タミフルについて(その2)
柳澤厚生労働大臣が本日(23日)の閣議後の記者会見で、「タミフルと異常行動による死亡との因果関係について、今までの判断で良かったのか、見直しをしないといけない」と述べたと報道がありました。
日経 3月23日 厚労相、タミフル再調査「寄付受けた研究者は除外」
3月 6日のエントリー:タミフルは使うべき?で、触れたこともあり、再度すこし書いてみます。
1) 医師の対応
3月 6日のエントリー:タミフルは使うべき?では、医師と相談されるのが一番ですと書きました。これについて、今も私の考えは変わりませんが、参考までに医師はどのように対応されようとしておられるか、日経メディカルオンラインが3月21-22日に行った医師へのアンケート調査の結果が載っていました。(Nikkei Medical Online 2007. 3. 23 【緊急調査】最終集計結果発表!)
調査は、タミフルの添付文書改定と緊急安全性情報の配布が明らかになった直後の3月21日17時から実施し、22日21時で回答を締め切った1日余りで、医師会員から集まった282件の回答の結果で、「先生は今後、どのような方針でタミフルを処方しますか」という設問を提示し、回答を以下の4つの選択肢の中から1つだけ選ぶ方式で、それぞれの回答のパーセンテージは以下の通りでした。
42.6% 10歳代の未成年患者への処方は控える。
25.2% 10歳未満の小児も含め、未成年患者への処方を控える。
18.1% 成人患者も含め、処方を控える。
13.5% これまで通り、(患者の年齢に関係なく)必要に応じて処方する。
もし、タミフルを希望されるなら、その旨(診断キットでインフルエンザと診断され、発病から24時間以内に限りますが)医師に申し出ればよいし、希望しないなら、そのように申し出るのが良いと思います。実際には、その時の病状を含め考量すべき事項は多いと思います。(例えば、明日重要な仕事があり、無理にでも熱を下げて仕事をしたいから、タミフルを下さいと言われる方もおられるかも知れません。)
2) タミフルを服用していなくて飛び降りをしたケース
読売 3月23日 インフルエンザ14歳男子、タミフル服用せず飛び降り
という報道がありました。この記事の中に「インフルエンザの高熱によって幻覚や異常行動が起きることは知られている。」と書かれていますが、高熱により意識が朦朧とし、転落死をしてしまうことはあり得ると思います。タミフル問題についての報道が、「飛び降り」との表現を使用していますが、「飛び降り」ではなく「転落」ではないかと思えますが、いかがでしょうか?インフルエンザ脳症は、10歳よりずっと小さい小児に多いのですが、「飛び降り」がないのは、小さい子供は柵を乗り越えられないから、「転落死」も生じないのかも知れません。
タミフルは、インフルエンザ発症2日以内の投与によって高い効果が得られるとされています。タミフルを悪者扱いするだけが、解決ではないと思います。薬の評価は容易ではありませんが、厚生労働省に検討を実施願い、正しいを評価を出して貰いたいと思います。
3) 新型インフルエンザ対応
心配になるのが、次の報道です。
共同 3月23日 新型インフル対策に影響も タミフル投与中止問題
予防接種が役に立たない新型インフルエンザへの対策において、タミフルは万一の流行を防ぐ貴重な手段であると思います。危険面があるとしても、それ以上の効果がある場合は、リスク・ミニマイズで使用すべきと思います。ちなみに、以下は外務省 海外安全ホームページの鳥インフルエンザ流行地域の拡大(その20)にあった、ヒトへの感染が確認されている国・地域です。新型インフルエンザの脅威も決して対岸の火事ではないと思います。
ヒトへの感染が確認されている国・地域
(2007年2月27日現在:12か国 出典 WHO鳥インフルエンザWebsite)
インドネシア 感染者数 81人(うち、63人死亡)
カンボジア 感染者数 6人(うち、6人死亡)
タイ 感染者数 25人(うち、17人死亡)
中国 感染者数 22人(うち、14人死亡)
ベトナム 感染者数 93人(うち、42人死亡)
ラオス 感染者数 1人(うち、0人死亡)
アゼルバイジャン 感染者数 8人(うち、5人死亡)
イラク 感染者数 3人(うち、2人死亡)
トルコ 感染者数 12人(うち、4人死亡)
エジプト 感染者数 22人(うち、13人死亡)
ジブチ 感染者数 1人(うち、0人死亡)
ナイジェリア 感染者数 1人(うち、1人死亡)
計 感染者数 275人(うち、167人死亡)
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