それでもボクはやってない
1) それでもボクはやってない
周防正行監督の映画それでもボクはやってないを見てきました。警察の取調室における取調、勾留、留置場での待遇、裁判、保釈、判決等々普通では、なかなか体験できないことを見ることができました。疑似体験というと大げさすぎるし、あまり体験したくないことです。
2) 富山の冤罪事件
覚えておられる方もあると思いますが、次の報道が今年の1月19日にありました。(今回は、北日本新聞の報道を引用します。)
1月19日-刑期終えた男性は無実 富山県警発表
1月20日-服役2年 男性無実、14年の婦女暴行 県警が誤認逮捕
2002年1月14日に婦女暴行、3月13日に婦女暴行未遂事件があり、2002年4月15日に容疑者を逮捕しました。当初は否認していましたが、その後、容疑を認めたことから逮捕し、公判でも起訴事実を認め、2002年11月に懲役3年の実刑判決となりました。そして、判決から2年2月後、逮捕から2年10月後の2005年1月に刑務所を仮出獄し、その後判決から3年を経過し刑期を終えました。
無辜の人が逮捕から仮出獄まで3年近く自由を奪われたわけで、人の一生にとって非常に長い期間であると思います。しかも、これ21世紀に日本で起こったことです。何が、どうなっているのだろうと思います。富山県警は、婦女暴行と婦女暴行未遂が続いていたから犯人逮捕に焦っていた。そして、とんでもないことをしてしまった。検察官も過ちをおかした。次の記事を読んで下さい。この人が普段履いていた靴のサイズは24.5センチであったが、犯行現場から採取された足跡の大きさは約28センチであった。家宅捜索でも、足跡に合う靴は押収されなかった。そして、「送検時の検察官による弁解録取と、その後の裁判官による拘置質問で容疑を否認していたことが新たに判明した。」と書いてあります。裁判官もどうなのだろうか?弁護士は?と思ってしまいます。(これ以上の詳細を知らないので、何も言えません。)
富山地検は9日、この人の無罪を求め、富山地裁高岡支部に裁判をやり直す「再審」を請求しました。
2月9日-地裁高岡支部に再審請求 県警誤認逮捕で富山地検
2月10日-無罪求め再審請求 県警誤認逮捕
1月30日に法制審議会刑事法部会は、刑事裁判で被害者の権利を拡大する要綱を決定したとの報道があります。被害者や遺族らが裁判に出席し、被告に直接質問したり、量刑を主張できるようになる方向と思います。何が、言いたいかというと、決して世の中単純ではないし、人は過ちをおかすものです。富山事件の法廷にも被害者の女性は証言のために出られたはずです(非常に嫌な思いのはずですが)。そして、この人が・・・と言われた可能性があります。参考に、
Nikkei Smartwoman 1月31日-刑事裁判に被害者参加・法制審が要綱
3) 国選弁護人
「それでもボクはやってない」の弁護士(役所広司、瀬戸朝香)は私選弁護士です。そして、弁護側の主張を行うために再現ビデオを作ったり、駅で協力してくれる目撃者を探すためにビラを配ったり、法廷には支援してくれる仲間が大勢来てくれたり。実際には、なかなかこうは出来ないだろうなと思ってしまいます。
実際に警察に呼ばれたら、なかなか大変です。こんなことを書かれた人がおられます。
「以前同行していた友人が19時頃交通事故に遭いました。救急車に付き添い入院させてから、警察に行き事情説明を行ったのですが、警官の作成した調書をそのまま認めないと留置場に泊まってもらうと言われ、反論したところ、大きな声とスポットライトによって恐怖心で腰砕けになりました。まして、犯人扱いされたのであれば相当な苦痛が生じていたでしょう。」
ここに、兵庫県弁護士会の2004年7月14日付け国選弁護人報酬の増額等を求める会長声明があります。この文書は、「わが国の刑事裁判の7割以上について国選弁護人が選任され・・」と始まっているように、多くの刑事事件は国選弁護人による弁護です。しかも、裁判からです。兵庫県弁護士会の会長声明にもあるように国選弁護人に対する報酬は低く、地方に行けば、弁護士不足です。
被害者の人権ということが叫ばれていますが、冤罪をつくらないということも大事だと思います。
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