2009年11月 5日 (木)

日本航空の問題は経営にあり

日本航空の問題は、解決に向かっているのではなく、悪化が深刻化しているように思えます。

日経 11月5日 日航対策本部、来週に方向性 年金減額は「国民目線で」

読売 11月4日 日航の格付け、2段階引き下げ…S&P

1) 日本航空は営利会社

営利会社と言うと、マイナスのイメージを持つ人がおられるかも知れないが、市場競争による合理的なコストで仕入れを行い、市場競争により合理的な料金でサービスを提供する会社です。競争原理が、制度や技術の革新・改革を生み出し、更に人々や社会・産業を豊かにします。そのような良い循環サイクルを期待します。

しかし、分野によっては、営利事業とせず政府事業が、望ましい分野もあります。例えば、上水道、下水道もそうでしょうし、道路建設もそうでしょう。その点、航空輸送事業は、私は営利事業であるべきと考えます。新機種の航空機が、常にでてきます。必ずしも、新しいのがよいとは断言できません。例えば、ボーイング737なんて、40年も前の1968年にルフトハンザが初めて就航させました。少しずつ改良も加わり、最新機はB737-900ERですが、B737の累計受注は8000機を超えています。その会社に一番適した航空機を就航させることが大事な営業戦略です。その会社の客層、運行している路線、メンテナンス体制、資金調達・・・様々あります。それらを総合して、その会社に一番適した航空機の機種を選定するのです。蛇足ですが、かつて、中国の国内線で、B777に乗ったことがあります。多分、私にとって、その時が初めてのB777であったと思います。当時は、JASが広州に飛ばしていた頃です。中国は、これから、すごい国になるだろうなと、実感したことを覚えています。

日航対策本部のニュースを読むと、営利会社の経営に疎いと思われる政治家が、不必要な手を出して、混乱を拡大しているような気がします。日本郵政も郵貯と簡保について、民営化の視点が必要だと思いますが、日本航空は純粋に営利会社としての経営が必要であり、求められているのは、経営改革を実行できる経営者です。

2) 労務問題

日本航空の重要な資産の一つは、人です。安全運行は、計器が担っているのではなく、計器は補助であり、根本は人です。人がいなくなったら、もぬけの空です。そんな重要な人でありながら、日本航空の経営は、なっていなかったと思います。次のニュースが、そうです。読売と朝日で、内容が少し違い、どちらがより正確か分かりませんので、両方を掲げます。

読売 11月4日 旧JAS系乗務員に不利な扱い…経営統合時
朝日 11月5日 客室乗務員の職級、組合で差別 JALに改善命令

楽しく働ける職場を作ることが、企業の重要な経営事項の一つです。日本航空には、残念ながら、それを感じさせない所があるように思えます。対立状態となった組合との関係を解決するのは、容易ではないでしょうが、話し合って解決に努めないと、どうしようもないはずです。企業年金を切り捨てて、組合問題を解決しないなら、根本問題を解決しないだけではなく、更に傷口を深くする可能性もあると思います。JR尼崎事故ではないが、日勤作業による意欲喪失・不安により事故なんてバカな事態は避けたいし、人材の海外流出も悲しいことです。

労務問題も含め、営利企業の経営者として、解決能力のある人を経営者に就任してもらうことが、現在の日本航空の最優先課題だと思います。

3) 厳しい格付け引き下げ

航空輸送事業は、固定資産の額が大きい、設備産業です。日本航空は、第2四半期の発表を行っていないので、2009年3月期で全日空と比較すると次の通りです。

Jal2009114

参考として、トヨタを右端に掲げましたが、航空輸送会社は売上高に対して固定資産が非常に大きいことが分かります。航空輸送会社にとって、長期資金を低利で調達することが、極めて重要なのです。長期資金を低利で調達するには、高い企業格付けを保有していることが一番です。

S&P2段階引き下げの理由は、現状の混乱のみならず、将来についても暗いと見ている結果と思います。企業格付けについては、現在の経営数字よりも、将来の企業見通しの方が、物をいう世界であるとも言えます。日本航空の経営者には、将来の数字(単なる利益の額のみではありません。)と、その根拠を示せる経営者が必要なのです。

4) 政府援助

政府援助としては、経営の合理化を助けることです。国内不採算路線の減便や、どうしても不採算路線が必要であれば、継続のための補助金でしょう。航空機燃料税というのがあります。1キロリットルにつき26,000円です。軽油取引税が、暫定税率で1キロリットルにつき32,100円です。(暫定をなくすと、15,000円)国際線には、他の国の飛行機会社と競争があるので、非課税ですが、道路を使わない航空機に対して、これ何?です。飛行場に支払う離着陸料は別途払うのです。

航空機燃料税は、全日空も負担しているから、競争原理としては、ブレークイーブンです。しかし、不採算地方空港を支えるために、この税金は使われています。平成21年度の航空機燃料税の税収見込みは予算では、1,052億円です。政府は援助をするのではなく、足を引っ張っている部分があるように思えます。不合理だと感じませんか?日本航空の問題は、解決に向かわせているのではなく、悪化が深刻化する方向に向かわせていないか、原点に戻って考えるべきと思います。

民主党政権は、これまでの自公政権の不合理さを改善しようと選挙民が選んだと思います。ところが、民主党政権は、政権を取ると、不合理を解決するのではなく、さらに拡大する方向に進んでいるように感じます。

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2009年11月 3日 (火)

新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種

本日の朝刊で、新型インフルエンザのワクチン接種について、次の政府広報が掲載されました。

政府広報/厚生労働省 新型インフルエンザ ワクチン接種について

1) 接種回数

「接種回数は、現在2回としていますが、今後、国内データや海外の知見など科学的根拠に基づき、1回にできるか検討します(13歳未満の方は2回です)。結果は速やかにお知らせします。」と書いてあります。

マスコミは一時、1回の接種で効果があることが確認されたので、1回にすることを政府は決定したと報道していたと私は記憶します。いかにも、アホのマスコミ人間が、世の中を狂わせるという見本のように思いました。

この10月31日のロハス・メディカル”新型インフル 「マスコミ報道に憤り。議論続け、逐語で公開を」 森兼氏”に書いてあることが、真実であると思います。私の理解している言葉で言えば、(多分マスコミより正確と思います。)次の様になります。

  • 通常のインフルエンザ ワクチンも製造をせねばならず、どうしてもワクチンの製造数には限界がある。
  • 流行を防ぐには有限数のワクチンを、どの様に接種することが最も有効・効果的であるかの検討が重要である。
  • 多くの意見を聞いて、結論を出す必要がある。日本で、接種も始まっていないのに、結論を出すのは時期尚早である。
  • 現段階では、2回である。しかし、13歳以上については、今後の検討結果により、1回にすることもあり得る。

1回と2回の接種について、例えば1回だと60%の人に有効で、2回だと80%の人に有効であったとした場合、1回を選択して、希望者ほぼ全員が接種を受けられるようにするか、2回で接種を受けられない人が生じるのをやむなしとするか、そのような感じと思うのですが、難しい選択と思います。いずれにせよ、100%にはなりませんし。

2) 費用

1回目3,600円、2回目2,550円と書いてあり、そうすると2回分で6,150円を要します。以外と高いですよね。健康保険で、治療を受けると30%の自己負担で済むのにと思います。もし、大流行すれば、インフルエンザ治療費で健康保険の財政がパンクするなら、意味がないのに。

2回接種の方針が変わらない13歳未満の子供については、全額政府負担か、せめて公共交通料金と同じ50%割引にすべきだと思います。民主党も、補正予算執行停止で捻出した約3兆円は、インフルエンザのワクチン接種に振り向けることをすべきだと思います。

子供2人が政府負担となれば、それだけで12,300円の出費が助かります。

3) インフルエンザ対策

これもこの10月18日のロハス・メディカル”新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」”によいことが書かれています。全て、当たり前のことですが、最後の「医学的なことの中で一般人でも知っておいた方がよさそうなこと」が、気に入りました。

社会防衛のためには、かかった人は休むということが最も大切。休むことを容認する風土を作る必要がある。自治医大病院では、発熱した者は勤務を認めないことにした。性善説で証明も何も要らない。特別休暇として、解熱から48時間経過するまでは有休も減らない形で休ませる。保育園などが休みになってしまい出勤できない場合も同様の扱いにする。

中間管理職の中には、部下を甘やかしてはならないといったスタイルで仕事をされておられる方がいます。しかし、リスクを考えると、自分の部署の多くの人間に広まる危険性があり、下手をすると社会の多くの人に感染を広げる可能性もある。勿論、中間管理職のみが悪いのではなく、会社のトップが理解して、会社全体で有効なリスク管理をする必要がある。新型インフルエンザ(豚A/H1N1)は、それほど恐ろしいインフルエンザではないようで、2-3日休めば回復するようです。それでも、大流行は避けるようにすべきです。それには、人間的な生活が一番重要ですよね。

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2009年11月 1日 (日)

日本航空への政府介入に反対する

民主党無茶苦茶政権は、庶民の敵でしかないのかなと思います。

日経 10月30日 「日航再建対策本部」を設置 国交相が本部長、年金減額など検討 
日経 10月31日 日航の企業年金減額「特別立法も選択肢」 厚労政務官

1) 恐ろしい懸念

この行き先に何があるかと言えば、将来法律によって、企業年金、共済年金、厚生年金、国民年金が減額されてしまう恐れです。高齢化社会、低金利、減税の先にあるものは、年金支給額の減額です。国会議員を選ぶのは国民ですから、国会議員が法をつくれば、何でもできるという社会は望ましい社会でしょうか?

日本航空の企業年金問題は当事者間で話し合って決めるべきものです。もし、話し合いがつかないなら、会社更生法や民事再生法を使えばよいのです。会社更生法は、会社を更正する法であり、倒産させる法ではありませんから。会社更生法の申請をしても、飛行機は飛ぶのに、倒産させないと啖呵を切って無茶苦茶にする。そんなことが許されてよいのかな?

法では、「XXXの場合は、企業退職給付債務の減額となる。」と言うような条文を入れたら、そんな適用を考える企業が次々と現れるかも知れません。一方、「子会社を含む日本航空の・・・・・」と言うような法をつくれば、企業と個人の間の債権・債務を法が変更することとなり、個人の権利を国家が介入することになり、自由な市場取引を後出しで無理矢理介入する。私にとっては、憲法違反になるような恐ろしい法に思えます。

2) 日本航空の赤字

今は、多くの航空会社が赤字です。全日空はここに第2四半期の決算短信を発表しましたが、税引前損失414億円で、繰延税金資産を積み立てて法人税等を利益として計上し、赤字幅を税引後損失253億円に圧縮しています。

日経 10月14日 日航債務3000億円免除 再生チーム素案、債務超過と判断 なんて報道もありましたが、チーム前原とは何でしょう?私の7月3日のブログに書いたように、2009年3月末時点で日本航空の純資産額は1967億円で、退職給付債務に係わる未認識数理計算上の差異が2561億円あり、これらを合算すれば債務超過です。しかし、新日本が監査をした財務諸表を間違いだと言えるほど私は偉くありません。今でも、新日本を信じています。

退職給付債務8009億円に対して未認識数理計算上の差異2561億円は、確かに大きいのです。しかし、今の世では、多くの企業がそうなっています。ちなみに、トヨタ、ホンダ、日産(2009年3月末)は次の通りです。

日本航空 トヨタ ホンダ 日産
退職給付債務 8009億円 1兆6327億円 1兆4259億円 1兆0871億円
未認識数理計算上の差異 2561億円 4970億円 6438億円 2162億円

純資産額 (トヨタ、ホンダは
その他包括利益を除く)

1967億円 11兆1689億円 5兆3301億円 2兆9260億円

日本航空が8009億円の債務に対して、2561億円の差異ですから、トヨタ、ホンダの比率とほとんど変わりません。純資産額は、参考としての記載で、日本航空に問題なしとは言えないのですが、これ位の会社は多いと思います。トヨタ、ホンダについては、財務諸表が米国基準であるため、私がこれと思う数字にしています。

3) 日本航空の企業年金

企業年金制度は、個別の企業により様々であり、日本航空の企業年金についての詳細は知りませんが、①勤務期間中に労使折半で掛け金を払っていた年金の給付と②退職一時金を有期年金または終身年金として選択した場合の年金給付と聞きます。即ち、退職一時金を受領せずに全額年金とした人にとっては、自分が拠出した掛け金による年金の方が多くなります。

会社にとっては、資金を飛行機の購入に回せるし、従業員にとっては、4%-5%のような利率で確実に運用して年金を受領できる制度であり、日本航空の倒産リスクを無視すれば、年金は賢い選択です。

具体的な金額は、私も分かっていませんが、一方的にJALの企業年金は高すぎるからと叫んで同調するのは、危険な面があることを認識すべきです。

4) マスコミ報道

いつも嫌になるのがマスコミ報道です。どこのマスコミかが、「JALは倒産しても年金債権は労働債権であるから、保護されて優先的に支払われる。特別法で減額しないと、JAL退職者は高額の年金を継続して受領する。」といったような報道をしていた気がします。

企業年金債権も労働債権です。しかし、全額が優先して保護されるとまで言い切れないと思うし、一時金とするか年金とするかの選択をするのであれば、年金でも社内預金と近くなるのではないか。社内預金の場合は、一般債権として扱われてしまう。

多くの担保債権者も存在するはずで、日本航空の年金受領者を特権者であるかのような報道をしてよいのだろうかと思いました。

5) 日本航空の利権

最後まで、経営者のいない会社だったかも知れない。本来は、再建策を作成して、それを実行するのが、経営者であるが、株主でもない政府に振り回されていた。日本航空は1953年の日本航空株式会社法により政府と民間出資の株式会社となり、この法律の1987年廃止まで、政府の影響下にあった。政府イコール官僚とそれを操る自民政治家のスタイルであり、経営者不存在の会社であった。

どこに飛行機を飛ばすかは、会社が決めるのではなく、政府が締結する航空協定の相手国にナショナルフラッグとして飛んでいく。経営者が当事者能力を持っていないから、不合理な労務管理に走り、結果として多数の労働組合が結成される。日本航空は航空機購入のクレジットメモを利用して利益の前倒しをしていたとの報道があったように思います。実は、それ以前には、リベートと称した現金値引きを利益に計上し、飛行機の方は取得原価の減額をせずに計上すると言うような会計処理をしていたと思います。でも、他の会社もやっていたように思いますが。

不採算国内路線を押しつけられ、高い離着陸料を払わされ、政治家達から好きなようにされていますが、極めつけは、旧JASを統合して救済する役目を押しつけられ、日本国内に幾ら多くの不採算飛行場を建設しても、大丈夫なようにさせられたことではと思います。

政治家が巧妙だったと言えるかも知れないし、日本航空経営者が無能力であったと言えるかも知れないし。余りいい気分はしません。でも、民主党が爪を伸ばすとまでは、私も思っていませんでした。

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2009年10月24日 (土)

吉本興業TOBのエンターテーメント

お笑いの吉本興業のTOBをクオンタム・エンターテイメント株式会社(資本金150万円)が、9月11日に発表し、同時に吉本興業も賛同を発表していました。

日経 9月12日 吉本興業へのTOB発表 投資会社

1) TOBの実態

最大37,485,962株~最小26,240,174株を1,350円で購入するので、506億円~354億円のTOBの規模ですが、これを資本金150万円の会社により実施するので、いかにも吉本興業的であり、裏があるように思えます。

TOB成立の場合には、クオンタム・エンターテイメントの資本金は増資され、次の会社の出資が合意されています。

株式会社フジ・メディア・ホールディングス 30億円
日本テレビ放送網株式会社 20億円
株式会社TBSテレビ 20億円
株式会社テレビ朝日 20億円
大成土地株式会社 20億円
京楽産業株式会社 20億円
ソフトバンク株式会社 15億円
株式会社テレビ東京 10億円
株式会社電通 10億円
株式会社フェイス 10億円
ヤフー株式会社 5億円
大成建設株式会社 5億円
岩井証券株式会社 5億円
            合計 190億円

クオンタム・エンターテイメントは、日経記事にもあるように、ソニーの元最高顧問出井伸之氏が社長です。但し、TOBが成立しても吉本興業の現大﨑洋他の経営陣は引き続き、取締役として留任することが合意されています。

TOB資金が506億円~354億円故、最大316億円が不足しますが、これについては三井住友銀行、住友信託銀行及びみずほ銀行から極度貸付限度額合計300億円の融資を受ける予定となっています。

誰が主役であるのか、糸を引いているのか、分かりつらいTOBです。なお、TOBに対して賛同する吉本興業の発表はここにあり、クオンタム・エンターテイメントのTOB発表も添付されています。

2) TOB反対株主

最初は、時事通信の記事を掲げます。

時事ドットコム 10月19日 吉本興業TOB中止求め提訴=「少数株主の権利侵害」-大阪地裁

TOBに反対する株主がここにホームページを立ち上げられ、ホームからたどっていくと、その内容は実に面白いのです。

例えば、次の文章も。

吉本興業株式会社は、関西から笑いの文化を生み出した企業であり、上場後、これらの笑いの文化が好きな庶民達によって育ってきた企業である。その笑いの文化を愛し育ててきた多数の個人株主から、その株主の地位を、大手メジャーのテレビ会社やファンドに言わば「身売り」するのが、今回の「TOB」の姿である。

通常だとTOB価格の妥当性が争点となるのでしょうが、それのみならず、TOB後に、全部取得条件付種類株式とし、少数株主の持ち株数では、普通株式が交付されないように、2/3以上の多数決株主総会特別決議で少数株主を排除することが、権利の濫用であるとの点も、裁判所の見解が聞きたい。会社法で出てきた考え方であり、是非争って欲しいと私は思います。

被告らが共謀してなそうとしている「全部取得条項付種類株式」制度を用いて株主総会の特別決議により株主権を多数決によりはく奪することは、この制度が予定している目的に反し、それを濫用して違法に株主権の侵害をなす行為である。

300億円の買収ローンにしても、吉本興業の負債になるのであり、その問題点について述べているのも、面白いと思いました。(300億円は、クオンタム・エンターテイメントが借入れるのであり、吉本興業ではないが、吉本興業が100%子会社となれば、連結で考えれば、同じ。しかも、クオンタム・エンターテイメントの発表には、合併するとあるので、頭の体操をさせてくれます。)

金融機関等の買収ローン総額300億円についても、これがLBOとして買付者の100%子会社となり、合併した後、被告吉本が返済する額となる(手持ち資金が豊富なため短期間で返済できる)。被告吉本が300億円を支払って非上場になって資本構成を変え、新たな株主(メディア、キャリア等の投資家)との繋がりを持つためのコスト、資本支出として、合理性のある額なのか。

3) TOB期日

TOBの期間は、10月29日までです。どうなっていくのか吉本興業のエンターテーメントを見てみたいと思います。

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2009年10月23日 (金)

JR西日本の社外取締役

JR西日本については、事故調査委員会に組織的に接触し、尼崎事故に関する調査報告書を有利にするように働きかけた疑いがあると連日のように報道されています。

読売 10月23日 JR西元社長も事故調と接触、情報入手組織ぐるみ

マスコミは触れていませんが、社外取締役の責任は、どうなのかと思いました。

現在のJR西日本の取締役は14名で、うち5名が社外取締役です。この社外取締役のうち、尼崎事故が起こった2005年(平成17年)4月の時点で、就任していたのは平成12年6月から取締役の立石義雄氏(オムロン会長)と同時期の平成12年6月から取締役の野村明雄氏(大阪瓦斯会長)の2名です。

社外取締役が、実際の業務において、どこまで立ち入れるか、疑問はあります。しかし、単に取締役会に出席して、その席上で自らの知識、経験等を生かして、取締役会の意義を高めるのみが、社外取締役の活躍であってよいのでしょうか?会社法の、社外取締役の定義は、単に次の2条1項15号の定めです。

社外取締役 株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。

非常勤とは定めていないし、取締役会への出席義務のみとしていません。取締役会で、業務執行を行う取締役を決定するのであり、非常勤取締役を決定しても構わない。立石氏と野村氏は、JR西日本の取締役への選任前に、別の会社の重要な役職にあり、株主総会での選任においても、非常勤であることが暗黙の了解であったと言える。

しかし、これでよいのだろうかと深い疑問を抱きます。社外の眼で、経営にあたる取締役を加えて、経営とガバナンスをよくしようとする考え方が、社外取締役制度と思います。JR西日本の場合で言えば、国鉄から民間会社となり、国鉄時代とは違った眼を入れた。鉄道会社にとって最重要である安全についても、社外取締役は期待されることが大きかったと思うのです。

立石氏と野村氏への非難ではなく、社外取締役の現状についてです。会社は、ガバナンス強化とのうたい文句で、社外取締役を提案する。しかし、社外取締役の活動は、形骸化するよう仕向ける。本業を別に持っている兼任の取締役は、取締役会で提起される問題だけでも大変で、ほとんど余裕は出てこないのが実状と思います。

社外取締役とは、経験なんかより、常勤で業務を執行し、問題意識を持ち、意欲的な人を選ぶべきではないか。この10月21日 日経 社外取締役、兼務が過半数 日経調査、「3社以上」も4割なんかは、「社外取締役の人材不足が顕著になっている。実態はすでに人材枯渇の状況にある。」と書いていますが、時間の取れない片手間で取締役をする人を社外取締役にしても、どれほど優秀でも、意味がないことをJR西日本は、組織として、我々に教えてくれているのではと思いました。

団塊の世代の大量定年時代です。優秀な方が、大勢おられると思います。そんな人を取締役として選任し、会社の業務全般にわたり社外取締役として監視し、業務改善、ガバナンス強化、コンプラ他様々なことについて提案してもらうのです。

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2009年9月12日 (土)

デルタの日本航空への出資

日本航空に関して何度も書いているので、やはり今回の報道に関しても、コメントをと思いました。

日経 9月12日 日航再建、思惑が交錯 デルタとの提携、国交省後押し

1) 航空法

日本航空は、当たり前ですが、航空法第100条の許可を受けて航空機を運航している会社です。ところで、航空法第101条(許可基準)第1項五号が、次の条文です。

 申請者が次に掲げる者に該当するものでないこと。
 第4条第1項各号に掲げる者
 省略
 会社であつて、その持株会社(昭和二十二年法律第五十四号)第九条第五項第一号 に規定する持株会社をいう。)その他の当該会社の経営を実質的に支配していると認められる会社として国土交通省令で定めるもの(以下「持株会社等」という。)が第四条第一項第四号に該当するもの

そして、第4条1項は、次の通りです。

第四条  左の各号の一に該当する者が所有する航空機は、これを登録することができない。
一  日本の国籍を有しない人
二  外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの
三  外国の法令に基いて設立された法人その他の団体
四  法人であつて、前三号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの

日本航空の場合、航空輸送業務をしているのは日本航空インターナショナル、日本トランスオーシャン航空、ジャルウェイズ、ジャル エクスプレス、日本エアコミューター、北海道エアシステム、琉球エアーコミューターとジェイエアの8社であり、上場している株式会社日本航空は持ち株会社ですから、第4条1項四号の外資規制となります。従い、デルタが出資するとしても、33.3%以下です。

2) デルタの狙い

当然、様々なデルタの世界戦略の展開であることは、間違いないはずです。但し、航空法の規制により子会社にはできません。でも、ある程度の株数を持てば、相当の影響力を持て、日本航空と様々なデルタ路線に合致した提携を進めることができると思います。

8月20日の日本航空の経営健全化では、日本航空の現在の業績不振・赤字の最大の理由は世界不況による収入減と私は書きましたが、そうであれば現在の日本航空株価160円は魅力です。読売 9月12日 日航が詰め交渉、デルタ「500億円出資」打診かでは、500億円なんて数字もあがっていますが、500億円として1株160円では、300百万株強となり議決権のないA種株式を除く発行済み普通株式総数2,732株の10%を超え、デルタ出資後のデルタ出資割合は約10%となります。

約10%を取得して、有利なビジネスを展開する。そして、将来の売却もあり得ると思います。株価チャートを見れば、一目瞭然ですが、近年は右下下がりの一直線の感じですから。何年かすれば、株価300円位は十分あり得ると思いますから。

3) 日本航空の観点

日本航空の経営にとって一番大変なことは、私は資金繰りと思います。7月3日の日本航空と全日空の比較で書きましたが、2009年3月末時点における長期債務の1年以内に決済が必要な金額は次のように、2259億円です。

2009年3月末残高(単位:億円) 日本航空 全日空
1年以内返済長期借入金 1,284 811
1年以内償還社債 520 300
1年以内決済のリース債務 455 118
合計 2,259 1,229

2009年6月期の第1四半期において、営業活動によるキャッシュフローは595億円の資金不足でした。長期借入金は借入増が623億円で返済額が284億円でした。返済より借入が多かったのです。日本航空の場合、借入金のなかで政策投資銀行からの割合が大きいので、他の企業と少し異なる点はあるでしょうが、経営者としては、不況だからと手をこまねいていてはならず、10%程度資本を受け入れて、新規提携関係を計ることはあり得ると思います。

デルタの資本を受け入れることは、国内不採算路線からの撤退が更に容易に進められることもあると思います。完全撤退でなくても、減便でも良いのですから。

4) オープンスカイ

オープンスカイの広まりが、これから先、どのような影響を与えるか分からない面がありますが、少なくとも競争は更に激しくなると思います。民主党政権になって、オープンスカイが更に進む可能性があると思います。そのあたりも、デルタの戦略に入っているのではないか。日本航空経営陣にとっても、日本政府から関与を受け、足かせをはめられ、自由が失われないようにするために、デルタの資本参加を意図している。

そんな可能性もあるのではないか。いずれにせよ、単純な○×ではなく、これからの航空産業の行方を見ていきたいと思います。

そう言えば、三菱MRJも胴体縦径を2インチ半大きくしました。100人乗りのストレッチ型も生産するのでしょうね。(三菱航空機 MRJ最新状況説明会) 

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2009年9月 3日 (木)

カブドットコム証券の問題点

社員のインサイダー取引があったカブドットコム証券を、8月末で同社取締役を辞任された磯崎さんが9月1日のブログ カブドットコム証券社外取締役辞任について(コーポレートガバナンスについてのご参考)でカブドットコム証券の調査報告書に関して書いておられます。その結果、あちこちのブログで再度カブドットコム証券社員のインサイダー取引および特別調査委員会「調査報告書」取り上げられています。

私も、2009年7月31日にカブドットコム証券の調査報告書を読みましたを書いたことから、補足を致します。

1) 不祥事発生には素直に反省し改善すること

当然のことですが、不祥事が発生した場合には、素直に反省し改善することが重要と考えます。カブドットコムで起こったことについて、調査報告書が述べていることは重要です。関係当事者以外に漏れてはならない情報を、誰もがアクセスできるサーバーに置いておくことは、企業として問題があります。情報管理は、重要であり、PC上の情報は、漏洩しても発見できないことがあります。社内であれば、悪用の心配がない情報が多いと思いますが、悪用が起こりうるリスクが存在する情報は、それなりに管理をすべきと思います。

2) インサイダー情報を全社員にメールで通知する

「これは、インサイダー取引となる情報です。」と言って、社長が全社員にメールすることを、どう思われますか?私は、モラルがないと思うのです。小さな企業なので、多くの社員が知っているからと言って、メールを全社員に発信するのは、その結果について何も考えずにしていると非難されても、致し方ないと思います。リスクは、常にある。しかし、リスクを拡大することは、してはなりません。情報管理は、企業の信用を確保する上で、重要です。

3) 特別調査委員会や第三者委員会報告書の読み方

特別調査委員会にしろ第三者委員会にしろ企業が調査を委託した委員会であり、自ずと制約があるなかでの調査であり、委託した契約書の範囲内の権限でしか動けない中で、作成された報告書です。間違いがあるかも知れないが、その企業の既存組織が調査するより深い調査や真実に近い事項を指摘しうる可能性があります。だからこそ、カブドットコムは久保利英明弁護士を含む3名からなる特別調査委員会に調査を依頼したはずです。

企業が報告書を公開するかどうかは、企業の意思ですが、重大な不祥事であれば、コメントを付けて公開するのが適当と思います。読む人は、そこから、何を学ぶかであろうと思います。

4) 委員会設置会社

カブドットコムは、監査役が存在しない、委員会設置会社です。監査役は、会社法381条1項の定めのように、取締役の職務の執行を監査します。一方、取締役からすれば、自分が正しいことをしているからには、監査役とは不要な存在であり、閑査役でいて欲しいのが本音という部分があります。しかも、監査は、取締役の判断が正しいかどうかの審査ではなく、職務の執行が正しいかどうかであり、法令違反はないか、代案等についての検討も適切に行われ取締役として会社から委託された業務を執行しているかです。

日本の株式会社は監査役制度でガバナンスを採ってきたのですが、他国ではその国の習慣や法体系の関係もあり、まちまちです。そのような中で、平成14年5月改正-平成15年4月1日より施行の商法特例法改正により日本にも米国式の委員会設置会社が導入され、委員会設置会社においては、監査役・監査役会は存在せず、取締役のなかから選ばれた監査委員会が監査役・監査役会の業務をすることとなりました。米国の上場会社で多い形態は、1名のみが執行役で、他の取締役は全て取締役会の時やその他必要時に取締役としての職務を行う形態です。例えば、GMのBoard Directorsの名簿がここにありますが、ChairmanのEdward E. Whitacre, Jr.さん以外の人達は、すべて他組織での本職の肩書きが書いてあります。良い悪いの前にカルチャーの違いがあります。

日本での監査役会設置会社と委員会設置会社の違いで気にすべき点は、私は、会社法390条3項による監査役会設置会社の常任監査役の選定であると思います。委員会設置会社においても監査役の任務をする取締役を内部で決めても良いのですが、一方で、取締役は全員が取締役としての職務履行の義務があり、個々の判断について、その内容を検討し、取締役における決定に参加しなければならないと私は解釈します。そうすると、監査役としての職務と矛盾する点が出てくると思うのです。

委員会設置会社において会社法405条により監査委員会が監査委員を選定して、この監査委員を常任とすることも可能ではありますが、そうすることは、法律上の義務ではない。常勤の監査役が会社内で職務執行をしているのが、日本の従来の風土にあった会社ガバナンスの形に思えるのです。

カブドットコムは、従業員96名の会社です。この会社のガバナンスに委員会設置会社が良かったのだろうかと思うのです。監査役会設置会社と委員会設置会社については、様々な意見があると思います。私としては、私の意見に対する忌憚のないご批判なりをコメント欄に書いていただき、勉強することができればと思っています。

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2009年8月20日 (木)

日本航空の経営健全化

日本航空が過去最大の四半期赤字となったニュースに続いて、国土交通省が、日本航空の経営改善支援のための有識者会議を設置するとのニュースがあります。

日経8月7日 日航の4~6月期、最終赤字990億円 四半期で過去最大の赤字
日経8月18日 国交省、日航支援へ有識者会議設置

果たしてどうなのか、7月3日に書いた日本航空と全日空の比較に続き、今回も日本航空について書いてみます。

1) 日本航空の四半期業績(4月-6月)

日本航空の第1四半期の営業収入は3345億円で税引後純損失990億円でした。年間純損失4000億円近くなるので、巨額の損失であることに間違いはないでしょう。2009年3月期の業績が大赤字で話題になったトヨタの純損失は、4369億円でした。ちなみに、これより巨額の損失を計上したのは、トップが日立製作所7873億円、第2位野村HD7081億円、第3位みずほFG5888億円で、トヨタの次の第5位がパナソニック3789億円でした。なお、いずれも連結純損失です。

考えようによれば、いずれも超大企業で、これだけの赤字があっても存続できる優良企業です。日本航空も優良超大企業と言えるか、全日空と比較をしながら見てみたいと思います。2009年度第1四半期の日本航空と全日空の損益計算書(単位:百万円)を掲げます。

Jlana20091q

実は、日本航空のみならず、全日空も大赤字です。但し、営業損失、経常損失、税金等調整前純損失は日本航空の損失は全日空の約半分。しかし、税金を加味した純損失では全日空の損失額は日本航空の約30%になっています。その理由は、全日空が損失が繰越欠損金として将来の課税所得を相殺し、税負担を減額するとして、その対応額の法人税等の戻り187億円を計上していることによります。今後の税負担の見通し、即ち企業所得の計上が、確定的であったかどうかが、一つの明暗を分けてしまいました。

収入の減少に対して、事業費の減少が小さいことが分かります。航空輸送事業の特徴で、コストにおける固定費の占める割合が大きいからです。

2) 航空輸送事業の分析

セグメント情報によれば、日本航空の収入の86.9%が航空輸送事業であり、全日空は87.7%です。そこで、航空輸送事業の収支を比較をしてみると、次のようになりました。

Jlanaat20091q_2

上の表の前年同期比を見ると、両社の間で、さほど大きな差がないことが分かります。特徴は、国際旅客収入の減少です。日本航空の場合は、国際旅客収入が従来から国内旅客収入より大きかった。両社とも落ち込みが大きいのが、国際旅客と国際貨物であり、その影響は業務構造の違いの結果、日本航空の収入の減少の方が大きかった。

コストを比べると、収入減少が大きいから多少はそれに比例する部分もあるが、日本航空の方が、コスト低下は大きく、日本航空の努力の結果もあると思います。

3) 航空輸送事業の収入減についての検討

次のグラフは、全日本空輸の第1四半期決算説明資料からのコピーで、国際旅客収入について説明している部分です。旅客数の減収が大きいのですが、特にビジネス客の減少が大きく、しかも単価(YとCの加重平均と思いますが)の減少も見られる。

Ana20091qinternational_2

国際旅客収入の減少は、航空輸送業者の営業努力が足りないからではなく、世界的な金融危機と不況によるビジネス客の減少と同時に、企業の費用削減によるビジネスクラスからエコノミークラスへの移動が生じていることによる影響があると思います。

日本航空の決算説明資料には同種のグラフがないので、同社の月次輸送実績から、次のグラフを作成しました。Yクラス、Cクラスの区別がないので、国際線と国内線の区別で作成しました。

Jalpassenger20091q_2 

旅客の輸送人数・距離は日本航空月次輸送実績にあり、2009年度の第一四半期を1年前の2008年度第1四半期と千kmあたりの単価で比較しました。

日本航空の旅客輸送平均収入(円/千km)
2008年1Q 2009年1Q 前年同期比
国際旅客 13,640 9,043 66.3%
国内旅客 20,670 20,137 97.4%

国際線は、平均収入単価が低くなっており、全日空の上のグラフの単価の4月-6月が60%と70%の間にあり、全日空の場合とほとんど同じと思います。同じでなければ、乗客は安い方に流れるのであり、国際線は2社の市場争いのみではなく、多くの航空会社間の争いであり、自然に市場は形成され、当然の結果と思います。

4) 日本航空の今後

決して暗くないと思います。今回は、国際線の単価の下落の影響が大きく出たのが、大赤字の一番大きな理由と考えます。特に、今回の国際的不況の一番激しく出ているのが、金融関係であり、金融関係者の多くは、国際的に飛び回っていた。会社として利益を大きくするには、成功報酬でも何でもいいから、連中を目一杯働かせる。ビジネスクラスに乗せて、休憩を取らせず、時差も関係なく働かせるのが会社の方針でした。そんな人達の多くが職を失ったりしたのです。日本の国際的に動き回っている金融関係者も同じで、仕事が少なくなれば、出張を減らすのは当然です。

世界不況が何時までも続くわけではありません。近い将来に回復への軌道に乗り始め、2-3年先には回復したと言える状態になると思います。その時に、日本経済が回復しているかどうかについて、私は余り自信がありません。しかし、日本経済が回復していなくても、世界経済が回復すれば国際旅客輸送は、ほぼ元に戻ると思います。世界経済が復活すれば、世界経済を飯の種に、ビジネスマンも金融関係者も世界を駆けめぐります。日本のビジネスマンも金融関係者も同じです。

成田に発着枠を一番多く持つ会社が日本航空です。その結果、漁夫の利が転がり込む。これが、私のシナリオです。そうなった時に、利益を享受するように、生き延びて行かなければなりません。

5) 日本航空の悲観材料

日本航空の悲観材料こそ、冒頭にあげた国土交通省を初め、政府および政治家の介入の可能性です。郵政民営化については、郵便事業という政府か民間か、どちらがよいかグレイな部分がありましたが、航空輸送事業は民間事業であるべきです。何故なら、Open Skyも存在する多くの国の航空輸送事業との市場競争だからです。市場競争原理により発展させていくべき事業に政府は介入すべきではありません。

例えば、2009年6月の国内線で座席利用率の一番低かったのは沖永良部ー与論で17.9%、次が伊丹ー種子島18.4%でした。離島空路は必要ですが、沖永良部から日本航空は2日3便運行し、与論からは那覇に4便です。ワースト2の種子島からは、鹿児島に1日3便運行しており、赤字の伊丹ー種子島直行便を運行する理由はないと思うのです。

過去1年間で、運行を中止した国内路線が15あり、第1四半期決算説明補足資料によれば国内線での今後の減便が6便で増便が1便とあります。不採算路線の損失を正常な利益を出せている路線の利益で埋め合わせることは、おかしい。株式会社としては、不採算路線は、撤退であり、存続するのであれば、補助金による支援や搭乗率保証を受けるべきです。しかし、政府保証や政府支援を受けていれば、極めて不自由になります。

政府、役人、政治家にとっても企業の採算は重要です。しかし、時には、それ以上に大事なものが、政府、役人、政治家には存在します。不採算路線から撤退する自由を失ったら利益計上体質には変質不可能です。国際線にしても、National Flagの時代ではなく、自由競争の時代です。利益が生まれる、即ち利用者が最も利用する路線の運行を増加し、利用者の利益になることをすれば、国際線においても、定時運行や安全性の信頼を得ている日本航空であれば、高収益を確保できるはずです。逆に、日本航空がLCC(Low Cost Carrier)と競争して勝てるとは思いません。成田の発着枠を最大限に生かした戦略を建てること。それは、民間企業でないとできないと思います。

少し開港が遅れた富士山静岡空港に日本航空は6月4日から、福岡3便、札幌1便を運行していますが、6月の座席利用率は福岡57.7%、札幌84.8%でした。福岡便はやはりもう少し高い座席利用率が欲しいでしょうが、現状これ位かもしれません。しかし、6月は初就航効果による高い利用があった可能性があり、見通しによっては、撤退を決めるべきと考えます。但し、富士山静岡空港については静岡県による搭乗率保証があり、実際に受領できるか、いつまで続くか、様子を見る必要があると思います。静岡県にも財政問題はあるはずだし、それを良いことに、継続するだけが能ではないと思います。

3)の最後の部分に千kmあたりの平均単価の表を書きましたが、航空機はバスより安いし、国際線になると新幹線よりはるかに安いのです。従い、もう一つの課題が日本国内の輸送をどうするのかの基本線です。航空機、鉄道、バス、乗用車が存在する。空港と鉄道と道路の整備の調和です。現状では、高速道路を建設し、新幹線網を拡大し、空港を建設しているが、統合的な基本プランはなく、調和が取れていると思えない。現在日本において、旅客機が使用可能な空港は富士山静岡空港を含めて98あり、茨城空港開港で99になります。本当は、航空機、鉄道、バス、乗用車の棲み分けが必要です。狭い日本、そんなに空港作ってどうするの?です。主要空港から鉄道と高速道路が便利よく伸びていれば、空港の数を減らす変わりに、主要空港を大きくする。そうすれば、航空輸送費も低くなるはずです。

旅客輸送の基本プランこそ、国土交通省の仕事です。基本プランを国民と事業者に示し、活発な意見や批評を受けて、よりよい基本プランに発展させる。国土交通省以上に政治家が悪かったと思いますが、政治家の言うことを聞かない、正しいプランを作成し、国民に投げかけるのも役人の仕事として重要です。

日本航空の健全経営は、基本プランではありません。基本プランの中での、事業者の市場競争が健全経営を育むのです。従い、現取締役(経営陣)に政府援助を受けて再建しようという人が存在するなら、危険なことと思います。私だったら、執行役としてCFO(Chief Financial Officer)を外部から起用し、相当の権限を与えます。それで、必死になって経営健全化に取り組みます。また、場合によっては、政府援助を受けるより、民事再生法を選ぶ決断をするのが、本当の経営者であると思います。

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2009年7月31日 (金)

カブドットコム証券の調査報告書を読みました

カブドットコム証券株式会社社員によるインサイダー取引に関しての特別調査委員会「調査報告書」が2009年7月28日にWebで公表されています。

カブドットコム証券 当社元社員に対する課徴金納付命令につきまして

参考となる発表は、証券取引等監視委員会の6月5日付け発表金融庁の6月26日付け発表であったのですが、その内容はよく解りませんでした。上のリンク先「当社元社員に対する課徴金納付命令につきまして」から特別調査委員会「調査報告書」がDownloadできるので、読んでみると恐ろしいことが書いてありました。

1) 個人の犯罪?会社の犯罪?

金融商品取引法違反で課徴金納付命令が出されているのは、個人ですが、会社のガバナンスが悪いために発生したと思いました。餌があるからと、それに手を伸ばすのは、犯罪ですが、本来餌があってはならない場所に餌があり、しかもその餌に手を伸ばして盗んでも、減る物ではなかったら。

情報とは、そんな物。例えば、書き写したとして、元の物は、何の変化も起こしていません。その情報を使って、何かをすることにより発覚する可能性があるだけで、盗んでも使用しなければ、発覚もしない。

問題のカブドットコム元社員は、2度出向しており、出向してた時は出向先の会社に忠誠心を抱くことができたにも拘わらず、カブドットコムに戻ると急激に会社への忠誠心は失われてしまった。(26ページ)

社長がワンマンで、理不尽。そんな会社の恐ろしさです。決して、カブドットコムだけのことではなく、社員による犯罪を生むリスクを感じました。参考までに、報告書23ページにも、次の様な記載があります。

斉藤社長の権威は絶大で、両専務をもってしても、社長の暴走を阻止するのは困難であったように見受けられる。社員の証言によれば、斉藤社長は、社員の前で両専務を怒鳴りつけることもあったようで、その力関係は明白であった。

なお、インサイダー取引をした社員に責任はないと言う主旨ではありません。

2. ネット証券はIT音痴

ネット証券業であることとコンピュータ、PCを使いこなしていることとは、無関係なのだと思いました。問題のカブドットコム元社員は、2回のインサイダー取引をしているのですが、その1回目は2007年3月5日に公表されたTOBです。

これを、彼は3月2日に知ったのです。知った方法は、会社のサーバーからです。何と、関連ファイルが社員にアクセス可能なフォルダーに入っていたのです。信じられないです。当該の文書には、パスワード保護のみであったから、他の関連ファイルから類推ができた。

ITの一番恐ろしい所は、簡単に情報が漏洩する所と思います。従い、ワンマン社長会社は気をつけるべきだし、取引先が、そんな場合も、慎重にすべきだと思います。アリコジャパンの顧客のクレジットカード情報の流出の原因は、少し違うと思うのですが、やはり今後の進展を見守る必要があると思います。

3. 委員会設置会社はガバナンスなしのリスクあり

カブドットコム証券株式会社は、委員会設置会社です。委員会設置会社と斉藤社長権威絶大は、矛盾するように思えますが、実は委員会設置会社はガバナンスなし会社に簡単に変身できることを証明したように思えます。

2回目のインサイダー取引に関するTOBは、11月14日17時発表であったのですが、当日の10時に斉藤社長が社員全員にE-Mailで、17時発表の内容を伝えたのです。まさか!であります。目的は、MUFG関係の証券関連業務に手を伸ばしていきたかったから、副代理業務を請け負った。その結果、社内でも、TOBの事実を知っている関係者数が前回より多かった。めんどくさい、E-Mail送っちまえだったのでしょう。

委員会設置会社ではなく、取締役の業務執行を監査する役割の監査役会が設置されている会社だったら、もしかして、このようなバカなことをする社長を牽制し、身をはってでも、防止すべく動いた監査役がいたかも知れないと思うのです。既に、大株主はMUJGであり、社長のご機嫌を取るよりは、この時に過半数を得るMUFGが望むことをする方が、役員にとっても社員にとっても賢い選択であったはずなのです。

MUFGは三菱UFJ証券を持っています。カブドットコム証券については、顧客だけで良かったのかも知れませんし、それ以外は、有能な社員がMUFGに参加してくれれば。初めから、斉藤社長は不要だったでしょうね。この辺りの、意図・構想を想像してみると面白いですね。

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2009年7月15日 (水)

高知医療センターPFI破綻

2008年12月19日に高知医療センターPFIでも問題浮上を書きましたが、高知新聞 7月7日病院PFI 「円満解約」の方針確認のように解消の方向に進んでいます。

円満解約と書いていますが、破綻でしょうと言いたいのであります。即ち、高知医療センターPFIは、巨額の赤字発生を続け、その解消の見通しが立っていなかったのですから。例えば、高知新聞 6月17日 高知医療センター 赤字21億円 との報道があります。

なぜ、PFI解消となったかですが、高知新聞 6月16日 高知医療センター PFI解消へ協議 の通り、オリックス子会社の高知医療ピーエフアイ(ホームページはここ)も赤字に耐えかねてギブアップを高知県・高知市病院企業団に申し入れたようです。

しかし、これらを県民や市民に対して今もだまし続けているような気がします。この7月9日の高知新聞の記事ですが、表題「高知医療センター 直営化後も努力必要」は、良いとして、本文の中に、「PFI事業終了による経費削減効果」と尾﨑正直知事が8日の県議会で発言したと言うのです。

それでは、PFI事業とは高くつく方式であると認めたことと考えます。その時々の都合で、何でも正当化する人々が存在するようです。それでなくても、高知医療センターPFIでは汚職もあったし。

高知新聞 2009年03月19日 薄い高知県市の当事者意識 高知医療センター前院長汚職有罪判決

PFIとは、無責任体制を生む土壌を持っています。「民間が入れば良くなる。」との理論は、正しくありません。自治体がやっても正しく管理すれば、効率の良い経営、品質の良いサービス提供が可能です。そこを「民ができることは民が」と言ったアホの言葉にのっかた人がいたのだと思います。

ところで、高知県・高知市はオリックス子会社の高知医療ピーエフアイに幾ら払うのでしょうか?【病院PFI】どこに問題があったのか という高知新聞の6月18日の記事によれば近江八幡市は病院PFI解消で20億円の損害賠償金を払ったようです。実は、病院PFIなので、病院の土地、建物、医療機器等全て高知医療ピーエフアイの所有物のはずです。従い、高知県・高知市はこれらの資産を購入しなければならないのです。2008年3月末の貸借対照表から推定して350億円から400億円程度ではないでしょうか?なお、最新の2009年3月末の貸借対照表と同日に終了する年度の損益経書については、Webを探したが見あたりませんでした。

高知県民、高知市民のお金なのですよね。

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2009年7月 6日 (月)

アマゾンの税金

ネット本屋のアマゾンは、米国の会社であることは知っていましたが、日本で本屋商売をしているのは、子会社の日本法人と思っていましたが、米国法人が直接日本で本屋を開いていたのですね。知りませんでした。

朝日 7月5日 アマゾンに140億円追徴 国税局「日本にも本社機能」

思いつくことを書いてみます。

1) 課税の根拠

日本の出版社が出している本を日本人に売った場合、通常であれば利益(所得)の源泉は日本にあり、日本で税金を払わなくてはならないと考えるべき気がします。しかし、税は気分ではなく、税法に従い、課税されるのであり、税法を調べる必要があります。ところで、アマゾンは、米国ワシントン州シアトルに本社を置くNASDAQ上場(略称AMZN)のAmazon.com Inc.であり、であり、日本の本屋商売は、この会社の在米国子会社がしていると理解します。

朝日の記事には、「日本の顧客との商品契約はこの米関連会社と結ぶ形で、売り上げも米側が得ていた。」とあり、在米国子会社が日本で本屋商売をしている形を採っているようです。この場合は、日米租税条約が関係するのであり、日米租税条約の第7条第1項が次のようになっています。

第七条
 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる

恒久的施設という言葉が使われており、日米租税条約の第5条で定義がなされており、第5条第4項には、次のように書かれています。

 1から3までの規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まないものとする。
(a)企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
(b)企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
(c)以後省略

即ち、倉庫は恒久的施設ではないとされています。

但し、そんな単純な問題ではないはずで、多分日本にあるアマゾンの倉庫を保有しているのは、日本のアマゾン子会社か、あるいは保有しておらず、貸倉庫を利用しているとしても、そこに発注しているのは日本の子会社と思います。

ところで、消費税はどうしているのでしょうね?消費税法第4条は、「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」であり、事業者の定義は第2条1項四号で、単に「個人事業者及び法人」となっているだけですから、外国法人も納税義務があり、納税していると思いますが。

2) 報道は「今分かった。」 しかし、アマゾンは、1月30日に発表

Amazon.com Inc.は、NASDAQ上場ですから、日本の有価証券報告書に相当するForm 10-K (Annual Report)を発表しています。2008年については、2009年1月30日に出していますが、その73ページ(Note 12—INCOME TAXES )に、次の記載があります。

In addition, in 2007, Japanese tax authorities assessed income tax, including penalties and interest, of approximately $119 million against one of our U.S. subsidiaries for the years 2003 through 2005. We believe that these claims are without merit and are disputing the assessment. Further proceedings on the assessment will be stayed during negotiations between U.S. and Japanese authorities over the double taxation issues the assessment raises, and we have provided bank guarantees to suspend enforcement of the assessment. We also may be subject to income tax examination by Japanese tax authorities for 2006 through 2008.

119百万米ドルですから、140億円になんとなく見合うのではと思います。アマゾンは、銀行保証を差し入れたとありますから、正攻法で交渉しているのだと思います。最も、それは当然のことであります。何故なら、日本で納税する場合は、米国で外国税額控除が取れるからです。米国で外国税額控除を受けるためには、誠意を持って交渉することです。

3) 日米交渉

二重課税防止の観点なしで解決はできず、政府間の真摯な交渉は重要と思います。そもそも、日米租税条約が作られた時代には、Webがなかった。改定交渉でも、その解決策が示されないと条約文章に盛り込むのは、困難と思います。

ネットビジネスの場合、クレジットカードで直接外国企業に支払うことが簡単にできてしまう。購入した物は、日本国内でのみ移動することがある。同様なケースが他にもあると思います。2)で掲げたアマゾンのForm 10Kの税金の部分の直前の文章には、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ及び英国における税務調査は終了していないと書かれています。これらの国々では、何がどう問題になっているのか分かりませんが、同様の背景があるのでしょうか。

どう考えるかですが、アマゾンに感謝すればよいのではと思いました。相手の外国会社がケイマン島の会社であった場合、租税条約の適用はないのですが、同種問題があった場合の扱いについて、私も自信がありません。アマゾンであるから、逃げたりはしない。従い、ネットビジネスに対する最適な課税の方法を作り上げる良い機会と思います。

もし、ケイマン島のような法人課税の低税率あるいは無税国を経由して合法的な税逃れができるのであれば、問題は相当深刻です。国税局さん頑張ってください。

なお、この問題を、日本の法人税率が高いから生じたと間違いをしてはなりません。

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2009年7月 3日 (金)

日本航空と全日空の比較

次の2つ最近のニュースが、興しろいと思いました。

日経 7月1日 日航、政投銀などと1000億円の融資契約締結

日経 6月30日 日航優遇「公平性欠く」 全日空、国交省に申し入れ

そして、全日空は、この7月1日のプレスリリース「新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ」の通り、537,500,000株の増資を発表。この増資により払込を受ける金額は、本日の株価320円を基準にして90%を払込金額にすると、1548億円となります。

次の様な、日本航空と全日空を「財務格差一段と 増資か公的融資かで明暗」なんて記事もあったので、両社を比較してみました。

日経 7月2日 全日空・日航、財務格差一段と 増資か公的融資かで明暗

1) 2009年3月期業績

日本航空と全日空の連結損益計算書は次の通りです。

Jalana20097

収入の規模からすると、全日空が71%なので、適切な比較が可能と考えます。また2社とも収入のなかで航空輸送収入が88%を占めています。(両社とも、航空輸送収入のグループの内部収入を含めていますが、旅行事業への内部収入と思いますから、実質航空輸送収入でよいと思います。)今年度と昨年度の航空輸送収入を2社についてグラフにしたのが次です。

Jalanarev20097

国内輸送に関する収入は両社ともほぼ同じで、国際線輸送に関する収入で日本航空が全日空より大きく、旅客収入は2.4倍です。ちなみに、収入を輸送した人数と距離および重量と距離で平均単価を求めると次の表になりました。距離が長いと単価は安くなるはずなので、簡単には言えませんが、日本航空の国際線旅客はほんの少し安いのでしょうか。そして、国内線は、その逆の感じです。いずれにせよ、それほど大きな差があるようには、感じません。

日本航空と全日空の旅客と貨物の平均収入単価
JAL 2008/3 JAL 2009/3 ANA 2008/3 ANA 2009-3
国際旅客(円/人km) 12.5 13.5 14.6 15.0
国際貨物(円/トンkm) 43.0 43.6 42.9 41.7
国内旅客(円/人km) 21.3 21.3 18.5 18.6
国内貨物(円/トンkm) 70.3 76.5 68.7 71.2

2) 両社の航空輸送事業収支

航空輸送事業の事業収支を書いたのが次の表です。(航空輸送費用には、航空輸送事業に関わる販売費及び一般管理費も含んでいます。)

Jalanaplf20097 

さほど、変わらない感じですが、日本航空は609億円の損失で、全日空は48億円の利益です。一つ言えるのは、燃油費が、日本航空の場合は、収入の落ち込み6.0%に対して23.4%の増であり、一方全日空の場合は、収入の落ち込みは5.5%と日本航空と余り変わらないが、燃油費は14.0%増で押さえることができています。

収入単価の低い国際線が多い日本航空に、燃料単価の上昇インパクトは大きくなることがその要因と思います。一方、航空機減価償却費と賃貸料は燃料単価の影響は受けず、長距離の国際線が多い日本航空の方が、コスト中に占める割合も低く、日本航空が償却費・賃貸料合計で10.0%で、全日空は13.9%です。なお、両社の保有航空機の比較表も作成しました。

Jalanaplane20093 

このあたりから言える一つのことは、新素材を多く使用した軽くて燃油費が安くて済む航空機に機材を変更していくことが、経営戦略として欠かせない。全日空も今回発表した増資の資金使途は、航空機購入を含む設備投資資金に充当と言っています。ちなみに、全日空はボーイング787型機を55機購入するとしており、総投資総額は7181億円。今回の増資額の4倍以上になります。発表から計算すると飛行機の単価は777型機が150億円、787型機130億円となります。

3) 両社の貸借対照表

2009年3月末の両社の貸借対照表を示したのが次のグラフです。Jalanabs20093

売上規模が日本航空2兆円で全日空1.4兆円ですから、総資産額が売上高にほぼ一致するあるいはより大きい会社です。

なお、日本航空の2009年3月末期の財務諸表において、ファイナンス・リース取引を、有形固定資産とリース債務として貸借対照表に計上せずに、賃貸借取引として処理しているリース取引があり、注記情報からこの部分を、比較の目的で資産・負債に組み替えました。この結果は、資産増2806億円、負債増2886億円となり株主資本が80億円減少となっています。このベースにおける両社の借入金、社債、ファイナンス・リース取引を抜き出したのが、次の表です。

Jalanaltloan20093

債務について、一つ言えるのは、1年以内に返済期限、償還期限が来る長期資金債務が日本航空に2,259億円あり全日空の1,229億円の倍近くあることです。日本航空は、この返済・償還のための資金が必要です。

4) 燃料ヘッジの失敗

これまで見た範囲では、それほど大きな差はなかったのですが、貸借対照表における両社の純資産の部が次の通りです。

Jalanaequity20093

貸借対照表全体で見ても、3)に掲げたグラフのように、日本航空の純資産の部は小さいのですが、その原因は、評価・換算差額等にあり、その中でもマイナス2018億円と圧倒的マイナス金額を誇っているのが、繰延ヘッジ損益です。

流動負債として計上されているデリバティブ債務1263億円と関係があり、多分内訳としては出ていないが、固定負債はその他固定負債1793億円の中に隠れていると思います。その他固定負債が前年度末より703億円増加しているので、合計すると1966億円になり2018億円に近くなります。

Webでは見つかりませんでしたが、2009年3月3日の日経で「相次ぐデリバティブ損失 原油乱高下でヘッジ裏目」と題して、2008年12月末時点で日本航空が約2,400億円、全日本空輸が約1,000億円の繰延ヘッジ損失が発生していると報じられています。そこで、これが何かですが、次のジェット燃料価格のチャートを見てください。

Jetkeroseneprice20095_2 

燃油に関するデリバティブ取引とは、先物の燃油価格をあらかじめFixしてしまうことと考えてください。もし、将来の市場価格が上がれば、購入価格上昇を避けられるが、逆に下がってしまえば、高値の燃油を購入することとなります。日本航空の消費する年間燃油量は、45百万バレル程度と推定されます。このうちデリバティブ取引で押さえているのが決算説明会資料からすれば、80%-90%になるようです。そうなると、36百万バレル-40百万バレルが1年以内にデリバティブ取引の決済となるはずで、US$35/バレル程度の値差になると思われ、デリバティブで押さえたのは、平均US$90-US$100/バレルでしょうか?実際のオペレーションでは、期間の長短が組み合わさっており、金額としては「価格差X数量」であるので、3月末時点で存在したデリバティブ取引に関わる対象燃油量はもっと少なく、一方更に高い価格で押さえている可能性もありますが、実態は、分かりません。日本航空は、2009年度の計画を燃油価格をUS$76.2/バレルで作成しているので、このデリバティブ取引がなければ、もっと利益が出る計画であったはずです。

いずれにせよ期末時価で損益を換算すると赤字が2018億円増加するということです。燃油価格が上昇するとデリバティブ取引による損失が少なくなるわけですが、一方、会社全体としてどうなのか?単純では、ないはずです。例えば、世界景気がよくなれば、国際線を運行する航空輸送事業は利益が見込めるのであり、その場合は、国際的燃料価格は上昇するはずです。本来、マーケットは、それ自身の中に、オフセットの方向に働く部分があります。例えば、円高で輸出企業は打撃を受けるとしても、実は輸入原材料や輸入原材料から作られる物は、価格が下がることになります。本来複雑な要素が絡み合っているにも拘わらず、どの時点でFixしているか等よく知らないので言えない部分が多いのですが、80%-90%をデリバティブ取引で固定してしまうのは、行き過ぎであると思います。

本来は、経営者が説明すべきです。コンプライアンスや内部統制が完璧であっても、経営者はその経営判断についても問われるのであり、株主代表訴訟がそのために存在すると私は思っています。

5) 退職給付引当金、退職給付費用

退職給付引当金、退職給付費用に関して、日本航空と全日空で差があるので、見ておきます。次の表を、2009年3月期財務諸表の注記から抜き出して作成しました。

Jalanaemplob20093

日本航空の方が数字が随分大きいのですが、その原因には退職金、年金の水準のみならず他の要素も入ってくるので、よく解りません。そして、費用とした671億円も販売費及び一般管理費に退職給付費用は119億円しか計上されておらず、残る552億円はどうしたのか、私は掴めていません。

退職給付については、日本航空の大きな課題のはずです。従業員にとって水準を下げることは、受け入れることはできないと思います。但し、一方で、年金資産が4000億円存在することは、会社にとっても従業員にとっても強いことと思います。

なお、退職給付債務から年金資産を差し引くと、退職した従業員を含めた債権金額となりますが、これも同じく4000億円です。GMを考えれば、最悪は年金債権の一部を出資株式に転換し、組合が取締役を出すのも面白かったりして。4000億円は、株主資本より金額が大きいのですから。

6) 政府保証の政策投資銀行からの借入

日本政策投資銀行等からの総額1000億円の借入で、そのうちの政策投資銀行約600億円の80%について政府保証を得ることについては、おそらく数多くの交渉の結果として、そうなったはずで、それで良いと思います。

但し、日本航空から政府に対して正当な保証料が支払われる必要があると思います。保証料がどうなっているか、調べずに書いていますが、民間会社に保証料免除はおかしいと思います。中小企業も、信用保証協会に保証料を払っていますし。

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2009年6月29日 (月)

インサイトvsプリウス、そしてi-MiEVとティーダを比較しました

エコカー減税とエコカー補助金により、落ち込んでいる新車販売も、エコカーについては販売増は期待できると自動車メーカー各社は懸命にエコカーの販売に力を入れていると思います。ちなみに、次の表が2009年5月と5月までの自動車販売台数であり、昨年より落ち込んでいます。

新車販売台数(2009年5月実績)    自販連・全軽自協・輸入組合調べ
ブランド 2009年5月販売台数 本年累計
(a)
前年累計
(b)
増加率
(a)/(b)
乗用車 トラック・バス 合計
ダイハツ 32,718 8,990 41,708 259,747 289,853 -10.4%
日 野 0 1,134 1,134 9,865 18,221 -45.9%
ホンダ 35,700 1,830 37,530 230,975 276,920 -16.6%
いすゞ 1 1,855 1,856 14,203 26,813 -47.0%
レクサス 1,815 0 1,815 7,444 12,788 -41.8%
マツダ 10,523 2,122 12,645 78,076 115,726 -32.5%
三 菱 6,457 2,749 9,206 64,047 91,513 -30.0%
三菱ふそう 0 1,246 1,246 9,564 16,305 -41.3%
日 産 32,189 5,673 37,862 243,733 328,704 -25.9%
日産ディーゼル 0 324 324 2,253 5,303 -57.5%
スバル 6,987 3,809 10,796 69,701 94,877 -26.5%
スズキ 34,307 9,340 43,647 277,468 305,619 -9.2%
トヨタ 72,277 8,226 80,503 472,773 667,938 -29.2%
外国車 11,621 150 11,771 64,604 88,599 -27.1%
合計 244,595 47,448 292,043 1,804,453 2,339,179 -22.9%

1) 比較するエコカー

エコカーで比較するなら、インサイトプリウスを外すことはできず、そして2009年7月下旬から売り出す三菱i-MiEVを対象に加えました。日産も、減税・補助金対象となる車があると宣伝しており、その中でティーダを加えました。次の表が、カタログ等のデータから抽出した比較表です。(三菱i-MiEVは、軽自動車アイを電気自動車に変更しているので、他の3車種との同一ベースでの比較とはならないのですが、電気自動車ということで対象にしています。)

車種 INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV
タイプ G L 15M
メーカ希望小売価格
(消費税込み)円
1,890,000 2,050,000 1,674,750 4,599,000
10.15モード燃料消費 30km/L 38km/L 20km/L 125Wh/km
全長 mm 4,390 4,460 4,250 3,395
全幅 mm 1,695 1,745 1,695 1,475
全高 mm 1,425 1,490 1,535 1,610
ホイールベース mm 2,550 2,700 2,600 2,550
最小回転半径 m 5.0 5.2 5.2 4.5
車両重量 kg 1,190 1,350 1,150 1,100
室内 長 mm 1,935 1,905 2,035 1,790
幅 mm 1,430 1,470 1,390 1,270
高 mm 1,150 1,225 1,240 1,250
電池 容量(kWh) 5.75 6.5 N/A 16
タイプ ニッケル水素電池 ニッケル水素電池 リチウムイオン電池
電圧 (V) 100 650 330
モーター(最高出力kW) 10 60 47

価格については、電気自動車i-MiEVが他の車の倍以上であること以外は、こんなものかなと感じる感覚です。大きさはi-MiEVを除いて、ほぼ同じです。なお、i-MiEVは乗車定員4名です。

2) コスト比較

エコカーと言っているのですから、燃費等を含んで比較しなくてはなりません。次の表が、上記のメーカ希望小売価格にガソリン代を1リットル150円であるとして仮定して、10万キロメートル走った場合の、購入費と燃料費を計算した結果です。

INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV i-MiEV
の前提
想定走行距離 100,000 100,000 100,000 100,000
10.15モード燃料消費 30 38 20 125 Wh/km
10万km燃料消費量 4,000 3,158 6,000 15,000 kWh
ガソリン150円/リットル 600,000 473,684 900,000 300,000 20円/kWh
購入費 1,890,000 2,050,000 1,674,750 4,599,000
合計 2,490,000 2,523,684 2,574,750 4,899,000

10万kmの実際走行に要する燃料消費は、10.15モードの20%増と仮定しました。i-MiEVは、ガソリンを消費しないことから、電力料金を20円/kWhとし、同じように20%のマージンを加えました。

結果は、INSIGHTとPRIUSがほぼ横並びです。そこで、今度はガソリン価格を100円から200円の範囲でグラフを書いてみました。

Insightprius20096

INSIGHTとPRIUSの線が交差するのは、1リットル190円です。ホンダvsトヨタのおもしろさを感じます。10年間の平均ですから、190円は高いかも知れないし、利息を考慮した時間価値を考えるとホンダがより有利。しかし、トヨタは、負けまいとPRIUSを最大限値下げして対抗していると思います。このグラフの比較で言えば、日常的に車を使い10万キロ以上走行するのであれば、PRIUSが有利で、土日のみの使用であれば、INSIGHTが有利かと思います。

3) メンテナンスを含んだコスト

ハイブリッドカーは、自分でメンテナンスはおろか、通常の自動車修理工場でもメンテナンス不可能と思います。1)に書いた表でPRIUSとINSIGHTを比べると、電池容量、電圧、モーター出力全てPRIUSが大きい値です。(電圧は、i-MiEVより高い。)通常の車の修理工場ではメンテナンスができず、メーカ指定・適合店でないとメンテナンスが無理だから、HiTech製品につきものの現象です。そうなると、INSIGHTとPRIUSのメンテナンスについては、価格や条件は同じかも知れませんが、可能性としては、PRIUSの方がHiTechだから、少しメンテナンスも高くつくかも知れません。

HondaファンはINSIGHT、ToyotaファンはPRIUSを選ぶのが間違いないでしょう。そうでない人は、色々悩んで考える。いずれにせよ、購入の際に、納得するまで、質問するのがよいと思います。現状では、納期が長くて、嫌なことを言うやつには、売ってくれないなんて変な気を回す必要はないはずです。

4) CO2排出・環境評価

10万km走行するとして、走行時に排出するCO2を計算しました。計算は、ガソリン発熱量34.6MJ/l、ガソリン炭素排出係数18.3tC/TJ、CO2換算44/12としました。

なお、製造時にCO2の排出はあり、さらには鉄板等の材料製造時のCO2,鉄鉱石や石炭の採掘・運搬に関わるCO2排出等を含んだLife Cycle Assessmentが必要です。そこで、PRIUSの環境仕様というページにCO2 LCA評価という絵があり、これをにらんでPRIUSの製造に係わるCO2排出量を3,000kgとしました。大雑把ではありますが、製造に係わるCO2は車体重量に比例するとして、INSIGHT、TIIDA、i-MiEVの製造時CO2を計算しました。結果は次の表の通りです。

なお、i-MiEVの走行時CO2排出量は、東京電力の販売電力kWhあたりのCO2排出量425kg/MWhを使いました。

INSIGHT PRIUS TIIDA i-MiEV
走行時CO2排出量(kg) 9,287 7,332 13,930 6,375
製造時CO2排出量(kg) 2,644 3,000 2,556 2,444
合計(kg) 11,931 10,332 16,486 8,819

またしても、INSIGHTとPRIUSの激しい競争です。一見、i-MiEVが低そうですが、i-MiEVは1回の充電で160kmの走行距離であり、これを伸ばすには電池を大きくする必要がある。そうなると、重くなる。価格が上がると同時に、燃費も悪くなる。更に言えば、石炭で発電をしたならば、INSIGHTやPRIUSに負けるのみならず、TIIDAとも良い勝負になってしまいます。

数字を使わずに感覚で考えてしまう場合の環境問題の恐ろしさです。電気自動車は排ガスを出さないから、クリーン。しかし、その電気は、どうやって作ったの?です。同様な、説明がこの環境省のWebにある低排出ガス車の開発 (トヨタ自動車)にありました。20ページですが、燃料電池車は燃料製造時のCO2排出量が多いため、ハイブリッドカーよりもCO2排出量はLife Cycle Assessmentをすると多くなるとあります。

イメージで、環境を考えると誤ります。環境は数字を使って考えないといけません。

5) エコカー減税とエコカー補助金

どうでも良い話かも知れませんが、エコカー減税とエコカー補助金の法的根拠について触れておきます。エコカー減税は、本年3月31日公布の地方税法改正(法律第9号)の第12条の2の2(自動車取得税の減税)と同日の3月31日公布法律第11号の中の租税特別措置法第90条の12(自動車重量税の免税等)によるものです。全額免税となるのは、電気自動車、ハイブリッドカー、CNG車、高性能ディーゼル車です。ガソリン車は、燃費性能により75%免税又は50%免税あるいは適用が受けられないかです。

エコカー補助金は、5月29日に成立した平成21年度補正予算による環境対応車普及促進事業費 357,216百万円です。その内容は、この経産省、国交省の説明にあります。ハイブリッドであるかどうかは関係なく、燃費基準達成車には補助金が出ます。最も大きな補助金を受けられるのは、大型トラック・バスで90万円(中古からの乗り換えの場合は180万円)です。

自動車取得税と自動車重量税の免税あるいは軽減が受けられるのは、乗用車のみならず基準を満たせば、トラック・バスも可能です。

ちなみに、2007年度の温室効果ガスの排出量確定値が2009年4月30日に発表されました。温室効果ガスの総排出量は1,374百万トン。うち非エネルギー起源を含めCO2が1,304百万トン。運輸部門のCO2排出量が249百万トンです。このうち乗用車が126百万トンで、貨物車が90百万トンです。合計で、日本全体のCO2排出量の16%強となります。ここをねらい打ちでしょうか?

中には年間10万km以上走行するトラックもあるわけで、リッターあたり4kmの燃料消費率を5kmに伸ばすことができれば、年間5,000リットルの節約となります。金額では年約50万円。CO2で年約13トンの節約です。だから、積極的に免税、税軽減、補助金を推進すべきだと言えます。問題は、財源です。今は、一般財源を使っており、継続するには、私は、炭素税を他の省エネ・低炭素政策財源用も含めて導入すればよいと思っています。かつては、石油業界は炭素税に真っ向から反対していました。しかし、現在は、そんな強い反対はできない。昭和シェル石油は、このように太陽電池をやっていますし。どの企業も、既得権益を守るより、新しい世界にどう立ち向かうかがより重要な時代です。

ところで電気自動車の場合、ガソリン税と軽油取引税を現状では払わずに済みます。電気自動車が多くなってくると、道路予算の財源はどこからもってくるのでしょうか?

6) これから

これからも未だ開発が進むと思いますが、ToyotaとHondaはすごい会社であり、F1レースを日本でしているような気がしました。i-MiEVの車体重量は、1100kgですから、軽4輪「i」の900kgと比較すると200kg重くなっています。エンジンが電気モーターに置き換わり、電池が搭載された結果ですが、電池の開発とブレーキ作動時の発電をしてのエネルギー回収を含む電気関係のコントロールがハイブリッドカーと電気自動車のキイポイントだと思います。

ハイブリッドカーは、現状では日本生産でしか対応できない。海外生産をする場合、Hondaの方が、HiTechを押さえている分だけ、有利ではないかと思うのです。いずれにせよ、米国メーカはハイブリッドカーを生産できない。ヨーロッパメーカもディーゼルに力を入れていた分だけ、対応が遅れている。当面世界でToyotaとHondaの2社独占が続くのではないか。多分、HiTechの度合いが少し低いHondaの方が、海外生産も台数増産も対応が容易である気がします。

ハイブリッドカーになると下請け企業も変わってくる。現在、PRIUSの電池はパナソニックでINSIGHTが三洋電機。双方ともニッケル水素電池。車メーカか電池・電気制御メーカか、どちらの技術力が高いかによっても、主導権は異なってきて、これからの絵は微妙に変わる。ハイブリッドカー、電気自動車、水素燃料電池車がこれからどのような戦いになっていくのだろうか。最も、電池素材となる希少金属の問題もあり、その点では俄然中国有利になったりして。

2)に掲げたグラフにおいて、ハイブリッドが有利ですが、比較しているTIIDAは非常に良い燃費の車なのです。グラフは、税優遇や補助金を計算に入れていない比較ですから、ハイブリッドカー恐ろしきやです。先進国間の貿易で、車に関税・非関税障壁は存在しないし、エコカーですから、皆賛成する。内燃機関と電動機の2つのエンジンを持ち、その上に燃料タンクと電池を持つ2重投資の見本みたいに思えたハイブリッドカーでした。今では、こんな姿になっているのですから、これから先はいよいよ分からないかも知れませんが。

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2009年6月12日 (金)

再び郵政選挙でしょうか

これほど早くこのニュースがあるとは、思いませんでした。

読売 6月12日 鳩山総務相が辞表提出、「潔く去るのがいいと判断」

当然のこととして、株主総会において日本郵政の指名委員会が提案した取締役候補を株主総会で賛成し、西川氏の続投が決定すると思います。しかし、波紋は大きいと思います。鳩山総務相の辞任が、日本郵政の提案内容を変更する理由にならないだろうし、変更したら西川派の議員が、今度は反麻生に立ち上がらざるを得なくなる。自民党の内部を考えるだけでも、小説を読むか、劇を楽しめるみたいです。

それと、自民が負けると、与党が変わるわけで、そうなると株主の権利として、総会の開催の請求(会社法297条)と総会における株主提案権(会社法303条)が出てきます。今の状態であれば、民主党は、これを行使して、日本郵政取締役メンバーの一新を計ると思いました。

4年たって、今回も郵政選挙である可能性を感じました。

1) 郵政民営化

前の日本郵政の経営者と株主でも書きましたが、株式会社ゆうちょ銀行と株式会社かんぽ生命保険は一刻も早く株式上場を果たし、民営化すべきです。一般の銀行や一般の生保と競争すればよいのです。郵便局が、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険の窓口となるかどうかは、競争です。郵便局が、他の銀行のATMを設置してもよいし、他の会社の生命保険を販売してもよいのですから。郵便局は、その地域と密接に結びついた仕事をすればよいのであるから、地域の人のために最適な銀行や生命保険会社を選び窓口業務を行えばよいのです。

郵便事業を民営化するかですが、例えば米国を例にします。米国は、郵便事業をUnited States Postal Service(USPS)が行っており、USPSは米国連邦政府の機関です。連邦政府の幾つかの法律が関係した日本で言えば、独立行政法人か公社という組織と考えます。単独で財務諸表を発行しており、監査法人による監査も受けています。(Ernst & Youngの監査報告書があります。)

郵便事業の大切さは、(1) 確実に相手先に届くことと(2) 途中で開封されず私信の秘密が守られることの2点と思います。私は、この2点について、日本の郵便事業は信頼できると思っています。この2点が崩れると、代替手法がほとんど消滅すると思います。現在、ネットが普及し、光ケーブルが広がり、E-Mailが多くの人に送付できます。しかし、どのようにネットが普及しようとも、現物が相手に届けることができるシステムは維持すべきです。

考えてもみて下さい。送っても、届かないかも知れないや、サービス地域ではありませんなんて。私は、嫌です。

2) 日本郵政改正案

単純に考えました。今の株式会社は、そのままで維持すればよいのです。取締役が9名います。この取締役のメンバーに国民、市民代表を入れればよいのです。例えば、裁判員制度のように、3名の職業取締役と6名の選挙権を持つ一般の人から選ばれた非常勤取締役により取締役会を構成し、経営事項を協議・決定していけばよいのです。裁判員制度の場合は評議は秘密事項ですが、取締役会には秘密はありません。(会社に損害を与える事項やインサイダー取引に関する事項等についての秘密保持義務はありますが)刑事裁判と同じことを日本郵政でできないことはないはずです。

多分、3名の職業取締役と6名の選挙権を持つ一般の人による取締役会と言えば、反対する人は多いかも知れません。そうであれば、総理大臣指名による3名、労働組合指名による3名、一般の国民から3名はいかがでしょうか?

4年前に圧倒的多数で、郵政民営化を国民は選んだのです。その結果を、どうするか。郵政民営化を推進すべし。民営化とは、総理大臣が選んだ人間に委せることではないはずです。株主が選んだ人間が経営にあたるであり、政府が株主である間は、国民からも取締役を選ぶべきと思います。一般国民・市民の非常勤取締役の報酬については、現在の非常勤取締役と同額を受け取ることとし、上場会社ではないから関係ないが、ストックオプションはなしにしましょう。

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2009年6月 5日 (金)

GM、Ford、ToyotaとHondaの財務諸表の比較

GMの事業は、今後2月から3月の間で更生計画が承認され、更生計画に基づく会社更生が実施されると予想されます。更生計画により、GMの事業を引き継ぐ新GMの資本構成は、米連邦政府が大株主で、次の様になる予定ですが、新社会主義の会社というのが適切かも知れません。

米国政府(US Treasury)       60.8%
カナダ政府とオンタリオ州政府  11.7%
New VEBA(新労働組合)      17.5%
その他債権者            10%

(注)VEBAとは、Voluntary Employees' Beneficiary Associationの略で、従業員が組成する労働組合のような組織ですが、同時に健康保険組合の性格も持つような組織と理解します。

米国とカナダの政府が72.5%でUAWを加えると90%ですから、21世紀の社会主義の実験みたいです。成功して、新GMが上場し、政府がIPO利益を取れれば、国民の税負担が少なくなるわけで、皆Happyです。一方、経営に行き詰まれば、大変です。オバマ政権の最重要事項となるでしょう。実際、経営は政策ではないですから。演説して、票を得ることより難しい部分があります。

新GMの経営を占うには、時期尚早であり、Chapter11申請前の、財務諸表を使い、GM、フォード、トヨタ、ホンダを比較してみたいと思います。

1) 近年の業績

次のグラフは、2005年から2008年までの4年間の各社売上高と純利益の推移を表しています。なお、トヨタとホンダの2008年は2009年3月期の数字であり、決算短信からの数字です。比較のために、米ドルで表示しています。又、全て連結財務諸表からの数字です。

4carcompanies2008

少し、違ったグラフにしてみました。このグラフで総コストは、売上高から(特別損益を除く)税引前利益を差し引いた金額としています。

4carcompanies2008a

上のグラフで、破線が売上高と総コストが同額になるポイントです。従い、破線より左上に来れば、利益であり、右下に来れば損失です。トヨタの2008年は赤字ですが、それ以外は日本の2社は健全ラインにあります。なお、数字を記入したテーブルも次に掲げておきます。

上段:売上高
下段:純利益
単位:百万ドル
2005 2006 2007 2008
GM 193,050 204,467 179,984 148,979
▲10,417 ▲1,978 ▲38,732 ▲30,860
Ford 176,835 160,065 172,455 146,277
1,440 ▲12,613 ▲2,723 ▲14,672
Toyota 210,369 239,481 262,394 205,296
13,722 16,440 17,146 ▲4,369
Honda 99,080 110,871 119,801 100,112
5,970 5,923 5,989 1,370

2) 貸借対照表

貸借対照表で見ると、実態がよく解ります。GMとFordの2008年12月末とToyotaとHondaの2009年3月末の連結貸借対照表を図示します

4carcompanies2008b

黄色の部分が純資産ですが、左にある場合は、純資産ではなく、債務超過額となります。GMは、すごいですね。資産が91,047百万ドルに対して、負債が177,201百万ドルです。会社とは、こうなってでも存続できることを証明してくれているのでしょうか?倒産させることができない会社は、強いのです。

この4年間で、どう推移してきたかが次のグラフです。

4carcompanies2008c

2005年末においては、GMもFordも純資産額がほぼゼロであったのですが、GMは2007年、2008年と大きく損失を増加させて、債務超過額を増大させていきました。次のグラフがGMの2005年末から2008年末にかけての貸借対照表です。2006年に資産・負債が急激に小さくなっているのは、自動車ローン会社GMACの51%持ち分をFundに売却し、連結子会社から49%保有の持分法適用関連会社にしたためです。

4carcompanies2008d

自動車会社4社の純資産額(債務超過額)の総資産に対する比率は次の通りで、GMの場合は、債務超過額があっという間に膨らんでいきました。

4carcompanies2008e

4社の純損失額を資産総額の比で見た、各年のReturn on Assets(マイナスであるLoss on Assets)のグラフを書くと次のようになりました。

4carcompanies2008f

売上高に対する利益率(損失率)でグラフを書く次の様になります。自動車産業も、恐ろしい産業です。

4carcompanies2008g

3) 退職給付と退職者給付

退職給付関係を比較してみます。なお、ToyotaもHondaも連結財務諸表は米国基準を採用しており、GM、Fordとの比較がそのまま可能なのですが、退職給付会計の基準が日本基準と少し異なっています。米国基準においては、包括利益(Comprehensive Income)の概念が採用されており、純資産に「その他の包括利益(Other Comprehensive Income)」の区分があります。未認識過去勤務債務は、日本基準であれば、認識せずに注書きですが、米国基準では日本の退職給付引当金に相当する未払退職・年金費用に含めて計上するが、当期損益には含めず、直接に「その他の包括利益」に算入します。

次の表は、4社の退職給付関連の金額を示しています。退職給付債務の金額では、売上が一番大きいToyotaがGMの1/10近くです。その他の包括利益の中に計上されている金額は4社すべて損失であり、将来費用として認識することになりますが、その金額もGMが一番大きいのです。ToyotaとHondaを退職給付関連を比較すると、売上高は倍半分ですが、退職給付関連の金額はほぼ同じでした。退職給付制度の違いもあり、調べていないので何とも言えないのですが、会社の差は大きいようです。

自動車会社4社の退職給付関連の金額(単位:百万ドル)
GM
2008年12月
Ford
2008年12月
Toyota
2008年3月
Honda
2008年3月
退職給付関連期末債務予測額(Benefit obligation) 161,020 83,808 16,899 16,086
年金資産期末公正価値(Fair value of plan assets) 102,600 55,649 12,796 11,539
未払退職給付未払額(退職給付引当金)(Noncurrent liability recognized) 54,097 28,228 6,311 5,392
退職給付等費用期中認識額(Pension & OPEB expenses) 2,747 ▲808 960 693
包括利益・損失に計上されている退職給付費用累計額(Amounts recognized in accumulated other comprehensive income) 39,638 9,947 2,058 3,716

上記の退職給付未払額と退職給付費用をパーセントで表示したのが、次の表です。退職給付未払額とは、日本基準における(未認識過去勤務債務と未認識数理計算上の差異を含んだ)退職給付引当金に相当します。別の表現で言えば、外部の年金基金に対する積立てが終了していない部分の金額です。やはり、4社の比較ではGMが最大です。UAWがGMの主要債権者であることが納得できます。

Fordの退職給付費用がマイナスの費用(利益)になっているのは、退職者医療保険か何かの制度見直しにより、その債務計上(引当金の様な感じ)していた部分を2008年に減額したことにより、利益を認識したからです。但し、全体の総合ポジションは退職給付未払額であり、全体像を見失ってはいけません。

ToyotaとHondaについても、米国を含む全世界の合計数字ですが、GMやFordに比較すると数字が小さい。この一つの理由として、日本ポーションが大きいことがあり、公的年金制度により退職給付未払額が小さくて済ますことが出来て、企業の負担を低く抑えられていることがあると考えます。

GM Ford Toyota Honda
退職給付未払額/総負債 30.5% 12.0% 3.3% 6.9%
退職給付費用/売上高 1.8% -0.6% 0.5% 0.7%

4) 感想

GMって大変ですね。魅力ある車を開発していけるか、どうかが一番のポイントかもと思います。魅力ある車を生産し、ユーザーのサポートが得られ、多くの雇用機会を作っていれば、赤字かどうかなんて2の次なのだろうと思います。そうでないと、生き残れない気がします。でも、他の方法もあるかも知れませんね。いずれにせよ、今後が楽しみです。

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2009年5月31日 (日)

レックス・ホールディングスMBO株式買取価格

レックス・ホールディングスのMBOに関しての株式買取価格について、最高裁判所は、レックスが株主総会で決定した少数株主からの株式取得価格230,000円を棄却し、東京高裁が決定した336,966円を認める抗告棄却の決定を5月29日にしました。

日経 5月29日 MBOの買い取り価格、レックスの抗告棄却 最高裁

最高裁の決定文と東京高裁の決定文は、アドバンテッジ被害者牛角会ホームページからDownloadできます。

このブログでも、2008年9月13日にレックスホールディング株式買い取り価格の東京高裁決定文や2007年3月17日にMBO - Management Buy OutでレックスのMBOについて、書いていることもあり、少し感想を述べます。

1) 最高裁の決定

上の「アドバンテッジ被害者牛角会ホームページ 」からDownloadすると、全部で6ページほどの決定文です。この文書の中で、2ページ目の冒頭付近から田原睦夫裁判官の補足意見であり、ほとんど全てが田原睦夫裁判官の補足意見となっています。

これを機会に残すべき文章として、書かれたのだと思います。

2) レックスMBOの整理

整理をしてから、読んだり考えたりした方が、良いと思いますので、少し整理をします。

2006年8月21日 レックスは業績の下方修正を発表(ここに当該プレスリリースがあります。)

 連結ベースでは評価損を45億円出すようにしました。東京高裁決定文の15ページから、その問題点について触れられています。効果は、株価に現れ、30万円から一気に下がりました。

2006年11月10日 アドバンテッジパートナーズ(AP)が公開買付(TOB)を発表(ここに当該プレスリリースがあります。)

TOB価格は、11月9日までの過去1ヶ月間の単純平均値202,000円の約13.9%プレミアムで、プレスリリースにおいても、下記の様に言っており、APとレックスによる共同TOBでした。

AP8は、・・・レックスの筆頭株主でありレックス株式を・・・約16.68%・保有するエタニティーの全株式の取得による間接保有と合わせて、議決権の66.70%以上を、上限を設定せずに取得することを予定しております。本公開買付けはいわゆるマネジメント・バイアウト(以下「MBO」といいます。)の一環として行われる取引であり、AP8はレックスの取締役会の賛同のもと、友好的に同社の株式を取得してその支配権を取得するために、証券取引法に基づき本公開買付けを行うものです。

東京地裁での第4回審問で、判明するのですが、TOBを行ったAP8は9月11日に設立されていたのです。業績下方修正発表の前でした。

2006年12月13日 APによるTOB終了(ここに当該プレスリリースがあります。)

75.20%をAPは取得し、エタニティーと合わせると、TOB実施後の所有比率は91.51%となった。ちなみに争っておられた株主の株数は784株ですから、0.3%です。

2007年3月28日 定時株主総会と普通株主による種類株主総会の決議により全部取得条項付株式1株に対し、0.00004547株の割合による普通株式交付を決定。(ここに当該プレスリリースがあります。)

この株式交付割合では、21,993株以上保有していなければ、1株が230,000円で終わることとなってしまった。争っておられた株主の方々は、この株主総会で反対され、東京地裁に4月12日に価格決定の申し立てをされた。(会社法172条)

3) 株式市場の発展

2)で、このMBOの整理を書いていて、やはり問題があると思いました。ホリエモンと同じように思えるのです。一般投資家から、如何に合法的に金をごまかして巻き上げるかみたいな。

MBOやファンドとかが、悪いとは言いません。倫理観がおかしくなった時に、暴走してしまうことの恐ろしさです。例えば、経営者=取締役は、株主から経営について委託を受けた人達ですが、利害が相反する部分は存在する。経営者が、同時に大株主であった場合、利害関係は複雑になる。敵対的TOBは、悪いかのように言われるが、むしろ健全とも言える。究極の有効的TOBがMBOであるが、実はMBOの方が一般投資家にとっては、怖いと思える。TOBやMBOに限らずIPOだって、経営者と一般投資家との情報格差がありすぎるのであり、気を付けなくてはいけないと思う。

市場が危険であって良いはずはない。ベンチャー企業を育てていくのも市場であり、その為には、情報が正常に得られる、安心して投資ができる市場にすることが最重要と思います。

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2009年5月27日 (水)

ソフトバンク社債

検索フレーズランキングが、私のブログの右欄の下に出ていますが、「ソフトバンク社債」が検索フレーズの1位と3位にあります。何故だろうと思ったのですが、次のソフトバンクの第27回無担保社債600億円の発表が5月26日にあったからでしょうか。

ソフトバンク 2009年5月26日 第27回無担保社債発行に関するお知らせ

購入者全員に、福岡ソフトバンクホークス・エコバッグのプレゼントがあるほか、抽選で20組40名様に2010年シーズンのホーム開幕戦のペアチケットおよび開幕戦当日のホテルペア宿泊券をプレゼントする懸賞を付けております。」ということで、興味ある社債です。

一方で、甘い誘いには気をつけろとの格言もあるので、次のKDDIがその6日前の2009年5月20日に発表した300億円の第14回社債と200億円の第15回社債と比べてみました。

KDDI 2009年5月20日 KDDI株式会社社債の発行について

ソフトバンク社債 KDDI300億円 KDDI200億円
発行総額 600億円 300億円 200億円
各社債の金額 100万円 1億円券の1種 1億円券の1種
利率 年5.10% 年1.278% 年1.969%
払込金額 100円につき100円 100円につき100円 100円につき100円
期限 2年 5年 10年
償還期限 2011年6月10日 2014年5月29日 2019年5月29日
取得格付 BBB
(日本格付研究所)
A+
(格付投資情報センター)
A+
(格付投資情報センター)

一般投資家を対象としたソフトバンク社債と社債金額を1億円としたKDDI社債の差はありますが、3%の利率差は500億円に対しては、金利年額差は15億円ですから、大きいですね。

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2009年5月20日 (水)

漢検(財団法人)のガバナンス

財団法人日本漢字能力検定協会の前理事長大久保昇容疑者とその長男の前副理事長大久保浩容疑者が背任容疑で逮捕されました。

日経 5月20日 漢検前理事長ら逮捕 親族取引巡り背任容疑、2億6000万円損害

2億6千万円は、巨額です。記事の中に、「親族企業との不透明取引や多額の利益を上げていたことが発覚してから4カ月」とありますが、内部の関係者は実質知っており、半ば公然の秘密のような状態ではなかったかと想像します。

この事件は、理事長と理事が結託して、財団法人を私物化して、食い物にした事件であろうと思います。

財団法人日本漢字能力検定協会(以下「漢検」とします。)の19年度収支計算書20年度収支予算を見ると、役員人件費支出は793万円や2750万円になっています。現在の役員名簿では、理事6名、幹事2名、評議員13名の合計21名です。おそらく、常勤は2名のみで、他の役員は非常勤で、実質仕事をしていなかったと思います。実態は、逮捕された2人が甘い汁を吸うために、安い報酬を押しつけ、外部役員が業務を執行することを防いだのだろうと思います。

非常勤で、実質仕事をしていなければ、責任は問われないかは、次の「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の第111条です。

役員等の一般社団法人に対する損害賠償責任
第百十一条  理事、監事又は会計監査人(以下この款及び第三百一条第二項第十一号において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 理事が第八十四条第一項の規定に違反して同項第一号の取引をしたときは、当該取引によって理事又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
 第八十四条第一項第二号又は第三号の取引によって一般社団法人に損害が生じたときは、次に掲げる理事は、その任務を怠ったものと推定する。
一  第八十四条第一項の理事
二  一般社団法人が当該取引をすることを決定した理事
三  当該取引に関する理事会の承認の決議に賛成した理事

84条は、次の「競業及び利益相反取引の制限」であり、まさに今回の行為です。

第八十四条  理事は、次に掲げる場合には、社員総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一  理事が自己又は第三者のために一般社団法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二  理事が自己又は第三者のために一般社団法人と取引をしようとするとき。
三  一般社団法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において一般社団法人と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。

今回の漢検の問題は、ガバナンスの問題です。公益法人制度改革3法は、2006年に成立し、2008年12月から施行された結果、民法適用時代のガバナンスより強化されました。

公益法人制度改革には関係なく、本来安易に理事や役員を引き受けてはならないのです。引き受けたなら、全力で業務執行にあたるべきであり、漢検のような社会的な影響が大きな財団法人の理事であれば、なおさらです。

なお、漢検が理事長の親族企業との不透明取引を決定した理事会の時期は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行前であったかも知れません。しかし、民法44条もあり、同じく損害賠償の責めを負うと考えます。

漢検は未だ公益財団法人の認定を受けておらず、2013年11月までの移行期間の猶予がある特例財団法人と理解します。今回の漢検の事件は、従来の財団法人や社団法人のガバナンスが問題含みであることを物語っていると思います。勿論、立派にやっておられる特例財団法人・特例社団法人も多いと思いますし、今は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律も適用されています。関係者の方は、ガバナンスをもう一度見直していただきたい。役員としての執行に自信がなければ辞退すべきです。一方、全力で尽くすことを望むが、そのための正当な報酬を望んでおられる方は、要求すべきと思います。

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2009年5月19日 (火)

金融危機の犯人は経営者である

「金融危機の犯人は経営者である」というのは、スッキリします。次のIT Proの記事からです。

IT Pro 5月15日 [国際会計基準フォーラム]モラルなき経営者は基準を悪用する---経団連の島崎部会長

5月15日に開催かれた国際会計基準フォーラム  IFRSが企業に与える衝撃における、日本経済団体連合会の経済法規委員会企業会計部会の島崎憲明・部会長(住友商事代表取締役)による特別講演「グローバルビジネス時代の成長戦略とIFRSへの対応」で、島崎氏が述べられた様です。

IT Proの記事の文章をそのまま書くと、「まず島崎氏は、金融危機の原因として経営者のモラルの低さを指摘した。」という部分です。「厳格な会計基準が危機の悪化を招いているという議論は大きな誤解だ。」というのも、その通りと思います。

金融危機の犯人は経営者にのみあるのではないが、一番関与しているのはやはり経営者であると思います。サブプライムから派生して作られたCDO等の金融商品について、その危険性を理解していたのは、それを作った人間かも知れない。しかし、そのリスクを正当に評価認識する必要があったのは、経営者です。自ら評価せずとも、評価能力ある人物を選び評価する必要があった。しかし、現実に起こったことは、金ぴかの表面を経営者自らが利用して、担当者に高報酬を与えると同時に、自らも更なる高報酬を受け取るように動いた。

米国の話であり、デリバティブのような金融商品に多くの人には関係がなく、無縁の話とされるかも知れません。しかしどうでしょうか、日本でも、時価会計の凍結とか、株価対策とか、実に自分勝手な話が耳に聞こえてくることがあります。価格変動による利益獲得を目的とした投資をしていないのであれば、価格が下がっても、大きな影響はありません。価格下落の影響は参考情報です。むしろ、重要なのは、実体経済の需給関係です。

余談になりますが、私もIFRSを積極的に取り組んでいかないとグローバル競争での敗者になると思います。ある時、日本の製造業の品質管理は世界一だとされた。今も、確かに高品質です。しかし、グローバルの世界では、品質管理はISOです。品質管理は、基準より物が良ければの部分がありますが、会計基準は資金コストに直接の影響を与えることがありえます。

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2009年5月14日 (木)

アイフルの社債消却利益

消費者金融のアイフルが5月12日に2009年3月期の決算を発表しました。

日経 5月12日 アイフルの09年3月期、純利益85%減
アイフル決算短信 5月12日

決算の概要は、

営業収益  3122億円
営業利益    74億円
経常利益    86億円
当期純利益  42億円

と言う結果ですが、損益計算書を見ると、53.81億円の社債消却益が特別利益として入っています。「こりゃなんじゃ」と言うわけです。

1) 社債消却益

何でしょうね?償却消却とは消滅させることです。最初に思いつくのは、社債発行企業の信用力が悪くなり格付けが下がると社債の市場価格が下がる。そこで、発行企業が自社社債を買い入れ償還すると、満期償還よりも償還金額が低くなるので、償還益が生じる。

5月7日に米FRBが金融機関のストレステストの結果を公表しましたが、米国では金融負債が時価評価されていると理解します。どのような金融負債について、どのような方法で評価するかは、私も調べがついていませんが、例えばこの日経 米シティ「資本調達1兆円必要」 米紙報道、健全性審査受けには「時価会計の適用緩和や負債評価益などの特殊要因もあり」となっています。評価益は、時価評価をすることで計上されることから、負債を債務金額ではなく、市場価格で評価したということです。

IFRSと米国GAAPでは、負債の時価評価をどう扱っているのかは、私も勉強不足ですが、日本の会計基準では、金融商品に関する会計基準第26項が次のようになっており、社債の貸借対照表価額について償却原価法の適用はあるが、時価評価はありません。

26. 支払手形、買掛金、借入金、社債その他の債務は、債務額をもって貸借対照表価額とする。ただし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法(注5)に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額としなければならない。

社債に時価があるからと言って、信用力が低くなれば、資金調達コストが上昇し、業績は悪くなる。にも拘わらず、そんな時に評価益というのは、しっくりいきません。

日本企業でも、米国でADR(預託証券)を発行している場合に、連結財務諸表については米国GAAPで作成している企業があります。その様な企業は、社債の時価評価は、どうなっているのか気になります。

2) アイフルの社債償還

2008年3月末現在のアイフル連結財務諸表においては、一年以内償還予定社債が550億円と個別財務諸表の450億円より100億円大きかったことから、子会社の社債が100億円あったはずです。次の表が私が作成した2008年3月末のアイフルの社債内訳であり、黄色の部分が2009年3月期の間に償還があった社債です。

09

償還した社債の合計は650億円です。決算短信の連結キャッシュフロー計算書には、社債の償還による支出が△65,666百万円となっており、債務金額より6.6億円多く支払っていることになります。このことと、53.81億円の社債消却益が、どう結びつくのか、頭が混乱しました。

未償還の社債の簿価を合計すると3591億円(一年以内償還予定1009億円、一年超2582億円)です。決算短信では、社債金額は一年以内償還予定社債948億円と社債2582億円ですから、一年超は私の計算と一致しています。一年以内については、もし米ドル建ての5億ドルを為替レートを93.7円で評価していれば一致します。

そうではなく、一年以内償還予定1009億円の一部について、すでに市場から時価で購入しており今後償還が必要な社債が948億円に減少しているのであれば、差額の61億円は社債消却益であり、53.81億円の社債消却益と一致してきます。

本当は、どうか、アイフルがプレスリーリースで、社債期限前償還を発表していないか、見てみましたが、私は見つけることができませんでした。

アイフルのJ-CDS参考値(5月14日)を見てみると、3940bpでした。少し下がっていますが、高いですね。会社が自社の財務状態についてよく説明することは、重要と思います。

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2009年4月21日 (火)

東芝の繰延税金資産取崩による損失

日立の次は、東芝を書きます。

東芝は、4月17日に2008年度 業績予想の修正を発表しました。

日経 4月17日 東芝、営業赤字は2500億円に縮小 09年3月期

東芝の発表説明会資料は、ここからDownloadできます。

この発表において、本年1月の業績予想に対して、営業損益と税引前損益は、それぞれ300億円と500億円の改善の数字を予想したものの、最終損益は逆に700億円の悪化(損失拡大)を予想しました。

700億円の損失拡大の理由は、繰延税金資産です。

繰延税金資産とは、前払い税金であり、税効果会計に係わる会計基準の(注5)には、次のように書かれています。

繰延税金資産は、将来減産一時差異が解消されるときに課税所得を減少させ、税金負担を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない。

1) 東芝の繰延税金資産

東芝が2008年3月末の連結貸借対照表で計上していた繰延税金資産、繰延税金負債は次の金額でした。

繰延税金資産(流動)      1485億円
繰延税金資産(固定)      2858億円
繰延税金負債(流動及び固定) 807億円

差し引き 繰延税金資産    3536億円

2009年3月期において、第3四半期までで、繰延税金資産は3536億円から、4300億円へと464億円さらに増加していたとのことです。この4300億円の繰延税金資産のうちの地方税(道府県民税、市町村税、都民税)相当分の850億円を資産計上せず、2009年の損失(2009年としては、結局は639億円の損失)として計上するとの発表です。(発表説明会資料の7ペ-ジ目参照)

地方税についての繰延税金資産を取り崩すこととした理由は、地方税については、「連結納税制度の適用がなく、単独の課税所得が現在の経済環境では厳しい状況の為、一括で取り崩し」との説明ですが、今ひとつ納得がいかない部分があります。即ち、赤字の連続で支払い済みの地方税を相殺するような課税所得が生まれないと見込まれる子会社も存在するでしょうが、全体からすれば将来の利益は見込めるはずです。赤字のまま閉鎖となる会社は、利益金額では少数派と思うからです。

これ以上の議論は、私も情報を保有していないし、監査法人が的確な仕事をされるのであり、最終的な報告を待ちたいと思います。

2) 監査の重要性

4月2日の2008年度は上場企業倒産が最悪の45件で、ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)を書きました。ゴーイング・コンサーンが検討の対象になった場合には、繰延税金資産なんて考えられないと思います。

企業が赤字になれば、赤字が繰越損失金となり将来の税金を減額していくれると期待します。しかし、課税所得が生まれてくるとの確証が無くては、資産として貸借対照表に計上するのは正しくないはず。

M&Aで成長を続けた企業が、不況に入り、急成長を遂げた故に、脆弱性が問題となる企業もあると思います。M&A企業の特徴は、資産として「のれん」を計上していることが多い。「のれん」は、現在の日本の会計基準で毎期規則的な償却をすることが必要ですが、同時に固定資産の減損会計の対象でもあります。固定資産の減損会計を適用し、評価するには、将来のキャッシュフロー予測は必要不可欠です。

ビジネスの仕組みが複雑化してきたからには、企業の財政状態や営業成績を表す財務諸表も、それに適応して対処する必要がある。会計士の方々、大変ですが、頑張ってください。経済や金融を支えるインフラそのものと思っています。

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2009年4月13日 (月)

ソフトバンク750億円損失のディスクロージャー(その2)

ソフトバンクが4月10日に、次のプレスリリースを出しました。

昨年10月29日に開示済みの実質的期限前償還に係る特別損失の計上および平成21年3月期の業績見通しに関するお知らせ

ソフトバンクが述べている特別損失750億円とは、2008年10月30日のソフトバンク750億円社債デット・アサンプションによる損失で書いた「750億円社債デット・アサンプションによる損失」のことです。

ソフトバンクは、昨年10月29日に開示済みと言っていますが、10月29日のこの連結営業利益見通し等に関するお知らせでは、単に「現時点における公表は困難な状況にあります。」となっているのみであり、「開示済み」とは言い難いと思います。

750億円の損失の詳細は、2008年10月30日のソフトバンク750億円社債デット・アサンプションによる損失で書きましたが、この平成21年3月期 第2四半期決算短信 の24ページの「2. 偶発債務」の合計金額です。

私でも、10月30日に750億円の損失を予想できました。一方、私とは比較にならないほど情報量を持ち損失になるかどうかの的確な判断をソフトバンクの経営者は下せたはずです。それにも拘わらず、期末を10日も過ぎた時点で、「750億円損失を出しました。」とは、ディスクロージャーができていないというか、株主・投資家(潜在的株主や投資を検討中の人も含め)やユーザー、債権者、その他関係者をおろそかにしすぎではないかと感じます。偶発債務ではあるが、その発生の可能性が高い場合は、引当金に繰入れ、損失を認識するのは、会計のイロハのイであります。引当金は、期末にのみ繰り入れるのではありません。何のために、四半期開示をしているのだ!第3四半期の決算短信を見ても、全く同様で、引当金処理をしていません。

デット・アサンプションぐらいは、やばそうではあるが、まともなデット・アサンプションもあるとして、「英国領ケイマン諸島に設立された特別目的会社(SPC)」とか「クレジット・デフォルト・スワップ契約」なんて、思いっきりやばそうな単語が並んでいましたから。

それにも拘わらず、今回のプレスリリースも「営業利益およびフリーキャッシュフローの連結業績予想に影響はありません。なお、当社単体業績に与える影響もありません。」なんて言っていますが。私に言わせれば、次の通りです。(書いていて、バカらしくなりました。)

・ 特別損失であるから、営業利益に影響がないのは当たり前。

・ 750億円のデット・アサンプションに関わる社債は、平成22年8月の償還であるから、フリーキャッシュフローに影響がないのは当たり前。

・ 連結子会社ソフトバンクモバイル㈱が発行した社債に関する取引であるから、連結親会社であるソフトバンク(株)の単体業績に影響がないのは当たり前。

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2009年4月 1日 (水)

美少年酒造のわな

美少年酒造事件を見ていると、落とし穴のような罠が、何重にも張り巡らされているように感じました。

1) 社長の続投

社長は本日記者会見で(正式な記者会見でなかったかも知れませんが、次の日経記事には報道陣に対して述べたとありますので)辞任を言ったようですが、「筋道がついてから辞める」というのは、辞めると言えるのでしょうか?同記事の中に、「汚染米事件発覚後の経営再建を担っていた緒方伸太郎副社長」とあり、社長と同姓であるので、息子さんであると思いますが、「副社長」に譲り、自分は役なしの無報酬で会社、社員を支え、取引先及び顧客のために全力で尽くすのが本筋と思います。

日経 4月1日 美少年酒造社長が辞任へ 三笠フーズからの裏金で

2) 汚染米加害者の可能性

前日の3月31日に世の中に知れ渡ったんですね、美少年酒造が汚染米被害者ではなく、加害者の可能性があることが。(少なくとも、付け入れられるような弱みは持っていた。)

日経 3月31日 三笠フーズ側、美少年酒造へ裏金 コメ差し替え、差額プール

どのようなことをしたのかは、次の朝日の記事の方が、多く書いてありました。

朝日 4月1日 「三笠フーズ側から裏金」美少年酒造社長が謝罪会見

農協から一等米を仕入れて(三笠フーズ子会社の)辰之巳に精米を委託しながら、(辰之巳には)実際は三等米とみられる米を納入させ、浮いた差額は三笠フーズ社長の冬木三男が年に一度、緒方社長にまとめて渡していた。」(括弧の中は、私が付け足しました。)

一等米を本当に仕入れているのですから、巧妙な手段を使っていました。そのような美少年酒造と三笠フーズの関係であったから、汚染米と分かっていながら、購入した可能性が高いと思います。そう思って、次の9月30日の石破農水相が美少年酒造を訪れ「深くおわび申し上げます」と述べたと報じるニュースを読むと最高の皮肉演劇を見ているようです。

産経 2008年9月30日 【汚染米不正転売】農水相が美少年酒造に謝罪

3) 被害者vs加害者

三笠フーズや美少年酒造の経営幹部連中が加害者であることは、間違いがないことと思います。しかし、それだけで、終わらせて良いのだろうか?朝日の記事には「裏金は、自社の酒を飲食店に置いてもらおうと資金を貸したまま、回収できなくなった不良債権の処理などに使ったという。」とあり、美少年酒造の緒方社長は、手にした裏金を、会社のために使ったのだとは思います。

被害者は、一等米が入っていると品質を信頼して購入し、飲んだ消費者です。しかし、被害回復は困難と思います。

しかし、一方で、消費者が余りにも、価格と単なる表面上の記載にこだわりすぎている結果ではないかとも思います。どこそこの○○が製造した、あるいはXXが販売しているということで、品質の信頼が存在し、高くても納得できた物が、情報が乏しかった昔の時代には多かった。安いのは良いことですが、行き過ぎると逆にマイナス効果が出てしまう。消費者は一方では、(公務員を含めサービス提供者と考え)生産者です。生産者にとっては、安いだけではない、本当の価値を正当に評価して欲しいのです。次の朝日の記事は、そのような部分も表現しているのだと思いました。

朝日 3月30日 昨春から一転、値下げラッシュ 行き過ぎなら企業圧迫も

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2009年1月23日 (金)

大阪産業大学vs週間東洋経済

学校法人大阪産業大学がこの発表 本学園の資産運用に関する新聞報道についてを1月21日付で出しています。

発表の中で「本学園が運用する種々の資産のなかにデリバティブを組み込んだ仕組み債があり、米国発の金融危機に始まる円高の影響を受けて、現在の時価で数十億の評価損を生じております。」と述べられています。

ところで、既にホームページからのリンクはなくなっているのですが、ここに1月19日付けの「本学園に対する「週刊東洋経済」の掲載記事について」という発表文があり、しかも、この文書の下にQ&Aへのリンクまでついてあり、週刊東洋経済の記事の個別論点について書かれています。

週刊東洋経済の記事は、ここにあり、読むことができます。

大阪産業大学が、デリバティブを組み込んだ仕組み債を保有していることは大学自身が認めており、評価損が何十億円か発生していることも確かです。そこで、大学の2008年3月末貸借対照表がこの書類の3ページ目にあり、ここに財産目録もあります。保有している有価証券は139億円でした。

すっきりしないのは、数十億円の評価損との表現だけでは、逃げているのではと感じてしまうことです。それと、1月19日付の発表のリンクを中止してしまったこと。勘ぐれば、監査法人を大手のトーマツから中小の監査法人である監査法人アイ・ピー・オー(公認会計士19名)に変更していることです。上場企業のパターンなら、上場廃止に向かってまっしぐらの時に起こる現象ですから。

学校法人は、財務状態の評価で学生や生徒が集まってくるのではないが、うさん臭いと思わせるような発表はせずに、堂々と正確な会計情報を提供すべきだと思うのですが。

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2008年12月19日 (金)

近江八幡市総合医療センターPFI解消の続報

近江八幡市総合医療センターPFIの契約解除の合意が17日に成立したと報道がありました。

読売 12月18日 病院の民間活用破たん、近江八幡市が契約を解除へ

解約金として20億円を支払うとのことですが、「PFI方式を継続するより約113億円節約できる」とも書かれています。それでは、PFI方式としたことにより133億円の無駄使いが発生することになっていたのではと思います。

近江八幡市の市民から責任追及の声が、あがるのでしょうか?財団法人 日本経済研究所と株式会社 病院システムの2者は、どのようなアドバイスをしていたのでしょうか?

過去の近江八幡市総合医療センターPFI関連のエントリーは以下でした。

1月30日 近江八幡市PFI病院の倒産の恐れ
12月15日 近江八幡市は病院のPFI解約方針

この直前のエントリーで取り上げた高知医療センターPFIは、どのようになっていくのでしょうか?なお、高知医療センターの脳外科を高知新聞の記者が密着取材して、2008年02月04日から「医師が危ない」と題した特集が夕刊に掲載されていました。Webではここにあり、読むことができます。PFI方式と直接関係はないでしょうが、大病院の医師の置かれている状況が新聞記者の目を通して直接伝わってきます。大変だな~と思います。興味のある方は、読んでみてください。

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高知医療センターPFIでも問題浮上

近江八幡市の病院PFI解約について、12月15日のエントリーで書きましたが、高知県・高知市共同事業の病院PFIである高知医療センター(ホームページはここ)でも問題が発生しています。

高知新聞 12月02日 高知医療センター 本年度末7億6000万円不足

高知新聞 12月04日 高知医療センター 127億円借り換え検討

12月2日の記事では、2009年3月末で7億6千万円の資金が不足するとなっていました。12月4日の記事は、金利の低い地方債に借り換える方針を決め年間5億円の軽減を見込むとなっています。やはりPFIなので高くついている。そこで、PFIを解約して、違約金を払わざるを得ないが、資金コストの安い地方債に切り替えるということで、近江八幡市とほぼ同じパターンです。もう少し、中を覗いてみます。

1) 高知医療センターのPFI事業

高知市には、高知県立中央病院と高知市立市民病院があったのですが、この2つの病院を統合して新たな病院として高知医療センターが作られました。高知医療センターの病院事業を実施している事業者は、地方公営企業法に基づき高知県と高知市が組織している高知県・高知市病院企業団です。(企業団規約はここにあります。)

病院事業者は高知県・高知市病院企業団(以下企業団とする。)ですが、病院の箱物(建物)はオリックスが出資した高知医療ピーエフアイ株式会社(以下SPCとする。)からのファイナンス・リースとなっており、更に医療の範囲外となるビル管理、施設管理、清掃、給食、検体検査、看護補助、そしてITシステム等がSPCから企業団に提供され、リース対価とサービス対価が企業団からSPCに支払われる契約が締結されています。この契約は長期契約であり、ITシステムを除く部分が30年契約で対価が2,132億円。ITシステムが8年間で46億円です。

思想としては、医療ライセンスが不要で民でできるものは全て民に一括で投げて、医療ライセンスが必要な医療事業部分は県と市が組織している企業団が実施するスキームです。相乗効果で良くなると期待したのでしょうが、絵に描いた餅を実践したのだと思います。餅の絵は、正しいフィージビリティースタディーをしなくても描けますから。悲しいのは、絵に描いた餅で、税の無駄使いをされている県民・市民です。国庫補助金も出ていれば、日本人全員が無駄使いにつきあったことになります。

2) 高知医療センターの平成19年度決算

高知医療センターの平成19年度決算がWebで公開されており、ここにあります。損益計算書を図示したのが、次です。

H19pl

支出が収入より大きいことが分かります。収入の紫部分が構成団体負担金となっていますが、県と市の救急医療負担金(5.4億円)、割愛職員退職給与金(4.8億円)等であり、リンク先の損益計算書に記載されています。支出の中で、経費、減価償却費、支払利息等がPFIのSPCへの支払いに相当すると思います。

次が、貸借対照表で、平成19年3月末も比較のために表示しました。

20083bs

赤の部分が累積赤字で、自己資本と資本剰余金を減額せずに表示したので、資産サイドの一番上に記載しました。平成20年3月末と19年3月末を比べると、累積赤字が大きくなっているのが分かります。20年3月末の累積赤字は58.1億円で、19年3月末の39.2億円より18.9億円増加しました。結果、20年3月末において、自己資本と資本剰余金の合計から累積赤字を差し引くと21億円です。公企業会計では、企業債も借入資本として資本に算入するようですが、民間企業ベースでは、丁度1年を経過後は債務超過すなわち、実質破産状態に陥ります。

PFIによる資金調達部分は長期未払金と未払金の多くの部分と思うのですが、貸借対照表を眺めると、せいぜい138億円あるいはPFI契約保証金を足しても150億円程度であり、全体の総資産に対しては40%足らずです。高知新聞の記事では、127億円となっており、PFIよる資産リース部分は127億円だと思います。そうすると年間5億円の節減は4%弱金利節約と思います。病院のような公共施設で、通常より4%も高い資金コストによる調達を行っているのは、おかしかったと思います。

3) PFI解約の可能性

近江八幡市のPFI病院と同じで、高知医療センターPFIも早く解除すべきと思います。継続することは、年間5億円の無駄使いを継続することです。違約金ですが、相手がオリックスなので、うまく交渉すれば違約金を下げるられる可能性があると思うのです。12月13日のオリックスの懸念で、オリックスの資金調達コストが上昇していることを書きました。13.125%は、もしかしたら年率ではなく、5年間に対してかも知れませんが、仮に5年間であったとしても年間2.625%です。オリックスは、資金調達に苦労しているはずで、金融のプロがうまく交渉すれば、オリックスにも利益をもたらす形で、低い違約金で解除できる可能性があると思います。

病院をPFIにしてしまった結果、給食も検体検査も看護補助もすべてSPCが1社で提供することになり、合理化できた部分はあるかも知れないが、独占で競争がなくなったのです。そして、フレキシビリティーに欠けているはずです。付随サービス部分についても、見直しを計り、最も合理的な契約に変更すべきと思います。そう考えると、病院PFIとは、良い所が一つもないように思えます。

私もPFIが全てダメだと言うのではなく、場合によっては、うまくいくこともあり得るはずです。例えば、ある企業が効率の高いゴミ発電を開発した。自治体がゴミを収集するので、ゴミをその業者に渡す。業者は、ゴミを燃して発電して、灰処理をする。業者は従来のゴミ処理費用より少し安い価格でゴミ処理を請け負い、発電した電力料金も収入とする。但し、設備の建設、運転を含め、事業リスクは業者がとる。このような、自治体がリスクを負えない事業で、民間が自己の経験や企業力でリスクを負って、利益を生み出せる分野がPFI事業の分野だと思います。

「民にできることは民に」ではなく「事業は、最適な仕組みを構築して」であります。

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2008年12月15日 (月)

近江八幡市は病院のPFI解約方針

1月30日のエントリー 近江八幡市PFI病院の倒産の恐れで書いた近江八幡市立総合医療センターのPFI契約を解約する方針を近江八幡市が決定したと報道がありました。

朝日 12月14日 病院PFI、初の契約解除 近江八幡市、違約金20億円

20億円は、誰のお金だと言いたい所です。1月30日に書いたことから、続けます。

1) 病院の平成19年度決算

こちらの近江八幡市の公営事業の状況の数字によれば、平成19年度の病院事業は27億57百万円の赤字で、一般会計からの繰入が8億5千万円です。人口が68,267人(平成17年)の近江八幡市ですから、一人4万円強です。従い、金額的には定額給付金より大きい。近江八幡市の全員が、定額一時金を市に寄附しても、赤字が埋まらない。あるいは、一般会計より繰り入れた8億5千万円を人口で割ると12,500円弱になり、丁度定額給付金と同じぐらいです。なお、平成19年度の損益計算書を続きを読むに入れておきます。

こちらに、平成20年9月10日開催の近江八幡市議会定例会の議事録があり、議事録によると次の通りです。(午後3時4分再開後の日本共産党加藤昌宏議員の質問に対する平野幸男総合医療センター事務長の答弁からです。)

 単位:百万円 平成17年度決算 平成18年度決算 平成19年度決算 平成19年度予算
医業収益 7,620 7,548 9,357 8,673
医業費用 7,418 7,780 12,114 9,795
医業損益 202 -232 -2,757 -1,122
医業外収入 201 836 - 782
医業外費用 392 742 - 1,036
経常損益 11 -138 -2,757 -1,376
年度未処理欠損金 11 -299 - -2,658

医業収益は予算と比較して7.9%増となっているが、費用は23.7%増となっている。こんな経営ってあるんですか?と思います。

2)PFI解約は当然

議事録を読み進むと、解約以外考えられなくなります。これでもPFIを続行しているなら、背任行為に思えます。議事録の次の部分です。

(加藤昌宏君) それでは次に、PFIとの交渉の問題について。
 市の直営という問題については、基本的には双方が一致されたということですが、あり方検討委員会もそうですけれども、監査委員もそうですけれども、直営とSPC委託との費用の試算について提案されていましたが、そういう内容について検討、計算されたのか、お伺いをしたいと思います。

総合医療センター理事(岡田一君) 直営の場合とSPCとの委託との経費の違いということでございますね。この分の違いにつきましては、いわゆるそれぞれの委託業務につきまして、SPCの経費という部分が入っておりますので、少なくともその部分については、直営の場合は安くなるということでございます。ただいずれにいたしましても、各業務ごとの見直しというふうな部分でございますね。例えば清掃であるとか、あるいは警備であるとか、そういうふうな部分につきましても、それぞれの業務の見直しというものは必要になると思います。
 以上でございます。

直営の方が安くなると明確に答えています。この質疑の後に、PFIの金融に関することにも話が及ぶが、当然明確な答弁はできません。もともと、PFIとして、民間に投げていたのだから、近江八幡市の手が届かない所ですから。

3)何故PFIであったのか

1月30日に書いたように、何故PFIを選んだのか、その説明をした文書が私には見あたりません。例えば、ここに近江八幡市の平成13年5月付の「近江八幡市民病院整備運営事業実施方針」があります。PFIについての説明は、1ページ目に次のように書かれています。

さらに、本事業は、民間事業者の資金、経営能力及び技術的能力の活用による効率的な病院整備・運営の実施と、市民に対する創意工夫に満ちた良質な病院サービスの提供の実現を目指すべく、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11 年法律第117 号。以下「PFI法」という。)に基づき実施するものとする。

ごまかしが行われていたのではと思えてしまいます。更には、ここに、平成13年6月8日付の「近江八幡市民病院整備運営事業実施方針等に関する質問回答集」があります。しかし、この中に、私が見た限りでは、何故PFIかの回答はありませんでした。

最も、そうかも知れないのです。この近江八幡市立総合医療センターの病院の経緯という文書によれば、「平成13年03月PFIによる新病院建設決定」と書いてあるのです。順序が逆であります。事業の基本方針を決定することが、最重要であるのに、決定後に、質問を受け付け既定路線を走ろうとしていたように思えます。

4)今後すべきこと

先ずは、PFIの解約ですが、その前に、近江八幡市民に対して、20億円の解約金・違約金の根拠を説明すべきです。そして、解約しなければ、更に損失が広がり、この事態に至った以上20億円で解約することが最小限度の損失で抑える方法であることを説明すべきです。私が、近江八幡市のWebを見た限りでは、残念ながら見あたりませんでした。(20億円は、近江八幡市民一人当たり3万円弱の金額です。

何故PFIを選択してしまったのか、損失の予測、リスクの予測等々はできなかったのか。適切な事業計画、事業計画の検討、PFIとしない直接経営等の代替案との事業比較、計画段階における適切な情報公開、公聴会はなされていたのか。課題は、限りなくあります。市民の税金で行う事業であるからには、適切な事業推進が必要です。この調査を実施することが、必要であり、またその調査報告書を公開することです。(サイゼリヤやアーバンコーポレーションについて、多くのアクセスを頂いていますが、サイゼリヤやアーバンコーポレーションもあのような情報公開は実施しています。)

PFIは、民間事業であり、地方自治体は損をしないとの考えがあったとしたら、大間違いです。むしろ病院を現時点では認められていない株式会社が経営するよりも不合理な制度がPFIであるとも言えます。何故なら、PFI事業とは、フレキシビリティーが働きにくい事業だからです。私は、病院をPFIで実施することは、勧めません。

万一、PFIによる事業実施の決定プロセスにおいて違法行為があったなら、損害賠償を求めざるを得ないと思います。なお、実施方針には、財団法人 日本経済研究所と株式会社 病院システムをアドバイザーとして起用すると書いてあります。この人達は、何ものでしょうか?少なくとも、アドバイザーが提出した報告書を全て完全公開すべきと考えます。もし、間違った提案をしていれば、アドバイザーに対しても損害賠償を求めるべきです。(そこまで責任を持った信頼できるコンサルタントを起用すべきです。コンサルタントも、大変で、人ごとではありませんが、無責任なことを言ってはならないと、心して私は仕事をしています。)

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2008年12月12日 (金)

サイゼリヤのデリバティブの恐ろしさ

サイゼリヤがデリバティブで153.1億円の損失を出しました。

日経 12月10日 サイゼリヤ、デリバティブ契約解除で損失153億円 全取締役を減俸に

サイゼリヤ 12月10日発表 デリバティブ契約解約に関するお知らせ

見逃してしまいそうですが、このデリバティブ取引は52百万豪ドルの円との為替スワップでした。従い、1豪ドルを65円とすると、34億円足らずの取引で153.1億円の損失になっています。目的が外貨変動為替ヘッジであれば、あり得ないような損失金額なので、少し分析します。

1) デリバティブ契約の内容

デリバティブ契約の内容については、この11月21日のサイゼリヤ発表 デリバティブ評価損発生見込みに関するお知らせに書かれています。2種類のデリバティブ契約があり、2007年11月22日と2008年2月7日に締結され、それぞれの契約締結時の豪ドルの為替レートは105.83円と98.93円でした。サイゼリヤは、オーストラリアから牛肉等の輸入があり、豪ドルを安く入手できれば、豪ドル決済の仕入れ価格も安くなります。そこで、これら2本のデリバティブ契約ではサイゼリヤが豪ドルを78円と69.9円で入手可能な契約としました。

但し、豪ドル為替レートが万一78円(もう一つの契約では69.9円より豪ドル安/円高になった場合は、比例級数的に逆に豪ドル高/円安の為替レートでサイゼリヤは円対価を支払う契約でした。金額は、2007年11月22日の契約は24百万豪ドルで2008年12月1日から2010年11月1日まで毎月百万豪ドルであり、2008年2月7日の契約では28百万豪ドルで2008年8月から2011年3月まででした。

チャートで示すとよく分かるので、チャートを作りました。(2007年11月22日の契約についてです。)

200812a

青のAUDスポットレートが、実際の豪ドル為替レートの動きです。デリバティブ契約を締結した頃は、豪ドルは100円程度であったので、まさか78円以下になるとは思っていなかった。しかし、2008年9月に悪夢の78円以下に突入した。しかも、この契約のスワップ時期は2008年12月からなので、読みと結果は全く逆に出てしまった。

基準為替レート78円以下になると比例級数的に豪ドル高/円安為替になるのですが、それを示したのが次のチャートです。これは、今後の為替が1豪ドル=65円で推移したと仮定してデリバティブ契約によるレートを計算したものです。

200812b

レートの上限である600円/AUDに2009年8月以降は張り付きました。

2) 教訓

上記の様な結果になったことから、反対取引を組んで、契約解除する以外に選択はなくなったと思います。これが、34億円足らずに相当する外貨変動為替ヘッジで、その5倍近い金額の153.1億円の損失を生んだ理由です。

デリバティブは、リスクヘッジに使用するものです。多分、サイゼリヤの経営者もレストランのメニューは円建てであり、豪ドルを78円や69.9円で固定して為替リスクをヘッジしたつもりでいたと思います。しかし、これはヘッジではありませんよね。

決して、「後出しジャンケン」で言っているのではありません。上のチャートは、ファイナンスのことが少し解っている人であれば、書けたのです。そして、チャートを書いたり、確率を計算したりして、リスクの度合いを予想できたのです。それと、インベストメントバンクの手の内を、ある程度は読むことができるのです。少しでも読めれば、落とし穴に気づいたりします。

ファイナンスコンサルタントでも経営コンサルタントでも良い、自社に人材がいないのであれば、外部の専門家に少しだけでも相談することと思います。サイゼリヤがデリバティブ契約を締結した相手は、この金融庁の行政処分により業務改善命令が出されたBNPパリバですが、さすがBNPパリバで、このようなデリバティブを作られたと思います。考えれば、ハイリスク・ハイリターンのデリバティブなんて、簡単なのかも知れません。不況になるほど、「貧すれば鈍する」に陥ってしまいやすいかも知れないので十分注意してください。

株主代表訴訟の訴えがあっても問題がないように経営をすることは重要です。このようなデリバティブ取引を実行する際は、そのデリバティブを持ってきたインベストメントバンクの説明のみを聞かず、他のファイナンスに詳しいコンサルタント等の意見も聴取して、経営者として判断することをお奨めします。日本は、金融商品を販売する際にはリスクについて十分に説明することを金商法が義務づけていますが、考えれば矛盾する点が少しあると思います。むしろ、同業者でない利害関係のないコンサルタントの意見が、私からすれば、よいと思います。

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2008年11月24日 (月)

立正大学の148億円損失について

駒澤大の154億円損失については、11月19日の駒澤大学154億円損失に思うで書きましたが、立正大148億円損失の報道もありました。

時事通信 11月20日 資産運用で148億円含み損=9月末、大学に金融危機の影響-立正大
共同47ニュース 11月21日 立正大も含み損148億円 「学校経営には影響なし」

駒澤大と立正大の損失の大きさの差は6億円と5%もなく、似通っていると思います。そこで、共通点と相違点を比べ、この問題について考えてみます。

1) 確定と未確定

駒澤大は、10月末に損失となっているデリバティブ関連の契約を解約し、損切りをして154億円の損失を確定しました。一方、立正大は次の11月21日の発表(最新情報)の通り、評価損失であり、長期保有を基本としていると述べておられ、現在も保有しています。

立正大 最新情報 11月21日 立正大学の資産運用に関する報道記事について

すなわち、駒澤大は損失確定です。立正大については、損失とはならず、予定通りの運用収益を得ることができる可能性もあるが、逆に損失が更に拡大する懸念もあります。

2) スワップと仕組債

駒澤大の投資は、「金利スワップ」と「通貨スワップ」でした。立正大の投資について、時事通信の記事は、次のように書いています。

資産運用を野村証券や大和証券SMBCなど国内4社に委託している。運用資産は、国債、地方債、社債や投資信託のほか、豪ドルを組み込んだ仕組み債。これらの含み損は、今年3月末時点で約96億円だったが、足元の金融市場混乱や円高が直撃して拡大した。一般的には、仕組み債は、各種有価証券や不動産などの資産を組み合わせて組成する複雑な金融商品。

仕組債も、表面的には利回りの高い債券の様に思えるが、本質はデリバティブです。例えば、豪ドルの仕組債を考えると次の通りです。

1.豪ドルと円の交換レートに関して円のコールオプションを売る。
例えば、A$=100円のときに、A$=90円の円コールオプションを売る。コールオプションの料金は例えば、1A$につき、5円。

2.為替が円高/豪ドル安となり、90円以下になれば、円コールオプションを買った人は、100円につき、90円で割り算した豪ドルを渡せばよいのだから、オプションを実行する。結果は、90円以下にはならないという保証を5円で購入したことと同じである。

3.為替が円高/豪ドル安となり、90円以上であれば、円コールオプションを買った人は、オプションを実行せずに、その時のマーケット・レートで円を購入する。オプションを購入していなかった時と比べ、5円の費用が余分に発生しているが、90円以下にならない保証の対価として見合えば問題はない。

4.上記1.の取引と同時に、円建ての仕組債を発行する。仕組債の金利は、「通常の金利+オプションの価格ー手数料」とし、「万一、豪ドルが債券満期時においてA$=90円以下である場合には、A$相当の円貨で償還する。」との特約を付ける。オプション対価が上乗せされるから、満期が1年であれば、5%近い金利が上乗せとなる。

「A$=90円以下なんてなりませんよ!」と言って、債券を販売すれば、大変です。次のチャートがYahooの豪ドルと円の過去1年の交換レートです。現時点では、60円を少し切ったところ故、上で書いた90円のオプションが絡んでいれば、40円の損失ですが、オプション料の5円がカバーされて、35円の損失となります。

Ayenrate20081124

仕組債もデリバティブ組み込み商品であり、本質的には金融派生商品です。

3) ディスクロージャー

駒澤大も立正大も財務諸表を公表しています。しかし、財務諸表の公表が、ディスクロージャーに問題なしを意味せず、注記表を初め、必要事項の説明が実施されないといけません。ちなみに、立正大の2008年3月末の貸借対照表を見ると、有価証券が552億円であり、そのうち満期保有目的の債券が537億円です。この満期保有目的の債券の2008年3月末時点での時価評価額が440億円ですから、97億円評価損がありました。一般の債券も金利が上昇すると評価額が下がるが、18%も下がるのは仕組債の保有があると考えられます。

学校法人は、上場株式会社とは異なるので、同一基準での財務諸表の作成やディスクロージャーが適切とは考えませんが、11月21日の最新情報公表(プレスリリース)はやはりディスクロージャーの範囲が少なすぎると私は感じます。また、立正大学平成19年度事業報告書にも「資金調達の状況」はありますが、「資金運用の状況」はありません。(借入金は4億円しかないのですが。)

立正大は、独立監査人として新日本有限責任監査法人の名前があります。財務諸表の監査をされていると理解します。2009年3月末の財務諸表がどのようになっているか、興味あるところです。

4) ガバナンス

駒澤大のところで書いたように、学校法人のガバナンスが、私立学校(学校法人)の多くに共通する問題と思います。ガバナンスは学校法人・自らが、そのルールを打ち出していくべきと考えます。問題が発生し、世間が騒ぎ、政府・文部科学省が介入権を持つようになるというのは、避けるべきと考えます。

大学は、学問の自由やその権利を守るべきです。そのためには、多くの人々の支持を受けることが必要であり、問題が発生しない仕組みを自らが作り上げていくことが重要と考えます。

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2008年11月19日 (水)

駒澤大学154億円損失に思う

駒澤大学がデリバティブを使った資産運用に失敗して154億円の損失を出したニュースがありました。

日経 11月19日 駒沢大、デリバティブで154億円損失 金融危機が直撃
朝日 11月29日 駒大、資産運用損失154億円 キャンパス担保で穴埋め

企業の売上高に相当する学校法人駒澤大学の平成20年度学生生徒等納付金収入が168億円なので、年間売上高に匹敵する損失を出したことになります。

1) 損失の理由

報道を総合すると、「金利スワップ」と「通貨スワップ」の計4商品を外資系金融機関2社と昨年度に契約し、このスワップの損失が膨らみ154億円の損失で損切りをして、10月末に解約したとのことです。

高金利運用をするためにCDMを購入したのかと思ったら、どの報道もスワップでした。スワップとは交換なので、交換時は等価交換です。基本的なスワップの利用方法は資産運用ではなく、リスクヘッジです。金利スワップであれば、長期固定金利と短期変動金利の交換等であり、通貨スワップであれば、ドルと円を取り決めた時期に取り決めた交換レートで交換する等です。

資金運用をスワップで利用する例は、次のような場合です。

A. 円資金で国債等の運用を行っている。しかし、円金利は安い。

B. 円金利が安いからドルで運用する。円で1%の運用がドルで5%の運用に相当するなら、スワップを行うことにより1%の円運用は相手に渡すが、5%のドル運用を得ることとなる。

C. 但し、同時にドルのリスクも来ることから、将来満期になった時のドルの交換レートがその時のスポットレートとなる。そこで、通貨スワップを締結して、ドルを渡し、円を入手するスワップを組む。

うまくいくように勘違いしそうですが、実はC項として書いた外貨スワップのレートは、運用金利差が影響するから結果は損得なしです。むしろ、厳密に言えば、同じ通貨の調達と運用の金利差および手数料が発生することから、損をします。

レバレッジを効かせ、証拠金の何倍かの規模にすることと、オプションを組み込めば、バクチ性が高まります。通常は、反対取引を実行して何時でも精算可能です。但し、オプションの反対取引なんかは、相当の逆ざやが生じる可能性があり、リスクが大きいこととなります。

駒澤大学のケースもそのようなことと思いますが、朝日の記事に「17日の臨時理事会で、経理担当者の責任が議論されたが、まず、契約のいきさつや商品の詳しい内容などを調べるため、調査委員会を設置」とありますので、調査委員会の報告書が公表されるまで、待ちたいと思います。

2) デリバティブに手を出した理由

学校法人が、資金運用で利益を生み出す義務はないはずです。なぜ、デリバティブを使って利益を生み出そうとしたかです。デリバティブそのものは、ヘッジ手段として利用することも可能であり、有用ですが、運用手段としては疑問がある。

駒澤大学の平成19年度決算を見るとデリバティブ運用損650万円があるものの、デリバティブ運用益1億6195万円が計上されており、資産運用収入として平成19年度は合計19億3792万円が計上されている。平成19年3月末の貸借対照表を見ると、企業会計において投資その他の資産に該当するその他の固定資産が約165億円あり、流動資産のうちに有価証券が約60億円含まれている。結果、225億円の投資に対し19億円の運用収益故8.4%の運用を行ったこととなる。

平成20年度の予算を見ると、運用収入が24億円となっている。30年国債でさえ、2.28%程度の現在のマーケットで8%以上の運用益をあげる予算となっていることによりリスクがあっても高収益のデリバティブに手を出すことになってしまったと言うことはないのかと思う。過去に高金利の時に購入した債券があり、満期保有目的債券のように時価評価せず、償却原価法を適用して高金利が得られることになっている場合もある。詳細を知らないので、調査委員会の報告書を待たねばならないが、もし無理な資金運用計画になっているとするなら、原因は計画そのものにもあると思う。

経理担当者の責任として片付けると問題の本質を見誤ることになるだろうと思います。

3) ガバナンス

企業を含めあらゆる組織にとって最重要なことは、ガバナンスの確立と思います。ところで、駒澤大学には、経済学部、法学部、経営学部があり、それぞれに大学院が設置され、法科大学院も存在します。この事件の一番の皮肉は、ガバナンスについて研究を行い、教育をしている大学で生じたことです。また、デリバティブについても同じで、研究・教育の対象であったのですから。

駒澤大学には、今回の事件を教訓として、ガバナンス上の問題点と改善点を明らかにし、今回の事件を他の関係者にも公表し、教訓を社会に広げていただきたいと思います。財産目録を見ると223万m3の土地が簿価171億円となっていることから、m3当たり7,661円です。全ての土地が世田谷区駒沢ではないでしょうが、m3当たり10万円とすると2000億円を超える含み益があることとなります。154億円の損失は駒澤大学の存続に影響があるとは思えず、これを生かすべく、その教訓とすべき事項を公表願いたいと思います。

一般企業の場合は、競争相手に企業秘密が漏れることとなり、公表が困難な事項も多いと思うが、私立大学の場合は、一般企業と比べれば制限を受ける事項は少ないし、具体的事例を通じての研究は最も得られる成果が大きいと思います。

私の言うガバナンスとは、私立学校法の学校法人の場合のガバナンスは、どうあるべきかを含みます。公益法人改革により12月1日から「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」と「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が施行となります。株式会社の場合は、もまれてガバナンスができあがっている部分があるが、従来の公益法人は善意の運営が前提となっており、ガバナンスが弱い部分が相当あることを懸念します。

ガバナンスは問題が起きることにより強化・発展・確立されていく部分があると思います。これを機会に駒澤大学がガバナンス強化に貢献願いたいと思います。

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2008年11月13日 (木)

BNPパリバによるアーバンコーポレーションとの取引

8月20日にアーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引を書いており、題名を逆にして本日は、書いているようです。BNPパリバが、アーバンコーポレーションとの取引に関する外部検討委員会の調査結果を公表しました。ビー・エヌ・ピー・パリバ証券会社による2008年11月11日の発表は、ここにあり、同ページ下部の報告書概要(PDFファイル)をクリックすると報告書がダウンロードできます。

上記についての報道としては、日経 アーバンコーポ破たん前の重要情報、パリバが非開示促す朝日 BNPパリバ、アーバンの資金調達でインサイダー取引に該当の可能性毎日 BNPパリバ:「インサイダー取引も」アーバン株売買でがあります。

BNPパリバは、発表文に次のように書いておられ、インサイダー取引規制に抵触しないと判断されています。

尚、本報告書中のインサイダー取引に関する記載について、一部報道でインサイダー取引に該当する可能性が高いとの記事がありましたが、これは委員会の見解とは異なるものと思われます。外部検討委員会より補足の説明を別途受領致しました。弊社と致しましては、本件はインサイダー取引規制に抵触するものではないと判断しております。

本日は、toshiさんのブログyuraku_loveさんのブログ会計ニュースコレクターさんGrande's Journalさん等多くのブログで本件について述べられておられました。私なりに考えてみます。

1) BNPパリバによるアーバンコーポレーションとの取引

どのような取引であったかの概要を頭に入れておく必要があるので、簿記の仕訳的に表現します。(財務諸表としての仕訳ではなく、概要を整理するための仕訳です。)

(A) BNPパリバ

私の頭に浮かぶ、BNPパリバから見た取引は次の表の通りです。

年月日 摘要 借方 貸方 備考
科目 金額 科目 金額
2008.7.11 2010年満期転換社債型新株予約権付社債(CB)の買受け アーバンCB 300億円 現金 300億円 300億円をアーバンに支払い
2008.7.11 スワップ契約の支払い受領 現金 300億円 金銭債務 300億円 金銭債務額は、スワップ契約実行に応じ確定する。
2008.7.11以降 アーバンCBの株式への転換 アーバン株式 150億円 アーバンCB 150億円 CBの転換の 株式への転換
2008.6.26~2008.7.11以降 アーバン株式の売却 現金 101億円 アーバン株式 101億円 CBの転換又はアーバンからの借株を市場売却
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 91億円 現金 91億円 スワップ契約に基づきアーバンに支払い
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 49億円 アーバン株式 49億円 スワップ契約に基づく変動差額
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 10億円 当期利益 10億円 スワップ契約に基づく利益
2008.8.13 民事再生法申請による期限の利益喪失 金銭債務 150億円 アーバンCB 150億円 スワップ契約解除に伴い権利義務相殺(相殺特約)

表中の年月日の順序が変になっていますが、スワップ契約は2本締結され、6月26日から7月11日の期間を対象としたスワップ契約1と7月11日以降を対象としたスワップ契約2の2種類であり、アーバンからBNPパリバへの支払いはスワップ契約1及びスワップ契約2の双方とも7月11日でした。実質は、1本のスワップ契約です。

(B) アーバンコーポレーション

私の頭に浮かぶ、アーバンから見た取引は次の通りです。

年月日 摘要 借方 貸方 備考
科目 金額 科目 金額
2008.7.11 2010年満期転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行 現金 300億円 社債 300億円 300億円をアーバンに支払い
2008.7.11 スワップ契約の支払い実行 金銭債権 300億円 現金 300億円 金銭債券額は、スワップ契約実行に応じ確定する。
2008.7.11以降 転換社債の株式転換 社債 150億円 資本金等 150億円 資本金等は、資本金及び資本準備金
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 現金 91億円 金銭債権 91億円 スワップ契約に基づきアーバンに支払い
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 損失 49億円 金銭債権 49億円 スワップ契約に基づく変動差額
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 損失 10億円 金銭債権 10億円 スワップ契約に基づく契約差額
2008.8.13 民事再生法申請による期限の利益喪失 社債 150億円 金銭債権 150億円 スワップ契約解除に伴い権利義務相殺(相殺特約)

上記は、整理であります。300億円の転換社債を発行し、そのうち150億円が転換されたものの91億円しか現金が入金せず、59億円はスワップ契約による株式価格差やスワップ手数料のようなものでなくなりました。資本取引・損益取引の混同はなんて、難しいことは考えていませんので、ご了承下さい。

スワップ契約の内容は、アーバンがBNPパリバに300億円を支払い、BNPパリバはアーバン株のその日の出来高の12%~18%にVWAP(その日の平均市場価格)を掛けた金額の90%をアーバンに支払う契約です。CBの方は、1株344円の固定金額で株取得となり、BNPパリバは市場価格で売却し一見損失となるが、その見合いがスワップ契約の差と等しいわけで、更に90%相当しかアーバンに支払わないから10%儲かります。

アーバンから見ると、一見損ですが、初めから株価下落を覚悟して、時価増資をし、手数料を10%支払ったのと同じです。もし、スワップ契約を隠しておけば、BNPパリバがCBを引き受けて資金援助をしたように誤解が生まれれば、株価下落は少ないか、うまくいけば、株価上昇も期待したのかも知れません。

2) BNPパリバはインサイダー取引に該当するか

最終的には、裁判所が決めるのでありますが、私の無責任発言においては、「抵触」とはならないだろうと、思います。理由は、BNPパリバ自身の発言がそうであることと、インサイダー取引のリスクは大きすぎるので、BNPパリバ自身も負わないだろうと思うことです。

別の言葉で言えば、上の仕訳にあるように10億円を短時間に儲けたのです。最終的には、8月13日の仕訳のように特約により債権・債務相殺でチャラパーです。あえてリスクを冒す必要がない取引をBNPパリバは仕組み、契約し、実行することに成功したのです。BNPパリバの発表によると、利益は総額11億7977万円です。

しかも、問題視されることが予想された取引です。村上代表ではないですが「金商法、インサイダー取引のプロ」です。アマチュアのアーバンが冒しても、BNPパリバは冒さないと思います。

但し、BNPパリバの関係者が個人で、アーバン株を売買していれば、別です。しかし、市場で最大300億円の株を売り込む話です。従い、値下がりが確実なわけで、売りを行うために、借り株ができなければならないことから、個人でインサイダー取引をしようとしても、普通より困難だったと思います。

アーバンの関係者であれば株を保有していたと思えることから、むしろインサイダー取引の恐ろしさは、そちらに向かう可能性もあるのではと思います。

3) BNPパリバの問題点

外部検討委員会は、インサイダー取引については、判断する立場にないので判断を差し控えるとしています。しかし、他の点については、問題点を指摘しています。

(A) アーバンによるスワップ取引の非開示

私も当初よりこの点を問題にしたし、金融庁の臨時報告書と有価証券報告書の虚偽記載による合計1231万円の課徴金もスワップ取引に関して虚偽の記載を行ったことによる課徴金です。

報告書は、「アーバンは当初はスワップ部分を開示する意向を示していたが、最終的に「非開示」とする姿勢に転じています。その経緯は明らかではないが、BNPパリバが非開示とするよう働きかけたことも一因となっていることが十分に推測されます。」と書かれてあり、推測がありうるとのことです。

BNPパリバからアーバンに対して開示を勧める文書は残っていなかったと判断してよいと思います。そこまで、すべきかの議論はありますが、もし私がBNPパリバに勤めていたとすれば、自分自身の身の安全のために、個人名の文書でよいから、何か残したかも知れません。めちゃくちゃな個人主義であり、KYせずとの非難があるかも知れませんが、仕事とはそれほど冷酷かも知れません。

(B) ガバナンス

もっとも難しいものです。インベストバンクなんて人が次から次へと変わっていく。チームでやっている面もあるが、個人プレーの方がずっと大きかったりです。でも、そこを外銀なんかよくやっているなと逆に思ったりします。

多分、BNPパリバも相当にしっかりしたガバナンスを構築されておられたと思います。それでも、完璧には行かず、そしてガバナンスの最重要点は、その組織の長です。長が、しっかりしていれば、未然にあるていど感じて、行動をします。組織の長(子会社であれば、子会社のCEO)に求められる役割で、最大の仕事は、顧客との関係ではなく、その組織のガバナンスの弱点を補うことと私は思います。

それからすると、リーマンを買われた野村さんも大変だな。でも、野村さんだから、やり遂げられるかなと思います。

4) 今後

今後は、どうなるのでしょうか?朝日の11月12日は金融庁、BNPパリバを行政処分へ アーバン増資巡りなんて書いていますが、行政処分まで行くのでしょうか?分かりません。

刑事罰には、未だ誰も問われていないが、あり得るのか?検察の方も、ウォッチして追いた方が良いのでしょうか?私にとっては、沈みゆくアーバンコーポレーションに乗っかっているアーバン経営者が最後の悪あがきをしてしまった事件と思えます。従い、一般投資家を欺して、金をとったホリエモンの私のイメージとは少し異なっています。

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2008年10月30日 (木)

ソフトバンク750億円社債デット・アサンプションによる損失

ソフトバンクは、29日に第2四半期の連結業績並びに平成21年3月期、平成22年3月期の連結営業利益見通し等の発表を行いました。

ソフトバンク プレスリリース 2008年10月29日 平成21年3月期、平成22年3月期の連結営業利益見通し等に関するお知らせ

但し、経常利益や臨時損益を含んだ純利益については、触れられておらず、プレスリリースの中では、次のように記載されています。

連結売上高は、携帯電話端末の販売手法によって大きく変動するため、業績予想の公表は困難な状況にあります。また、連結経常利益および連結当期純利益の業績予想は、当社が投資有価証券を多数保有していることや、ファンドを通じた投資を行っていることから、市場環境の影響を受けやすく、持分法投資損益および特別損益の予測がしづらいため、現時点における公表は困難な状況にあります。

しかし、今期の平成21年3月期においてデット・アサンプションに起因する750億円の損失発生の可能性が大きいと考えられることから、書いています。

1) 750億円損失の原因

平成21年3月期第2四半期連結業績として、ソフトバンクはこの決算短信を発表しました。決算短信の26ページから、連結貸借対照表の注記事項の記載があり、その2番目の項目である偶発債務として、750億円の損失発生の可能性が書いてあります。

当該部分の全文は続きを読むに入れましたが、どのような取引であったかと言うと、2010年8月と9月に満期償還となる社債に対して、期限前償還をしたいが、社債の満期日前の償還は困難であるため、金融機関と信託契約を締結し、償還資金を信託により運用し、その運用益と運用返済資金で社債が償還されるように仕組み、社債を期限前償還することと同一効果になるようにした。但し、金融機関との契約は信託契約であり、金融機関は管理者に止まり、全リスクはソフトバンクが負担する。

貸借対照表上は、社債債務は、金融機関に支払った資金で償還される予定であることから、双方とも認識せずに、注記として記述した。損失金額が750億円と想定される理由は、「デフォルトが8銘柄以上の場合は全額の75,000 百万円が減額される」と書いてあり、既に6銘柄のデフォルトが発生していることから、全部で160 銘柄の構成なので、2009年3月までに、今後2銘柄以上のデフォルトが発生する可能性が残念ながら存在すると思われるし、満期日の2010年8/9月まで無事に過ごせると思うのは楽観的すぎると感じたからです。

2008年5月27日の武富士の300億円に思うで、武富士の実質的ディフィーザンスによる300億円の損失を書きましたが、ソフトバンクの750億円損失も基本的には全く同じです。

2) 信託契約により投資した資産

投資した資産は、英国領ケイマン諸島に設立された特別目的会社(SPC)が発行した債務担保証券と書いてあり、サブプライムで有名となったCDO(Collateralized debt obligations)です。CDO自身、サブプライム・ローンとは限らず、色々な貸付金、債券がその対象となります。このNikkei Net IT Plusの記事 10月29日 ソフトバンク、営業最高益も金融不安で最大750億円の損失リスク 4―9月決算には、「アイスランドの銀行やリーマン・ブラザーズ証券など6銘柄が債務不履行(デフォルト)となっており」と記載されており、従来であれば優良投資債券が組み込まれていたのだろうと思います。アイスランドの銀行やリーマンなんて、少し前なら超優良先と皆が思っていましたから。

しかし、160 銘柄で8銘柄以上デフォルトの場合に全額減額なので、やはり大きなレバレッジが仕組まれていたと言えます。もし、レバレッジ1であれば、8/160である5%減額で済むわけですから。CDOとは、レバレッジを、好きなように組める仕組みです。デリバティブの恐ろしさを見せてくれています。現在の世界的金融不況については、改めて書きたいと思っていますが、何故米国発金融不況が生じたかは、デリバティブという金融派生商品に起因する所が大きいと思います。

3) ディスクロージャー

現時点では、デフォルトになったのは6銘柄であり、7銘柄になると損失発生の様なので、ディスクロージャーについて問題があるとは思いません。しかし、デフォルトになる可能性があるなら、引当金を計上しておく必要があり、本決算においては、引当金も問題になるであろうし株主に対する更なる説明を必要だろうと思います。2009年3月期は、デフォルトになっていなくても、引当金を計上し損失を認識することはあり得ると思います。

一方、このデット・アサンプションを実行した時期ですが、2007年3月期の貸借対照表から注記が始まっているので、2007年3月期と考えるが、ソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収したのが2006年4月であり、これ以降2007年3月までのプレスリリースを見ても、このデット・アサンプションについての発表がありません。社債そのものは、1998年、2000年発行なので、ボーダフォンによる買収前のJ-フォンの時代のはずです。そうなると、ソフトバンクはデット・アサンプションが実施された状態のボーダフォン日本法人を購入したと思われます。

M&Aが行われた会社の財務諸表って難しいと思いました。一方、M&Aをする側にとっては、相手先がデリバティブ取引を持っていた場合に、そのリスクを短期間のデューデリで、どこまで分析できるのかなと思います。一見してうまく仕組まれているが、思わぬ落とし穴があったりして。

2007年3月期のソフトバンク連結貸借対照表の偶発債務に関する注記も続きを読むにおきました。

続きを読む "ソフトバンク750億円社債デット・アサンプションによる損失"

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2008年10月28日 (火)

米国基準と日本基準の財務諸表

会計ニュースコレクターさんのところで知りましたが、三菱UFJフィナンシャルグループの2008年3月期の当期純利益が米国基準では、日本基準より1兆1千億円少なく、5424億円の純損失であったのですね。三菱UFJフィナンシャルグループの、この件についての報告は次の所です。

平成20 年9 月19 日 平成 20 年3 月期米国会計基準決算におけるのれんの減損について

のれんの減損が8937億円なので、それ以外の要素も加わり、2853億円更に落ち込み、日本基準6366億円の純利益が5424億円の純損失となっています。

UFJホールディングスとの合併は、2005年10月であり、現行の日本会計基準の「企業結合に係わる会計基準」も2006年4月1日以降開始する事業年度からの適用であったので、合併の会計処理においては、のれんを計上せず、合併時のUFJホールディングスの資産から負債を控除した1兆4563億円の正味資産の増加に対して、資本準備金1兆0779億円と利益剰余金3784億円の増加として処理したと理解します。結果、のれんは計上されなかった。

一方で、三菱UFJフィナンシャルグループの日本基準と米国基準の連結貸借対照表を2008年3月末と2007年3月末について比較したのが次の表です。どっちがどうと簡単に言えないのですが、2つの基準で作成して発表するというのも大変だなと思ってしまいます。

Mufj20083_2

他の銀行と比較する場合、相手が外銀であれば米国基準の財務諸表を基として比べることになるであろうし、米国基準や国際基準(IFRS)でない場合は、比較する時に誤差を見込むことになるのだろうか?そうなると日本基準に固執していると世界から取り残されるというか、ジャパン・プレミアムが乗っかり、日本企業が不利になる、損をするとなるような気がします。

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2008年10月24日 (金)

時価会計

尾を引いているようですね。日本公認会計士協会も、10月23日付けで「時価会計等に関する所感」と題して会長声明を公表されました。

平成20年10月23日 日本公認会計士協会 会長声明「時価会計等に関する所感」

ちなみに、声明の中には、次の文章もあります。

日本公認会計士協会は、会計基準が、企業の実態を反映する鏡であり、投資家に対して意思決定情報を提供するための財務諸表に関する基準であることから、金融市場の混乱を契機に金融商品の時価評価を凍結することは、到底、賛同できないと考えている。

会計とは、企業の財政状態や業績を計る物差しです。ユーザーである投資家に有用な意志決定情報を提供する物差しでないと意味はありませんから。

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2008年10月21日 (火)

不思議な鉄道京阪「中之島線」

大阪で京阪電気鉄道の中之島線が10月19日に開業しました。

Nikkei Net Kansai 10月20日 京阪中之島線が開通──鉄道ファンら500人、門出祝う

1) 中之島線の路線

ここにあるように4駅が開業しているが、実は「北浜駅となにわ橋駅」及び「淀屋橋駅と大江橋駅」は、ほとんど同じ場所にあり、もともと京阪電鉄なので、京阪電鉄が2駅間並行して走ることになり、実質の延長は2駅約1.5kmしかない。


詳しい地図で見る

何故半分の距離で済む淀屋橋駅からの延長をしなかったかについては、ここにNikken Times 特集インタビュー 中之島高速鉄道(株) 坂本富司雄社長として、坂本社長が次のように答えておられました。

ルートに関しては「何故淀屋橋から延伸しないのか」とよく質問を受けますが、これは延伸先に同じレベルで地下鉄御堂筋線が位置しており、もしそこから延伸するとなれば莫大な費用と時間がかかりますから、事実上不可能です。現在の天満橋駅からの分岐延伸は、同駅には番線が4つあったことから、その2つを利用しようとしました。

天満橋駅というのは、京阪電鉄の嘗てのターミナル駅であり、淀屋橋駅から延長しないとなると線路分岐を取れる工事可能な地点としては、天満橋駅になってしまったと理解します。(次の建物の下が京阪電鉄天満橋駅です。)


詳しい地図で見る

2) 工事費と税金

この大阪府の資料によれば3ページ目の左下あたりに1500億円とあります。そうなると、実質では1.5kmの建設なので、1kmの実質建設費が1000億円です。同じ資料の2ページ目ですが、国庫補助金25.2%と書いてあります。すなわち、日本国民の税金が378億円使われました。

この東京都交通局のWebによれば、大江戸線の都庁前~新宿間の建設費が343億円/kmのようです。

都営地下鉄の路線別建設費

項目区間建設キロ
(km)
全線開業建設費
(億円)
キロ当たり(億円)
線名
浅草線 西馬込~押上 18.7 昭和43年 864 46
三田線 三田~西高島平 22.8 昭和51年 1,450 64
三田~白金高輪 ※1 1.6 平成12年 763 474
新宿線 新宿~本八幡 24.8 平成元年 5,822 235
大江戸線 新宿~光が丘 13.9 平成 9年 3,989 286
都庁前~新宿 ※2 28.8 平成12年 9,886 343

※1 白金高輪~目黒は帝都高速度交通営団(現東京地下鉄株式会社)が建設
※2 都庁前~新宿間は、東京都地下鉄建設株式会社が建設

単純比較は良くないと思います。しかし、税金を投入する以上は、それが有効なのだと国民に対して説明が必要です。「地下鉄御堂筋線がじゃまになったから、二重投資になっています。」と説明しているのみであれば、だめであり、例えば、新しい地下鉄を淀屋橋から何故建設できなかったのか、ゆりかもめのような新交通システムでは何故ダメか、経済的有効性や投資効果がどうなるかを数字で示すべきであります。

私は、鉄道はエネルギー効率の面を初め多くの点で優れているし、税金が投入されること自身が悪いとは思いません。しかし、たった1.5kmの中之島線に税金を378億円投入するなら、地方の赤字ローカル線の補助金に少し回しても良かったかも知れないとの気持ちになってしまいます。但し、気分で決めることは良いことではなく、数字を示して国民の了解を取るべきです。

3) 上下分離?

大阪の人は、頭が変なのかなとも思いますが、道路公団でそんなことをやるから仕方がないのかなとも思います。

しかし、私は上下分離なんて絶対反対です。金銭勘定を誤魔化す時に、財布を複数用意して、都合良く使い分けます。上下分離とは、それを許すことです。何故、京阪電気鉄道に線路もトンネルも全て保有して事業をさせないのか?京阪電気鉄道は、一流の鉄道会社と思います。補助金を出す相手として問題があるとは思いません。

京阪電気鉄道に建設補助金と運営補助金を支出すれば、それで良いはずです。責任と会計報告が一体となって初めて有効な事業経営が可能です。

地方自治体による天下り先が好きというか、無駄が好きというか、中之島線を調べると無茶苦茶とチャイマッカーと思いました。このNikkei Net Kansaiの記事も面白いです。

63年には天満橋―淀屋橋間で営業開始し、西進を進めてきた。」それなら、西進できるように、地下鉄御堂筋線と立体交差できるように、最初から計画して線路を地下深く下げておけばよいのに。

同線は西九条を経て最終的には新桜島まで延伸する計画があるが、計画立案から時間がたっているにもかかわらず事業化のめどは立っていない。」それなら、新交通システムで良いではないか。

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2008年10月 6日 (月)

アーバンコーポレイション集団訴訟準備中

山口弁護士のブログで知りました。8月20日にアーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引を書いていることから、少し書きます。

このあおい法律事務所のWebにアーバンコーポレイション集団訴訟手続に関する説明書があります。やはり、準備をされておられのだなと思いました。

8月20にも私は「東証1部上場会社のするべきことではない」と書きましたが、アーバンコーポレーションは、BNPパリバとのスワップ契約の存在を、民事再生手続き開始の申し立てをした8月13日まで、6月26日から隠して、しかも誤解を生む内容の発表をしていたのだから、金商法24条の5、22条、21条による訴訟はあり得るなと思いました。

この訴訟も、蛇の目ミシン株主代表訴訟と同じように、裁判で勝って、どうやって金銭を回収するかという大変さが残るだろうなとの懸念も少しは持ちました。でも、9月17日の東証のアーバンについての決定に書いたように、東証は「不適正な開示」と認めたものの対抗手段やペナルティーは取れずといった歯がゆい状態です。このまま置いておくのも、健全な証券市場の発展のためによくないことと感じます。従い、やはり集団訴訟で頑張ってくださいと言いたい。

集団訴訟は、2008年6月27日以後アーバンコーポレーションの株式を取得し、8月13日後にも保持していた株主により提起されるようで、ヤムを得ない判断だと思いますし、BNPパリバのインサイダー取引や共同不法行為責任についても当面は対象外とすることも息切れするより懸命であると思います。

しかし、一方で6月26日に正しく情報開示がなされていたなら、自分は売り抜いたのであり、300億円の資金調達に成功したと信じて保有し続けて損をしたという株主もおられると思います。この場合は、延々とした水掛け論が続くでしょうか?「BNPパリバとのディールがなければ、ずっと早く民事再生手続きになっていた。」、「BNPパリバとのディールなしで民事再生手続きの方が健全であった。」・・・・・とか。

株式投資とは、会社の能力や成績を評価し、経営者の能力や成績を評価して行うものです。でも、会社の経営者の個人的な力や魅力、あるいは会社の人材というのが、表面的な数字よりも重要なのかも知れないと思います。

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蛇の目ミシン株主代表訴訟583億円

蛇の目ミシンの元代表取締役社長もしくは副社長を務めた5人(うち2人は旧埼玉銀行出身)に対しての株主代表訴訟において、最高裁は5人による上告を棄却する決定をし、東京高裁における差し戻し審の判決である約583億円の賠償命令が10月2日に確定しました。

日経 10月2日 蛇の目株主代表訴訟、旧経営陣の583億円賠償が確定

一人あたり100億円以上になるのですが、支払えるのでしょうか?5人は、オーナー経営者ではなく、サラリーマンであったわけだし、1人100億円以上も支払える資産も持っていないと想像します。代表訴訟ですから、5人が支払う義務を負う相手先は蛇の目ミシンであり、蛇の目ミシンは株主のために5人から受けた損害について判決を元に金銭で回復する義務を有しています。蛇の目ミシンのプレスリリースを見てみます。

蛇の目ミシン 2008年10月03日 旧経営陣に対する株主代表訴訟に関するお知らせ

損害賠償金の回収については弁護団と協力して行う予定ですが、回収可能金額、さらにはこの旧経営陣に対する賠償命令の確定による当社の収益への影響は不明です。」と言っておられます。

事件は、記事にある仕手集団「光進」の小谷光浩元代表に蛇の目ミシンの株を買われた。その結果、小谷から要求あった蛇の目ミシンの取締役への就任を受け入れ、さらに続く小谷からの巧妙な脅かしに動かされて、深みに入っていく決定を5人が重ねてしまった。

この裁判は1審、2審は忠実義務,善管注意義務に違反すると認めたものの、判断については無理からぬところがあり、過失があるということはできず、損害賠償の責任を負わないとしました。

最高裁まで争うこととなり、最高裁は「警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできず、過失を否定することはできない。」として東京高等裁判所に差し戻す判決を2006年4月10日に出しました。この最高裁判決文に「証券取引所に上場され,自由に取引されている株式について,暴力団関係者等会社にとって好ましくないと判断される者がこれを取得して株主となることを阻止することはできないのであるから,会社経営者としては,そのような株主から,株主の地位を濫用した不当な要求がされた場合には,法令に従った適切な対応をすべき義務を有するものというべきである。」とあります。上場会社の取締役は、そのような義務を負うのが当然であると私も思います。

差し戻し審である東京高裁の判決は、本年4月23日にあり、約583億6000万円の賠償を命じる判決で、今回の10月3日最高裁の上告棄却決定で確定しました。

2006年4月10日の最高裁の差し戻し判決はここ (全文)にあります。

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2008年9月13日 (土)

レックスホールディング株式買い取り価格の東京高裁決定文

レックスホールディングのMBOに関連しての株式買い取り価格について、その買い取り価格を不公正であるとして裁判で戦っておられた少数株主の方の主張をほとんど認める決定(私は、そのように理解したのですが、未だ決定文を十分に読めていないので、間違っていたら、ごめんなさい)を9月12日に東京高裁が出しました。(東京地裁の2007年12月決定は会社側の主張を認めていました。)参考記事は、次の日経です。

日経 9月13日 レックスのMBO、株買い取り価格引き上げ 東京高裁

この判決文が、次のアドバンテッジ被害者牛角会ホームページからダウンロードをすることができます。(まだ裁判所Webには載っていないので、ダウンロード先の紹介です。)

アドバンテッジ被害者牛角会ホームページ

なお、昨年3月17日にMBO - Management Buy OutということでMBOや今回のレックスホールディングのMBOに関して、書いたことがありましたので、その関連です。

(追記)
会社法172条1項における裁判所による価格の決定であることから、決定という言葉が正しいので訂正しました。

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2008年9月12日 (金)

JR尼崎事故

兵庫県尼崎市で起こった2005年4月の乗客106人と運転士1人の死亡、562人の重軽傷を招いたJR西日本福知山線脱線事故について、兵庫県警が8日、JR西日本の山崎正夫社長(1999年から事故当時を含め現在も代表取締役社長)を含む歴代幹部9人と、死亡した運転士を業務上過失致死傷容疑で神戸地検に書類送検したとのニュースがありました。

読売 9月10日 福知山線脱線、JR西社長ら業過致死傷容疑で書類送検

衝撃的な事故であっただけに、このJR尼崎事故の教訓は何であるかを、航空・鉄道事故調査委員会の調査報告書から読み解いてみます。

航空・鉄道事故調査委員会の福知山線塚口駅~尼崎駅間 列車脱線事故の調査報告書及びその添付資料はこの調査委員会のサイトからダウンロードできます。

1) JR西日本が言っていることは不十分

JR西日本が本年8月4日、5日の被害者へ説明会で、配布した文書がここにあります。読んで感じたことは、(1) 乗務員の教育と管理を含む運転士の問題と(2) ATSの整備が遅れていた問題が前面に出すぎており、昨日の社会保険庁不祥事の矮小化と同様に、事故原因の矮小化がなされていると感じました。

事故調査報告書は本文だけ250ページもあり膨大ですが、まじめに読みました。

2) 事故の様子

事故当時の電車の速度をグラフに書いてみました。

Photo_7      

青の線が、事故列車の速度で、本来はピンクの線の速度で運転されるべきでありました。事故時間は9時18分54秒と推定されています。このグラフの左端が事故地点の手前1380mで、ここで運転士はアクセルに相当する力行ハンドルを離し、以後は惰行運転か、ブレーキを掛けるかでした。事故地点は、半径304mの右カーブを約2/3過ぎつつある地点でした。このカーブが始まるのは、事故地点の手前172mであり、カーブの制限速度は70km/hでした。それまでの制限速度が120km/hであったことから、70km/hに落としてカーブに進入するためには事故地点の約1000m手前でブレーキを作動させ始める必要があった。

事故列車の先頭車両は事故地点手前100m付近からカーブの内側車輪が浮き始めたと推定されます。上のグラフで、200m地点がカーブが始まる付近と考えてください。なお、赤線がカーブの部分とその転覆限界速度105km/hです。

運転士が本格的にブレーキを作動させ始めたのは、190m手前からで、3.6秒後には最大ブレーキとした。しかし、既に事故地点に60mまで迫っていた。

3) カーブ速度違反に関して

事故地点手前200mのカーブ開始地点に列車は116km/hで進入したと推定されています。これに関連することをあげると。

(1) この地点のカーブは1996年12月までは、半径600mであった。
大阪府、大阪市、兵庫県、尼崎市、JR西日本、関西電力等が出資する第三セクターの関西高速鉄道株式会社が大阪東西線を建設しJR西日本の電車が1997年3月に走ることになったので、連絡駅尼崎の連絡を良くするために、600mカーブを304mカーブへときついカーブに付け替えてしまったのです。

(2) レールのカント
鉄道線路のカーブはカーブの外レールが内レールより高くなっています。この高低差をカントと呼びます。事故地点のカントは97mm(約9%の傾き)で、304mカーブの場合は60km/hに相当します。70km/hに対しては、135mm必要であるが、60mmがJR西日本の許容範囲との規定あり、70km/hであれば許容範囲に入る。

(3) 116km/hでの横G
単純に計算すると0.35Gですが、カントに打ち消される部分があり、0.26Gとなります。これもグラフを書きました。

G

速度ゼロの時は、カントによりカーブの内側へのGが作用し、60km/hで打ち消されて横Gはゼロとなり、120km/hでは0.28Gとなります。事故報告書では、105km/hの速度を超えると脱線転覆と計算していることから、この速度を出した場合の横Gが0.2Gとなることから、グラフ上に赤線で示しました。

冒頭の事故列車の速度のグラフにも赤線で105km/hを引きましたが、カーブ部分のみが対象であり、カーブ部分のみで赤線を引いてあります。

4) 問題点

(1) カーブのスピード超過についての認識

速度超過して転覆するような事故は、経験とか一切なかったので、考えたことがなかった。過去に起きた曲線における速度超過による列車脱線事故は知らなかった。」とJR西日本の代表取締役鉄道本部長で鉄道主任技術者の人が調査委員会に対して述べています。(報告書172ページ)

実際に起こった事故として報告書には例えば1996年12月函館線での300mカーブにおけるJR貨物のコンテナ貨車20両全数の脱線脱線事故があげられています。117km/hで脱線したようですが、簡易計算の結果では最大積載量の貨物を積載した状態では97km/hですが、空車状態で157km/h と脱線速度が大きく異なります。その他、1974年鹿児島線事故では、カーブ内側への脱線であって、外側への転倒ではなかった。だから、主任技術者の認識には、そのような頭があったのかも知れません。

このあたり、もしかして、車両の性能が上がって高速でカーブを走れるようになった。性能が悪ければ、外側に転倒する前に、脱線して止まっていた。そんなことを思います。簡単な計算で、危険かどうか判断がつくにも拘わらず、思いこみが優先してしまったのだろうと思います。

事故地点のカーブの70km/hの制限速度の根拠は、300m以上350m未満のカーブが65km/hの制限で、これに5km/hを加算した70km/hが制限速度であったのです。従い、カーブが始まる事故地点200m手前までは制限速度120km/hで、そこで70km/hになる。(報告書97~101ページ)

だから、事故列車の運転士が速度違反をしたのはたった200mの距離だけだったのか?

JR西日本が事故当日に発表した転覆限界速度は133km/hと105km/hより28km/hも大きく、一方、調査委員会が行ったアンケート調査による運転士からの回答では60%以上が110km/hと答え、50%以上は120km/hと答えたことから、実際の転覆限界速度105km/hは正確に認識されていなかった(報告書194ページ)。会社における技術事項の全権限を保有しているに近い主任技術者すら、解っていなかったのだから、全社的に無茶苦茶デゴザリマシタ。

(2) 実現不可能な時刻表(ダイヤ)

列車の加速度、ブレーキ性能、制限速度、停車時間等を考慮して時刻表を作成し、そこには余裕代も当然盛り込むはずです。ところが、余裕代どころか、制限速度オーバーを常時強いる時刻表で列車が運行されていた。嘘!と言いたいのですが、本当!です。

コンピュータで計算する際に加速性能を事故車両よりもよい電車のデータを使用し、ブレーキ性能も高い性能をインプットして計算した。(報告書145ページ)さらに、線路の勾配も誤ったデータインプットがなされていた。次の表が時刻表で、右から2番目の宝塚9時3分45秒発の5418Mが問題の列車です。途中駅の停車時間は、中山寺15秒、川西池田20秒、伊丹15秒の合計50秒で、走行時間15分35秒の合計16分25秒で、尼崎着9時20分10秒の計画です。

Photo_8

もう一つ、この時刻表の左端の3016Mという列車ですが、問題の列車の1分30秒前に発車することになっています。列車が前にいる場合は、信号機が赤になるので、安全距離が確保され緑になるのを待つ必要がある。宝塚駅を出て551mの地点に踏切があり、この踏切遮断機作動時間も関係し、調査委員会が実測したところ、3016Mが出て、出発信号が緑になるのに平均93秒かかった。列車が出発するのは、運転士の判断ではなく、車掌が安全確認をして、運転士に指示をすることとなっています。問題の5418Mは常時遅延運転であったと思います。

事故前65日間のデータ分析では運行時間の遅れが平均23秒で、出発時間の遅れが平均101秒であった(調査報告書付図52と53)。合計すると平均124秒の遅れです。

時刻表の意味ないじゃんと思いますが、トンデモナイです。上の時刻表の終着駅を見てください。問題の列車は東西線に向かうものの、他の列車は東海道線。実は、尼崎駅は、東海道線、福知山線、東西線が交わって、しかも互いに相互乗り入れをしていたトンデモナイ駅です。事故現場のカーブを304mに作り替えたのは、東西線開通を機会に同じホームで同じ方向にする赤坂見附駅状態にしようとしたのです。ところが、そればかりか、銀座線と丸ノ内線が、混じり合って、銀座線の池袋行きや丸ノ内線の上野行きを作ったばかりか、さらにもう一本線路が多いからゴチャゴチャです。

結果、列車の遅れは、それぞれのダイヤ混乱を引き起こすことになるから、運転士にプレッシャーがかかっただけだと思います。普通にしていても、守れないダイヤ。従い、速度違反は日常のことであったと私は想像します。(もしかしたら今も)

では、運転士の運転マニュアルはと言うと、あいまいでした。運転士は京橋電車区の所属であったが、基準運転図表がマニュアルに相当し、極めて単純(付図42)であるばかりではなく、私には最高速度100km/hと読め、これでは使い物にならないと思います。大阪支社の輸送課長は、「電車区では発生した事故への対応等が優先され、基準運転図表等の作成作業をする余力がなかった」と事故調査委員会に答えています。(60ページ)

(3) ATS(Auto Train Stop)

事故が発生した当時、マスコミはJR西日本のATS設置の遅れが、事故の原因であるように報道し、今もJR西日本は、それを言い逃れの材料にしているように思えるのです。実は、事故現場のカーブに設置されていなかったが、事故を起こした列車にはATSが設置されていたのです。そして、東西線にも設置されていた。設定速度が間違っていたから、ブレーキが低い速度で作動していたのです。多分、これも列車遅延の一因であったと私は思うのですが。なお、設定速度の間違いについては、JR西日本は誰一人として問題視していなかったのです。もしかしたら、認識すらしていなかったり、自動ブレーキを掛けるATSを知らない人達がほとんどだった可能性もあるからあいた口がふさがらない状態です。

5) 真の事故原因

今まで読み進んでいただいた方は、運転士個人の責任することは、JR西日本が余りにも無責任すぎると思われるのではないでしょうか?ATSについても、それ以前の問題がありすぎると思います。

本来であれば、運転士から問題点の指摘が上がってくるべきであった。そのような会社の社風にしなければならない。何故なら、運転士・車掌と整備員が現場の働き手であり、働き手の意見や感覚を重視しない会社はつぶれます。国鉄時代はつぶれなかった。しかし、分割民営化されても実は公共交通機関だからつぶれません。国鉄生え抜きの人が社長になり、民営化したといってお飾りの社外役員を迎えている。

民営化してJR西日本は、国鉄よりも良くはなっていない。国労、動労をつぶせた。結果、運転士、車掌、整備士は会社の奴隷にすることができた。事故報告書を読むと、そんなストーリーもあり得るのではないかと思うような気分です。事故者に対する再教育(日勤教育)とは何であったのでしょうか?私なら、マニュアル作りをさせます。マニュアルは働く人が自分の仕事のために作成して、最もよいマニュアルが作れます。そんなマニュアルがあれば、東西線は片町線とのみ乗り入れ。福知山線は大阪駅でストップ。無理して事故を起こしても、迷惑を掛けるだけ。そんな人としての対応が取れたかも知れないと思います。民営化して、大阪府や関西財界の雑音を聞かざるを得なかくなったのかな。

なお、民営化には無駄な新規路線投資を抑え、人事政策、企業経営その他合理的に推進する方法であり、賛成です。反対なのは、腐った民営化をした経営者です。一刻も早く退陣し、有能な人達に譲るべきです。なお、JR西日本会長は住電顧問倉内氏(72)、山崎社長は国鉄生え抜き65歳です。事故について言えば、ご遺族の方に最大の金銭的償いをだすことと思います。それしかできないので。そして、その相手には、この運転士も含めるべきであろうと思います。JR西日本が発表した転覆限界速度133km/hより遅い116km/hでの進入でした。

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2008年8月20日 (水)

アーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引

やはりアーバンコーポレーションとBNPパリバ(ホームページはここ)との取引については、日経も8月20日の社説 不信を招いた破綻前の起債と題して取り上げておられたし、書いておかねばと思いました。

1) 東証1部上場会社のするべきことではない

上場会社でなければよいのかとの疑問も多少は残りますが、誰もが株式取引をする公開会社で上場会社である会社は、その財務情報に関する情報開示は厳しくあるべきです。アーバンコーポレーションで起こったことは、一般投資家に不信を与え、株式投資に二の足を踏ませることです。日本の株式市場の破滅にも繋がることと思います。(日経社説よりも、厳しい意見としました。)

2) アーバンコーポレーション(アーバン)が行ったこと

時系列でアーバンの出来事をアーバンの発表から見ていきます。

(a) 6月26日付2010年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ(PDFファイル/233KB)
(b) 8月13日付(訂正)「2010 年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ」の一部訂正及び営業外損失の発生について(PDFファイル/27KB)
(c) 8月13日付平成21年3月期第1四半期決算短信(PDFファイル/248KB)

(a)の6月26日付の発表を読むと300億円の資金をBNPパリバから新株予約権付き社債により年利2.5%の満期日2010年(償還期間2年)で調達したと読めます。但し、発表文に「平成20 年6 月4 日株式会社日本格付研究所による当社長期優先債務ならびにコマーシャルペーパーの格付けについて各々1 ノッチの引下げが行われたほか、投資家ならびに金融機関の取引姿勢が急激に変化していることを受け・・」とあり、300億円の調達が信じられない気分になりますが。

(b)の8月13日の発表(民事再生手続き開始の申し立てをした当日)にやっと、裏をばらしました。「BNP パリバとの間で、平成20 年6 月26 日及び7 月8 日にそれぞれスワップ契約(以下あわせて「本件スワップ契約」といいます。)を締結しております。本件スワップ契約によれば、当社は、同年7 月11日に、BNP パリバに300 億円を支払う・・」と。300億円を借りた相手に、300億円を払ったら、キャッシュフローは帳消しです。

3) スワップ契約

但し、支払ったのはスワップ契約のアーバンの義務を履行したのであり、同時にアーバンは権利を取得しました。それが何であったのか、現在どうなっているのかを(b)と(c)の8月13日付の発表で想像してみます。

VWAPなんて、ややこしい言葉で表現していますが、「売買高加重平均株価(Volume Weighted Average Price)」のことです。アーバンが取得した権利は、自社株の売買高加重平均株価の90%の価格相当の金額をBNPパリバから受領する権利です。300億円は、「行って帰る」取引ですから、キャッシュフローは無関係ですが(実際には手数料分動いた)、BNPパリバには80,744,202株の新株予約権が残っており、これを使って、アーバン株を取得して市場で売る。売って得た金額の約90%をアーバンに支払う。このような感じです。

BNPパリバは、10%儲かる。アーバンは、もし株価が転換価格の344円より高ければ、(厳密には10%のBNPパリバの取り分をカバーする必要があるから378円)儲かるし、低ければ損をする。但し、何がしかの資金にはありつける。(株価がスワップ契約で取り決めた下限を下回れば、そのままで動かず。)

(c)の決算短信によれば、150億円について8月13日までに株式転換されており、150億円が社債として残っています。(b)の書類には58億円の損失とありますので、そうすると、約90億円をアーバンは受領して終わったのかと思います。

そうであれば150億円の社債債権をBNPパリバは持っていることとなりますが、スワップ契約でのアーバンの権利未行使分が同じ150億円残っているはずですから、BNPパリバには、損はないはずです。少なくともリスクが大きければ、BNPパリバはディールをしなかったでしょう。

4) どう考えるべきか

アーバンがBNPパリバに欺されたと見られる人があるかも知れませんが、私はそうは思いません。インベストメントバンクやインベストメントバンク部門を持つ銀行は、日本人が考える銀行をはるかに超えたことをやります。それについて行かないと、現在のビジネス社会では負け犬になります。インベストメントバンクを利用して勝ち組にならないといけないのです。その意味では、アーバンが自社株の値上がりに賭けたというなら、その判断の是非は別にして一つの選択であったでしょう。(私は、正しくない選択だと思いますが。)

悪いのは、こんな重要なことを、民事再生手続き開始の申し立てをした当日に「実は・・・」と言ったことで、こんな経営者は、最悪だし、市場を裏切る行為だと思います。そもそも、社債とデリバティブはワンセットディールです。それを社債部分だけの発表で実態を誤魔化したといのが私の見方です。

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2008年7月19日 (土)

長銀経営者無罪判決に思う

最高裁は1998年(平成10年)に経営破綻した旧日本長期信用銀行の粉飾決算事件で、証券取引法(現金融商品取引法)違反と商法(現会社法)違反で起訴された経営者3人に対して、18日に無罪の判決を出しました。判決文は以下にあります。

平成20年7月18日 最高裁判所第二小法廷 判決

この判決に対する新聞の社説は、日経朝日読売等ありますが、私は日経の「そこを公に検証する、大恐慌後に米議会に置かれた調査機関「ペコラ委員会」のような場が要る。」との意見に賛成します。少し書いてみます。

1) 銀行経営とは何か

一般企業の経営再建は、事業見直し、コスト削減や販売強化・提携強化等ですが、銀行の場合は、そうではありません。銀行にとっては「再建」というような言葉が付されたならば、直ちに破綻に等しいのです。長銀判決を考える上において、それを念頭に入れる必要があると思います。

何故再建ができないかと言ったら、不安な銀行に誰も預金しないからです。預金の引き上げが生じたら、破綻です。通常の企業の仕入れに相当するのですから、仕入れが不可能となれば、企業は直ちに破綻です。

銀行とは信用力が第一に必要なものであり、信用力は決算書(財務諸表)により測定される。特に貸借対照表が重要となりますが、銀行支援のための資本注入とは何であるかは、資金が必要だから増資するのではなく、資本比率を高め、信用力を上げるためにしていると言えます。

通常の企業とは、すこし異なった面を持っています。

2) 当時の銀行(金融界)の状況

1992年頃でしたでしょうか、バブル崩壊がありました。その頃、流行した言葉に「価格破壊」というのがありました。その中で、一番価格が下がったのが、地価だったでしょうね。金融界の鬼子として住専というノンバンクがありました。本来は住宅資金の融資業務のために銀行が設立したが、銀行自らも住宅融資に乗り出し、住宅金融の競争が始まると、資金コストの高い住専は不利になる。信用力ある大手企業は社債、増資、コマーシャルペーパー等を発行して直接金融の時代にも突入していったことで、銀行の優良融資先が減少して行っていた。

住専は、住宅融資ではなく企業向け融資に走り、しかもバブル期待の土地取得融資なんてバカな金融にも横並び競争を始めていました。さらに、もう一つの問題として農林系金融機関が住専に多額の資金を融資していることでした。農地の売却代金の預金を農協が集めてしまう。(農協にとっては、自らの成績を上げることにるし、農家にとっても銀行より農協の方がおなじみさんです。)農協は、その資金を農林中央金庫、信用農業組合連合会(信連)、全国共済農業協同組合連合会等に預金し、更にその先の運用としては、国債より利息が高く大手銀行が出資をしている住専に貸付ける。ごく普通の金の流れです。更に言えば、住専が企業による農地取得資金を貸し付けるのですから、見事にバブルの構造ができています。

住専を処理できなかった。バブルに対処できなかった。バブルに浮かれた結果、そのツケが銀行の破綻、国庫による損失の負担に繋がっていった面があると私は思っています。

3) 会計基準

会計の方法により利益は変動する。会計を知っている人にとっては、当たり前のことですが、余り知らない人にとっては不思議に思う。一番大きな理由は、期間計算であることによると思います。貸した金で利息を取っても、元本が返済されなければ損失となる。利息分が利益となるが、発生主義が会計基準であるから利息について入金の有無に拘わらず、期間をベースに収益を計上する。元本は、利益の源泉であるが、返済されることを原則とせざるを得ない。貸倒見積高に基づいて計算された貸倒引当金を控除することとなる。

法人税の基となる税務上の課税所得計算は、公平・単純と言った原則が適用されなければならない。税額計算で鉛筆がなめられるなら、不公平が蔓延し、無茶苦茶となる。課税所得計算においても、貸倒引当金が認められるが、業種による差があれば変になる。(特例はあり、例えば現在でも、資本金1億円以下の企業には租税特別措置法57条の10による貸倒引当金計算の適用もある。)

税務で引当金が認められないのに、損失を出すのはおかしいという本末転倒の議論をする人が当時はいました。そうなんです、会計基準の世界でも、税効果会計に係わる会計基準が企業会計審議会より発表されたのが平成10年10月30日で、その適用は平成11年4月1日以降開始する会計年度からでした。

長銀事件で問題となっている平成10年3月期の翌々年から税効果会計が適用となりました。この税効果会計に係わる会計基準で「企業会計上の収益又は費用と課税所得計算上の益金又は損金の認識時点の相違等により、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金の額を適切に期間配分」なんてことが出てきて企業利益と課税所得の金額に差があることが陽の目を見たように思います。

最高裁の判決文では触れられていませんが、企業会計原則の継続性の原則である「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」ということを考え、そして判決文11ページの「9年事務連絡は,・・・その内容も具体的かつ定量的な基準を示したものとはいえない上,・・・金融機関一般には公表されていなかった。」や12ページの「4号実務指針については,具体的な計算の規定と計算例がないなど,これに基づいた償却・引当額の計算が容易ではなく,・・・結局,定性的な内容を示すにとどまり,・・・定量的な償却・引当の基準として機能し得るものとなっていなかった上・・・」と言った指摘を考えると刑事罰まで問うことが正しいのかとの疑問が出ます。

刑事罰は、刑事罰を構成することが明確であるときに問えると思います。心情により罰を下すものではないはずです。

4) 原因者

本当の原因者はバブルに浮かれた国民であったような気がします。直接的に、責任の一端が長銀経営者にあることについて否定しません。しかし、それ以上に大きな責任がルールを作る側にあったと思います。3)で税効果会計に係わる会計基準を書きましたが、金融商品に関する会計基準が出されたのが平成11年1月22日です。(平成12年4月1日以降開始する会計年度から適用)

一つのルールを作るには大変な労力が必要です。利害関係者が多い。だから時間も要するのですが、住専を破綻させたら、農協がつぶれる。農業が破綻するという大変な構造でした。政治家は、ともすれば問題の先送りに奔走します。しかし、それもツケを払いたくない選挙民が多いからでしょうか。

現在も増税を唱える政治家は少ないし、唱えたとして消費税のみで、真に公平な増税論は何かを余り聞かないように感じます。

従って、長銀問題については、刑事罰を追求するのではない公的な調査期間が調査を行って、問題点を幅広く調査、公表して欲しいと思います。

長銀って良い銀行でしたね。金融債の発行が許されたから支店数は少なく、企業の長期設備資金融資が主体であった長銀、興銀の方々は、一般銀行の方々とは少し違った特異性を持った方が多かったと感じています。現在は、元長銀マンの方々も様々なところで活躍されておられると思います。そういう方々を育てた長銀という銀行と優秀な方々が活躍できる場が存在する社会を良いものだと思います。

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2008年5月31日 (土)

IXI前社長他計4人の逮捕

1) IXIの架空循環取引

IXIの循環取引について、1年以上前ですが、過去のエントリーで書いたことがあります。

2007年1月24日のエントリー IXI(アイ・エックス・アイ)の民事再生手続の申し立て
2007年1月27日のエントリー IRI発表のIXIによる循環取引(続編)

IXIの前社長、元常務、元取締役と元執行役員の4人の逮捕に関する朝日 5月29日 IXI前社長らを粉飾決算容疑で逮捕 大阪地検特捜部には、「02年3月期以降の売上総額約1205億円のうち、98%にあたる約1182億円が循環取引によるものと疑われるという。」と書いてあります。98%が循環取引なら、正常な売上高はたったの2%となりますが、本当?と驚きました。

2007年1月27日のエントリーで循環取引の例としてメディアリンクスの場合は、85%が循環取引と書いており、よもやIXIがそれ以上とは思っていませんでした。

2007年9月20日に、52.19%の株式を保有する親会社であるインターネット総合研究所(IRI)が架空循環取引の事実を伏せてIXI株式を高値で売りつけられたとして、TOBで購入した相手先であるCACに対する損害賠償を東京地裁に提起しています。その際の、このIRIのプレスリリースには、「こうした不正な循環取引による売上高の架空計上は、当社がCAC等からIXIの株式を取得した平成17年8月の時点までには、IXIの全売上高の90%以上に達しており、その時点において既に、同社の株式は、正常な取引通念に照らして実質的に無価値の状態でありました。」と書かれてあります。

ということは、90%以上は架空循環取引であったと考えて間違いないのであり、IXIは新記録だと思いました。

2) 関係者への波紋

4人の逮捕について冒頭の朝日の記事には、「繰り返して架空の売り上げを計上し、03年3月期の有価証券報告書に実際より売上高を約17億円以上、純利益を12億円余り水増しするなど虚偽の実績を記載。同年6月、近畿財務局に提出した疑い。」となっています。

東洋経済 5月28日 大詰めのIXI事件 浮かぶ業界の「無法」には、循環取引の関係者として多くの会社の名前が出てきます。影響はあるのでしょうか?それと、5月14日 ニイウスコーの推理を書きましたが、ニイウスコーの関係者も1年と少したてば逮捕される可能性が出てくるのでしょうか?

財務諸表の虚偽記載は、金融商品取引法の刑事罰だけではなく、IRIが提起したように、民事賠償がつきまといます。IRIが損害賠償を求めた相手は、CACのみならず、新日本監査法人が含まれています。

ニイウスコーの財務諸表の監査はトーマツでした。そしてこのブログで最近取り上げた財務諸表の問題は、武富士の300億円の社債について債務が消滅したとしてオフバランスとしたことを書いた5月27日のエントリー 武富士の300億円に思うでした。武富士の監査は新日本監査法人でした。

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2008年5月28日 (水)

米GMストライキで2800億円の損失

2800億円の損失は大きいです。ストライキがあったのは、GMではなく一次下請けでプロペラシャフト等を製造している部品メーカAmerican Axle & Manufacturing Holdings(”AML")で、ストライキをしたのはUAW(United Automobile, Aerospace and Agricultural Implement Workers of America)で、2月26日から5月23日まで3ヶ月近く続いたのでした。

いくつかのニュースを掲げます。

日経 5月24日 米GM、部品会社ストが18億ドルの減益要因に・4―6月期
日経 5月17日 GM、操業正常化へ・労使交渉、取引先が暫定合意
共同 5月24日 GM損失2700億円に 部品メーカーストは収拾
IB Times 5月24日 米GM、ストの損失が2,900億円に
Reuter May 23, GM says UAW strikes were $2.8 billion earnings hit

GMもSECに提出した5月22日付のForm 8Kで述べていました。ここにあります。

1) 今の日本でストライキは可能か?

本当に色々なことを思ってしまいます。先ずは、日本はストライキのない国だなと。日本が今活気がないのは、労働組合がストライキを打てる力を喪失てしまったからではないかと。米国のUAWと日本の労働組合を比べるのは違いがありすぎるし、文化や歴史が異なるから比べることは適切ではないと思いますが。

今の日本の格差社会と非正規雇用労働者を生み出した一端は、組合にもあると思うのです。日本の労働組合は、製造業の正規労働者の企業内組合を抜け出せていない。非正規雇用者が低賃金で働かされて、その利益が正規労働者への分配に繋がると同時に、自らの首も絞める。しかし、中国等新興国との競争にもさらされているから、会社と運命共同体の組合も対策が必要であり、そのためには労使協調路線を選んだ。

更に言えば、偉くなっていった人たちは、出世すごろくであがっていったのだから、実は会社の内情も労働者の気持ちも解っている人であり、苦しい中で頑張っているんだから、ストライキまで構えても所詮は、競争相手の会社を利するだけになってしまう。

そんな日本の内情も分かるのですが、余りにもおとなしくなりすぎてしまった日本の労働組合なのかな?三井三池労働争議があったのが1960年ですから、50年近くが経過しました。感傷に浸る必要はないのですが、労働者の夢みたいなことがほとんど消え去ったのかなと思います。むしろ、アメリカ合衆国の方が未だ健在でいるのかなと思う次第です。

5月24日のエントリー日米の経済比較で、サブプライムと騒ぐけれど米国の方が日本より良いではないかとの雰囲気を書きました、それどころかもっと基本的なところで、日本が弱々しくなっており、それに気がつかないでいる恐ろしさがないかと懸念します。

2) ストライキの理由と妥結内容

会社と組合は4年間の契約を締結しており、今年は丁度更改時期にあったのです。このUAW Press Release April 01, 2008 UAW committed to a fair, equitable settlement at American Axle は、AAMが賃下げや人減らしを行うことが必要であることを示す財務データを3月27日にやっと提出し始めたと書いてあります。AAMのFebruary 26 Press Release AAM/UAW Negotiations Update では、業界の平均が時間あたり(20ドルー30ドル)であるのに対し、AAMの人件費は全て込み(医療保険料や厚生年金込み)の70ドルは高すぎると言っています。

妥結内容は、このReuter May 18, 2008 UAW urges adoption of cost-cutting Axle dealこのNY Times May 23, 2008 Auto Parts Workers Approve a Contract にありましたが、最低は時給10ドル(千円)から最高26ドル(2千6百円)で、退職の場合は退職金14万ドル(1千4百万円)です。医療保険や厚生年金は、全額会社負担のはずですから、退職すると、おそらく自己負担となり大変なのだろうと想像します。

3) American Axleの業績

次の表がAMLの最近4年間の業績です。単位は百万ドルで、売上高は約3500億円という感じです。

Axlincome2007

米国だなと思うのは、2007年の役員報酬(株式による受領も全て合わせて)はSECへの提出書類によれば、Co-Founder, Chairman of the Board & Chief Executive OfficerのRichard E. Dauchは$10,175,194、Group Vice President — Finance & Chief Financial OfficerのMichael K. Simonteは$511,241、Vice Chairman & Chief Technology OfficerのYogendra N. Rahangdaleは$1,063,334、Executive Vice President & Chief Operating OfficerのDavid C. Dauchは$752,527でVice President, Chief Administrative Officer & SecretaryのPatrick S. Lancasterが$655,631ですから、5人で13百万ドル(13億円)を超えるわけで、すごい金額です。(金額も大きいですが、日本と異なるのは個人毎の金額が公表されています。)

トヨタ、ホンダに攻め込まれて大変なのですが、カルチャーの違いを感じます。

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2008年5月24日 (土)

日米の経済比較

5月16日に内閣府経済社会総合研究所から2008年第1四半期のGDP速報(1次速報値)が発表され、約半月前の4月30日に米商務省(US Department of Commerce)から米国GDP第1四半期の速報値(GROSS DOMESTIC PRODUCT: FIRST QUARTER 2008 (ADVANCE))が発表されています。

1) 日本の景気は良いのか?

5月16日の新聞報道ですが、以下の様なのがありました。(毎日は社説です。)

読売 日本経済成長加速→1~3月期GDP、年率換算で3・3%
朝日 1~3月期GDP、年率3.3%増 3四半期連続プラス
毎日 社説:GDP成長率 景気、物価両にらみの時だ
日経 2008年度の実質成長率1.3%に・NEEDS予測

おそらくは、読売の記事にある「米国経済の減速などの影響で、今後も順調な成長が続くかどうかは不透明」との見方をされておられる人が多いのではと思います。

4月30日の米国GDPについての報道を掲げておきます。

日経 5月1日 1―3月の米実質GDP、0.6%成長――住宅や消費の不振続く

2) 日米比較

2003年からの5年間についての日米GDPの伸び率、即ち経済成長率のグラフを書いてみました。

Gdp200805

2008年第1四半期の前期比GDP成長率(年率換算)は、日本が3.3%、米国が0.6%なので、これだけだと日本が断然良いと感じるのですが、グラフに書いてみると異なった姿が見えてきます。直前の四半期と比べた場合は、季節調整を行っても3月と期間が短いので、調整しきれないのではと私は思います。

上のグラフで波線で現したカーブが、前年同期比でこちらの方が、安定したカーブになっています。前年同期比を2008年第1四半期で日米比較をすると、日本が1.1%で、米国が2.5%です。日本は、サブプライムで騒いでいる米国より悪いのです。そこで、次が2003年第1四半期を100として書いた実質GDPの推移グラフです。

Gdp2008051_2 

やはり、日本経済の方が、問題が多いのではと感じてしまいます。

3) 民間住宅投資

米国ではサブプライムローン問題が大変であると報道されています。確かに、金融関係では大幅な人減らしとボーナスカットが実施されています。そして、住宅関連の建設を初め、住宅設備関係も不況です。しかし、これもグラフを書いてみると少し異なった絵が浮かんできます。

Gdpresidential200805

サブプライムローン問題が表面化したのは、2007年7月28日のエントリー株価・為替・金利の動向で書いたように、2007年7月中旬です。上のグラフからすれば、2007年7月中旬は米国の住宅投資が2003年初めの水準に落っこちてきた頃です。しかし、米国では2006年に入った頃から、住宅投資は減少を始めていたのです。言ってみれば、その頃から新規住宅金融が減少をしていたのであり、サブプライムローン問題の端緒が始まっていた。

日本は、住宅を見ても米国より事態が悪いように思えます。2007年に入っての落ち込みは姉歯ショックでしょうか?そんな単純なものではなく、個人の収入が伸びないことから住宅投資も長年伸びてこなかった可能性があると思います。

4) 家計最終消費支出

個人の支出である家計最終消費支出がどうであったのか伸び率を見たのが次のグラフです。更に、2003年第1四半期の支出を100として書いた推移グラフをその下に掲げます。

Gdp200805houseconsr

Gdp200805housecurv

上のグラフは平均を示しているのであり、貧困層と富裕層で異なるかも知れません。むしろグラフを書いてみると、昨年の初め頃まで言われていたいざなぎ超える好景気と言うのが嘘であったような気がしました。欺されていたのでしょうか?

サブプライムローン問題なんて、実はたいしたことはないのではと思うのです。むしろ、食料価格やエネルギー価格、その他資源価格の高騰の方が、本当は経済に与える影響が大きいのだと思います。そして、影響力を考えた場合、石油メジャーに代表されるように米国は石油・ガス価格の高騰はマイナスのみに働くのではないのです。食料についても同じで、全て日本経済の方が不利であると思います。

スイスの有力ビジネススクールIMDが「2008年世界競争力年鑑」を発表しましたが、日本は22位です。1位米国、2位シンガポール、3位香港と続き、アジアの国で日本より順位が高いのは台湾13位、中国17位、マレーシア19位です。日経の5月15日の記事日本の競争力22位に上昇・08年、スイスのビジネス校調べがあります。又、順位表は、ここにあります。

日本経済は、多くの問題を抱えている。何も解決していないとの気がしています。例えば、本日は、このあたりにして、時間がかかるかも知れませんが、これから先に書き続けたいと思います。

最後に、日米のGDP速報が記載されているWebを書いておきます。

日本:http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#qe
米国:http://www.bea.gov/national/index.htm#gdp

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2008年4月 6日 (日)

不思議な対応Jパワー

英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)による電源開発(J-Power)の株式買い増しについて、政府は11日に外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく審議会を開き、経済産業省はTCIによる株式買い増しの変更・中止を勧告する方向となったとのニュースがありました。

日経 4月5日 英ファンドのJパワー出資、株買い増し拒否へ――経産省

3月27日のエントリー「政府系投資ファンド(SWF)に対する規制」で、このことについて触れた経緯があるので、少し書いてみます。

1) 外為法による審議会とは

外為法21条第1項には「外国投資家は、対内直接投資等のうち第三項の規定による審査が必要となる対内直接投資等に該当するおそれがあるものとして政令で定めるものを行おうとするときは、・・・・当該対内直接投資等について、事業目的、金額、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び事業所管大臣に届け出なければならない。」と書いてあり、

第21条第5項に「財務大臣及び事業所管大臣は、・・・審査をした結果、・・・国の安全等に係る対内直接投資等に該当すると認めるときは、関税・外国為替等審議会の意見を聴いて、当該対内直接投資等の届出をしたものに対し、・・・当該対内直接投資等に係る内容の変更又は中止を勧告することができる。」となっており、そして

第21条第10項に「・・・勧告を受けたものが、・・・・当該勧告を応諾しない旨の通知をした場合には、財務大臣及び事業所管大臣は、当該勧告を受けたものに対し、当該対内直接投資等に係る内容の変更又は中止を命ずることができる。」となっています。

届出制なので、ずいぶん持って回った条文構成になっています。本来は、軍事物資の生産に関するような分野の規制のはずと私は思っています。それを、TCIのJ-Power株式取得に使うのは、無理があり、「違法でなければ何でもする。」に近いのではと思います。政府とは、一番法を遵守すべき機関であると私は思うのです。

「政府系投資ファンド(SWF)に対する規制」で受け入れ国の基本方針というのを書きましたが、読むと見事に違反していると感じます。

2) 身勝手は自分自身を滅亡させる

「J-PowerのIPPプロジェクト一覧」というのがこのJ-PowerのWebにあります。J-Powerが国外の発電会社の49%の出資を持つことは許されて、逆に国外の投資家が10%以上を持ってはならないというのは、すごく身勝手と感じます。2008年3月時点で、出資した国外の発電所で運転中が16件、7,373MWあり、この中で米国とフィリピンの案件はJ-Powerが50%出資しています。

私は、J-Powerが国外に出て行くことに反対はありません。50%超を出資する電力案件があってもよいと思います。TCIの株式買い増しを阻止することは、J-Powerの事業を阻害することになるのではと思います。J-PowerがTCIの増配要求を拒否しました。J-Power経営者が、そう思うのであれば、その対応で構わないのであり、同様にTCIが株式の買い増しをしたいならそれで良いはず。政府が何故口を挟むのかと言いたいのです。

悪影響は、J-Powerにのみならず、国外の電気事業に投資している日本の企業の全てに広がる可能性もあるし、日本は閉鎖的とのことで日本株は、どんどん下がる。日本企業は資金を確保できず、「日落ちる国」が「ますます日落ちる国」になりそうで。かつて、ジャパン・プレミアムといって日本の銀行が欧米銀行より高い金利でないと資金調達ができなかったことを思い出します。

3) どうすべきか?

J-Powerの問題ではなく、株主の問題であり、電力に関係する国民を含めた利害関係者の問題として考えるべきでしょうね。その中で、J-Powerという会社についての問題は、次のようなことが言えると思います。

A) 地域分割の民間上場企業9電力体制における政府資金を活用し、9電力体制の利害調整妥協の産物としての会社であった。(当初は、沖縄が米国統治下であり、J-Power体制には含まれていなかったので、9電力としておきます。)

B) 大型の水力発電を保有しており、(ダムで貯水する水の権利・資産を含め)水という国民の共通資産は株主の利益のみに存在するのではない。

C) この日経 3月17日 Jパワー、大間原発5月着工にもあるように、原発を保有する会社(放射能漏れを起こす可能性がある会社)の株式の外国人株主保有に対しての日本人の抵抗があるかも知れない。(議論がされておらず、コンセンサスが取れているのかの点を含め。柏崎刈羽では、放射能と関係のない変圧器の火災でもマスコミは大騒ぎした。)

D) J-Powerが日本で保有する火力発電所は全て、石炭火力である。即ち、考え方によっては、CO2を多量に排出する石炭火力は、今後日本ではスクラップアンドビルドでないと建設できない恐れあり。不利とみるか、優位とみるか判断は分かれるが、CO2既得権を持つ貴重な資産とも考えられる。

そもそも66%の株式を保有するJ-Powerを政府が株式を手放したことが、出発点です。これがその際のJ-Powerのプレスリリースです。私は、J-Powerの株式を再び政府がTOBをして、取り戻すこと。発行済み株式数が166,569,600株ですから、現在株価3,800円を4,000円で買ったとして6600億円余り。水利権・原発権・石炭排出権込みの価格ですから、安いかも知れません。その上で、火力発電所(橘湾の海底送電線も込みでよい)の部分を海外資産とともに別会社として、それを売却すればよい。

政府として、水力発電所と原子力発電所は、重要な資産であるとして、政府が持ち続けることとなるが、そんな必要もないので、水力発電所はその電力を購入する9電力(沖縄電力には海水揚水発電所があるが、この評価は困難なので、省きます。)に発電所毎(只見系、下郷、佐久間、船明、新豊根、九頭竜系、北山系については複雑ですが)に一般電気事業者に売却する。大間は、日本原子力発電に売却する。私は、このような案が、一番すっきりすると思うのですが。

1月30日のエントリー 近江八幡市PFI病院の倒産の恐れで書きましたが、「民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが・・・」との考えは、間違っています。「民間委ねるべきは、民間に委ね、政府事業として実施すべきは、政府事業として実施し・・・」が正解です。J-Power問題は、民間にゆだねておきながなら、それを正しいとして襟を正さずして、理不尽な規制を行うことするようで、「これは許されないこと。」と思います。誰にも、正義が通る正しい処置をして欲しいと思います。

一ついやなのは、経産省は私のように思っている。しかし、国交省が空港問題もあるから、許さないと頑張っている。それで、経産省に頑張らせている。

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2008年3月14日 (金)

新東京銀行の今後

新東京銀行のことが、連日話題となっており、400億円の増資を審議する東京都議会予算特別委員会は、本日の3日目の総括質疑が開会できなかったようであります。

新東京銀行については、倒産の秒読みに入っている感もあるものですから、書いてみます。(追記、修正あり。)

1) 新東京銀行倒産の兆候

銀行の倒産という最悪の事態が新東京銀行にやってくると感じるのは、新東京銀行が3月11日に発表した新銀行東京調査委員会調査報告書(概要)を読んだからです。調査報告書(概要)ここにあります。

銀行は預金を集め、貸付を行い、その利子率の差により収益を得て、運用経費を支払い、そのうえで資本に関わる費用(株主配当金)を支払うものです。預金を踏み倒すことは、許されません。従い、貸付は回収が前提で実施されるものです。ところが、調査報告書には恐ろしいことが書かれています。

・営業担当者(契約社員)に融資実行実績に応じた成果手当を支給する一方で(最大年間200万円)、デフォルト発生を不問とした。
・平成18年1月より、融資実行後6ヶ月以内にデフォルトが発生した場合には、成果手当から控除したが、6ヶ月を超えた場合には満額支給とした。
・このような業務執行の結果、営業担当者の間にはデフォルトの発生を軽視したモラルハザードが広まった。

無茶苦茶です。良心の呵責があっても、上司から返済をうけることなんか気にせずに貸し込めと言われたら、多くの人はやっちゃいます。まして200万円の人参をぶら下げられて。

「貸倒引当が予定よりいっていない」や「リスクをとるというのは貸倒引当金をしっかり使い込むということだ」との発言を代表取締役が繰り返した。

信用第一は、金融の常識というより、ビジネスの基本です。与信できる相手であるからこそ、ビジネスをします。個人が銀行に預金をするのも、その銀行が信用できるからです。常識破りの発言を代表取締役が繰り返したなんて、私も、これが新東京銀行による発表でなかったら信じられないです。次の文章もすごいです。ガバナンス・ゼロの会社です。

・委員会設置会社においては、代表執行役と執行役の職務分掌については取締役会決議に基づき明確に定めるものとなっているが、当社においては創業期における統一的かつ効率的な業務を確保する必要があることから、代表執行役は業務全般を統轄し、また、他の執行役はその指揮監督に服することを定めた「執行役職務分掌規程」を設けていた。
・代表執行役は、その強い権限を背景に経営の意思決定や他の執行役の人事等に影響力を不適切に行使し、独善的な業務運営を展開した。
・代表執行役と意見の対立した執行役の辞任もあり、開業後僅か2年のうちに、開業時の執行役6人のうち4人までが退任した。
・その後、後任の執行役は全て代表執行役の推薦により招聘されたことから、代表執行役の独善的な体制が確立し、事実上代表執行役に反対する意見は抑え込まれた。

新銀行東京は、東京都がBNPパリバ信託銀行の全株式を2004年4月に取得し、2005年4月から業務を開始しました。最初の代表取締役はトヨタ出身の仁司泰正氏で、2007年6月からはりそな銀行(埼玉銀行→あさひ銀行の)出身の森田 徹氏で、2007年12月からは前東京都港湾局総務部長の津島隆一氏です。委員会設置会社で辣腕をふるいとは、酷いものです。他の取締役は、飾りであったのでしょうか、今後明らかになっていくと思いますが。

2) 財務諸表から見る倒産

次のグラフは2007年9月末の新東京銀行の貸借対照表です。

Photo

資本金が非常に小さいことが分かります。実は、このグラフの資本金は資本金ではなく、資本金と資本剰余金の合計額から赤字となっている利益剰余金と評価換算差額を差し引いた残額ですから純資産額です。即ち、新東京銀行は、もう体をなしていないに近いと思います。(なお、貸し倒れ引当金は、貸出金から控除せずに負債に含めて表示しました。)

参考までに、損益計算書は次の表をご覧下さい。

  平成18年3月期 平成19年3月期 平成19年9月期(6月)
資金運用収益 2,843 9,024 4,557
信託収益 8 66 76
手数料収入 507 1,783 1,161
その他収益 289 756 127
収益合計 3,648 11,631 5,923
信金調達費用 1,086 4,561 2,945
役務費用 78 126 75
その他費用 444 423 836
貸倒引当金繰入額 7,968 27,800 4,563
当期純損失 20,961 54,651 8,710

平成17年4月に開業ですから、上記が営業成績の全てです。資金運用収益より貸倒引当金繰入額の方が大きいなんて、そんな銀行見たことない。平成19年9月期は、その差が縮小しているが、適正額の貸し倒れ引当金が計上されているか不明です。最も、これが一番問題となる点であり、平成19年9月期の証書貸付残高209,655百万円に対して貸倒引当金は34,461百万円ですから16.4%です。1)に記載した無茶苦茶貸付を考えるとずっと大きいのではと思うのです。もし、20%の貸し倒れ率が妥当とすると7,548百万円追加引き当てが必要であり、30%とするなら28,513百万円追加必要となります。

400億円の増資というのは、どのような計算か不明ですが、不明な金を支出することほど、リスクがあり、怖い物はありません。

3) 新東京銀行の預金は引き上げるべきか

ここまでくると、取り付け騒ぎが心配になります。預金保険機構を調べると新銀行東京は信託銀行として記載されていました。預金者一人につき元本1,000万円までとその利息が預金保険機構により支払われます。

だから、1,000万円以上預金をしている人は、預金の引き出しを始める可能性が高いように思います。但し、一番の大口預金者は東京都だと思うのです。新銀行東京が破綻した場合の東京都の損害はこれまでに支出した資本の1000億円と預金ですから、すごい金額です。1000億円の根拠は資本金と資本剰余金の合計に東京都の出資比率84.22%を掛けました。(株主構成はここにあります。)て1000億円になるのですが、ビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行株式会社の東京都による買収金額にその後の東京都の出資額を合算したのが、これまでの東京都の新東京銀行にたいしてつぎ込んだお金です。(この部分、少し修正しました。)

但し、このこの平成16 年2 月23 日付け全国銀行協会の意見書からすると、当初が1000億円ですから、その後平成17年8月に180億円の増資をしていることから、東京都の出資は1000億円を上回っているのではと思います。(この部分、追記しました)

さあ、そこで問題です。東京都が損をすると言うことは、都税をつぎ込むことですから、東京都民が損をする。しかし、東京都民は株主ではないから、代表訴訟もできなければ、何もできない。自治体が銀行に対して再建のためならまだしも(それでも問題はありますが)、事業を目的として出資するという禁じ手を実施した場合の、最悪のシナリオが実現する可能性がある。

でも、それだけではない、預金保険機構の資金は、預金額に応じて銀行が積み立てたものです。最終的な資金提供者は預金者です。まじめに他の健全な銀行に預金した人のお金をさらっていくドロボウ銀行新東京銀行が実現する可能性があります。

これからは、東京都民がお金をつぎ込み、人様には迷惑を掛けてはならないと、汗水垂らして新東京銀行を再建することになるのでしょうか?東京都が預金を引き上げたら、即刻倒産でしょうし、ずるずる行けば底なし沼の地獄がある。

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2008年1月24日 (木)

世界の株価

昨日は、1月22日15時32分 読売新聞 日経平均が大幅続落、終値は752円安の1万2573円のように、安値を付けましたが、本日は、次のように一旦は回復しました。

1月23日 日経 日経平均3日ぶり上昇、終値256円高の1万2829円

本日のエントリー世界の株価とは、風呂敷を広げてしまいました。

1) 各国の株価比較

日経平均、米国代表としてダウ、欧州代表としてロンドンFTSE、中国代表の上海SSE Composite Index、そしてインド代表ムンバイのBSE SENSEXの5つの12ヶ月間のチャートを掲げます。(Yahooから取りました。)

Nikkei22jan2008

Dow22jan2008_2