2018年9月30日 (日)

旧優生保護法を考える

旧優生保護法(1948~96年)下での不妊手術強制について1100万円の国家賠償損害を求める訴訟の第1回口頭弁論が28日、札幌地裁であった。

朝日 9月28日 強制不妊「57年苦しんだ」 原告が意見陳述 札幌地裁

朝日の記事には、『「57年間、手術のことを誰にも言えず、一人悩み苦しんできた。裁判で勝っても私(の人生)が戻ってこない。国の誤った法律で人生を狂わされる被害者を出さないためにも、国に責任を認めて謝罪してもらいたい」と声を震わせながら、意見陳述した。』とある。

本当に、この意見陳述の通りだと思う。一方、本問題は、多くの問題を含有しており、多面的に、見る必要があると考える。

1) 国家賠償

国家賠償法では、国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する定めている。公務員は、法に従って職務を実施する。立法院の国会議員も公務員に含まれる。

本件の場合の過失とは何であり、国家賠償の対象になり得るのかを考える。

このことについての一つの参考が「らい予防法」違憲国家賠償訴訟と考える。熊本地方裁判所の判決では、遅くとも昭和35年には、らい予防法の隔離規定の合理性を支える根拠を欠く状況に至っており、その違憲性が明白となっていた。遅くとも昭和40年以降に新法の隔離規定を改廃しなかった国会議員の立法上の不作為につき、国家賠償法上の違法性及び過失を認めるのが相当であると認定し、国のハンセン病患者に対する政策の誤りを認め、国に対して損害賠償を命じた。

大阪泉南アスベスト訴訟では、平成26年10月9日の最高裁判決において、昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間、国が規制権限を行使して石綿工場に局所排気装置の設置を義務付けなかったことが、国家賠償法の適用上、違法であると判断された。厚生労働省は、昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事した和解手続を進め、損害賠償金を支払うこととした。(厚生労働省の発表

国家賠償の対象となる可能性はある。しかし、そのような判決が得られるとは限らない。

2) 任意手術と強制手術

このブログの文末に優生保護法の抜粋を掲げた。法律では、特定の場合に限り、人工妊娠中絶は指定医により可能としたのである。1948年の終戦直後のベビーブームの最中に議員立法により制定された法律で、当時は妊娠手術の結果、母体の生命が失われることもあったようである。

なお、現在母体保護法があるが、現在の母体保護法とは優生保護法の改正結果であり、法律の名前も母体保護法と改名されたのである。現在では、出生前診断をする人もあり、その結果、場合によっては人工妊娠中絶を選ぶ人もいる。この場合も、母体保護法による人工妊娠中絶であり、旧優生保護法第3条の任意手術に相当する。

現在国家賠償で争われているのは、優生保護法第4条による強制手術の場合である。悪質疾病の遺伝防止と母性保護のためには、医師の判断と地区優生保護委員会の決定により、本人の同意を得ずとも人工妊娠中絶が実施できるとした。

3) 本人の同意

第4条の強制手術により、本人の意向とは無関係に人工妊娠中絶の申請ができた。しかし、第5条には申請があったとき及び手術の決定がなされたときに、申請者及び優生手術を受くべき者に通知すると定められている。

この手続きが正しくなされていなかったのだろうかとの疑問がわく。都道府県優生保護委員会で事務手続きをしていたのは、都道府県の公務員であった。公務員は、実直に職務をこなしており、通知がなされなかったとは考えがたいのであるが。

おそらく、親が申請をし、親宛に通知が手渡された。子供は、知らされていないというのがあるのではと思う。日本の社会が、特定の価値観に支配され障害児・障害者に冷たく、親のたたりが・・・のような悪質遺伝は絶つべきであるとの考えで、障害児を持つ親に対して無言のプレッシャーを与えていたと思う。有言プレッシャーも中にはあっただろうし、福祉制度が充実していないと、親族・近隣への依存も大きく、その中にはトンデモ発言をする人もいただろう。

4) 守秘義務

現在の母体保護法にも27条に守秘義務があるが、優生保護法も同様であり、都道府県優生保護委員会が関係していることから、義務が課せられる人も多く、その職を退いた後においても守秘義務が継続する。

法律による守秘義務により真実解明・実態解明が難しくなっている面があると思う。だからこそ、国家賠償なのだろうと思うが。

5) 立法措置

立法措置による救済は考えられる。対象者の決め方を、どうするかはあるが、救済は可能と考える。障害の状態になった人には障害者年金が給付され、公的年金として支払われる。保険料を納付していることが給付の前提であるが、納付義務がない20歳未満に障害者となった場合でも、20歳前傷病による障害者年金が受け取れる制度がある。

損害を受けた賠償としてではなく、社会的な扶助制度としての措置である。立法措置が適切になされなかったとの議論は水掛け論が生まれるであろう。社会的な制度としての救済を講じるのが私は適切と考える。

6) 私の感想

私たちの社会には、判断の誤りが多くある。その時は、良かれと思ったことが、悪い結果となる。思ってもみなかった悪い結果が、一部には生じることは、多々ある。過去を正しく分析・評価して、将来に同じ失敗を起こさないことの重要性である。結果についても、単純に善し悪しを判断できないことも多い。あるいは、中途で見直しを行い、修正しなかったことの失敗もある。

旧優生保護法の不妊手術強制についても、歴史的な面からも多面的に分析・評価し、私たちの社会の将来に役立つ用にすべきと考える。

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優生保護法(立法時の条文)抜粋

(任意の優生手術)
第三条 
医師は、左の各号の一に該当する者に対して、本人の同意並びに配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、任意に、優生手術を行うことができる。但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱者については、この限りでない。  
(一号~五号は省略・・・特定の疾患の罹病、母体の健康への懼れ、暴行による姦淫・妊娠等・・)

(強制優生手術の審査の申請)
第四条 
医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹つていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、前条の同意を得なくとも、都道府県優生保護委員会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。

 

(優生手術の審査)
第五条
 都道府県優生保護委員会は、前条の規定による申請を受けたときは、優生手術を受くべき者にその旨を通知するとともに、同条に規定する要件を具えているかどうかを審査の上、優生手術を行うことの適否を決定して、その結果を、申請者及び優生手術を受くべき者に通知する。
2 都道府県優生保護委員会は、優生手術を行うことが適当である旨の決定をしたときは、申請者及び関係者の意見をきいて、その手術を行うべき医師を指定し、申請者、優生手術を受くべき者及び当該医師に、これを通知する。

(再審査の申請)
第六条 
前条第一項の規定によつて、優生手術を受くべき旨の決定を受けた者は、その決定に異議があるときは、同条同項の通知を受けた日から二週間以内に、中央優生保護委員会に対して、その再審査を申請することができる。
 前項の優生手術を受くべき旨の決定を受けた者の配偶者、親権者、後見人又は保佐人もまた、その再審査を申請することができる。

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2018年9月19日 (水)

ふるさと納税 言葉通りの納付先自治体の選択制度にすべき

朝日新聞の次の記事がありました。

朝日 9月19日 ふるさと納税の返礼品規制 変更迫られた自治体は恨み節

ふるさと納税が文字通り、納税者が自分の地方税の納付先を自らの選択で選んで、納付できる制度であるなら、私は反対をしません。

現行制度は、税金の無駄使いとなっています。ふるさと納税をすると、ふるさと納税として寄付をした金額のうち2,000円を超える部分は、住民税と所得税が安くなり、実質負担は2,000円で済むというおかしな現行制度に反対です。

本来なら、住民税が安くなった分、実際に住んでいる地方自治体と国政府がふるさと納税額と2,000円との差を負担することとなるが、実は、そんな制度ではなく、地方交付税で国政府は地方自治体(地方交付税不交付団体でない限り)に全額補填する。何のことはない、国民の税金が巡り巡っているだけで、負担は国民。利益は、ふるさと納税の納税者とそれを受領した地方自治体、そして関連する事業者です。

存続させるなら、言葉通りに、自分の住んでいる地方自治体に納付する地方税の一部を、自分の選択した自治体に納付する。そのことにより、その選択した自治体の税収が増加し、その地方の活性化となるという本来の姿にすべきと考えます。

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2018年9月10日 (月)

ドルガバ流雇用契約は、どう評価するか

働き方改革においては、働き方が多様化し、様々な働き方が増えていく。安倍内閣の政策がどうあれ、働き方の多様化は進んでいくことと思います。次のニュースも働き方改革という観点で考えれば、どのようになるのだろうと思いました。

デイリー新潮 9月6日 マドンナ御用達「ドルチェ&ガッバーナ」3億円サギ事件 日本社長は自宅仮差押えに…

偽メールを信じて送金をした結果、280万ドル(約3億1千万円)は取り戻せず、解雇となり更に損害賠償訴訟を提起された。

記事には、日本法人元社長の知人の話として次の発言があります。

代表取締役であろうと、気に食わなければ辞めさせるのがドルガバ流なんでしょう。でも菅井さんは全然納得してなくて、ブラック企業でひどいパワハラを受けたという認識。実際、個人が責任を負うべきことではありませんから

でも、社長と言っても株主ではないし、会社に対する賠償責任金額の上限を契約で取り決めていたわけではないはず。

会社からすれば、怪しい内容のメールを受信したなら、発信人に確かめるのがすべき行動である。「税務上の理由で、社内にも極秘なんて」書いてあれば、通常だと、いよいよ怪しいと思うのだが、もしかしたら、この会社は税逃れが多く、日本法人にも脱税を目的とした多くの偽装や秘密書類があるのでしょうか。

働いている場合は、責任は個人にはなくすべて会社にありとするのは、これからの時代には私は合わないと思います。どのような場合にも、気をつけるべきだし、特に自分自身については気をつけるべきと思います。

このJALのニュースは昨年のことでしたが、「届いた電子メールは、偽のアドレスだったが、パソコンには担当者と同一のものが表示されていたため、信用した」とあります。

振り込め詐欺は、老人が対象とは限らず、また電話ではなく電子メールもあり得る。働き改革で、そうなるのではなく、ICT(Information Communication Tecnology)の進化に対応できていないと働く場が狭くなるし、働くのが難しくなると言うことのように思えます。

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2018年9月 7日 (金)

倉敷市真備町の水害について真実が知りたい

西日本豪雨での倉敷市真備町における水害では、約50人の方が亡くなられ、悲しい災害でした。

せめて避難の開始が少しでも早かったら少しでも犠牲者が少なかったのではと思う次第です。本日の朝日新聞の「でんでんご」という連載での次の記事で思ったのです。

朝日 9月7日 (てんでんこ)西日本豪雨:17 市長の苦悩

有料記事の部分に入ったその冒頭ですが、次のようにあります。

倉敷市長、伊東香織(いとうかおり)(52)のいつになく力強い声が、スピーカーから雨の降り続く真備町地区に響く。呼びかけは避難準備・高齢者等避難開始を発表した7月6日午前11時半に始まり、地区の北側に避難指示を出した翌7日午前1時半すぎまで続いた。

真備町地区で小田川の堤防決壊があったのは7月6日の翌日7日の午前6時52分であった。これまでの報道だと、真備町地区の全域に避難勧告が出されたのは6日午後10時頃であり、更に北側の今回浸水被害があった地域に避難指示が出されたのは7日午前1時半であった。

朝日の本日の記事は、6日午前11時半の避難勧告であり、避難勧告とは強制力は無く避難を呼びかけるだけだが、市長自らがスピーカーで呼びかけたのだとしたら、倉敷市職員を初め消防団員や関係者一同が水害の危険性を、市長が呼びかけた時点で認識していたと思うし、危険性について一致した認識だったと思う。6日午前11時半から翌7日午前6時52分までの19時間までの間、関係者の対応は、どうだったのだろうかと思う。

しかし、現実には50人の死亡者が出た。

当時どのように関係者が考え、どのように行動したのか、調査解明し、反省すべき点とやむを得なかった点を分析し、他の地方自治体や住民・市民・国民に広く公開し、今後は死亡者が一人でも少なくなれば思う次第である。断片的報道より事実の調査と分析が重要と考える。

なお、このブログで私が、本件に関して書いた参考記事はこれです。

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2018年8月 2日 (木)

ダム決壊の可能性

7月25日のこのブログで野村ダムは、ダム決壊を防ぐために放流したのではないことを書いた。一方、7月23日にラオスでダムが決壊し、死亡者・行方不明者も発生し、多くの人々が被害にあうという事件があった。

日経 7月25日 ラオスのダム決壊、19人死亡 3千人以上が救援待ち

1) ダムは決壊するか

人間が作った物である以上は、壊れて不思議ではない。一方、野村ダムのようなコンクリートダムは、決壊の可能性はまずないと思って良い。では、決壊可能性があるダムはと言うと、フィルダムと称するロックフィルダムのようなダムで、ダム堰堤を越えて水が流れれば、水流がダム本体を壊し、ダム決壊が生じる。そのため、フィルダムの場合は、満水位をダム堤頂より下げてダム堰堤から越流しないように安全性を高める設計としている。

次の表は、利根川上流域に位置するロックフィルダムの奈良俣ダムとコンクリートダムの矢木沢ダムの比較である。奈良俣ダムは堤頂より8m低い位置を洪水満水位としており、これ以上高い水位では貯水ができず、水は洪水吐ゲートを乗りこえ越流する設計となっている。矢木沢ダムも余水吐水路がダムの横に位置する特殊な設計であるが、洪水満水位は堤頂より1.5m低いだけである。

ダム名奈良俣ダム矢木沢ダム
ダム形式 ロックフィルダム コンクリートアーチダム
ダム頂高(堤頂標高) 158m(896m) 131m(856m)
最高水位 150m(888m) 129.5m(854.5m)
最低水位   62m(800m)   71.5m(796.5m)
有効貯水容量 85,000,000m3 175,800,000m3
湛水面積    2.0km2    5.1km2
有効貯水容量 85,000,000m3 175,800,000m3
集水面積    95.4km2    167.4km2

更に例を出すと、鬼怒川上流の五十里ダム(コンクリート重力ダム)の場合は、ダム堤頂594mに対してそれより3m低い591mが洪水満水面である。黒部第四ダムの場合は、特別な洪水吐ゲートはなく、湖面が1,448mより高くなると水が自然越流する設計である。

なお、フィルダムでも農業用水用のため池で川の土手と同じような構造のアースダムがある。アースダムでも管理が行き届いていれば問題ないが、場合によっては崩れる可能性もあり、万一越流したら決壊する。なお、どのようなダムでも、管理者はダムの変形が生じていないか常時測量を行い、危険防止に努めている。

2) ラオスのダム事故

悲しい事件であるが、プロジェクトは410MWの Xe Pian-Xe Nam Noy水力発電プロジェクトであり、発電する電力の90%はタイへの売電目的であり10%はラオス電力公社へ販売する。韓国企業・タイ企業・ラオス企業が出資する民間水力発電事業である。総工費は約10.2億米ドルで、完成予定は2018年11月であった。(参考ここ他)建設されているダムはXe Pian(セピアン)ダムとXe Nam Noy(セナムノイ)ダムの2つであり、それぞれ有効貯水量は23百万m3と885百万m3である。Xe Pianダムの水をXe Nam Noyダムに流し込み、Xe Nam Noyダムが位置する反対側から14km水を引きこんで、732mの水圧鉄管で落として落差630mを得て発電するのである。なお、Xe Pianダムは高さ47m、Xe Nam Noyダムは75.5mで湛水面積は2.7km2と45.8km2である。Xe Nam Noyダムは、有効貯水容量で矢木沢ダムの約5倍であるが湛水面積では約9倍である。

そこで決壊したダムであるが、このReuterの記事は,高さ16m、長さ770mのサドルダムD(補助ダム)と報じている。環境評価影響報告書は、3-13ページの”3.3.6 Saddle Dams"にXe Nam Noyダムには、貯水地の西側に3つのアースダムによるサドルダムが必要であると記載されている。

Xe Nam Noyダムの補助アースダムが崩壊したと考えられる。又、このプロジェクトの位置は北緯15度、東経106.6度付近のカンボジア国境から50km程度北へ入った地点である。参考地図としてはこの地図があるが、相当複雑である。Xe Nam Noyの水は北に流れ、東に曲がってXe Kong Riverとなる。一方、崩壊したと考えられるアースダムの水は、西に流れるXe Pian Riverに流れ込んだ。本来の水でないXe Nam Noyの水が流れたのである。

アースダム崩壊の場合もその前兆があったと思われる。豪雨で手の打ちようがなかったとの話もある。アースダムを採用する事が適切であったのかも問われなければならない。そもそも、ダムの現場は高原である。400世帯以上の約2000人の移転が必要であった。ダムにより発電した電力の90%は外国に行く。電力輸出は良いが、それがラオスの人々の恩恵に繫がり、環境影響は最小である事が必要である。このような事故を起こす事は許されない。

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2018年7月29日 (日)

山林の豪雨崩落への備え

西日本豪雨の記憶が生々しく残っているが、また台風12号がやってきた。気になる一つが、山林の豪雨による崩落である。自然災害と言ってしまえば、それまでであるが、人災が関係しているなら、人災部分は取り除く必要がある。日経に次の記事があった。

日経 7月22日 山林 放置の危うさ(風紋)

平成29年度の森林・林業白書には、森林の整備・保全の章に「我が国の国土面積3,780万haのうち、森林面積 は2,508万haであり、国土の約3分の2が森林となっている。」とある。緑に恵まれた美しい日本である。実際、海外から日本に到着すると、緑の多い国に戻ったとほっとした事が多かった。

日本の森林は58%が私有林とのこと。森林が金を生む優良資産であるなら、問題はないとも言えるが、間伐等手入れをするにも林道から離れており、コストがかかる。手入れは不十分で、その結果、価値が低い立木しか育っておらず、伐採・運搬して販売するにも採算が取れず、放置せざるを得ない状態の森林も多いと思う。土壌の侵食や流出を防ぐ機能は低下し、洪水緩和や水源涵養機能も低くなる。

資産価値を持たなくなった場合、相続が発生しても、相続登記は行われず、所有者不明に近い状態となる。山林の場合、住宅地、農地よりも土地境界が不明確な事が多い。民法717条で損害賠償義務を訴えられる恐れがあるなら、相続したいとは思わない。

森林法は農林水産大臣による、森林・林業基本法の基本計画に即した、保安施設の整備の状況等を勘案した全国森林計画を、5年ごとに、15年を一期とする計画立案義務、都道府県知事は、全国森林計画に即した地域森林計画を、市町村は、その区域内にある地域森林計画の対象となつている民有林につき、五年ごとに、10年を一期とする市町村森林整備計画をたることを定めている。

災害対策と国土の保全の面からも、税金を使ってでも、森林・山林を守っていく必要性を感じるのである。但し、実情を完全には把握できておらず、そのために、更に不安に思う面もあるが。

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2018年7月27日 (金)

オウム事件全死刑囚の刑執行終了

オウム事件は悲しい事件でしたが、このニュースも悲しい思いに陥ります。

日経 7月26日 オウム事件死刑囚、残る6人の刑執行 全員の執行終了

麻原彰晃を尊士と仰ぎ、死刑判決を受け、死刑の執行を受けた12人。不幸な星の下に生まれた不幸な人たちだったと思う。幸せな人生、自分は恵まれていると思っていたならば、オウム真理教に救いを求める事もなかっただろう。

7月23日の日経BPの記事であるが、このインタビュー記事で、バフェッリ准教授は「小さな、1つのヨガ・グループとして始まった教団に何が起き、なぜ大きな犯罪を起こすことに至ったのか・・」と述べている部分がある。この問いかけに対して、研究が為されて良いように思った。

元信者達は、現在どうしているのだろうか?多くの自治体では、「オウム・アレフ信者お断り」で通常の生活はできていないのだろうと想像する。

死刑執行の結果としては、何も変わっていない。

やはり、自分は死刑制度反対論者なのだと思う。人の命を奪う事は神にしかできない。人は神になってはならない。

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2018年7月26日 (木)

地方自治体の合併と豪雨災害

朝日新聞の論壇時評に慶応大学教授の小熊英二氏が書かれた「豪雨災害を機に 地方行政の単位、見直す時」というのがあった。(無料で読めるのは、冒頭だけですが、登録すれば1日1記事が読むことができる記事です。)

朝日 7月26日 豪雨災害を機に 地方行政の単位、見直す時 歴史社会学者・小熊英二

豪雨災害があった倉敷市真備町も2005年(平成17年)に合併により真備町から倉敷市となった。市の人口集計表によれば、2018年5月現在の人口は倉敷市全域で482,909人であり、真備地区は22,788人である。市町村の合併の特例に関する法律(「旧合併特例法」)に基づき、平成11年から17年まで多くの地方自治体の合併があった。真備町の合併(倉敷には同時に船穂町も編入された。)も、平成の大合併の一つであった。平成11年3月当時3,232あった地方自治体の数は今やその半数近くの1,718程度のようである。

地方自治体の合併が悪いと決めつける事はできないが、同時に良い面ばかりとは限らない。小熊英二氏は、朝日新聞への投稿記事の中では、例えば、次のように述べておられる。

 広域合併は災害に様々な影を落としている。合併された町は、町議会や町役場がなくなり、意思決定機能を失う。物事を決めるのは、遠く離れた中心街にある県庁や市役所、市議会などだ。結果的に復興計画なども、地域の実情と乖離した巨大土木工事などになりやすい。
 とはいえ、市役所職員を責めるのは酷でもある。日本は公務員の数が少なく、人口千人当たりの公務員数は英仏やアメリカの半分程度だ。そのうえ広域合併で人減らしを進めたので、非正規職員を含めて業務に忙しく、合併で編入された周辺地域には行ったことがない職員も多い。この状況で、被災地域の事情を十分に理解するのは難しいことだ。

災害から逃れる事が難しかった場合でも、災害を軽減する事は可能であった可能性は大いにある。手段は、ダムや堤防のような土木構築物だけに限らない。地方自治体が災害軽減に対して大きな役割を果たせる可能性はある。倉敷市真備町の場合、もし合併していなければ、真備町役場は、真備町の境界から上流1kmに満たない距離にある小田川の水位観測所の水位を必死になって見続け、例え深夜であっても、避難を呼びかけていたかも知れないと思う。真備町の場合が、どうであったかは知らないが、合併に際して、併合される市町村役場は支所と名前が変わり、勤務する地方公務員の数は減少し、住民票や国民年金・国民健康保険・後期高齢者医療保険等の住民サービス関係が主体となってしまうことが多いと理解する。

日本は公務員の数が少ない国であると私もしばしば聞く。政府や地方自治体でないとできない仕事がある。一方で、政府や地方自治体の公務員数は数が多く削減できると声を大にして発言している政治家もいる。どちらが信用できるか?公務員自身も、実は、これだけ重要な仕事をしているのだとアピールすると共に、本当にそのように重要な仕事をし、その重要な仕事をするにあたっての適切な人員数や予算を国民・住民に示し、安心できる住みやすい豊かな社会を作っていくよう尽力願いたいと思う。

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2018年7月25日 (水)

ダムは洪水を緩和・軽減するが、無くしはしない

ダムに対する誤解なのか、原子力発電と同様で、安全神話なのかわからないが、ダムは洪水を防いでくれるとの誤解があるように思う。もしかして、ダムに対する反対運動に対抗して、作られた神話なのか、政治家が推進目的で広めた神話なのか、分からないことだらけですが。

そのようなことを思っている時に、このDiamond Onlineの記事 7月25日を読んだ。関西大学の特別任命教授が書かれおられるが、その3ページ目に次の記述があった。

(5)治水ダムの放流による氾濫
 ダムが洪水で満水状態になると、上流から流入する洪水をそのまま下流に流す必要がある。そうしないと、ダムが決壊してしまうからだ。ところが、この操作を実施することを下流住民は知らず、洪水氾濫に巻き込まれてしまった。愛媛県の肱川の野村ダムで起き、大洲市と西予市で犠牲者が発生した。

私の7月19日のブログで書いた事であるが、国交省野村ダム管理所は、午前2時半に西予市に対して、午前6時50分頃にダムが満水となる予想を連絡した。

そもそも、野村ダムの諸元はここにあるが、ダムの堤高60mであり、ダムの基部(基礎岩盤)から35mが設計上での貯水可能最低水面となっている。35mから60mの間が貯水能力となるが、ダムの上から1.8m下がった位置を洪水時最高水位としているので、35mから58.2mまでが貯水容量であり、23.2m水面を上下させる事で、野村ダムの活用可能な貯水容量は0m3から12,700,000m3まで変化する。

野村ダムは、かんがい容量10,200,000m3と水道容量1,700,000m3の合計を総貯水容量12,700,000m3から差し引くと、800,000m3が洪水調節容量となる。しかし、6月16日から10月15日の期間は、ダム水面をダムの基部から53.2mの位置とすることにより800,000m3ではなく、3,500,000m3のの洪水調整能力を持つように運用している。

3,500,000m3のの洪水調整能力で大丈夫かと言うと、野村ダムの諸元は、計画高水流量 1,300m3/sで調節流量300m3/sである。1,300m3/sのダムへの流入はあり得る前提であり、調節流量300m3/sなので、1秒間に1,000m3の割合で貯水量が増加する事があり得る。その場合は、3,500秒で満水となる計算なので、ほぼ1時間で満水となる。このような場合は、計画最大放流量1,000m3/sとなっているので、1,000m3/sの放流をすることもあり得るし、異常洪水流量は2,500m3/sと記載されており、異常時には2,500m3/sもあるとの前提である。

7月19日のブログで掲げたグラフを再度掲示するが、右軸が貯水量であり、8日午前8時に12,728,000m3の貯水量となり、12,000,000m3を超えている。野村ダムはコンクリート重力ダムであり、能力以上に貯水しても決壊はしない。ただ、能力以上に貯水する事はできないのである。午前2時半に市役所に連絡する事の対応で良かったのか、市役所はこの連絡を受けてどう対処したのか等検証すべき課題は多い。しかし、一方で、ダムの刻々と変化する貯水量はWebでも公表されていたのであり、誰もが見る事ができ、各自が自分で判断する事も不可能ではなかったと思う。

Hijikawa20187a

ダムの容量を大きくして、どのような規模で上流から水が流れ込んでも大丈夫なようにすることは不可能ではないだろう。しかし、膨大な建設費となるし、甚大な環境破壊ともなる。適正な規模の適正な開発・適正なダムの建設が重要である。ダムのみで洪水被害を防止するのではなく、情報伝達や適正な堤防の整備や緑化を含めた総合的な取組こそが洪水被害を最小限にする方法である。

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2018年7月23日 (月)

こんなことを倉敷市市長が言ったのでしょうか?

次の朝日新聞の報道です。

朝日 7月21日 小田川の支流、水位計なし 倉敷市長「あれば違った」

7月16日のブログ西日本豪雨から学ぶべきことにおいて、小田川の倉敷市真備町での浸水について書いたのですが、記事にあるように市長が「水位計があれば状況は違ったのではないか」なんて発言したとしたなら、唖然とするばかりです。

小田川が本流の高梁川に合流するまで倉敷市を流れている距離は10.8kmです。その約0.9km上流の地点(小田川の高梁川合流地点からは11.7km)に設置されているのが、7月16日のブログで取り上げた東三成の水位観測所です。この産経WESTの記事7月21日 決壊堤防の応急工事完了 倉敷・小田川は、堤防決壊地点を合流地点から上流3.4kmと6.4kmの地点と述べています。3.4km地点は、末政川が小田川に合流する地点付近であり、その北約600mにまび記念病院があります。いずれにせよ、これらの堤防決壊地点とは、東三成水位観測所から下流5.3kmと下流8.3kmの地点です。

堤防決壊地点より5.3km(8.3km)上流の河川水位という堤防決壊を予測に利用できる貴重な情報を倉敷は保有していた。にもかかわらず、それを利用・活用することなく46人以上の大勢の死亡者を出した。それとも、東三成水位観測所情報は不十分であったのだろうか?私は、そんなことはないと思う。甘い予測でいたのだろうと思う。必要な事は、東三成水位観測所情報は活用できなかったのか、何故多くの死亡者をだしたのかの検証であり、その上で水位観測所が更に多くあったら有効であったのかを検証するのである。

もし、朝日新聞の報道が誤報であるなら、倉敷市は反論を出して欲しい。本当なら、科学的な調査もなく、水位計が欲しいなんて言う市役所にふるさと納税などしたくない。真面目に災害と闘おうとする市町村役場にふるさと納税をしたい。

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