788グラムとなる。水素1m3の熱量は12.76MJなので、排出係数は61.7g-CO2/MJとなる。そして、これに水蒸気改質によるエネルギー消費分により排出したCO2を加える必要がある。30%増加するとして、80g-CO2/MJ位の排出係数となる。

(実際には、メタン中の水素分がすべて生産される水素となる訳ではなく、水蒸気改質の水の水素分からも生産される水素となる部分がある。但し、合計して考えると、現在の標準的な天然ガスの水蒸気改質による水素生産の原単位、エネルギー必要量、CO2排出量は、ここに掲げた数字に近いはずである。)

水素生産のCO2排出を80kg-CO2/MJとして、FCVのCO2排出を計算する。FCV走行水素消費率が0.96MJ/kmなら、CO2排出は76.8g-CO2/kmとなる。ハイブリッド車の燃費を32.6km/LとしてCO2排出を計算すると、71.2g-CO2/kmが計算できる。FCVは、ハイブリッド車よりCO2を多く排出する自動車となった。更には、貯蔵と運搬のためのCO2排出を加える必要がある。上の3)において、圧縮のためのエネルギーは22MJ/kg-H、液化のためのエネルギーは50MJ/kg-LH2と書いた。これを、すべて電力を動力としたとして電力のCO2排出係数を400g/kWhを使用して計算をすると、圧縮の場合は、17g-CO2/MJ、液化の場合は39g-CO2/MJとなる。即ち、水素利用の場合のCO2排出量は合計97g-CO2/MJまたは119g-CO2/MJとなった。

4-2) 水の電気分解による水素生産

水の電気分解による水素生産の電力源単位は水素1Nm3あたり4.8kWh程度である。天然ガスを燃料としたコンバインドサイクル火力発電の熱効率を55%として、計算すると1m3の水素生産に必要な天然ガス量は0.79m3となり、水蒸気改質法0.4m3の2倍近い量の天然ガスを消費することとなる。CO2排出量も生産だけで、150g-CO2/MJで水蒸気改質法の2倍近いCO2排出となる。

但し、再生可能エネルギーからの電力で水の電気分解を行えば、生産に関して直接的に排出されるCO2はゼロとなる。但し、高いコストの水素となる。仮に、太陽光電力を40円/kWhとすれば水素1Nm3は192円となる。米国でシェールガスを含めHenry Hubの現在の価格mmBTUあたり4ドルでガスを調達し水蒸気改質法で水素生産したならば、水素は熱量ベースで3倍以下と言われており、水素はmmBTUあたり12ドル以下のコストで生産できる。これは、1Nm3あたり0.145ドル、すなわち15円である。輸送費等も関係するが、15円で生産できるモノを192円で生産することは考えられない。将来的に、再生可能エネルギーの発電コストが現在の半分になったとしても、96円である。LNGの輸入価格がmmBTUあたり20ドルであったとしても、水蒸気改質による生産で0.6ドル/Nm3、すなわち65円である。再生可能エネルギーで発電できるなら、送電線に流し、電力として利用することが合理的である。将来、再生可能エネルギーの余剰が発生した場合に、余剰電力による水素生産はありうると考える。

4-3) その他の方法による水素生産

日本に副生水素が存在する。例えば、製鉄所のコークス炉から発生するコークス・ガスには水素が含まれている。コークス・ガス中の水素を取り出して純度を高めれば、FCVの燃料として使用できる。しかし、コークス・ガスは製鉄所内で加熱用他に燃料として使用されており、また発電所の燃料として利用されている。大型コークス炉が存在するほぼすべての製鉄所には○○共同火力(例えば君津共同火力)が存在し、発生する水素はすべて有効利用されている。精油所、石油化学プラントにおいては、水素が発生する。しかし、精油所、石油化学プラントは、水素を原料として必要とするプロセスもあり、ナフサを水蒸気改質等で製造している。従い、余剰水素は基本的には存在しないと考える。

但し、能力100%で操業している訳ではなく、水素生産能力に余力が存在する場合はある。しかし、これを短絡的に余力があるから水素を生産すべきとはならないと考える。日本では、省エネが進んでいると言われる。それは、副次的に生産される副生物や廃棄されていたモノまで、徹底的に有効利用を図っている結果でもある。副生水素を利用すべきとの見解があるが、廃棄されたり、有効利用されていない副生水素が存在するのか、何が有効であるかは、十分検討する必要がある。

最後に、バイオから直接水素を取り出すこともあり得る。まだ将来の利用の可能性追求の研究段階である。そして、もう一つ、原子力による水素生産がある。これは、高温状態の金属が水と接触した際の水素発生反応の利用である。なぜ、原子力かは、そのような高温が化石燃料では得ることが困難であるからである。但し、この高温は、軽水炉では達成できない。福島第一原発が水素爆発を起こしたことは誰でも知っているが、あの水素発生メカニズムである。軽水炉は、火力発電より低い温度の蒸気としている。温度が高いと、危険度は増加すると考えるし、高温ガス炉原子力を使うとしても、その安全試験はどうするのか、課題は多いと考える。

5) コスト

これまで書いたところで、一番安く水素をFCVに充填できるのは、天然ガスを原料とする水蒸気改質法で水素を生産し、液化せずに圧縮水素として輸送、貯蔵する方法である。LNGから水素1Nm3あたりの生産コストを65円とし、圧縮コストを電力kWhあたり20円で計算すると11円/Nm3となる。貯蔵費用が発生し、超高圧タンクの設備費用で相当高いと考えるが、とりあえずゼロと仮定する。その結果は、FCV充填の水素コストは76円/Nm3である。

2)のところで、FCVの水素消費率は0.96MJ/kmとした。0.96MJを水素に換算すると0.075Nm3であり、金額では5.7円/kmである。ガソリン価格を150円/Lとし、ハイブリッド車の燃費を32.6km/Lとすると、ハイブリッド車は4.6円/kmとなる。やはり、ハリブッド車の方がお得な結果となった。現在のLNG価格mmBTUあたり20ドルは高すぎるとの考えもあるはず。しかし、貯蔵コストを初め、水素の流通コストを考慮すると、水素価格76円/Nm3は妥当と思える。

更には、ガソリン価格には揮発油税及び地方揮発油税合計53.8円/Lが含まれている。水素にも、これに対応する税の徴収をしないと、不合理が生じる。即ち、道路にも保守費用は発生するのであり、トンネルや橋の崩落を防ぐ費用は、応分の負担を公平にすべきである。

6) 感想

水素の世界や燃料電池車(FCV)の可能性について、当面の間は経済的合理性を見つけることは、困難であると考える。米国においては、天然ガスを水蒸気改質により水素を生産し、発生するCO2は地下貯留(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)とするクリーンエネルギーを目指す動きがある。米国では、日本と比較し、天然ガスは安く、CCSに適する地下地層も得やすい。FCVの実現も、日本よりは米国の方が早いと思う。だからこそ、トヨタもホンダもFCVの研究に力を入れているのだと思う。

今回、比較対象としたのは、ハイブリッド車である。ハイブリッド車とは、燃料消費の優れた車である。10・15モードが必ずしも、実走行の状態ではないが、同じ基準での比較をする場合に、一定の合理性があると考える。ハイブリッド車でない車の燃料消費も良くなっている。4)で再生可能エネルギーによる発電による水の電気分解からの水素生産を書いた。これと比較すべきは、再生可能エネルギーで発電した電力の蓄電池貯蔵とする電気自動車であると思う。水素充填時間と電気自動車充電時間の差とか、様々な違いはあるが、将来どのようになるか分からない。

水素が、水のみしか排出しないと言うのは、一面的な見方である。水素の将来が明るいのかどうかも不明である。しかし、将来の可能性は十分あるのであり、研究は継続すべきと考える。

7) 参考

水素とメタンの質量と発熱量(HHV)の表を参考として掲げる。計算等の細部に省略した部分もあり、質問がある方は、コメントに書いていただければと存じます。

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