2022年7月 3日 (日)

原子力発電をどう考えるべきか

1)最高裁6月17日判決

最高裁は、6月17日に東京電力福島第1原発事故の避難者らに対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を認めなかった。

判決文は、ここここにありますが、国会賠償とは、どのような場合に認められるのか、考えさせられる。1条1項の条文は「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは」となっており、曖昧である。福島第1原発の被害者補償は、政府が東京電力に資金を供与し、その資金で避難者・被害者補償を行うという方法が採られている。裁判で争っても、被害者が東電に加えて国からも賠償金を受け取れるとは考えにくいと思う。金額が十分かという金額面については、別次元のこととする。

菅野博之裁判官は、補足意見として次の様に述べておられる部分がある。

私は、基本的には、原子力発電は、リスクもあるものの、エネルギー政策、科学技術振興政策等のため必要なものとして、国を挙げて推進したものであって、各電力会社は、いわばその国策に従い、関係法令(「原子力基本法」、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」、「電気事業法」、「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」等)の下、発電用原子炉の設置の許可を受け、国の定める諸基準に従って原子力発電所を建設し、発電用原子炉を維持していたのであるから、本件事故のような大規模な災害が生じた場合は、電力会社以上に国がその結果を引き受けるべきであり、本来は、国が、過失の有無等に関係なく、被害者の救済における最大の責任を担うべきと考える。国策として、法令の下で原子力発電事業が行われてきた以上、これによる大規模災害については、被害者となってしまった特定の人達にのみ負担をしわ寄せするのではなく、損失補償の考え方に準じ、国が補償の任を担うべきであり、それは結局、電力の受益者であって国の実体をなす我々国民が広く補償を分担することになると考える。
だからこそ、これに近い仕組みとして、原子力損害の賠償に関する法律が設けられており、原子力損害については、・・・

私もこのような考えである。原子力発電所とは原爆の兄弟・姉妹である。核分裂という全く同じ物理現象を利用する。核分裂とは熱エネルギーと放射線を発する放射性物質を生み出す。極めて危険であり、人に有害な反応である。しかし、莫大なエネルギーが取り出せることから、核分裂反応をうまくコントロールし、放射性物質を閉じ込めることができれば魅力的というか、莫大な富をもたらす可能性がある。

原子力発電所を建設し、運転して、電力を得るかどうかは、人間が決めれば良い。危険として、やめるのか。やるなら、どのようにしてコントロールしつつやるのかである。やるばあいは、規制について強制力を持ってやらねば恐ろしい。有効な法の下で実施する必要があると考えれば、法を制定できる国単位での実施しかないだろうと思う。

2)原発に関する最近の国際動向

世界的な温室効果ガス排出削減への動きに加えて、ロシアによるウクライナ侵略以後高まったオイル・ガス供給不安により原発建設が脚光を浴びつつあると思っている。日本であまり報道されなかったと思うが、岸田総理がロンドンで5月5日に行った基調講演で、原発について次の様に述べている部分がある。(首相官邸のこのページ

「喫緊の課題である気候変動問題に加え、世界全体でのエネルギーの脱ロシアに貢献するためにも、再エネに加え、安全を確保した原子炉の有効活用を図ります。」

原発の世界的な見直し動向に対して、日本がどうしてもしなければいけないことがあると思う。それは、福島第一原発で放射性物質の拡散を防ぐことができなかったのかである。津波で非常用電源が壊れた。しかし、緊急で電源を準備できなかったのかである。もし、かくかくしかじかのことを実施していれば、シナリオは、どう変わっていたのか。折角福島原発事故による放射性物質拡散を経験したのである。日本しか実施できない研究であると思う。

3)参議院選挙での各党の原発政策

参議院選挙での各党の原発政策を見てみた結果である。

自由民主党

政策パンフレット

“脱炭素”を成長の起爆剤にする(13ページ)

安全が確認された原子力の最大限の活用を図ります。

立憲民主党

政策を知る

環境・エネルギー

原子力発電所の新増設は認めません。廃炉作業を国の管理下に置いて実施する体制を構築します。

公明党

マニフェスト2022

経済の成長と雇用・所得の拡大(33ページ)

原子力発電に関する取り組みについては、国民の理解と協力を得ることが大前提であり、説明会などを通じた情報提供・公開の徹底等を図りつつ、国が責任を持って進めます。

日本維新の会

日本維新の会維新八策1.基本政策2021

原子力政策(22ページ)

小型高速炉など次世代原子炉の研究を強化・継続します。

日本共産党

2022年参議院選挙政策

(4)気候危機の打開――原発即時ゼロ、石炭火力からの撤退。純国産の再エネ(14ページ)

即時原発ゼロ、石炭火力からの計画的撤退をすすめ、2030年度に原発と石炭火力の発電量はゼロとします。

国民民主党

政策パンフレット

4 自分の国は自分で守る(12ページ)

法令に基づく安全基準を満たした原子力発電所は再稼働するとともに、次世代炉等へのリプレース(建て替え)を行います。

原子力についての政策のみで投票先を決める人は少ないと思う。また、原発なんて、政治家が口を出してはいけない分野であるとも思う。しかし、法律の関与なしの野放し状態で進めることはできない。原子力とはプロメテウスの火である。なくなりはしないのだろうな。そう考えると、バカには関与させたくない。これからの政治・民主主義においては、正しい意見を尊重する議員を選出すると同時に、そのような人を育て、且つ役所や企業に於いても、そのような人が活躍する社会を築いていかねばならないと思う。

| | コメント (0)

2022年6月21日 (火)

アベノミクスの失敗

最近の外国為替市場の動きからは、アベノミクスの失敗を痛感してしまう。アベノミクスとは、通貨供給を増加し、日銀の政策金利をマイナスにしてまで通貨供給量を増大し、日銀による市場からの国債その他金融資産の買入れを実施する。マーケットには、大量の円通貨があふれることとなった。日銀発表に書いてあることは依然として強気発言である。しかし、アベノミクス低金利政策とは、通貨としての魅力をなくすことであり、その結果として、日本経済を破滅に導く導火線の役割を果たすと思うのである。私の考えについて、以下述べてみたい。

1) 最近の米ドル・円為替相場

次が3月1日以降の米ドル為替のチャートである。あれよあれよという間に17%の円安(米ドル高)になってしまったのである。

Exchanger202206a

本来なら17%も為替が動けば、大騒ぎのはずが、随分平穏である。日銀は、政策金利の引き上げを発表し、外国為替レートを落ち着かせ、物価上昇から国民や日本経済を守姿勢を示して良いはずが、アベノミクス継続を発表する。

2) 1米ドル360円時代からのチャート

Exchanger202206b

1969年は1米ドルが360円の固定相場の時代であった。1987年に135円となった時があった。しかし、当時はバブル期。今とは違い、日本人・日本景気は活力と夢を持っていた。力があった時代である。今は、日銀の低金利でゾンビが生き延びており、ゾンビと共生している日本経済のような気もしてしまう。本来はゾンビなんかではない若者が非正規雇用の労働者となり社会を支える。奇妙な姿である。アベノミクスの前の2011年頃には80円を切る70円台であった時代があった。

3) ユーロや人民元との比較

米ドルと円の為替のみではなくユーロとも比較するのが適当であり、更には人民元とも比較するチャートを見る必要がある。そこで作成したのが次のチャートである。円、ユーロ、人民元が何ドルに相当するかを計算し、3年強以前の2020年6月1日の数値を1として比較をした。ドル相当を単位としているので、円高に振れれば1より大きく、円安になると1以下となる。

Exchanger202206c

チャートを見れば、円安が一目瞭然である。アベノミクスを続けていれば、日本は破滅に向かう気がするが、参議院選が終わらないと方向転換できないだろうなと思う。

4) 穀物相場

日本は世界の中の日本である。世界経済の中の日本経済である。アベノミクスを止めることは、国債の暴落を招き、国債を大量に保有する地銀等は大損失を計上し、金融不安につながる。しかし、一方で世界の中の日本を認識しないと日本全体の破滅となりかねない。次のチャートは2016年以降の米国小麦相場であるが、2021年以降の価格上昇は激しい。日本は、無関係とは行かない。アベノミクスをアホノミクスと呼んだ人がいたが、それはそれとして、今後の日本における経済政策は、どうあるべきかと言えば、アホノミクスではないとしても、非常に難しい課題だと思う。ゾンビ退治とある種の脱皮なのだろうか?

Chart

| | コメント (0)

2022年6月12日 (日)

強制貯蓄-日銀預金統計の分析 : 衆院財務金融委員会での黒田東彦日銀総裁の発言撤回に関して(その2)

前の6月10日のブログで書けていなかった部分が、強制貯蓄に関する発言であり、これこそ問題視して、民主政治が解決せねばならない問題と考える。「きさらぎ会」での講演で強制貯蓄に触れつつ話をした黒田発言の部分を抜き出すと次である。

ひとつの仮説としては、コロナ禍における行動制限下で蓄積した「強制貯蓄」が、家計の値上げ許容度の改善に繋がっている可能性があります。いずれにせよ、強制貯蓄の存在等により、日本の家計が値上げを受け容れている間に、良好なマクロ経済環境を出来るだけ維持し、これを来年度以降のベースアップを含めた賃金の本格上昇にいかに繋げていけるかが、当面のポイントであると考えています。

「強制貯蓄」とは、聞き慣れない言葉であるが、貯蓄者の自由意志によってなされる自発的貯蓄や、法律等に強制される強権的貯蓄でもなく、社会的・経済的理由で非自発的に貯蓄となってしまった貯蓄である。黒田発言の具体的な意味は、コロナ禍で止むを得ずに貯蓄に回ってしまった貯蓄である。

そのようなコロナ強制貯蓄が日本経済を動かすほど、あるのかと多くの人は疑問に思うはず。これぞ庶民感覚からかけ離れた黒田発言である。コロナ禍で収入が減少し、貯蓄を取り崩している人が大勢いる。感染拡大防止の取り組みとして、旅行や飲食を控え、その費用をアフターコロナのために貯蓄に回した人もおられると思う。しかし、そんな貯蓄は、今来ている物価上昇により、すべて吹っ飛びそうでもある。

一方で、大金持ちは、どうだろうかと言うことで、日銀の預金統計を分析した。いったい国内の個人による銀行預金は幾らあるかというと、2022年3月末で539兆円である。預金残高階級別の預金金額は次の円グラフの通りである。

Bankdep202206a

預金残高が2018年3月以降、どう推移したかを見たチャートが次である。残高3百万円未満の預金では、ほとんど変化がないが、全ての預金を合計した残高で、2018年3月から4年間で1.17倍、1億円-3億円の預金は1.47倍になっているのである。預金残高の増加は、預金の運用利回りによる部分もあるが、他の資金運用や投資、給与や個人事業所得あるいは法人への不動産売却収入等による増加もあるので、単純ではない。しかし、2018年3月から2022年3月までの4年間で個人預金の総額は459兆円から539兆円へと80兆円増加したことを日銀統計は物語っている。

Bankdep202206b

増加額80兆円のうち2020年3月から2022年3月までに増加したのが55兆円であり、コロナ禍の期間の預金増加額がコロナ前の2018年3月から2020年3月への増加額25兆円よりはるかに大きいのである。コロナ禍は、黒田説の言うように強制預金を生むと言っても良いのかも知れない。しかし、そうなると、それは大口預金を持つことができる富裕層に限られるように思う。そして、これが正しいのなら、富裕層から一般庶民への所得再配分の仕組みを構築することを目指さねばならない。所得税増税を実施するか、消費税インボイス制度を利用して高所得者の脱税摘発の強化をはかるのかな?消費税減税なんて、とんでもないように思う。

| | コメント (0)

2022年6月10日 (金)

衆院財務金融委員会での黒田東彦日銀総裁の発言撤回に関して(その1)

このブログのタイトルを書いていて、良い表現になっていないと自分でも思う次第です。撤回したのは、8日の衆院財務金融委員会であるが、当該発言は6月6日の共同通信の「きさらぎ会」という講演での発言である。6月6日の講演会に於ける黒田発言については、この日本銀行のWebから全文をダウンロードできる。

発言撤回については、この6月8日のNHKニュースの報道のように「「家計が苦渋の選択として値上げをやむをえず受け入れているということは十分に認識している。誤解を招いた表現で申し訳ないと思っている」と、改めて陳謝し、そのうえで黒田総裁は「家計が値上げを受け入れているという表現は、全く適切でなかったということで撤回する」と述べ、発言を撤回しました。」と言うことである。

撤回した発言とは、どのような発言であったのか、日銀Webから抜き出すと(9ページ後半以降)

このように、企業の価格設定スタンスが積極化している中で、日本の家計の値上げ許容度も高まってきているのは、持続的な物価上昇の実現を目指す観点からは、重要な変化と捉えることができます。この点について、東京大学の渡辺努教授は、興味深いサーベイを実施されています(図表9)。・・・・・


渡辺教授は、許容度とは述べておらず、値上げに対する耐性と述べていると黒田氏も認め不適切発言とした。ところで、値上げに対する耐性とか許容度とかは、何を根拠にしている発言かというと、次の渡辺教授の2022年4月のアンケート調査の結果である。2021年8月と比較して「その店でそのまま買う」と「他店に移る」の比率が43:57から56:44へと変化した。当然、様々な理由が考えられるのである。私なんかにすると、重要なことは、耐性とか許容度という言葉の問題より、どのようにして産業(経済)の発展による人々の幸福を追求するかが重要と考えるのである。値上げは悪いこととは限らず、値上げが産業(経済)を発展させ、人々を幸福にするなら良いことである。

Prices20220610


| | コメント (0)

2022年6月 2日 (木)

知床観光船KAZU I の事故

4月23日、北海道知床半島で26人が乗った観光船「KAZU I」が沈没し、乗客24人と乗組員2人の全員が死亡または行方不明という痛ましい事件があった。その船体が網走港で本日陸揚げされた。

陸揚げに関連してのニュースに次の報道があった。

YahooニュースTBS 「船底にはっきりと」知床観光船陸揚げで“穴”確認


船底にあいた穴ではあるが、その場所や、損傷の原因までは分からない。舵があった場所で、舵がもぎ取られてできた穴とも思える。

カシュニの滝付近で沈没とのことで、カシュニの滝とはどのような所であるのか、Google Earth Proでカシュニの滝を見てみると、このような地点である。知床半島の西北側の典型的な地形であり、海にそびえる崖。この崖をカシュニの滝が海に流れ込んでいる。海に目をやると岩場であり、風の強い日や海が荒れているときに海岸に近づくことは、座礁する危険性が高い。KAZU Iクラスの船なら、強風で海が荒れていれば、操船も困難となる。

Kashunyufall
私としては、カシュニの滝付近で船体・船側・船底のどこかが岩に衝突し、ダメージを受けて、海水が浸入し、沈没に至った可能性が高いと思う。

カシュニの滝から15km程知床半島の先端方向に行った地点に文吉港(次のGoogle Earth Pro)という非常避難用の漁港がある。ここに避難していればとの話もあるが、知床半島のほぼ先端であり、先端からは1.5km程の所である。ウトロからカシュニの滝までは直線で39.5kmであり、荒天時に危険を冒して訪れる場所ではなかったと言える。知床林道終点までウトロからの直線距離は21kmであり、道路はその1.5km先の19号番屋までと考える。カシュニの滝は、道路がなくなってから約5km先にある。秘境に行くことはワクワクするが、安全を確保しておくことは重要である。

Kashunyufallport

| | コメント (0)

2022年5月 6日 (金)

ロシアの基準

5月4日にロシア外務省が無期限の入国禁止の対象者リストを発表したとのニュースがあった。

日経 5月4日 ロシア入国禁止の対象者リスト

日経記事には、入国禁止の対象者の名簿があり、岸田文雄が1番に書いてある。これは、ロシアからすれば当然そうだろうと納得。

政党の党首や代表は、どうなっているかとリストを見ると、立憲民主党の泉健太、国民民主党の玉木雄一郎、公明党の山口那津男、日本維新の会の松井一郎、社会民主党 の福島瑞穂の氏名は見当たらない。自民党も安倍晋三の名前はないので、彼はロシアに渡航可能。

入国禁止の対象者には、政治家の名前も多くあるのだが、政党の党首や代表で入国禁止は岸田文雄以外は共産党委員長志位和夫のみなのかな?

よく分からない基準と思った。もっとも、何故ウクライナと戦争をしているのか分からない理由と同じで、ロシアかプーチンの考え方を理解しようとするのが無理であるのは当然かも。

| | コメント (0)

2022年4月21日 (木)

相続マンションの路線価認めなかった最高裁判決から考える税の公平性

まずは、日経ニュースから

日経 4月19日 相続マンション、路線価認めず課税「適法」 最高裁判決

最高裁判決はこの裁判所のWeb Page にあり、判決文を読んで分析しました。

1) 本件相続の内容

被相続人(死亡した人)は、平成24年(2012年)6月に94歳で死亡。残した財産は、国税庁と争ったマンション以外に6億円以上を保有する大資産家であった。従い、今回の争点となっているマンションの購入価格は13億87百万円であったことから、相続財産の総額は20億円近いのである。これを、相続税ゼロで申告をして、相続しようとした。更には、このマンションを相続人が売却しても、所得税や住民税もゼロ。勿論消費税もゼロなんて、徹底的に税を払わないように仕組んだ。そう考えると、札幌南税務署は庶民の味方・正義の味方としてよく頑張ってくれたと思う。

2) 本件税逃れの方法

相続税は札幌南税務署に申告したと思われることから、死亡した人は札幌市に住んでいたと思う。死亡する3年前の平成21年1月と12月にマンション(日経によると東京で)を837百万円と550百万円で購入した(合計13億87百万円)。借入金は630百万円と378百万円の合計10億008百万円。不動産購入が可能であったことから認知症にはなっていなかったと思うが、おそらく当人も家族も死期が近いと認識していたと思う。少なくともいずれ死ぬ。6億円の税産があるなら、相続税対策に突っ走る。簡単な方法は、債務控除と路線価評価の利用である。

お見事!相続税をゼロにする方法を編み出したのである。どのようにして、そうなるかは分からないが、路線価を使えば837百万円と550百万円のマンションが200百万円と133百万円になるそうな。約10億円も下げたのである。実態価格は、2013年3月に550百万円で購入したマンションを515百万円で売却しているので、路線価は実態より382百万円も低かったのである。

当然この仕組みは、税理士、銀行、不動産屋等関係者が知恵を出した可能性はあると思う。誰かが、首謀者であり、それにありが群がったのかも知れない。

3) 税務署の賦課決定処分

税務署は837百万円と550百万円で購入したマンションを不動産鑑定士による評価額である754百万円と519百万円との評価を行い、10億円近い金額を債務控除して888百万円を相続税の課税価額。そして、これに基礎控除他を控除した上で、税額を計算した結果として240百万円の相続税の賦課決定を行った。

相続税のみならず贈与税もそうであるが、相続税法第22条は、次であり、不動産に関する評価額は、不動産鑑定士の鑑定が有効である。不服があるなら、別の不動産鑑定士を起用し、争えば良いのである。路線価なんていうことがバカである。

相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

4) 相続した財産を売却したとき

財産を売却した場合は、売却額から取得したときの取得費(購入価格と購入手数料等)ならびに売却時の費用を差し引いた金額が所得金額となり、これに税率をかけて所得税を計算する。

本件の場合、不動産屋等の手数料を無視すると、購入価格である837百万円と550百万円が取得費であるが、これに建物についての減価償却計算を行い、累計原価償却額相当を差し引く。すなわち、相続税の評価額は、売却したときには関係しない。唯一、相続から年数を経過していない場合に、相続税相当額を取得費に加えることができるのみ。

当初のもくろみは、相続税はおろか、売却時の所得税も逃れ、さらにはマンション以外の相続財産6億円についても相続税を逃れようと企んだのではと思えるのです。

| | コメント (0)

2022年4月14日 (木)

2023年1月は東京地方電力不足となるのか?

次のニュースがありました。

・NHKニュース 4月12日 来冬の電力需給見通し 東京電力管内の予備率はマイナスと予測

・日経 4月12日 冬の電力、逼迫のおそれ 東京など7地域の23年1~2月

このニュースについて、検討を加えてみました。なお、ニュースの情報ソースは次です。

・ 経済産業省 4月12日開催 第47回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会

・ 電力広域的運営推進機関 4月12日 第72回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 です。

1) 2023年1月、2月の東京地方電力需給見通し

Tokyogrid20223winter

上の表が2023年1月、2月、3月の電力需給見通しの表です。H1の意味は、10年に一度程度と予想される厳冬となった場合と言うことで、1月、2月の需要予測5,443万kWを、東京地方のみ供給力が2月は90万kW、3月は84万kW下回る(不足する)と予想している。供給力 5,353万kWと5,359万kWに対して、この不足分が1.7%と1.5%に相当する。需要予測5,443万kWに供給力を3%マージンを確保しておくとすると、3%相当の163.3万kWに追加して2月は90万kW、3月は84万kWを加えることとなるので、不足分は254万kWと247万kWになると計算される。

以上が、電力不足の計算であるが、10年に一度程度と予想される厳冬年の電力需要はということで、本冬で一番需要が大きかった1月6日16時が5,374万kWであった。このことからすると、10年に一度の厳冬予想5,443万kWは更に69万kW大きい。供給力として可能性があるのは、建設中のJERA姉ヶ崎火力(LNGコンバインドサイクル)である。1号機と2号機の運転開始は2023年2月と4月の予定であることから、早めに運転できれば、供給力の増加として期待できる。1号機と2号機とも各65万kW。

2) 2022年1月-3月の状態

電力は貯蔵されないため、需要に応じて、供給することとなる。この物理法則を持つ電力を実際にどのように供給されているかを東北の地震の影響と寒波が重なった3月22日、電力需要最大を記録した雪の1月6日、そして春のような暖かい日になり日照にも恵まれた3月28日の3日についての時間毎の需要と供給源をチャートにしたのが次である。

Tepco2021janmar

需要カーブが、それぞれ大きく異なる。そして3月28日は太陽光発電が多い。3月22日の太陽発電の最大は174万kWであったが、3月28日は1,381万kWの8倍近い。需要に対して太陽光発電が占める割合は、3月22日5%で3月28日は40%である。3月22日と3月28日を火力発電で比べると、3月22日は出力3,700万kWであったが3月28日は1,700万kWで運転している。46%も発電出力を低下させた。

3) 需給逼迫による停電回避に向けて

電力は貯蔵されないことから、停電回避には供給を増加させる必要がある、あるいは需要を減少させるという2つの方法がある。バッテリーは、蓄電時が需要であり、放電時が供給となる。停電回避は、政府の義務だなんて言っても解決にはならない。社会のルールとして、合理的に需給が均衡し、合理的なコスト負担と便益享受が計られることが理想である。

その意味で、社会主義国で行われていた国家の電力管理等は欠点が多い。電力自由化をしてきたのであり、その中での合理的な仕組み作りが重要である。この冬の電力逼迫状況で、自家発電設備をフル稼働させて売電収入を享受できた企業も多いのではと思う。それは、良いことである。自家発電設備は自社工場の電力供給のみならず、社会への電力供給に貢献できたのである。対価は、マーケットが決めた。

エネットにEnneSmart(エネスマート)(Webはここ )と言うのがある。エネットからの節電リクエストに応じてタイムリーに節電に協力すると電気料金の割引が受けられると言うのである。節電できなくても、デメリットはなしとの事である。興味ある仕組みである。

東京電力エナジーパートナーが、くらしTEPCO webサービスというインターネットで電気使用量を見ることができるWebサイトを運営している。このWebサイトで最近、データのCSVダウンロードができなくなっている。他の方法でも良いが、データダウンロードはできず、例えば30分ごとのデータはグラフ表示のみである。グラフのスケールは、その時の最大値を基準にするから、他の日にちとの比較は簡単ではない。

日本最大の電力小売り事業者である東京電力エナジーパートナーが、データのCSVダウンロードを中止するなんて、世の中に逆行するようなことをして、どうするかと強く抗議します。

| | コメント (0)

2022年3月25日 (金)

やはり変だね朝日の記事

朝日新聞の記事がおかしいのか、記者がおかしいのか、理解不能となってしまう。

朝日 3月24日 電力、地域間融通に不全 送電設備が容量不足、教訓生かせず

有料会員記事となっており、読めない。紙の新聞のコピーでは次の通り。

Asahi20220324

地域間の連携送電線のキャパシティが低いと述べているが、誰が投資し、運営すべきかの議論には触れていない。「投資額は最大4.8兆円にのぼり一部は電気料金に上乗せされる」との記述には驚いてしまう。経済を無視した議論をどうどうと述べる。こんな新聞最低だと思う。

揚水発電についても信じられないことを書く。貯水量が朝100%で夜の10時で29%は、当然、健全な姿である。停電を避けるために運転したのである。揚水も含め水力は、貯水した水を水車に流すことにより発電する。揚水の場合は、貯水イコール蓄電である。そして、「これからは柔軟な運用がさらに広がりそうだ。」と述べている。今やっているのが、その類いの運用ですよと言いたいが、理解せずに記事を書いている。

3月22日のデータは公表されていないが、今年の1月6日の雪の日の発電データは東京電力パワーグリッドのでんき予報過去データからピックアップすることができる。それにより作成したグラフが次である。なお、発電とは東京電力パワーグリッドに接続された発電機による発電であり東京電力とは限らない。

Tepcosupply20220106

比較のため、前日の1月5日のグラフは以下であった。赤が揚水発電で黄が太陽光発電である。6日は、昼間揚水で発電した電気が多い。一方、5日は昼間太陽光による発電が多かったので、昼間は揚水運転で水をポンプアップしている。グラフでゼロより下に伸びているのが揚水運転である。

Tepcosupply20220105

連携線となっているのが、東北系統及び中部系統との電気のやりとり(合計数値)である。私は、日本で電力供給に係わっておられる企業や関係者の方々は、それなりに任務を果たしておられると考えている。批判は、自由であるが、誤解を生むような批判は避けるべきと考える。

なお、前のブログで電力取引所の価格が1kWh80円になったことを書いた。自由化された卸電力市場で電力を購入し、消費者に販売している企業も存在する。今後、清算取引になっていくと、倒産する電力販売会社もでてくると思われる。

| | コメント (0)

2022年3月24日 (木)

電力需給逼迫は本質を見極めるべき

東京電力管内(正確には東京電力パワーグリッド送配電網管内)の電力需給が逼迫しているとして、3月22日は政府が支障のない範囲での節電協力を呼びかけた。16日の地震で火力発電所の停止が続き季節外れの寒さが大きく関係しているが、中には原子力推進とか送電網整備とかを述べる人もおられるようだが、何がどうしたのか、正確な分析が重要だと考える。

1)3月22日の東京電力パワーグリッド電力供給データ

各送配電事業者は、でんき予報というのを公表しており、東京電力パワーグリッドの3月22日の電力供給カーブは次のチャートの通りである。3月23日の供給カーブ並びにそれぞれの日の太陽光発電実績も記載した。

Tepcosupply20220322a

需要・供給カーブは午前9時頃までは22日も23日も余り差はない。それ以後19・20時頃までは23日が低かった。一方、太陽光発電は23日では最大1270万kWを越える発電であったが、22日は雪・雨の日であったことから最大178kW程度に止まった。1日の違いで、電力需給の姿は大きな差があった。

2)電力取引所取引価格

一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)が運営している卸電力市場の東京エリアプライスを見てみると次のチャートの通りである。

Tepcosupply20220322b

スポット取引は翌日渡しであり、23日に24日の価格が決定している。22日と23日の取引価格は午前7時から午後11時過ぎまで1kWあたり80円であった。前日に決定する必要があるが、工場設備の一部を停止してでも外部に売電できる電力は卸市場で電力を販売すれば良い電力ビジネスをすることができた日であった。需要が大きければ、価格は上昇する。当然であり、そのことが正常な供給をもたらすことになる。

3)この冬最大の需要であったのか

今年は1月6日が雪であり、需要が大きかったが、太陽光発電は少なく3月22日と同様な日であった。そこで、1月4日、5日、6日、7日と2月10日、そして今回の3月22日と23日の7日間の需要供給カーブを比較するグラフを書いてみた。

Tepcosupply20220322c

今回の3月22日の受給カーブは、5000万kWを越えた1月6日や2月10日より下の方に行くのである。でも、今回は供給力が少なくて需要逼迫。

4)運転停止中の発電所

運転停止には様々な要因があり、3月16日の地震の影響が全てとは言えないと考える。例えば、JERA広野5号機は3月18日(ここ )に復旧。福島ガス発電の福島県相馬郡新地町にある2基で1180MWのLNGを燃料とするGTCC火力発電所は16日の地震で運転を停止していたものの3月20日には再開(参考ここ )。定期点検での停止も他の発電所との計画とすりあわせて決定しているはずである。いずれにせよ、発電所の運転停止と需給の逼迫は関係性はあり、調査は必要と考える。

なお、地震による停止中の主な 発電所は、この資料が参考となる。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧