2024年10月 9日 (水)

金銭面からの分析で見る日本の原子力発電

2011年3月の福島事故から13年以上を経過したが、日本の原子力発電の現状について、冷静に分析しておくことが重要と考えました。 分析と言っても、巨大な対象であり、金銭面を主体として分析を試みます。

1) 日本の原子力発電所

日本において原子力発電所を保有している会社は次の表1に記載の10社です。 そのうち、稼働状態にあり、現在発電を行っているの3社で6カ所の発電所です。(本ブログの表はクリックで別ページ拡大表示)

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原子力による発電が、日本において占める割合を現したのが表2です。

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表2の発電量は、発電機が発電した電力の量ではなく、発電所が送電した電力量としています。 揚水発電は水力に含めています。 また、自家発電による発電については、発電して自家消費した電力量と外部送電・供給した電力量の双方を含んでいます。 表2の電源構成割合を2015年以後について示す日本の電源構成の割合の推移グラフを作成しました。

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再生可能エネルギーは、風力、太陽光、地熱、バイオマス、廃棄物による発電としました。 2023年度の再生可能エネルギーによる発電量は200,562,466MWhであり、原子力発電80,283,706MWhの2.5倍でした。

2) 保有会社の原発に関するコスト

表3が、表1に掲げた原発保有会社の原子力発電の発電費(発電原価)です。 上側の表3Aが直近の2023年4月から2024年3月までの1年間で、下側の表3Bは、その1年前の2022年4月から2023年3月までの1年間です。 これら発電費は、各社の有価証券報告書(日本原子力発電は会社概況書)からです。

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様々なことが言えるが、幾つかについて以下に記述します。

2-1) 運転(発電)していなくても、高い維持費・固定費

上の表1の通り、日本全体で稼働している原発は3分の1。 運転・稼働している3社の原子力発電費合計は2023年度8195億円で、2022年度は6590億円である。 これを表1の発電量で割り算して発電コスト単価を計算すると、2023年度関西電力10.04円/kWh、四国電力13.39円/kWh、九州電力9.79円/kWhとなり、2022年度はそれぞれ12.65円/kWh円、10.15/kWh、12.61円/kWhとなる。

発電していなかった7社の原子力発電費の合計は2023年度1兆1270億円、2022年度8204億円である。 10社を合計して、日本全体で1社の原子力発電会社であると仮定して、その費用合計を発電電力合計で割り算して発電コストを計算すると2023年度24.2円/kWh、2022年度27.6円/kWhとなる。

なお、10社合計で2023年度の発電コストが2022年より高いのは、東京電力の原賠・廃炉等支援機構特別負担金2300億円(福島原発の賠償費関係)の影響が大きい。 このことについては、「3) 原賠・廃炉等支援機構負担金(福島事故の賠償支援) 」で更に記述する。

2-2) 原発の安い燃料費

原発とは、ウラン235やプルトニウム239が核分裂する際に発生するエネルギー(熱)を利用し、蒸気を発生させ、蒸気タービンを駆動させ、発電する。 燃料棒と呼ばれている燃料集合体は、原子炉の運転開始後約1年で、その4分の1~5分の1取り替える。 この取り替え分を、燃料費(核燃料減損)として計上しており、火力発電の燃料費に相当する。 取り替え分(減耗分)を金額で示したのが、核燃料減損費であり、火力の燃料費に相当する。 発電した電力量で除して燃料費相当額の単価を計算すると、2023年度関西電力0.79円/kWh、四国電力0.78円/kWh、九州電力0.86円/kWhとなり、2022年度はそれぞれ0.75円/kWh円、0.86/kWh、0.86円/kWhとなる。

参考として、火力発電の場合の、燃料消費量を算出してみる。

資源エネルギー庁の電力統計によれば、発電に使用した石炭は、2024年度湿炭で101,131,690トンであり、LNGの発電消費量は37,814,308トンであった。 石炭火力とLNG火力の発電量は、表2に記載の通り282,223,316MWhと295,206,203MWhであった。 この数字を使って、kWhあたりの平均燃料消費量を計算すると、石炭火力は321g/kWhであり、LNG火力は128g/kWhとなる。

価格については、石炭もLNGも全量輸入であり、通関統計から推定が可能である。 結果、本年(1月-8月)の燃料価格は石炭25,000円/トンであり、LNGは95,200円と得られる。 そうすると、石炭火力の321g/kWhとLNG火力の128g/kWhは、金額で表示すると石炭8.96円/kWhとLNG12.19円/kWhとなる。 燃料費のみで考えた場合、原子力は非常に安いのである。

なお、表3A、3Bで燃料費のすぐ下の行に「使用済燃料再処理等拠出金費」が、更にその2行下に「特定放射性廃棄物処分費」と表示されている。 これについて、2-3)及び2-4)で記述する。

2-3) 使用済燃料再処理等拠出金費

この費用は、電力会社が「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施及び廃炉の推進に関する法律」に基づき「使用済燃料再処理・廃炉推進機構 (NURO)」に対して支払った「使用済燃料再処理等拠出金費」です。 金額はこのように、拠出金単価の発表があり、毎年度決定されている。 NUROは、受け取った拠出金を日本原燃株式会社に全額支払っている。 日本原燃における核燃料再処理代金は、MOX燃料への再処理加工設備が、未だ完成しておらず、全額前受金として計上されている。 2024年3月末の前受金残高は1兆5382億円である。

日本原燃は株式会社である。 株主は表1の原発保有電力会社10社が約90%、その他74社が約10%である。 資本金と資本剰余金合計が5771億円であり、負債は合計2兆8536億円で、そのうち1兆5382億円が前受金である。 一方、年間再処理能力800トンUのMOX燃料加工設備は、2024年度上半期に完成予定であったが、2024年8月発表の結果、2028年3月末竣工・2028年夏頃からの操業開始と延期された。 株式会社ではあるが、核燃料サイクル用のMOX燃料製造を担う国策会社であり、日本の核燃料サイクルの方針の下での会社経営であり、通常の株式会社のようには運営できないことがほとんどと思う。

使用済燃料再処理等拠出金を拠出し、それを電力会社が原子力発電費用として処理することについて、その拠出資金単価の妥当性、あるいは核燃料サイクルへの疑問もあるが、情報公開を正しく継続して欲しい。

2-4) 特定放射性廃棄物処分費

この費用は、電力会社が「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき「原子力発電環境整備機構(NUMO)」に対して支払った拠出金である。 NUMOは、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等を行った後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分の実施等を行う法人であり、この法律により設立されている。

NUMOが受領した拠出金は最終処分業務の費用支出に充てるため指定法人となっている「公益財団法人原子力環境整備促進・管理センター」が資金管理を行っている。 その残高は2024年3月で1兆1241億円となっている。

特定放射性廃棄物とは、使用済燃料の再処理の際に有用物質を分離した後に残存する放射性廃棄物であり、高濃度の第一種とそれ以外の第二種に分類されている。 「最終処分」とは、地下300メートル以上の政令で定める深さの地層において、特定放射性廃棄物及びこれによって汚染された物が飛散し、流出し、又は地下に浸透することがないように必要な措置を講じて安全かつ確実に埋設し、処分することである。

一体、どれくらいの期間で安全と言えるレベルになるかですが、次の図は電気事業連合会の高レベル放射性廃棄物の地層処分というWebページにある図です。 天然のウラン鉱石が放出する放射線のレベルにまで達するには、数万年を要するのです。 

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特定放射性廃棄物処分費は、核燃料再処理の結果発生する廃棄物の処理費であり、再処理の対象でない原子炉や様々な機器・建物・構築物等の廃棄処分費はこれに含まれません。

特定放射性廃棄物処分費に該当しない費用は、表3の4行目の廃棄物処理費または、原子力発電施設解体費になると理解します。 次の工程図は、この東海発電所廃止措置状況の4ページ目にあった工程表ですが、2001年に廃止措置に着手してから20年以上経過するが、未だ原子炉本体の解体には至っていない状態である。 安全が第一であり、原発廃止は時間を要するが、同時に費用もかさむと言えます。

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3) 原賠・廃炉等支援機構負担金(福島事故の賠償支援)

この負担金は、福島事故後の2011年8月に公布された「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」により設立された「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」への支払である。 法の第1条に目的が書いてあるが、(1) 1200億円を超える賠償が発生した場合に賠償のための資金交付等を行うこと、及び(2) 地震、火災その他の災害により原発の廃炉を実施をする際の支援が法の目的であり、機構が担う業務となっている。

法は、表1の原子力事業者10社と再処理会社日本原燃が、機構に一般負担金を納付することを義務づけられている。 表3Aで10社合計1923億円(2023年度)の原賠・廃炉等支援機構一般負担金がこの負担金であり、2011以後納付された金額は合計2兆1008億円である。 負担金等の収入の残余は国庫に納付することになっており、2011年以後に国庫へ納付された納付金合計は2兆8055億円となっている。 一方、国から4340億円の交付金も受けている。

原賠・廃炉等支援機構特別負担金は、東京電力のみ納付しているが、福島事故の賠償等の為に、機構から資金援助を受けたことによる。 2011年以後に東京電力が機構より受けた資金交付額は11兆945億円である。 一方で、負担した特別負担金は7800億円である。 東京電力は、機構に支払う負担金は費用としているが、機構からの交付金の受取は特別利益に計上し、それに見合う費用(特別損失)として原子力損害賠償費として計上したりで非常に分かり辛い。 なお、11兆945億円は巨額であり、東京電力より損害賠償費と除染費用として支払われたのであるが、毎年度の支払額を表4として掲げる。

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11兆円を東京電力は、どのように使途したかであるが、機構の第四次総合特別事業計画(抄)(令和6年4月26日改定。令和6年9月10日軽微な変更) にある項目別賠償額を見ると、次の表がある。

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賠償の支払いは、個人に対する賠償等で2.2兆円、法人や事業関係の賠償で3.3兆円、その他の賠償で2.0兆円であり、賠償額合計は7.6兆円。 これに、除染等で3.6兆円を支出し、2024年2月現在で合計11.2兆円となる。 2024年9月現在で、見込額合計は13兆4千億円となっている。

機構は機構法で設立された法人であり、設立に際して、政府と政府以外の者で出資するとされ、政府70億円と民間出資社12社(表1の10社に加え日本原燃と電源開発)で合計して140億円の資本金である。 機構は、株式会社でなく、株主総会は存在せず、運営委員会の議決により重要事項を決定する。 運営委員は主務大臣の認可を受けて任命される。 機構は、福島原発事故に関連する賠償金支払い支援と廃炉支援をしている。 東京電力ホールディングスに1兆円の出資・資本注入による資金の供与も行っている。 なお、この出資により機構の議決権割合は50.09%となっている。

4) 廃炉費用

「原賠・廃炉等支援機構負担金」は賠償と除染関係であり、廃炉費用は該当しない。 東京電力は原子力損害賠償・廃炉等支援機構に廃炉等積立金として、法55条の3~55条の10により、2018年より毎年積立を行い、同時に廃炉に必要な額を取戻している(参考令和6年9月27日の機構による発表 )。 2018年4月から2024年3月までの6年間に積立てた金額は合計1兆8234億円で、取戻した金額は合計1兆1861億円であり、6731億円が2024年3月末現在の積立金残高となっている。

1兆1861億円は、2018年4月から2024年3月までの6年間に東京電力と機構が適切と認めた金額であるが、2018年3月以前にも廃炉費用は発生している。 機構からの資本注入は、汚染水対策を含め廃炉関係に充当されたと思う。 廃炉、賠償、除染の総額で33兆円(2020年までの期間で11兆円、それ以後に22兆円)必要であるとする次図の概算予想もあった。 (文書のタイトルは第四次総合特別事業計画(抄)で2021年8月4日認定、2023年4月26日変更認定とあり、作成者は機構と東京電力)

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総額33兆円の費用であり、日経 2023年12月15日東京新聞 2024年3月4日の報道のような23.4兆円より10兆円多い33兆円と考えるのが妥当なのだと思います。 

5) 感想

原子力発電について金額面から考えることも重要である。 イメージや感覚での議論で方向性が出されることは、良くない。 原発は、建設地を選定・決定することも容易でない。 しかし、2-4)で書いた特定放射性廃棄物処分のための最終処分地の選定は、それ以上に困難なのだろうと思う。 もしかしたら、処分地が決まらず、地下処分ではなく暫定保管地での保管となることもあり得るのかもと思う。 そうなると、万一事故があれば、福島第一の放射性物質飛散よりはるかに酷い事故がありうるのか、リスクも考えて適切な判断をすることが重要である。

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2024年9月20日 (金)

国連におけるイスラエル不法占拠終了要求決議

国連総会において、イスラエルが不法占拠を12か月以内に終了することを要求する決議が、9月18日にありました。

NHKニュースは次です。

NHKニュース9月19日 国連 イスラエルに占領状態終わらせるよう求める決議 採択

124か国の賛成多数で、イギリスやドイツなど43か国は棄権し、アメリカなど14か国は反対であったとNHKニュースは述べており、各国の投票については、国連広報のXにありました(ここ )。 

投票結果は、Xで表示されている各国の投票結果の画面の画像をクリックすると大きくなり、分かりやすくなります。 緑が賛成、赤が反対、黄が棄権です。 国名は、ほぼ分かると思いますが、DEM PR OF KOREAが北朝鮮で、REP OF KOREAが韓国です。

具体的には、このページ の次の部分をクリックすると、各国の投票が表示されます。 

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2024年9月11日 (水)

県の補助金なんて、知事の一声で、増額できるのかな?

次のニュースを目にしました。

YahooニュースAera 9月10日 【独自】兵庫・斎藤知事らの補助金キックバック疑惑で金融機関幹部が重要証言「補助金と寄付はセットだった」

Aeradot 4/13 兵庫・斎藤知事を揺るがす「告発文書」 阪神・オリックスパレードにも疑惑が

昨年の阪神タイガースとオリックスバファローズの大阪と兵庫での優勝パレードに、兵庫県内の信用金庫が寄附をしたとのこと。 パンフレットを見ると確かに兵庫県内の信用金庫、信用組合の名前が「ご協力いただいたみなさま」の中に掲載されています。

上のニュースによれば、11月14日の時点では、県の金融機関向けの「中小企業経営改善・成長力強化支援事業」による補助金は、補正予算で総額1億円だったが、16日には総額3億7500万円に増額され、最終的に斎藤知事の判断で総額4億円の補助金になったという。

これだと、知事の一声で、都道府県の補助金なんて、補正予算を積みまして、簡単に増額できるんですね。 一般的に言えば、補助金を増額して、キックバックも可能だろうな。 でも、刑法犯罪になるので、知事は辞任・退職しても検察庁から追及を受け、刑事罰となるのかな? そうだとすれば、バカな知事だなと思う。 実はもっと悪い共犯者がいる?

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2024年9月 7日 (土)

河野太郎氏の発言は面白い。だから実現して欲しい。

自民党総裁選はおもしろいと思う。 普段は、党内の意見も気にしなくてはならないが、立候補者の発言だと、自由に意見を述べることができるようだ。 興味を引かれたのは、次の発言です。

日経 9月5日 河野氏、全員が確定申告案「税の使い道に厳しい目を」

9月3日のXの投稿とは、これのことと思います。

「年末調整を廃止しすべての納税者が確定申告する」と言うのは、現在実施できていない。 各自が自分の所得を計算し、その所得に対応する税を納付するのは、当然・あたまりまえの制度と考えます。 

君主が大権力を保有する君主国なら、君主や君主に仕える貴族・官吏が人民の税を決定し徴収する。 人民に税についての発言機会を与えるなんて、許せない。 共産主義・社会主義では、その国の生産物やサービスは人民に公平に分配されるので、税は不要である。 しかし、公平・公正になっているかは、貨幣価値か何か規準を使って検証する必要がある。 民主主義国家の政府活動を支えるのが税であり、税を納付するのが国民であり、税制は公平でなければならない。

日本に、確定申告の制度がある。 しかし、給与等の金額が2千万円以下、あるいは公的年金等の収入金額が4百万円以下等の場合は、確定申告の義務はない。 また、所得が課税所得の基準金額以下であっても、確定申告の義務はない。 もっとも、確定申告の義務はないが、医療費控除や寄付金控除等の適用を受けるために確定申告を提出される人は多い。 令和5年の場合、確定申告提出者2324万人のうち1350万人が還付申告であり、申告納税がある人は668万人であった。

預金利息に所得税15%(復興特別税は除外して)と地方税5%が課税されているのはご存じでしょうか? これが、累進税適用の所得扱いになれば、給与所得の人だと収入450万円程度以下なら通常の所得税の扱いの方が税が安くなる。 税率が15%+5%を越える高所得者にとっては税が高くなる話であるが、低所得者の預金利息に税を課す理由はないと考える。 上場株式に対する税も同様である。 売却損が発生し、その年は株式取引で損失発生なら、通常の所得から株式取引損失額を控除し、税が安くなって良いはずである。

国民全員がマイナンバーを持っているのだから、国民は税務申告必要データを然るべき先から入手し、申告書を作成し、申告すれば良い。 日本で土地等不動産を保有している外国人や外国企業やその他日本での所得があれば同様である。

税制改正は、税負担の軽減になる人と増加になる人が発生し、対立を生むことが常であるが、目差す将来の姿の実現に向けての税制改正は是が非でも必要である。 

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2024年9月 3日 (火)

現役世代の保険料負担軽減をめざすとの興味ある発言

日経で次の記事があったのです。

日経 9月2日 河野太郎氏、現役世代の保険料負担軽減めざす Xで提唱

誰も言わない。 言えないことだなと思ったからです。 社会保険料とは、年金保険料と医療・健康保険料を意味する。 現状、年金保険料は厚生年金保険料が18.3%で、協会けんぽの場合の健康保険料は都道府県で差があるが約10%であり、雇用主と労働者が50:50の負担なので、個人だと約14%である。 企業からすると、実質賃金は名目賃金の1.14倍となる。

所得税や住民税の場合は、名目上の金額から給与所得控除や基礎控除等があり、更には所得税の場合は累進税率なので、所得がそれほど多くない場合の社会保険料の負担は大きい。 現役世代の社会保険料負担の軽減は、働く世代にとっては、大歓迎と思う。

但し、逆に負担が増加する人達が出現しないと辻褄が合わないはず。 さあ、どうするかと考える。 いや、トレンドを考えれば、第2次団塊世代までが高齢化し、年金は受給者増と納付者減が予想され、医療費も増加が見込まれる。 日本の将来は暗い。 せめて、現役世代の保険料負担軽減で明るい日本を目差さねばと思う。

一番先に頭に浮かぶのは、3号被保険者の廃止である。 3号被保険者とは、2号被保険者に扶養されている配偶者であり、フリーランスを含め自営業者の配偶者は2号被保険者に該当しないので、自ら国民年金保険料を納付する必要がある。 特権階級の特典を廃止してでも実現すべきことはあるはず。

次は、税金による補填であり、高額所得者に対する増税が考えられると思う。 他には、支出の削減であり、健康保険が適用となる医療費に関する制限である。 例えば、高額医療費制度も一定額を超過すると全額保険負担の現行制度を一定額超過の場合に3-1割負担から徐々に負担率を下げていくように変更する。 あるいは、入院時の差額ベッド料のように一定の高額医療については高額医療費制度の対象外とし、民間医療保険を拡大する。 高額医薬品は、やはり相当増加すると予想するし、現役世代の負担軽減という観点のみならず医療制度・医療体制の維持という観点からも高額になっていく医療への対応は必至であると考える。

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2024年8月12日 (月)

私も賛成です「ふるさと納税」の制度改定

日経が8月2日に次の社説を出していた。

ふるさと納税の膨張を改めるときだ

寄附をして返礼品がもらえるなんて、論理的におかしいのである。 所得税法78条が寄付金控除に関する定めであり、地方公共団体に対する寄付金は特定寄付金とされている。 しかし、「その寄附をした者がその寄附によつて特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。」とされており、返礼品が約束されている寄附は、そもそも寄附ではないと考える。

総務省が8月2日に発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)」がここにある。 令和5年度のふるさと納税は5895万件で1兆1175億円であったと記載されている。 平均では1件あたり1万9千円となる。 

ふるさと納税において、限度額はあるが、所得税と住民税の双方合計で2千円を超える額は戻ってくる。 その上、返礼品までもらえるなんて、道徳性ゼロ・倫理観ゼロの制度である。

寄附(ふるさと納税)を行った人が居住する市町村・都道府県は、住民税を低くすることから税収は減少する。 一方、寄附を受けた市町村・都道府県は寄付金収入を得るとともに返礼品関係の費用が発生する。

更に、地方交付金制度が関係するのであるが、地方自治体のほとんどは国から普通地方交付金を受領している。 各地方自治体の地方交付金の額を算定するにあたり、寄付金の受領は計算には関係しない。 一方、税収減は75%が普通地方交付金で補填されるのである。 市町村毎のふるさと納税に係わる収支が日経電子版の実質収支全国マップ ふるさと納税のリアルというマップ(地図を見るというボタンクリックが必要かも知れません)に掲載されていた。 

総務省8月2日発表の「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)」を使って、以下に、順位表等を作ってみました。

1) ふるさと納税受入額

令和5年度のふるさと納税の受入額を表にしたのが、次の表1であり、大きい順から30位までを記載し、最下欄は合計です。 寄附を受けた金額が受入額であり、1位は193.8億円の宮崎県都城市でした。 100億円以上受領したのが10市町あり、30位の佐賀県唐津市は54億円でした。 

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返礼品の金額(調達額)は寄附受入額の30%以内とされているが、返礼品に係わる経費が平均で受入額の21.5%(返礼品金額に対しては79.3%)なので、結構高い経費率と思います。 表2は、全自治体のふるさと納税に関する返礼品に係わる費用の合計金額です。 返礼品に関する経費は相当な金額になっており、返礼割合は30%以下として運用されてはいるが、経費とあわせると50%近く、受入自治体に残る寄付金は平均51.4%以下というのは釈然としない。

なお、30%を越えるとこの兵庫県洲本市の発表のように、ふるさと納税対象団体の指定が取り消され、令和5年度洲本市ゼロです。

送付・決済・広報・事務費用・その他経費が全平均で受入額の21.5%であるが、その内訳は表2の通りです。

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2) ふるさと納税に関する地方税の仕組み

ふるさと納税に関する地方税は複雑怪奇です。 ふるさと納税をすると寄付金控除による所得税の減額に加え、住民税が安くなり、実質2千円の負担でふるさと納税を行うことができると言われています。 ふるさと納税をするには、住民税の所得割課税の対象となっていることが前提ですが、所得割の住民税額の20%を上限として、所得税の税負担軽減に加えて、道府県民税と市町村民税により40:60の比率で税減額を行い、ふるさと納税を行っても実質負担は2千円となるようにする。 すなわち、住民税所得割額の20%までのふるさと納税は2千円の負担というマジックです。 よくもこんな地方税制度を考えたと思います。

道府県民税と市町村民税が40:60の比率で税減額を実施するのは、住所地の都道府県と市町村であり、寄付者の実質税負担を2千円とするのでそれなりの税減収となる。 そこで、国が補填する制度が働くのです。 地方交付税法で普通交付金が定められており、規準財政収入額が基準財政需要額に満たない場合は、国が地方自治体に普通交付税を交付するのです。 ふるさと納税の受入額は、基準財政収入額にカウントされません。 一方、ふるさと納税をした納税者の住所地の地方自治体では実質2千円負担とするために税収が減少する。しかし、税収減は、その75%相当額額が規準財政収入額の減少として扱われ、結果、税収減の75%は普通交付金で補填されるのです。

なお、規準財政収入額が基準財政需要額より大きい自治体には、普通地方交付金は交付されず、このような不交付団体は令和6年度86団体あります。 都道府県では東京都のみ。 市町村85団体のうち、東京都には12。 愛知県には19あります。 不交付団体には、普通交付税の趣旨からして、普通交付税は交付されず、その自治体では住民がふるさと納税をすると税収減となります。

3) 地方自治体の損得勘定

本来から言えば、損得勘定などないのですが、ふるさと納税を受入れた自治体はその額の財政収入が増加するが、返礼品に伴う支出が発生する。 ふるさと納税を行った人が住んでいる市町村と都道府県は住民税を減額する分の税減収が発生する。 但し、地方交付税不交付団体でなければ減収分の75%相当は普通地方交付税の受取額が増加する。 各市町村毎に計算し、地図で表示したのが日経電子版の実質収支全国マップ ふるさと納税のリアルというマップである。 実質収支で大きい順から30自治体とマイナスが大きい30自治体を表にしたのが次の表3である。 日経電子版のマップでは、都道府県は表示されないが、表3では都道府県も含めた。

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実質収入が上位となる自治体は、表1のふるさと納税受入額の順位とほぼ同一である。 一方、表3において下方にランク付けされている実質収支のマイナス幅が大きい財政悪化となる自治体には大都市の都道府県が多く含まれている。 都道府県の場合、ふるさと納税の受入は、市町村より少なく、一方で、ふるさと納税の寄附を行う住民に対する住民税減税は市町村と都道府県の双方から行われる。 市町村と都道府県に区分して収支を合計すると表4のようになった。

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地方交付税補填額は、都道府県において補填率が低いのであるが、特別区を含む東京都のみで1651億円がふるさと納税の実質負担となっている。 

<提言>

ふるさと納税という制度については、書いていても嫌気がさすし、全く楽しくない。 税金の無駄使いの最たるものと思う。 地方産業の育成なら、育成としてどの産業分野を育成するか、どのような方法で育成するか、まじめに研究をして実施すれば良いのである。

表4で記載のように、返礼品とその関連費用で5429億円が発生していた。 ふるさと納税を行った人に対して2000円の税負担で止めるために地方交付税が地方自治体に交付される。 補填額3958億円とは、その為に国から地方に支払われた金額である。 

一方、国と地方自治体を一体としての連結ベースで考えると、地方交付税は資金の内部移動である。 従い、ふるさと納税の収支計算は収入が受入額の11175億円で、支出は7682億円の住民税の減収であり、その差引は3493億円のプラスである。 そこに、返礼品関係の支出5429億円が加わると、1936億円のマイナスとなる。

返礼品をなくすれば、地方交付税で調整する額は減少し、本来の姿に近づくと考える。 3958億円の地方交付税をふるさと納税の関係で交付しているが、これも、返礼品制度を中止すれば3958億円は小さくなり、相当の財源が国に生まれるのである。 既に、稼働している制度をいきなり中止するのが難しければ、返礼品とそれに係わる経費率の割合を何年間かをかけてゼロにするようにすれば良いのである。 一方、自治体は、地域の特産品のネット販売を支援する等して、地域の活性化に取り組めば良い。 2千円の実質負担適用の所得上限についても、段階的に引き下げて、適正な所得制限の金額にすべきと考える。

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2024年7月24日 (水)

日本の現状打開策

これで解決するという妙案や特効薬は簡単にはないが、せめて思うことを書きつらねます。

まず、日本の現状認識としては、次に書いた私のブログで取り上げた日本経済の伸び悩みです。

7月19日のブログ 実質賃金が伸びていない

5月14日のブログ IMF統計での一人あたり日本GDP第34位に思うこと

バブル崩壊以後、あるいは21世紀になり2000年頃から、ドル建てのGDPや実質賃金は、年によるバラツキはあるものの、ほとんど伸びていない。

1) 衆議院小選挙区・比例代表選挙が関係しているのではないか

1996年10月20日の衆議院選挙で小選挙区比例代表並立制選挙が始まった。 日本のGDPや実質賃金の伸び悩みが始まった時期と似かよっており、関係があるのではとの疑問を持つのである。

小選挙区制が導入された最大の理由は、政権交代が起こりやすくすると言う制度整備であったと理解する。 少数党では選挙で不利となることから政党は2大政党化する。 また、政権交代のためには相手政党批判もさることならがら、国民の利益に適合した政策を考え、立案し、政策をアピールすることが選挙で重要となり、政治の健全化が期待されたと思う。 そのような結果として、政治や日本の産業そして国民の生活が良くなると期待されたはずである。

しかし、世界のなかで比較をすると、日本の成長・発展 が取り残されていることは、残念ながら否めないと思う。 議会や議員にその責任の一端があるとしても、制度面について考えることも重要と思うのである。

日経ビジネスに「チガサキから世間を眺めて」という連載を書いておられる松浦晋也氏が、6月28日の選挙をおもちゃにする人々が教えてくれることで、日本には中選挙区制が合っていたのではと疑問を投げかけておられた。  朝日新聞7月11日のインタビュー記事(全文は読めませんが) 小選挙区制が招いた政治の劣化 田中秀征さん語る「中選挙区連記制」において、同氏は中選挙区制を提唱しておられた。

私が思う小選挙区制の欠点は、小選挙区制では、個人の力だけでは当選可能な得票数の獲得はハードルが高すぎ、政党からの支持・応援を必要とすることである。 中選挙区制でも、政党なり支持団体なり相当程度の人々の支援を受けていなければ当選はできないのであるが、小選挙区制の場合は、選挙民・国民と対話をするよりは、政党からの公認取り付けに時間と労力を割く必要が生じる。

議員活動は、企業勤務とは異なる。 企業勤務なら、その企業の為に働くが、議員は所属政党のためではなく、第一の目的は国民のためであり、政党は手段である。 小選挙区制では、大政党の力は大きい。 その結果、ボス・実力者の力が大きくなりすぎ、歪みが生じることがあると思う。 例えば、政党の党首・総裁がワンマン主義であった場合、党内対立派には選挙で公認を与えず、刺客候補を立てるなんて変なことも生じる。

2) 政党交付金も廃止して議員個人宛に支給

政党交付金の交付は1995年に始まった。 令和4年分政治資金報告の概要がこの総務省のWebにあるが、政党交付金の総額は、315億3千7百万円です。 交付金受領額が一番多いのは自民党で160億円、第2位は立憲民主党67.9億円、第3位は維新の会31.7億円となる。 特記すべきは、政治家女子48党というNHK党が名称を変更した党(今は更に別の名称)で、1億98百万円の政党助成金が交付されている。 都議選で24人の候補者を擁立し、ポスターで物議を醸し出した政党である。

政党に交付金が交付されると、政党の中で権力を持つ者程、配分の際にその決定に関与できることになるはず。 本来、団体や政党は意思も感情も持たない存在であり、意思や感情は人間である個人が持っている。 個人一人では、力の弱い場合もあり、同じような考えの人が集まって行動することは多い。 政党の分散・離合や仲違い、再集合等は政治活動の自由を尊重せねばならず、禁止することは不適切である。 本来の姿は、個人による思想、主義、主張が出発点である。

従い、政党交付金は、政治活動支援金として議員個人に交付することにすれば良いと考える。 議員一人あたり年間3千万円以上となる。 基本的には、政策研究に使われるべきと思うが、政党本部への寄附に使っても良いし、政策研究のために研究秘書を雇用したり、コンサルタントやシンクタンク等外部へ政策研究を委託しても良い。 研究結果の報告書を発表し、自分が実現したい政策を研究結果を発展、展開して行ってもらえばと思う。

なお、議員個人に対する政治活動支援金は、税の対象とすれば良い。 そして、委託費を含め研究活動やその他議員活動の為として認められる支出は経費として認めれば良いのである。 課題解決や問題点の鋭い指摘を行った報告書を公表した議員は高い評価を受け、その結果、次の選挙では高い得票率が得られ当選する可能性が高くなるはずである。 好循環が生み出せるのではと期待する。

3) 選挙における投票は個人の重要な政治参加

NHKが7月14日午後9時からNHKスペシャル「永田町”政治とカネ”の攻防 ~改革のゆくえは~」という番組を放送していた。

この番組の中で、二階俊博氏がインタビューに答えて、次の様に述べていた。

『今度選挙に出るそうだけど、どういう政策に力点を置こうとしてんのか』って、そんなこと聞く人誰もいないんだよ。 みんな『金があるか』

地縁・血縁何でもありが、現実の選挙とすれば、収賄・贈賄は刑事罰になるが、政治活動を支援する純粋の寄附は支援者の夢や希望の実現手段である。 政治資金規正法では、政治活動に関する寄附について、企業や団体からの寄附は、政党等以外には禁止されている。 一方、個人による寄付は禁止されておらず、自由である。 但し、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く)に関する寄附は禁止されている。 公職の候補者とは選挙で候補者として届出があった者である。

日本の政党政治の現状は、現与党の自民・公明と共産以外は離合集散を繰り返している。 言ってみれば、人と政党はなじめないことがしばしばあると言うことだろう。 政治家を志し、自分の夢を人々のために実現したいと思ったなら、その時々協力できる人達と政党や仲間を結成し、目標の実現に向けて努力を続けるという生き方が賛同を得ても良いはず。 選挙では、政党ではなく、この人ならと信じる人に投票する人物主義の選択でも良いと思う。 このような場合、中選挙区制が、なじむと思う。

4) ポピュリズムから脱出

冒頭に書いたバブル崩壊以後、あるいは21世紀になった頃からの日本経済の低迷には、ポピュリズムに陥った日本の政治が関係していると思う。 本当に必要な政策を実施するのではなく、与党は次に控えている選挙で勝つための政策を主導してしまう。 政権交代が生じると与党議員達は、冷や飯を食わざるを得なくなる事態を避けねばと、必至になって政権与党であることを死守する。 その方法は、ポピュリズム・バラマキであり、八方美人政策である。 本質的問題解決からは遠ざかり、解決はおざなりとなる。 やはり、中選挙区制の採用だろうと思うのである。

日本の国の成り立ちを考えると、国の行政機関・執行機関である内閣を頂点とした組織である行政府とその執行についての定めをつくる立法機関である国会が大きな骨格である。 税の支出を定める予算は、国会の議決に基づかねばならない。(憲法83条、85条)

ところで、内閣総理大臣について考えると、その権限も大きいのである。 国会への議案提出権権(憲法72条 )と予算提出権(憲法73条5項)を保有する。 衆議院で多数を占めると、内閣総理大臣の指名(憲法54条)と予算の議決(憲法60条)においては、参議院に優越するので、衆議院で過半数を制すれば、相当なことは実行できると考える。 (注: 議員立法は可能であるが、国会法で賛成者の人数の定めがある。)

衆議院で多数を占めると、相当なことは実行可能である。 政権喪失の懸念、恐れから良い政策を追及することにつながれば良いのだが、現実は政権喪失を恐れて、ポピュリズムに陥っている。 長期的視点からの立て直しや改革は重点施策にはならず、世界の中で発展から取り残されているのが現状ではないかと危惧するのである。

5) オープンガバメント、デジタルガバメント

米国で2009年1月にオバマ大統領が就任し、1月21日にTransparency and Open Governmentと題したMemorandum(ここ にあり、日本語では覚書と呼ばれている)を発表した。 このMemorandumでは、下記のようなことを述べている。

”Government should be transparent. Transparency promotes accountability and provides information for citizens about what their Government is doing. Information maintained by the Federal Government is a national asset. ”(政府は、高い透明性を持つべきである。 透明性は説明責任を促進し、政府が何をしているかについての情報を国民に提供する。 政府が保有する情報は国の資産である。)

”Government should be participatory. Public engagement enhances the Government's effectiveness and improves the quality of its decisions.”(政府は参加型であるべきだ。 国民の関与は政府の効率性を高め、決定の質を改善する。)

”Government should be collaborative. Collaboration actively engages Americans in the work of their Government.(政府は協働型であるべきだ。 政府の業務に国民の積極的な関与を得る。)

オバマさんの提唱したオープンガバメントの3原則に私も賛成する。 開かれた政府、誰もが参加できる政府が未来の目差すべき政府であり、その構築に向けて努力をしたい。

日本でも、インターネットを活用して政府を開かれた国民参加型を目差して改革してきていると考える。 オープンガバメントの動きは世界の多くの国や国際機関でも取り組まれている。 オープンガバメントは、デジタルツールの発展と共に、現在の制度や姿を補完し、よりよい未来社会の発展に向け寄与していくと期待する。

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2024年7月19日 (金)

実質賃金が伸びていない

実質賃金が26か月連続マイナスとの報道がなされている。 長期間の比較や他国との比較も行って考えてみます。

日経 7月14日 実質賃金とは 過去最長の26カ月連続マイナス

1) 長期間の実質賃金の推移

26か月とは2年2か月であり、もっと長期で実質賃金がどうなっているかを考えるべく、1970年以降の毎年の実質賃金の推移を2020年を100とした実質賃金指数と前年比上昇率を表示したチャートを作成すると図1の通りとなった。

データ元は、毎月勤労統計調査の季節調整済実質賃金指数の製造業30人以上であり、その1月~12月の合計を12で割って年ごとの実質賃金指数として年ごとの指数とした。

Japanesewage20247a

結果、2006年が107.2で最も高かった。 1997年頃より、停滞していると言えると考える。 なお、2023年は99.3としたが、この数字は1月~4月の4月単純平均である。

2) 購買力平価 (国際比較)

賃金を国際比較するに際しては、単純に為替レートを使って比較をするより、購買力平価(PPP : Purchasing Power Parity)による換算で比較する方が、適切と言える。 購買力平価(PPP)とは、同一物を日本と外国で購入した際の価格により換算したレートであり、同じビックマックが日本で750円で、米国で5ドル70セントなら、ドル・円のPPPレートは131.6円/ドルというような具合です。

OECDの統計データに年平均賃金(Average annual wages)というデータがあり、このうちの2022年米ドルベース購買力平価(US dollars, PPP converted, 2022)を使いました。

購買力平価(PPP)なので、物価変動や為替変動からの影響が基本的には除外されていると考えられる。そこで、図1の日本の賃金指数を米ドルベース購買力平価(PPP)を同じチャート上で表現したのが次の図2です。 

Japanesewage20247b

日本の賃金を2つの単位を使って、1つのチャート上に記載したのであるが、相当似通っている。 結果、OECD統計の購買力平価(PPP)による米ドル換算を使って各国の賃金国際評価を実施して大きな問題はないと考える。

3) OECD加盟国の中の17国について比較

OECD加盟国の中の17国の1990年以降の賃金について、2022年米ドルベース購買力平価(US dollars, PPP converted, 2022)による1990年から2023年までの推移をチャートにしたのが図3です。 (クリックで拡大します。)

Japanesewage20247c_20240719002301

図3からすると、日本は17国の中でギリシャを別にすれば、唯一賃金上昇がほとんどない国です。 各国の購買力平価(US dollars, PPP converted, 2022)による賃金を大きい方から並び替え、賃金の数字も記載したのが表1です。 1990年、2000年、2010年と2022年のみを記載しています。

Japanesewage20247d

韓国の賃金を見ると、1990年24,740、2000年33,114、2010年40,804、そして2022年48,056と順調に賃金が上昇している。 それぞれ、年率換算すると1990年から2000年は平均3.0%、2000年からは2.1%、2010年からは1.4%です。 1990年から2022年までの賃金上昇率を比較すると韓国の32年間の平均上昇率は年率2.10%で日本は0.13%です。

バブル崩壊後1990年代中頃以降、日本は賃金が上昇しない国になっていると言わざるを得ない感覚になります。 賃金が上昇しない国は、魅力のない国であり、解決策を考えていかねばと思います。

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2024年7月18日 (木)

迷惑メール・詐欺メール

多くの迷惑メール・詐欺メールを受信するが、本日受信したメールは悪質だと思ったので、この記事をアップします。

その受信したメールは、「東京電力エナジーパートナー株式会社です。6月分の電気料金のお支払いは、以下のURLからお願いいたします。期限を過ぎますと、URLからの支払いができなくなることがありますので、予めご了承ください。」との文章で始まり、差出人は”【東京電力エナジーパートナー】くらしTEPCO web <mail@kurashi3.tepco.co.jp>”と表示されています。

一瞬、東京電力と思わせるのですが、@kurashi3.tepco.co.jpは、東京電力やその関連会社のurl・ドメイン名ではありません。 しかし、tepco.co.jpは東京電力のurl・ドメイン名であるので、悪質だと思った次第です。

日本の会社名を語っているにも拘わらず、差出人のアドレスが□□□□.com.cnになっており、中国からだとすぐ判断可能なメールもあるが、送信人名を詐欺目的で、受信人のメールに表示するという名前細工していることがあります。

文面を読んで変だなと思い、チェックしたい場合は、送信人・差出人として表示されている相手や、メールの件名をコピーして、Web検索をすれば、同じような迷惑・詐欺メールが出回っていることが多く、警告をしているサイトが見つかります。 迷惑メール・詐欺メールは、虚偽を語って不安をあおり、嫌なものです。

例えば、私が受信した今回のメールに関してGoogle検索をすると、このサイト に行き当たりました。

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2024年7月 8日 (月)

東京都都知事選小池氏が当選だが、ふるさと納税は、どうなるか?

東京都都知事選は小池百合子氏が当選と報道された。

この2023年12月8日のブログで、東京都、その特別区および市町村は連名で、総務大臣に対して、ふるさと納税制度の見直し要請を2015年12月4日に提出したことを書いた。 連名の要請とはこの文書のことである。

選挙戦では語られなかったと了解するが、方針変更は何も聞こえてきておらず、知事は当然ふるさと納税見直しを引き続き求めることと了解する。

問題点の第1は、30%相当の返礼品とその手数料は10%以上であることもあるようであり、誰が潤うか、地方自治体に癒着した業者が利益を確保する仕組みになっている。 そもそも、返礼品があるなんて、寄付金ではない。 寄付金とは、見返りを求めない純粋な人の心である。 神社、寺、教会、モスク等に寄附をする人は信者を初め多くおられる。 願い事を叶えて欲しいと寄附をされる方も、おられるが、直接的な返礼品が欲しいとして寄附される人は基本的にはいない。 返礼品とは、求めてはならない見返りを求める賄賂行為である。

問題点の第2は、住民税所得割の額の20%迄の金額のふるさと納税は2千円の自己負担で済む点である。 住民税所得割の額の20%とは、分かりにくいが課税所得額の10%の20%と考えれば、ほぼ等しいはずである。 所得控除等を差し引いて500万円の人なら、10万円程度であろうか? しかし、2000万円の課税所得の人は40万円の寄付金で40万円のほぼ全額(2千円の負担のみ)が戻ってくるとしたなら、通常は何かおかしいと感じるはずである。 まじめに働く人を卑しめる制度である。 2千円の負担で、返礼品を受領するとなるとキチガイ制度である。

第3は、善意を踏みにじっている制度であること。 即ち、地方交付税法により国税である「所得税」の33.1%、「法人税」の33.1%、「酒税」の50%、「消費税」の19.5%と「地方法人税」の100%を都道府県と市町村に配分されるのである。 地方自治体の財政、運営、地方自治のサポートが目的であり、基準財政収入額が基準財政需要額を下回った場合、差額が各都道府県と市町村に普通交付税として配分される。なお、基準財政収入額は標準税率の75%相当としている。 基準財政収入額が基準財政需要額を上回れば、普通交付税は、上回った自治体には配分されない。

都道府県では、東京都が基準財政収入額が基準財政需要額を上回わるのであり、市町村では1719のうち79が上回る。 東京23区は、上回る団体であり、普通地方交付税の交付は受けていない。

ところで、ふるさと納税についてであるが、税減収となった地方自治体は基準財政収入額に税減収がカウントされるので75%は地方交付税で補填されるのである。 一方、ふるさと納税で寄付金を受領した自治体は寄付金は基準財政収入額にカウントされないので丸儲となる。

狂人の制度としか言いようがないのだが、東京都と79市町村以外には、反対の声はあげにくい。 いや、こんな制度で悪行を働いている自治体は、廃止なんて絶対言わない。 モラル上も極めて悪質であり、日本は、このようなことで滅ぶのかなと思う。

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2024年7月 3日 (水)

積水ハウスって、何なの?って思った

積水ハウスは、完成した国立の10階建ての全18戸のマンション解体を発表し、驚かせた。

時事ドットコムニュース 6月10日 積水ハウス、マンション解体 引き渡し直前、「富士山見えない」

国立のマンションも、地元住民の意見を無視して強行突破に失敗と私は思っているだが。 即ち、2022年5月27日に近隣住民から国立市議会議長に対してこの陳情書が提出されている。 陳情書の内容も、また近隣住民の意見も積水ハウスは十分に、陳情書の前から知っていたのである。 しかし、対応は、マンションの階数を11階建て10階建てに変更したことぐらい。 最後にゃ大失敗。

この中日新聞 6月28日 「20階以上は建たない」セールストークだったはず…名古屋タワマン訴訟の93歳原告憤りというニュースも積水ハウス、長谷工コーポレーションのマンションである。 「グランドメゾン池下ザ・タワー」という地上42階のタワマンは2013年12月に完成。 すぐ隣に「グランドメゾン池下ザ・タワーII」というタワマンが2025年9月完成を目指して建設中である。 2013年当時には、12年後に隣に同名のIIと称するタワマンを作ることについて、セールスマンは知らなかったのかも知れない。 だから、セールストーク「20階以上は建たない」でセールスマンも無罪の可能性あり。 しかし、企業としては、どうなの? 国立ほど酷くはないのかな? 判断は、読者にお任せします。

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2024年6月21日 (金)

国際的なサイバー攻撃

次のニュースがあった。

NHKニュース 21日 JAXAに複数回サイバー攻撃 情報が漏えいした可能性

同じニュースであるが、朝日新聞のニュースは、「流出の可能性のある情報のファイルは1万以上で、JAXAと秘密保持契約(NDA)を結んでいた米航空宇宙局(NASA)やトヨタ自動車、防衛省など外部機関の情報も含まれていた。」と報じている。

JAXAは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法により設立された政府が保有する国立法人である。 サイバー攻撃も武力攻撃の一種と捉えれば、政府機関が攻撃されたこととなる。 国際的な取り組みは、どうなっているかと調べてみると、3年前であるが外務省のこの2021年5月28日の文書があった。

今やネットを利用しない世界は考えられない。 JAXAへの攻撃は、国内からか、外国からか、単一か複数か、経由地やサーバーの位置等、現状全て分かっていないが、複雑であると思うし、今後のサイバー攻撃や犯罪は超複雑で解明は簡単にはいかないように仕組まれていくと予想する。 決して、日本単独の問題ではない。 Netで検索するといくつでも、表示されるがこんなニュース(CNN)もある。

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2024年5月31日 (金)

2人を殺害したが、死刑にはならず

次の5月27日の最高裁判所の上告棄却決定です。結果、仙台高裁判決通りの無期懲役となった。

最高裁判所第一小法廷 窃盗、道路交通法違反、殺人被告事件 棄却決定

事件については、この福島民友の記事 2024年05月30日が、参考になると思います。 2020年5月31日朝、盛藤吉高被告(54)は、福島県三春町の国道脇で清掃活動をしていた同町の橋本茂さん(当時55)と三瓶美保さん(当時52)を時速60~70キロではねて殺害し、逃げた。 被告は、殺害の2日前に出所したばかりで、刑務所に戻りたいと考え、トラックで2人ほどの歩行者に衝突させて逃げようと計画し、実行した。

こんな男にひき殺されたら、たまったものではない。 一審は裁判員裁判であり、被告には死刑判決が下された。 仙台高裁は、無期懲役とし、最高裁は上告棄却を決定し、無期懲役が確定した。

最高裁は、その動機は身勝手かつ自己中心的であり、刑事責任は誠に重いものの、死刑を選択することが真にやむを得ないとまで言えるかとして、仙台高裁の無期懲役を支持した。 上の福島民友の記事には、2人と共に「桜川をきれいにする会」で活動していた会長の影山初吉さんの、こんなひどいことをして無期懲役なのはおかしいとの無念さの訴えも書かれている。 

しかし、何が何んでも死刑という考え方が正しいのかと考えることも必要だとの思い。 人間が人間を裁く際の限界や死刑制度についても考えなくてはと思った。

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2024年5月14日 (火)

IMF統計での一人あたり日本GDP第34位に思うこと

IMFは毎年4月と10月に経済統計(World Economic Outlook)を発表している。 2024年4月の発表文はこのページであり、そのデータは、同ページのリンク先からpdfで見たり、Excelやcsvでダウンロードすることも可能である。

1 IMF World Economic Outlook (April 2024)による各国の一人あたりGDP

長期間の各国GDPを比較することにより見えてくるものがあると期待して、1990年からの35年間について各国の一人あたりGDP(米ドル換算)を図1として表示した。 数字はIMFの統計数値であり、各国の名目GDPを米ドル為替レートで米ドル換算し、人口で除しているとIMFは説明している。

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(図はクリックで拡大表示されます。)

図内右に掲示している凡例の各国名は2023年における一人あたりGDP金額の大きい順から並べてあります。

1995年頃において、日本はルクセンブルグ、スイスに次いで第3位であったのです。 そこで、1985年からの順位表を作成した。 それが、表1です。 なお、2010年までは5年ごとの順位表で、2010年以後は毎年の順位表とし、2024年の順位はIMFの予測値による順位です。(クリックで拡大)

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2000年当時、日本の一人あたりGDPは世界第2位であった。 2005年以後は14位から18位程度の位置であったが、2013年から2021年頃は24位から27位となった。 しかし、2022年からは33位、34位と随分後順位となり、2024年は台湾、韓国より後ろの38位と予想されている。

2 対内直接投資の残高

対内直接投資とは、外国から日本に対する投資であり、外国人にとっての日本の魅力度の結果が日本の対内直接投資と言える。 IMF統計データから作成した各国の対内直接投資残高(Inward Direct Investment Position)が図2である。 図1のGDP比較と同じく、図中右の凡例は金額順の表示としている。 日本の外国からの直接投資受入残高は2022年で30位、2,250億米ドルとなっている。

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日本はイスラエルより外国からの投資受入残高は少なく、アジアでも、中国、シンガポール、香港やタイ、韓国より小さな金額しか外国からは投資が、なされておらず、魅力のない国としての評価を受けているようである。

図3は、金額ではなく、対内直接投資残高(外国からの投資受入額残高)をGDPに対するの比(パーセント)で表示している。

Fdioecd2024b

日本の対内直接投資受入残高はGDP比5.33%であり、48位となっている。 なお、最大受入国ルクセンブルグは1460%であり、第2位のオランダ275%とアイルランド264%の3国は図の範囲外上方である。 

日本の5.33%は、アジアの諸国比べても、韓国13.79%(2021年の数字)や中国19.46%、インド14.73%より低い。 米国43.16%や英国88.55%には遠く及ばず、フランス32.22%やドイツ26.76%よりも大きく離れている。 資源埋蔵国の場合は、資源開発に関係・関連する外国からの投資が生じる。 インドネシアの20%も資源開発関連が含まれていると考える。

3 日本のGDP推移

1980年以後における日本の名目GDPの推移を示したのが図4である。 単位は兆円(左目盛り)と米ドルに換算した兆米ドル表示(右目盛り)である。 

Jgdp2024e

図4を見ると、1992年に名目GDPは500兆円に達し、20年以上を経過して、今やっと600兆円に達しようとしている。 1992年はバブル絶頂期が1989年であるとすれば、崩壊が進みかけた頃である。 当時、景気対策の一環として、日銀は公定歩合を1991年7月に6%から5.5%に引き下げ、以後順次引き下げを行い、1993年には1.75%としている。 しかし、公定歩合引き下げによる景気刺激策は、図4からすればその効果は限定的であったように見える。

更に、ドル・ベースで見ると、1995年頃にピークがあり、その後2011-12年頃に6兆ドルを超えたが、この20年間低迷を続けている。

4 GDPと対内直接投資

国際間の投資とは、冷酷なものである。 投資先の国に魅力がなければ、投資をしない。 大きなリターンが期待できれば、投資をするが、リスクが大きいと判断されればしないか、投資規模を縮小する。 1980年からの対内直接投資残高を図4のGDPグラフに付け加えたのが図5である。 (2004年以前については、対内直接投資残高の数値を示した統計資料が把握できなかったので省略した。)

Jgdp2024d_20240515001801

また図4のドル・ベースのGDP推移を見ても、日本へのドル・ベースでの投資リターンには相当のリスクがあるように思える。 投資資金は米ドルでの調達とは限らないが、国際的な金融・資金マーケットにおける投資とリターンについて、自国の都合や論理は通用しない。

5 経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)における対内直接投資

2024年度は取りまとめ中であり、2023年6月16日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」は、ここにある。 その7ページに次の様な文章があるので紹介をする。

・・・ 海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで我が国全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高め、我が国の更なる経済成長につなげていくことが重要である。 対内直接投資残高を2030年に100兆円とする目標の早期実現を目指し、半導体等の戦略分野  ・・・

2030年の100兆円実現の前倒をめざすとの宣言である。 2022年末では29.9兆円であった(図5)。

6 真の問題は赤字国債

図4に示したように日本のGDPはバブルが崩壊した1990年以降停滞している。 GDP停滞の原因と赤字国債発行が関係している可能性を考えるため、図6を作成した。 国債の発行を継続し、2007年の時点で発行残高がGDPを越えた。

Jgdp2024b

外国に投資するのは、その国に魅力があり、かつリスクが低いと判断されるからであり、悪材料が少ないことが望ましい。 国債とは政府の借金である。 国債償還の財源は、その国の税金であり、国債残高が大きいことは、将来の増税が予想される。 投資をする際には、投資先国の税制や税率を調査する。 投資リスク要因としては、将来の増税の可能性も対象となる。 いずれにせよ、政府債務が大きいことは、投資先の国としてのマイナス材料である。 同じ条件なら政府財政の健全な国を選ぶ。

7 国別の国債残高を比較

国債残高を金額で比較しても良いが、その国のGDPの額と対比して政府財政・債務の健全性の指標が得られる。 GDPは、その国で産出した付加価値の総額故、債務返済資金の源泉であり、返済能力であるとも言える。 日本の国債残高のGDP比のカーブを図6に加えたのが図7である。

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図8は、政府債務残高をGDP比のパーセントで表示してのOECD諸国の比較である。

Debtoecdcountries2024

OECD統計は、国債残高ではなく政府債務という言葉を使用しており、図6や図7における国債発行残高より範囲が広い。 その為、GDPとの比率に於いても大きくなっている。 しかし、OECD統計は比較対象国について同一基準で作成・報告している。 日本の債務・国債発行残高は飛び抜けて大きいのである。 

8 雑感

国債発行残高は1000兆円を越えているが、逆に言えば、これまでに1000兆円の支出をしてきたわけで、その負担を今後・将来の世代が背負うことになる。

国債は固定金利であり、現状発行残高の50%以上を日銀が保有しており関係ないと思うかも知れない。 しかし、日銀の負債で一番大きいのは一般銀行の日銀への当座預金である。 もし、円の金利が上昇したなら、新規国債の利払いが大きくなるのだが、インパクトとしては一般銀行の預金者の利息や日銀金利の上昇になるのであり、日銀にとっては資産(貸付サイド)741兆円のうち587兆円が国債という状態で、どうなるのやらと思う。 日銀が倒産するわけはないが、かと言って、日銀当座預金を現状で保持すれば、一般銀行へ大きすぎる負担が生じると考える。 金利が上昇した状態で国債を売却すれば、国債額面割れで日銀に損失が発生。 いずれにせよ、円の信用力が落ちると思う。 誰も投資しない国・日本になる可能性があると思う。 もっとも、そんな状態になると、新規国債は発行できない。 しかし、国債の償還と利払いは続く。 将来、多額の税金を国債の利払いと償還に充当せねばならず、その分実質支出できる政府財源は少ない。

そんな悪夢をよそに、令和6年度の一人あたり4万円(所得税と住民税の合計)の特別定額減税をする税法改正が成立した。 対象者を8千万人とすると総額3.2兆円となるが、こんなばらまきは、許されるのかと思う。 ばらまき税制改正と同時に28.9兆円の赤字国債発行を決めているのであり、本来は赤字国債の発行額を減少する歳入予算とすべきである。 防衛費にしても令和6年度は5117億円を建設国債でまかなうとした。 建設国債は、本ブログ記事に於いては、カウントしていない。 矛盾だらけの予算を組み、支離滅裂な説明を行うことは信用失墜になる。

今の日本の政治はポピュリズムの罠に陥っているように思う。 コロナ給付金なんて所得に関係なく10万円支給とか酷い仕組みだった。 もっと遡れば、政府の無駄使い削減で財政再建が可能であるとウソを言ったり、どの政党も増税は口にしない。 でも、小さな政府とも言わず、大盤振る舞いの政府の政策を全政党が訴えている(競争している?)と思う。

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2024年5月 3日 (金)

医師不足につながる直美って、知らなかった

「直美」とは「なおみ」と読むのではなく、「ちょくび」と読み、医師が研修を終えて、ただちに美容医療に従事するすることを指すというのである。

次の日本ビジネスプレスのJBpressからの記事です。

美容医療の世界に転じる専門医の増加は何を意味しているのか?形骸化し始めた日本の専門医制度 - 2024.5.3(金) 星 良孝

何故美容医療の医師になる人が多いのかは、記事に何度も書かれているが、例えば記事5ページの「一般の民間病院で勤続5年~10年の場合、月に103万8012円」が、美容医療の医師だと「待遇4000万円」「年収2億円も夢ではない」という求人の誘い文句になると言う。 試しにGoogleで「美容医療医師求人」として検索してみると「美容経験者特に優遇 最低年収4,000万円」なんて求人広告が出てくる。

つい最近のニュースで、「人口減で地方自治体の存続が厳しく、2040年には半数消滅の恐れがある(例えばこの日経のニュース )」なんてあった。 人口減地域での病院・医療提供体制をどう維持していくのかという問題に取り組んでいかなければならない。 人口減地域は、高齢化が進んでおり、高齢者が多い。 しかし、医療提供従事者の年齢構成は、バランスが取れて、存続可能な状態であって欲しい。 現実は理想通りに行かず、人口減地域では医療体制の維持の困難度が進むように思う。

これに直美現象が加わったら、どうなるのだろうと思う。 美容医療から一般の医療医師に復帰するのは、容易ではない。 美容医療は公的保険が適用されない自由診療の世界である。 根底にあるのは、公的医療保険制度における医師に対する診療報酬が低すぎるという問題があると考える。 

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