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2007年3月26日 (月)

ライブドア裁判

1) ライブドア事件の一審判決

ライブドアによる証券取引法違反で検察に起訴された7人と2社についての一審裁判の判決が全て出ました。その結果は、以下の表の通りとなります。(共同通信の記事をリンクしておきます。)

被告人 元の役職 求刑 判決日 判決 判決後 共同通信記事
堀江 貴文 LD代表取締役 懲役4年 3月16日 懲役2年6月 控訴 再保釈
保証金5億円
3月16日
3月16日
宮内 亮治 取締役 懲役2年6月 3月22日 懲役1年8月 控訴 再保釈
保証金8千万円
3月22日
3月22日
熊谷 史人 取締役 懲役1年6月 3月22日 懲役1年
執行猶予3年
控訴 3月22日
3月22日
中村 長也 LDファイナンス代表取締役 懲役1年6月 3月22日 懲役1年6月
執行猶予3年
3月22日
久野 太辰 港陽監査法人会計士 懲役1年6月 3月23日 懲役10月 控訴 3月23日
小林 元 元港陽監査法人会計士 懲役1年6月 3月23日 懲役1年
執行猶予4年
3月23日
ライブドア 法人 罰金3億円 3月23日 罰金2億8000万円 確定の見込み 3月23日
ライブドアマーケティング 法人 罰金5000万円 3月23日 罰金4000万円 3月23日

2) 判決の評価

3人について執行猶予がない実刑判決であり、堀江被告の実刑判決2年6月及び保釈保証金5億円は、証券取引法違反による刑事裁判での判決では最も重いものであったと思います。例えば、カネボウ事件の帆足隆元社長に対する判決は懲役2年で執行猶予3年、宮原卓元副社長は懲役1年6月で執行猶予3年でした。カネボウ事件の会計士3人への判決は懲役1年6月、執行猶予3年でした。

しかし、米国と比べるとはるかに軽いのです。エンロン元CEOのJeffrey Skillingは禁固24年4ヶ月の判決であったし、ワールド・コム元CEOのBernard Ebbersは禁固25年でした。二人とも現在服役中と思います。

ライブドア判決は過去の判決と比較すれば、重い判決である気がします。しかし、証券市場の運営に障害をもたらす偽計取引や粉飾決算は軽い罪であると、市場そのものの信頼を喪失し、証券市場における資金調達を阻害する恐れがあると思います。厳罰化の意見の論点としては、他に経営者に対する規制があります。即ち、経営者が悪事を働いたとき、その結果は株主、従業員、取引先等に対する損失となるわけですが、一方で経営者を牽制する働きを何に求めるのが有効であるかです。粉飾決算を行っても、重い罪にならない場合に経営者は自己の利益追求のみに走らないかと言う点です。

3) 司法取引

宮内被告と検察の間に、司法取引があったのではとの疑惑を持っている人が多くおられます。厳密には、司法取引は日本では存在しないと理解するので、黙契のようなものかも知れませんが。判決結果からすれば、例え宮内被告と検察の間に黙契があったとしても、宮内被告にも実刑判決が出たのであり、裁判所はそのような取引を認めなかったとなると思います。

通常の刑事裁判の場合の、情状酌量の余地の考え方と、宮内被告が積極的に罪を認め、検察に情報提供を行ったことについてです。ライブドア裁判は、刑法の罪ではなく、証券取引法の刑事罰です。刑法の罪の様に、「被告人は深く反省しており、再犯の可能性が低い。」というようなことが、証券取引法違反の場合に、当てはまり難いように思います。

しかし、一方で、経済犯罪は複雑な取引や操作が数多く絡み合っており、刑法の刑事事件より立証ははるかに困難であり、内部協力者がいないと「本丸」に検察は登りつめることが困難となることが予想されると思います。日興の様に、「一担当者のミス」として逃げようとしなくても、「担当部長の独断」あたりで逃げ切ろうとすることは、あり得ると思います。そんなときに、内部協力者が出てこないと難しい局面はあると思います。

実は、独禁法については「リーニエンシー」と呼ばれる制度が2006年1月より施行されています。次の毎日新聞の記事は名古屋地下鉄談合事件のハザマがリーニエンシーにより公正取引委員会が、検察当局への告発対象から外したと報道しています。私は、この毎日新聞の事実関係の確認はできていませんが、独禁法7条の2第7項、第8項で課徴金納付の免除、減免が、公取委の立入検査前に単独で申告、情報提供をした場合には2006年1月より施行の改正で可能となっています。

毎日新聞 2007年2月28日 名古屋地下鉄談合:16人で受注調整…5人前後逮捕へ (下の方の「◇ハザマは告発対象から外す」です。)

同様な制度を証券取引法(金融商品取引法)においても導入が有効か、検討をしても良いと思いました。独禁法(正式には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)の7条の2第7項と第8項を続きに読むに入れておきます。また、参考として、ここここのMorrison & Foerster LLPのWebで、独禁法改正の解説があります。

4) 日興コーディアル事件

やはり、少し触れておきます。東証は、上場廃止としなかったのですが、私は上場廃止にすべきであったと今でも思っています。その理由はベルシステム24とBBコールの不可解なディールについて説明がなされていないからです。このことについては、ベルシステム24が2月決算であることから、ベルシステム24の決算公告がなされたとき(6月初めと思いますが)に詳細を分析して報告したいと思います。

今回は、東証は粉飾決算に対し厳しくあるべきで、粉飾決算企業には厳しく上場廃止の決断をすべきであると思うことを述べておきます。理由は、証券市場は政府が運営するものではなく、証券市場に参加する企業と投資家が運用すべきと考えるからです。自主的なルールで公平に運用できないと政府の介入を許すことになるのであり、自主ルールによる運用が本来の姿であると考えるからです。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

第7条の2

⑦  公正取引委員会は、第一項の規定により課徴金を納付すべき事業者が次の各号のいずれにも該当する場合には、同項の規定にかかわらず、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じないものとする。
一  公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち最初に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日(第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分が行われなかつたときは、当該事業者が当該違反行為について事前通知を受けた日。次号及び次項において同じ。)以後に行われた場合を除く。)であること。
二  当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為をしていた者でないこと。

⑧  第一項の場合において、公正取引委員会は、当該事業者が第一号及び第三号に該当するときは同項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の五十を乗じて得た額を、第二号及び第三号に該当するときは第一項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の三十を乗じて得た額を、それぞれ当該課徴金の額から減額するものとする。
一  公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち二番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後に行われた場合を除く。)であること。
二  公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち三番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後に行われた場合を除く。)であること。
三  当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為をしていた者でないこと。

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