憲法改正-国民投票法案の衆院可決
4月13日(金)の衆議院本会で国民投票法案が自民、公明の賛成多数で衆議院本会議で可決されたことから、本日14日の新聞各社の社説は憲法国民投票法案の可決に関連するものが多くありました。
日経社説 国民投票法案の衆院可決は当然だ
読売社説 国民投票法案 党利党略が過ぎる小沢民主党
産経社説 【主張】国民投票法案 民主は共同作業に復帰を
朝日社説 国民投票法案―廃案にして出直せ
憲法は、国家を存在させるための基本合意であり、その国の基本枠を定めるものであることから、このブログでも憲法と国民投票法案について書いてみます。
1) 憲法は誰のもの
憲法は国民のものです。政治家のものではありません。日本国憲法の全文はここを見てください。その前文には次の記述があります。
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
国民投票法案は、憲法96条第1項の手続きに関する法ですが、憲法96条第1項は次の通りです。
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
憲法改正の主役は、国会ではなく、国民です。なぜなら、憲法は国民のものであるからです。国会には、それを改正する権限がありません。国民主権を実現しているのが、この第96条の憲法改正です。政治家が、参議院選のスケジュールを念頭に入れて、国民投票法(衆議院を通過した法案名は、「日本国憲法の改正手続に関する法律」ですが。)を、国民の議論の参加なくして成立させようとしていることには、違和感を感じます。
国会の議決により内閣総理大臣を指名し、内閣総理大臣が国務大臣を任命し、内閣総理大臣と国務大臣が内閣を組織し、内閣が行政権を持つという議院内閣制の仕組みは大きな権力を国会多数派の与党に与える。権力とは、福島、宮崎、和歌山と知事が辞任したように、聖人君子であったとしても、様々な誘惑にかられるものと思います。従い、国民投票法案位は、政治家ではなく憲法学者のグループが、国民との対話の場を持った上で、これだという案を作成し、政府提出法案として国会で審議されるのが本来の姿であると思っていました。
残念ながら、議員立法で、衆院憲法調査特別委員会で4月12日に与党のみで採決され、衆議院本会議は4月13日で自民、公明のみの賛成で可決された。じたばたしても、この164国会で自民・公明は間違いなく法律を通してしまうでしょう。
2) 自民・公明案と民主案
4月13日の衆議院本会において自民、公明の賛成多数で可決された国民投票法案は、新聞の社説にあるように民主案と大きな相違点はないとも言えます。民主党が4月10日に提出した修正案と3月27日の与党修正案について民主党が作成した比較表がここ (pdf)にあります。なお、与党3月27日修正案は、ここ (pdf)です。そして、民主党の4月10日修正案はここ (pdf)にあります。
争点となっていない点。すなわち、確実に、こうなるはずだという部分を見てみると。
投票用紙
備考
一 用紙は、折りたたんだ場合においてなるべく外部から○又は×の記号を透視することができない紙質のものを使用しなければならない。
二 二以上の憲法改正案について国民投票を行う場合においては、いずれの憲法改正案に係る投票用紙であるかを表示しなければならない。
三以降省略します。
備考一の様に○又は×を記入することとなります。備考二に「二以上の憲法改正案」とありますが、何カ所かの改正が国会によって発議されることがあり、その際には複数枚の投票用紙を使い、その回数投票することとなります。ところで、どのようにして改正案の数が決まるかというと、国会法に「第六章の二 日本国憲法の改正の発議」を追加し、その第68条の3として「前条の憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。」となっており、この区分と国民投票の憲法改正案の区分や数と一致するかは規定がないが、いずれにせよ国会が決定することとなる。
このあたりも、強い与党が出てくれば、強引に一つにまとめてしまうのではと恐れます。これは、参議院で反対されたと衆議院を解散した郵政民営化の後遺症でしょうか?
3) その他国民投票法案の問題点
民主党案と大きな差はないとしても、民主党案が、改正案の区分と数の問題以外にもこれでよいのかという問題を抱えるていると思う次第です。そんな部分について、少し。
A 成立投票数
上記に96条を掲げましたが、国民の過半数の賛成です。厳しく考えると、有権者の過半数ですし、96条をそのまま読むと「国民の過半数」=「有権者の過半数」と読めるのです。自民・公明・民主案は「有効投票総数」の過半数です。棄権して投票に行かなかったり、白票を投じたりしたら分母にカウントされません。それと、最低投票率の条文がないので、投票率が低くても有効投票の過半数で憲法改正がなされることとなります。このあたりは、議員の問題ではなく、国民の問題だと思います。国民の声を聞くべきである。
B 投票日
自民・公明・民主案は、「国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に行う。」です。(第2条)これって、憲法前文の国民に主権があることと反しており、国会が投票日を決めるのだ、国民は黙っておれみたいに、国民を馬鹿にしているように思えます。「120日以後180日以内」とかならまだ分かるし、もっと長く180日以上経過した日とか、国民にじっくりと考える時間を与えるべきと思います。ここらも、議員の問題ではなく、国民の問題だと思います。
C. なぜ急ぐ
どうしても、ここになるのです。憲法改正は、第9条をめぐる改正派と護憲派の論議であったと思うのです。しかし、防衛省になった今、これでよいではないかと思います。憲法改正しなければ、防衛省はイカンなんて声は余り聞こえてこないのですが。平和活動・国際協力なんて文字が入ったら、よその国のために、どうどうと自衛隊を派遣することになる気がします。イラクに自衛隊を派遣したので、多くのことを教えてくれました。日本国民は、憲法違反かどうか厳密に問いかけることをしない国民性を持っていると思います。日本国民にとって、憲法は宗教みたいな理念・理想であって、努力目標である。しかし、国民共通の努力目標であり、政治家、企業人、教育者、公務員等あるゆる人が、これは正しいものだと信じることができる唯一のもの。日本教の教典でよいのだと思うのです。
例えば、25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」にしても、敗戦から立ち直るために、こんな理想を掲げて、この憲法を制定した頃の人々は頑張ったんだな。永遠のテーマとして追求すべきだなと思わせてくれます。そんな文章が日本国憲法には多いと思います。
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