日本ユニシスによるネットマークスの買収
2月28日付けで日本ユニシスは次の発表を行いました。
株式会社ネットマークス株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
この日本ユニシスによるTOBは買付予定株数を80,949株とし応募株数が80,949株を下回った場合は、買付を実行しないが、上回った場合応募株の全てを買付けるとしています。一方、ネットマークスの大株主であり74,773株(42.76%)を保有する住友電工が次の発表の通りこの日本ユニシスによるTOBに応募すると発表していることから、住友電工以外の株主から6,176株の応募があれば、このTOBは成立することから、既に結果確定のTOBであると思いました。(実は、住友電工が50.4%株主である住友電設が6,170株ほど保有しているから100%確実と言ってもよいはずです。)
住友電気工業 2007年2月28日 プレスリリース 子会社株式の公開買付応募に関するお知らせ
ネットマークスについては、2月 8日のエントリー 日本IBMと架空循環取引で触れたことがあるので、少し書いてみます。
1) 日本IBM・デジタルデザイン・ネットマークスに係わる疑惑取引
2月 8日のエントリー 日本IBMと架空循環取引で紹介した取引ですが、以下の経路での取引です。なお、モノは「厚生労働省向けネットワーク機器販売及び支援サービス並びに国保連合会システム」とのことであり、エンド・ユーザーもしっかりしているまともなモノです。青の矢印はモノの流れで、赤は金の流れ。赤の実線は支払がなされているものであり、破線は支払がなされていないものです。
奇妙な取引です。デジタルデザインが介在する理由がよく分かりません。日本IBM、日本ユニシス、ネットマークス、デジタルデザインの4社を比較したのが次の表です。日本IBMの巨人に対して、デジタルデザインは影ですらないような感じです。
日本IBM | 日本ユニシス | ネットマークス | デジタルデザイン | |
連結売上高(百万円) | 1,302,681 | 317,486 | 59,251 | 3,459 |
経常利益(百万円) | 119,144 | 4,870 | 1,002 | 148 |
純利益(百万円) | 87,727 | 1,889 | 347 | 104 |
従業員数 | 25,900 | 8,508 | 979 | 26 |
ネットマークスが、この取引で何故入っているのかも不思議です。2月5日付けネットマークスによるプレスリリースの 株式会社デジタルデザインの「訴訟の提起に関するお知らせ」に関する当社の見解についてにおいて、次のように述べられています。
当社は、平成17 年秋から平成18 年4 月の間に、日本アイ・ビー・エム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:大歳卓麻、以下「日本IBM 社」という)の官公庁事業部長(当時、以下「日本IBM 担当者」という)による手配・調整のもと、関係取引先との合意により、「厚生労働省向けネットワーク機器販売及び支援サービス並びに国保連合会システム」係わる取引に参加いたしました。当社は、取引の当時、日本IBM 担当者の説明にもとづき、最終需要者の存在する正規の取引であるとの認識のもと、取引に参加したものであります。
・・・三菱社に対し、通常どおりの手続が完了したと判断し、2,086 百万円(消費税込)の支払を完了しております。・・・デジタルデザイン(DD 社)より、3 件について1,189 百万円(消費税込)の代金を受領しておりますが、残り3 件の1,105 百万円(消費税込)の代金については、DD 社より支払を拒否され、受領しておりません。
この結果として、ネットマークスは、三菱スペースソフトウェアに対して支払った2,086百万円とDD社より入金した1,189百万円の差額(897百万円)の損失となっている。(実際の損失は返還に係わる消費税があるので854百万円)
金額として20億円以上のソフトウェアであったのであり、三菱社が実際にソフトウェアを作成したのだろうと思うのです。だからこそ、ネットマークスは、三菱社に支払を行った。更には、三菱社がソフトウェアを作成したということは、そのソフトウェアの仕様書等が存在していたはずである。もし、架空であり、モノが存在しないのであれば、ネットマークスは三菱社に支払い済み代金の返還を求めると思います。ネットマークスは、以下のように「取引の目的物の実在は確認されておらず」と行っているのです。従い、これも架空取引の可能性があると感じます。
当社は、前記のとおり、これらの取引の当時、日本IBM 担当者の説明にもとづき、最終需要者の存在する正規の取引であるとの認識のもと、取引に参加したものでありますが、これまでの調査では、取引の目的物の実在は確認されておらず、この点につきましては、裁判を通じて明らかになるものと認識しております。
昨日、2月 6日のエントリー IXI-東京リース-日本IBMに関する取引で、IXI、日本IBM、東京リースに大阪地検特捜部による捜査が入ったとのニュースがありましたが、この日本IBM-デジタルデザイン-ネットマークスの取引も似通った取引です。参考として、読売の記事を上げておきます。
2) 日本ユニシスTOB
私の想像ですが、住友電工にはネットマークスが手におえなくなってしまったのではないかと思うのです。コンプライアンス、ガバナンス、内部統制が求められる時代です。架空取引に関係することは、コンプライアンス違反であり、ガバナンスが有効でない、内部統制がとれていないとなります。すこし前の時代であれば、ITこそ成長産業であり、ITに係わっていないと取り残される雰囲気でした。でも、有効なコントロールが出来ないのであれば、そんな事業を保有していることはリスクを負っているだけになってしまう。そんな判断を住友電工はされたのではないかと思いました。
ネットマークスが40.8%を保有しているスターネット株式会社の株式は、住友電工が取得してネットマークスと切り離すこととしました。これは、住友電工として管理可能であり、保有することの意義を認めたからです。
| 固定リンク
コメント
日本ユニシスとネットマークスのM&A取引、予めネットマークすの問題を日本ユニシス側が知らなかった・・・・事は絶対にないのです。デューディリをしています。その代理人弁護士事務所は相手の事務所とこの7月1日に合併をすることを昨年春から発表をしているところです。すなわち、出来レースなのです。被害者は日本ユニシスの株主か???こんな不正がゆるされるのでしょうか?日本の弁護士や企業は、利益相反行為にあまりに寛容すぎる??
投稿: shishui | 2007年6月27日 (水) 13時42分