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2007年4月22日 (日)

電話料金は複雑

昨年10月24日に携帯電話の番号ポータビリティー制度が始まったとき、ソフトバンク・モバイルは0円電話の広告を出し、驚かせました。各社の携帯電話料金の体系は複雑怪奇で、何がどうなっているか、使用する時間帯や使用時間によって安くなったり、各種割引があったりで考えれば頭が痛くなってしまいます。最近、固定電話サービスのユニバーサルサービス料金値下げのニュースがありましたが、これも考えれば複雑で分からなくなってしまいます。

朝日 4月19日 固定電話網の維持料金、月4~6円に値下げ 08年から
読売 4月14日 NTT固定電話、利用者負担金を月4円前後に引き下げへ
産経 4月18日 総務省、算定方式見直しへ 固定電話ユニバーサル料金
毎日 4月14日 固定電話維持:利用者負担を月4円に下げ 総務省が方針
Nikkei IT Plus 1月29日 固定電話の全国一律サービス転換へ、総務省研究会が初会合

NHKは、4月20日のニュースで報道していましたが、既にリンクが切れており、続きを読むに入れておきます。

(1) いったい何がどう

総務省の発表はこれであり、情報通信審議会への諮問はこれです。総務省の発表と諮問を読んでも数字が何もなく分からないのですが、諮問の概要がここ (pdf)にあります。この概要を読むと、高コスト地域(4.94.9%)のコストのうち、「全国平均費用」を超える額をユニバーサルサービス制度の補てん対象額としていたのを、「全国平均費用+2σ」を超える額に変更する。σとは標準偏差を意味するようです。簡単に言えば、全体のコストが下がったわけではなく、NTT東日本、西日本の分担額が増加しただけです。

(2) ユニバーサルサービスとは

同じサービスと言うわけですが、都会でも地方でも同じサービスが同じ料金で享受できることです。日本は、郵便、電話、電気についてはユニバーサルサービスで享受できました。今も、通信では固定電話(IP電話も固定電話かも知れませんが、旧来の電話を固定電話と呼んでおきます。)が、ユニバーサルサービスで享受可能です。携帯は圏外が存在し、サービス地域が全国を網羅していなくても営業許可が入手可能です。

コストは、固定費と変動費に分かれますが、通信事業はほとんどが固定費です。地方になれば、なるほど収入が費用に見合わない。全体では健全な収支となっているから、問題はないというのがユニバーサルサービスの通信事業です。即ち、不採算部門切り捨てにより高収益を実現することが選択肢として許されないわけです。

不採算部門切り捨てができないから、料金認可制で全国統一料金を採用して採算を取ることとなります。

(3) 現状

全国統一料金は独占が許されるなら可能ですが、携帯電話あり、IP電話あり、他の電話事業者もありでは、そんなに簡単ではありません。そこで、NTT東日本、西日本の高コスト地域の費用の一部を他の通信事業者も分担する制度を取りました。結局この分担額は1回線あたり月7円としたのですが、ほとんどの通信会社はユーザーに転嫁しました。その結果、皆様の携帯電話でもIP電話でも請求書を見るとユニバーサルサービス料として7円と内訳に書いてあります。例えば、ソフトバンクからの請求なのに、ユニバーサルサービス料となるわけです。

もしかすると通話料に含まれてよいものかも知れません。

もう一つの現状は、固定電話の通話量が減少しています。だから従来と同じ方法でユニバーサルサービス制度の補てん対象額を計算していくと、どんどん高くなっていくわけです。

だから、都会の消費者団体の反発を受けたと思います。NHKとは、都会を意識して報道を作成しているのかなと感じました。

(4) これからどうする

今回の総務省の諮問は足切り額を大きくしたのであり、その先は不透明です。下手をすると地方の電話料金が上がる可能性もあります。地方切り捨てとなった可能性があります。

Nikkei IT Plusは、次のように書いています。この表現が適切かも知れません。

総務省は利用者の負担を抑えつつ、過疎地でも通話できる状態を維持するための方策を検討する。IP電話や広域無線を活用した電話を固定電話の代替に認めるほか、自治体が保有する通信網の活用も検討する。

例えば、政府(総務省)の補助事業で光ケーブル敷設をした自治体の例もあります。維持費も必要であるし、地方でも遠隔過疎地になるとどうなるのか心配にもなりますが。いずれにせよ、高速通信網のことも考慮した最適な通信網を構築することが必要です。そして中には現状の固定電話を維持することが最適な分野もあり、その費用分担を適切に行うことが必要だと思います。

技術革新が地方切り捨てを促進させるか、地方の活性化に結びつけるか興味あるところです。もしかしたら、地方において市町村合併が行われたことから、地方でも中心部は何とか活気ついても遠隔過疎地はさらに過疎化が進む恐れもあると思います。

地方って、よい所です。そのよさは高速インターネットとは違うものかも知れません。

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2007年4月15日 (日)

憲法改正-国民投票法案の衆院可決

4月13日(金)の衆議院本会で国民投票法案が自民、公明の賛成多数で衆議院本会議で可決されたことから、本日14日の新聞各社の社説は憲法国民投票法案の可決に関連するものが多くありました。

日経社説 国民投票法案の衆院可決は当然だ
読売社説 国民投票法案 党利党略が過ぎる小沢民主党
産経社説 【主張】国民投票法案 民主は共同作業に復帰を
朝日社説 国民投票法案―廃案にして出直せ

憲法は、国家を存在させるための基本合意であり、その国の基本枠を定めるものであることから、このブログでも憲法と国民投票法案について書いてみます。

1) 憲法は誰のもの

憲法は国民のものです。政治家のものではありません。日本国憲法の全文はここを見てください。その前文には次の記述があります。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

国民投票法案は、憲法96条第1項の手続きに関する法ですが、憲法96条第1項は次の通りです。

第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

憲法改正の主役は、国会ではなく、国民です。なぜなら、憲法は国民のものであるからです。国会には、それを改正する権限がありません。国民主権を実現しているのが、この第96条の憲法改正です。政治家が、参議院選のスケジュールを念頭に入れて、国民投票法(衆議院を通過した法案名は、「日本国憲法の改正手続に関する法律」ですが。)を、国民の議論の参加なくして成立させようとしていることには、違和感を感じます。

国会の議決により内閣総理大臣を指名し、内閣総理大臣が国務大臣を任命し、内閣総理大臣と国務大臣が内閣を組織し、内閣が行政権を持つという議院内閣制の仕組みは大きな権力を国会多数派の与党に与える。権力とは、福島、宮崎、和歌山と知事が辞任したように、聖人君子であったとしても、様々な誘惑にかられるものと思います。従い、国民投票法案位は、政治家ではなく憲法学者のグループが、国民との対話の場を持った上で、これだという案を作成し、政府提出法案として国会で審議されるのが本来の姿であると思っていました。

残念ながら、議員立法で、衆院憲法調査特別委員会で4月12日に与党のみで採決され、衆議院本会議は4月13日で自民、公明のみの賛成で可決された。じたばたしても、この164国会で自民・公明は間違いなく法律を通してしまうでしょう。

2) 自民・公明案と民主案

4月13日の衆議院本会において自民、公明の賛成多数で可決された国民投票法案は、新聞の社説にあるように民主案と大きな相違点はないとも言えます。民主党が4月10日に提出した修正案と3月27日の与党修正案について民主党が作成した比較表がここ (pdf)にあります。なお、与党3月27日修正案は、ここ (pdf)です。そして、民主党の4月10日修正案はここ (pdf)にあります。

争点となっていない点。すなわち、確実に、こうなるはずだという部分を見てみると。

投票用紙

Photo_15 

備考

 一 用紙は、折りたたんだ場合においてなるべく外部から○又は×の記号を透視することができない紙質のものを使用しなければならない。

 二 二以上の憲法改正案について国民投票を行う場合においては、いずれの憲法改正案に係る投票用紙であるかを表示しなければならない。

三以降省略します。

備考一の様に○又は×を記入することとなります。備考二に「二以上の憲法改正案」とありますが、何カ所かの改正が国会によって発議されることがあり、その際には複数枚の投票用紙を使い、その回数投票することとなります。ところで、どのようにして改正案の数が決まるかというと、国会法に「第六章の二 日本国憲法の改正の発議」を追加し、その第68条の3として「前条の憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。」となっており、この区分と国民投票の憲法改正案の区分や数と一致するかは規定がないが、いずれにせよ国会が決定することとなる。

このあたりも、強い与党が出てくれば、強引に一つにまとめてしまうのではと恐れます。これは、参議院で反対されたと衆議院を解散した郵政民営化の後遺症でしょうか?

3) その他国民投票法案の問題点

民主党案と大きな差はないとしても、民主党案が、改正案の区分と数の問題以外にもこれでよいのかという問題を抱えるていると思う次第です。そんな部分について、少し。

A 成立投票数

上記に96条を掲げましたが、国民の過半数の賛成です。厳しく考えると、有権者の過半数ですし、96条をそのまま読むと「国民の過半数」=「有権者の過半数」と読めるのです。自民・公明・民主案は「有効投票総数」の過半数です。棄権して投票に行かなかったり、白票を投じたりしたら分母にカウントされません。それと、最低投票率の条文がないので、投票率が低くても有効投票の過半数で憲法改正がなされることとなります。このあたりは、議員の問題ではなく、国民の問題だと思います。国民の声を聞くべきである。

B 投票日

自民・公明・民主案は、「国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に行う。」です。(第2条)これって、憲法前文の国民に主権があることと反しており、国会が投票日を決めるのだ、国民は黙っておれみたいに、国民を馬鹿にしているように思えます。「120日以後180日以内」とかならまだ分かるし、もっと長く180日以上経過した日とか、国民にじっくりと考える時間を与えるべきと思います。ここらも、議員の問題ではなく、国民の問題だと思います。

C. なぜ急ぐ

どうしても、ここになるのです。憲法改正は、第9条をめぐる改正派と護憲派の論議であったと思うのです。しかし、防衛省になった今、これでよいではないかと思います。憲法改正しなければ、防衛省はイカンなんて声は余り聞こえてこないのですが。平和活動・国際協力なんて文字が入ったら、よその国のために、どうどうと自衛隊を派遣することになる気がします。イラクに自衛隊を派遣したので、多くのことを教えてくれました。日本国民は、憲法違反かどうか厳密に問いかけることをしない国民性を持っていると思います。日本国民にとって、憲法は宗教みたいな理念・理想であって、努力目標である。しかし、国民共通の努力目標であり、政治家、企業人、教育者、公務員等あるゆる人が、これは正しいものだと信じることができる唯一のもの。日本教の教典でよいのだと思うのです。

例えば、25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」にしても、敗戦から立ち直るために、こんな理想を掲げて、この憲法を制定した頃の人々は頑張ったんだな。永遠のテーマとして追求すべきだなと思わせてくれます。そんな文章が日本国憲法には多いと思います。

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2007年4月12日 (木)

300日規定の見直し

民法772条第2項の「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」という条文の改正をめぐって、自民党内の反対が根強いことから今国会での法案提出は見送られる公算が大きくなったと次の東京新聞の記事は伝えています。

東京新聞 4月11日 300日規定見直し 離婚前妊娠はダメ? 『特例法案』見送り濃厚

このブログでは2月15日のエントリー:子どもの父親で300日規定のことを書いたことがあるので、もう一度考えてみます。

1) 今回の結果

多分、法律改正にはならないと思います。私自身、どこをどう改正したらよいのか、わかりません。但し、法務省の通達は、長勢法相が正式に表明していることから、出ると思います。次の日経の記事です。

日経 4月6日 離婚後妊娠、医師証明で出生届・法相「300日規定」見直し

通達の詳細は、出てみなければわかりませんが、法の解釈に当たっての取り扱いについての文書ですから、「前夫、母親、現夫の3者による確認書が提出されている場合に限っては、前夫を父親と推定する必要がないことから、現夫を父親として出生届を受理してよい。」といった程度が、最大あり得る範囲かなと勝手に想像します。

DNA鑑定は、通達では触れないと思います。DNA鑑定を厳密に実施するとなると前夫の血液の提供も欠かせないはずですし、それでなくても忙しい産科医は根を上げてしまうと思います。それに、もっと大変な問題として、既に子供を育てている家庭でも、妻を信じられない夫は、子供のDNA鑑定を言い出し、離婚や親子関係の断絶やらが起こってしまうのではと恐れます。

妊娠時期を離婚後であると医師が証明したらという話がありますが、おそらくその判定は妊婦が離婚後月経が1回以上あったと申告したときになるのではと思います。出産予定日は最終生理開始日から280日の計算です。排卵日からすれば約266日位です。生まれたときに、妊娠日を推定することは、個体差が大きすぎて誤差が大きいと思います。

通達の内容が、余り踏み込んでいなくても、2月15日のエントリー:子どもの父親で書いたように、母親が代理人となって親子関係不存在確認の調停の申立てを行うことにより解決できます。772条の改正にしろ、通達にしろ落ち込む必要はないと思います。

2) DVからの解放

夫のDVで困っておられる方も、おられるのではと思います。人数は300日問題で悩んでいる人より、ずっと多く、しかも離婚すらできずにいるといったような人たちです。そんな人たちには300日問題は夢のような話だろうと思います。

300日問題の人たちは離婚して直ぐに次の人と結ばれて子供が生まれてというわけですから。勿論、正式な離婚までは時間を要し、幸福とはかけ離れているでしょうが、DVで離婚もできずにいる人と比べたら強く生きてこられたわけで、親子関係不存在確認の調停の申立という手段もある。

むしろ、日の当たらない人たち、本当に日を当てて解決しなければならないことは、他にもあるのではと思います。

3) 民法733条の廃止

民法733条の廃止がなければ、根本問題は解決しない気がしました。離婚から6ヶ月を経過しなければ女は再婚できないというこの条文は女にだけ適用される民法における男女差別条文であるとの批判があります。

ところでよく考えてみると、300日問題が発生するのは、民法733条で再婚が禁止されている期間、すなわち女が独身である時期に妊娠している子供の父親についての議論です。それからすると300日問題で民法改正を唱えておられる方は、民法733条の廃止を同時に唱えていないと整合性がないのかも知れません。あるいは、民法733条を廃止すれば、300日問題はすっきりと解決するようにも思えます。

変な設問ですが、「ある夫婦がそれぞれ相手を作り、子供を作り、離婚をした。」この場合、(男の次の相手である女が婚姻中でなければ)離婚後直ちに男は結婚が可能であり、生まれた子供の父親は直ちに、その男となる。女の方は、6ヶ月経過してやっと婚姻が可能である。女から生まれた子は前の夫の子と推定される。男女差別の典型かも知れません。

3月24日のエントリー:向井亜紀さんと高田延彦さん夫妻の代理出産による出生届不受理確定の「3) やはり愛」で書きましたが、愛が最も大切だと思います。権利義務は戸籍や住民票に登録されていないといろいろな問題も生じますが、例えば、相続についても遺言で多少はカバーできる部分もあります。

4) 美しい国と言っている人たち

美しい国と言っている人たちは、どうも懐古趣味ではないかと思います。次の毎日の報道です。

毎日 4月11日 300日規定:特例新法案見送り方向…自民、亀裂回避判断

西川京子議員というのは、郵政民営化選挙で小泉刺客として福岡10区から出て当選したミカン箱のこの人です。改革派とは、その時の時流にうまく乗る人のことの様で、美しい国と言っている人たちは、明治・大正・戦前を美しい国であり、その頃の時代や価値観に戻したいと思っている人たちである気がします。

明治・大正・戦前とは、日本が戦争に明け暮れた時代です。徳川の平和が終わり、武士だけが武器を持たされた時代ではなく、国民が持たされ戦争に追いやられた時代であった。経済では、東北の農村では娘の身売りがあっても、政府はそんなことの対策に銭は使わずに戦艦大和や武器を一杯作った時代です。戦艦大和は、その大砲で一隻の船を沈めることなく、戦艦武蔵は船に向けて大砲を打つことすらなく沈没した。嫌な時代でした。

現時点においてたくさんの問題はあります。多くの問題・課題は新しく発生したことで、昔はなかったと言えるものも多いと思います。しかし、「だから昔はよかった。」と考えるのは間違いです。むしろ一つ一つ解決して行って、そのことにより問題・課題が増えていく面があると思います。勇気を持って進むことが重要と思います。

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2007年4月10日 (火)

ペンタックスは合併反対:HOYAはTOBに

本日、次の報道がありました。

日経 4月9日 ペンタックス新社長に合併反対派の綿貫氏
朝日 4月9日 ペンタックス、10日に社長辞任とTOB反対決議へ

1) 2006年12月21日の発表

この報道の背景には、次の2006年12月21日付のHOYAとペンタックスの合併について両社が基本合意したと両社の代表者による発表があります。

HOYA とペンタックスの経営統合に向けた基本合意について (pdfファイル)

発表の表題は、経営統合となっていますが、発表文書の3ページに「3. 統合形態 HOYA とペンタックスは、HOYA を存続会社として合併します。」とあり、HOYAによるペンタックスの吸収合併です。ペンタックスは合併の結果、消滅することから、発表文書の3ページに「7. 合併比率 ペンタックスの株主にはペンタックスの普通株式1 株につきHOYAの普通株式0.158 株が割り当てられます。」とあるようにペンタックス株主1株につきは0.158 株のHOYA株を受領します。

本日の株価終値は、HOYAが4,140円で、ペンタックスが800円でした。従い、HOYA株式0.158 株は、654円にしかすぎず、これではペンタックス株主は合併に反対せざるを得ないと言うか、バカバカしくて賛成できないのではと思います。

2) あてにならない第三者評価

多くの場合、第三者評価機関といういかにも公平そうな名前がでてきます。12月の発表では、4ページに出てくるのですが、UBS証券会社及びモルガン・スタンレー証券株式会社であり、両者から「本合併比率(0.158 株)が財務的見地より妥当である旨の意見書を取得しております。」と書いてあります。

私は、第三者評価と聞いたら、常にあてにならない評価と思っています。これらの評価は参考と考えるべきと思います。もし、評価報告書が開示されていたなら、価値はあります。しかし、その場合でも、評価額そのものは、当たるも八卦、当たらぬも八卦であり、報告書を読んで自らが判断することが重要と思います。

3) なぜ、この時期に取締役会か

2006年12月21日付の発表文書の5ページに「8. 今後の日程」というのがありますが、そこで「(1) 平成19 年4 月上旬: 最終契約の調印」と書かれてあり、この契約調印のために両社とも取締役会の決議を必要としているのです。日経の記事では、ペンタックスは、8人の取締役のうち6人が合併に反対しているとのことであり、合併契約書は調印されないのは確実と思います。

従い、HOYAがペンタックスの取得を目指すなら(HOYAから見れば、合併も新株または自己保有株式を交付しての取得です。)、ペンタックスが上場企業であるから、株式をTOBにより取得をすれば、ペンタックス取得が可能となります。TOB価格は1000円近くになるかも知れませんが、ペンタックスの株主がTOBに応じると予想する価格であり、HOYAも支払ってもよいと思う価格がTOB価格です。

HOYAが、ペンタックスを欲しいなら、TOBを行うと思います。

4) ペンタックスは何故反対か

株価の実勢が12月に考えた時(HOYA4500円、ペンタックス650円)から、ずれてしまったこともありますが、朝日の記事の次の部分が気になります。

しかし、ペンタックス社内には、時価総額で約18倍のHOYAによる事実上の吸収合併へのアレルギーが依然として強い。また、カメラ事業の売却を示唆したHOYA側の言動も反発を強めた。「業績回復に向けて懸命になってやってきたのに、HOYAと統合すれば売られてしまう」と反発する社員は多い。

あるペンタックス幹部は「HOYAが欲しいのはメディカル(医療機器)部門だ」と指摘。部門別に解体された場合、「光学製品と精密機器が一体になって成り立っている光学メーカーとしての事業が、立ち行かなくなる」と、強い懸念を表明する。

ペンタックスで、イメージングシステム事業と呼んでいるカメラ関係は売上の49%を占め、さらにオプティカルコンポーネント事業を加えると68%がカメラ関連です。メディカル(医療機器)部門は27%にしかすぎないのです。2006年12月21日の基本合意以降、両社は担当者を交えて合併後のことを協議したし、細かいデューデリを行ったはずです。多分、そのなかで、ペンタックスの人は朝日の記事のような懸念を感じたのだと思います。

合併比率0.158 ですから、現ペンタックス株主の合併後のHOYAにおける保有株数は4.4%にしかすぎなくなります。発言力は、ほとんどないと思いますから、カメラ事業は売却という可能性は十分あるし、そうなっても誰も反対できないと思います。

でも、結果として、合併よりもTOBの方が、すっきりすると思います。敵対的TOBでよいと思います。むしろ、ペンタックスの取締役会は、なぜ基本合意した吸収合併されることを拒否したか、今後ペンタックスをどのような会社として経営していくかを株主、従業員、取引先に説明し、選択権は最終的には株主の多数株数の判断になりますが、TOB価格より取締役会説明による今後の経営により株価が高くなると判断されれば、TOBには応じないし、あるいは、その結果、HOYAがTOB価格を更に上げるなら、それもよいのではと思います。1000円で2/3のペンタックス株を取得しようとしたら、約860億円の資金が必要となります。

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2007年4月 6日 (金)

関西テレビ

関西テレビのホームページから「発掘あるある大辞典」調査委員会の調査報告書がダウンロード可能となっています。

ここにカバーレター、ここに報告書全文そしてここに報告書概要があります。

この報告書を読んでの感想を書いてみます。全部で154ページあり、読むのに大変でした。

1) あるある納豆の捏造

あるあるの納豆についての結論は正しくて、その科学的な証明方法が、一般の人にわかりやすく面白くしたために問題が生じたと思っておられる方もおられると思います。しかし、事実は”「納豆によるダイエット効果あり。」との証明は得られなかった。”なのです。それを、「納豆によるダイエット効果あり。」と言ったわけです。捏造であり、嘘をついていると私は考えます。

報告書の42ページからの部分に「あるある納豆」における捏造の内容が記載されていますが、以下のようなことです。
a. 米国のテンプル大学F1教授の発言の音声を消去し、嘘の翻訳に吹き替えた。
b. 米国で納豆で痩せた例として写真を出したが、嘘の写真を使用した。
c. 血液採取をしたが、検査をしておらず、嘘のでっち上げの結果を報告した。
d. 中性脂肪の測定をしていないのに、中性脂肪が下がったと嘘をついた。
e. 許可を得ない資料の使用
f. 証明されていないにも拘らず、納豆に痩せる効果があることは科学的事実であると述べた。

アジトという制作会社が製作した過去の「あるある」とアジト意外が製作した分の捏造についても調査委員会は調査を行い、報告書に記載があるのですが、まとめた分析を行っておらず、逐一読む必要があり、捏造パーセントを自分で分析しなければいけないのですが、私の印象では全て何らかの捏造が存在したと感じられます。

2. 無能力関西テレビ

報告書を読んで、つくづく思うのが関西テレビのコーポレート・ガバナンスのなさです。役員は全員アホで、普通の会社なら倒産しているが、関西地区の電波の権益を保有しているから最低限の広告料収入が得られので倒産しない。夢みたいな会社です。Webを見ると「コンプライアンス推進室」なんてありますが、組織があれば、それでよいとするアホ役員しかいなかったのだと思います。

報告書を読んで思ったことは、関西テレビには「あるある」を作る能力がなかったのです。なかったから、東京支社からテレワークという会社に制作委託することでしか番組ができなかった。折角の日曜日の夜9時からの枠を守りたかったが、会社に番組を作る力がない。2006年12月の「あるある」の収支は以下でした。

関西テレビ収入 関西テレビ支出・利益              テレワーク収支
  148,400千円  テレワーク委託費用126,480千円 = テレワーク収入
          広告代理店手数料    13,380
                      交通費等直接費         3,240
                            粗利益                5,300
                                                 出演料                 28,840千円
                       アジト他再委託費  35,130
                                                その他        38,930
                                              粗利益                 23,580

利益も関西テレビよりテレワークの方が大きいのです。力のない会社がビジネスをすると、どのような結果を生み出すかが示されているように思います。

3. やはり関西テレビは役員総退陣すべき

この朝日の記事(4月3日)関テレ千草社長辞任し取締役に 検証番組でスタッフ証言を見てもひどいものだと思います。辞任せずに、取締役に残ると甘いことを述べています。一方で、政府は放送法改正で、「あるある」を機会に権限を強めようとしています。

日経 4月6日 放送法改正案を閣議決定

政府が放送を支配することはよくないと考えます。公正を貫き通す放送局があってよいと思います。関西テレビは、これと全く逆のことをしたわけで、責任は重いと思います。例えば、ある食品がXXに良いとの番組が流れたとします。その食品メーカーは、「テレビでXXに良いと紹介された食品AAです。」と宣伝をしたら、売れて売れてになると思います。

テレビ局は社会性の高いものであるとの自覚を持ち、経営してほしい。関西テレビが信頼できるテレビ局と判断できるまで、阪急・阪神と名がつくものはできる限り遠ざけることなのでしょうか?

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2007年4月 4日 (水)

東京リースvs日本IBM

東京リースが3月29日に153億円の訴訟を東京地裁に提起したとプレスリリースを行いました。

東京リース 3月29日プレスリリース 訴訟の提起に関するお知らせ

これは2月 6日のエントリー:IXI-東京リース-日本IBMで取り上げた件について、東京リースが訴訟を提起したものです。3月27日のエントリー加ト吉の循環取引を書きましたので、東京リースvs日本IBMも再度触れてみます。

1) 東京リースのプレスリリースから読む取引内容

東京リースのプレスリリースから読み取ると、その取引は以下の通りです。(矢印は代金の支払いを示します。なお、点線は支払いがなされていない取引です。)

0704

IXIを点線で書き入れたのは2月7日のエントリーIXI-東京リース-日本IBMで引用した東京リースの1月29日のプレスリリースでは、「IBM社の債務を併存的債務引受した株式会社アイ・エックス・アイ」との記載があったからです。金額が、この1月29日のプレスリリース時点では、「104億14百万円」であったのが、153億41百万円に今回増えているのは、1月29日プレスリリースの「50億円程度の債権とは、IBM社とは異なる上場企業2社を含む3社を販売先」と述べている約50億円が合算されているからと思います。

何故東京リースが入っているかは、3月29日プレスリリースに「当社の役割は、仕入先と販売先との間に介在し、販売先が代金支払する前に仕入先に対して仕入代金を支払うことにより、仕入先であるIBM社の協力会社の資金負担をサポートするものであり・・」とあり、この前払により15,341百万円と15,117百万の差額である2億2千万円を稼ぐことにありました。

2) 架空取引

IXIの併存的債務引受とは何であるかよく分からないのですが、IXIが絡んでおり、IBMも債務を否定しており支払いに応じていないことからすれば、架空取引の可能性が十分あるものと思います。IXIは本年1月29日に大阪地方裁判所より民事再生手続開始決定を受け、管財人が就任となりましたが、この1月30日のプレスリリース 刑事告発のご報告において元取締役2名と元執行役員を刑事告発したことを発表しています。また、東京リースの3月29日のプレスリリースにおいても「他方、今回の取引の中にいわゆる架空取引が存在していたとの疑義もあります。」との文章があります。

架空取引であったかどうかは、裁判を傍聴すれば、わかってくるのかも知れません。もしかしたら、判決がない可能性もあるとも思います。即ち、日本IBMと東京リースの和解の可能性があると思うのです。東京リースは、契約書があると言っており、これを裁判で提示するはずです。日本IBMは、正式なものではないとして反論するでしょうが、気になったのは、東京リースのプレスリリースの次の文章です。

さらに、架空取引が存在していたとした場合、当社を取引に勧誘した社外の人物数名は、その事実を知りながら当社を勧誘したこととなります。そこで今回の訴訟では、上記に加え、その者及びその者の雇用主に対して、予備的請求として、不法行為ないし使用者責任等を理由とする損害賠償を請求しております。」

この訴訟が、「予備的請求2」としている部分ですが、請求の相手方として「IBM社及び個人8名」となっており、日本IBMがその雇用主です。このことが、どのように今後関係していくかわかりませんが、法令違反がなかったとしても、醜聞があるなら、裁判を継続して外に出すより和解して東京リースに訴訟を取り下げてもらった方がよいとの選択が、もしかしたらあるかも知れないと勝手に思いました。

3.コンピューター・ソフトウェアの恐怖

東京リースは「業務用ソフトウェアの仕入販売取引から既に撤退しておりますが、加えて、レンタル事業本部内の本件を担当した部署を廃止する等の組織改編も実施する予定です」と述べており、今後はコンピューター・ソフトウェアは手掛けないものと思います。

コンピューター・ソフトウェアの恐怖は、東京リースだけではありません。次のは、コンピュータ・メーカ日本電気のプレスリリースです。

NECプレスリリース 4月3日 当社米国預託証券(ADR)のNASDAQ取引について

日本電気は米国NASDAQで、預託証券(ADR)を上場していることから、米国基準による財務諸表を作成しNASDAQに提出することが上場の条件です。ところが、2006年3月期の年次報告書が提出できないでいるのです。提出できない理由は、コンピューター・ソフトウェアに関する売上計上基準と聞いています。即ち、コンピューター・ソフトウェアの制作を請け負ったとして、単にコンピューターにインストールしても、それは始まりでしかないはずです。バグを取ったとして、どこで取りきれるのか問題はあります。保守・サポートサービスが付随することから、公正価格をどのようにするかの問題もあります。NECプレスリリース 2006年10月24日を見てみてください。

そして、日本電気のプレスリリースの2006年5月11日付連結財務諸表のリステートについての中には、「子会社NECエンジニアリング(株)の従業員による架空取引に関する調査結果を公表するとともに」との文章があり、この会社でも架空取引がありました。

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