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2007年3月14日 (水)

日興コーディアルの今後

昨日の東京証券取引所による日興コーディアルの上場維持決定の結果、本日は次のようなニュースとなりました。

産経 3月13日 日興コーデ株 一時、買いが殺到

東証の上場維持決定について良識が働いて健全であるとする考えをする人もいるし、そうでない人もおられ面白いものです。ブログでも好意的なものとそうでないものがありました。

好意的ブログ:ISOLOGビジネス法務の部屋
問題視ブログ:Grande's Journal

私は、健全なマーケットに不正は許せないと考えるので、東証決定問題視派ですが、日興コーディアル事件は、様々な問題を含んでいると思うことから、東証の上場維持決定の関連で少し書いてみます。

1) 日興の不正会計が組織的、意図的でないならば

2月 1日のエントリー:日興コーディアルの報告書を読んでにおいてさんざん書きましたが、どう考えても、私には日興コーデァルが行ったことは、会社のトップが率先してバックデートという悪徳な方法により意図的に利益を計上して投資家や世間を欺いたとしか思えません。これが、組織的、意図的でないならば無茶苦茶であると感じます。そして、指摘を受けると一担当者のミスとの言い逃れを計った。不二家、カネボウ、ダスキン、雪印以上の企業犯罪としての悪さを感じます。

2) 粉飾額は小さいか?

2月 2日のエントリー:日興コーディアルの連結決算修正で書きましたが、経常利益の修正額は2年間で418億円です。2006年9月末の連結貸借対照表の株主資本と利益剰余金が7516億円と3552億円ですから、212億円の純資産額の減少は2.8%、6.0%となります。これぐらいは、上場廃止とするには厳しすぎるとの意見もあるでしょうが、Gradeさんが指摘するように、現在多くの会社はJSOXで内部統制の確立、財務諸表の信頼性の確立に取り組んでおられます。そのことの対比として考えたらどうなるのでしょうか?正直者は馬鹿を見るという状態にすべきではないと思います。

守らなくてもよいルールは、何のためのルールであるのかと思います。

3) 資本市場に関係の深い当事者の犯罪

ここ(pdf)に東証西室社長の記者会見要旨がありますが、その12ページから13ページにかけての部分で”上場の継続、あるいは廃止という判断そのものは、ユニバーサルな判断にならなければいけないと思っています。”と西室社長は答弁をされておられます。即ち、証券会社であることは上場廃止にあたり考慮されなかったと理解します。ルールは公平に適用しなければならないが、証券市場に関係の深い当事者の犯罪については情状酌量の余地は極めて小さいと私は考えます。

4) 日興コーディアルの最新財務諸表の信頼性

日興コーディアルの2006年4月から2006年9月までの2007年3月期の半期報告書は2007年2月27日にあらた監査法人の監査報告書が添付されて提出されました。この半期報告書においてもベルシステム24及びその子会社BBコールは連結対象外となっています。そもそも、ベルシステム24のみに投資を行っていたNPIHを連結からはずしたことによる問題であったにも拘わらず、これを訂正したと言ってベルシステム24を連結対象外としていることが私には納得がいきません。私の理解では、ベルシステム24の93.5%の株式をNPIは現在も保有しているはずです。日興コーディアルとしてベルシステム24の過半数株式を取得したのが2004年8月ですから、2年半を経過しています。これを”営業取引として投資育成目的での所有”と言う理由で連結対象外にするなら、会計は暗闇であると思います。

日興は2400億円をベルシステム24に投資しました。投資の結果は、どうなっているか、連結財務諸表でないと評価できません。ベルシステム24は、2004年11月末の連結貸借対照表からすると、BBコールの取得に際し500億円の”のれん”を計上していました。こののれんに見合う部分の事業成績が不明であって良いのかなと思います。

本事件ではみすず監査法人が解散となり、主犯の日興は上場廃止にならず、あらた監査法人は意味不明の監査報告書を作成した。理解不可能な事件に思えます。連結財務諸表の当該部分の注記を続きを読むに入れておきます。

5) シティは

シティのTOBについては、日経 3月13日 シティ、日興コーデ株のTOB価格を1株1700円に引き上げという報道ありました。シティにとっては、どうだったのだろうかと思いました。1株1700円であれば、過半数取得に7800億円は必要と思います。シティとしては、1350円で全株取得も視野に入れていたであろうから、その場合は1兆2530億円であったわけで、7800億円~1兆円程度は予定通りの投資額なのだと思います。シティとしては、日興の全株を取得して上場廃止にする理由がないはずで、過半数と少しを取得して上場企業の日興を支配したほうが得なはずだと思います。

シティが過半数を取得したなら、当然リストラを実施だと思います。単なる人減らしのリストラではないはずで、不要な部門、不要な人材は全て削ぎ落とすと思います。もしかしたら、日興の第2幕であるシティによる大リストラこそ最大の見物ではないかと思いました。

   日興コーデァルグループ半期報告書()連結財務諸表 注記事項から

また、他の会社等の議決権の過半数を自己の計算において所有しているにもかかわらず、子会社としていない他の会社等は、以下のとおりです。これらの他の会社等は、営業取引として投資育成目的で所有し、傘下に入れることを目的としていないため、子会社としておりません。

株式会社ベルシステム24

BBコール株式会社

株式会社ワン・トゥ・ワン・ダイレクト

株式会社BELL24・Cell Product

株式会社BELL24・3dots

株式会社お天気.com

(以下省略)

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