300日規定の見直し
民法772条第2項の「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」という条文の改正をめぐって、自民党内の反対が根強いことから今国会での法案提出は見送られる公算が大きくなったと次の東京新聞の記事は伝えています。
東京新聞 4月11日 300日規定見直し 離婚前妊娠はダメ? 『特例法案』見送り濃厚
このブログでは2月15日のエントリー:子どもの父親で300日規定のことを書いたことがあるので、もう一度考えてみます。
1) 今回の結果
多分、法律改正にはならないと思います。私自身、どこをどう改正したらよいのか、わかりません。但し、法務省の通達は、長勢法相が正式に表明していることから、出ると思います。次の日経の記事です。
日経 4月6日 離婚後妊娠、医師証明で出生届・法相「300日規定」見直し
通達の詳細は、出てみなければわかりませんが、法の解釈に当たっての取り扱いについての文書ですから、「前夫、母親、現夫の3者による確認書が提出されている場合に限っては、前夫を父親と推定する必要がないことから、現夫を父親として出生届を受理してよい。」といった程度が、最大あり得る範囲かなと勝手に想像します。
DNA鑑定は、通達では触れないと思います。DNA鑑定を厳密に実施するとなると前夫の血液の提供も欠かせないはずですし、それでなくても忙しい産科医は根を上げてしまうと思います。それに、もっと大変な問題として、既に子供を育てている家庭でも、妻を信じられない夫は、子供のDNA鑑定を言い出し、離婚や親子関係の断絶やらが起こってしまうのではと恐れます。
妊娠時期を離婚後であると医師が証明したらという話がありますが、おそらくその判定は妊婦が離婚後月経が1回以上あったと申告したときになるのではと思います。出産予定日は最終生理開始日から280日の計算です。排卵日からすれば約266日位です。生まれたときに、妊娠日を推定することは、個体差が大きすぎて誤差が大きいと思います。
通達の内容が、余り踏み込んでいなくても、2月15日のエントリー:子どもの父親で書いたように、母親が代理人となって親子関係不存在確認の調停の申立てを行うことにより解決できます。772条の改正にしろ、通達にしろ落ち込む必要はないと思います。
2) DVからの解放
夫のDVで困っておられる方も、おられるのではと思います。人数は300日問題で悩んでいる人より、ずっと多く、しかも離婚すらできずにいるといったような人たちです。そんな人たちには300日問題は夢のような話だろうと思います。
300日問題の人たちは離婚して直ぐに次の人と結ばれて子供が生まれてというわけですから。勿論、正式な離婚までは時間を要し、幸福とはかけ離れているでしょうが、DVで離婚もできずにいる人と比べたら強く生きてこられたわけで、親子関係不存在確認の調停の申立という手段もある。
むしろ、日の当たらない人たち、本当に日を当てて解決しなければならないことは、他にもあるのではと思います。
3) 民法733条の廃止
民法733条の廃止がなければ、根本問題は解決しない気がしました。離婚から6ヶ月を経過しなければ女は再婚できないというこの条文は女にだけ適用される民法における男女差別条文であるとの批判があります。
ところでよく考えてみると、300日問題が発生するのは、民法733条で再婚が禁止されている期間、すなわち女が独身である時期に妊娠している子供の父親についての議論です。それからすると300日問題で民法改正を唱えておられる方は、民法733条の廃止を同時に唱えていないと整合性がないのかも知れません。あるいは、民法733条を廃止すれば、300日問題はすっきりと解決するようにも思えます。
変な設問ですが、「ある夫婦がそれぞれ相手を作り、子供を作り、離婚をした。」この場合、(男の次の相手である女が婚姻中でなければ)離婚後直ちに男は結婚が可能であり、生まれた子供の父親は直ちに、その男となる。女の方は、6ヶ月経過してやっと婚姻が可能である。女から生まれた子は前の夫の子と推定される。男女差別の典型かも知れません。
3月24日のエントリー:向井亜紀さんと高田延彦さん夫妻の代理出産による出生届不受理確定の「3) やはり愛」で書きましたが、愛が最も大切だと思います。権利義務は戸籍や住民票に登録されていないといろいろな問題も生じますが、例えば、相続についても遺言で多少はカバーできる部分もあります。
4) 美しい国と言っている人たち
美しい国と言っている人たちは、どうも懐古趣味ではないかと思います。次の毎日の報道です。
毎日 4月11日 300日規定:特例新法案見送り方向…自民、亀裂回避判断
西川京子議員というのは、郵政民営化選挙で小泉刺客として福岡10区から出て当選したミカン箱のこの人です。改革派とは、その時の時流にうまく乗る人のことの様で、美しい国と言っている人たちは、明治・大正・戦前を美しい国であり、その頃の時代や価値観に戻したいと思っている人たちである気がします。
明治・大正・戦前とは、日本が戦争に明け暮れた時代です。徳川の平和が終わり、武士だけが武器を持たされた時代ではなく、国民が持たされ戦争に追いやられた時代であった。経済では、東北の農村では娘の身売りがあっても、政府はそんなことの対策に銭は使わずに戦艦大和や武器を一杯作った時代です。戦艦大和は、その大砲で一隻の船を沈めることなく、戦艦武蔵は船に向けて大砲を打つことすらなく沈没した。嫌な時代でした。
現時点においてたくさんの問題はあります。多くの問題・課題は新しく発生したことで、昔はなかったと言えるものも多いと思います。しかし、「だから昔はよかった。」と考えるのは間違いです。むしろ一つ一つ解決して行って、そのことにより問題・課題が増えていく面があると思います。勇気を持って進むことが重要と思います。
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