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2007年1月12日 (金)

不二家の洋菓子販売休止

現在余りにも有名な出来事なので、不二家による「お詫びとご報告」を先ずは掲げます。
今回もグラフの右端が切れているかも知れません。グラフをクリックするか、RSSで見ると全体が表示されます。

不二家ホームページ不二家プレスリリース(PDF)

両文とも同じですが、「当期業績に与える影響については今後わかり次第発表します。」との文章がプレスリリースには加わっています。本事件は食品事業を行っている企業として、事態を甘く見すぎた結果、マーケットの信用を失ってしまった例なのだと思います。しかし、一方で、ともすれば陥り易い落とし穴であったわけで、少し、この出来事に関連して有価証券報告書の情報等を下に書いてみたいと思います。

1) 不二家

株式会社不二家は昭和13年(1938年)に設立され、昭和37年(1962年)に株式を二部上場し、昭和40年(1965年)に一部上場を行った会社です。老舗の食品会社で、設立者は現在の代表取締役藤井氏の親族であり、設立以来代表者及び取締役の多くは一族であった同族経営の会社で、現在は取締役7名中3名が親族と理解します。監査役は現在4名で、このうち3名が社外監査役で、この中に弁護士もおられます。

この出来事の報道からすると不二家は食品の安全性に無頓着であったと感じるのですが、有価証券報告書(2006年3月期)の「事業等のリスク」には、第一番目に、「食の安全性及び品質管理体制について万全の体勢で臨んでまいります。」と書いてあります。経営者も従業員も、このことを認識して働いておられたのだと思うのです。しかし、甘いところがあったと言わざるを得ないのでしょう。

2) 不二家の企業業績

不二家の売上高は年々減少しているのです。次のグラフは平成10年3月期以後の連結売上高、連結経常利益、連結純利益を示していますが、売上高の右肩下がりがわかります。

Photo_1 

利益については、グラフの右目盛(単位:百万円)ですが、経常利益も最大で平成12年3月期の21億円でしたから、売上に対して約2%です。純損益はゼロより下のマイナスの方の面積が大きいことが読みとれ、グラフで対象とした9年間の平均が損失の11億円です。実は、苦しい経営内容なのです。

売上減で利益確保が苦しかったので、経費減に必至に取り組んだのです。次のグラフは、平成14年3月期以後の連結ベースでの従業員の人数です。元々パート従業員が多く、平成14年3月期で70%が臨時雇用従業員でしたが、5年間で一般従業員数は20%減少で、臨時雇用従業員数は6%の増加です。

Photo_3 

だから報道されている情報によれば、埼玉工場の原料仕込み担当者は元社員でパートとして再雇用された60代男性となるのだと思います。売上の減少、人員の削減といったなか、現場の担当者にはコスト削減の心理的プレッシャーが働いていたと想像します。

2006年3月期の連結決算におけるセグメント別の売上高と営業利益をグラフにしたのが以下です。小売事業と称しているのが「ケーキ、ベーカリー、アイスクリーム等と喫茶、レストラン事業」で、卸売事業と称しているのが「チョコレート、キャンディー、飲料等」です。今回の出来事は小売事業と理解しますが、赤字部門だったのです。

Photo_4

3) 教訓

そんな大げさなことをブログに書くのは、おそれ多いし不適切だと思うのですが、もしかすると身近に起こりうることだったかも知れない気がします。現在の実感のわかない景気回復。不二家の2006年3月期の連結18億円の純損失には、固定資産減損損失が8億円と固定資産破棄損3億円があるのですが、パート雇用者を増やし、人件費を切りつめないと企業は業績を維持できない。そして、働く者にとっては、収入が増加しない。そんな中で発生した出来事だと思います。

本当に大切なものは何であるのか。ともすれば、我々は見失ってしまうのではないか。食品メーカーの不二家は事業等のリスクとして一番最初に食の安全を掲げていました。本日の不二家の株価の東証終値は211円で昨日の終値と比べて22円(9.4%)安でした。出来高は2216万株で発行済株数が126,344,590株だから17.5%が本日売買されたことになる。売買高が百万株を超えることはほとんどなかったのですから。

1月11日(木)より洋菓子販売を休止という発表ですが、本体の直営店が97店あり、子会社不二家フードサービスが101店、ダロワイヨジャポンが13店で、フランチャイズが708店です。従い、合計919店となるが、フランチャイズ店に対する売上減少に対する補填も考えると、相当な損失になると思います。2) でパート従業員の人数を書きましたが、パート従業員が最も多いのが販売店で、直営店441人、不二家フードサービスが2072人、ダロワイヨジャポン102人の合計2615人です。

売上が元に戻るには、時間がかかると思うのです。パートさんも大変だと思います。勿論一般従業員も大変です。経営者は、自社の最重要事業リスクの対策や、その取り組み体勢が十分かもう一度見直しておくべきかも知れないと思いました。

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コメント

こちらでははじめまして。

今回の不二家の件が、ヤマハの不正輸出のように一過性のものであり、
経営自体は優良であるのならば株式投資をしてみようと思いましたが、
株価のチャートを見てやめました。

どうも、不二家は今回の不祥事がなかったとしても、
経営の大変革を迫られていた感じがしますね。

リスクマネジメントの問題でなく、マネジメントの問題だったとも
言えるのかも知れません。

投稿: しま | 2007年1月15日 (月) 23時44分

「不二家」のニュースが日本全国に飛び交っておりますが、
こんなシステムを活用して「食の安全」に取り組み始めている会社も、
一部で、出て来ています。
こちらです。
↓↓↓↓
http://fsr.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_b19c.htmll

こちらは、日本の食品業界では、初の試みだと思いますので、
一度、ご覧頂けませんでしょうか・・・・?

投稿: skywork | 2007年1月16日 (火) 01時19分

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