« 2007年1月 | トップページ | 2007年3月 »

2007年2月28日 (水)

裁判員だったらどうする

元検弁護士のつぶやきからのネタで、検察が2月26日の論告求刑公判で被告2人に死刑の求刑を行った次の裁判です。

産経 千葉 2月27日 詐欺団仲間割れ リーダーの男ら2人に死刑求刑
読売 千葉 2月27日 振り込め詐欺内紛4人殺害主犯格2人死刑求刑
朝日 2月26日 詐欺団の暴行4人死亡事件、2人に死刑求刑 千葉地検
時事通信 2月26日 リーダーら2人に死刑求刑=詐欺団4人リンチ死-千葉地裁

検察は死刑を求刑した。一方、被告2人は否認している。この事件の知識はありませんが、上記の記事によれば以下のようなことです。

振り込め詐欺グループの仲間割れから監禁され、リンチを受けた4人が死亡した事件で、殺人や傷害致死、死体遺棄などの罪で死刑が求刑された。この2人は詐欺グループの幹部で殺害の実行犯は別におり、その3人は「この被告らの指示を受けて殺害した」などと主張した。しかし、この両被告は「指示も共謀もなかった」と殺人と傷害致死の罪について否認している。

嫌な事件ですが、裁判員に選ばれたら逃げるわけにいかない。3人の実行犯は犯行を認めているのだろうから、この2人の指示によるものかどうかでしょうか。情報がなくて何も言えませんが、仮に裁判員として裁判に参加していたとしても、真実は明らかになっていない可能性があると思います。それに対して、検察が死刑を求刑したら悩むだろうと思います。被害者の感情という論理を耳にすることがありますが、刑は刑であり復讐であってはならないと考えます。

最高裁判所の裁判員制度についてのWebはここにありますが、2年少し後の2009年5月頃には制度が開始します。今までは、専門家に全て任せておけばよかった。でも、国会で我々が「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」を制定したのです。罪を犯せば、お上が裁くのではない。自分たちが裁くのです。良心に従って、裁くことは人として重要なことであると思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月27日 (火)

日経のみすず監査法人に関する記事

1) 日経の記事

25日の日経に次の記事が出ました。

みすず、トーマツに300社移管・監査業務

2) みずず監査法人の発表

上の記事を受けてのみすず監査法人の発表は以下です。

2月25日付け 日本経済新聞(朝刊)の当法人に関する記事について (07年02月26日付けプレスリリース)

文章は、次の通りです。

標記記事において報道された、当法人の監査先企業の移管につきましては、当法人と他の監査法人との協議によって決定をする性格のものではないと認識しております。

  なお、当法人は、2月20日に公表した他の3監査法人との合意に基づき、人員の移籍について協議中でありますが、これにつきましては、移籍先、移籍人数等に関して、本日現在、未定であります。

3) 会社法では

監査法人を選ぶのは監査法人と監査契約を締結する会社であり、しかもその選任は株主総会の決議を必要とします。その意味でみすず監査法人の言っていることは正しいし、私が2月21日のエントリー:みすず監査法人の解散で言っているとおりです。次の会社法329条1項が株主総会での選任を規定しており、会社法338条2項が変更しない場合には決議がなければ再任とみなすとの規定です。

第329条 ① 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

第338条 ① 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
② 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。

即ち、みすず(中央青山)監査法人により監査を受けていた会社は会計監査人が代わることになるので、全て次回(3月末決算の場合は6月末)の株主総会で選任決議を行う必要があります。

4) でも、・・・・・

でも、そう簡単ではないのです。6月末の株主総会での選任の為には、2週間前には議案を記載した招集通知を送付する必要があるので、送付前の取締役で総会議案を決議しなくてはなりません。と言うことは、遅くとも6月初めには内定していなくてはなりません。

でも、これは会社の都合であり、監査法人からすると、監査を引き受けるからには、その会社の監査を責任を持って実施可能と判断出来なければなりません。これは、理想論を述べているのではなく、監査が不十分であった場合には、訴訟されるかも知れないし、最悪は監査法人を解散しなければならないリスクが考えられることとなった。「みすず」がその例を示しているだとすれば。言ってみれば「粉飾をするのは会社です。監査法人は粉飾を見抜けなかった。」ですから。連結財務諸表なんて大きな会社は嫌と言うほど対象の子会社・関係会社があります。2月23日 日経-三洋電機、不適切な会計処理の疑い・証券監視委が調査のような報道がありますが、これも子会社に関連してです。そして、監査法人というのは、社員は無限責任です。(勤務会計士は、大丈夫と思いますが社員会計士は無限責任です。)

だから非公式に、会社と監査法人が相談をしておかないと取り残されてしまいます。取り残されてしまったら、上場廃止になってしまうリスクがある。監査法人ではなく公認会計士個人に監査をして貰う方法もあると言えば、ありますが、監査という膨大な量の作業を個人が出来るほど簡単でもないのです。個人が監査をしていて上場廃止となったのが、西武鉄道です。西武鉄道には個人の会計士2人が会計監査人になっていた。当然、監査なんて出来ない状態で、かの堤義明がワンマンで取り仕切り株主構成まで誤魔化していたのを認めていた。監査とはほど遠い実体であったと言われても仕方がないと思う。参考まで、このNikkei Netが西武鉄道事件をよく書いていると思います。

実は、「みすず」の会計士さんも大変ですが、。「みすず」に監査を依頼していた会社も大変です。しかも、これから時代は、もっと大変な方に動いていますから。金融証券取引法の内部統制報告書が2008年4月から始まり監査法人による監査証明を得なければならないし、四半期決算に対する監査も同時に始まるはずです。(金融証券取引法193条の2) 公認会計士・監査法人の仕事はIPOに関連する仕事もあるはずですし、デューデリ関係の仕事もあるでしょう。でも、面白い時代かも知れません。時代が色々動いているとき。そんなときに仕事が出来るのは、ある面では幸せだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月21日 (水)

みすず監査法人の解散

1) みすず監査法人の消滅

ついにこのニュースが出ました。

日経 2月20日-みすず監査法人、実質解体へ・3法人に業務移管

3法人というのが、どう考えればよいのやらと思ってしまいます。即ち、全世界の公認会計士事務所はENRON事件でArthur Andersenがなくなってからは、4つになってしまい、日本の監査法人との関係も以下でありました。

  • 新日本監査法人・・・・・・・・・・・・・Ernst & Young
  • 監査法人トーマツ・・・・・・・・・・・・Deloitte Touche Tohmatsu
  • あずさ監査法人・・・・・・・・・・・・・KPMG
  • みすず監査法人(旧中央青山)・・PricewaterhouseCoopers
  • あらた監査法人(中央青山の人が設立)・・PricewaterhouseCoopers
  • あらた監査法人の概要はここにありますが、中央青山監査法人がカネボウ事件により監査業務が昨年7月から60日間停止の行政処分となったときに、中央青山から離れた会計士の方々が2006年6月1日につくられた監査法人で、あらた監査法人は業務移管先からはずれていてよいのだろうかと思ったものですから。

    しかし、何よりも気になったのは、監査法人を選ぶのは監査法人ではなく、会社であり、取締役会の選任案を株主総会で決定するのであり、みすず監査法人が移管先を・・・・というのは変な気がしました。

    2) 日興事件について

    日興コーディアルについては日興コーディアル元役員への訴訟日興 ベルシステム24の推理等いくつかのエントリーを書いてきましたが、みすず監査法人の消滅にまでつながるとは私も予想していませんでした。何故なら、経営者と会計士・監査法人との情報の非対称性は大きく、経営者に「・・・である。・・・の方針で対処している。」と言われたら、会計士・監査法人は否定できないからです。

    ベルシステム24のEB債の時価評価については、EB債の元となるベルシステム24の株式は2004年9月末では一部上場株式であったのです。日興コーディアルがベルシステム24の株式取得目的を転売目的の投資であると説明していたら、時価評価を行って利益を計上することが正しくなると言うか、利益計上を否定する根拠が失われていくと思います。

    私が思う可能性は

    (1) このエントリー日興コーディアルの報告書を読んでのなかで、9月16日の夜の会議でNPI取締役会のバックデートを実質決定したと書きました。このタイミングは9月中間期の数字のことが一番頭にあったはずです。山本NCC取締役兼CFOなんて頭の中は全てそれだったと思います。そしてEB債とし時価評価を行う方針を決めたなら、その後は会計士・監査法人をいかに誤魔化すかに集中したと想像します。

    (2) 8月6日にベルシステム24の2/3の株式取得を果たすのですが、ベルシステム24への投資が失敗であったと9月16日より少し前に気が付いたと仮定します。その場合は、失敗であったことを隠し通そうとするでしょう。そして逆に利益を計上することに走った。これ、仮定です。

    (3) 次の仮定は、会計士・監査法人が真実を途中で知ってしまった場合です。EB債の評価問題だけならよいのですが、(2)もこの仮定通りであり、(2)についても知ってしまった場合。インパクトが大きすぎます。だから、目をつむってしまったという可能性。

    監査法人は不滅みたいに感じていましたが、収入が少なくなれば当然成り立たない。でも、収入源を支払ってくる顧客(本当は株主でしょうが)である経営者にこびを売って「ご依頼事項は何でもやります。」なんて言って活動するわけにはいかないし、そんなことしたら身の破滅になってしまう。会計士・監査法人って大変ですね。

    | | コメント (0) | トラックバック (1)

    2007年2月20日 (火)

    20日・21日の日銀政策委員会・金融政策決定会合に期待

    2月21日と22日に日銀政策委員会・金融政策決定会合が開催されます。前回の会合は1月17日と18日で、この会合ではこの発表の通り「無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%前後で推移するよう促す。」で、それ以前の方針継続でした。

    2月21日と22日の会合は注目すべきとの意見があります。何故なら、1月の決定は日銀の委員が政府の意向に影響されたとの噂があるからです。もし、日銀が政府から独立しているなら今回は利上げをするはずだと見る人が多いのです。何故、今回かと言うと、参議院選が近づくと政府・与党の圧力が一層強まり、利上げのチャンスを失するという見方です。

    利子率をあげると様々な影響はあるのですが、0.25%は正常とは言えないと私は思います。本当に日本経済を回復させようと思うなら、人気取りの為の利率ではなく、国民の為の利率にすべきだと思います。少し、論点をあげてみます。

    1) 経済成長率(実質GDP伸び率)

    実質GDP伸び率が絶対的真実とは言えませんが、一つの指標ではあり1956年以降の前年比伸び率を示したのが以下のグラフです。1960年頃からの高度成長期には10%以上の伸びがあった年もありました。そして1973年に第1次オイルショックがあり、1974年に一旦成長率はマイナスになりました。その後は1990年前後に4年強のバブル景気があり、1998-99年頃はマイナスないしゼロとなり、最近は2%強の成長率です。

    Gdpgrowth

    2%強の成長率は、経済発展を遂げた今の日本にとっては順当な成長率であると思います。高度成長は何故可能であったかと言えば、日本は世界の工場として成長を遂げることが出来たのであり、そんな状態には日本はもうなれないはずです。世界の工場になれる国は、BRICsのブラジル、ロシア、インド、中国とそれに続けるのは大国ではないがベトナム・タイ位なのかと思います。2%強の成長が継続できる政策にすべきと思います。金利もOECD諸国並にせめて3%を目指してはと思います。(急激には無理ですが)

    2) 実質実効為替レート

    日銀が試算した主要15通貨、26ヶ国・地域に対する為替レート、物価指数で実質化し、通関輸出金額ウェイトで加重平均した為替レート指数があり、これを実質実効為替レートと呼びます。以下が、日銀2007年1月の月報にある実質実効為替レートです。

    Photo_12

    1973年3月を100とした指数なので、通常とは異なり円の価値を示しており、数字が小さい方(グラフの下)が例えば1ドル=200円のような円安で、数字が大きい方(グラフの上)が1ドル=80円のような円高です。現在は、すごい円安です。為替介入を行っていないのに、何故このような円安になっているのか不思議です。極端なことを言えば、円安メリットは輸出企業に偏在していると言えるでしょう。

    そのうちに反動が来て、為替レートが正常値に戻る可能性があります。その時は、日本経済に与える影響は相当厳しいだろうと思います。だから、少しずつ誘導していかないといけないと思います。

    3) キャリートレード

    外国為替証拠金取引という言葉を聞かれたことがあるはずです。基本的には、キャリートレードは外国為替証拠金取引と同じです。円金利が低いから、円で運用せずに、金利の高い外国通貨で運用するのです。外国為替証拠金取引は、証拠金を取引担保とし、取引そのものは、円で借入を行い、外貨で運用する取引です。だから、証拠金の何倍かの金額の外貨取引も可能となり、うまく行けば利益も大きいが損をするときも大きいというわけです。

    個人がする外国為替証拠金取引の場合は、取引や為替の手数料もそれなりに要求されますが、金額が大きくなればなるほど、絶対金額はともかくも率にすれば下がります。プロがこれをやる場合は、すごい金額です。例えば、1997年のアジア通貨危機はソロスのヘッジファンド等が行ったキャリートレードによると言われています。ヘッジファンドの現在の円ポジションがどうなっているかは、公式な数字はありませんが1兆ドルと言う話しもあります。ヘッジファンドは必ずしも外貨マーケットで直接外貨を売買しているとは限らず、デリバティブを多用しているはずですが、手じまいをするときは一斉にするはずです。その時、巨額の為替取引が生じ大混乱が発生すると私は予想します。その結果は、日本大不況かも知れないと。

    金利を正常に戻しておかないリスクというものがあると私は思います。そのことを真剣に考えて委員の方々に議論して欲しいと思います。ちなみに、1月の会合では6人対3人で据置派が勝ちました。

    4) 参考Web

    このbloomberg.com Feb. 19 Yen Falls; Government Wants BOJ to Make `Appropriate' Decision は面白いです。61%の確立で0.5%に上げるというのです。NB Online 2月14日 危ない橋を渡っている日本の通貨-投機筋と低金利が円安を増長し、世界経済を危険に曝しては英国エコノミスト誌の記事の翻訳ですが、私と同じ様なことを言っています。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    2007年2月18日 (日)

    法律での親子

    2月15日のエントリー「子どもの父親」に対し、fantyさんにトラックバックを付けていただき、法律での親子に関しての話を書いてみます。

    1) バカな警察官と検察官

    これは、fantyさんのトラックバックで触れておられるニュースです。次のサイトをご覧下さい。

    時事通信 2月16日-民法の離婚規定に反し起訴=出生届めぐり-地検が謝罪、公訴取り消しに・大阪
    朝日・大阪 02月16日-虚偽出生届で起訴の中国人女性 一転、適法に
    読売・大阪 2月17日-離婚後140日「前夫の子」出生届、民法見落とし起訴

    民法772条に従って、子どもの出生届を出したら、元の夫が警察に訴えて、警察/検察は公正証書原本不実記載で起訴したのです。なお、公正証書原本不実記載とは、次の刑法157条です。

    公正証書原本不実記載等
    第157条  公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    しかし、次の毎日新聞の記事では「女性は当初から「前夫との子供ではないが、そう届け出るよう(役所で)指導された」と供述。」と書いてあります。警察や検察は一旦思いこんだら相手の言うことを素直に聞く耳を持たない人達が集まっているのかと感じてしまいます。(2月14日のエントリー:それでもボクはやってないを思い出します。)警察官、検察官の方々は、国民、市民に信頼される様に努力して欲しいです。

    毎日 2月16日-前夫の子:届け出女性を不実記載で「誤って」起訴 地検

    2) 法律による親子

    血のつながっていない法律上の親子というケースは存在します。養子縁組で、親子となった場合もそうですし、そうでないケースも存在するはずです。次の2006年7月7日の最高裁判決は、その様なケースでした。

    平成18年07月07日最高裁判決 親子関係不存在確認請求事件 (判決全文はこちらです)

    自分たち夫婦の子どもではないのだが、自分たち夫婦の子どもとして届けを行った。やがて、その子は大きくなり成人になる頃自分の生い立ちの事情を知った。ドラマだったら、一波乱あって、その上で互いの認識を深め、最終的には本当の親子以上になったとなるのでしょうね。

    現実の世界は、相続とか親の扶養義務とかくっついてくるし、兄弟がいたら相続財産の争いにもなる。厳しい現実があります。最高裁判決の事件の概要は以下です。

    母が子に対して親子関係不存在確認を訴えたのですが、その子は戦時中の1943年生で、養父・養母の子として出生届が出され、育てられました。兄とは6歳離れていることから、兄は最初から自分の血のつながった弟ではないことを知っていたと思います。その子は、高校卒業後、親の経営するそば屋を手伝い、33歳の時に養父が69歳で亡くなり、養父の財産の1/3を相続しました。51歳になったとき、養母は親子関係不存在確認の調停の申立てを行いましたが、この時は、これを後で取り下げました。しかし、2004年になり、再び親子関係不存在確認の調停を申し立て、調停が不成立となり、裁判に持ち込まれました。判決文にあるのですが、兄が自分への相続が有利になるように運ぼうとする意向が働いたものと思われます。母も実子に有利になるようにしたかったのでしょうね。

    東京高等裁判所は、養母の訴えを認めました。しかし、最高裁は、親子関係不存在確認を訴えは権利の濫用であるとして原判決を破棄し、東京高裁に差し戻しました。

    血のつながりやDNAより、もっと大事なつながりが親子の間にあるし、そちらの方がずっと大切だと私は思うのですが。甘いのでしょうか?朝日の2月10日のBeeにこんな相談とアドバイスが出ていました。

    3) 民法733条の改正は?

    民法772条が話題になっていますが、民法733条(再婚禁止期間)の改正の必要性はないのでしょうか?民法733条は次の条文です。

    第733条  ① 女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
    ②  女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

    民法733条は主語が”女は”となっており、女にしか適用されない条文です。DNA鑑定がある現代において、733条は女を不当に縛り付けていると、これを読んだ女性の方は感じられないでしょうか。772条の改正を検討する際に、733条の改正も検討すべきであると私は思います。

    | | コメント (0) | トラックバック (2)

    2007年2月17日 (土)

    サッポロHD vs スティール・パートナーズ

    15日、サッポロホールディングス(株)は、同社株式の大規模買付行為にかかる意向表明書をスティール・パートナーズより受領したと発表しました。その発表は次のWebにあり、pdfの方にはスティール・パートナーズの手紙も掲載されています。

    2007年2月15日ニュースリリース 当社株式の大規模買付行為にかかる意向表明書の受領に関するお知らせ(html)
    2007年2月15日ニュースリリース 当社株式の大規模買付行為にかかる意向表明書の受領に関するお知らせ(pdf)

    新聞報道には、以下のようなものがありました。

    日経 2月15日-米スティール、サッポロに買収提案・総額1500億円でTOB
    朝日 2月15日-米系投資ファンド、サッポロに買収提案
    産経 2月15日-サッポロにTOB提案 米系ファンド、株66.6%取得で
    毎日 2月15日ーサッポロHD:米ファンドが買収を提案 敵対TOB発展へ
    読売 2月16日-アサヒ、サッポロに統合提案…米系FとTOB戦も

    上記のうち、読売はアサヒビールから統合提案があったと報じていますが、サッポロHDはこのニュースリリースの通り「そのような事実はございません」と否定しています。また、このサッポロHDのニュースリリースのように麒麟麦酒との経営統合との報道もあったと思うのですが、こちらは発見できませんでした。サントリーとも可能性がないわけではなく、勿論単独ということもあり得るし、見物するには興味がある状態です。

    1) 友好的?敵対的?

    上記新聞の中で、毎日は敵対TOBとの言葉を使っています。私は、2月13日のエントリー: 日興コーディアル元役員への訴訟の”4)蛇足”で、友好的や敵対的の意味は「取締役会」が賛成しているか反対しているかであると書きました。2月15日のニュースリリースに添付されているスティール・パートナーズの訳文で手紙のタイトルは「貴社株式の友好的取得について」となっていました。そこで、原文である英文を見ると”Discussions in Relation to a Recommended Transaction”でした。参考訳としてあり、訳が正しいとか間違いとかの議論をするつもりはなく、日本語と英語の差が面白いと思いました。本文の「(g) 取得後の計画等」においても「・・・現在のところ、貴社の事業および取締役を含む人事を変更することは考えておりません。・・・」(”(g) Plan after acquistion  ......Notwithstanding this, we have confidence in the current management and employees of the Company, and at present we are not considering changing the business and human resources of the Company, including its board members....”)と書いてあるのであり、提案は友好的株式の取得と言えると思います。

    但し、日本語の友好的とは取締役会が賛成するか反対するかであるから、その判断は取締役会となります。

    2) サッポロHD取締役会はどう考えるか

    本日、サッポロHD取締役会は当社株券等の大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)に関するお知らせ を発表し、3月29日開催予定の定時株主総会で承認を得て採用することとしました。報道としては日経2月16日-サッポロ、買収防衛策を総会で見直しです。但し、これはスティール・パートナーズの提案を評価した結果ではなく、2006年2月17日に発表した「大規模買付行為への対応方針」の小改正であり、基本線は2006年2月17日の対応方針と同じです。

    従い、サッポロHD取締役会のスティール・パートナーズの提案に対する見解は未だ待たなければなりません。しかし、対応方針でスケジュールは次のようになっているので、この予定のはずです。

  • 意向表明書受領後10営業日以内に、大規模買付者に取締役会が必要とする情報のリストを交付
  • 取締役会は、必要情報入手完了後、60日間(場合によっては90日間)評価、検討、交渉、意見形成、代替案立案のための期間を持つ。大規模買付行為は、取締役会評価期間の後にのみ開始される。
  • 大規模買付者がルールを遵守した場合には、取締役会は、反対意見の表明や代替案の提示は行うことがあるが対抗措置はとらない。但し、大規模買付行為が明らかに濫用目的によるものと認められ、会社に回復し難い損害をもたらすなど、株主全体の利益を著しく損なうと判断される場合には、取締役会は適切と考える方策を取ることがある。
  • 大規模買付者により、ルールが遵守されなかった場合には、取締役会の承認が条件となる新株予約権の発行等の対抗措置をとり、対抗することがある。
  • 3) 今後の展開

    今後の展開はどうなるのか、よく分からないのですが、興味津々です。スティール・パートナーズは何を狙っているのか。ファンドですから、利益だ、リターンだとは言えるのですが。スティール・パートナーズが昨年10月に明星食品にTOBを行い、結局は日清食品が明星食品の取締役会が支持するTOBを行い12月に86%強の株式を取得した。スティール・パートナーズのTOB価格は700円。日清食品は870円であった。(日経 2007年12月15日 日清食、明星食株86%強取得・米スティールも全株応募 )結局、スティール・パートナーズは86億円弱で売却した計算となる。同じ様な、ストーリーがあり得ると言う人もいる。このこの毎日の記事は、外資の可能性も指摘している。

    本日のサッポロHDの株価はストップ高の891円でした。50%分株式を取得するには株価900円で1700億円を要います。高いのか、安いのか。日興のベルシステム24のケースと比べれば、安いと感じられ、この辺りが、スティール・パートナーズの狙いであったのでしょうか。即ち、外国のビール、飲料、食品メーカー等と組めば、もっと高い付加価値をつけられる会社であると評価したとか?勿論、これ勝手な想像です。

    どのような展開になるのでしょうか?もし、スティール・パートナーズのファンド運用成績がよいなら、日本の年金資金も一部資金の運用にスティール・パートナーズを利用すべきなのでしょう。そんなこと、既にやっておられるかも知れませんが。

    | | コメント (0) | トラックバック (1)

    2007年2月15日 (木)

    子どもの父親

    本当は、「生む機械」発言の続きをそろそろ書きたいのですが、2月7日の衆議院予算委員会の議事録が衆議院TVにはあるが、活字状態の議事録が未だアップされていないことから、2月7日の衆議院予算委員会で民主党の枝野幸男民議員が取り上げた民法772条問題のことを書いてみます。「生む機械」発言の続きは会議録が出てきたところで書くことにします。

    1) 民法772条

    何が書いてあり、何が問題かですが、取りあえず条文を読む必要がありますが、それは以下の通りです。

    (嫡出の推定)
    第772条
     ① 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
    ② 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定
    する

    第1項は問題がないはずです。第2項についてですが、次の毎日の記事を見ていただくと分かると思います。

    毎日1月25日-民法772条:出生届不受理でNPOが法務省などに陳情
    毎日2月1日-無戸籍:女子高生が旅券申請で要望 親の離婚事情で
    毎日2月4日-民法772条:02年に自治体側が改正要望 法務省拒否

    俗に妊娠期間を十月十日と言います。しかし、WHO指針による出産予定日は最終生理開始日から280日目(40週)で、妊婦が最終生理開始日を自己申告して、280日目が産科医から予定日と告げられるわけです。そして、正常なお産の範囲は妊娠37週0日から妊娠41週6日までと言われています。排卵日から計算したら245日~280日であり、正常な場合は300日より必ず短くなります。でも、こんな計算より何より、離婚する場合は、戸籍上の離婚よりも前に、結婚状態の破綻があり、財産分割や慰謝料で話しがつかない様な期間等があるはずです。

    現在は、DNA鑑定が簡単に実施できるようになりました。民法772条が離婚後の子どもの権利と離婚した(する)女性の権利を制限していると言えます。

    2) 772条2項の存在理由

    何故772条があるのかと言うと、民法であるからと私は思います。会社法や証券取引法/金商法等は取引に関するルールを定めた法ですが、民法は既に存在する社会規範を文章にした面が多いと思います。家の存在が大きく、男が経済力と社会的な力を持っていた時代を思い浮かべるとよく分かると思います。離婚しても(離縁と呼んだ方が、よいかもしれませんが)子どもの養育義務を男に負わせせておく必要性です。逆に女は簡単に離縁された時代が長かったかも知れません。

    3) 772条2項は改正されるか

    毎日の次の記事は、7日の衆議院予算委員会で枝野議員に対する答弁として、法相「裁判以外も検討」 理解示す と書いてあるのですが、正確なところは議事録を読んで下さい。私は、そんなに単純ではなかったと理解しています。

    毎日2月7日-民法772条:法相「裁判以外も検討」 理解示す--衆院委

    民法の改正は容易ではないと思います。勿論、問題があることは、どしどし言うべきです。破綻した夫婦が婚姻を継続すること自身私は変だと思うし、離婚の自由は確保されなければならないと思います。そうなると、「裁判上の離婚(770条) 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。」は、これでよいのかも検討が必要となるのかとも思います。

    重要なことは、法よりも実際に生活していくことであると思うのです。そして時代を変えていく。

    4) 実際の対応はどうすべきか

    実は、1月25日の毎日の記事にあるのです。家事審判法23条(条文は続きを読むに入れておきます)による家庭裁判所に親子関係不存在確認の調停の申立てを行うのです。この申し立てをする際、母親が法定代理人となり、子どもの出生届は、提出すると父親が一旦は戸籍上前夫となってしまうので、出生届を出さずにすることです。これ、可能なはずです。

    当然、家庭裁判所は前夫の意見と現夫の意見を聞くことになるが、通常であれば、もめないはずでDNA鑑定も不要で調停成立となるはずです。もめたら裁判となりますが、よほどのことがない限りDNA鑑定の結果が通ると私は思います。逆にもめるケースとは、前夫も自分の子どもであると主張する場合であり、もしかしたらそれなりの理由があるかも知れません。

    参考として、次の裁判所のサイトをご覧になって下さい。民法772条が改正されないと離婚できないなんてことありません。また、子どものことを本当に思うなら、この親子関係不存在確認の調停の申立てを行うことと思います。多くの方がそうされていると思います。

    裁判所 親子関係不存在確認

    続きを読む "子どもの父親"

    | | コメント (0) | トラックバック (3)

    2007年2月14日 (水)

    それでもボクはやってない

    1) それでもボクはやってない

    周防正行監督の映画それでもボクはやってないを見てきました。警察の取調室における取調、勾留、留置場での待遇、裁判、保釈、判決等々普通では、なかなか体験できないことを見ることができました。疑似体験というと大げさすぎるし、あまり体験したくないことです。

    2) 富山の冤罪事件

    覚えておられる方もあると思いますが、次の報道が今年の1月19日にありました。(今回は、北日本新聞の報道を引用します。)

    1月19日-刑期終えた男性は無実 富山県警発表
    1月20日-服役2年 男性無実、14年の婦女暴行 県警が誤認逮捕

    2002年1月14日に婦女暴行、3月13日に婦女暴行未遂事件があり、2002年4月15日に容疑者を逮捕しました。当初は否認していましたが、その後、容疑を認めたことから逮捕し、公判でも起訴事実を認め、2002年11月に懲役3年の実刑判決となりました。そして、判決から2年2月後、逮捕から2年10月後の2005年1月に刑務所を仮出獄し、その後判決から3年を経過し刑期を終えました。

    無辜の人が逮捕から仮出獄まで3年近く自由を奪われたわけで、人の一生にとって非常に長い期間であると思います。しかも、これ21世紀に日本で起こったことです。何が、どうなっているのだろうと思います。富山県警は、婦女暴行と婦女暴行未遂が続いていたから犯人逮捕に焦っていた。そして、とんでもないことをしてしまった。検察官も過ちをおかした。次の記事を読んで下さい。この人が普段履いていた靴のサイズは24.5センチであったが、犯行現場から採取された足跡の大きさは約28センチであった。家宅捜索でも、足跡に合う靴は押収されなかった。そして、「送検時の検察官による弁解録取と、その後の裁判官による拘置質問で容疑を否認していたことが新たに判明した。」と書いてあります。裁判官もどうなのだろうか?弁護士は?と思ってしまいます。(これ以上の詳細を知らないので、何も言えません。)

    1月23日-現場足跡との差3.5センチ 県警誤認逮捕の男性

    富山地検は9日、この人の無罪を求め、富山地裁高岡支部に裁判をやり直す「再審」を請求しました。

    2月9日-地裁高岡支部に再審請求 県警誤認逮捕で富山地検
    2月10日-無罪求め再審請求 県警誤認逮捕

    1月30日に法制審議会刑事法部会は、刑事裁判で被害者の権利を拡大する要綱を決定したとの報道があります。被害者や遺族らが裁判に出席し、被告に直接質問したり、量刑を主張できるようになる方向と思います。何が、言いたいかというと、決して世の中単純ではないし、人は過ちをおかすものです。富山事件の法廷にも被害者の女性は証言のために出られたはずです(非常に嫌な思いのはずですが)。そして、この人が・・・と言われた可能性があります。参考に、

    Nikkei Smartwoman 1月31日-刑事裁判に被害者参加・法制審が要綱

    3) 国選弁護人

    「それでもボクはやってない」の弁護士(役所広司、瀬戸朝香)は私選弁護士です。そして、弁護側の主張を行うために再現ビデオを作ったり、駅で協力してくれる目撃者を探すためにビラを配ったり、法廷には支援してくれる仲間が大勢来てくれたり。実際には、なかなかこうは出来ないだろうなと思ってしまいます。

    実際に警察に呼ばれたら、なかなか大変です。こんなことを書かれた人がおられます。

    以前同行していた友人が19時頃交通事故に遭いました。救急車に付き添い入院させてから、警察に行き事情説明を行ったのですが、警官の作成した調書をそのまま認めないと留置場に泊まってもらうと言われ、反論したところ、大きな声とスポットライトによって恐怖心で腰砕けになりました。まして、犯人扱いされたのであれば相当な苦痛が生じていたでしょう。

    ここに、兵庫県弁護士会の2004年7月14日付け国選弁護人報酬の増額等を求める会長声明があります。この文書は、「わが国の刑事裁判の7割以上について国選弁護人が選任され・・」と始まっているように、多くの刑事事件は国選弁護人による弁護です。しかも、裁判からです。兵庫県弁護士会の会長声明にもあるように国選弁護人に対する報酬は低く、地方に行けば、弁護士不足です。

    被害者の人権ということが叫ばれていますが、冤罪をつくらないということも大事だと思います。

    | | コメント (0) | トラックバック (1)

    2007年2月13日 (火)

    日興コーディアル元役員への訴訟

    1) 日興CC元役員に対する損害賠償の訴訟

    次の産経の記事ですが、日興コーディアルグループ(日興CC)は前CFOの山本元と前NPI会長の平野博文に対し損害賠償請求訴訟を起こす方針を固めたと報道がありました。

    産経2月10日-日興コーデ、元役員ら旧経営陣を提訴へ 不正会計問題

    理由は、特別調査委員会の調査から元役員らが法令に違反した可能性が高いことが判明し、東京証券取引所は3月中旬に日興コーディアルグループ株を上場廃止か、維持かを決める方針であり、旧経営陣に対する責任追及により、上場を維持したい考えであると書いてあります。

    売れない経営コンサルタントのブログ12月27日のエントリー:日興役員に対する株主代表訴訟で代表訴訟の可能性を書きました。代表訴訟とは、株主が会社に成り代わって提訴する訴訟です。代表訴訟の結果、取締役に訴訟を命じる判決が出ても、その支払先は会社であり、訴訟を提起した株主に対して直接に損害賠償がされるわけではありません。手続きとしても、訴訟提起の前に会社に対し書面で責任追及を請求し、会社が訴訟をしなければ、株主が会社に代わって訴訟を行うことになります。

    上記の産経の記事に、「さらに、NPIの社員のほか、前社長の有村純一に対しても責任が問えるか検討を進める。」とありますが、日興コーディアルの株主の方は株主代表訴訟を提起する権利を持っておられるので、もし現在の日興コーディアルの訴訟方針が緩すぎると判断される場合は、他の取締役、執行役についても訴訟を請求することが出来ます。日興コーディアルの取締役、執行役でないNPIの人達に損害賠償を求めることが妥当であると考える場合は、現経営陣に対して、その旨を請求し、もし実行しないのであれば、会社に対しての損害の回復を行おうとしないと言う理由での現経営陣に対する株主代表訴訟も可能であると私は思います。但し、粉飾決算の関係でNPIの人の責任を追及することは困難がつきまとう可能性があると思います。

    2) 日興CG元役員逮捕の可能性

    損害賠償は民事上のことですが、刑事罰についても可能性があると思いました。理由は、ライブドア事件やカネボウ事件を念頭に置いてのことです。ホリエモン、宮内元CFO、岡本元取締役と中村元ライブドアマーケティング社長は昨年1月23日に逮捕されました。ホリエモン裁判における検察側冒頭陳述で、検察が述べたのは、”ケイツネ50のがかっこいいじゃない。大台乗ったって感じでいいじゃん」と連結経常利益の予想値を50億円に上方修正するよう指示した。”と言うようなことです。(参考東京新聞記事2006年9月4日-ライブドア初公判 検察側冒頭陳述

    ライブドア事件は偽計も絡み、複数のディールが重なっての話しですが、50億円の粉飾で有価証券取引法違反で逮捕されるなら、2月 2日のエントリー:日興コーディアルの連結決算修正に書いたように日興CGの粉飾額は連結経常利益で平成17年3月期237億円、平成18年3月期181億円の合計418億円です。会社規模が異なるので、ライブドア粉飾と日興CG粉飾を金額のみで比較することは適切でないとは思います。カネボウは5年間で最終利益2000億円以上の粉飾で、債務超過を隠していたとのことですから、カネボウと比べれば日興CGも大したことはないとなるのでしょうか。でも粉飾した状態で500億円の社債を発行したのであり、5億円の罰金以外に刑事罰があり得るのかも知れないと思うのです。

    EB債はNPIHが発行し、NPIが引き受けた訳ですが、100%株式保有の親子会社間の取引でバックデートすることにより利益操作を行ったと理解します。親子会社間だけの取引で外部の会社に債権・債務が一切発生しない取引において連結決算上の損益なんて発生することがおかしいと考えるのが常識でありルールであるはずです。バックデートとして利益を計上したことは、有価証券取引法の違反の罪となる可能性があると思います。

    もし、検察が日興CG関係者を逮捕するとすれば、3月中旬の東京証券取引所による情状継続・廃止の決定の後だと思います。検察も、東京証券取引所の判断に影響を与えたくないと思っていると考えますので。

    3) ベルシステム24買収計画に関する推理

    2月 3日のエントリー:日興 ベルシステム24の推理でささみサンからコメントを頂き、Facta online 2006年12月号-内部メモが明かす「ベル24」疑惑の主役-日興による買収に証券監視委がメス。時系列のメモを入手して追跡してみると……。を紹介されておられます。この記事によれば、日興によるベルシステム24の買収を仕組んだのは米系投資銀行、ゴールドマン・サックス証券(GS)である。この噂は、私も耳にしたことがありました。そして、GSの本命はボーダフォンをソフトバンクに売り込むことであったと。

    仮にGSが仕組み、成功の結果GSが多額の手数料を得たとして、証券プロの日興が何故そう簡単にはまってしまったのかとの疑問があります。それを解くのは2004年7月20日のソフトバンクのプレスリリース:ソフトバンクBBとベルシステム24との包括的業務提携についてに記載されている実行されなかったか590億円の新サービス提供における関連システム構築投資であると思います。この投資は、設備投資ではなく、既存の事業買収投資ではなかったかと思うのです。何故なら、特別調査委員会の報告書資料部分の008ページにあるベルシステム24の毎年の経常利益が約270億円程度の予想が2006年5月期から続いています。2005年5月期も237億円です。80億円-90億円の会社が、270億円に急成長する方法は、既存ビジネスの買収と想像するのです。利益が増加することは、収入増もあるはずであり、それはソフトバンクBBとベルシステム24との包括的業務提携と発表されているとおり、ソフトバンク関連の電話コールサービスをベルシステム24が手掛けることがソフトバンクBBとベルシステム24間で話しされ、それに関連して590億円の投資があったのだろうと想像します。

    でも、何かの事情により590億円は投資されず、収入増もなかったと言うことだろうと思います。投資されなかった理由は、よく分かりませんが、事業見通しが甘かったと言えると思います。

    4) 蛇足

    NPIが起用していた弁護士は、Facta onlineの記事にありましたが、やはり森、濱田松本法律事務所だったようです。大勢の弁護士がいる事務所で会社関係の仕事専門ですから、短期間に大勢の人間が人海戦術で戦える事務所です。日興/NPIの期待通り、CSKには勝ちました。でも、ビジネスそのものはもっと高度です。逆にCSKが勝って、日興/NPIが負けていれば、日興/NPIがベルシステム24に突っ込むことなく損失を出し、信用を失う現在の事態は避けることが出来たのかも知れません。

    日興/NPIによるベルシステム24の買収は日本において友好的買収と呼ばれる買収であったのです。即ち、ベルシステム24の1/3超を保有する株主CSKは反対していたが、ベルシステム24の取締役会は賛成していたのです。日本語で敵対的と言うと従業員や既存株主を含め会社全体が反対している様に捉えてしまいそうですが、意味は「取締役会」が賛成しているか反対しているかです。敵対的買収というと悪い買収であり、友好的買収というと良い買収と捉えがちですが、良い悪いはそんな単純なものではないと思います。ちなみに、私の理解において英語では、敵対的買収は"unsolicited buyout"であり、友好的買収は"solicited buyout"です。"unsolicited"ってそんなに悪いイメージを私は持ちませんが。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    2007年2月 9日 (金)

    関西テレビ放送免許取消の可能性

    過去のエントリーで1月16日に今日は納豆がありましたと1月20日に納豆の偽造を書きました。本日の以下のニュース(関西テレビに近いと思う産経と週刊朝日が追っかけている朝日をあげました。)で、こりゃひどい関西テレビと感じたので書いています。

    産経2月9日-「あるある」再調査、今月末までに報告を 総務相
    朝日2月9日-総務相、関西テレビに月内の再報告求める あるある問題

    産経と朝日の記述については、産経が「経営全体の責任が全く書かれていない」に対して、朝日は「関西テレビの全体の責任をどうするか、触れられていない」であり、産経の「週刊誌などが指摘している他の疑惑についても「全く触れられていない」と批判した。」が朝日では「「孫請け会社がすべてやったことになっている」と指摘。報告書が捏造の経緯に終始し、番組を放映した関西テレビとしての責任に触れていない点に不満を示した。」となっています。

    「あるある」は1月7日に放送され、1月20日に関西テレビはお詫びを入れ、2月7日に総務省近畿総合通信局に報告書を提出しました。でも、その報告書に実質的な内容は記載されおらず、だからと思いますが、インタビューされると「詳細については、この場で申し上げることはできません」と繰り返していました。

    産経2月7日-関テレが捏造問題で報告書提出 総務省、再調査要求
    朝日2月8日-関テレ「あるある」問題で総務省に報告書

    1) モラルなしの関西テレビ

    「モラルなしの関西テレビ」と思いました。「孫請け会社がすべてやった」なんて普通の会社は言わないし、言えません。例えば、ビルを元請で建築して、指定された柱より細い柱を使っていて、「これは孫請けがやったことです。」なんて誰も言わない、監督不行届きでしたと言うはずです。この場合の元請に相当するのが、関西テレビのはずです。

    テレビ番組の製作者は、それなりの責任を負っているはずです。下請けや孫請けの不正行為にすることは、最早モラルはないと思います。しかも、チェックできた不正です。チェックもせずに放送したとするなら、その場合もモラルはないから同じですが。

    2) モラルなしで通用させてよいのか?

    テレビ放送局は電波法の「放送をする無線局」であり、電波法の無線局の免許を受けなければならない。放送法には、「放送法3条の2 放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。一 公安及び善良な風俗を害しないこと。・・・・・」がある。そこで、関西テレビに行政処分として放送免許の取消が出来ないかと、電波法、放送法を懸命に読んだが、これぐらいのことでは免許取消を行うことは出来ないだろうと思った。(細部まで、読めていませんが)

    関西テレビは株式会社です。そこで、株主代表訴訟が考えられるのですが、非上場会社であり、一般株主は存在せず、Wikipediaによれば、上位5株主は以下です。

  • 株式会社フジテレビジョン (19.85%)
  • 阪急ホールディングス株式会社 (19.10%)※
  • 大和証券SMBC株式会社 (6.80%)
  • 株式会社三井住友銀行 (4.51%)
  • 株式会社文化放送 (4.00%)
  • 行政処分もできないし、株主代表訴訟もない。しかし、公共物である地上波を使用して日本全国に放送する番組で真実を曲げた捏造がある内容を伝えた。どうすべきか?

    今まで、放送免許が取り消された例はないと思います。でも、関西テレビに対して免許が取り消されても関西テレビに関係する一部の人が困るだけと思います。もし、取り消されたら、フジテレビが直ぐに子会社を設立して関西テレビの資産を買い取ると思います。それで、ガバナンスが向上するコンプライアンスがしっかりする。そうなるなら、その方がよいと思いました。何故なら、関西テレビのままだったら、何も期待できないのだろうと感じたからです。

    但し、一方で放送免許取消の権限を政府に持たせるとなると、政府による放送への関与という別の問題発生の恐れがあります。この面の整備も必要なのだと思います。せめて、一般視聴者を交えた第三者機関みたいな。放送法3条の4に放送番組審議機関と言う条文があり、関西テレビにも関西テレビ番組審議会というのがあります。でも、この関西テレビ番組審議会のメンバーは誰によって選ばれたのと思いました。もし関西テレビだったら、機能するわけないじゃないって思いました。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    2007年2月 8日 (木)

    「生む機械」と少子化対策

    審議拒否を続けてきた野党も出席して昨日から衆議院予算委員会が開催され、柳沢伯夫厚生労働相も「実に不適切な表現を用い、女性のみならず国民を大きく傷つけ混乱を招いた。強い反省の上に立って、与えられた任務のため全力を挙げて取り組みたい」と語ったとの昨日の報道です。

    日経 2月7日 衆院予算委が正常化・首相も陳謝、厚労相続投を強調

    偶然ではありますが、昨日2月7日の官報資料版は内閣府の「少子化社会白書のあらまし」でした。内容は、内閣府の文書であり、総花的と思ったのですが、売れない経営コンサルタントの2006年12月28日-最新の人口推計によれば2006年11月 4日-国勢調査から見る高齢化社会というエントリーを書いたこともあり、この官報に掲げられていたグラフについては興味深く眺めました。少し書いてみます。(以下のグラフは官報からのコピペです。クリックすると別ウィンドウで元の大きさにより開きます。)

    1) 子どもを産み育てやすい国

    次の第7図を見て納得しました。

    Photo_9

    日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデンの5ヶ国で調査した結果ですが、日本で「子どもを産み育てやすい国かどうかについて」9%しか「とてもそう思う」と答えなかった。「どちらかと言えばそう思う」を合計しても47.7%で、半数の人は肯定していない。スウェーデンでは「とてもそう思う」が75.2%で、「どちらかと言えばそう思う」を足すと97.8%の人が「子どもを産み育てやすい国」だと思っている。うらやましいと思います。そんな国って、子どもを産み育てやすいだけではなく、きっと「生きがいを持って、暮らしやすい」等についても肯定的に答える人が多いのだろうと思うのです。「どちらかと言えば」を含めてせめて2/3の人が肯定できる国にしたいと思うのですが。そう思って、アメリカとフランスを見ると78.2%と68.6%であり、2/3基準を満たしてしまうのです。

    2) 育児、家事関連時間

    6歳児未満のいる男女の育児、家事関連時間が次のグラフですが、日本の男は48分となっています。これを、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、ノルウェーと比べるとダントツに短い。逆に女は、その結果と言えるのか、日本が一番長い。

    Photo_10

    この中では、フランスが一番短いが、それでも2時間30分で、日本の3倍強あります。格差社会とか、ワーキングプアなんて言葉が当たり前のように使われるようになりましたが、満足できる収入を得て、そしてその職を維持しようとなると土日以外は育児は25分、家事を含めて48分しか時間をさくことが出来ない。2時間30分もさいたら、降格され給料の手取りが減少することとなり、住宅ローンの返済に困るなんて状況があると思うのです。

    政府の新しい少子化対策の概要を続きを読むに入れましたが、こんなことよりも労働時間の短縮やワーキングプアの解消を計り人間らしい生活ができるようにすることが一番重要なのだと思うのです。

    3) 合計特殊出生率

    合計特殊出生率の国比較のグラフもありました。

    Photo_11

    2005年の日本の合計特殊出生率は1.25であったのですが、ドイツ、イタリアと余り変わりません。アメリカが2.0を少し上回っていますが、2.1が人口維持と言われており、先進国はどこも人口減少の傾向です。だから多分日本も2.1を超えることはないと思うのです。1.25は低すぎるために若年世代の負担が大きすぎるかも知れませんが、「生めよ増やせよ」の国策で行うことではないと考えます。人口が減少して良いこともあるはずです。少子化対策よりも豊かな社会をつくる政策が重要なことと私は思います。

    続きを読む "「生む機械」と少子化対策"

    | | コメント (0) | トラックバック (2)

    日本IBMと架空循環取引

    ヘラクレス上場のITソフト会社であるデジタルデザイン(本社:大阪市)が2007年2月2日付で、日本IBM、ネットマークス、日本IBMの担当者とネットマークスの担当者を被告とする12億円の支払を求める訴訟を大阪地裁に提起した旨のデジタルデザインの2月2日付プレスリリースがありました。

    このデジタルデザインのプレスリリースを読んでいくと最後の方に、次の文章があり、そうなると、日本IBMが7.7億円の支払に一度は合意したのであり、日本IBMも何らかの関与があり、グレイと言うことなのだろうかと思ってしまいました。

    そこで、当社はこれを裁判所で判断してもらうべく提訴の準備を進めてまいりましたところ、日本I B M から当社の損失の防止に向けて関係方面との協議に最大限の努力をするとの連絡を受け、その申入れのとおり相互に同意しうる解決策についての協議をしてまいりました。
    しかしながら、日本IBM の最終回答は、当社、ネットマークス及び日本IBM の3 社が、相互に免責し、かつそれぞれに対して本件に関する一切の請求ならびに権利行使をしないことを書面にて合意することを条件とした770 百万円の支払いをおこなうとの提案でありました。

    もう少し、見てみることとします。

    1) デジタルデザイン

    2000年6月にヘラクレスに上場。最近の業績は以下の通りで、従業員数は変化していないが売上と利益は右肩上がりです。

      平成16年1月期 平成17年1月期 平成18年1月期
    連結売上高(百万円)  633  2,476  3,459
    経常利益(百万円) 22   48  148
    純利益(百万円)  16  53  104
    従業員数  30  23  26

    デジタルデザインの株式の54%は、創業者寺井和彦氏が保有し、取締役は寺井和彦氏を含め5名で、他の4名中2名は日本IBM出身者ですが年齢は69歳と67歳で、67歳の方はIXIの取締役をされていたこともあります。

    デジタルデザインは、2006年7月の中間期において、日本IBMあての売上債権1,189百万円に対し全額貸倒引当金を計上し、中間期純損失10.8億円となっています。しかし、2006年1月末の売掛金と買掛金を見てみると以下のように日本IBMの名前はなく、売掛金に東京リースそして買掛金にIXIがありました。1月24日のエントリー IXI(アイ・エックス・アイ)の民事再生手続の申し立て1月27日のエントリー IRI発表のIXIによる循環取引(続編)2月 6日のエントリー IXI-東京リース-日本IBMで触れた会社名が見受けられます。

    相手先  売掛金 単位(千円)
    東京リース株式会社   1,039,605
    株式会社ネクサス 11,450
    アイテックス株式会社 10,500
    三菱電機トレーディング株式会社 7,875
    チッソエンジニアリング株式会社 3,150
    その他 7,976
    合計 1,080,557

    相手先  買掛金 単位(千円)
    株式会社アイ・エックス・アイ  1,008,000
    株式会社シー・エヌ・エス 15,750
    株式会社ノバス 7,510
    エム・イー・ジー株式会社 673
    その他 554
    合計 1,032,488

    2) ネットマークス

    ネットマークスは、日本最大の電線メーカーである住友電工が52.9%の議決権株式を支配する住友電工の子会社です。従い、取締役9名の過去の勤務または現在の兼任先は4名が住友電工、2名がNTTで他3名は野村総研、コニカミノルタと日本銀行です。事業規模も下記のように大きい会社です。

      平成16年3月期 平成17年3月期 平成18年3月期
    連結売上高(百万円) 41,204 57,836 59,251
    経常利益(百万円) 1,312 2,164 1,002
    純利益(百万円) 606 1,067 347
    従業員数 761 899 979

    デジタルデザインが訴訟を起こした取引に関しては、ネットマークスは2006年8月31日に有価証券報告書の訂正を提出しています。その訂正のなかで、日本IBMに対する売上が2006年3月期において70億円含まれていたとし、売掛金の内訳についても以下のように訂正したのです。(売上高、利益の変更は無し。)

    売掛金(訂正前) 単位(千円) 売掛金(訂正後) 単位(千円)
    ㈱アイ・ティ・フロンティア 1,589,327 日本アイ・ビー・エム 1,320,115
    ㈱理経 621,085 ㈱理経 621,085
    ㈱ネットマークスサポート 488,848 ㈱ネットマークスサポート 488,848
    ㈱デジタルデザイン 450,024 ㈱デジタルデザイン 450,024
    シスコシステムズキャピタル㈱ 379,831 日立電線㈱ 410,854
    その他 10,253,407 その他 10,491,596
    合計 13,782,526 合計 13,782,526

    そして、2006年9月の中間期において1,058百万円の貸倒引当金を繰り入れ、これについてはデジタルデザインに対する未回収債権に対する貸倒引当金であると説明しています。今度は、デジタルデザインに対する債権となっており、訳がわからないのですが、ネットマークスは2月5日付で次のプレスリリースを行っています。この中に、「これまでの調査では、取引の目的物の実在は確認されておらず」との文章があり、やはり架空の取引が存在したようだと思いました。

    2 月5 日ネットマークスによるプレスリリース 株式会社デジタルデザインの「訴訟の提起に関するお知らせ」に関する当社の見解について

    3) 日本IBM

    本件に関して日本IBMの名前は、各所で出ており、会社ではなくある一社員か数名の社員かの関与はあったのであろうと思います。日本IBMのプレスリリースを見ましたが、関係するような記述は見あたりませんでした。同社にとっても現状不明であろうと推測するのですが、判明した段階でIT産業のリーダーのCSRとして、どのような不正取引であったのか公表して貰いたいと私は思うのですが。

    参考として日本IBMの売上高と利益を掲げておきます。

      2003年12月期 2004年12月期 2005年12月期
    連結売上高(百万円)  1,497,982 1,460,921 1,302,681
    経常利益(百万円) 149,895  151,194 119,144
    純利益(百万円)  79,276 84,986 87,727

    ITとは、不正があっても分かりつらい商品なんだとつくづく思ってしまいました。コンピューター・プログラムなんて、契約したとおりの性能があるかどうかなんて、試験したとしても、重大なバグが残っているかも知れない。ネットマークスの2月5日のプレスリリースのように「販売先からの当社に対する入金の確認が支払のための条件」ということもしばしばあるのでしょうね。

    本エントリーに関しては、ろじゃあサンのブログデジタルデザイン社のHPにも出ていた件・・・東洋経済のバックナンバー見つけた(^^)東洋経済TKプラス(2006年10月13日) 新たな架空取引疑惑 日本IBMが主導かに記事があるのを知り、辿っていって見るとこのようになりました。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    2007年2月 7日 (水)

    法律と通達

    1) ブラジルに移住した被爆者に対する健康管理手当についての最高裁判決

    ブラジルに移住した被爆者3人に対し、広島県は被爆者援護法に基づく健康管理手当の未受給分計約290万円の支払いをすべきとの判決が最高裁で本日ありました。

    読売2月6日-最高裁、広島県側の上告棄却…在ブラジル被爆者訴訟

    この記事で、”「時効の主張は特別の事情がない限り、信義則に反して許されず、手当の支給義務を免れることは出来ない」と述べ、在外被爆者については時効の適用が認められないとの初判断を示した。その上で、広島県側の上告を棄却。県に未払い分全額の支払いを命じた2審・広島高裁判決が確定した。”と書かれていますが、”日本以外に住む在外被爆者に対しては、「出国すると被爆者の地位を失う」とした1974年の旧厚生省通達に基づき、健康管理手当が支払われてこなかった。しかし、別の同種訴訟で大阪高裁が2002年12月、在外被爆者の受給資格を認めたことを受け、国は方針を転換。03年3月から支給を始めたが、過去分については、地方自治法に基づく時効を理由に5年分しか支払っていなかった。”との記載があり、この部分がこの判決の背景をよく表現しています。

    この被爆者3人は、1955年-65年頃にブラジルに移住し、1991年から95年の間に日本に一時帰国し、その際、被爆者援護法等の認定・手当支給を受けたのです。しかし、ブラジルに戻った1994年-95年以降は手当を打ち切られました。3人は2002年に提訴。別の同種訴訟で大阪高裁が2002年12月、在外被爆者の受給資格を認める判決を出しました。これを受けてと思いますが、厚生労働省は2003年3月に1974年の通達を廃止し、政府は在外被爆者も手当を受けられるようにしました。従い、広島県は未払い分についての支給を行ったのですが、5年以上を経過した1997年以前の未払い分は地方自治法236条の時効により受給権が消滅したとして支払いませんでした。

    私も、本件については、被爆者3人に国外にいることにより権利行使を認めず、そのことを理由に今度は時効による受給権の消滅を主張するのは、非常識であり、最高裁判決が妥当であると思いました。なお、判決は、ここにあり、その全文はここにあります。

    2) 通達とは

    通達とは、辞書で引くと、「その官庁が所管の機関・職員に対してする通知」と書いてありました。今回の判決文では、「通達は,行政上の取扱いの統一性を確保するために,上級行政機関が下級行政機関に対して発する法解釈の基準で・・・」との記載がありますが、この通り政府内部の連絡通知です。

    例えば、国税庁のWebには、法令解釈通達を初め沢山の通達が出ています。国税庁レポート2006によれば、全国に524の税務署があります。税務署により、扱いが異なっては、税の公平な徴収が出来なくなってしまいます。その為に、本庁が通達を出しており、同時に納税者にも通達を公表しています。税については、税に関する法が全てを規定しているのであり、通達は内部文書ですから拘束力はありません。通達が間違っていると裁判で争うことは可能です。但し、相当の検討を重ねて出されているはずですから、裁判で勝つことは容易ではないでしょうが、個々のケースにおいての妥当性の判断はあり得ると思います。

    また今回の判決文に通達について「国民に対し直接の法的効力を有するものではないとはいえ,通達に定められた事項は法令上相応の根拠を有するものであるとの推測を国民に与えるものである・・・・」とあり、この文章の前半と後半がニュアンスが異なる感があるのですが、前半部分が「有するものではない。」の断定であり、後半部分が「推測を与える。」です。

    法の解釈は、最終的には国民が行うものと考えます。もっとも、強制力を持つのは、判決ですが。

    3) 通達をめぐって

    最近通達をめぐっての報道がありました。次の堀病院事件についての報道です。読売をあげておきます。

    読売2月1日-無資格助産の院長ら11人起訴猶予へ…現場の実情考慮

    「助産士の資格を持たない看護師による違法行為であるが、現場の実状を考慮して起訴猶予とした。」というのが報道の多くであったと理解します。違法行為であるのかどうかについては、通達によればであり、法はそのような細部を規定しないことを以前私も売れない経営コンサルタントのブログ-2006年8月27日-「堀病院」事件(その2)に記載しました。その中に、平成14 年11 月14 日付けの厚生労働省医政局看護課長より鹿児島県保健福祉部長宛ての回答(医政看発第1114001 号)を掲載しましたが、厚生労働省の内部の連絡文書です。内部の連絡文書に触れるから違法・合法というのは、正しい姿とは思いません。問題を正しく分析して、違法・合法を論じ、必要であれば法の改正・制定を議論すべきであるはずと思います。

    4) 尾鷲総合病院の産科

    尾鷲総合病院の産科については、売れない経営コンサルタントのブログ-10月13日 -尾鷲総合病院ー産婦人科継続で報告の通り、継続されると思ったのですが、実は1月27日の中日新聞ですが、2人目の産科医が辞退 尾鷲市「別の開業医と交渉」という報道がありました。どうなるか、分からないのですが、1人体勢だと昨年と同じことになり、続かないと思うのです。声を出せば、産科医が来るわけではない。お金を出しても、来て貰えないのが現状だと認識することから問題を考えるべきと思います。

    産科の現状については、売れない経営コンサルタントのブログで何回も書いたように思うのです。それが我々の回りの多くのことに当てはまってしまうことを最も恐れます。だから、少なくとも現状を正しく認識していきたいと。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    2007年2月 6日 (火)

    IXI-東京リース-日本IBM

    IXI-東京リース-日本IBMなんて、こんな風に結びつけて良いのかという関係ですが、東京リースの次のプレスリリースは単純に読むと、そうなってしまうのです。

    1月29日付け東京リース株式会社のプレスリリース:株式会社アイ・エックス・アイとの取引内容と当社対応についてのお知らせ

    この中で、東京リースは、「取立不能または取立遅延のおそれが生じた債権104億14百万円は、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM社)を販売先とし、IBM社の協力会社十数社を仕入先とする業務用ソフトウェアの販売取引について、IBM社の債務を併存的債務引受した株式会社アイ・エックス・アイ(以下、IXI 社)に対するものであります。」と言っているのです。どう考えたらよいのか、少し書いてみます。

    1) IXIについて

    IXIについては、1月24日付けエントリー:IXI(アイ・エックス・アイ)の民事再生手続の申し立て1月27日付けエントリー:IRI発表のIXIによる循環取引(続編)で書いたのですが、その後、IXI1月29日付プレスリリース:民事再生手続開始および管財人就任のお知らせ の通り1月29日に大阪地方裁判所の民事再生手続き開始の決定され、同時に管財人による管理命令が出されました。IXIの経営はこれまでの経営者の手ではなく管財人による経営となり、管財人による財産・債務の調査、再建計画の策定に入っています。

    2) 東京リースのIXI宛債権104億14百万円

    IXIは、100人強の規模であり、循環取引という不正が絡んでいることから、何人が会社に引き続き会社再建のために残り、残った従業員で事業が成立するかの問題があり、再建には相当の困難があると私は予想します。

    東京リースは、IXIが民事再生手続き開始の申し立てを行った翌日の1月22日に債権の取立不能または取立遅延のおそれに関するお知らせを出して、東京リースがIXIに104億14百万円の債権があることを発表しました。この1月22日のプレスリリースの時から、「併存的債務引受に基づく債権」という変な表現を使っていました。それが、1月29日付プレスリリースでは冒頭で引用したように「IBM社を販売先とし、IBM社の協力会社十数社を仕入先とする業務用ソフトウェアの販売取引について、IBM社の債務を併存的債務引受したIXI 社に対するものであります。」と言っており、これ何と思うのです。

    このヒントとして読んだのが、週刊東洋経済 2007年2月3日号(1月29日発売)のスペシャルリポート03「アイ・エックス・アイ“突然死”の真相」です。IXIの架空循環取引には、IBMの名前を利用していた。IBMの元社員が絡んでいた。東京リースの社員も関係している可能性がある。・・・・・という疑惑が書いてありました。

    東京リースのプレスリリースにも更に約50億円IXI絡みがあると書いてあり、そうなると合計154億円となります。東京リースの2006年3月期の営業利益が153億円ですから、丁度営業利益が吹っ飛んだと言う感じでしょうか。

    3) IT業界

    IT業界とは何なのであろうか?勿論、正当且つ健全なビジネスです。社会が必要な物であり、社会の発展に必要な物です。例えば、IBMの2006年の売上高は、HPにほんの少し抜かれたのですが914億ドル(11兆円)で、純利益95億ドル(1.1兆円)でした。ITソフトウェアなんて目に見えないし、動かしたとして、その価値は関係ない人が見れば値打ちのないものであるはずです。A社用のソフトは、A社以外にとっては、基本的には価値はない。リースの強みは、リース資産が貸し手に存在することであるが、ソフトウェアのリースをしている場合、何が賃貸されており、リースを中断した場合に、何が返却されるのでしょうか。形式的には、可能であるが、実質的には訳がわからない。だから、一旦逸脱すると、無茶苦茶になってしまうのであろうと思いました。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    2007年2月 3日 (土)

    みすず監査法人の奥山前理事長が辞職

    ついに、みすず監査法人の奥山前理事長が辞職というニュースが流れました。

    日経 2月2日-みすず、奥山前理事長が辞職・日興監査で引責

    奥山章雄氏は、昨年5月まで中央青山監査法人(現みすず監査法人)の理事長でおられましたが、日本公認会計士協会の会長をされたりもしておられました。日興コーディアル・グループの2006年3月期の監査報告書を見ましたが、以下の文章により適正意見が表明されており、奥山章雄氏が署名捺印されています。

    当監査法人は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、株式会社日興コーディアルグループ及び連結子会社の平成18年3月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認める。

    責任をとって辞任されたと思いますが、一方で個人の責任や罪で解決しない問題であると私は思います。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    日興 ベルシステム24の推理

    導入部は一つ前のエントリーです。2年間の連結経常利益の修正額418億円のうち、昨年12月18日の発表分はEB債による修正との日興コーディアル・グループ(NCC)の発表であり、2月1日に発表分は①ベルシステム24(BS24)株式売却益修正と②買収目的会社連結などの2種類としています。買収目的会社連結などが全てBS24以外であったとしても、345億円はBS24の関係となることから、80%以上はBS24関連です。何故、BS24にNCC/NPIは投資をしていったかを推理してみます。

    1) BS24の投資目的は

    利益を得るためと言ってしまえば、余りにも当たり前ですが、NCC/NPIの投資ですから、電話のコールセンター事業を行って、コールセンター事業の利益によるリターンの利益を目指したのではなく、株式投資と同じように、投資額より高い金額で売り抜けて利益を確保することが目的であったと思います。特別調査委員会の報告書30ページにこんな記載があります。

    検討されたストラクチャーには次のようなものがあった。
    (イ)即転方式・・・・・即時転売して利益を確保する。
    (ロ-1)EB債方式・・9月末にオプション分の時価評価を行い利益を計上する。
    (ロ-2)EB債方式・・時価評価が困難な場合は、BS24株式に転換することにより時価評価する
    (ハ)合併方式・・・・NPIがNPIHを吸収合併しNPIHの資産(BS24株式)を時価評価して利益を計上する。

    (イ)以外は、会計上問題があると思いますが、即時転売も視野に入っていたわけで、所詮NPIが自ら事業経営を行う力や能力があったとは思えません。また、NCC/NPIは中央青山監査法人に対し、NCC/NPIは事業経営を行う意図はもっておらず営業投資であると説明していたはずであり、だからこそ中央青山も連結の対象外として監査報告書を書いたはずです。

    2) 期待利益

    ヒントとして、報告書資料部分の008ページに連結利益の予想表があります。これを見るとBS24の毎年の経常利益が約270億円程度になっています。有価証券報告書でBS24の平成14年5月、平成15年5月、平成16年5月それぞれの期の経常利益は81億円、 83億円、89億円でした。この期間の株価は15,000円から50,000円程度でした。株価15,000円で経常利益を使用し、PERが同じだとすると毎年の経常利益約270億円は、株価21,877円と計算されます。

    第三者公募20,050円、CSKからの購入単価27,000円で、加重平均取得単価は22,011円ですから、ほぼ21,877円に一致します。そして、CSK株価15,000円は、最も安かった時の株価ですから、20,000円であれば、29,170円に相当します。従って、損失の可能性はなしで、おそらくは518億円の利益は堅いというような期待計算をしていたのではと思うのです。518億円も利益が堅いのであれば、180億円ぐらいNCCの連結利益を粉飾するのに使っても許されると言うような感覚ではなかったかと思うのです。なお、518億円の計算は、以下です。

    518億円 = (29,170円 - 22,011円) x (5,200,000株[第三者募集] + 2,044,000株[CSK購入])

    3) 現実

    結果は、厳しかった。実は期待はずれであったと思います。先ず、BS24の2006年2月期の経常利益(連結利益は不明であるため、親会社のみの利益になりますが)64億円でした。利益の増加はほとんどありませんでした。一つは、CSKが独自にコールセンター会社を設立したことにより業務が減少したと想像します。もう一つは、BBコールを取得したのですが、この会社の売上規模がよく分かりません。最も、単体決算故、64億円にどう反映されているかも不明ですが。いずれにせよ、毎年約270億円の経常利益は絵に書いた餅に終わったのであろうと思うのです。

    経常利益270億円とならなかった最大の理由は、BBコール取得時にあった新サービス提供のための関連システム構築投資額約590億円を中止したからだと想像します。多分、採算性の見通しがつかなかった。590億円の投資については、このソフトバンクのプレスリリースにあります。NPIHがBS24取得のために支出した合計額は2,391億円です。内訳は、第三者公募1,042億円、CSK551億円、TOB737億円と株式交換61億円です。)そして、590億円の投資を中止したことから、1,320億円を戻してきたのですが、2006年2月の貸借対照表には長期借入金395億円があり、以前の貸借対照表にはなかった科目であることから、NPIが融資、保証している可能性があります。また、BS24は240億円の配当も実施していますが、これも一方でNPIが資金の貸し付けを行って実施した可能性もあります。確実なことは、590億円の投資を中止したことです。

    4) 結果の評価

    NPIのBS24に対する現在の投資金額と融資金額の合計がよく分かりませんが、NPI/NPIHのBS24に対する投資のうちBS24に資金が渡ったのは、第三者公募の1042億円のみです。そして、BS24からソフトバンクBBに渡った資金が690億円です。150億円は、BS24の資金を使用したとして、NPI/NPIHに戻せた金額は500億円です。総投資額2,391億円から500億円を差し引くと1,891億円となります。少しだけ、株式譲渡をしていることから、投融資合計1800億円と私は想定します。

    BS24の売上、利益がほとんど変わっておらず、NPIが投資する前のBS24株式時価総額は今も以前も同じであるとすると、株価25,000円で総額1200億円。30,000円で1444億円となります。投融資合計1800億円との差は、600億円の損失あるいは350億円の損失となります。

    このディールの核心部分は、BBコール取得に関連していた新サービス提供のための関連システム構築にあったと思うのです。NCCやNPIにエンジニアがいるわけではない。事業を展開できる経営者もいない。実体としては、日興コーディアル証券としての業務を遂行する人材が中心だと思うのです。2,391億円もの巨額投資を向こう見ずに実行して、結果的に決算数字を粉飾するために使用できたから使用した。そうでもしないと、この失敗投資に向き合えなかった。実は、そんなところではなかったかと思いました。

    | | コメント (3) | トラックバック (0)

    2007年2月 2日 (金)

    日興コーディアルの連結決算修正

    日興コーディアル・グループ(NCC)は、2月1日付けでこのプレスリリース:平成19年3月期半期報告書の提出および訂正内容の修正に関するお知らせを出して、平成年月期と平成年月期の更なる修正を行いました。プレスリーリースを読んでも非常に分かりつらい文章でありますが、要約すると次の表になります。

            日興コーディアル・グループ連結財務諸表修正額(単位:百万円)
      経常利益 純利益 純資産額
    平成17年3月期の修正額 12月18日発表額     △18,880       △1,798    △11,798
    今回2月1日の2次修正額     △23,680       △9,988    △17,151
    2次修正での増加額       △4,800

           +1,810

         △5,353
    平成18年3月期の修正額 12月18日発表額       △1,058           +339    △11,496
    今回2月1日の2次修正額     △18,117       △8,394    △21,197
    2次修正での増加額     △19,175       △8,733      △9,701

    例えば、このNIKKEI NET 2007/02/01 23:34-日興、決算再び訂正・前期の経常益191億円減では、平成18年3月期の修正のみと思えますが、実際には上記のように平成17年3月期についても修正を発表しました。平成17年3月期の修正は買収目的会社連結等としています。

    いずれにせよ、経常利益で2年間の修正額が418億円(05/03期が237億円、06/03期が181億円)というのは、すごい金額です。子会社を連結対象とするかしないかだけでの修正ですから、逆に言うと、子会社を連結対象から外して2年間で418億円の架空利益をNCCは計上していたとも言えます。ところで、今回の修正は全てNPIH/ベルシステム24(以下BS24とします)の関連のみか、他の案件も今回対象としたのか不明です。

    | | コメント (0) | トラックバック (1)

    こりゃ駄目だ日興コーディアル

    ついにこんなニュースが流れました。

    日経2月1日-日興コーディアル、前期もSPC使い170億円の利益

    記事の内容は、「2005年3月期に続き、06年3月期も特別目的会社(SPC)のNPIホールディングス(NPIH)を使い、170億円弱の利益を上げていたことが分かった。」です。

    この部分は、私も報告書の23ページに「NPIH(2005年)10月25日に定時株主総会を開催し、次期繰越利益をゼロにして配当金240億円を完全親会社であるNPIに配当する利益処分を承認した。これによりNPIHはすべての財産を放出して休眠状態になった。」と記載があることには気付いていました。しかし、これを連結会計において利益計上したかどうかは、記載がないことから(調査対象範囲外ですが)ブログでも書くには躊躇していました。

    NPIHの利益240億円は、どのようにして稼いだかというと、NPIにBS24株式を売却して得た利益です。自動車メーカーが子会社として販売会社を設立し、販売会社に販売した時点でメーカーは利益を計上する。販売会社は、棚卸資産が増加しただけで損益関係なしとなります。そこで、連結会計を実施すると、親子会社の債権・債務と売上・売上原価、そして内部利益は消去されるのです。親子会社間でごまかしが生じないようにするのが連結会計です。NPI、NCCが240億円の利益を計上していたのであれば、はなはだしい悪夢です。(最も、小泉元首相や財務省それに石原知事は、喜んだでしょうね。税金が取りあえずは、がっぽり入りました。)

    会計で、一番最初に学ぶのが、真実性の原則で、「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実の報告を提供するものでなければならない。」です。無茶苦茶でんな!こりゃ駄目だ!と思いました。ここまでくると中央青山も、どうなっているのでしょうか?アホと悪人がそろったのかと思いたくなってしまいます。(この表現は、こちらまで影響されてしまった結果でしょうか?)

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    2007年2月 1日 (木)

    日興コーディアルの報告書を読んで

    昨日の日興コーディアル上場廃止の可能性で、本日は報告書を読んだ感想を書くことを申し上げました。感想を書き進めます。なお、以前に売れない経営コンサルタントのブログ12月18日:日興コーディアルグループのプレスリリース12月18日:日興コーディアルとミサワホーム12月20日:日興疑惑12月27日:日興役員に対する株主代表訴訟で書いたエントリーも、この関連です。適宜ご覧になって下さい。

    1) 疑惑ではなく確信犯であった

    会計処理の解釈上の扱いによるEB債の評価益を取り込んだなんて単純な問題ではありませんでした。EB債発行を決定する2004年8月4日の取締役会議事録が、バックデートして作成されていたのです。EB債発行を実際に決定した日は、9月16日の夜の会議と推定できます。そして、この日に、同時にベルシステム24(以下報告書にあわせBS24と書きます。)のNPIHによるTOBも決定したのです。このことは、報告書37ページ以降の部分に書かれています。会議出席者は、山本NCC取締役兼CFO(NCC財務最高責任者です。)、平野NPI取締役会長、城戸NPI取締役社長、丹羽NPIH取締役、NPI社員5名、NCC社員2名と取締役1名でした。この結果は、9月24日のNCC経営トップが参加する経営会議で承認されました。

    何故議事録バックデートを行ったかは、見せかけの利益をつくるためでした。報告書資料部分の012ページに137億円計上しなかった場合と計上した場合の2つのグラフがあります。137億円計上しなかった場合とはNPIHを連結する意味で、計上する場合とは非連結とする意味の説明があります。この137億円が計上できればNCCの業績は順調に回復傾向にあると証券市場や投資家に説明できたのです。こんなバカなことを証券を業務としているNCCがやっていいのだろうかと思います。その上で、この利益が反映された2005年3月期の決算数字を元に2005年11月に500億円の社債を発行して金を集めました。この500億円に対する1%の5億円が課徴金となりました。不二家なんて、これと比べれば生やさしいなと感じました。137億円の利益は私にとって中途半端な金額ではありません。(手がふるえてしまう。)

    EB債発行とTOBを決定した理由ですが、要は「後出しじゃんけんによる利益」です。第三者公募とCSKからの購入によりNPIHはBS24の株式を取得したのですが、BS24が上場廃止になるのは2005年1月16日ですから、2004年9月は当然上場株式で市場価格が存在していました。取得価格は第三者公募が20,050円でCSKからの購入価格が27,000円であり、加重平均した購入単価は22,011円でした。9月16日の株価は25,320円でした。この差額を利益として取り込むことを考えたのですが、単純に22,011円と25,320円の差の全額をEB債の評価益とするのは無理だったのです。そこで、8月4日を使いました。この日の株価は24,480円です。それと同時に、NPIが第三者公募資金1042.6億円をNPIHに振り込んだ8月5日の前日というわけです。これで、つじつまあわせをたくらみました。既に、中央青山監査法人との接触において、利益を計上しても監査で問題とならないことの感触を得ていたのです。

    その上で、更にTOBを仕掛けることにより、株価のつり上げを計ったのです。多分、この時にTOB価格28,000円も決定したのだろうと私は想像します。TOB発表は、このプレスリリース(2004年9月27日-日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社による株式会社ベルシステム24株式の公開買付けの開始について )にあるように9月27日です。そして最終的には140億円の評価益を計上したのですから、9月末の株価は26,413円程度であっただろうと想定されます。9月16日の株価25,320円よりも上がっており、TOBを仕掛ける作戦にも成功しています。

    マネーゲームですよね。ところで、こんなことを手掛ける人達はいくらの収入を得ているかと言えば、報告書の54ページに「本件関与者(6名)の平成17年3月期の年次賞与支給総額は3億4100万円(支給のレンジは3000万円~1億2000万円)であった。」と書いてあります。思わず、豊田商事を思い出しました。

    2) 12月18日記者会見での大嘘(一担当者のミス)

    当初報道されたのは証券取引等監視委員会が調べを進めていることが明らかになったとして、日経12月16日-日興が不適切な利益計上・監視委調査、課徴金も視野のようなことでした。それに対してNCCは、これのように「現時点で申し上げられることは何もございません。」といったふざけたプレスリリースを行っていました。このあたりは、12月18日:日興コーディアルグループのプレスリリースに書いた通りです。そして、12月18日の記者会見で、NPIの一担当者により書類偽造が行われていたと発表したのです。例えば、読売12月20日-日興、異議申し立て断念…監視委見解受け入れを参照下さい。

    NCCは、12月18日に日興プレスリリース-内部管理体制に関する今後の対応等についてを出したのですが、12月25日になり代表執行役等の異動および特別調査委員会の設置についてを出してついに有村純一代表取締役の交代を決めました。しかし、一担当者に責任を押しつけたままであり、産経12月26日 【主張】日興首脳辞任 自らを律するに厳格たれ というような非難を受けていました。

    このあたりのことは報告書第6章(81ページから)に触れられています。実は、2006年7月から証券監視委員会(SESC)の検査は開始されていたのです。そして、その結果報告は12月11日に提出されていたのです。この時、既に課徴金5億円も決定していました。勿論、1)で述べたEB債バックデートも発見されていました。12月14日NCC経営会議で財務諸表の訂正を自ら発表することと関係役員の減給そして課徴金5億円の6名による個人弁済を決定しました。ここまで決定しておきながら、12月16日は「現時点で申し上げられることは何もございません。」と白を切りました。12月18日の記者会見では、担当者に責任を押しつけることで、逃げ切ろうとしました。そして、12月25日に断念し、会社ぐるみとまで認めなかったが、会長、社長の辞任と調査委員会の設置を発表しました。

    このあたりは、連結だけの問題であれば、NCCは徹底抗戦するつもりだったと報告書は書いています。最後に断念したのは、バックデートの証拠をつかまれたからです。それでも、よく嘘をつき通しましたね。

    3) BS24株の駆け引きの狡さ

    12月27日:日興役員に対する株主代表訴訟で列記したブレスリリースでは、BS24の第三者割り当てによる株取得が先にあり、その直後にCSKグループからの2,044,000株の取得で、この結果として71.7%の株式をNPIHが保有することとなりました。取得日で並べると、
    8月5日第三者公募により5,200,000株を取得し51.5%のNPIHは株主となる。代金1042.6億円
    8月11日、12日CSKより2,044,000株を取得し71.7%のNPIHは株主となる。代金551.9億円

    実は、この取得であれば、CSKからの株式はTOBとするか市場を通す必要があったのです。ライブドアがニッポン放送をいきなり1/3超の株式取得で有名になりました。売った人達に村上ファンドが含まれています。このライブドアの1/3超の株式取得は東証の時間外取引を利用したのです。だから、当時としては、合法でした。しかし、このCSKからの取得は思いっきりグレイです。

    実際は、8月4日の深夜にNPI/NCCとCSKが手を打ったのです。報告書の24、25ページに書いてあります。契約書を分割しました。例えば、8月5日の契約書は1,580,000株についてであり、これは第三者増資前の32.25%となります。当時、CSKは第三者公募でいきなり50%超の株主が出現するのは不当であると裁判所から差し止め仮処分を得ようとしたが負けてしまい、即時抗告等を行っていました。CSKにとっても、負けるよりは、金にすべきと判断せざるを得なくなったのです。合意の条件である取り下げをしました。(2004年8月5日-株式会社ベルシステム24に対する申立て取り下げについて)この当たりは、NPIの予想通りの展開となった訳です。前のブログに書いたようにNPIには森・濱田松本法律事務所が、アドバイスをしていたのかも知れません。報告書で、法律事務所の名前はと○○となっています。

    4) EB債評価益に反対した人達

    実は、NPI、NCCの内部でEB債の時価評価に反対して戦った人がおられます。最終的に、反対意見は通りませんでしたが、そのような方々がおられたことは嬉しいことです。どなたかというと、NCC監査委員会の社外取締役になっておられる渡邉淑夫氏と渡辺隆司NPI元監査役です。渡邉淑夫氏は、1990年迄国税庁におられ、退職して税理士となられ、1992年から青山学院大学の教授になられ、2002年からNCC監査役となられた方です。渡辺隆司氏は、公認会計士で、2005年までNPIの監査役をされていました。EB債の関係は、会計を知っている人なら、直感でヤバイと思う分野です。キャッシュフローを伴わない利益は、慎重になるのが通常です。だから、お二人は、直感で立ち向かって行かれたのだと思います。一方、山本NCC取締役兼CFO等は、「監査法人が良いと言っているのに、何故問題視するのか」と向かっていったのです。

    面白いのは、同じ監査委員会の社外取締役でも太鼓持ちを努め、EB債の時価評価を積極推進され、しかもディスクロージャー不要論まで持ち出された方がおられます。森・濱田松本法律事務所の弁護士松本啓二氏です。弁護士って面白いですね、金を出す人の為には、懸命になって働くのでしょうか。最も、弁護士と言って、一くくりでステレオタイプに話すのが一番いけないんですけど。この報告書は4名の方が書かれましたが、そのうち2名の方は弁護士です。

    一つ付け加えると、社外取締役、監査委員、監査役は多分バックデートのことまでは知らなかっただろうと思います。そんなことは、するはずがないとの前提で考えておられたと思います。中央青山も、さすがにバックデートまでは知っていなかったと思います。知っていれば、犯罪に思えます。

    この項で、監査役と言ったり、監査委員会といったりややこしいのですが、NCCが2002年6月から委員会設置会社となっているためです。

    最後に、明日の予告を申し上げます。「日興がベルシステム24に入っていた理由の推理」を行ってみます。実は、報告書を何度も読み返すうちに、ある影が見えてきたのです。この影を推理してみます。

    | | コメント (0) | トラックバック (1)

    日興コーディアル上場廃止の可能性

    1月30日付で日興コーディアルグループ特別調査委員会の報告書が出されました。このニュースと報告書を以下に掲げます。

    ・ 日経1月31日-日興、利益水増し「組織的」・調査委報告
    ・ 調査委員会の報告書

    報告書を読みましたが、どのような粉飾を行ったのか(粉飾でないと当事者は言うかも知れませんが)は、この報告書でほぼ明らかです。但し、何故ベルシステム24を日興が2400億円もの資金を投入して取得したのかについては、調査の範囲に入っておらず依然として謎です。単純に考えれば、140億円ほど利益操作したかったと言うことになるのですが、資金を1500億円程(正確に計算していないので、感覚に近いですが)支出したわけであり、資金の支出には一方では必ずコストが関係します。140億円ほどの利益といったて、帳簿上の利益ですから、逆に税負担が出て、キャッシュフローはマイナスの可能性が高いのです。

    特別調査委員会の報告書についての私のコメントは明日のブログで申し上げることとして、本日は一言だけにすると、「日興コーディアルの上場廃止の可能性」です。この可能性は以下のように多くの新聞等で報道されているのですが、私が上場廃止がありうると思うのは、監査法人の監査報告書が出ない可能性があると思うからです。

    即ち、監査報告書は監査を行った財務諸表は正しいと独立した監査法人が述べることです。当然、ベルシステム24に関係する部分のみではなく、日興コーディアルグループの全てです。そして、問題の訂正すべき監査を行ったのは中央青山監査法人(現在は名称変更で「みすず監査法人」)ですが、今回監査を行うのは中央青山監査法人から抜け出た会計士が7月1日に設立した「あらた監査法人」です。嘗て、中央青山で日興の監査をしておられた会計士が、今回のあらた監査法人による監査メンバーに入っておられるのかどうか知っていませんが、複雑な関係です。(報告書によれば、当時中央青山監査法人はストラクチャーを知った上で、NPIが保有するEB債についての評価益を当期利益とすることについて会計上問題がないとしたとのことです。)

    朝日-日興CGはストップ安気配、調査委報告受け上場廃止懸念強まる
    東京-不正体質浮き彫り 上場廃止強まる
    日経-日興コーデ、売り気配がストップ安まで低下――売買成立せず

    私は、一旦上場廃止になることが中途半端に上場を継続するより、良いだろうと思うのです。上場廃止となっても、再び上場すれば良いのですから。市場の信頼、一般投資家の信頼というのが、上場企業の最も大切としなければならないことです。変に誤魔化すような体質を残して、上場継続するより、信頼される企業として出直した方が、よいと思います。

    明日、特別調査委員会の報告書についてのコメントを書きます。

    | | コメント (0) | トラックバック (0)

    « 2007年1月 | トップページ | 2007年3月 »