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2007年1月12日 (金)

三角合併と税

引き続き三角合併について税金面を私なりに考えてみます。

1) 合併と税金

A社がB社を吸収合併してA社が合併存続会社となり、B社株主は、合併対価として現金を受け取ると仮定します。

この場合B社株主は、合併の効力発生日にB社株を現金で売却したことと同一です。現金でなくてA社株であっても、現金を受領してその現金でA社株を購入したとすれば、或いはA社株を直ちに売却して現金を得たとすれば同じことです。でも、名前はA社であるがB社従業員も一緒に仲良く働いており、投資家にとっては株券の名前が変更になっただけで、何も変わっていないという風にも言えます。

法人税法、所得税法はどう扱っているかというと、適格合併に該当する場合は、A社はB社の資産・負債をB社の帳簿価額で引き継ぎ、課税関係は生じないこととしています。(法人税法62条の2)即ち、A社とB社の帳簿価額結合です。

適格合併に該当しない場合は、B社が時価でA社に資産・負債を譲渡したとして所得の金額を計算するとしています。(法人税法62条)B社はA社に事業売却を行ったとして、利益に税がかかり、消滅することから清算のような扱いになり合併交付資産のうち資本金等に対応する部分の金額(資本金+資本剰余金と考えて下さい。)を超えるときは、その超える部分の金額は、利益の配当の額とみなすとしています。(法人税法24条、所得税法25条)株主にはみなし配当金としての所得と資本金等に対応する部分に関する株式の譲渡に関する所得(又は損失)が発生します。このみなし配当は、法人の場合は益金不算入、個人の場合は配当控除の適用があるので、ややこしいのですが、支払う方も源泉税を徴収するためには、株式のみでは源泉徴収が出来ないので株主には交付しなくても現金の交付を含めることとなります。

適格合併でないと、合併の税務面は大変なのです。

2) 適格合併とは?

適格合併については、法人税法2条①項十二の八で、「次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人の株式又は出資以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当等(株式又は出資に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう。第十二号の十一において同じ。)として交付される金銭その他の資産及び合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。・・・・省略・・・・」としています。

三角合併は、現行では適格合併ではないのですが、自民党の平成19年度税制改正大綱の51ページの九2に適格合併の要件に合併法人の親会社株式のみが交付される場合を加えると書いてあります。従い、本年5月1日以後は三角合併も適格合併になりうると思います。なお、適格合併の要件としては、法人税法2条①項十二の八が次のいずれかに該当とあるように、株式のみの交付という条件以外に、

(a) 被合併法人と合併法人が全株を保有する親子会社であること、又は
(b) 50%を超える株式を保有する親子会社の場合は、(i)被合併法人の従業者の80%以上の者が合併後も合併法人の業務に従事することが見込まれており、且つ(ii)被合併法人の主要な事業が合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること、又は
(c) 被合併法人と合併法人が親子会社の関係でない場合は、共同で事業を営むための合併として、(i)被合併法人の被合併事業と合併法人の合併事業とが相互に関連するものであり、(ii) 被合併法人と被合併事業の規模の割合がおおむね5倍を超えないこと又は被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが合併法人の特定役員となることが見込まれていること、(iii) 被合併法人の従業者のうち、80%以上の者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれていること、(iv) 被合併法人の被合併事業が合併後に合併法人において引き続き営まれることが見込まれていることの4条件全てにあてはまること。 

となると思います。

3) 税の問題はこれだけか

実は、自民党の平成19年度税制改正大綱の24ページ3に「合併等により外国親会社の株式が交付された場合には、被居住者または外国法人株主は、旧株の譲渡益に対して課税する。」と書いてあります。

これは、租税条約は別にして、内国会社の株式であったなら、合併時に税が課せられなくとも、時価評価で課税されなくとも、最終的には売却段階で所得が生じ課税対象となり得ます。しかし、外国株主に外国株式が交付された段階で、日本政府が課税しないとなると、外国株式を外国で売却したときに日本政府が課税できないという恐れがあります、場合によっては、課税権という主権をおかすこととなります。そこで、外国の株主には課税しておこうという税法案です。なお、租税条約で株式の譲渡所得が譲渡国では課税しないと取り決めている場合があり、実際に課税がどうなるかは又複雑ではあります。

なお、日本人の株主で、ある日三角合併で米国企業の株式を入手した。その後、転勤で米国に行った。米国で、この株式を売却した。この場合は、米国での税で終わりなのでしょうね。グローバル化、ボーダレスの時代の税は、複雑です。

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