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2007年2月 8日 (木)

日本IBMと架空循環取引

ヘラクレス上場のITソフト会社であるデジタルデザイン(本社:大阪市)が2007年2月2日付で、日本IBM、ネットマークス、日本IBMの担当者とネットマークスの担当者を被告とする12億円の支払を求める訴訟を大阪地裁に提起した旨のデジタルデザインの2月2日付プレスリリースがありました。

このデジタルデザインのプレスリリースを読んでいくと最後の方に、次の文章があり、そうなると、日本IBMが7.7億円の支払に一度は合意したのであり、日本IBMも何らかの関与があり、グレイと言うことなのだろうかと思ってしまいました。

そこで、当社はこれを裁判所で判断してもらうべく提訴の準備を進めてまいりましたところ、日本I B M から当社の損失の防止に向けて関係方面との協議に最大限の努力をするとの連絡を受け、その申入れのとおり相互に同意しうる解決策についての協議をしてまいりました。
しかしながら、日本IBM の最終回答は、当社、ネットマークス及び日本IBM の3 社が、相互に免責し、かつそれぞれに対して本件に関する一切の請求ならびに権利行使をしないことを書面にて合意することを条件とした770 百万円の支払いをおこなうとの提案でありました。

もう少し、見てみることとします。

1) デジタルデザイン

2000年6月にヘラクレスに上場。最近の業績は以下の通りで、従業員数は変化していないが売上と利益は右肩上がりです。

  平成16年1月期 平成17年1月期 平成18年1月期
連結売上高(百万円)  633  2,476  3,459
経常利益(百万円) 22   48  148
純利益(百万円)  16  53  104
従業員数  30  23  26

デジタルデザインの株式の54%は、創業者寺井和彦氏が保有し、取締役は寺井和彦氏を含め5名で、他の4名中2名は日本IBM出身者ですが年齢は69歳と67歳で、67歳の方はIXIの取締役をされていたこともあります。

デジタルデザインは、2006年7月の中間期において、日本IBMあての売上債権1,189百万円に対し全額貸倒引当金を計上し、中間期純損失10.8億円となっています。しかし、2006年1月末の売掛金と買掛金を見てみると以下のように日本IBMの名前はなく、売掛金に東京リースそして買掛金にIXIがありました。1月24日のエントリー IXI(アイ・エックス・アイ)の民事再生手続の申し立て1月27日のエントリー IRI発表のIXIによる循環取引(続編)2月 6日のエントリー IXI-東京リース-日本IBMで触れた会社名が見受けられます。

相手先  売掛金 単位(千円)
東京リース株式会社   1,039,605
株式会社ネクサス 11,450
アイテックス株式会社 10,500
三菱電機トレーディング株式会社 7,875
チッソエンジニアリング株式会社 3,150
その他 7,976
合計 1,080,557

相手先  買掛金 単位(千円)
株式会社アイ・エックス・アイ  1,008,000
株式会社シー・エヌ・エス 15,750
株式会社ノバス 7,510
エム・イー・ジー株式会社 673
その他 554
合計 1,032,488

2) ネットマークス

ネットマークスは、日本最大の電線メーカーである住友電工が52.9%の議決権株式を支配する住友電工の子会社です。従い、取締役9名の過去の勤務または現在の兼任先は4名が住友電工、2名がNTTで他3名は野村総研、コニカミノルタと日本銀行です。事業規模も下記のように大きい会社です。

  平成16年3月期 平成17年3月期 平成18年3月期
連結売上高(百万円) 41,204 57,836 59,251
経常利益(百万円) 1,312 2,164 1,002
純利益(百万円) 606 1,067 347
従業員数 761 899 979

デジタルデザインが訴訟を起こした取引に関しては、ネットマークスは2006年8月31日に有価証券報告書の訂正を提出しています。その訂正のなかで、日本IBMに対する売上が2006年3月期において70億円含まれていたとし、売掛金の内訳についても以下のように訂正したのです。(売上高、利益の変更は無し。)

売掛金(訂正前) 単位(千円) 売掛金(訂正後) 単位(千円)
㈱アイ・ティ・フロンティア 1,589,327 日本アイ・ビー・エム 1,320,115
㈱理経 621,085 ㈱理経 621,085
㈱ネットマークスサポート 488,848 ㈱ネットマークスサポート 488,848
㈱デジタルデザイン 450,024 ㈱デジタルデザイン 450,024
シスコシステムズキャピタル㈱ 379,831 日立電線㈱ 410,854
その他 10,253,407 その他 10,491,596
合計 13,782,526 合計 13,782,526

そして、2006年9月の中間期において1,058百万円の貸倒引当金を繰り入れ、これについてはデジタルデザインに対する未回収債権に対する貸倒引当金であると説明しています。今度は、デジタルデザインに対する債権となっており、訳がわからないのですが、ネットマークスは2月5日付で次のプレスリリースを行っています。この中に、「これまでの調査では、取引の目的物の実在は確認されておらず」との文章があり、やはり架空の取引が存在したようだと思いました。

2 月5 日ネットマークスによるプレスリリース 株式会社デジタルデザインの「訴訟の提起に関するお知らせ」に関する当社の見解について

3) 日本IBM

本件に関して日本IBMの名前は、各所で出ており、会社ではなくある一社員か数名の社員かの関与はあったのであろうと思います。日本IBMのプレスリリースを見ましたが、関係するような記述は見あたりませんでした。同社にとっても現状不明であろうと推測するのですが、判明した段階でIT産業のリーダーのCSRとして、どのような不正取引であったのか公表して貰いたいと私は思うのですが。

参考として日本IBMの売上高と利益を掲げておきます。

  2003年12月期 2004年12月期 2005年12月期
連結売上高(百万円)  1,497,982 1,460,921 1,302,681
経常利益(百万円) 149,895  151,194 119,144
純利益(百万円)  79,276 84,986 87,727

ITとは、不正があっても分かりつらい商品なんだとつくづく思ってしまいました。コンピューター・プログラムなんて、契約したとおりの性能があるかどうかなんて、試験したとしても、重大なバグが残っているかも知れない。ネットマークスの2月5日のプレスリリースのように「販売先からの当社に対する入金の確認が支払のための条件」ということもしばしばあるのでしょうね。

本エントリーに関しては、ろじゃあサンのブログデジタルデザイン社のHPにも出ていた件・・・東洋経済のバックナンバー見つけた(^^)東洋経済TKプラス(2006年10月13日) 新たな架空取引疑惑 日本IBMが主導かに記事があるのを知り、辿っていって見るとこのようになりました。

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