インサイダー取引事件でセイクレストの社員3名を逮捕
インサイダー取引事件で、ジャスダック上場のマンション販売会社「セイクレスト」(大阪市淀川区)社員ら3容疑者を逮捕というニュースがありました。時事ニュースとセイクレストのプレスリリースは以下です。
時事ニュース-2007/01/16 インサイダー取引で3人逮捕=ジャスダック上場会社課長ら-大阪府警
弊社社員のインサイダー取引容疑に係る家宅捜索について
弊社社員のインサイダー取引容疑による逮捕について
これに関して、少し書いてみます。
1) 容疑内容
時事ニュースでは、「2005年11月ごろ、セイクレストが1対5の株式分割をするという情報を入手し、高値での売り抜けを計画。公表前の同月末から約10日間で同社株25株を吉村容疑者らの妻の名義で買い付けた疑い。
同社は、同年12月9日に株式分割を公表。株価は翌営業日には公表前の約5割増しとなり、榊山容疑者らは約700万円の売却益を得た。」と言うことです。
2) 株式分割とは?
株式分割とは、文字通り1株を1株以上に分割することであり、1対5の株式分割とは、1株の株主であった場合は、株式分割により5株の株主になります。但し、会社に金銭を払い込むわけではなく、会社の純資産は増加しないし、収益力が上がるわけでもないので、1対5の株式分割であれば、1株の価値は5分の1になります。
何故、株式分割を行うかと言えば、成長企業の場合、成長に連れて資金需要も増大するわけであり、利益が出ても株主に配当するよりもその会社の投資資金に充当した方が、より高いリターンを得ることになります。その結果、その会社の純資産や利益は益々増大する構造となります。同時にそれは、1株当たりの純資産、利益および剰余金が大きくなるわけで、株価もそれに連れて高くなります。株価が高くなりすぎると一般投資家には手が出しにくい面もあり、証券市場での取引には、株式分割を必要に応じて実施し、適正な水準を保つのが株式発行による資金調達を含め企業にとっては良い結果が期待できます。
なお、株式分割の手続きとしては、取締役会の決議で増加する株式数や基準日、効力発生日を決定することとなります。(会社法183条)取締役会がない場合は、株主総会の決議となりますが、上場会社の場合は、取締役会があるので株主総会事項とはなりません。
3) セイクレストの概要
セイクレストは、分譲マンションの企画販売事業会社として、1991年3月に(株)大京の元社員であった現在の代表取締役の青木勝稔氏より設立された会社で、2006年9月末時点でも青木勝稔氏が52.34%の株式を保有しています。最近の企業業績等は以下の表の通りです。
2003年3月期 | 2004年3月期 | 2005年3月期 | 2006年3月期 | 2006年9月期 | |
売上高(百万円) | 2,122 | 5,381 | 7,413 | 3,429 | 2,261 |
経常利益(百万円) | 148 | 327 | 463 | 456 | △199 |
当期純利益(百万円) | 75 | 114 | △390 | 324 | △180 |
純資産額(百万円) | 942 | 1,031 | 572 | 888 | 662 |
一株当たり純資産額 | 177,434 | 194,230 | 109,030 | 33,840 | 24,989 |
PBR | 0.76 | 1.70 | 3.85 | 10.31 | 10.56 |
PER | 9.9 | 15.4 | - | 28.3 | - |
4) セイクレストの2005年12月の株式分割
2005年12月の株式分割は、この12月9日付けの株式の分割に関するお知らせの通りです。同日の12月9日の取締役会で決議され、発行済株数5,311株を26,555株に増加します。分割基準日は2005年12月31日で2006年2月20日が効力発生日です。2005年12月の株価チャートを書いてみると以下のようになりました。
11月は50万円を切っていた株価が一時的には3百万円を超えました。売買株式数(右目盛としています)も、12月27日には2004株でした。その後の株価はYahooなりNikkeiなりのチャートをご覧頂ければわかりますが、なだらかに今回のこの事件直前の65,000円程度に下がって行ってます。なお、チャートを見る際の注意点として、2006年9月30日を基準日とし10月1日を効力発生日とする3分割の株式分割が行われていますので、当時の3百万の株は5分割と3分割にされたので、20万円と言うことです。2007年11月の50万円は、今の株価に換算すると33,333円です。チャートを見る際に誤解が生じるかも知れないので、念のため。
株式分割をすると株価が上昇することが多い。これについては、一つは基準日に保有していた株主(正確には基準日に株主名簿に記載されていた株主)は、株数が増加することとなるが株式を入手するのは効力発生日であることから、この間流通株数が不足するので高くなるという説明です。もう一つは、株式分割は基本的には成長企業が行うことから、イメージにより発表と共に「買」注文が「売」注文より増加することから株高になると言う説です。
約700万円の売却益を得たとの報道ですが、仮に11月に購入したのであれば50万円以下であったわけで、これを150万円で売却したとすれば、購入・売却株数は7株です。でも、上のチャートを見ると売買されている株式数は桁がまるで違います。株式分割は、実質的な変更は何もないので、 PERやPBRその他株式指数も変化しません。でも、2005年12月の株式分割の前には、株式時価総額は26億円程度であったが、分割後は100億円を超えていました。現在は50億円程度です。
セイクレストの2006年9月の株式分割では株価は変化しませんでした。株式振替制度となったことから、効力発生日が基準日の翌日となったからです。2005年11月のセイクレストの株式分割については、今回逮捕された3人のインサイダー取引よりずーとあくどい株取引があったのではと思えてしまうのですが、いかがですか?ホリエモンからの悪い影響でしょうか?
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