2009年6月24日 (水)

新生銀行の執行役報酬1億4千万円から6350万円に下がったの?

次のブルームバーグの記事によれば、新生銀行の執行役の2008年度の報酬は平均6350万円であったとのこと。

ブルームバーグ 6月23日 新生銀:執行役の報酬5-15%削減-株主総会で社長表明

さて、2009年6月4日に開催された参議院財政金融委員会において共産党大門実紀史委員の質問に対して金融庁監督局三國谷勝範局長は、次のように答えておられました。議事録は、国会図書館のWebからも取れますが、大門実紀史委員の質問と答弁部分の議事録をここ (文字化けの場合は、エンコードを日本語にしてみて下さい。)に置いておきます。

○政府参考人(三國谷勝範君) 両行から公表されております経営健全化計画によりますと、両行の常勤役員に対する役員報酬の一名当たり平均額は、二十一年三月期の計画値を見ますと、あおぞら銀行においては四千八百万円、新生銀行においては一億四千百万円となっているところでございます

ブルームバーグの記事は、23日に開催された株主総会における会社の答弁と理解します。一方、参議院財政金融委員会における政府参考人の発言は正しいとしか考えられません。1億4千万円と6350万円は、倍半分以上の差があるが、両方とも正しいとすべきと思います。そうであれば、1億4千万円は、計画値であり、6350万円が実績値と推察されます。そうなると、新生銀行は1430億円の赤字だったから、執行役の報酬は1億4千万円から6350万円にダウンしたと推察されます。

しかし、そう単純ではない可能性もあります。即ち、この新生銀行のWebから2009年6月23日開催の第9期株主総会資料がダウンロードできますが、その中の提供書面(事業報告)24ページには、執行役の報酬等総額として2,776百万円となっており、執行役の人数は27名(内退任済み11名)となっています。単純平均でも1億円以上です。ストックオプションの対価を費用としているので、27.7億円が全て現金で払われているのではないが、いずれにせよ高額報酬と多くの人が感じる水準と思います。

新生銀行の業績や財務状態については、6月17日の銀行の比較を参照いただければと思います。

一方、大門委員の質疑の中にあおぞら銀行のある支店の契約社員で働いておられる人のことについての発言が出ていますが、大変ですね。こちらは、あおぞら銀行で、新生銀行ではないのですが、この収入の雲泥の差は、どう考えればよいのだろうと思ってしまいます。

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2009年6月 9日 (火)

劣後債

劣後債に関する興味ある記事がありました。

毎日 6月7日 劣後債:個人投資家に人気 超低金利の中で利回り高く

利回り高くは、その通りです。しかし、全てが甘いのか、落とし穴はないのかと言うことで、記事にあるなかでの、金額が一番大きな東京三菱UFJ銀行を例として書いてみます。

1) 安全性

毎日の記事に書いてある劣後債は、メガバンクの金融機関ばかりですから、預金保険の対象ではないが、変な社債よりよっぽど安全です。しかも、株式と違い、元本が確定しています。

通常の社債と何が異なるかと言えば、この三菱UFJ銀行の資本性証券の説明ページの「劣後債権について」の次の劣後事由の説明にあります。劣後事由の発生により、元本も利息も払われなくなりますが、そんな事態は、発生しないと考えてよいのだろうと思います。

■ 劣後事由について
現在、当行が発行する劣後債には劣後事由として以下の3つがあげられています。

1. 破産手続の開始
2. 会社更生手続の開始
3. 民事再生手続の開始
劣後事由が発生すると停止条件が成就するまで劣後債の元利金支払いはなされません。

2) リスクと不便

劣後事由の発生がリスクです。それ以外には、ないと思います。但し、不便なことは、あるかも知れません。国債は勿論、一般の社債よりも中途で換金しようとする場合に、売るのに時間がかかったり、思ったより安く売らざるを得なかったりする可能性はあります。

それ以外に、不便なのは、株式のように価格上昇益がほとんど期待できないことでしょう。劣後事由が発生したら、株式よりは期待が持てるかも知れないが、元本が返済されない。この点については、株式と余り大きな差はない。価格変動を楽しむなら株式であり、手堅く収益を確保するなら劣後債と思います。

もう一つは、期限前償還オプションがついていたりします。発行者がオプションを持つのであり、市場金利が安くなり、新たに低い金利の劣後債が発行できるなら、新たに発行して、高い劣後債を期限前償還すれば利子負担が少なくなります。これを劣後債保有者から見ると、市場金利が安くなれば、固定利息の債権は価格が上昇します。しかし、上昇益が得られないうちに、償還されて元本が戻ってくる形です。ここに東京三菱UFJ銀行の行公募劣後債発行実績がありますが、発行から3年-5年を経過すると銀行に期限前償還の権利が発生するのがほとんどのようです。

なお、市場金利が上昇すれば、当然劣後債発行者は期限前返済をしないわけで、途中でもし有利になれば、期限前返済をするという一方にのみ強みがあるわけですが、それ故オプションであり、それを承知で投資家は投資をするわけです。

3) 劣後債は有利?不利?

東京三菱UFJ銀行の公募劣後債発行実績の一番最近である2009年3月13日に発行したリテール向け第19回期限前償還条項付無担保劣後社債の利息は2.75%です。これに対して、東京三菱UFJ銀行の普通社債の発行実績がここにあり、2009年4月9日発行の第104回債が5年満期ではありますが、利息は1.34%です。同じ東京三菱UFJ銀行の定期預金と比べると300万円以上の10年満期で0.6%ですから、定期預金よりは利率は高いのです。

定期預金は、預金保険があるしと言うわけで、うまく作られている。だからこそマーケットですが。

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2009年5月14日 (木)

アイフルの社債消却利益

消費者金融のアイフルが5月12日に2009年3月期の決算を発表しました。

日経 5月12日 アイフルの09年3月期、純利益85%減
アイフル決算短信 5月12日

決算の概要は、

営業収益  3122億円
営業利益    74億円
経常利益    86億円
当期純利益  42億円

と言う結果ですが、損益計算書を見ると、53.81億円の社債消却益が特別利益として入っています。「こりゃなんじゃ」と言うわけです。

1) 社債消却益

何でしょうね?償却消却とは消滅させることです。最初に思いつくのは、社債発行企業の信用力が悪くなり格付けが下がると社債の市場価格が下がる。そこで、発行企業が自社社債を買い入れ償還すると、満期償還よりも償還金額が低くなるので、償還益が生じる。

5月7日に米FRBが金融機関のストレステストの結果を公表しましたが、米国では金融負債が時価評価されていると理解します。どのような金融負債について、どのような方法で評価するかは、私も調べがついていませんが、例えばこの日経 米シティ「資本調達1兆円必要」 米紙報道、健全性審査受けには「時価会計の適用緩和や負債評価益などの特殊要因もあり」となっています。評価益は、時価評価をすることで計上されることから、負債を債務金額ではなく、市場価格で評価したということです。

IFRSと米国GAAPでは、負債の時価評価をどう扱っているのかは、私も勉強不足ですが、日本の会計基準では、金融商品に関する会計基準第26項が次のようになっており、社債の貸借対照表価額について償却原価法の適用はあるが、時価評価はありません。

26. 支払手形、買掛金、借入金、社債その他の債務は、債務額をもって貸借対照表価額とする。ただし、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法(注5)に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額としなければならない。

社債に時価があるからと言って、信用力が低くなれば、資金調達コストが上昇し、業績は悪くなる。にも拘わらず、そんな時に評価益というのは、しっくりいきません。

日本企業でも、米国でADR(預託証券)を発行している場合に、連結財務諸表については米国GAAPで作成している企業があります。その様な企業は、社債の時価評価は、どうなっているのか気になります。

2) アイフルの社債償還

2008年3月末現在のアイフル連結財務諸表においては、一年以内償還予定社債が550億円と個別財務諸表の450億円より100億円大きかったことから、子会社の社債が100億円あったはずです。次の表が私が作成した2008年3月末のアイフルの社債内訳であり、黄色の部分が2009年3月期の間に償還があった社債です。

09

償還した社債の合計は650億円です。決算短信の連結キャッシュフロー計算書には、社債の償還による支出が△65,666百万円となっており、債務金額より6.6億円多く支払っていることになります。このことと、53.81億円の社債消却益が、どう結びつくのか、頭が混乱しました。

未償還の社債の簿価を合計すると3591億円(一年以内償還予定1009億円、一年超2582億円)です。決算短信では、社債金額は一年以内償還予定社債948億円と社債2582億円ですから、一年超は私の計算と一致しています。一年以内については、もし米ドル建ての5億ドルを為替レートを93.7円で評価していれば一致します。

そうではなく、一年以内償還予定1009億円の一部について、すでに市場から時価で購入しており今後償還が必要な社債が948億円に減少しているのであれば、差額の61億円は社債消却益であり、53.81億円の社債消却益と一致してきます。

本当は、どうか、アイフルがプレスリーリースで、社債期限前償還を発表していないか、見てみましたが、私は見つけることができませんでした。

アイフルのJ-CDS参考値(5月14日)を見てみると、3940bpでした。少し下がっていますが、高いですね。会社が自社の財務状態についてよく説明することは、重要と思います。

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2009年4月21日 (火)

東芝の繰延税金資産取崩による損失

日立の次は、東芝を書きます。

東芝は、4月17日に2008年度 業績予想の修正を発表しました。

日経 4月17日 東芝、営業赤字は2500億円に縮小 09年3月期

東芝の発表説明会資料は、ここからDownloadできます。

この発表において、本年1月の業績予想に対して、営業損益と税引前損益は、それぞれ300億円と500億円の改善の数字を予想したものの、最終損益は逆に700億円の悪化(損失拡大)を予想しました。

700億円の損失拡大の理由は、繰延税金資産です。

繰延税金資産とは、前払い税金であり、税効果会計に係わる会計基準の(注5)には、次のように書かれています。

繰延税金資産は、将来減産一時差異が解消されるときに課税所得を減少させ、税金負担を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない。

1) 東芝の繰延税金資産

東芝が2008年3月末の連結貸借対照表で計上していた繰延税金資産、繰延税金負債は次の金額でした。

繰延税金資産(流動)      1485億円
繰延税金資産(固定)      2858億円
繰延税金負債(流動及び固定) 807億円

差し引き 繰延税金資産    3536億円

2009年3月期において、第3四半期までで、繰延税金資産は3536億円から、4300億円へと464億円さらに増加していたとのことです。この4300億円の繰延税金資産のうちの地方税(道府県民税、市町村税、都民税)相当分の850億円を資産計上せず、2009年の損失(2009年としては、結局は639億円の損失)として計上するとの発表です。(発表説明会資料の7ペ-ジ目参照)

地方税についての繰延税金資産を取り崩すこととした理由は、地方税については、「連結納税制度の適用がなく、単独の課税所得が現在の経済環境では厳しい状況の為、一括で取り崩し」との説明ですが、今ひとつ納得がいかない部分があります。即ち、赤字の連続で支払い済みの地方税を相殺するような課税所得が生まれないと見込まれる子会社も存在するでしょうが、全体からすれば将来の利益は見込めるはずです。赤字のまま閉鎖となる会社は、利益金額では少数派と思うからです。

これ以上の議論は、私も情報を保有していないし、監査法人が的確な仕事をされるのであり、最終的な報告を待ちたいと思います。

2) 監査の重要性

4月2日の2008年度は上場企業倒産が最悪の45件で、ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)を書きました。ゴーイング・コンサーンが検討の対象になった場合には、繰延税金資産なんて考えられないと思います。

企業が赤字になれば、赤字が繰越損失金となり将来の税金を減額していくれると期待します。しかし、課税所得が生まれてくるとの確証が無くては、資産として貸借対照表に計上するのは正しくないはず。

M&Aで成長を続けた企業が、不況に入り、急成長を遂げた故に、脆弱性が問題となる企業もあると思います。M&A企業の特徴は、資産として「のれん」を計上していることが多い。「のれん」は、現在の日本の会計基準で毎期規則的な償却をすることが必要ですが、同時に固定資産の減損会計の対象でもあります。固定資産の減損会計を適用し、評価するには、将来のキャッシュフロー予測は必要不可欠です。

ビジネスの仕組みが複雑化してきたからには、企業の財政状態や営業成績を表す財務諸表も、それに適応して対処する必要がある。会計士の方々、大変ですが、頑張ってください。経済や金融を支えるインフラそのものと思っています。

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2008年11月13日 (木)

BNPパリバによるアーバンコーポレーションとの取引

8月20日にアーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引を書いており、題名を逆にして本日は、書いているようです。BNPパリバが、アーバンコーポレーションとの取引に関する外部検討委員会の調査結果を公表しました。ビー・エヌ・ピー・パリバ証券会社による2008年11月11日の発表は、ここにあり、同ページ下部の報告書概要(PDFファイル)をクリックすると報告書がダウンロードできます。

上記についての報道としては、日経 アーバンコーポ破たん前の重要情報、パリバが非開示促す朝日 BNPパリバ、アーバンの資金調達でインサイダー取引に該当の可能性毎日 BNPパリバ:「インサイダー取引も」アーバン株売買でがあります。

BNPパリバは、発表文に次のように書いておられ、インサイダー取引規制に抵触しないと判断されています。

尚、本報告書中のインサイダー取引に関する記載について、一部報道でインサイダー取引に該当する可能性が高いとの記事がありましたが、これは委員会の見解とは異なるものと思われます。外部検討委員会より補足の説明を別途受領致しました。弊社と致しましては、本件はインサイダー取引規制に抵触するものではないと判断しております。

本日は、toshiさんのブログyuraku_loveさんのブログ会計ニュースコレクターさんGrande's Journalさん等多くのブログで本件について述べられておられました。私なりに考えてみます。

1) BNPパリバによるアーバンコーポレーションとの取引

どのような取引であったかの概要を頭に入れておく必要があるので、簿記の仕訳的に表現します。(財務諸表としての仕訳ではなく、概要を整理するための仕訳です。)

(A) BNPパリバ

私の頭に浮かぶ、BNPパリバから見た取引は次の表の通りです。

年月日 摘要 借方 貸方 備考
科目 金額 科目 金額
2008.7.11 2010年満期転換社債型新株予約権付社債(CB)の買受け アーバンCB 300億円 現金 300億円 300億円をアーバンに支払い
2008.7.11 スワップ契約の支払い受領 現金 300億円 金銭債務 300億円 金銭債務額は、スワップ契約実行に応じ確定する。
2008.7.11以降 アーバンCBの株式への転換 アーバン株式 150億円 アーバンCB 150億円 CBの転換の 株式への転換
2008.6.26~2008.7.11以降 アーバン株式の売却 現金 101億円 アーバン株式 101億円 CBの転換又はアーバンからの借株を市場売却
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 91億円 現金 91億円 スワップ契約に基づきアーバンに支払い
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 49億円 アーバン株式 49億円 スワップ契約に基づく変動差額
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 10億円 当期利益 10億円 スワップ契約に基づく利益
2008.8.13 民事再生法申請による期限の利益喪失 金銭債務 150億円 アーバンCB 150億円 スワップ契約解除に伴い権利義務相殺(相殺特約)

表中の年月日の順序が変になっていますが、スワップ契約は2本締結され、6月26日から7月11日の期間を対象としたスワップ契約1と7月11日以降を対象としたスワップ契約2の2種類であり、アーバンからBNPパリバへの支払いはスワップ契約1及びスワップ契約2の双方とも7月11日でした。実質は、1本のスワップ契約です。

(B) アーバンコーポレーション

私の頭に浮かぶ、アーバンから見た取引は次の通りです。

年月日 摘要 借方 貸方 備考
科目 金額 科目 金額
2008.7.11 2010年満期転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行 現金 300億円 社債 300億円 300億円をアーバンに支払い
2008.7.11 スワップ契約の支払い実行 金銭債権 300億円 現金 300億円 金銭債券額は、スワップ契約実行に応じ確定する。
2008.7.11以降 転換社債の株式転換 社債 150億円 資本金等 150億円 資本金等は、資本金及び資本準備金
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 現金 91億円 金銭債権 91億円 スワップ契約に基づきアーバンに支払い
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 損失 49億円 金銭債権 49億円 スワップ契約に基づく変動差額
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 損失 10億円 金銭債権 10億円 スワップ契約に基づく契約差額
2008.8.13 民事再生法申請による期限の利益喪失 社債 150億円 金銭債権 150億円 スワップ契約解除に伴い権利義務相殺(相殺特約)

上記は、整理であります。300億円の転換社債を発行し、そのうち150億円が転換されたものの91億円しか現金が入金せず、59億円はスワップ契約による株式価格差やスワップ手数料のようなものでなくなりました。資本取引・損益取引の混同はなんて、難しいことは考えていませんので、ご了承下さい。

スワップ契約の内容は、アーバンがBNPパリバに300億円を支払い、BNPパリバはアーバン株のその日の出来高の12%~18%にVWAP(その日の平均市場価格)を掛けた金額の90%をアーバンに支払う契約です。CBの方は、1株344円の固定金額で株取得となり、BNPパリバは市場価格で売却し一見損失となるが、その見合いがスワップ契約の差と等しいわけで、更に90%相当しかアーバンに支払わないから10%儲かります。

アーバンから見ると、一見損ですが、初めから株価下落を覚悟して、時価増資をし、手数料を10%支払ったのと同じです。もし、スワップ契約を隠しておけば、BNPパリバがCBを引き受けて資金援助をしたように誤解が生まれれば、株価下落は少ないか、うまくいけば、株価上昇も期待したのかも知れません。

2) BNPパリバはインサイダー取引に該当するか

最終的には、裁判所が決めるのでありますが、私の無責任発言においては、「抵触」とはならないだろうと、思います。理由は、BNPパリバ自身の発言がそうであることと、インサイダー取引のリスクは大きすぎるので、BNPパリバ自身も負わないだろうと思うことです。

別の言葉で言えば、上の仕訳にあるように10億円を短時間に儲けたのです。最終的には、8月13日の仕訳のように特約により債権・債務相殺でチャラパーです。あえてリスクを冒す必要がない取引をBNPパリバは仕組み、契約し、実行することに成功したのです。BNPパリバの発表によると、利益は総額11億7977万円です。

しかも、問題視されることが予想された取引です。村上代表ではないですが「金商法、インサイダー取引のプロ」です。アマチュアのアーバンが冒しても、BNPパリバは冒さないと思います。

但し、BNPパリバの関係者が個人で、アーバン株を売買していれば、別です。しかし、市場で最大300億円の株を売り込む話です。従い、値下がりが確実なわけで、売りを行うために、借り株ができなければならないことから、個人でインサイダー取引をしようとしても、普通より困難だったと思います。

アーバンの関係者であれば株を保有していたと思えることから、むしろインサイダー取引の恐ろしさは、そちらに向かう可能性もあるのではと思います。

3) BNPパリバの問題点

外部検討委員会は、インサイダー取引については、判断する立場にないので判断を差し控えるとしています。しかし、他の点については、問題点を指摘しています。

(A) アーバンによるスワップ取引の非開示

私も当初よりこの点を問題にしたし、金融庁の臨時報告書と有価証券報告書の虚偽記載による合計1231万円の課徴金もスワップ取引に関して虚偽の記載を行ったことによる課徴金です。

報告書は、「アーバンは当初はスワップ部分を開示する意向を示していたが、最終的に「非開示」とする姿勢に転じています。その経緯は明らかではないが、BNPパリバが非開示とするよう働きかけたことも一因となっていることが十分に推測されます。」と書かれてあり、推測がありうるとのことです。

BNPパリバからアーバンに対して開示を勧める文書は残っていなかったと判断してよいと思います。そこまで、すべきかの議論はありますが、もし私がBNPパリバに勤めていたとすれば、自分自身の身の安全のために、個人名の文書でよいから、何か残したかも知れません。めちゃくちゃな個人主義であり、KYせずとの非難があるかも知れませんが、仕事とはそれほど冷酷かも知れません。

(B) ガバナンス

もっとも難しいものです。インベストバンクなんて人が次から次へと変わっていく。チームでやっている面もあるが、個人プレーの方がずっと大きかったりです。でも、そこを外銀なんかよくやっているなと逆に思ったりします。

多分、BNPパリバも相当にしっかりしたガバナンスを構築されておられたと思います。それでも、完璧には行かず、そしてガバナンスの最重要点は、その組織の長です。長が、しっかりしていれば、未然にあるていど感じて、行動をします。組織の長(子会社であれば、子会社のCEO)に求められる役割で、最大の仕事は、顧客との関係ではなく、その組織のガバナンスの弱点を補うことと私は思います。

それからすると、リーマンを買われた野村さんも大変だな。でも、野村さんだから、やり遂げられるかなと思います。

4) 今後

今後は、どうなるのでしょうか?朝日の11月12日は金融庁、BNPパリバを行政処分へ アーバン増資巡りなんて書いていますが、行政処分まで行くのでしょうか?分かりません。

刑事罰には、未だ誰も問われていないが、あり得るのか?検察の方も、ウォッチして追いた方が良いのでしょうか?私にとっては、沈みゆくアーバンコーポレーションに乗っかっているアーバン経営者が最後の悪あがきをしてしまった事件と思えます。従い、一般投資家を欺して、金をとったホリエモンの私のイメージとは少し異なっています。

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2008年10月22日 (水)

世界は大不況に突入か?

サブプライムによる金融面における影響、あるいは住宅関連の不況については、誰もが認識しているところです。一方、別の面で実体経済の不況が進んでいるように思え、本エントリーを書いています。

1) バラ積み船の船賃下落

9月9日に価格下降にどう立ち向かうかを書き、その際にInvestment Tools.comで紹介されているバラ積み船の船賃指標であるBaltic Indexのチャートをコピーして掲げました。現在のチャートと9月9日のチャートを以下に掲げますので、比べてみてください。(上が現時点で、下が1月半ほど前です。

Balticexchange081022jpg_3

Balticexchange0809

9月9日頃は5,663であったのが、1月と20日弱で1,292と4分の1弱に下落しており、最高時と比べると、その10分の1近くです。

対象となっているバラ積み船とは、大きな船では300mもあるケープサイズの30万トン積のような船から、パナマ運河最大級のパナマックスと言われる8万トン積の船、あるいはもっと小さいハンディーサイズと呼ばれる4万トン積程度の船とか色々あり、石炭や穀物を主たる貨物として運搬する船です。

何故そんなに安くなっているかは簡単です。荷物が無いから、相場が落ちただけです。バラ積み船の市況は、大きく変化しますが、現状の落ち込みは誰もが予想しなかったレベルと思います。

2) 経済の鏡

実際には長期用船もあるので、Baltic Indexが直ちに運賃に結びついていない場合もあるはずです。そして、Baltic Indexが1/4になったから、荷動き量も1/4になっているわけではありませんが、原材料の世界的な貿易量は減少していると言えます。このことは、同時に生産量も落ち込んでいるし、製品の貿易量減少にも繋がっていくし、同時に製造業の売上減少、業績悪化に結びつくはずです。しかも、それが世界的な規模で起こっていると私は考えます。そうでないと、このような大きなBaltic Index下落にはならないと思うからです。

3) 日本経済

闇みたいな可能性もあるのではと懸念します。10月20日の日経ですが、次のニュースがありました。

新日鉄の減益幅縮小、JFEは一転増益 今期見通し

原材料や燃料の価格下落があり、業績が改善したことを報じていますが、10月22日には鉄鋼大手、3年ぶり減産 自動車向けなど低迷と言った報道があります。利益増加は、原材料価格と製品価格の下落のタイムラグにより生じているだけで、大きな方向は、生産量減少に向かうと思います。

例えば、数ヶ月前には、トラック輸送業界が軽油値上がりにより利益が生まれないとの話がありました。これからは、仕事がない、そして廃業・倒産といった暗い傾向が始まるように思えるのです。

4) 対策

輸出依存が多い企業は、売上減少に見舞われる気がします。輸出依存とは、直接輸出のみならず間接的な部分も含めてです。

数年以上前ですが、リストラという言葉を良く聞きました。日本のリストラの多くは、企業の体質改善ではなく、単なる人減らし、正規社員減らし、中高年高給社員の首切りでしか無かった場合が多かったのではないかと気になります。これらのリストラは企業の業績を一時的には良くしても、長期的な改革策ではないからです。

不況時には何をするか?研究開発と思います。企業の投資とは、設備投資のみにあらず、研究開発への投資は極めて重要です。その企業が、他企業には負けない分野、負けたくない分野で、研究開発投資をするのです。それで、絶対とは言えないでしょうね。うまくいかずにやはり倒産するかも知れません。でも、研究開発の成果は例え倒産しても残ってくれる可能性があるし、夢があります。何もしないでいるより、研究開発に突き進んで、倒産したなら、やるだけやって倒産したので、ある満足感が得られるかも知れません。人員減らしより、よほど楽しいですよ。

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2008年10月17日 (金)

金融資産の時価評価に関連して

金融資産の時価評価や時価会計に関連しての報道が多くなっていますので、私自身の整理の意味もあり、書かせていただきます。

1) 国際会計基準の動向

日経の記事と国際会計基準委員会(IASB: Internatinal Accounting Standards Board)の発表は次の通りです。

日経 10月14日 金融商品の時価評価、規則の一部を緩和 国際会計基準審議会

IASB Press Release 13 October 2008 IASB amendments permit reclassification of financial instruments

IASBの改訂した基準(AMENDMENTS TO IAS 39 AND IFRS 7)そのものは、ここにあります。一言で言えば、米国基準で許されていた金融資産の保有目的区分の振り替えと同じような区分振り替えを認めたのです。改定基準を読んだ私の理解は次の通りです。

国際会計基準(IASとIFRS)は、金融資産を次の4つの保有目的区分に分けています。(国際会計基準は連結財務諸表を主たる対象としているので、子会社株式及び関連会社株式はIAS27の適用となります。)
(a) financial assets at fair value through profit or loss(売買目的金融資産)
(b) held-to-maturity investments(満期保有目的投資)
(c) loans and receivables(金銭債権)
(d) available-for-sale financial assets(その他金融資産)

評価方法は、(a)は時価評価を行い、評価差額は当期の利益。(b)と(c)は双方とも、利息法を採用しての償却原価法を適用する。従い、(b)と(c)に実質的な差はないと理解します。(d)も時価評価であるが、時価評価は洗い替え法を適用し、評価差額は包括利益とする。

今回は、次のような区分変更の内容と理解します。
(i) 保有している(a)売買目的金融資産が近い将来において売却しないことが確実であれば、他の区分(b)~(d)への振り替えを認める。但し、他の区分から(a)売買目的金融資産への振り替えは認められない。
(ii) 金銭債権のカテゴリーを満たしていたが、(a)売買目的金融資産としたした金銭試験は今後相当期間または満期まで保有する予定であるなら、(b)金銭債権への振り替えを認める。
(iii) デリバティブについては、保有目的区分の振り替えは認められない。

日本の会計基準で例えれば、売買目的有価証券を満期保有目的の債券又はその他有価証券への振り替えを認めたのである。実際には米国基準(GAAP)との調和を図るために、米国基準に合わせた。また、無条件に振り替えを認めたのでもないはずです。

2) 日本基準の現状

日本基準を作成している企業会計基準委員会の発表は次の通りです。

企業会計基準委員会 10月16日プレスリリース 時価評価とその算定を巡る会計基準等について

そして、このプレスリリースにある本日公表の実務対応報告公開草案「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い(案)」ここにあり、ページの下のダウンロードボタンを押すとダウンロードできます。

ダウンロードして読むと解りますが内容は、以下についてのQandA形式による解説についての公開草案であり、基準の変更ではありません。
Q1 時価の概念
Q2 市場価格が実態を乖離していた場合の時価
Q3 市場価格を時価とみなせない場合の、合理的な見積りに基づいて時価を算定する場合の留意する事項

国際的な会計基準における金融資産の保有目的の変更についても近々発表されるとおもいますが、上記の1)をフォローするような案と思います。

3) 新聞報道

新聞のみを読んでいると誤解を起こす恐れがあると思います。

日経 10月17日 日米欧、時価会計一部凍結へ 金融危機封じへ非常手段
朝日 10月16日 金融商品の時価会計適用、日本も緩和へ 欧米と協調
MSN産経 10月16日 時価会計、金融商品で適用緩和へ 企業会計基準委員会
毎日 10月17日 佐藤・金融庁長官:時価評価会計、日本も見直し

例えば、次のような例です。

日経: 「市場の混乱を受けて時価会計凍結を検討する米国」

朝日: 「金融危機で価格が著しく低下している商品については、決算期ごとに損失処理しないで済むようにする。」

MSN産経: 「株式や債券などを、時価で評価する「投資目的」から、取得時の価格(簿価)で評価できる「満期保有」に切り替えることを認める方向で検討する。」(株式には満期が存在しないため、満期保有は概念として存在しません。)

毎日: 「大きく値下がりした金融商品について決算上、取得時の価格(簿価)での計上も認めることなどが柱となる見通し。」

さすがに、企業会計基準委員会がプレスリリースを出しました。お笑いだなあ!

企業会計基準委員会 お知らせ 金融危機対応に関する報道について

・・時価会計一部凍結や金融商品の時価会計の適用の緩和を決定したかのような記事が出されていますが、憶測記事であります。

そして「私どもでは、欧米の動向を踏まえつつ、金融資本市場の健全性・透明性の確保に寄与できるよう、早急に検討していくこととしております。」と締めくくっておられます。

4) 金融商品の時価評価の重要性

大和生命保険は10月10日、東京地裁に更生特例法手続き開始を申し立てをしました。もし、申し立てをしなければどうなっていたでしょうか?可能性としては、更に資産内容が悪くなり、一方で保険金は保険契約通りに支払われ、満期未到来の保険契約者の受取金額は更に低くなっていた可能性が高いと思います。善意に解釈すれば、大和生命保険の経営陣もある程度頑張ったが、これ以上自力で頑張りすぎると保険契約者の損失を拡大してしまう。損失拡大を未然に防ぐために裁判所に更生特例法手続き開始を申し立てた。

資産状態が良いか悪いかは、時価評価をしないと無理です。金融資産としては、預金ぐらいしかないメーカーではありません。金融機関の資産はほとんど全てが、貸付金、デリバティブ、CDOその他の金融資産です。これを時価評価しなかったら、そして時価評価した結果が公表されていないなら、安心して預金やその他の取引ができません。同じことが、外国の投資家や取引先、預金者からも言えるわけで、信頼できる財務諸表を開示できないことは、金融機関にとっては死を意味します。現在、政府資金(公的資金との言葉が使われていますが、公的資金と言うと誤魔化されるので、政府資金と言います。)の銀行への注入が検討されていますが、大前提は再建可能であることであり、そのベースとなる信頼できる財務諸表が存在することです。

この16日の日経記事「金融相「中小融資円滑に」 銀行トップら23人と異例の会談」には、「地方銀行からは時価会計凍結を求める声も出た。」との文章があるのですが、驚きです。そんなことを言ったら、その銀行の預金を引き上げるリスクがあるのですが、預金取り付けリスクがあると思いますが、どのように考えたのでしょうと思います。

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2008年10月 7日 (火)

流動性高いマーケット

7月24日に石油価格の値下がり始まったか?を書きましたが、あの頃からだったでしょうか、市場の流動性が高くなり、投資リスクが高くなり、下手に手を出すと火傷をしそうだと感じています。

色々なブログで勉強をさせていただいていますが、その中で、これはと思ったブログの記事について。

1) 一寸の虫に五寸釘

本日は、手っ取り早い金儲けの陥穽を書いておられ、証拠金の100倍の金額のFXをやりますという100倍レバレッジのこのFXの宣伝を金儲けの陥穽として紹介されておられました。このすごさ、多分プロかセミプロでなくとも、少しでも外国為替に携わったことがある方は、分かると思いますが、そんなリスク・・・、うまくいけばよいけど・・・、失敗したら・・・、多分失敗するだろうな・・・てな感じではないかと思います。

先ずは、この7月以降の外国為替レートのチャートを書いてみました。対象とした外貨は、米ドル(USD)、ユーロ(EUR)、英ポンド(GBP)、人民元(CNY)、インド・ルピー(INR)、ブラジル・レアル(BRL)、ロシア・ルーブル(RUB)、豪ドル(AUD)、カナダ・ドル(CAD)、韓国ウォン(KRW)です。KRWは100KRWに対しての円貨としています。

Forex200810a

全般的に各通貨とも円に対して下がっていますが、見にくいので7月1日を100としてその後の為替の動きを表したのが、次のチャートです。

Forex200810b

一番落ち込みが激しいのがBRLで、次がAUD、そして下がり幅が小さかったのが、CNYとUSDでした。このチャートを更に9月1日を100として書いたのが、次のチャートです。

Forex200810c

変動の様子は、3月間も1月間も同じように思え、BRLは76になり、変動が小さかった人民元CNYや米ドルUSDでも95.9と95.6であり4%以上下がっています。円資金による外貨投資(円キャリー)をしている人がいたら、全員損をしていると思います。

上のチャートの為替レートはIMFのSDRレートから作成したのですが、実際のFX取引においては、為替の手数料が入ってきますし、レバレッジ100倍と言っても、外国為替のポジションを作るために資金を借りて、投資通貨で運用してとしますので、借入と運用の金利差もあるので、手数料が相当発生します。

為替は、理論的にはマクロ経済等で予測できるのでしょうが、実際にはプロでも予測不可能な世界です。FX取引をするのであれば、ギャンブルだと思って、取引をすることだと思います。例えば、レバレッジなしでFXをすることも可能ですが、BRLのように75になってしまうこともあることを認識する必要があります。

NHKが昨日クローズアップ現代で「人気金融商品の落とし穴」としてFX取引を取り上げていましたが、「金融庁が悪い」みたいな嫌味なメッセージがあるように感じてしまいました。報道機関として、金融商品の危険性や留意点のようなものを報道すべきと思うのですが。

2) 会計ニュースコレクター

本日、「リーマンショック収まらず リスクばらまきの多大なツケ」として、週刊ダイヤモンド2008年10月11日号にある、リーマンブラザーズ絡みの金融商品(具体的にはクレジット・リンク・ローン)でみずほ信託銀行の100億円損失に絡んで書いておられます。

クレジット・リンク・ローンとは、デリバティブと思えばよいのですが、デリバティブとはなんぞやになります。極端な話として、投資銀行のようなデリバティブ屋さんに、私は「XXXXXというデリバティブが欲しい。」と言えば、「ハイ、これでいかがですか?○○円です。」と作ってくれます。社債とは、どこかの会社が発行した債券ですが、デリバティブだったら、実際には存在しない債券と同等の金融商品が作れます。ハイリスク・ハイリターンやローリスク・ローリターンの微妙な組合せや、償還期間も好きなように設定できます。

報道は金融危機はサブプライム問題で住宅ローンと単純化して言っていることが多いが、デリバティブに微妙に組み込まれたりしていて、作った人間でさえ、よく分かっていないのではと思います。作った奴らは、完成してディールができれば、報酬を入手して終わりですから。投資家は、そうではなく、最後までつきあわなくてはならないが、納得ずくで買っているから仕方ありません。

なお、ブログで国民生活センターの注意すべきハイリスクな投資取引・投資関連商品を紹介されておられます。さすが、独立行政法人国民生活センターです、リスクの高い金融商品について警告されています。NHKとは違う。偉いと思います。

FXやデリバティブが悪いのかというと、グローバリゼーションの中、規制することは不可能です。すなわち、規制しようとしても、基本的に抜け道が無限に存在するような世界だし、結局は機関投資家ではない一般投資家に販売するときには、リスクの存在を十分に説明することで対処するしかないと私は思います。

どの様な投資も、流動性が高くなっていると感じます。十分気をつけてください。最も、皆が投資の手じまいをして、キャッシュを預金に移したら、市場はいよいよ暴落する可能性もありますが。

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2008年8月30日 (土)

日本の経済活性化

次のニュースを読んで日本も経済活性化をしなくてはと思いました。

日経 8月28日 米SEC、国際会計基準を14年から順次導入

SECのプレスリリースは、次の所にあります。

SEC Proposes Roadmap Toward Global Accounting Standards to Help Investors Compare Financial Information More Easily

米国も以前からIFRS(International Financial Reporting Standards)採用の動きにありましたが、ずいぶん前面に出してきたと思います。日本は、そんな気運は余り感じられず、一生懸命に国際標準とは少し異なった日本基準を作っているのか、あるいは10年以上遅れた世界にいるのかと思えてしまいます。あえて言えば、上場会社は連結財務諸表のみをIFRSで作成し、公開することだけで良いと思うのですが。

Suntech Power(無錫尚徳太陽能電力有限公司)という中国の太陽電池の会社があります。(ホームページはここ)東洋経済On Lineの8月29日 太陽電池・世界大バトル! 台頭する中国・台湾、半導体・液晶での成功を三たび再現へにも中国最大の太陽電池メーカとして紹介がありました。メーカー別の生産量は私も掴めていませんが、2007年の生産高として日本メーカーが920MWで、中国メーカー820MWという数字があります。Suntech Powerの2007年の生産高は363.7MWでした。しかし、恐るべきは、そんな数字ではなく、売上高と利益の右肩上がりの伸びです。

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事業年度 (Suntech Power) 2003/12 2004/12 2005/12

2006/12

2007/12
売上高(千米ドル) 13,888 85,287 226,000 598,870 1,348,262
純利益(千米ドル) 925 19,757 30,628 106,002 171,275
生産高(MW) 6.4 29.5 67.7 160.1 363.7

Suntech Powerは、米国NYSEとドイツ、オーストラリアで株式を上場しています。ドイツは世界で太陽光発電が最も盛んな国であり、オーストラリアは創業者でChairman of the Boardの施正栄(Zhengrong Shi)が太陽電池技術を学んだ国です。

日本には、先行している競合メーカがいるからという理由があるかも知れませんが、それ以上に新規技術・新分野で株式上場をして投資資金を得ようとした場合に、日本より米国に魅力を感じて、その選択をしたのだろうと思います。Suntech PowerがNYSEで株式上場をしたのは、2005年12月です。

日本の証券市場を活発化するのは、決して税制なんかではなく、その市場の魅力だと思います。NYSEへの上場が楽かというと、日本市場より要求が厳しい面があると思います。(6月19日のエントリーでは、米国で上場取消となった日本企業を書きました。)でも、投資資金を募るなら米国の方が魅力的となっているのではないでしょうか。

追記

日本公認会計士協会は8月29日付で、インフォメーションとして、SECが米国企業のIFRS適用に関するロードマップ案公表を決議を発表しました。「日本におけるコンバージェンスの加速化、さらには、IFRSの選択適用を主張してまいりました。」と記載があります。

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2008年8月20日 (水)

アーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引

やはりアーバンコーポレーションとBNPパリバ(ホームページはここ)との取引については、日経も8月20日の社説 不信を招いた破綻前の起債と題して取り上げておられたし、書いておかねばと思いました。

1) 東証1部上場会社のするべきことではない

上場会社でなければよいのかとの疑問も多少は残りますが、誰もが株式取引をする公開会社で上場会社である会社は、その財務情報に関する情報開示は厳しくあるべきです。アーバンコーポレーションで起こったことは、一般投資家に不信を与え、株式投資に二の足を踏ませることです。日本の株式市場の破滅にも繋がることと思います。(日経社説よりも、厳しい意見としました。)

2) アーバンコーポレーション(アーバン)が行ったこと

時系列でアーバンの出来事をアーバンの発表から見ていきます。

(a) 6月26日付2010年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ(PDFファイル/233KB)
(b) 8月13日付(訂正)「2010 年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ」の一部訂正及び営業外損失の発生について(PDFファイル/27KB)
(c) 8月13日付平成21年3月期第1四半期決算短信(PDFファイル/248KB)

(a)の6月26日付の発表を読むと300億円の資金をBNPパリバから新株予約権付き社債により年利2.5%の満期日2010年(償還期間2年)で調達したと読めます。但し、発表文に「平成20 年6 月4 日株式会社日本格付研究所による当社長期優先債務ならびにコマーシャルペーパーの格付けについて各々1 ノッチの引下げが行われたほか、投資家ならびに金融機関の取引姿勢が急激に変化していることを受け・・」とあり、300億円の調達が信じられない気分になりますが。

(b)の8月13日の発表(民事再生手続き開始の申し立てをした当日)にやっと、裏をばらしました。「BNP パリバとの間で、平成20 年6 月26 日及び7 月8 日にそれぞれスワップ契約(以下あわせて「本件スワップ契約」といいます。)を締結しております。本件スワップ契約によれば、当社は、同年7 月11日に、BNP パリバに300 億円を支払う・・」と。300億円を借りた相手に、300億円を払ったら、キャッシュフローは帳消しです。

3) スワップ契約

但し、支払ったのはスワップ契約のアーバンの義務を履行したのであり、同時にアーバンは権利を取得しました。それが何であったのか、現在どうなっているのかを(b)と(c)の8月13日付の発表で想像してみます。

VWAPなんて、ややこしい言葉で表現していますが、「売買高加重平均株価(Volume Weighted Average Price)」のことです。アーバンが取得した権利は、自社株の売買高加重平均株価の90%の価格相当の金額をBNPパリバから受領する権利です。300億円は、「行って帰る」取引ですから、キャッシュフローは無関係ですが(実際には手数料分動いた)、BNPパリバには80,744,202株の新株予約権が残っており、これを使って、アーバン株を取得して市場で売る。売って得た金額の約90%をアーバンに支払う。このような感じです。

BNPパリバは、10%儲かる。アーバンは、もし株価が転換価格の344円より高ければ、(厳密には10%のBNPパリバの取り分をカバーする必要があるから378円)儲かるし、低ければ損をする。但し、何がしかの資金にはありつける。(株価がスワップ契約で取り決めた下限を下回れば、そのままで動かず。)

(c)の決算短信によれば、150億円について8月13日までに株式転換されており、150億円が社債として残っています。(b)の書類には58億円の損失とありますので、そうすると、約90億円をアーバンは受領して終わったのかと思います。

そうであれば150億円の社債債権をBNPパリバは持っていることとなりますが、スワップ契約でのアーバンの権利未行使分が同じ150億円残っているはずですから、BNPパリバには、損はないはずです。少なくともリスクが大きければ、BNPパリバはディールをしなかったでしょう。

4) どう考えるべきか

アーバンがBNPパリバに欺されたと見られる人があるかも知れませんが、私はそうは思いません。インベストメントバンクやインベストメントバンク部門を持つ銀行は、日本人が考える銀行をはるかに超えたことをやります。それについて行かないと、現在のビジネス社会では負け犬になります。インベストメントバンクを利用して勝ち組にならないといけないのです。その意味では、アーバンが自社株の値上がりに賭けたというなら、その判断の是非は別にして一つの選択であったでしょう。(私は、正しくない選択だと思いますが。)

悪いのは、こんな重要なことを、民事再生手続き開始の申し立てをした当日に「実は・・・」と言ったことで、こんな経営者は、最悪だし、市場を裏切る行為だと思います。そもそも、社債とデリバティブはワンセットディールです。それを社債部分だけの発表で実態を誤魔化したといのが私の見方です。

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2008年3月27日 (木)

政府系投資ファンド(SWF)に対する規制

政府系投資ファンド(SWF)に対する規制が必要なのか、考えてみます。

1) 米財務省/シンガポール政府/アブダビ政府の高官による基本合意

先ずは、次の記事です。

読売 3月21日 米・シンガポール・アブダビ、政府系ファンド投資原則で合意

正確な内容については、次のプレスリリースをご覧下さい。

3月20日 US Department of Treasury発表 ”Treasury Reaches Agreement on Principles for Sovereign Wealth Fund Investment with Singapore and Abu Dhabi”

基本合意の概要は次の通りで、当然と言えることでありますが、興味深いとも言えます。

SWFの基本方針

1. SWFの投資決定は、純粋に経済利益の追求を目指して行われ、相手国政府の政策に関与する目的で行ってはならない。
2. SWFが情報開示を進めることは、金融市場の不安を解消し、相手国からの信頼を得ることになる。
3. SWFは、自らのガバナンスを高めるべきである。
4. SWFと民間とは、公平な競争関係であるべきである。
5. SWFは、相手国の法令を尊重し遵守する。

投資受け入れ国の基本方針

1. 投資受け入れ国は、外国からの直接投資を防止する規制・制限をしてはならない。
2. 投資受け入れ国における投資規制の枠組みは明確であり、判断基準が法に明確に示されており、解釈に幅がないこと。
3. 投資受け入れ国は、投資家毎の差別をしてはならない。
4. 投資受け入れ国は、SWFの投資判断に関与してはならない。安全保障を目的に、投資制限を行う場合は、純粋に直接関与する部分のみとすべきである。

発表文にも、”We hope that the IMF and OECD's work can build upon these basic principles”とありますが、IMFもOECDも、大きく違ったルールは作らないと思いますし、これがやはりベースになると思います。

2) 我が国では

上の原則を読んでいると、日本は鎖国に近く、黒船がこないと開国できないのかなと思いました。勿論、開国が全てではなく、整備できていない状態で急に開国をする場合が恐ろしいのであり、また開国せずに頑張って日落ちる国になることの恐ろしさです。

即ち、

1.空港外資規制

この日経の2月3日の記事”の「冬柴鉄三国交相は「一部特定の外資支配は国益に反する」と主張しており」はすごいですね。上の原則とは、真っ向から対立しています。

2.放送局外資規制

電波法の20%規制は合理的なのでしょうか?テレビショッピングより、CNNやBBCがCM付きでよいから、CSでなくて見ることができる方がよいと思いますが。ネット時代にカビの生えた電波法を守ることの滑稽さでしょうか?

3.外為規制

具体的には対内直接投資等に関する命令(これ自身が複雑で嫌になりますが、外国為替及び外国貿易法27条1項の審査が必要となる対内直接投資等に該当するおそれがあるものを定める対内直接投資等に関する政令27条2項の主務省令がこれです)の別表1は安全保障上の必要性を理由に事前届出の対象とする製造業等ということで理解できるのですが、別表2の業種に該当する上場会社については、10%以上外資が保有するには許可(許可とは言っておらず、届出と言っているのですが、禁止することがあるとなっており、甚だしいインチキ法です。)が必要です。

例えば、別表2の最初は「米作農業」になっていますが、株式会社が米作をできないのに、バカかと思います。個別の法で決めるべきを、外為法でするのは、キチガイみたい。

なお、この規制に関しては、この日経 2月14日の記事にある「英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)によるJパワー(電源開発)株の買い増し」が問題となっています。この記事には、日本の安全保障を脅かすかどうかを検討なんて書いていますが、そんな問題でしょうか?最も、Jパワーも原子力発電所を大間に建設しようとしているし、水力発電所も保有していますから、全く関係ないとは言えないのですが、それなら政府が2/3以上株式を保有していた会社なのですから、その株を一般に売り渡して銭を儲けた政府が悪いと私は思います。きちんとした長期の考えも持たずに、株式を売却するバカが一番悪いと思います。もし、問題なら買い戻して、再び政府の子会社にするのが皆が納得しやすいと思います。政府によるTOBも考えれば楽しいものです。

なお、対内直接投資等に関する命令の別表はこの日銀の解説書についています。

3) 鎖国状態は避けるべき

私は、「鎖国状態は避けるべき」と思います。日本国憲法の前文に、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とあります。世界の国々や人々と手を取り合って、世界中の人々が発展するようにするのが、本当だと思います。グローバル標準とは、文字通り世界共通標準であり、米国の標準ではないはず。但し、日本標準でもないのであり、世界を良くし、発展させる標準を世界が確立していくことのはずです。世界の発展のための、世界のことを考えた基準を作っていくべきだと思います。

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2008年1月24日 (木)

世界の株価

昨日は、1月22日15時32分 読売新聞 日経平均が大幅続落、終値は752円安の1万2573円のように、安値を付けましたが、本日は、次のように一旦は回復しました。

1月23日 日経 日経平均3日ぶり上昇、終値256円高の1万2829円

本日のエントリー世界の株価とは、風呂敷を広げてしまいました。

1) 各国の株価比較

日経平均、米国代表としてダウ、欧州代表としてロンドンFTSE、中国代表の上海SSE Composite Index、そしてインド代表ムンバイのBSE SENSEXの5つの12ヶ月間のチャートを掲げます。(Yahooから取りました。)

Nikkei22jan2008

Dow22jan2008_2 Ftse22jan2008

Ssec21jan2008

Bse22jan2008

やはり、日本が一番値下がり率が大きいのです。 私が、株価・為替・金利の動向という7月28日のエントリーを書いて、「サブプライムローンのニュースが出たのが丁度7月の中でした」とか言っています。この頃から、ダウは揺れ動き11月頃から下がっています。日経は、下がるところは同じですが、7月まで、ダウは上がってきていたのが、日経は水平飛行でした。そこで、それぞれの株価指数の1年前と現在(1月23日)の株価を比べてみました。下の表です。これを見たら、どうしようない日本経済。優れた中国株。おすすめのインド株と言いたくなります。

  1年前 1月23日  株価比
日経 17,500 12,829 0.733
ダウ 12,500 11,850 0.98
FTSE 6,250 5,674 0.908
上海 3,000 4,703 1.568
ムンバイ 14,000 17,594 1.257

但し、投資を考える際には、元手とした資金を考える必要があります。例えば、米ドルを借りて投資をしている場合は、米ドル建てのリターンを考えることが必要です。グローバル概念で考えれば、リターンを評価する場合には統一の基準が必要であり、株価指数を米ドルに置き直して表を作り、1年前の株価との比較を行いました。次の表です。

     1年前 1月23日   $株価比
日経 US$144.22 US$121.14 0.840
ダウ US$12,500.00 US$11,850.00 0.948
FTSE US$12,345.63 US$11,086.02 0.898
上海 US$385.60 US$648.20 1.681
ムンバイ US$315.74 US$442.84 1.403

結果としては、日本株も円高となった分だけ米ドル建て株価は上昇したことから、値下がり率は小さくなりました。しかし、依然として最も魅力のない市場です。一方、中国、インドは益々光り輝く結果となりました。日本株もかつて円高が進んだときは、米ドルで換算するとすごい上昇率でした。時には、チャートを外貨建てで見てみることをお勧めします。そうすると、外国人投資家が投資を考えるときのチャートになります。

2) 中国株、インド株はお勧めか?

私自身は中国株もインド株も持っていません。しかし、余裕があるのなら日本株以外に中国株やインド株を持っても面白いのではと思います。勿論、このブログは投資勧誘を行うブログではありませんし、ただ訳も分からずに手を出すと、投資先が倒産して紙切れリスクが発生することもあり得ますから、慎重にしてください。でも、一つは中国株やインド株を多く組み込んだ投資信託で投資をするのも面白いかも知れません。

なお、税制改正で上場株式の500万円以内の譲渡益と100万円以内の受取配当金については優遇税率10%とする税制改正が、今の通常国会の焦点の一つですが、中国株、インド株でも上場されていれば、適用させると私は解釈します。(上場株式の定義は租税特別措置法37条の11です。)受取配当金については、本国(中国、インド)における源泉税と日本の取扱者が納付する日本国内の源泉税がかかるはずですが、確定申告により現地源泉税は外国税額控除で日本源泉税は所得税額控除により税額控除が可能です。特に税で不利にならないと思いますが、詳細は証券会社に相談されるとよいと思います。

ただし、外国株式の場合は、現地証券取引所や提携先証券会社の手数料、為替売買差等々が発生し、日本株式よりも手数料や費用は大きくなるはずです。だから、証券会社によく相談して研究してください。米ドルベースで年1.6倍とか1.4倍ですから、FXなんてのより楽しみがあるかも知れません。

前のエントリーでタタ自動車を取り上げたことから、タタ自動車の株価を示します。なお、厳密には株価ではなくADR(American Depositary Receipt(米国預託証券))でありますが、価格は株価に一致していると考えて大丈夫です。従い、米ドル建てになっています。

Ttm22jan2008

3) 日本は?

最後に答えるべきは、やはり、日本はどうするかです。魅力ある市場にすること。即ち、魅力ある会社がたくさんあることが重要です。魅力ある会社を多くすれば、株価も高くなるし、雇用も増えるし、魅力ある会社で勤務することは、夢、希望、高給、好待遇・・・様々なことでよくなると思います。日本の今の経営者は魅力ある会社をつくることに熱心ではなく、自分自身が失業しない(リストラされて首を切られない)様に働いていると思える面があります。社会自身が、(全員マスコミみたいで)常に弱点ばかり探していて、弱点を叩いて楽しんでいるように思えるときがあります。悲しいことです。

例えば、買収防止策が話題となることがありますが、買収の対象となるほど会社を魅力的にすることは、すばらしいことです。でも、日経平均を見たら、買収されるわけもないのに、買収策を講じておられる、あるいは金を掛けて熱心に取り組んでおられる会社があるのではと思えます。買収防止のために、株式の持ち合いをするなんて、愚の骨頂だったりします。新株を互いに発行して持ち合う場合、資金は要しません。しかし、1株あたりの利益や資産が減少し、PERやPBRは悪くなる。配当負担も大きくなります。即ち、資金も資産も増えないのに、株数だけ増えたら、旧株主にとって良いことが何かありますか?ということです。そんな会社の株を買わないというか、外国人株主の眼からすれば、そんな経営陣のいる会社の株を買うほどの馬鹿はいないになると思います。

もっとも、会社法308条により25%以上の株を持ち合うことになると、互いに議決権を行使できなくなるから、変なことになりますが。まじめに自社の技術や人材や自社の資産を生かしていく経営をすることが、重要だと思います。

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2007年12月12日 (水)

IHIと東証

東証は昨日、IHIを監理ポストに指定しました。日経ニュース、東証発表及びIHIの発表を掲げておきます。

日経 12月11日 東証、IHI株を監理ポストに割り当て
東証 12月11日発表 監理ポストの指定について -(株)IHI-
IHI 12月11日発表 当社株式の監理ポスト指定について

やはり、非常に驚きです。例えば、次のニュースなどは、冷静だと思うし、プラント・ビジネスなんて、そんな世界だと思うからです。

日経 12月11日 IHI株、日経平均構成銘柄に当面維持
日本経済新聞社と日本経済新聞デジタルメディアは、11日に監理ポスト入りしたIHI株について、日経平均株価の構成銘柄として当面維持すると発表した。東京証券取引所の審査動向を見て、対応を決定する。日経株価指数300および日経500種平均株価も同様に対応する。

東証が監理ポストに指定した理由は、以下としております。

有価証券上場規程施行規則第605条第1項第14号(上場会社が有価証券上場規程第601条第11号a前段に該当すると認められる相当の事由があると当取引所が認める場合)に該当するため

その有価証券上場規程施行規則第605条第1項第14号とは、次の文章です。

第605条 当取引所は、上場株券等が次の各号のいずれかに該当する場合は、当該上場株券等を規程第610条に規定する監理銘柄に指定することができる。・・途中省略・・
(14) 上場会社が規程第601条第11号a前段又は同号b前段(規程第602条第1項第1号、同条第2項第3号、規程第603条第6号、規程第604条第1項第2号又は同条第2項第1号による場合を含む。)に該当する場合(これらに該当すると認められる相当の事由があると当取引所が認める場合を含む。)。ただし、・・省略・・・

有価証券上場規程第601条第11号a前段
(11) 虚偽記載又は不適正意見等
次のa又はbに該当する場合
a 上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認める場合

運用次第で、過年度の修正をしたら、何でもありみたいな恐ろしい規定だなと思ってしまいます。だって、今回のことについてIHIは、9月に既に発表済みであったんですよ。

IHI 9月28日発表 業績予想の修正に関するお知らせ
IHI 9月28日発表 過年度決算発表訂正の可能性に関するお知らせ

上記に対して、昨日IHIが発表したのが、次の発表でした。

IHI 12月11日発表 業績予想の修正および過年度訂正に関する調査状況について

この中で、「これに併せて,平成19 年3 月期にかかる訂正有価証券報告書および訂正半期報告書についても会計監査人の監査を経て提出いたします。」と言っております。訂正をすると自ら言うと虚偽記載をしていたとなるのなら、少し大げさすぎるように思います。

本日、IHIは、平成19年3月期の過年度決算の訂正と平成20年3月期の業績予想の修正を発表しました。
IHI 12月12日発表 業績予想の修正および過年度決算の訂正に関する調査結果ならびに当社の対応方針のご報告
IHI 12月12日発表 業績予想の修正に関するお知らせ

で、判りつらいので、連結業績について比較表を作りました。

平成20年3月期通期予想 連結売上高     営業利益    経常利益
当初発表  1兆2300億円       400億円      300億円
9月28日修正  1兆3200億円    ▲170億円   ▲270億円
12月12日修正  1兆3200億円    ▲150億円   ▲250億円

平成19年3月期 連結売上高     営業利益   経常利益
決算額   1兆2349億円       246億円     215億円
9月28日修正     発表せず      ▲34億円   発表せず
12月12日修正   1兆2210億円      ▲56億円    ▲87億円

私にとって天文学的数字ではありますが、9月に発表したときと昨日・本日の数字とほとんど変わらないではないかと思えます。過年度の業績修正を行うことも9月に発表していましたから。営業利益は平成20年3月が20億円改善して、平成19年の結果は22億円損失が増加しているから合計で2億円損失の増加となりますが、誤差範囲に思えます。

そして、本日IHIは、次の2つの調査報告書を公表しました。

社外調査委員会の調査報告書
社内調査委員会の調査報告書

私も、これら調査報告書は、これから読むところですが、IHIの対応は、監理ポストにはいるほど、そんなに悪いのだろうかと思うのです。船場吉兆とは、違うと思うのです。一罰百戒でしょうか。プラントビジネスなんて仕様書の読み方で対象物が違うというか、そもそも規定することが簡単ではありませんから。

でも、巨額の損失が発生することについてIHIは重く受け止めるべきであり、結果として当然資金調達コストも高くなる。しかし、整理ポストとなると、市場からの調達はほとんど閉ざされてしまうのではないかと。同じように1兆円を超えているここここの会社も次は自分の身かと怖がっておられるのではないかと思って。何故なら、IHIは、良いですよ。江東区の土地を売れば、大丈夫ですから。売却する資産がある会社は強いのです。

でも一つだけ、私にも整理がつかない部分があります。平成19年3月期にIHIは、次のことをしているのです。

平成18年10月1日 石川島汎用機サービス株式会社の完全子会社化のための株式交換で4,133千株発行
平成19年1月26日 公募による募集株式発行 143,000千株 発行価格391円
平成19年2月26日 第三者割当による募集株式発行 21,450千株 発行価格375.04円

投資家にとってどうだったか。プラントビジネスには、損失金額がグレイの工事は生じうるのですが。しかし、どう考えても、上場廃止となると理不尽だなと。もしかすると、IHI株は、この結果下がった株価で買うべきで推奨株ではないかと。

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2007年10月 7日 (日)

シティによる日興の株式交換・子会社化

ここに日興コーディアルグループのプレスリリース「(訂正)株式交換についての基本契約書締結に関するお知らせ(PDF) 」があります。1枚目から3枚目が訂正で、2枚目から16枚目が本文です。シティの英文プレスリリースはここにあります。

新聞報道は次の通りでした。

日経金融新聞 10月3日 米シティが日興を完全子会社化 株交換、反対株主は 買い取り請求可能
朝日 10月2日 米シティ、日興を三角合併方式で完全子会社に
読売 10月2日 初の三角合併、米シティが日興コーディアルを完全子会社化
毎日 10月2日日興:三角合併第1号 シティの完全子会社に 上場も廃止
産経MSN 10月2日 シティ、日興を完全子会社化 初の三角合併

思うところを書いてみます。なお、ここで述べるていることは、私個人の見解であって、その見解が正しいことを保証するものではありません。もし、間違いである部分を発見された場合は、ご指摘をお願いしたいと思います。

1) 合併ではなく株式交換

この中で、日経金融新聞以外全て三角合併という言葉を使っていますが、プレスリリースにあるように株式交換です。この三角合併株式交換を図に書いてみました。

200710

日興コーディアルグループ(NCG)は、上場会社であり、67.2%(657,711,277株)の株式はシティグループ・ジャパン・ホールディング(CJH)が保有し、残る32.8%(321,177,972株)が取引先等を含む一般投資家が保有しています。株式交換の結果は、株式交換の効力発生日にCJHと一般株主が行い、一般株主はNCG株式を渡し、CJHの100%株主であるCitiGroup Incの株式(C株)を入手します。結果、一般株主は投資先がNCGからCitiGroupに変わることとなり、一方CJHはNCGの全株を保有することとなります。

図のブルーの線が現在の株保有の線で、一般株主の分がピンクの線に変わります。

合併と異なるところは、合併とは複数の企業が一つになることで、企業の数が減少しますが、株式交換は株式の交換が起こるだけで、企業の数は変化しません。

2) 株主総会による承認と反対株主の買い取り請求

株式交換契約は株主総会で2/3以上により承認されなければなりません。(会社法783条、309条②十二)すでに、CJHが67.2%の株式を保有しているので、結果はミエミエです。反対する株主は、会社法785条による反対株主の株主買い取り請求となりますが、今回提示あった1700円を上回る金額を得ることは困難と思います。何故なら、次のNCGの株価チャートからすれば、1700円で公正(文句は言えない)とされると思いますから。(取締役会は意見書も取得していますし)

2007108603_t

シティがNCG株式の1株1700円でのTOBを発表したのが3月14日でした。チャートでは、発表と同時に1700円に張り付いたのが見れます。そして、つい最近は1400円近くまで下がってきて、再び1700円での株式交換の発表があったので、また1700円近くに上がりました。

株式交換の結果取得するCitiGroup Incの株式(C株)は、次の計算式によります。買い取り請求で支払われる金額は、1700円から手数料相当を差し引いた金額になると私は思うのですが。

CitiGroup Incの株式数=NCG株式数 x 1700円 ÷ C株式価格の円換算値

債権者保護の手続きもあり効力発生日は2008年1月であり、多少時間もあることからC株価格が58ドル以上に上昇または37ドル以下に下落すれば、それぞれを換算値にするとしていますが、10月5日の株価が48.3ドルでしたから、プラス・マイナス20%はあります。26ドルを下回った場合、株式交換取りやめのオプションがCJHに発生するとなっていますが、特に問題はないと思います。ちなみに、CitiGroup Incの株価チャートは以下です。

Sharecchart200710

CitiGroup Incの株式は、東京証券市場にも上場するとしており、株主にとっても特に不都合が生じるとは今のところ思えません。シティに取ってメリットかも知れないと思うのは、端数処理のための支払いや、反対株主の買い取り請求のための支払いを除けば、キャッシュ不要の取引です。即ち、5400億円程度の取引が新規株式を発行により実行されることとなります。結果、CitiGroup Incの普通株発行株式数は2%弱増加する程度です。

3) 税務面の扱い

CJHにとってどうなるかは省略します。

個人株主にとっては、所得税法57条の4 (株式交換等に係る譲渡所得等の特例)に、2007年3月の改正で「株式交換完全親法人の100%親会社の法人の株式」が課税の繰り延べのケースに追加されましたので、とりあえずは非課税です。株式交換完全親法人の100%親会社の法人には外国法人も含まれます。なお将来、CitiGroup Incの株式を売却した時に取得原価がNCGの株式の取得原価を基として売却益を計算することとなります。

CitiGroup Incの株式は上場株式ですからNCG株式となんら変わるところはないし、上場株式の税率50%優遇の租税特別措置法37条の11に規定された期限である2008年12月以降の売却となっても、所詮はNCG株式より不利になることはないでしょう。但し、C株の値動きによる差益・差損はべつですよ。何も起こらないとは言い切れませんので。例えば、メリルリンチですが、ブルームバーグ・ニュース 10月5日 米メリル:7-9月期に評価損50億ドル、6年ぶりの赤字決算にとのニュースもあります。

法人株主の場合は、法人税法2条①十二の十六の適格株式交換に該当することから、簿価による引き継ぎが行われ、課税所得は発生しない。

ところで、いつの間にかというか、当然というか、シティはNCGの投資ルートを変更していたのですね。ここに、TOB完了直後の2007年4月27日のプレスリリースがありますが、TOBによりNCG株を取得したのは、米国デラウェア州のシティグループ・ジャパン・インベスツメントLLCなるCitiGroup Incの米国にある子会社でした。株式交換は双方とも日本の会社でなければ出来ません。それとTOBで取得した株式は56.15%でした。それまでCitiGroup Inc.が保有していたNCG株式4.93%と合わせて61.08%となりました。従い、その後6.12%を買い増ししていたこととなります。TOBを発表した段階から2/3以上を取得し、子会社にする計画であったのだと思います。

税務のことで、一つ付け加えると、反対株主の買い取り請求は、通常の株式譲渡と同じ扱いとなります。端株処理による金銭の受領についても、課税対象ですが、最大でも売却額は7千円にならないはずです。

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2007年9月12日 (水)

安倍首相の辞任(その3)

ついにその3を書いしまいます。

安倍首相の辞任について、メディアも様々なことを書いていますが、私は、次のReuter、New York TimesとWashington Postを見ました。

Reuter :Japan PM Abe quits after year of scandal
New York Times : Japanese Premier, Losing Support, Resigns
Washington Post : Japanese Prime Minister Abe Will Resign

New York TimesとWashington Postは、登録が必要なはずで、一応続きを読むに入れておきます。

3メディアの記事について、

Reuterの記事が指摘している点では、日本の株式市場と円為替レートに対する影響ですが、タダでさえサブプライムローンに端を発して、株安、円高となっていますが、Reuterの記事のように、マーケットはその影響力以上に雰囲気で動くことが多く、やはり株安、円高が今以上に進む可能性が高いと私も思います。

次のNew York Timesの記事に関連してですが、「Opposition politicians have suggested that Japan has refueled American vessels that were involved, not in Afghanistan, but in Iraq. In addition, they have said that Japan’s air force — which has been transporting American troops between Kuwait and Baghdad — has clearly overstepped its stated mission of engaging in humanitarian activities.」の部分ですね。テロ対策特別措置法延長にあたっては、この「イラク戦争に関係する艦艇への燃料補給疑惑」と「米軍の武器輸送従事疑惑」について否定する説明とその担保についてが、従来以上に国会で求められるのだろうなと思うのですが。

Washing Postの記事に関しては、「Though Aso is considered a front-runner to succeed Abe, it is not clear whether he has the political clout and popular support to stop the LDP's slide in popularity.」の「麻生幹事長が次の総理大臣になっても、自民党の任期下落を食い止めることが出来るのか不明である。」についてです。どなたが、次期総理大臣に就任されるか分かりませんが、自民党にとって相当厳しいだろうと思います。やはり、政界再編でしょうか?

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2007年8月 9日 (木)

ブルドックソースは、これでよかったのか

ブルドックソースのスティール・パートナーズに対する買収防衛策に対して最高裁判所の決定が8月7日に出され、ブルドックソースの新株予約権の無償発行とスティール・パートナーズからの396円での同時買い戻しが適法であると確定しました。

最高裁の決定文がWebに掲載されたのは、今回極めて短期間であり、最高裁に敬意を表します。下記に東京高裁、東京地裁の決定文もあわせリンクを紹介しておきます。

8月7日 最高裁判所第二小法廷 決定文
7月9日 東京高等裁判所 決定文
6月28日 東京地方裁判所 決定文

私が今までに本件について書いていたエントリーは次のものです。

7月15日 スティール・パートナーズに対する東京高裁の決定
7月 4日 ブルドックソースの買収防衛策
6月29日 ブルドックソースの第1戦勝利
6月26日 ブルドッグソースの買収防衛策に思う

最高裁決定文に関しては、他のブログでも多く書かれており、私は経営コンサルタントとしてブルドックソースの買収防衛策について、どう思うかを書いてみます。

1) ブルドックソースの買収防衛策は正しかったのか

「正しい」か「間違い」であったかは、簡単ではありません。「法的に、問題はない。」と言い切れます。しかし、法的に問題がなければ、それで正しかったと言えるのかは、検討を要します。例えば、薄型テレビを30万円で購入した。でも、別の店で全く同じ品物を25万円で売っていた。また、更に別の店では店頭に展示をしてあったことを理由に20万円で売ると言ってくれた。どの選択が正しいのでしょうか?法的には全て適法です。企業であれば、A社、B社、C社いずれから購入するのが、最も正しいのでしょうか?価格のみならず品質や、将来性、その他の面での協力度等あり、単純ではないはずです。

私が、一連のニュースの中で一番驚いたのが、このブルドックソースの平成20年3月期第1四半期報告書です。その中での、次の一文です。

3)特別損失の発生
平成19年8月7日開催の取締役会決議に基づき、①非適格者から取得した自己新株予約権の消却による自己新株予約権消却損及び②財務アドバイザー報酬・弁護士費用等の係争費用を合わせ約28億円の特別損失が見込まれます。

スティール・パートナーズからの新株予約権購入金額が21億円ですから、7億円が財務アドバイザー報酬・弁護士費用等となるわけです。アドバイザーに対する報酬が7億ですから、すごい金額ですが、ブルドックソースの2007年3月期連結ベースの営業利益9億円、経常利益10億円、税引後純利益7億円、期末従業員数366人と比較しても巨大な金額となります。

ブルドックソースは、スティール・パートナーズへの支払いのため、短期借入れ8.5億円、長期借入れ8億円の合計16.5億円の借入をしました。返済が必要な資金です。年間純利益額が7億円であれば、2.4年分です。年間配当総額を約4億円と発表しており、配当後の繰越利益剰余金で考えれば5.5年相当です。但し、これは既に借入を実施した16.5億円をベースとした計算であり、28億円で考えれば、4年間と9.3年間になるのであり、これ以上の出費は無理があると思う次第です。

2) 28億円の出費は必要であったのか

ブルドックソースの買収防衛費用は28億円であったのです。その結果として、何が得られたのでしょうか?スティール・パートナーズは、この8月8日付のスティール・パートナーズの発表にあるようにTOB価格を1,700円からその四分の一の一株当り425円に引下げました。当然このスティール・パートナーズのTOB価格引き下げも合法的であり、一方TOBの買い取り資金としてブルドックソースから21億円を受領したのであり、普通に考えれば馬鹿なゲームをしているとしか思えないと感じます。

最高裁は、「議決権総数の約83.4%の賛成を得て可決された」という事実とその手続きに瑕疵がなかったことを重く見てスティール・パートナーズの抗告を棄却した一番の理由と私は決定文を読んでいます。一方、83.4%の賛成があるのであれば、株主はTOBに応じるはずがなく、経営者である取締役は自らの主張を株主にスティール・パートナーズのTOBに応じないように訴えることが本筋であると思います。

ブルドックソース取締役会は株主総会における2/3多数決の特別決議として提案したのであり、むしろ、このことの方が、変であると感じてしまいます。2/3が賛成するのであれば、最大1/3の株主しかTOBに応じないのであり、株主に対して取締役・取締役会の主張を記載した書面を株主総会の案内と同時に送付し、株主総会においても、スティール・パートナーズのTOBに対する取締役・取締役会の考え方や今後の経営方針を説明するのが本来の姿と思います。そうすれば、28億円の無駄使いをしなくても良かったのではと思います。

もし、私が経営コンサルタントを引き受けているとするなら、タダではありませんが、7億円もの報酬は必要ありません。株主に対する誠実な説明を勧めていたと思います。そして、言ったでしょう。「スティール・パートナーズなど恐れずに会社経営に邁進しなさい。株主、従業員、ユーザー、取引先のために会社業務に正しいことを行っていれば何も怖くはありません。」と。

3) 今後のリスク

「法廷闘争には勝ったが、ビジネスには負けた。」というようなことも、現実には生じます。スティール・パートナーズとのことも、これで終わったわけではなく、新しいステージに移っただけと思います。

例えば、スティール・パートナーズから21億円で買い戻した新株予約権の償却です。この8月7日付ブルドックソース発表 特別損失の計上および業績予想の修正に関するお知らせでは、「関連費用の合計額として約28億円を見込んでおり」と記載していますが、業績予想では連結ベースでの年間純利益減少額14.8億円です。これは、税効果を見込んだことからと思いますが、そうであれば新株予約権の償却費についても税効果が入っている計算と思います。

新株予約権の償却とは、何であるかですが。無償で発行して、21億円の価値をブルドックソースが付けました。そして、21億円を払って入手したら、今度は無価値だと言ってゼロにする、即ち償却を行いました。無茶苦茶勝手ですよね。勿論、ブルドックソースの考え方によれば、それなりの理論・理屈はあるわけで、そこまで否定するつもりはありません。しかし、税の観点ではそんな勝手なことは許されて良いはずがありません。税は、公平に徴収しなくてはいけません。税に不公平があれば、それを逆手にとって、「どうして俺はダメなのだ!」と言う輩が出てくるはずです。税は、税法が公平であるのみならず施行・徴収も公平でなくてはならないのです。

そう考えると、同じ物をある時は21億円だとし、ある時は0円であるとして、21億円の損失相当の8億円税を安くしろと言うのが通るのでしょうか?認めて良いのでしょうか?私は、税務署は21億円の損金扱いが可能であるなんて言っていないと想像します。

4) アドバイザーの使い方

アドバイザーの使い方を間違うととんでもないことになってしまいます。TOBだから証券業者や弁護士に任せておけばうまくやってくれるはずだと思ったら大変な間違いです。弁護士は法について調査し、アドバイスをすることはできます。でも、ビジネスについてとなると、ビジネスとは全分野を見渡して判断を必要とすることから無理があります。まして、細かく言えば、法という分野だけで見ても一つのことについて様々な見方ができます。そして、どれをとっても、リスクゼロではないのです。大きいか小さいかはあります。確率もあります。

そんなことを思いつつ、ブルドックソースの取締役名簿を眺めてみました。すると取締役で何とか担当となっていないのは代表取締役の池田章子氏のみです。連結でも従業員数366人の会社ですから、経営に専念する取締役をおきたくない気持ちは解りますが、それなら8人もの取締役は不要と思います。代表取締役が営業担当であり、セールスのことと理解しますが、2007年3月期連結販売一般管理費81億円のうち32億円が販売促進費です。業界の特殊性があるので、細部の議論はしませんが、これで会社としてのガバナンスを、どのようにして確保していたのですかと疑問を抱きます。

私の想像ですが、だからスティール・パートナーズは狙ったのだと思いました。なお、誤解を避けるために一言追加をさせて下さい。弁護士、アドバイザーに対する報酬7億円が高すぎると言っているのではありません。依頼された仕事をしたのですから、それなりの報酬を得るのが当然だと思います。高い・安いは仕事量のその中を知らないのでコメントすることが出来ません。ブルドックソースの従業員の中(例えば、法務部)に外部アドバイザーの起用の仕方に経験豊富な方がおられれば、ずっと安い金額で済ませること出来たはずと言いたいのです。もし、社内にいないのであれば、信頼しておられる弁護士や会計士に相談されてビジネスアドバイザーの起用を考えるの良いと思います。場合によっては、私が引き受けることも可能かも知れません。

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