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2007年3月27日 (火)

安倍首相の従軍慰安婦発言

昨日の参院予算委員会で共産党吉川春子委員が安倍首相に質問を行い、安倍首相は河野談話の継承を再確認しています。具体的に、どのような発言であったかは、参議院テレビと議事録で確認をすればよいのですが、これについて日経に次のように記事が載ったのが面白いと思いました。

日経 3月27日 従軍慰安婦問題、安倍首相の謝罪評価・米国務省

即ち、首相の答弁を報じたのではなく、首相国会答弁についての米国国務省の反応を報じたからです。朝日は紙面で、参院予算委員会における、この答弁に関する記事を見ました。しかし、Webでは見つけることが出来ませんでした。なお、当然のこととして「しんぶん赤旗」は、報じています。(但し、「具体的な答弁を避けた。」と書いてあります。)

しんぶん赤旗 3月27日 「慰安婦」 被害女性に謝罪を 吉川議員 首相に発言撤回迫る

そして、この3月27日の参院予算委員会での答弁を海外のメディアが、どのように報じているかが興味のあるところですが、BBC、NY TimesとWashington Postは以下でした。各報道の全文を”続きを読む”に入れておきます。

BBC 26 March 2007 "Japan PM apology on sex slaves"
NY Times March 27, 2007 "Japan Leader Who Denied State Role in Wartime Sex Slavery Still Apologizes"
Washington Post March 26, 2007 "Japan Apologizes to WWII Sex Slaves"

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加ト吉の循環取引

加ト吉の循環取引を読売新聞が報じました。

関西発 読売 3月25日 「加ト吉」巡り循環取引か、証取法に抵触も
読売 3月25日 「加ト吉」巡り循環取引 「年200億」証言も…社内に調査委
関西発 読売 3月25日 加ト吉専務「結果的に循環かも」
関西発 読売 3月25日 循環取引問題 みずほ銀が30億円回収不能
関西発 読売 3月26日 売買契約書に加ト吉の常務名が記載…循環取引問題
関西発 読売 加ト吉専務「監査法人が指摘」、循環取引問題で会見
読売 3月27日 加ト吉めぐる疑惑、中堅商社幹部「循環取引あった」

循環取引のルートについては、この読売新聞の説明図がよく分かります。

加ト吉は、上記の報道にあるように、社内に調査委員会を設置して調査中であり、詳細判明次第開示する予定と述べておられます。(3月26日 加ト吉 プレスリリース pdf)従い、報告書が開示されてから、またエントリーを立てようと思っています。

しかし一方、大阪市の中堅商社から加ト吉水産に対する売掛金はファクタリングを行ってみずほのファクタリング会社(みずほファクターでしょうか?)に譲渡されています。大阪市の中堅商社に債権回収リスクが残っている可能性もありますが、売掛債権30数億円が加ト吉水産から支払われない場合は、訴訟となることが予想されます。従い、調査委員会の報告書が外部の弁護士、会計士をメンバーに入れていても、加ト吉の債務を認めるような内容が含まれていた場合は、その部分が削除されると思いますし、弁護士、会計士は、その職務上からは加ト吉の為のアドバイスをしなければならず、加ト吉に不利になることは外部に開示しないはずです。但し、何か参考になる報告書が出てくると期待します。

現時点での雑感を少し書いてみます。

1) 循環取引はコンピュータ・ソフトウェアだけではなかった

1月24日のエントリー:IXI(アイ・エックス・アイ)の民事再生手続の申し立て1月27日のエントリー:IRI発表のIXIによる循環取引(続編)2月 6日のエントリー:IXI-東京リース-日本IBM2月 8日のエントリー:日本IBMと架空循環取引で循環取引のことを書いてきましたが、全てコンピューター・ソフトウェア関連でした。通常の商品の場合は、目で見えるし、単価が高くなりすぎると変だなと誰かが気付くことになり、極端なことは生じないはずです。しかし、読売 3月27日 加ト吉めぐる疑惑、中堅商社幹部「循環取引あった」には、「昨年、販売した健康食品が、その約2年前に10分の1の価格で販売したものと同一商品であることを確認した。」とあり、10倍に化けるまで、よく2年間続いたのだと思いました。このあたりになると、加ト吉、中堅商社、食品販売会社、貿易会社等この取引に関与していた会社は、被害者であったとしても、実は気付くチャンスはあったのだろうと思いました。最も、各会社に共謀・共犯者がいたりして、他の関係者は皆騙されていたという可能性もありますが。

2) 循環取引防止策

toshiさんのブログでは、循環取引とコーポレート・ガバナンスのことを述べておられます。循環取引防止はコーポレート・ガバナンスの重要な事項であると思います。しかし、この種の循環取引の防止は大がかりなチェック体制というより、もっとPrimitiveなビジネスの基本に重要性がある気がしてならないのです。

つまり、どこの企業でも仕入、製造、販売の部門は別であり、循環取引は容易ではありません。商社のように、営業部で同じ担当が仕入と販売を行うケースもあるでしょうが、その場合は上司がおり、経理部門もあるので、そう簡単に循環取引が行えるものではありません。以前、住商銅取引の巨額損失なんてことがありました。外為取引で損失というのもよく耳にします。しかし、これらは例えば先物取引等による差額決済であり、循環取引の場合は、正規の販売や仕入のルートに乗って、全額決済が行われるのであり、通常であれば社内関係者の誰かが変だと気が付き、それ以上拡大することを防ぐことが出来るはずと思いました。

循環取引の可能性が疑がわれたなら、やはりその取引は辞退すべきと考えます。どこかで破綻する可能性があり、その場合無傷ですむとは限らないからです。所詮ユーザーが存在しない架空取引です。

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2007年3月26日 (月)

兵庫県が79億円の支払訴訟を受ける

県が79億円の支払訴訟を受けるというのは、金額も大きいし、ただ事ではない感じがします。次のニュースです。

日経 3月22日 三菱UFJ信託と住友信託、兵庫県を提訴
時事ニュース 3月22日 兵庫県に79億円請求=レジャー施設債務巡り-三菱UFJ信託・住友信託

時事ニュースの方が、多少は文章が長いのですが、その全文は次の通りです。

 兵庫県が県有地の土地信託で整備したレジャー施設をめぐり、借入金の損失補償を県から打ち切られ資金調達ができなくなったとして、事業を受託した三菱UFJ信託銀行と住友信託銀行が県を相手取り、総額78億7900万円の支払いを求める訴訟を神戸地裁に起こしたことが22日、分かった。バブル崩壊で赤字のレジャー施設を抱える自治体は増えているが、その債務をめぐり金融機関から提訴されるのは珍しい。

1) 土地信託とは

信託とは、委託者が自己の保有する金銭、債権、動産、不動産等の財産(信託法改正で、2008年6月頃より負債を含んだ事業も対象となります。)を、受託者に一定の目的に従って、その財産の管理・処分を委ね、管理・処分の結果としての金銭を受託者から受領するか、若しくは受領する権利(受益権)を譲渡して金銭を得る取引です。信託の受託者となれるのは、現行法上信託銀行に限られると思いました。

土地信託の場合は、土地を信託銀行に譲渡し、例えばその信託の目的が賃貸住宅による一定期間の運用であった場合は、信託銀行はその土地に賃貸住宅を建設し、賃貸家賃収入から経費、借入金返済額、利息、信託手数料等を差し引いた残額を委託者に支払います。このみずほ信託銀行のWeb Pageに土地信託の説明がありました。

いずれにしても、信託銀行は通常リスクを負いません。別の、表現をすると、信託銀行のリスクが低く限定されているから、手数料を低く押さえることが可能です。従って、例えば社債発行より、信託を利用して資金調達を行う方が、総合資金コストでは低い場合があります。このスキムの場合、資金の出し手が受益証券の保有者=受益者(購入者)であり、リスクは運用先(債務者)となりますが、受益証券を社債に置き換えても実質は変わりません。従い、証券会社と信託銀行と、どっちが安いのと言うことです。

2) 兵庫県の土地信託

報道の内容のみで、情報が限定されていますが、土地信託であること、そしてその土地に建設したのがレジャー施設であったことが分かります。当然のこととして、三菱UFJ信託銀行と住友信託銀行はリスクを取らない契約となっているはずです。損失補償を県から打ち切られとありますので、この兵庫県の土地信託については、受益証券が発行されており、受益証券の売買を可能とし流通性を持たせるために、兵庫県の損失補償がなされていたと思います。79億円はいきなりこの金額になったのではなく、長期に渡り損失が続いた結果であると思います。

何故、兵庫県は土地信託を利用したのかについて、私はレジャー施設であったことからと想像します。公的な施設であれば、県債発行による資金調達で、県が自ら行うか、公社でおこなったのではないかと思います。レジャー施設であったから、その為の借入や県債発行はしたくなかった。土地信託であれば、信託銀行が全てやってくれる。損失補填は、黒字の絵があるから問題ないと判断した。そんな、ストーリーではないかと思います。

しかし、県事業でも、公社事業でも、信託でも実質は同じです。夕張市の第三セクター等が昨年有名になりましたが、もしかすると土地信託の方が更に分かり難い姿になっているのではと思いました。土地信託であるから、特別会計にすら計上されない。

3) 統一地方選挙

兵庫県議会選挙が3月30日告示、4月8日投票の予定です。夕張市の件があった最初の統一地方選挙であり、地方財政問題は一つの選挙の争点であると私は思います。各候補は、この件について、マニフェストで或いは演説で、どのように主張されるのだろうと思います。三位一体改革は地方自治体財政に厳しい方向であり、地方財政問題は大きな争点であると思います。

なお、たまたま兵庫県が民事訴訟を受けたため、ニュースとなったのであり、水面下に沢山の同様な土地信託等があると思うと、兵庫県に限らず他の地方自治体でも同様な問題があると思います。

4) 兵庫県の情報開示

民事裁判で79億円の支払を求められる訴訟を訴えられたのですから、兵庫県としては県民に事情を説明すべきだと思って、Webを探したのですが、兵庫県の2007年3月記者発表資料を含め見つけることが出来ませんでした。

兵庫県の平成19年度予算を見ると一般会計1兆円、特別会計1.3兆円、公営企業会計0.2兆円で合計3.6兆円でした。フレキシビリティーが、どの程度あるか分からないのですが、いずれにせよ土地信託によりレジャー施設を運営していた土地は県民の土地であり、損失補償を行う財源も県民の税になるわけで、土地信託についても適切な情報開示を行い、係争が発生した際には、その係争内容を説明すべきであると思います。さもなければ、一部の関係者のみに利益誘導が行われていても分からないし、この種の情報公開が個人情報の開示となるわけではないし、民主主義の原則により公開されるべきと考えます。有権者としては、そのように方向に活動して頂ける地方議会議員を選出したいと思います。

ここまで書いて思いました。やはり、法が必要ではないかと。公務員による横領、業務上横領、収賄、背任等の罪は適用となりますが、粉飾決算、不当表示については当てはまらないのではないかと。地方自治体の会計は現金の大福帳主義で貸借対照表が基本的にはない。そもそも、粉飾決算というからには元となる正しい表示のルールがあって成立する。このあたりも良く考えてみる必要があると思いました。

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ライブドア裁判

1) ライブドア事件の一審判決

ライブドアによる証券取引法違反で検察に起訴された7人と2社についての一審裁判の判決が全て出ました。その結果は、以下の表の通りとなります。(共同通信の記事をリンクしておきます。)

被告人 元の役職 求刑 判決日 判決 判決後 共同通信記事
堀江 貴文 LD代表取締役 懲役4年 3月16日 懲役2年6月 控訴 再保釈
保証金5億円
3月16日
3月16日
宮内 亮治 取締役 懲役2年6月 3月22日 懲役1年8月 控訴 再保釈
保証金8千万円
3月22日
3月22日
熊谷 史人 取締役 懲役1年6月 3月22日 懲役1年
執行猶予3年
控訴 3月22日
3月22日
中村 長也 LDファイナンス代表取締役 懲役1年6月 3月22日 懲役1年6月
執行猶予3年
3月22日
久野 太辰 港陽監査法人会計士 懲役1年6月 3月23日 懲役10月 控訴 3月23日
小林 元 元港陽監査法人会計士 懲役1年6月 3月23日 懲役1年
執行猶予4年
3月23日
ライブドア 法人 罰金3億円 3月23日 罰金2億8000万円 確定の見込み 3月23日
ライブドアマーケティング 法人 罰金5000万円 3月23日 罰金4000万円 3月23日

2) 判決の評価

3人について執行猶予がない実刑判決であり、堀江被告の実刑判決2年6月及び保釈保証金5億円は、証券取引法違反による刑事裁判での判決では最も重いものであったと思います。例えば、カネボウ事件の帆足隆元社長に対する判決は懲役2年で執行猶予3年、宮原卓元副社長は懲役1年6月で執行猶予3年でした。カネボウ事件の会計士3人への判決は懲役1年6月、執行猶予3年でした。

しかし、米国と比べるとはるかに軽いのです。エンロン元CEOのJeffrey Skillingは禁固24年4ヶ月の判決であったし、ワールド・コム元CEOのBernard Ebbersは禁固25年でした。二人とも現在服役中と思います。

ライブドア判決は過去の判決と比較すれば、重い判決である気がします。しかし、証券市場の運営に障害をもたらす偽計取引や粉飾決算は軽い罪であると、市場そのものの信頼を喪失し、証券市場における資金調達を阻害する恐れがあると思います。厳罰化の意見の論点としては、他に経営者に対する規制があります。即ち、経営者が悪事を働いたとき、その結果は株主、従業員、取引先等に対する損失となるわけですが、一方で経営者を牽制する働きを何に求めるのが有効であるかです。粉飾決算を行っても、重い罪にならない場合に経営者は自己の利益追求のみに走らないかと言う点です。

3) 司法取引

宮内被告と検察の間に、司法取引があったのではとの疑惑を持っている人が多くおられます。厳密には、司法取引は日本では存在しないと理解するので、黙契のようなものかも知れませんが。判決結果からすれば、例え宮内被告と検察の間に黙契があったとしても、宮内被告にも実刑判決が出たのであり、裁判所はそのような取引を認めなかったとなると思います。

通常の刑事裁判の場合の、情状酌量の余地の考え方と、宮内被告が積極的に罪を認め、検察に情報提供を行ったことについてです。ライブドア裁判は、刑法の罪ではなく、証券取引法の刑事罰です。刑法の罪の様に、「被告人は深く反省しており、再犯の可能性が低い。」というようなことが、証券取引法違反の場合に、当てはまり難いように思います。

しかし、一方で、経済犯罪は複雑な取引や操作が数多く絡み合っており、刑法の刑事事件より立証ははるかに困難であり、内部協力者がいないと「本丸」に検察は登りつめることが困難となることが予想されると思います。日興の様に、「一担当者のミス」として逃げようとしなくても、「担当部長の独断」あたりで逃げ切ろうとすることは、あり得ると思います。そんなときに、内部協力者が出てこないと難しい局面はあると思います。

実は、独禁法については「リーニエンシー」と呼ばれる制度が2006年1月より施行されています。次の毎日新聞の記事は名古屋地下鉄談合事件のハザマがリーニエンシーにより公正取引委員会が、検察当局への告発対象から外したと報道しています。私は、この毎日新聞の事実関係の確認はできていませんが、独禁法7条の2第7項、第8項で課徴金納付の免除、減免が、公取委の立入検査前に単独で申告、情報提供をした場合には2006年1月より施行の改正で可能となっています。

毎日新聞 2007年2月28日 名古屋地下鉄談合:16人で受注調整…5人前後逮捕へ (下の方の「◇ハザマは告発対象から外す」です。)

同様な制度を証券取引法(金融商品取引法)においても導入が有効か、検討をしても良いと思いました。独禁法(正式には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)の7条の2第7項と第8項を続きに読むに入れておきます。また、参考として、ここここのMorrison & Foerster LLPのWebで、独禁法改正の解説があります。

4) 日興コーディアル事件

やはり、少し触れておきます。東証は、上場廃止としなかったのですが、私は上場廃止にすべきであったと今でも思っています。その理由はベルシステム24とBBコールの不可解なディールについて説明がなされていないからです。このことについては、ベルシステム24が2月決算であることから、ベルシステム24の決算公告がなされたとき(6月初めと思いますが)に詳細を分析して報告したいと思います。

今回は、東証は粉飾決算に対し厳しくあるべきで、粉飾決算企業には厳しく上場廃止の決断をすべきであると思うことを述べておきます。理由は、証券市場は政府が運営するものではなく、証券市場に参加する企業と投資家が運用すべきと考えるからです。自主的なルールで公平に運用できないと政府の介入を許すことになるのであり、自主ルールによる運用が本来の姿であると考えるからです。

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2007年3月24日 (土)

関西テレビの「あるある」対策

「あるある」納豆事件に関しては、過去に1月16日のエントリー:今日は納豆がありました1月20日のエントリー:納豆の偽造1月21日のエントリー:納豆の偽造への追記1月30日のエントリー:「あるある」とNHKを書いたことがあるので、少しまた書いてみます。

3月23日付けで関西テレビは、この発表で以下のことを述べています。
・ 「発掘!あるある大事典」の問題に関して、原因究明と再発防止策の提言を依頼しておりました調査委員会(委員長:熊﨑勝彦弁護士)より調査報告書を拝受いたしました。
・ 調査委員会の報告書および当社としての最終的な見解・対応策につきましては、ホームページにて視聴者の皆様にも開示いたします。

報告書と関西テレビとしての見解・対応策は、近い中にWebで公開されると思うので、どのような内容か見たいと思います。

この件に関する朝日新聞の報道は、「3月24日朝日:試される自浄能力 「あるある」調査委報告」ですが、この報道は、「調査で分かったのは、、放送人の当事者意識の欠如。社会的には通用しない」とあります。「あるある」は日本テレワークが全てを仕切っていたのであり、関西テレビは機能をしていなかったことに驚きます。多くの企業がコンプライアンスということで懸命に努力をしているし、どの企業も、下請けの失敗は自らの失敗と何ら変わりなく、自社の信用を傷つけると、下請企業に発注した仕事についての管理も、重要な業務の一つであるとして取り組んでおられます。どの企業も、市場競争に残るため懸命の努力をしておられます。しかし、テレビ局は、のんきな組織なのだと思ってしまいます。

朝日の記事にある「番組制作は日本テレワークなどに丸投げされ、捏造していたとの認識がないことから、明確な放送法違反とは言えないと判断した。」は、調査委員会の見解だと思いますが、私には異論があります。即ち、放送法3条の2は次の通りですが、捏造は第1号の「公安及び善良な風俗を害しないこと。」に反するのではないかと思います。

第3条の2  放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

それに、関西テレビの放送基準前文には、次のことが書かれています。

つねに品位と番組の調和に留意し明るく健全な放送を通じて社会の信頼にこたえるものとする。

この言葉を実践して欲しいと思います。放送法3条の2を理由に行政処分を行うことは、不当だと思います。しかし、違反がないと断言することは決して良くないし、そもそも成文化されていない部分も含めて社会が放送事業者に期待するものがあるはずであり、倫理的な部分も含めて企業はコンプライアンスが求められていると思います。

朝日の記事の中に、”記者会見した菅総務相は「放送事業者自らの調査では、自浄作用が働かないことが明らかになった」とも述べ”と報じられている部分がありますが、放送に対する政府権限の強化は、してはならないことと思います。放送事業者自らが正しい放送を行い、政府の関与を防がなくてはならないのです。関西テレビの最大株主は阪急阪神ホールディングスであり、グループ企業としてここに載っています。関西テレビの自社努力による改善は限界があると思え、阪急阪神ホールディングスも改革を推進すべく関西テレビの役員の一掃をしてでも取り組んで欲しいと思います。

実は、関西テレビにも番組審議委員会というのがあり、ここにそのメンバーの記載があります。「あるある」事件は番組審議委員会が機能しなかった、お飾りに過ぎなかったことを示したのではないかと思います。市民グループからも委員就任を得る、或いは市民グループとの対話の場を拡大する等、市民グループの参加を得ることも重要だと思います。例えば、世界銀行にはこのようなWebもあります。放送基準の前文に書かれたことを目指して頑張って欲しいと思います。

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向井亜紀さんと高田延彦さん夫妻の代理出産による出生届不受理確定

次のニュースがありました。

読売 3月23日 向井亜紀さんの双子男児、出生届受理を認めず…最高裁

この最高裁の決定は、ここ全文-PDF)にあります。

これに関して書き進めます。

1) 事実関係

向井亜紀さんと高田延彦さん夫妻(以下夫妻とします。)は、米国ネバダ州で夫妻の受精卵を米国人の女性の子宮に入れて、その女性によって出産をして貰い、2003年11月に双子を得ました。夫妻とその女性及び女性の夫(代理夫妻)の間には、生まれた子については夫妻が法律上の父母であり、代理夫妻は子に関する保護権や訪問権等いかなる法的権利又は責任も有しないことなどを内容とする有償の代理出産契約が結ばれていました。ネバダ州の州法は婚姻関係にある夫婦は代理出産契約を締結することができることを認め、権利・義務関係の条文も定めていました。

夫妻は、11月下旬ネバダ州第二司法地方裁判所家事部に対し親子関係確定の申立てをし、同裁判所は、代理夫妻が向井夫妻の子として確定することを望んでいることを確認し、関係書類を精査した後、12月1日代理母から生まれる子らの血縁上及び法律上の実父母が夫妻であることを確認するとともに、出生証明書を作成する関係機関に、夫妻を父母とする出生証明書を準備し発行することの命令を出しました。12月31日付で夫妻は出生証明書を得ました。

2004年1月に夫妻は帰国し1月22日に品川区に出生届けを提出しました。品川区は5月28日、夫妻による出産の事実が認められず、嫡出親子関係が認められないことを理由として、出生届を受理しない旨の処分をしたことを通知しました。夫妻は品川区の処分に対する不服申立てを東京家裁に行い、家裁は申立てを却下し、更に夫妻が東京高裁に不服申し立てをし、高裁は出生届の受理を命じました。そこで、品川区は最高裁に抗告を行い、最高裁は高裁の命令を破棄し、夫妻の申し立てを棄却する決定を行いました。

ネバダ州の出生証明書により、子らの父母を夫妻として品川区が出生届けを受理すべきであるという論拠は次の民事訴訟法118条です。

(外国裁判所の確定判決の効力)
第118条  外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一  法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二  敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四  相互の保証があること。

2) 最高裁の判断

最高裁は民事訴訟法118条第3号の我が国の公序良俗に反するとして、夫妻の申し立てを棄却する決定を行いました。即ち、「民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は、我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものであり、民訴法118条3号にいう公の秩序に反するといわなければならない。」と述べています。

日本国内で認められないことが、それを法律で許されている国や地域で行って、その結果を日本国内でも効力があるとできるのかと言う点です。又、補足意見としては、「代理出産が行われている国においては、代理出産した女性が自ら懐胎、出産した子に対して母親としての愛情を抱き、その引渡しを拒絶したり、反対に依頼者が引取りを拒絶するなど、様々な問題が発生しているという現実もある。」、「問題が発生した場合、懐胎、出産した女性、卵子を提供した女性及び子との間の関係が法律上明確に定められていなければ、子の地位が不安定になり、また、関係者の間の紛争を招くことともなって、子の福祉を著しく害することとなるおそれがある。」等々が述べられています。

そして、補足意見の中で「特別養子縁組を成立させる余地は十分にあると考える。」と述べられていますが、私も特別養子縁組がふさわしいと考えます。私の理解では、特別養子縁組は戸籍において「養子」と記載されず「長男・長女」と記載されると思います。

3) やはり愛

最高裁の決定の補足意見にも「子らに対し夫妻が親としての愛情を注ぎその養育に当たっていることについては,疑問の余地はない。」と述べられています。法よりも大事なものが愛であると私は思います。やがて大きくなった子らは、全てを知るでしょう。それで良いと思うのです。その結果、何も変わらないし愛情も当然変わらないものと思います。

最後に、宋 文洲氏が1月25日のNBonlineに書かれた「捨て子の少女の死と、脱・格差社会のもと」と題した記事を紹介します。貧しい、未婚の男性農夫が草むらに捨てられた女の子を拾って育て・・・というお話ですが、愛とは何よりも美しく強いものだと感じ入りました。ここにあります。生きていく上に最も大切なものは愛と思います。

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2007年3月23日 (金)

タミフルについて(その2)

柳澤厚生労働大臣が本日(23日)の閣議後の記者会見で、「タミフルと異常行動による死亡との因果関係について、今までの判断で良かったのか、見直しをしないといけない」と述べたと報道がありました。

日経 3月23日 厚労相、タミフル再調査「寄付受けた研究者は除外」

3月 6日のエントリー:タミフルは使うべき?で、触れたこともあり、再度すこし書いてみます。

1) 医師の対応

3月 6日のエントリー:タミフルは使うべき?では、医師と相談されるのが一番ですと書きました。これについて、今も私の考えは変わりませんが、参考までに医師はどのように対応されようとしておられるか、日経メディカルオンラインが3月21-22日に行った医師へのアンケート調査の結果が載っていました。(Nikkei Medical Online 2007. 3. 23 【緊急調査】最終集計結果発表!

調査は、タミフルの添付文書改定と緊急安全性情報の配布が明らかになった直後の3月21日17時から実施し、22日21時で回答を締め切った1日余りで、医師会員から集まった282件の回答の結果で、「先生は今後、どのような方針でタミフルを処方しますか」という設問を提示し、回答を以下の4つの選択肢の中から1つだけ選ぶ方式で、それぞれの回答のパーセンテージは以下の通りでした。

42.6%   10歳代の未成年患者への処方は控える。
25.2%   10歳未満の小児も含め、未成年患者への処方を控える。
18.1%    成人患者も含め、処方を控える。
13.5%    これまで通り、(患者の年齢に関係なく)必要に応じて処方する。

もし、タミフルを希望されるなら、その旨(診断キットでインフルエンザと診断され、発病から24時間以内に限りますが)医師に申し出ればよいし、希望しないなら、そのように申し出るのが良いと思います。実際には、その時の病状を含め考量すべき事項は多いと思います。(例えば、明日重要な仕事があり、無理にでも熱を下げて仕事をしたいから、タミフルを下さいと言われる方もおられるかも知れません。)

2) タミフルを服用していなくて飛び降りをしたケース

読売 3月23日 インフルエンザ14歳男子、タミフル服用せず飛び降り

という報道がありました。この記事の中に「インフルエンザの高熱によって幻覚や異常行動が起きることは知られている。」と書かれていますが、高熱により意識が朦朧とし、転落死をしてしまうことはあり得ると思います。タミフル問題についての報道が、「飛び降り」との表現を使用していますが、「飛び降り」ではなく「転落」ではないかと思えますが、いかがでしょうか?インフルエンザ脳症は、10歳よりずっと小さい小児に多いのですが、「飛び降り」がないのは、小さい子供は柵を乗り越えられないから、「転落死」も生じないのかも知れません。

タミフルは、インフルエンザ発症2日以内の投与によって高い効果が得られるとされています。タミフルを悪者扱いするだけが、解決ではないと思います。薬の評価は容易ではありませんが、厚生労働省に検討を実施願い、正しいを評価を出して貰いたいと思います。

3) 新型インフルエンザ対応

心配になるのが、次の報道です。

共同 3月23日 新型インフル対策に影響も タミフル投与中止問題

予防接種が役に立たない新型インフルエンザへの対策において、タミフルは万一の流行を防ぐ貴重な手段であると思います。危険面があるとしても、それ以上の効果がある場合は、リスク・ミニマイズで使用すべきと思います。ちなみに、以下は外務省 海外安全ホームページの鳥インフルエンザ流行地域の拡大(その20)にあった、ヒトへの感染が確認されている国・地域です。新型インフルエンザの脅威も決して対岸の火事ではないと思います。

ヒトへの感染が確認されている国・地域
 (2007年2月27日現在:12か国 出典 WHO鳥インフルエンザWebsite)
   インドネシア      感染者数  81人(うち、63人死亡)
   カンボジア       感染者数  6人(うち、6人死亡)
   タイ            感染者数  25人(うち、17人死亡)
   中国           感染者数  22人(うち、14人死亡)
   ベトナム        感染者数  93人(うち、42人死亡)
   ラオス          感染者数  1人(うち、0人死亡)
   アゼルバイジャン 感染者数  8人(うち、5人死亡)
   イラク          感染者数  3人(うち、2人死亡)
   トルコ          感染者数  12人(うち、4人死亡)
   エジプト         感染者数  22人(うち、13人死亡)
   ジブチ          感染者数  1人(うち、0人死亡)
   ナイジェリア      感染者数  1人(うち、1人死亡)
   計          感染者数 275人(うち、167人死亡)

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2007年3月21日 (水)

NHKをめぐる放送法改正

本日は、NHKの受信料支払い義務化の先送りというニュースがありました。

毎日 3月20日 放送法改正案:NHK受信料支払い義務化盛り込まず 政府

結果、支払義務化の部分が含まれない放送法改正案が国会に提出されることになりますが、どのような改正があるかについては、次の朝日の記事が改正案の骨子を報道していました。

朝日 3月19日 捏造放送に総務相が防止策要求 放送法改正案の条文判明

放送法の改正でNHKに関して気になるのは、政治的独立でありであります。1月30日のエントリー:「あるある」とNHKで、1月29日にあった東京高裁の「NHK番組改編訴訟」に対しての判決についての報道から編集権と期待権の関係より改竄に関して書きました。この判決文については裁判所Webここここ(判決文:PDF)にアップされています。そこで、女性国際戦犯法廷を主催した「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)が損害賠償を起こしたNHK番組改編について裁判所が、どのような判断を行ったかを見てみます。

詳しくは、判決文PDFを是非読んでみて下さい。(27ページ以降の第4 「争点に対する判断」からでもよいと思います。)

1) 事実認定

問題の番組はNHKのETV2000「戦争をどう裁くか」の4回シリーズの第2回目で「問われる戦時暴力」の表題で2001年1月30日に放送されました。この番組内で女性法廷を取り上げ、VTRを写しました。

女性法廷とは、バウネットを含む韓国,北朝鮮,中国,台湾,フィリピン,インドネシアの各NGO7団体(従軍慰安婦問題の加害国NGOと被害国NGO)及び国際法の専門家や人権活動家らからなる国際諮問委員会によって構成された国際実行委員会で、戦時性暴力等に関し国際法に違反する個人や国家の責任を追及するものとして刑事裁判に近い形式を採用し、裁判官、検察官及び書記局による構成とし、2000年12月8日から10日にかけて東京の九段会館で、12日に日本青年間で開催されました。東京では、最終判決まではいたらず、最終判決は2001年12月4日にオランダのハーグで言い渡されました。

裁判所が認定したNHKにおける製作・編集作業と外部における動きを一つの表にしてみました。

期間 NHKにおける製作・編集作業 外部団体・政治家とのかかわり
2000年12月15日頃より ドキュメンタリージャパンのディレクターが取材で得た素材・資料の編集を開始。

12月18日右翼団体がNHKを取り囲み、女性法廷を報じた日のニュースに関して抗議行動を行った。

2001年1月17日 NHKチーフディレクター、デスクとドキュメンタリージャパンのチーフディレクター、ディレクタが昭和天皇を有罪とした判決言渡しのシーンについて、会場の拍手を薄め、加害者としての元兵士の証言について加害兵士の家族のプライバシーを保護のための証言の一部削除等を行った第一次版を作成した。
2001年1月24日まで NHK教養部長より、第一次版は女性法廷を紹介するだけの内容で、その歴史的意義を客観的・批判的に考察する教養番組としての視点が欠けていると発言があったので、問題点の指摘を追加、バウネット代表のインタビュー削除、天皇有罪の審理結果発表のシーンについてナレーションに変更するなどの編集を行ったが、NHK教養部長はさらに内容を変更することを求めた。
2001年1月28日まで 26日には教養部長が求めた変更を盛り込んだテープが完成し、通常は番組試写会に立ち会わない放送総局長と国会担当の総合企画室担当局長も「予算説明の際に国会議員から話題とされることに備えて見ておきたい。」と加わり、番組制作局長、教養部長、チーフディレクターらが立ち会って試写が行われた。番組制作局長は、女性法廷に批判的な意見も入れることを指示し、G大学H教授のインタビューを挿入することとした。その他の変更も含め28日に仮編集44分版が製作された。

25日NHKの平成13年度予算案が総務大臣に提出された。この少し前から、NHK総合企画室の担当者らにおいて、与党(X党、Y党、Z党)所属の衆参両議院議員のうち250名程度の執行部等の有力議員等に対する個別の予算説明を開始。26日頃NHK政治部出身の総合企画室担当部長が安倍官房副長官との面談の約束を取り付けた。
26日ある団体役員は総務大臣を訪ね、この番組に関してNHKが公共放送としてふさわしい公正な報道を行うようにと申し入れた。

2001年1月29日と30日22時の放送まで

29日夕方NHK番組制作局長室において、放送総局長、番組制作局長、総合企画室担当局長、教養部長、チーフディレクター、デスクが立ち会って、本件番組の試写が行われた。番組制作局長は、試写の始まる前に、今は時期が悪いとの趣旨の発言をした。試写直後に、総合企画室担当局長が「これではぜんぜんだめだ。」と発言した後、チーフディレクターとデスクは退室を求められた。話し合い終了後、チーフディレクターは、①女性法廷において旧日本軍による強姦や従軍慰安婦制度が人道に対する罪を構成することを認定して日本国と昭和天皇に責任があるとした部分を全部カットすること、②スタジオ発言で女性法廷を積極的に評価している部分を削除すること、③海外メディアの反応から日本政府の責任に言及した部分を削除すること、④日本政府の責任に言及した部分を削除すること等の変更を指示した。チーフディレクターが削除箇所が多すぎる旨の意見を述べると、総合企画室担当局長、女性法廷に反対する立場のG大学H教のインタビューをさらに増すことを指示した。チーフディレクターが難色を示したところ、総合企画室担当局長は「毒を食らわば皿までだ。」と述べて、上記指示を維持した。また、総合企画室担当局長はチーフディレクターに対し、旧日本軍が関与したとする資料に関するコメントの修正を指示した。

30日午前2時ころ、NHK番組制作局長室において、放送総局長、番組制作局長、教養部長、チーフディレクターが立ち会って、約43分となった本件番組の試写が行われ、早朝にかけて放送用のテープのオンライン編集(本編集)及び再度の修正を踏まえた台本の完成作業が行われた。

午前9時頃,スタジオでダビング編集(本編集の音入れ)が行われ、声優による吹き替えやアナウンサーによるナレーションが収録され、午後3時過ぎころからは、ミックスダウン作業(本編集における音声の仕上げ)が行われ、午後6時30分ころ、43分版の本編集した番組が完成した。

午後、番組制作局長は、NHK会長室において、会長と本件番組について話し合った後、放送総局長室を訪れ、放送総局長とともに再度修正された台本を読み合わせて検討した上、教養部長に対し「X党(自民党)は甘くなかったわよ。」と発言した後、元兵士と元慰安婦女性2人の証言シーン等3分の削除を指示した。教養部長から電話を受けたチーフディレクターは、放送総局長室を訪れ、放送の番組尺が40分となり、NHKが深手を負いかねない等と述べて、3分の削除を思い止まるように要請したが,放送総局長は「責任は私がとる。自分が納得する形で放送をさせてほしい。」と述べて,指示を変えなかった。

午後7時過ぎから、制作現場は、VTR等の手直し作業を行って通常の44分より短い40分版の本件番組を完成させ、午後10時NHKは放送した。

29日午後首相官邸内にある官房副長官室において、放送総局長と総合企画室担当局長及び総合企画室担当部長が安倍官房副長官と面会した。その際,総合企画室担当局長がNHKの新年度予算について一般的な説明をした後、放送総局長が本件番組について女性法廷が素材の一つであり、4夜連続のドキュメンタリー番組ではないとの説明をした。安倍官房副長官は、いわゆる従軍慰安婦問題について持論を展開した後、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した。

上記は、原告側が述べたことではなく、裁判所が証言・証拠から判断した事項です。第三者の鑑定、報告書というものよりはるかに重く、事実と考えてよいと私は思います。番組の製作・編集は、政治的な影響を受けたと考えるべきと私は思います。放送の直前に3分の削除が実施されていますが、この削除された部分は、元兵士と元慰安婦女性2人の証言シーンでした。

2) 大学教授等によるコメント等

NHKエンタープライズのチーフプロデューサーが、2000年8月A大学B助教授の「歴史と裁き」という講演に感銘し、その中で紹介された女性法廷と国際公聴会を素材として「人道に対する罪」というテーマで番組を制作することを企画したことに始まりました。このことから、A大学B助教授がNHKアナウンサーの司会でC大学D準教授の対談が組み込まれ、女性法廷で裁判官を務めた専門家2人の記者会見、首席検事を務めた専門家のインタビュー、批判的な意見としてのG大学H教授のインタビュー(2箇所)、当初対談が予定されていたE大学Fのインタビュー(1箇所)が番組中にあります。

この番組のことではなく一般的な話しとして、番組の中で大学教授、弁護士他専門家が述べていることは、正しい解説を行っているように受け止めてしまいますが、決してそんなことはなく、様々な説や考え方があります。上記は、メディアが、解説者やコメンテーターを選んでいるのであり、メディアが操作しているのであることを認識させてくれるよい例だと思いました。製作・編集するメディアが信頼に耐え得ることこそ最重要なことと思います。

3) 判決が判断した期待権

1月29日の東京高裁判決時の報道による期待権は、分かりつらかったのですが、判決文でどのような表現をしているか、私なりに次の文章を選びました。

特に,本件においては,上記説示のとおり,番組改編の経緯からすれば,一審被告NHKは憲法で尊重され保障された編集の権限を濫用し,又は逸脱して変更を行ったものであって,自主性,独立性を内容とする編集権を自ら放棄したものに等しく,一審原告らに対する説明義務を認めても,一審被告らの報道の自由を侵害したことにはならない。

正しいメディアは重要です。女性法廷は、テレビ報道とは無関係に企画されました。NHKは、バウネットに対し放送する目的、意図、企画内容等を説明し、許可を得て取材を行いました。事前の説明とは異なった内容の番組を作ったら、やはりそれは編集権の濫用にあたると思いますし、判決文は更に踏み込んで「自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄したものに等しく」と言っています。

4) 放送法におけるNHKの組織

放送法13条2項で、「経営委員会は、協会の経営方針その他その業務の運営に関する重要事項を決定する権限と責任を有する。」と定められており、NHKの経営は経営委員会によりなされます。そして、委員の選任については16条で「委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表されることを考慮しなければならない。」と定められています。更に、37条で収支予算、事業計画及び資金計画を総務大臣に提出、総務大臣はこれを検討して意見を附し、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならないとなっています。37条4項で、「受信料の月額は、国会が、第一項の収支予算を承認することによつて、定める。」となっていますから、そうとう縛られています。

考え方によっては、自主経営の範囲が狭く、NHKは可哀想だと思えます。NHKは、最高裁に上告しましたが、誰のために上告をしたのか?視聴者のためではなく、政府・与党のためなのかと勘ぐってしまいます。やはり、その時々の与党の言いなりになってしまうことを危惧します。自民党ということでなく、例えどんな政権になろうとも、政権よりになる恐れがあると思えるのです。受信料を払う視聴者が経営委員を選任するというのが本来の姿であると思います。そんな選挙制度を実施するとなると、二重投票の防止や不公正の防止等々様々な課題があるし、経費も掛かる。でも、現状でよいとは思わないのであり、検討をすべきであると思います。

5) 将来のNHK

放送と通信の垣根が技術的には存在しないのではと思うのです。例えば、ハイビジョンカメラも、その録画機器も個人にさえ手が出せる時代です。IP光通信網による個人レベルに近いテレビ放送なんてのも、もうすぐあり得るのではと思います。現に、YouTubeなんて個人が撮影・制作・編集したビデオを投稿し、一般に公開することが出来ます。今に、ブログもテレビブログが出てきたり。

そんな時代に、今のNHKはどうなるのでしょう。NHKより安くて良い番組を提供してくれるIP放送局が現れると思うのです。そんなときに、受信料の義務化なんて方向に向かって良いのだろうかと思います。IP放送局だったら、政治的な公平さも不必要で、逆に各政党が政党の新聞を持っているように、IP放送局を持てばよいと思うのです。

従来出来なかったことが実現するようになったのであるから、技術革新を積極的に取り入れるべきだと思います。放送法改正はその為の、あらたなルール作りを目指して欲しいと思います。

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2007年3月17日 (土)

MBO - Management Buy Out

シティによる日興コーディアルグループの公開買付の発表が15日にありました。そのプレスリリースはここ(日本語)pdfここ(英文)pdfにあります。公開買付者は日興コーディアルグループの現時点で4.9%株主となっているCitigroup International LLCではなくて、この公開買付のためにあらたに設立されたDelaware州のCitigroup Japan Investments LLCであり、455,486,645株以上を一株1700円で公開買付すると言うものです。買付期間は4月26日までで決済日は5月9日です。

TOB(公開買付)も、これから益々多くなっていくのでしょうが、TOBの一つの形態として経営者が経営に従事している企業をファンドと組んでTOBを行うMBO(Management Buy Out)について書いてみます。

1) MBO(Management Buy Out)

企業の友好的買収・敵対的買収の友好的・敵対的の意味はその経営者である取締役会と友好的か敵対的かであることから、MBOとは取締役会のメンバーである取締役が行う買収であり、究極の友好的買収です。そのこと故に、問題もあるわけであり、TOBの対象となる株式の買収側が取締役であり売却側が一般投資家であることから、はなはだしい情報非対称の状態における取引です。超インサイダー取引であるとも言えます。例えば、このブログ:昨年9月13日のウォールストリート日記に9月3日のNew York Timesの記事の紹介としてMBOに関する問題点の報告がありました。

2) レックスホールディングスのMBO

JASDAQ上場のレックスホールディングス(レックス)の5年間の連結売上高等の業績は、次の表の通りで、右肩上がりの売上増加を記録していました。レックスは、1987年設立の不動産関連の会社であったのですが、1996年に外食産業に乗り出し、現在の焼肉店の牛角を創業しました。2002年にレッドロブスターの全株式取得により子会社(現在は牛角他と共に子会社レインズインターナショナル)とし、2004年にはAM・PMの株式63%の取得でコンビニ事業を、そして同じ2004年にスーパー成城石井の株式70%の取得(現在は全株保有)でスーパーマーケット事業と事業拡大を行って売上を伸ばしてきました。なお、2004年12月期に純利益で118億円の赤字となっているのはAM・PMと成城石井の買収に関わる連結調整勘定141億円を取得年度に一気に償却し、この償却費を計上したからです。

事業年度 2001/12 2002/12 2003/12 2004/12 2005/12
連結売上高(百万円) 15,356 29,003 50,636 80,456 148,373
連結営業利益(百万円) 1,451 2,193 3,904 4,698 6,580
連結経常利益(百万円) 1,624 2,376 3,802 4,566 6,370
税金等調整前当期純利益(百万円) 1,600 1,973 3,336 -11,821 5,980
連結当期純利益(百万円) 769 866 1,829 -12,230 3,077

以下が、レックスホールディングスの過去2年間の株価チャートです。(2006年2月20日に1 : 2の株式分割を行っています。)

Rexholdingchart

レックスのTOBは、アドバンテッジパートナーズと組んで実施されました。アドバンテッジパートナーズの昨年11月10日付のTOB開始に関するプレスリリースはここにあります。公開買付者は株式会社AP8となっており、「レックスの代表取締役である西山知義氏は、本公開買付けが成立した場合において、AP8に33.40%直接出資することを予定しており、その後も特段の事情がない限りは少なくとも5年間は、レックスの取締役(会長に就任する予定です。)としてレックス及びその関係会社の発展のために最大限努力し、APが推薦する役員と共に、レックスの経営にあたる予定です。」との記載がある通り、このTOBは西山知義氏がアドバンテッジパートナーズと共に実施するTOB即ちMBOです。

少し違った角度から見てみると、レックスの株式16.68%を保有するのは有限会社エタニティーインターナショナルであり、この会社の住所は西山知義氏の住所と同じで出資者は西山知義氏と親族2名です。これに同氏が直接保有する12.93%と合計すると29.61%となります。即ち、TOBの成立により変化するのは、一般投資家の保有がアドバンテッジパートナーズ保有となるという姿になると思われます。そして、上場廃止となります。

3) TOB価格

物議を投げかける一つの点ですが、TOB開始に関するプレスリリースの通り1株につき230,000円で、TOB発表前1ヶ月間の株価単純平均202,000円に対して約13.9%のプレミアムです。実は、上の株価チャートから見ると分かるのですが、8月末より少し前までは300,000円以上していたのです。何故、8月末に急落したかというと、8月21日にこの業績修正に関わるプレスリリースを行い、8月24日に中間期である2006年6月30日に終了する中間決算の決算短信を発表し、中間決算における純損失13.3億円の計上と通期業績予想修正の発表を受けてのマーケットの反応と思われます。なお、この13.3億円の損失には固定資産の減損損失4.8億円と長期前払い費用一括償却17.0億円を特別損失として計上されたことがあり、もしこれらがなかったならば小額であるが利益計上になったと思われます。

固定資産の減損に係わる会計基準が制定されたのが2002年8月で2005年4月以後開始する事業年度からの適用ですから、レックスの場合は2006年6月30日に終了する中間決算からの適用で正しいのです。しかし、8月24日以前、もしかすると会計基準が発表された頃からレックスの内部関係者は固定資産の減損会計を適用した場合の損失計上額のシミュレーションを行っていたかもしません。長期前払い費用一括償却については、8月21日のプレスリリースに「マーケティング・データやノウハウ等の資産における評価を見直したことによる特別損失が1,704 百万円・・・」とあることから、この費用と思いますが、「無形固定資産のその他」や「投資その他の資産のその他」といった勘定科目は2006年3月末と比較して微増となっています。よく分からない。情報の格差がありすぎます。

アドバンテッジパートナーズは、詳細なデュー・ディリジェンスを行っており、レックス、西山知義氏を初め様々な関係先と契約書、協定書、覚書を締結しているはずです。一般投資家と比べると情報格差も大きいし、対応策や保全策も比較にならない程確保している状態のはずです。

9月13日のウォールストリート日記に記載ある項目に従って、このMBOを評価してみると

① 経営者の義務(Fiduciary Duty Law)違反の可能性
経営者は自分(及びLBOファンド)の個人的利益の追求を目的とするMBOで企業を安値で買収するのではなく、公開企業の状態で経営を改善するなり資産を売却するなりして企業の潜在価値を最大化させ、株主に利益を還元する「義務」があるはずである。上場企業の経営者の義務としては、その通りであると思えます。

② 利害相反の可能性
企業の経営陣は株主の利益を代表する存在であるにもかかわらず、MBOに際しては企業を安く買収できればできるほど利益が大きくなるため、経営者の利益と一般株主の利益が真っ向から相反する。自分たちの「信託者」であるはずの株主に対してオークションでビッドをするような行為が許されるのは非常に不可解である。気持ちとしては、そうだと言いたい。

③ ディスクロージャー違反の疑い
情報格差に関しては、埋めることが不可能であると思います。むしろ、MBOに際してのディスクロージャーの義務をルール化すべきと思います。こんなことを書いていたら、47thさんのブログ:MBOの危険性への対応 [ 2006年09月14日 ]に米国では、Rule 13e-3 GOING PRIVATE TRANSACTIONSその報告フォームがあると書いてありました。制度・ルールという面では日本より進んでいると思います。(日本の場合については、これから調べます。)

④ インサイダー取引の疑い
MBOの背景には、インサイダーである経営陣しか知りえない企業価値に関する情報がある。これも否定できない事実であり、レックスのみならず全て共通と思います。

MBOは、排除すべきかというと、自らの上場廃止の選択や、ビジネスの自由は守るべきものであると思うし、排除することによる弊害があるのであると思います。やはり、合理的なルール作りが最も重要なのだと思います。

4) レックスMBOの現状

AP8によるTOBは、2006年12月12日に締め切られこのアドバンテージのプレスリリースの通り198,801株の応募があり、75.20%がTOBで買い付けられエタニティーインターナショナルからの取得とあわせて91.51%がAP8により保有されることとなりました。レックスの場合は、12月決算であることから、定時株主総会が3月末までとなり、2007年は3月28日の予定です。

レックスは3月2日の取締役会で5月9日を効力発生日として、発行済み株式を全部取得条件付株式とし、この取得に際して会社は1株に対し0.0000457株の普通株式を交付することの定款変更、そして1株未満の普通株式交付となる場合は、TOB価格と同じ1株230,000円で会社又はAP8が購入予定とすることを総会に提案することを決定しました。91.5%の議決権をAP8が保有していることから、2/3以上の議決権があり株主総会で必ず決議されます。この株式交換比率の結果、AP8は11株の株主となり、AP8以外が保有する株数は22,454株で1つにまとまれば1株となるが、すでにAP8が実質保有する株式があるとみれば全て金銭が支払われることとなる。結果、レックスはAP8の完全子会社となる見込みです。そのスケジュールは以下の通りで、これでMBOの完成となります。これでレックスの利益は全てAP8(アドバンテッジパートナーズと西山知義氏他)に帰属することとなります。
3月28日 株主総会
4月29日 上場廃止
5月9日 全部取得条件付株式の定款効力発生、全部取得条件付株式の取得、普通株式発行

5) 反対少数株主の戦い

TOBに応じなかった株主がおられます。保有する株式を売却するに当たり相手の言い値が安ければ、売却する必然性はありません。1株につき230,000円はTOB側が付けた価格ですから、必ずしもこれで売却する義務はなかったものの、上場廃止となれば売却が困難なことも予想され安いとは思ったものの現金化が困難となるリスクを考えてTOBに応じた株主もおられることと思います。

レックスの場合、反対少数株主の会として「アドバンテッジ被害者牛角会」を作っておられ、そのホームページがここに、ブログここにあります。現在東京地裁に価格の決定の申し立てをすべく準備中です。(Webに会社法の条項番号が見あたらなかったのですが、会社法172条と思います。)

少数株主の権利として裁判所に申し立てを行おうとされているケースであり、MBOに関連して東京地裁がどのような判断をするか興味深く見たいと思います。

6) 税金面

「アドバンテッジ被害者牛角会」のWebやブログでは、みなし配当に関して心配されておられる面があるのですが、私は、全部取得条件付株式の譲渡に関するみなし配当は発生しないと思います。理由は、所得税法施行令61条1項6号により所得税法25条1項4号のみなし配当から外れると解釈します。但し、5月9日の時点では、レックス株は上場株式ではないので租税特別措置法37条の11は適用されず租税特別措置法37条の10の適用となり、法人税と住民税合計で売却価額と取得原価の差額の20%の税額と思います。

上場している間に売却しておけば、法人税と住民税合計で10%の税率ですむのが、少数反対株主として頑張っていると税率が2倍になるというのは、しっくりこないところがあります。しかし、措置法37条の11が過去の証券税制を未だに引きずっている面があり、現行では本年末までで適用が終了し、現在参議院に送られた所得税の改正でも来年末で終了ですから、騒ぎ立てて改正する方が時間が掛かりそうだと思いました。

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2007年3月14日 (水)

日興コーディアルの今後

昨日の東京証券取引所による日興コーディアルの上場維持決定の結果、本日は次のようなニュースとなりました。

産経 3月13日 日興コーデ株 一時、買いが殺到

東証の上場維持決定について良識が働いて健全であるとする考えをする人もいるし、そうでない人もおられ面白いものです。ブログでも好意的なものとそうでないものがありました。

好意的ブログ:ISOLOGビジネス法務の部屋
問題視ブログ:Grande's Journal

私は、健全なマーケットに不正は許せないと考えるので、東証決定問題視派ですが、日興コーディアル事件は、様々な問題を含んでいると思うことから、東証の上場維持決定の関連で少し書いてみます。

1) 日興の不正会計が組織的、意図的でないならば

2月 1日のエントリー:日興コーディアルの報告書を読んでにおいてさんざん書きましたが、どう考えても、私には日興コーデァルが行ったことは、会社のトップが率先してバックデートという悪徳な方法により意図的に利益を計上して投資家や世間を欺いたとしか思えません。これが、組織的、意図的でないならば無茶苦茶であると感じます。そして、指摘を受けると一担当者のミスとの言い逃れを計った。不二家、カネボウ、ダスキン、雪印以上の企業犯罪としての悪さを感じます。

2) 粉飾額は小さいか?

2月 2日のエントリー:日興コーディアルの連結決算修正で書きましたが、経常利益の修正額は2年間で418億円です。2006年9月末の連結貸借対照表の株主資本と利益剰余金が7516億円と3552億円ですから、212億円の純資産額の減少は2.8%、6.0%となります。これぐらいは、上場廃止とするには厳しすぎるとの意見もあるでしょうが、Gradeさんが指摘するように、現在多くの会社はJSOXで内部統制の確立、財務諸表の信頼性の確立に取り組んでおられます。そのことの対比として考えたらどうなるのでしょうか?正直者は馬鹿を見るという状態にすべきではないと思います。

守らなくてもよいルールは、何のためのルールであるのかと思います。

3) 資本市場に関係の深い当事者の犯罪

ここ(pdf)に東証西室社長の記者会見要旨がありますが、その12ページから13ページにかけての部分で”上場の継続、あるいは廃止という判断そのものは、ユニバーサルな判断にならなければいけないと思っています。”と西室社長は答弁をされておられます。即ち、証券会社であることは上場廃止にあたり考慮されなかったと理解します。ルールは公平に適用しなければならないが、証券市場に関係の深い当事者の犯罪については情状酌量の余地は極めて小さいと私は考えます。

4) 日興コーディアルの最新財務諸表の信頼性

日興コーディアルの2006年4月から2006年9月までの2007年3月期の半期報告書は2007年2月27日にあらた監査法人の監査報告書が添付されて提出されました。この半期報告書においてもベルシステム24及びその子会社BBコールは連結対象外となっています。そもそも、ベルシステム24のみに投資を行っていたNPIHを連結からはずしたことによる問題であったにも拘わらず、これを訂正したと言ってベルシステム24を連結対象外としていることが私には納得がいきません。私の理解では、ベルシステム24の93.5%の株式をNPIは現在も保有しているはずです。日興コーディアルとしてベルシステム24の過半数株式を取得したのが2004年8月ですから、2年半を経過しています。これを”営業取引として投資育成目的での所有”と言う理由で連結対象外にするなら、会計は暗闇であると思います。

日興は2400億円をベルシステム24に投資しました。投資の結果は、どうなっているか、連結財務諸表でないと評価できません。ベルシステム24は、2004年11月末の連結貸借対照表からすると、BBコールの取得に際し500億円の”のれん”を計上していました。こののれんに見合う部分の事業成績が不明であって良いのかなと思います。

本事件ではみすず監査法人が解散となり、主犯の日興は上場廃止にならず、あらた監査法人は意味不明の監査報告書を作成した。理解不可能な事件に思えます。連結財務諸表の当該部分の注記を続きを読むに入れておきます。

5) シティは

シティのTOBについては、日経 3月13日 シティ、日興コーデ株のTOB価格を1株1700円に引き上げという報道ありました。シティにとっては、どうだったのだろうかと思いました。1株1700円であれば、過半数取得に7800億円は必要と思います。シティとしては、1350円で全株取得も視野に入れていたであろうから、その場合は1兆2530億円であったわけで、7800億円~1兆円程度は予定通りの投資額なのだと思います。シティとしては、日興の全株を取得して上場廃止にする理由がないはずで、過半数と少しを取得して上場企業の日興を支配したほうが得なはずだと思います。

シティが過半数を取得したなら、当然リストラを実施だと思います。単なる人減らしのリストラではないはずで、不要な部門、不要な人材は全て削ぎ落とすと思います。もしかしたら、日興の第2幕であるシティによる大リストラこそ最大の見物ではないかと思いました。

続きを読む "日興コーディアルの今後"

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2007年3月12日 (月)

被害者裁判参加制度に被害者からも反対の声

以前から気になっていたのですが、犯罪被害者や遺族らが刑事裁判に参加して被告人に直接質問などができる「被害者参加制度」です。この制度の導入に反対する被害者や弁護士らが、法務省に要望書を提出したとの報道がありました。

産経 3月7日 裁判への「被害者参加制度」 一部被害者が「反対」要望書
毎日 3月8日 犯罪被害者:裁判への参加制度「2次被害の恐れ」 片山隼君の父ら、考える会結成
時事通信 3月7日 被害者の裁判参加「導入慎重に」=交通事故遺族ら国に要請
朝日 3月10日 被害者裁判参加制度に異論の声 日弁連のシンポで

犯罪被害者でありながら反対意見を述べる要望書を提出された人の勇気に敬服します。刑事裁判は私的復讐の為にあるのではなく、社会正義に反した行為を行ったとして起訴された被告人の犯罪を理性的に評価し罪を決定するものです。被害者参加裁判は、私的な憎しみを増長し、裁判員制度の裁判の場合は、大変だと思います。怒りや悲しみの感情を全面に出して被害者の遺族は質問を行うのが通常と考えれば、裁判員は心情的に被害者に同情することとなり、冷静な判断から逸脱してしまう恐れはないだろうかと思うのです。被害者側の裁判参加は検察に申し出ることになるし、被害者であることから検察官の立場での参加になると思います。

要望書をこの時期に提出したのは、今国会に法務省はこの制度を盛り込んだ刑事訴訟法改正案を提出しようとしているからです。次の記事を参照下さい。

日経 2月27日 被害者参加・付帯私訴制度、08年末までに導入・法務省

日本弁護士連合会(日弁連)は、この制度に反対です。2005年6月に意見書を出していますが、その意見書(pdf)はここにあります。又、日弁連は「付帯私訴制度」についても問題ありとして反対しています。

このブログでは、「被害者参加制度」の問題点等を整理して書いておられます。このブログにあるように、犯罪被害者や遺族に対して、政府が行うべきは、経済的支援や精神的支援の充実であると私も思います。人類が長い歴史の中で作り上げてきた制度であり、根幹部分を性急に変える必然性がないと思うのです。

最後に、これが本年2月7日の法制審議会第152回会議で採択され、法務大臣に答申された犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための法整備に関する要綱(骨子)です。

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2007年3月11日 (日)

心臓血管外科医2人も退職ー国立循環器病センター

3月 2日のエントリー大阪では病院のたらい回し続出で、国立循環器病センターの集中治療室(ICU)の5人の医師の3月末退職に関して書いたことから、更に次の報道があったことを、メモしておきます。

産経 3月10日 一斉退職カバー予定の医師2人も退職 国循センターICU

7人の医師が国立循環器病センターを去ることになります。上の産経の記事にも書いていますが、国立循環器病センターは日本の最高峰の医療機関で、41例の心臓移植のうち半数の21例を手がけています。例えば、次の臓器移植法に基づく52例目の脳死臓器提供に関する記事です。心臓については、国立循環器病センターで移植が行われました。

読売 2月26日 52例目脳死臓器移植

国立循環器病センターで生じている医師の退職は、日本のある特定の地域に関する事件ではないと思います。これまで作り上げてきた日本の医療体勢が崩れかけている恐れはないのでしょうか?臓器提供を呼びかけても移植する体勢が崩れたら、砂上の楼閣そのものの気がします。福知山線の脱線事故は、最も大事な安全を犠牲にして目先の便利さだけを追求していた我々への警告であるように思えます。

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医療崩壊-3月6日参議院予算委員会より

3月 5日のエントリー:この人は辞めるべき-2月7日衆議院予算委員を書いたときは、議事録がアップされるのを待っていたため、1月近く遅れてしまいました。前回は、衆議院予算委員会における民主党枝野委員の質疑の関連でしたが、今回は参議院予算委員会における日本共産党小池委員の質疑の関連で書きます。小池委員の3月6日の参議院予算委員会のおける質疑は、この参議院インターネット中継の質問者「小池晃(共産)」にあります。

1) 国民健康保険

現在の国民健康保険法が1958年(33年)に制定され、日本は国民皆医療保険制度の国となり、国民及び1年以上の在留期間がある外国人は全員基本的には何らかの医療保険に加入することとなりました。その結果、国民全員が高度医療を受けることが出来ることなり、平均寿命は大幅に伸び、現在の高齢化社会にもつながりました。決して悪いことではなく、誇りにすべきことであり、今後維持・発展させていくべきものと考えます。

参議院予算委員会における関連の質疑は、以下のような内容でした。

小池委員は、生活困窮者からの国民健康保険証を取り上げている実態があり、その結果、受診が遅れて病気が重症化したケースもあると述べました。安倍総理は、納付相談などが行われており、簡単に取り上げる制度的にはなっていないと回答していました。小池委員が、更に指摘したのは国民健康保険の保険料でした。大阪市の例をあげて、自営業の夫婦、子供2人で所得280万円の場合、保険料が45万円となるが、背景として高すぎる保険料負担があるのではないかと安倍総理に質問しました。安倍総理は、初めて聞く数字であり、この場でこの数字が正しいとの前提で回答するわけには行かないと答弁していました。

そこで、大阪市の国民健康保険料をこのサイトにある保険料を使用して、私も計算をすると小池委員の数字とほぼ一致しました。

平等割 42,708円+均等割 97,852円+所得割 308,700円=449,260円

なお、介護保険料も計算すると77,708円でした。そして国民年金保険料は2人x13,860円/月x12月=332,640円となるので、所得280万円の場合の保険料は合計859,608円です。毎月71,634円が保険料で消えていく。所得税、住民税は合計で年間80,000円弱になると思いますので、保険料負担の大きさが分かります。一方、給与所得者の場合と比較をすると、政府管掌保険の場合で健康保険料が9.43%(介護保険料を含め)であり、事業主と折半となるので個人の負担は4.715%です。国民健康保険とそのまま比べてもよいのですが、280万円の所得金額に対して給与所得控除相当額を加算すると417万円が給与総額となります。この4.715%は196,615円であり、526,968円よりはるかに負担が小さく、事業主負担と合計しても133,738円国民健康保険料が高いのです。

皆様、ご自分の市町村のホームページから国民健康保険に入ると料率が出てくるページがあります。どうなっているか、念のため、確認したら面白いと思います。現在、健保組合、共済組合、政府管掌の健康保険に加入されている人も、退職後は国民健康保険に加入することとなりますから決して他人事ではありません。日本の社会の勤労形態も終身雇用から良い働く先があれば転職する形が増加すると思います。退職したら、一時的には国民健康保険に加入することもあるので、若い方も他人事ではないかも知れません。

国民健康保険と政府管掌健康保険と保険料率を比較してもう一つ思ったことは、国民健康保険の最高保険料がが介護保険料と合計して62万円です。(小池委員が最も高いと指摘した守口市の場合を計算すると、所得280万円の子供2人で最高保険料の62万円に到達しました。)一方、政府管掌健康保険では平成19年4月からの被保険者と事業主合計の最高保険料は187万円のはずです。大阪市の保険料で計算すると所得が310万円あれば最高保険料に到達するから、所得に対する負担率で計算すると310万円以上の所得の人は割安保険料となります。このような計算をしてみて、こんなバカな制度があって良いのだろうかと考えさせられました。即ち、退職したり、失業したりしたら、高い保険料を払わなければならないのです。その一方で、個人事業主の高額所得者は、給与所得者と比較すれば格段に安い保険料負担で済むのです。それなのに、受けられるサービスは同じです。

2) 証券税制の減税

3月6日に所得税法等の一部を改正する法律案が衆議院を通過し、参議院に送られました。大きな減税はないと言えるのですが、実は一つはあります。それは、租税特別措置法37条の11と37条の11の4の上場株式等を譲渡した場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例で、第1項に”平成十五年一月一日から平成十九年十二月三十一日までの間に”と規定されている平成十九年を平成二十年と変更する改正が含まれています。特例扱いを1年間延長したわけで、減税と実質変わりはありません。

では、いくらの減税となるかですが、国税庁の平成17年の申告所得の統計がここにあります。この8ページによれば株式等の譲渡所得等が所得金額で2兆6519億円、税額で2199億円です。税率を逆算すると8.3%となりますが、非上場株式(税率15%)があるので、変な数字ではありません。又、申告分以外に特定口座による申告分離もあるので総額はもう少し大きくなります。

12月 3日のエントリー:来年の税制改正2) 上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率の廃止で書いたように、政府税調の段階では、この部分については、「期限到来とともに廃止し、簡素でわかりやすい制度とすべきである。」でした。それが、自民党税調では12月18日のエントリー:自民党の来年の税制改正案4) 上場株式に関する所得税のように1年廃止を延長しました。その結果、政府の改正案は平成二十年十二月三十一日までとなりました。

この財源がいくらあるかですが、私の推定計算では約1800億円となります。但し、地方税も同じ様な扱いになるので、地方税とあわせると約2400億円です。そして、次の円グラフをご覧下さい。円の面積が上場株式の譲渡所得等による所得金額2兆6519億円に相当します。税額2199億円もほぼ同じだと考えられます。税額2199億円のうち、1億円以上の所得がある人が65%であることから、1400億円は1億円以上の所得がある人が納付したと推定できます。もし、1千万円で区分したら、90%です。この減税は、金持ち減税なのです。

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国民健康保険では、大阪市の保険料では所得310万円より高い人は一定額にし、一方で証券税制では高所得者に減税を行い、高所得者ばかり優遇している気がします。昨年の所得税の改正では、定率減税が取り止めとなったのですが、定率減税と同時に実施した最高税率の引き下げは元には戻しませんでした。税の一つの役割は、所得の再配分です。再配分は、徴収における所得階層による調整と補助金等による低所得者援助の双方があります。セーフティーネットと言った人がいますが、現在行われているのは、高所得者の税徴収を緩和し、低所得者に対する援助は財政難であるとして縮小しているように思えてしまうのです。それと、次の例の医師である弱者へのしわ寄せでしょうか。

3) 病院勤務医師の労働条件

病院勤務医師の過酷な労働条件については、3月 2日のエントリー:大阪では病院のたらい回し続出で国立循環器病センターの集中治療室での5人の医師退職に関連して書きました。小池委員は、長時間労働が蔓延しており、労働条件が過酷であることを述べたことに対して、柳澤大臣は休憩時間や自己研修は、通常は勤務時間とは見なされない時間であり、これらを含んだ時間を全て勤務時間と考えることは適切ではないという主旨の答弁を行いました。「消防隊員に火事がなく待機していた場合は、勤務をしていない。」と言ったら、どうなるのでしょう。

現実を正しく認識して欲しいと思います。さもなければ、正しいことは何もできない。

4) 医師不足

小池委員はOECD諸国との比較で日本は明らかに医師不足であると指摘しました。実は、これに対して、安倍総理は不足は一時的であり、基本的な不足はないと答弁しました。

小池委員か安倍総理か、どちらを信用するかでありますが、私は小池委員の指摘を信じます。小池委員があげた数字が正しいのかチェックしていませんが、OECD諸国との比較も行うべきであり、正しい調査を行って結論を出すべきと思います。

それと、現実には病院の診療科の閉鎖が余りにも多く見受けられます。産経 3月2日 東金病院産婦人科、4月から休診 常勤医不在、再開見通し立たず という産科の閉鎖に関する報道があります。これについて、次のように解説されている方がおられます。

千葉県の外房エリアは、しばらく前から相当な医療過疎になってます。公立長生病院もずいぶん前に分娩取扱をやめましたし、最近では銚子市立病院も分娩を取り扱わなくなったということです。国保成東病院で細々と分娩を扱っている以外は、旭中央病院と鴨川の亀田総合病院の間(九十九里浜の長さよりも、更に距離があります)に、分娩可能な『病院』がないのが現状です。

上記は、ブログ元検弁護士のつぶやき:東金病院産婦人科、4月から休診にあったコメントです。直接ブログのコメントを読めば更に多くの危機的な状況についてのコメントがあります。又、勤務医 開業つれづれ日記:【産科・小児科 休止一覧 2 】 日本全国 今後の崩壊予定には産科小児科の休止のロングリストがあります。これを見れば、震えてきます。

5) 行政改革

本当に必要な行政改革は何も出来ていないと感じます。政府と役人が国民のために働くようにすることが行政改革です。上の全て(証券税制は自民党主導かも知れませんが)は、政府が首相と大臣にものを言わせしめている面があると思います。例えば、次の昨年7月の「医師の需給に関する検討会報告書(pdf)」です。

平成18年7月 医師の需給に関する検討会報告書

医師の勤務と医師不足については、安倍総理と柳澤大臣が答弁したことと全く同じことが書いてあります。報告書の最終ページにメンバー15人のリストがあります。この人達が実状を直視しなかったのか、自らの身の安全を守ろうとしたのか、厚生労働省の役人の意をくんだのか、どうしたのか分かりません。少なくとも良心に基づいて行動して欲しいと思います。もし、良心に基づいて行動したのであれば、私があげた様々な疑問に対して、委員と厚生労働省の方々は説明すると同時に、この報告書が実状とかけ離れていると考えておられる多くの医師の方々が納得が行くように説明して欲しいと思います。

医療崩壊が進行中であると多くの医師の方々から聞きます。私も、過大・誇張表現であると最初は思っていました。しかし、だんだんとその意味が分ってきました。医療崩壊を防ぐために行政改革は必要です。

何故閉鎖する診療科があるのか?医師は足りているのか?これは、リスクです。リスクを正しく評価し、対処するのがビジネスであり、我々の政治です。一人前の医師を製造する(敢えて、生む機械的な表現を使います。)には、10年程度必要なのでは、或いはもっと長期間でしょうか。費用も相当掛かります。でも、社会に必要です。10年、20年先を見てリスク対処しなければなりません。だから、国民が自分のこととして考えなければならないと思います。

蛇足ですが、アジアの留学生は今や日本を見ていないという話があります。皆、米国を希望する。医師を増やし、又、アジアから医学留学生を受入れて、アジアによりよい医療を広める。そうすると、日本は尊敬される国になると思うのです。例えば、そんな夢のある展望を進めないと日本は日沈む国になる気がします。

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2007年3月 7日 (水)

米シティによる日興コーディアルTOB

3月 1日のエントリー:日興コーディアル関連2) シティグループvsみずほで、シティによる日興の買収の方が可能性が高いような予想をしました。

日経 3月6日 米シティ、日興コーデに1株1350円でTOB
日興プレスリリース 3月6日 シティグループ及び日興コーディアルグループ、包括的戦略提携に合意

シティによるTOB方針の発表は、もう少し先かとも思っていました。以外と早かった感じです。思うことを、少し書いてみます。

1) 日興コーデ桑島社長他経営陣の保身

シティによるTOBは、日興コーデの経営陣との包括的戦略提携という旗印の下でのTOBだから友好的TOBです。長い交渉の結果のTOBでも経営陣による合意があれば、友好的となりますが。早く合意をしたのは、やはり桑島社長他が自らの保身を計ったのだと思います。

今の日興は何が起こってもおかしくない状態と思います。シティにとって欲しいのは、日興コーディアル証券であると私は思います。即ち、個人投資家向けの日本におけるリテイル事業が欲しいのだろうと思うのです。1兆2530億円は、全株を取得したときですから、50%だったら6200億円ほどです。シティは外国株式、債権を組み込んだ個人投資家向け投資信託を売り出すのだろうと思います。

シティにとって日興コーディアルで不要なモノは、日興コーディアルの現経営陣です。今回、シティによる買収に対する現経営陣の協力に、どのようにシティが報うか、もしかしたらある程度の裏約束、口約束が成立したのでしょうか?

2) 上場廃止、特捜部による逮捕

これが私の予想です。シティがTOBを行うことにより、上場廃止で一般投資家を困らせることはありません。株式市場に関するビジネスを主たる事業として行っている会社が、株式市場の投資家を裏切ることを行ったのです。その罪は、ライブドアより重いと私は思います。最も襟を正さなければならない会社が、不正を行ったのですから。

同じ理屈ですが、特捜部による逮捕があるのだろうと思います。上場廃止は検察の事項ではないので、影響を与えたとの批判を避けるために、上場廃止の決定後まで逮捕を延ばしているのではないかと勝手に推測をしています。山本、平野、有村なんて大変でしょうね。首を洗って、逮捕は今か今かと毎日を暮らしているなんて。悪いことは、するものではないと思います。

3) 日興コーディアルはいずれこうなる運命であった

私には、どうしても、そう思えるのです。12月18日にこのエントリー:日興コーディアルグループのプレスリリースで、初めて日興コーデを取り上げました。理由は、プレスリリースが余りにも投資家や一般の人をバカにした内容であったからです。そのプレスリリースは今はWebから消えているようですが、文章は、以下でした。

本日、当社が不適切な利益を計上との一部報道がありましたが、現時点で申し上げられることは何もございません。

特別調査委員会の報告書によれば、既に12月11日に証券監視委員会(SESC)の検査の結果報告は提出されていたのです。正しい報道に対して、虚偽の発表を行いました。そして、多くの人が覚えているのが、「一担当者のミス」との言い逃れをしたことです。こんな会社が証券会社であって良いはずがない。コンプライアンス、ガバナンス以前の問題です。一般投資家や社外の人々を騙す会社ですから。こう書くと「平成電電」と、余り変わらなくなってしまった。

ベルシステム24とBBコールに突っ込んでいった時に、運命は決定していたように思えるのです。私は、何度もこのディールは一体何であったかと疑問を書きました。バカしかしないディールとしか思えません。その後、バカの上塗りをして、EB債で100%親子関係の会社の取引でバックデーとして架空利益を計上し、しかもそれを使って500億円の社債を発行したなんて犯罪そのものである。

ベルシステム24への増資応募は、有村元社長他幹部は知らないところでと思っておられる方もいるかも知れませんが、絶対に知っています。1000億円ものキャッシュを最高幹部連中が知らないうちに動かせる会社であるなら、ガバナンスの全くない会社です。1000億円とはメチャ巨額です。

やはり日興コーディアルの悪さは「平成電電」より、すごいと感心します。「平成電電」やITの架空循環取引は、話しを聞いても初めから詐欺の影が感じられる。日興コーディアルは、私もそれ程知らなかったこともありますが、あの12月18日のプレスリリースまでは、それ程に変とは感じませんでしたから。

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2007年3月 6日 (火)

タミフルは使うべき?

抗インフルエンザウイルス薬としてのタミフルに関して、服用患者の転落死の報道があり、注目が集まっています。おそらく小さな子どもを持っている親は、子どもがインフルエンザにかかったら、タミフルを服用させるべきかと悩んでおられると思います。私の答えは、医師と相談されるのが一番ですとなってしまいますが。タミフルについて調べていくと色々なことが出てくるので、書いてみます。

1) 薬は必ず副作用を持っている

高い効用が得られる薬は、ともすれば強い副作用があります。ある薬を使用して、治療の効果と副作用の両方があり、効果の方が大きいと判断される場合、個々の場合により異なるが、敢えて言えば、様子を見ながら使用すると思います。そもそも個人差が存在するのであり、個人差を除外して議論することは適切でないと思います。

医薬品の評価は、簡単ではなく、あれが効く、あれは副作用があるから駄目だと簡単に○×を付けられないものと思います。

2) インフルエンザと異常言動

インフルエンザとは何かということで、これがメルクマニュアル家庭版の説明で、ここのサイトにインフルエンザの説明がありました。小児や高齢者は合併症になることがあり、油断をすると恐ろしい病気です。

インフルエンザ脳症も合併症の一つでしょうが、恐ろしい病気です。ここにWikipeidaの説明があります。これは厚生労働省インフルエンザ脳症研究班の2005年11月作成のインフルエンザ脳症ガイドラインです。ガイドラインの4ページの”C. 異常言動・行動”に「インフルエンザ脳症の初期には異常言動・行動がしばしば認められ、熱せん妄との鑑別が問題となる。」と記載がありますが、タミフルを服用しなくて異常言動・行動があらわれることがあります。

ガイドラインの14ページに”2. インフルエンザ脳症の特異的治療法” ”A. 抗ウイルス薬(オセルタミビル)”と書いてありますが、このオセルタミビルとは、タミフルのことです。

また、ここに厚生労働科学研究費補助金による平成 17 年度分担研究報告書「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」があります。この報告書は、「タミフルと異常言動との関連性は有意差を認めなかった。」と述べています。読み方によっては、5ページですが、「アセトアミノフェンを使用したものでは、異常言動、けいれん、熱性けいれん、意識障害等の臨床症候の出現が有意に増加していた。」と書いてあり、アセトアミノフェンについての調査も必要かも知れません。また、同じ5ページに「臨床症候の発現には薬剤以外の要因も関連していることから、多変量解析による検討を行なった。この結果、異常言動の発現に関与する因子は年齢、全経過を通じた最高体温(40.0℃以上)であることが判明した。」との記載があります。高熱と異常言動との関連です。(異常言動とは、この調査で使用したアンケート用紙が9ページにあり、これを見ると異常言動とした内容が分かります。)

タミフルが悪いと決めつけることが、簡単では無いことが認識できると思います。

3) 新型インフルエンザとタミフル

次の文章は、厚生労働省の新型インフルエンザ対策行動計画からの引用です。

新型インフルエンザは、毎年流行を繰り返してきたウイルスとは表面の抗原性が全く異なる新型のウイルスが出現することにより、およそ10年から40年の周期で発生する。ほとんどの人が新型のウイルスに対する免疫を持っていないため、世界的な大流行(パンデミック)となり、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらす。

近年、東南アジアを中心に高病原性鳥インフルエンザ(A/H5N1型)が流行しており、このウイルスがヒトに感染し、死亡例も報告されている(2003年(平成15年)12月~2005年(平成17年)10月の間で、ヒトの発症者122名、うち死亡者62名)。また、高病原性鳥インフルエンザの発生がヨーロッパでも確認されるなど、依然として流行が拡大・継続しており、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザの発生の危険性が高まっている。

この新型インフルエンザ対策行動計画は、現段階のフェーズ3Aにおける対策としてタミフル2,500万人分の備蓄も含まれています。新型インフルエンザに立ち向かうため、有効な武器でしょうから、備えておくべきだと思うのです。勿論、タミフルの副作用についての調査はすべきです。

4) インフルエンザ予防接種

インフルエンザ予防接種を進めれば良いはずです。タミフルを医療保険の対象としながらインフルエンザ予防接種は保険対象外であり、65歳未満の人は全額自費です。変なことになっていると思います。予防接種を保険対象とし、インフルエンザの流行が押さえられるなら、社会的なメリットが大きいと思います。

インフルエンザ予防接種は意味がないというキャンペーンもありましたが、医療の評価は、簡単ではありません。ちなみに、これは横浜市のインフルエンザ予防接種についての説明ですが、予防接種は有効と書いてあります。

5) ラムズフェルド前米国防長官とタミフル

有名なようですね。Wikipediaにも書いてあります。又、2005年10月の報道ですが、CNNも伝えています。CNN News October 31, 2005 Rumsfeld's growing stake in Tamiflu タミフルは中外製薬が日本では販売し、製造はスイスのRocheですが、売上の10%がRoyalityとして米Gileadに入っていくと言うわけです。Rumsfeld氏はGileadの元会長であり、Gileadの株も株数は不明であるが保有していると言うわけです。

Rumsfeld氏が政治的な力を利用したと書いていません。従い、医薬品のビジネスだと思います。売れる薬を造れば大儲け。多分、売れる薬を造るには、イヤと言うほど多くの汗を流さなければならないのでしょう。その結果、多くの人が助かり、開発者は正当な報酬を得る。

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2007年3月 5日 (月)

この人は辞めるべき-2月7日衆議院予算委員会

2月7日衆議院予算委員会の議事録がアップされてきたので、1月近く前になってしまいましたが、衆議院予算委員会における民主党枝野委員の質疑に関連して書いてみることとします。(議事録はここにあります。)

1) 柳澤厚生労働大臣は辞めるべき

2月7日衆議院予算委員会は、1月27日に松江における生む機械発言により野党が審議に応じなった後における審議再開の最初の委員会でした。生む機械発言については、以下のように柳澤大臣は述べています。

人口推計と女性との関係について、私が使った表現は、まことにもって本当に不適切な表現を使ってしまいまして、これにつきまして、女性を初め国民の皆様に、大変お心を傷つけ申しわけなかったということでおわびを申し上げ、深く反省しているところでございます。

ところで、柳澤大臣は辞めるべきと言うのは、この発言ではなく、むしろ次の発言が厚生労働大臣としては私には不適切であると思えます。

枝野委員発言 別の視点から聞きますと、先ほど私が取り上げました〇四年度の厚生労働省調査の時点で、医師の数が減っているのは産婦人科と外科だけというふうに厚生労働省の調査結果になっています。この傾向は大きく変わっていないだろうというふうに思います。なぜ産科、産婦人科と外科だけ減っているのか、大臣は御理解されていますか。

柳澤大臣発言 産科は、先ほど来私も触れたかと思いますけれども、出生数の減少で、医療ニーズがはっきり低減しているということの反映というふうに承知をいたしております
 外科については、一般の外科というとらえ方をすると確かに減少しているんですけれども、医療の専門化が進捗しておりまして、先生御承知のとおり、呼吸器外科それから消化器外科、消化器内科もあるし消化器外科もあるんです。呼吸器内科もあるし呼吸器外科もあるんです。そういうものについて、外科という一くくりをして統計をとるというようなことをいたしておらない。一般の外科という、つまり外科そのものが縮小しているというふうには我々考えておりません。

出生数の減少以上に減少していると私は思います。8月26日のエントリー:産婦人科で書きましたが、分娩取り止め施設から新規開設産科施設を差し引いた純減の数は平成14年度から平成16年度にかけての3年間で61の病院と137の診療所でした。全国周産期医療データベース(平成17年12月1日現在の状況に関するアンケート調査)によれば、日本全国の分娩施設数は病院数が1273、有床診療所数が1783で、有床診療所のなかで常勤医数1名の施設が1214(68.7%)、2名の施設が452(25.6%)、3名以上の施設が99(5.6%)です。それ以外に自施設で分娩を取り扱う助産所が263の合計3319です。現在は、3000を切っていると思われます。分娩に関与する常勤医師数が7873名であり出生数が1,100,000とするとすると、医師1人当たり、年間140人の分娩を手掛けることとなります。

産科医師は高齢化が進んでいるとも聞きます。又、「新卒医師は毎年約8.000人、このうち産婦人科に進む者は300人で、そのうち女性医師が半を占め、時間が不規則な産科を希望しない。従って加重労働と医療訴訟の多い産科(周産期医療)に進む者は僅かに80 人程度である。」とも私はブログに書きました。もし、30歳から65歳までが医師としての活躍年数で年間80人だとすれば、たった2800人です。空恐ろしい計算が出来てしまいます。

こんな現実を放置して良いのでしょうか?そして、この現実に先頭を切って立ち向かって行って欲しいのは厚生労働大臣です。柳澤大臣は知らなくって当然です。厚生労働関係なんて得意ではないのですから。それからすると、大臣にこんな答弁をさせる厚生労働省の役人が最もケシカランのだと思います。そうなると、一部のケシカラン役人をリードして、正しい厚生労働省のやるべきことをするように持っていくのが、大臣の役目です。そんな勤めは、柳澤氏には無理だと思いました。だから、私の結論は柳澤氏は厚生労働大臣を辞めるべきです。

2) この人も辞めるべき 御手洗冨士夫

御手洗氏に関する枝野委員の発言と柳澤大臣及び安倍総理大臣の答弁等は長くなるので、続きを読むに入れておきます。枝野委員の発言の要点は以下の通りです。

2005年12月29日の朝日新聞で「派遣社員を長期雇用 キヤノン行政指導」というのがあった。2006年10月18日には、キヤノンの工場で働く人材会社の派遣労働者が、違法な偽装請負の状態で働かされていたとして、正社員として雇用するよう申し入れたという報道がある。一方、キャノンの代表取締役である御手洗氏は経済財政諮問会議の委員であり、これらの報道が事実であるなら違法行為を行っている企業のトップを政府の委員会の委員としておくことは問題がある。例えば、御手洗氏は「法律を遵守するのは当然だが、これでは請負法制に無理があり過ぎる。」と委員会で発言をしているが、この発言は違法行為をしていながら、法に無理があるから法を改正しろという発言であり、許せない。

政府は、キャノンが法令違反を行っているかどうかについて個別のことについては、回答できないと拒否をしました。又、枝野委員は御手洗氏の参考人としての出席を求めたのですが、本日現在これにも応じていません。

私は、キャノンにおいて人件費削減のための偽装請負があったのだろうと思います。但し、そんなことはキャノンのみに限ったことではなく、多くの企業であることと思います。しかし、多くの企業であるから、許せるとは言えないと考えます。何のための法であるかになります。企業においてコンプライアンスが高々と叫ばれています。その中で、労働に関するコンプライアンスは企業コンプライアンスの一番の事項です。

御手洗氏が経団連会長やキャノン会長から辞めろとは言いません。しかし、政府委員からは、辞めるべきです。もし、継続するなら、枝野委員の質問に対して御手洗氏もしくはキャノンが、潔白であると言明すべきです。なお、キャノンについて、もう一つ問題点を述べておくと外国人株主比率が高い企業です。2005年12月31日は、51%が外国人株主でした。外国人株主比率の高い企業のトップを政府の委員に任命することは問題であると思います。外国からの投資を自由にしているのであり、本質から言えば、企業のトップを政府委員にすることに、そもそも問題がありますが。参考人として呼ぶのは構わないですが。

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2007年3月 2日 (金)

大阪では病院のたらい回し続出

このエントリー名「大阪では病院のたらい回し続出」は、極めて不適切な表現です。でも、もしかしたら近い中に近畿地方・関西圏でこんなニュースが流れるのでは、いや関西圏ではなく日本のどこにでもある現象になったりして。

「病院のたらい回し」という表現が使われたのは、昨年10月17日に報道された奈良県の大淀病院の妊婦が19病院で搬送受入出来ず、亡くなったという報道です。私も、10月20日のエントリー:奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず10月20日のエントリー:大淀病院事件の続きで取り上げました。

大淀病院の妊婦を受け入れてくれた病院が国立循環器病センターです。この国立循環器病センターの集中治療室(ICU)の5人の医師が3月末で退職するとの報道がありました。

朝日 3月1日 心臓血管外科系ICU医師一斉退職へ 循環器病センター
毎日 3月1日 国立循環器病センター:ICU専属医師5人が一斉退職
産経 3月1日 国循センター、ICU医師が全員退職へ
東京 3月1日 ICUの医師集団で退職 国立循環器病センター

大淀病院の妊婦さんは、昨年8月8日午前0時過ぎ意識不明になり、点滴を投与したが、午前2時頃に医師は大淀病院での治療はリスクが大きすぎるとして、県立医科大学付属病院に受け入れを要請したが、ベッドが満床で受入出来なかった。それから、19病院目の国立循環器病センターが受け入れてくれました。そして、朝の6時頃に妊婦さんは到着し、脳内出血と診断され、緊急手術と帝王切開が実施され男児を出産されました。その後、不幸にも妊婦さんは亡くなられました。この時、国立循環器病センターも受入が出来なかったら、もっと悲しい結果になっていた可能性もあると思います。勿論、この時の奈良県では受入出来ず結局は19病院目となったことは大いに問題です。でも、ICUの5人の医師の退職は、事態を更に悪い方向にしたと思います。

5人が退職する理由は、勤務が過酷であったからと思います。産経の記事には”ベテラン医師2人は辞職の理由を「心身ともに疲れ切った」と説明しているという。”とあります。一方、今後の医療について、東京新聞の記事ですが、”佃龍庶務課長は「診療機能の低下はなく、患者への影響はない」と話している。”と書いてあります。朝日新聞も「同センターは今後、外科医を勤務に組み込むなど態勢を変更し、患者の受け入れに影響が出ないようにするという。」と書いてあります。これらの表現は、センターの対外的な発表として止むを得ずに言っていると私は感じるのです。そう言わないと、「たたかれる」からです。おそらく残った医師の勤務は更に過酷になるのだろうと思うのです。

これは、国立循環器病センターで看護師として働いていた娘の過労死認定を裁判で争っておられる両親の裁判を支援する「看護師・村上優子さんの過労死認定・裁判を支援する会」のホームページです。2月28日の大阪高裁の判決では、過労死と認めなかった大阪地裁の判決が追認されたとなっていますが、ホームページ上の説明では、「三交替で不規則な勤務の上に80時間の残業」との記載があります。病院勤務医の過酷な労働の実体については医師の皆様ほぼ全員が認めておられます。看護師の勤務と比較することが適切ではありませんが、「看護師は3交替勤務であるが、医師は夜勤が入ると連続36時間勤務になります。」と。

話しを、冒頭に戻します。国立循環器病センターにおける医師の勤務実体は過酷であろうと想像します。でも、国立循環器病センターは必要です。そして、この問題は国立循環器病センターに特有な問題ではなく、多くの病院が潜在的に抱えている問題です。現在の実体を放置しておくと、医療を受けられなくなる恐れはないでしょうか?このリスクをどうしますか?厚生労働省は、それほど困らないはずです。医療費削減の結果は、人件費抑制となっていますが、その先に恐ろしいことはないでしょうか?社会が医師を必要とするからには、医師を育てなくてはいけない。

医師は、医師のために存在するのではなく、社会のために存在すると思います。病院という設備があっても医師がいなければ無用の長物である。政治家は票のために、医療費削減と言うでしょうが、中身のことは気にしない恐れがあります。医療崩壊を防ぐために、よーく考えて見ましょう。医療崩壊となっても困らない人達はいます。大金持ちです。2桁ぐらい多いお金を払えば、米国でもどこに行ってでも望む治療を受けられます。

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日本ユニシスによるネットマークスの買収

2月28日付けで日本ユニシスは次の発表を行いました。

株式会社ネットマークス株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

この日本ユニシスによるTOBは買付予定株数を80,949株とし応募株数が80,949株を下回った場合は、買付を実行しないが、上回った場合応募株の全てを買付けるとしています。一方、ネットマークスの大株主であり74,773株(42.76%)を保有する住友電工が次の発表の通りこの日本ユニシスによるTOBに応募すると発表していることから、住友電工以外の株主から6,176株の応募があれば、このTOBは成立することから、既に結果確定のTOBであると思いました。(実は、住友電工が50.4%株主である住友電設が6,170株ほど保有しているから100%確実と言ってもよいはずです。)

住友電気工業 2007年2月28日 プレスリリース 子会社株式の公開買付応募に関するお知らせ

ネットマークスについては、2月 8日のエントリー 日本IBMと架空循環取引で触れたことがあるので、少し書いてみます。

1) 日本IBM・デジタルデザイン・ネットマークスに係わる疑惑取引

2月 8日のエントリー 日本IBMと架空循環取引で紹介した取引ですが、以下の経路での取引です。なお、モノは「厚生労働省向けネットワーク機器販売及び支援サービス並びに国保連合会システム」とのことであり、エンド・ユーザーもしっかりしているまともなモノです。青の矢印はモノの流れで、赤は金の流れ。赤の実線は支払がなされているものであり、破線は支払がなされていないものです。

Ibmddnetmarks_1

奇妙な取引です。デジタルデザインが介在する理由がよく分かりません。日本IBM、日本ユニシス、ネットマークス、デジタルデザインの4社を比較したのが次の表です。日本IBMの巨人に対して、デジタルデザインは影ですらないような感じです。

  日本IBM 日本ユニシス ネットマークス デジタルデザイン
連結売上高(百万円) 1,302,681 317,486 59,251 3,459
経常利益(百万円) 119,144 4,870 1,002 148
純利益(百万円) 87,727 1,889 347 104
従業員数 25,900 8,508 979 26

ネットマークスが、この取引で何故入っているのかも不思議です。2月5日付けネットマークスによるプレスリリースの 株式会社デジタルデザインの「訴訟の提起に関するお知らせ」に関する当社の見解についてにおいて、次のように述べられています。

当社は、平成17 年秋から平成18 年4 月の間に、日本アイ・ビー・エム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:大歳卓麻、以下「日本IBM 社」という)の官公庁事業部長(当時、以下「日本IBM 担当者」という)による手配・調整のもと、関係取引先との合意により、「厚生労働省向けネットワーク機器販売及び支援サービス並びに国保連合会システム」係わる取引に参加いたしました。当社は、取引の当時、日本IBM 担当者の説明にもとづき、最終需要者の存在する正規の取引であるとの認識のもと、取引に参加したものであります。

・・・三菱社に対し、通常どおりの手続が完了したと判断し、2,086 百万円(消費税込)の支払を完了しております。・・・デジタルデザイン(DD 社)より、3 件について1,189 百万円(消費税込)の代金を受領しておりますが、残り3 件の1,105 百万円(消費税込)の代金については、DD 社より支払を拒否され、受領しておりません

この結果として、ネットマークスは、三菱スペースソフトウェアに対して支払った2,086百万円とDD社より入金した1,189百万円の差額(897百万円)の損失となっている。(実際の損失は返還に係わる消費税があるので854百万円)

金額として20億円以上のソフトウェアであったのであり、三菱社が実際にソフトウェアを作成したのだろうと思うのです。だからこそ、ネットマークスは、三菱社に支払を行った。更には、三菱社がソフトウェアを作成したということは、そのソフトウェアの仕様書等が存在していたはずである。もし、架空であり、モノが存在しないのであれば、ネットマークスは三菱社に支払い済み代金の返還を求めると思います。ネットマークスは、以下のように「取引の目的物の実在は確認されておらず」と行っているのです。従い、これも架空取引の可能性があると感じます。

当社は、前記のとおり、これらの取引の当時、日本IBM 担当者の説明にもとづき、最終需要者の存在する正規の取引であるとの認識のもと、取引に参加したものでありますが、これまでの調査では、取引の目的物の実在は確認されておらず、この点につきましては、裁判を通じて明らかになるものと認識しております。

昨日、2月 6日のエントリー IXI-東京リース-日本IBMに関する取引で、IXI、日本IBM、東京リースに大阪地検特捜部による捜査が入ったとのニュースがありましたが、この日本IBM-デジタルデザイン-ネットマークスの取引も似通った取引です。参考として、読売の記事を上げておきます。

IXI粉飾、十数か所を捜索…公募増資など50億調達

2) 日本ユニシスTOB

私の想像ですが、住友電工にはネットマークスが手におえなくなってしまったのではないかと思うのです。コンプライアンス、ガバナンス、内部統制が求められる時代です。架空取引に関係することは、コンプライアンス違反であり、ガバナンスが有効でない、内部統制がとれていないとなります。すこし前の時代であれば、ITこそ成長産業であり、ITに係わっていないと取り残される雰囲気でした。でも、有効なコントロールが出来ないのであれば、そんな事業を保有していることはリスクを負っているだけになってしまう。そんな判断を住友電工はされたのではないかと思いました。

ネットマークスが40.8%を保有しているスターネット株式会社の株式は、住友電工が取得してネットマークスと切り離すこととしました。これは、住友電工として管理可能であり、保有することの意義を認めたからです。

参考:住友電気工業プレスリリース 2月28日 スターネット株式会社の株式取得に関するお知らせ

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2007年3月 1日 (木)

日興コーディアル関連

1) 日興コーディアルホールディングの上場廃止

ついに日興コーディアルホールディング(日興CH)の上場廃止というニュースが出始めました。

日経 2月28日 日興、上場廃止へ・東証が最終調整、4月に

これに対して、日興CHは、次のように東証においては未だ具体的な決定は行われていないと日経の報道を否定しました。

日興プレスリリース(pdf) 2月28日 本日の一部報道について

東証が決定を行っていないのは事実ですが、日興CHの株式が上場廃止となっても不思議ではない、可能性はあると言えるのが現状であると思います。

2) シティグループvsみずほ

シティについては、次のような報道があります。

産経 2月24日 米シティグループ、日興コーディアルを傘下に
朝日 2月26日 米シティ幹部3月初め来日 日興傘下入りに向け最終協議

みずほに関しては、次のような報道です。

日経 2月27日 みずほ、日興支援案を提示
朝日 2月27日 みずほ、日興の支援検討 米シティと提携も模索

シティは33%以上を取得で、みずほは最大でも20%程度というところでしょうか。日興CHの発行済み株数(自己株式を除く)は976百万株であるから、10%の取得で株価を1150円として1122億円必要となります。シティが33%取得するとなると28.5%の追加取得であるから3200億円です。シティの狙いは日本市場だと思います。日興コーディアル証券と日興シティ証券の営業マン・ウーマンを取り込んでの日本の投資家への食い込みと、日本での資金需要家である企業等への食い込み。シティが出来ていなかった日本市場へ入っていく手段を手に入れることと思います。私は、シティが日興CHを手に入れたなら、魅力のない部分(多分NPIなんてシティには不必要と思うのです。)を売り払って、シティの欲しい部分を残す。そして、それをシティの世界戦力のなかでの日本ポーションとすることと思います。シティに取って、運用先は世界です。顧客投資家も世界ですが、投資家は先進国に多いと思います。だから、日本でも戦略拠点が欲しいはずと思います。

そう考えると、3200億円は安い買い物と思います。買ったところでゼロにはなりません。もしかすると2/3を狙うこともあるのではと私は思うのです。その場合、7100億円が必要なのですが、ソフトバンクモバイルの1兆7500億円よりはるかに安いのです。それと、もし上場廃止となるなら一株1150円より安く買える可能性もあります。シティにとって日興CHは手を上げてチャンスを狙っておくべきターゲットと思います。

みずほにとっても証券会社は2008年1月に新興証券と合併予定のみずほ証券以外に関係先は拡大しておきたい。その証券強化としては、1000億円程度の出資で15%弱を保有する提携関係が考えられる範囲かと思うのです。

シティvsみずほについては、シティの方が可能性があるというか、シティが日興CHの買収方針を決定すれば、シティに決まるのであり、シティ次第なのだろうと思いました。

3) 中央青山(みすず)監査法人に対する訴訟提起の可能性

次の読売の記事です。

読売 2月27日 日興、旧経営陣3人に31億円の損害賠償請求へ

この記事の中に「不正会計を見逃したみすず(旧中央青山)監査法人に対する責任追及は今後、検討するという。」と書かれています。検討と書いてあるので、断定ではありません。しかし、もし中央青山に訴訟を提起すると裁判で実体が浮かび上がってしまうので日興CHは、そんなことは絶対しないだろうなと感じました。主体は日興CHであったわけで、監査法人は実体を誤魔化されたと主張するはずで、その証拠が数多く出てくる可能性がある。そうすると、旧経営陣3人のみではなく関与者は相当広がる可能性があるなと思いました。

それと、監査法人の会計士は大変です。社員である会計士の無限責任の組織ですから、監査法人が清算を行って解散登記をしても、解散の登記後5年間は社員の債務は継続し消滅しないと理解します。

4) 日興CH粉飾決算の悪質性

三洋電機の粉飾決算が報道されており、自主訂正を間もなく発表するようです。

日経 2月28日 三洋電機、決算の自主訂正方針を正式発表

私は、三洋電機の粉飾決算は単体財務諸表の話しであり、連結財務諸表については粉飾はなかったということと理解しています。即ち、固定資産の減損会計が適用されたのは2005年3月期からであり、それ以前の子会社株式の評価は「金融商品に係わる会計基準」に従うのであり、「市場価格のない株式については、発行会社の財務状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。」に該当するかどうかが判断基準であった。解釈が入ってくる部分があります。

連結財務諸表については、子会社の資産・負債を財務諸表に反映することから、子会社株式は計上されません。従って、連結財務諸表は子会社を含めた企業業績をより正しく反映していると理解されるのであり、連結財務諸表が正しいのであれば、三洋電機の粉飾決算は日興CHと比較すれば軽いと思います。連結財務諸表を親子会社間の取引を利用して粉飾を行うことは、悪質と考えます。

もう一つの点が、日興CHが日興コーディアル証券と日興シティ証券の親会社であったわけで、証券市場を顧客とした事業を行っている。それであるにも拘わらず、虚偽の利益を報告する証券市場の信頼性を失う行為を、信頼性を確保しなければならない企業が行ったことでです。企業が自らの業界の信頼性を失うことはすべきではないと思う。しかも、そのことを確信犯でやったのだから許せないと思う。不二家は、食の信頼性を失うことをした。しかし、故意でしたのではないと思います。

5) 参考エントリー

今までに日興CHに関しては随分多くのエントリーを書いてきました。参考にそれらを上げておきます。

12月18日 日興コーディアルグループのプレスリリース
12月18日 日興コーディアルとミサワホーム
12月20日 日興疑惑
12月27日  日興役員に対する株主代表訴訟
2月 1日 日興コーディアル上場廃止の可能性
2月 1日 日興コーディアルの報告書を読んで
2月 2日 こりゃ駄目だ日興コーディアル
2月 2日 日興コーディアルの連結決算修正
2月 3日 日興 ベルシステム24の推理
2月13日 日興コーディアル元役員への訴訟

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