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2007年5月26日 (土)

光市母子殺人事件の差し戻し控訴審における死刑判決予想

1999年に山口県光市で起きた母子殺人事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた当時18歳10ヶ月の男に対する差し戻し控訴審の初公判が24日、広島高裁(楢崎康英裁判長)でありました。以下読売新聞の参考記事です。

読売 5月24日 光市の母子殺害、検察再び「極刑」主張…差し戻し控訴審

この裁判は死刑判決が予想される裁判で、さらに上告しても死刑しかないと思われる死刑判決にまっしぐらに進んでいく裁判です。

1) 裁判の経緯

事件はこのWikiに出ていますが、1999年4月に起こりました。19歳10ヶ月の少年が白昼、配水管の検査を装って上がり込んだアパートの一室において、当時23歳の主婦を強姦しようとしたが、激しく抵抗されたため、殺害した上で姦淫し,その後、激しく泣き続ける生後11か月の女性の長女をも殺害し、さらに、現金等在中の財布1個を窃取したという殺人、強姦致死、窃盗事件です。

検察は死刑を求めました。1審の山口地裁は2000年3月になされ、無期判決でした。検察は判決を不服とし「1審判決は量刑判断を著しく誤り、、著しく軽きに失する不当な刑の量定をしたものである。」として広島高裁に上訴しました。広島高裁判決は「4人を殺害した永山則夫に対する最高裁死刑判決の趣旨に照らし、本件について、極刑がやむを得ないとまではいえない。」として控訴棄却の判決を2002年3月に出しました。広島高裁判決はここ(pdf)にあります。

しかし、検察は最高裁に上訴しました。その結果、最高裁は「広島高裁判決は、量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果、死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく、被告人を無期懲役に処した山口地裁判決の量刑を是認したものであって、その刑の量定は甚だしく不当であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。」として広島高裁に差し戻す判決を2006年6月に出しました。最高裁判決文はここ(pdf)にあります。

最高裁が差し戻し戻した結果の広島高裁の控訴審が冒頭の裁判です。

2) なぜ死刑しかない裁判と言えるか?

その前になぜ死刑になろうとしているかを語る必要がありますが、殺された女性の夫であり幼児の父親であった本村洋氏が死刑を訴えていることが主因と思います。さらに、テレビワイドショウ等が、本村洋氏の主張を広めていきました。愛する人を殺された時の悲しみは大変つらい。殺した相手を、今度は自分が殺してやりたい。その結果、自分が殺人を犯し、結果死刑となってもかまわない。そんな気持ちになると思います。まして2人も殺されたのですから。

上のリンクを張った最高裁判決を読むと、「第1審判決が認定する各殺人、強姦致死の事実についての各犯罪事実は、各犯行の動機、犯意の生じた時期、態様等も含め、第1、2審判決の認定、説示するとおり揺るぎなく認めることができ、事実誤認等の違法は認められない。」と言っています。

その上で最高裁判決は、「被告人の罪責は誠に重大であって、特に酌量すべき事情がない限り、死刑の選択をするほかないものといわざるを得ない。」とし、「殺害についての計画性がないことは、死刑回避を相当とするような特に有利に酌むべき事情と評価するには足りないものというべきである。」「結局のところ、本件において、しん酌するに値する事情といえるのは、被告人が犯行当時18歳になって間もない少年であり」、「これらを総合してみても,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできない。」、「被告人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって、その刑の量定は甚だしく不当であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。」と言っています。

今回の広島高裁での差し戻し控訴審において、最高裁判決の縛りがあるから、死刑以外の判決を下すことは極めて困難と私は思います。

なお最高裁は、弁護人による弁論を行っています。弁護側は鑑定書(参考ここの真ん中あたり)を出して「被告人に殺意はなく、本件行為は傷害致死罪と死体損壊罪にとどまる」と主張していますが、全く聞き入れられませんでした。最高裁の弁論は、通常は開かれず、下級審の判決を覆す場合に開催されると言われています。(この場合は、下級審が無期であったから、これを覆すのは死刑しかなく、この時から、この事件は死刑に向かって走っていたと言えます。)

3) 死刑と憲法

1948年3月12日の最高裁の判決があります。判決文はここ(pdf)にあり、弁護側は死刑は憲法36条の「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」に反するとして争っていました。弁護側の主張は受け入れられず、上告棄却となり死刑が確定しています。しかし、この判決には島保他計4名の裁判官の補充意見として次の意見が記載されています。

憲法は残虐な刑罰を絶対に禁じている。したがつて、死刑が当然に残虐な刑罰であるとすれば、憲法は他の規定で死刑の存置を認めるわけがない。しかるに、憲法第31条の反面解釈によると、法律の定める手続によれば、刑罰として死刑を科しうることが窺われるので、憲法は死刑をただちに残虐な刑罰として禁じたものとはいうことができない。しかし、憲法は、その制定当時における国民感情を反映して右のような規定を設けたにとどまり、死刑を永久に是認したものとは考えられない。ある刑罰が残虐であるかどうかの判断は国民感情によつて定まる問題である。而して国民感情は、時代とともに変遷することを免かれないのであるから、ある時代に残虐な刑罰でないとされたものが、後の時代に反対に判断されることも在りうることである。したがつて、国家の文化が高度に発達して正義と秩序を基調とする平和的社会が実現し、公共の福祉のために死刑の威嚇による犯罪の防止を必要と感じない時代に達したならば、死刑もまた残虐な刑罰として国民感情により否定されるにちがいない。かかる場合には、憲法第31条の解釈もおのずから制限されて、死刑は残虐な刑罰として憲法に違反するものとして、排除されることもあろう。しかし、今日はまだこのような時期に達したものとはいうことができない。されば死刑は憲法の禁ずる残虐な刑罰であるという理由で原判決の違法を主張する弁護人の論旨は採用することができない。

憲法31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」です。

死刑は憲法違反とまで言えないとするのが妥当でしょう。しかし、死刑が無制限に許されるものではないと思います。人は神ではない。人が人を裁くことすら、大それたことかも知れないが社会のために刑法犯罪者には刑を下さなければならない。でも、死刑まで行って良いのかは別だと思う。

嫌な裁判が始まったなと思って書いてしまいました。毎日 5月25日 少年法:改正法成立 さらに「厳罰化」進むというのも厳罰化の風潮でしょうか?

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2007年5月23日 (水)

ニセ科学

1月16日に今日は納豆がありましたのエントリーを書いて以来、何度か関西テレビの納豆事件のねつ造問題を書いてきました。昨日の22日には日経 5月22日 関西テレビ千草前社長、取締役退任へ・役員留任に批判強くで、千草宗一郎取締役(元社長)と他取締役2名が6月下旬の株主総会で退任することが伝えられました。この記事には、関西テレビは約20名の取締役と書いてあり、この会社のガバナンスには不適切なほど多かったのだと思ってしまいました。

一方、放送倫理・番組向上機構(ホームページはここ)が、虚偽放送と疑われる事案が発生した場合に、放送倫理上の問題の有無を審理する「放送倫理検証委員会」を設立しました。設立についての案内はここにありますが、本日23日に第1回会合が開かれたと思います。

ねつ造、ニセ科学、虚偽放送・報道といった関連を書いてみます。

1) ニセ科学

朝日新聞が大阪大教授 菊池誠氏による「ニセ科学について紙上特別講義」を掲載していましたので紹介します。

朝日 5月7日 ニセ科学:1(菊池教授)
朝日 5月7日 ニセ科学:2(菊池教授)
朝日 5月7日 ニセ科学:3(菊池教授)

こちらは菊池教授がNHKの視点・論点で話をされていますが、YouTubeにどなたかが、投稿されたのでしょうか。

「水からの伝言」というのを聞かれたことがありますか?「『ありがとう』などの『よい言葉』を見せた水は、こおらせたとき美しい結晶をつくるが、『ばかやろう』などの『わるい言葉』を見せた水は、こおらせても結晶をつくれない」という「お話」で、教科書にのったわけではありませんが、小学校の道徳や総合学習の授業で、教材として使われたことが一部であるそうです。「水からの伝言」を信じないでください」という田崎晴明氏のサイトのホームページがここにあります。

納豆の捏造の例で言えば、簡単に痩せられる食材があればと願望していた人が、何となくもっともらしい話を聞いたら、それを信じ込みたくなる。そんな人の弱みのような部分に入り込んでくるのだと思います。

2) 政治におけるニセ科学

ニセ科学にはゲルマニウム、マイナスイオン・・・多くあるようです。イラク攻撃を開始するに当たり、米ブッシュ大統領他の人々は言いました。「イラクに大量破壊兵器が存在する確証がある。」しかし、その証拠を示さなかったのだから、信じようがないのですが、日本の政治家で米国が言っているから真実だと述べた人がいたと思いました。結果は、大量破壊兵器などなかったというのが、世界の認識のはずです。

ヒットラーはドイツ人の優位性を述べて、そして一方でドイツ人に危機感をあおった。ニセ科学の構造と一脈を通じていると思います。

日本は、どうでしょうか?今の日本に直ちに戦争に駆り立てるような話はないでしょうが、ユダヤ脅威論、中国反日教育なんて聞いただけで、「そんなことがあったら大変だね」と思わせて真実であるかのような話がやはり存在すると思いますし、もっと身近なところでもあると思うのです。

真実の目を持つことの大切さを感じます。

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2007年5月20日 (日)

定時株主総会に向けて

3月決算の上場企業の大半も決算発表が終了し、日経の集計結果によれば、金融、新興市場など除く1434社の07年3月期の連結経常利益は前の期に比べ10.7%増とのことです。(この日経5月19日

5月12日に日経が過去最高益と報道したときは、集計対象が11日までに665社が決算発表を終えた段階で全体の4割と言っていましたから、現在は90%近くが決算発表を終えたことになります。これから、株主総会の季節になってきます。今回は、少し早いかも知れませんが、株主総会の関連で書いてみます。

1) 株主の権利

「会社の経営は取締役が行います。」と言っても、経営とは何か?となるのであり、会社法362条第1項と第2項には、以下の条文があります。(委員会設置会社の場合は、少し異なります。)
① 取締役会は、すべての取締役で組織する
② 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
 一 取締役会設置会社の業務執行の決定
 二 取締役の職務の執行の監督
 三 代表取締役の選定及び解職

取締役会を組織し(取締役会のない会社を除きますが、上場会社はすべて取締役会があります。)、業務執行を決定し、業務を執行するのが取締役です。このことを通常は経営と呼んでいます。

経営に携わる取締役を選任するのが株主総会です。私のブログでも企業の不祥事を書いてきました。その多くは、取締役会や取締役の業務執行(業務執行の中には、適切な組織の設置、使用人の雇用、活用そして社内ルールの整備等あるゆることが含まれます。)に問題があったケースがほとんどであると私は思っています。

言いがかり的ですが、そんな取締役を選んだ株主にも責任はあるとなります。でも、積極的に考えれば、株主として問題ある人物を取締役に選任してはならないのです。

株主総会に対して株主による書面での議決権行使(会社法298条②)や電磁的方法(インターネット)による議決権行使(会社法312条)があるので、昔のように議長宛の委任状に印鑑を捺印して送付するのではなく、総会に出席できない一般株主も議案ごとに○×をつけて議決権を行使すべきと考えます。

会社の取締役選任に関する議案は、選任する取締役毎の議案となっておらず、一括議案で全員を選任するかどうかの○×になっていると思いますが、好ましくない人物が候補者に含まれている場合は、×として株主の権利を行使すべきだと思います。

2) 取締役等の説明義務(会社法314条)

314条から抜き出しますと「株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。」です。正当な理由がある場合は、この限りでないと文章が続くのですが、取締役の選任に関しての質問に対しては、取締役等の説明義務が必ず当てはまります。

例えば、「A氏を会社提案の取締役候補とした理由を説明を求める。」。「B氏の略歴の開示を求める。」・・・・等色々考えられます。株主が行使しなければならない最も重要な事項は、その会社にふさわしい取締役を選任することだと思うからです。

敵対的TOBがなぜ発生するかは、取締役が無能だからと言えないでしょうか?現在の取締役が経営をしているより、自分たちが経営者を入れ替えて新たな取締役を選任し会社の事業を行えば、企業価値は上昇すると言う考え方が、TOBです。敵対的とは、現在の取締役と敵対的なのであって、会社と敵対的ではないのですから。敵対的TOBについて、ともすればその名称から悪いものと考えてしまうかも知れませんが、実は無能な取締役を選任した結果かも知れません。

取締役の選任権は会社の社長にあるのではなく、株主にあるという原則で、疑問があれば会社側によく問いただすべきと思いますし、書面やインターネットによる議決権を自分の意志で行使すべきと思います。

3) 社外取締役の選任に関する議案

3月決算の会社では、来月6月の総会が会社法における第1回目の定時株主総会となります。会社法においては、社外取締役の選任に関する議案における参考書類の記載事項が社外取締役と社外監査役について商法の時より追加となりました。その内容は、会社法施行規則74条第4項(監査役は76条第4項)に記載があり、続きを読むに入れておきますが、その第三号には次のことが書いてあります。

会社において法令又は定款に違反する事実その他不当な業務の執行が行われた事実(重要でないものを除く。)があるときは、その事実並びに当該事実の発生の予防のために当該候補者が行った行為及び当該事実の発生後の対応として行った行為の概要

社外取締役であった期間内に粉飾決算その他法令違反が会社にあった場合に、候補となった社外取締役は、どのような対応を行ったかが記載されることになりました。

2月1日のエントリー日興コーディアルの報告書を読んでにおいて、日興コーディアルの報告書の内容から書きました。日興コーディアルの粉飾決算において2人の社外取締役が全く異なった行為を行いました。青山学院大学教授の渡邉淑夫氏と濱田松本法律事務所の松本啓二弁護士です。渡邉淑夫氏はEB債の時価評価がおかしいと指摘、一方松本啓二氏は時価評価に問題なしと主張しました。

社外取締役の定義は会社法2条十五号にありますが、業務を執行しない取締役で、かつ過去にその会社または子会社の業務執行取締役や使用人になったことがない人です。言わば、しがらみのない人であり、会社のガバナンスに対してにらみをきかすことが期待できる人です。

社外取締役の制度は、ガバナンス強化のために始まった制度です。しかし、見かけ倒しの体裁だけの制度とならないように、社外取締役の選任に関する参考書類の記載事項が強化されました。会社法の制定とともに、意味のある活動を行う社外取締役の選任をすべく社外取締役についても会社案の社外取締役が不適格と判断される場合は、会社案に×をつけるべきと考えます。

4) 株主提案権

会社法303条に株主提案があります。株主総会の日の8週間前(定款により短くしている会社もありえます。)までに、株主総会の目的とする事項を取締役に対して請求することができます。権利のある株主は、総株主の議決権の1%または300個以上の議決権を6ヶ月以上保有している株主です。議決権の1%または300個以上に相当する株数は、相当多いのですが、委任状を集めて株主提案を行う方法があります。

この株主提案権については、ファンドが行使して総会議案に盛り込まれたり、あるいはこの日経4月19日楽天、TBSへ三木谷氏らの社外取締役選任求める もそうであります。

市民活動としてとりくんでおられる株主オンブズマンと言うNPO法人もあり、活動の一つとして株主提案権の行使があります。この株主オンブズマンで有名なのは、雪印乳業の社外取締役の日和佐信子氏の選任です。ここに2002年4月17日に提出した株主提案申立書がありますが、最終的には雪印が提案を受け入れ会社案として日和佐信子氏を社外取締役とする案を株主総会に提出しました。ここに株主オンブズマンのWebにあった2003年6月の日和佐信子氏へのインタビューがあります。

5) 株主総会の今後

やはり変化していくものと思います。ライブドア事件は、株主がもの言わず株価のみを気にすることの恐ろしさをを教えてくれました。村上ファンドも実は総会において株主が権利行使できることを認識させました。スティール・パートナーズ等ファンドが活躍しているは株主の権利に基づくものです。預金や債権と株式との違いの一つは株主の権利があることで、一般株主も株主の権利を有効に行使して企業活動ならびに社会の発展につくすべく活動できることを期待したいと思います。

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2007年5月16日 (水)

エキスポランドの事故

5月 9日のエントリー ジェットコースター事故の続きです。この産経 5月16日 エキスポランド関連会社を家宅捜索 大阪府警を見て、エキスポランドという会社が少しは判明したことから、親会社泉陽機工のホームページを見ました。この関連会社の紹介の1番目に株式会社エキスポランドと書いてあります。

そこで、安全と技術というページを見てみると、次のことが書いてありました。

また安全管理においても世界一厳しい遊園施設の安全基準をもつ日本にあって、泉陽はさらに様々な角度から安全検証を行い二重、三重の安全管理を実施するなど徹底した安全対策に努めています。

Web、パンフレット、セールスをする人間は嘘をつくものだと言うことでしょうか?すべてが嘘とは言えないでしょうが、嘘が必ず入っている、嘘を見抜くことが重要だと教えてくれているのではないかと、思いました。

謙虚すぎますか?

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赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)

熊本市の慈恵病院が「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)の運用を5月10日開始しましたが、開始当日に3歳ぐらいとみられる男児が預けられていたことが報道されました。

西日本新聞 5月16日 赤ちゃんポストに幼児 3歳?男児、初日に 県外から、男性が託す 熊本・慈恵病院

「赤ちゃんポスト」(この表現は、赤ちゃんを郵便物に喩えるようで、もっとよい普通名詞としての表現はないものかと思います。)の運用開始初日にこのようなことがあったと報じられたこともあり、この5月16日付・読売社説「赤ちゃんポスト こういう使い方をされるとは」のように「無責任な保護者によって“悪用”されてしまった。残念である。無責任な養育放棄を助長しかねない。」との声が多いのではと思います。しかし、様々な面もあると思うので、少し書いてみます。

1) 慈恵病院は正しい

何を言っているかというと、西日本新聞5月16日の記事では、「男児が預けられたことに、同病院の蓮田太二副院長は「事実だとしても、そうでないとしても、医療人としてコメントできない」としている。」の部分です。

もし病院側が何が言えば、このこうのとりのゆりかご制度は、失敗する危険があると思います。困った母親と赤ちゃんを助けるために慈恵病院が、反対論もあったなかで始めました。プライバシーが病院から流出することがないことは、こうのとりのゆりかごが正常に機能するために非常に大切だと思います。

私は、この事件については、慈恵病院の姿勢を尊敬します。

病院がプライバシーを守ることは、医療システムの上で重要です。しかし、いくらプライバシー維持に気をつけても、どこからか何らかの形で漏れてしまうことはあり得ます。5月2日のエントリー 大淀病院事件の現状についてでプライバシーをめぐる遺族の嫌な面を書きましたが、例えば、これは大淀病院事件の高崎美香さんのカルテで、読売新聞の昨年10月31日(大阪版)に掲載されたものです。(読売新聞のカルテ入手先は私も知りません。)

2) 父親の刑事責任

この西日本新聞の記事 5月16日 父親の刑事責任問わず 赤ちゃんポストで熊本県警がありますので、父親の刑事責任は問われないのは確実です。刑法の保護責任者遺棄罪とは、刑法218条の以下の条文ですが、父親が「こうのとりのゆりかご」に入れたとして、子供がその結果死んでしまう(表現が大げさすぎます。苦しむ位でしょうか?)と思ったのではなく、自分といるより幸せになるはず、慈恵病院が面倒をみてくれると思ったほうが自然のはずです。その場合、刑法に問うことは、無理だと思います。「故意」とか「未必の故意」の分野です。「未必の故意」なくして、犯罪は成立しないと思います。

刑法218条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

英語には、SinとCrimeがあります。Sinは宗教的な罪であり、その範囲は広く、キリスト教では、誰もがなんらかのSinを犯していると考えると理解しています。Crimeは、刑法上の犯罪です。だから、この場合も父親はSinは犯しているのです、それ故に心の中には葛藤が渦巻きます。でも、刑に問うことは、正しいとは思いません。

今の日本は、SinとCrimeがごちゃごちゃになっていて、刑に問われなければ正しいのだと主張し、些細なミスでも刑事告発して不正を正すのが正当なのだと、全くの間違いとは思わないが、行き過ぎの部分があるとどうしても思ってしまいます。

3) ええじゃないか

モトケン弁護士のつぶやきブログのNo.19 pyonkichi 小児科医さんのコメント 以降のコメントを読んでみるとおもしろいのですが、「3歳児だろうが老人だろうが、保護されることが確実であるなら、非難すべきではないはずだ。」の意見です。

冒頭の西日本新聞の記事中に「安倍晋三首相が「大変抵抗を感じる」と不快感を示す」といった記述があります。首相としては、そう述べないと叩かれると思うのですが、一方、この人が最近まで言っていたのは「セーフティーネット」でした。首相としては、児童福祉は大丈夫かと問いかけることも重要と思うのです。児童相談所のマンパワーの不足ということを耳にします。医療や福祉のサービスを縮小し、結果として弱者を従来以上に痛めつけているのではと懸念します。

4) お化けへのあこがれ

本日一番考えさせられたのかも知れません。これを見てください。お化けがうらやましいか、うらやましくないか分かりませんが、そう言えることは幸せななんでしょうね。下層社会で苦労されておられる方にはそうは言えないのかも知れません。

このgo2cさんのブログから行き着いたのが、ゲゲゲの鬼太郎のことを書いたブログでした。

でも毎日 5月16日 東京都:年収500万円未満世帯、初の過半数 過去最多というニュースもありました。このニュースと日経 5月12日 上場企業の前期、4期連続最高益・日経集計を同時に読むと企業が貧乏人のお金を吸い取っているみたいで悲しくなります。

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2007年5月 9日 (水)

ジェットコースター事故

5月5日に、大阪のエキスポランドでジェットコースターの事故があり、19歳の小河原良乃さんが死亡し、その友人の古川小百合さん(20歳)が重傷、そして11~45歳の18人が軽傷を負った、いたましい事故がありました。この事故について書いてみます。

1) ジェットコースターは乗り物ではない

5月5日の事故があって政府が出した文書はこの5月6日付け遊戯施設における事故対策について (pdf)です。この文書は国土交通省住宅局建築指導課長が出しており、文書の中で触れられている法令は建築基準法、建築基準法施行令です。例えば、スキー場のスキーリフトは、鉄道事業法の索道事業です。しかし、ジェットコースターは乗る場所と降りる場所が同じで、遊戯施設ということです。

遊戯施設でも人を乗せるのであり、人員輸送と同等の安全性が確保されていれば問題はないと思います。実態は、どうであったのでしょうか?私には、遊戯施設であるジェットコースターに関する法令が定めた安全に関する基準は緩かったのではと疑問を持ちます。

2) エキスポランドの乗り物はふじみ野市のプールと違い安全と発言した人がいました

その人は、独立行政法人日本万国博覧会記念機構(ホームページはここ)の今川理事で、昨年8月3日の財務省での独立行政法人評価委員会 第15回日本万国博覧会記念機構分科会における発言です。分科会の議事録はここにあり、今川理事の発言は続きを読むに入れておきますが、安全についての発言は次のような部分です。

エキスポランドにつきましては、動く遊具が多うございますので、それについてはマニュアルを作って、そのマニュアルを機構の方でチェックするというシステムにしております。そして、エキスポランドの方は専門の職員で毎日点検を行っておりますし、このエキスポランドを経営している会社は遊具の専門メーカーでございまして、技術者が常駐しているということで、過去、事故が起きた件はございません。

エキスポランドは民間企業であり、万博記念機構がエキスポランドに土地を賃貸してエキスポランドが遊園地を運営していると思うのですが、エキスポランドは、この案内図 (pdf)にあるように万博記念機構が保有、管理する区域の中にあります。

今川理事は、1973年大阪市立大学を卒業し大阪府に就職、昨年6月に万博記念機構の理事に就任した人です。万博記念機構は政府53%出資、大阪府47%出資の独立行政法人で、大阪万博終了の1971年9月に日本万国博覧会記念協会として設立されました。今川理事の発言を読むと無責任理事の典型みたいで、反面教師とすべきでしょうか。

3) ブレーキなしのジェットコースター

ジェットコースターとはブレーキなしの乗り物です。正確に言うと、車体にはブレーキが備わっておらず、地上からブレーキ板が出てきて車体を停止させる構造です。英語ではジェットコースターをRoller Coasterと言いますが、Wikiでを引くとこれで、詳しい説明が出ています。ジェットコースターは乗り込んだ後、チェーンで牽引され高い地点に引き上げられた後、位置エネルギーにより駆動装置なしで転がり落ちる構造で、運転員は乗車しておらず、最後に停車位置の手前から地上からのブレーキ板が作用して停車する仕組みです。(駆動装置が車体に備わっている特別なジェットコースターは別とします。)

但し、通常の車と異なるのは、左右のレールを上下と左または右からの3つの車輪で挟む構造となっています。だから、落ちない。安全と言うわけです。しかし、今回の事故のように車輪が外れれば前提が狂うわけで、「まさかのまさか」と思ってしまいます。

4) フェイル・セーフ・デザイン

世の中に絶対はなく、人間はミスを犯す可能性があることを前提にしてフェイル・セーフ・デザインを採用することは極めて重要と思います。特に、死傷事故が関係する場合は。

私は、エキスポランドのジェットコースターにおいてフェイル・セーフ・デザインは、どうなっていたのだろうと思います。

例えば、小河原良乃さんはこの5月6日の 読売新聞の記事のように、「車体が大きく傾き、レール沿いの鉄柵に頭部を打ちつけて即死」であり、この記事の写真にあるように設備点検用の通路の鉄柵に頭部を打ちつけたのです。立ち乗り式のジェットコースターであるから、万一の場合に鉄柵に頭部を打ちつける可能性を予測して設計すべきであったと思います。もし、中途で気がつけば簡単に改造ができたとも思います。

蒸気機関車が走っていた頃、機関車の始業点検は軸受け等を手で触り異常温度になっていないか、各部をハンマーでたたき異常音がしないか事故に対して万全の注意を払っていました。信頼性が高くないからこそ、日常点検やメンテナンスでカバーしたのです。フェイル・セーフ・デザインとは機械の設計のみならず点検、運転、組織等を含む総合的な設計でカバーしてよいと思います。

ふじみ野市のプール事故に対する事故調査報告書がここ(pdf)にあります。ふじみ野市大井プールの吸水口には針金で止めてあった金網しか防護品はありませんでした。もし、二重になっていれば、事故は防げたはずです。二重にする費用(後での改造を含め)は、プール新設とは比べものにならないほど安いし、安全確保には当然の投資であったと思います。事故調査報告書の35ページには、以下の記述があります。

平成14年の埼玉県(川越保健所長)からの通知による基準によれば、プールを設置する段階において、排(吸)水口は、二重構造とし、一重目として排(吸)水口は、堅固な金網や格子鉄蓋等を設けてネジ、ボルト等で固定させるとともに、二重目としてその先の配管口は金具等(吸い込み防止金具)を設置すること、また、その施設の適正な維持管理が求められている。これらの基準は法的強制力を有するものではないが、市としては施設の安全確保の見地からこの基準に従うべきである。
本件プールは、この基準の適合性からいえば、不合格となる。

5) 470m破損して走行したジェットコースター

この読売新聞 5月9日 コースター車軸折損は内側、不安定走行は470mも…府警によればジェットコースターは破損後(車軸かどうかも疑問を持つので単に破損としておきます。)470m走行したということは、全長970mですから半分以上の距離を破損して走行したのです。3)で引用したWikiにはPLCと呼ばれるコンピューター制御や一度に複数のコースターを走行させる場合の、区間ごとのブレーキ板の設置が書いてあります。

最後にくるのは、誰が安全性を評価したのか、現状でよいのかであると思います。

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2007年5月 2日 (水)

加ト吉循環取引に思う

加ト吉の循環取引については、3月27日のエントリー加ト吉の循環取引で取り上げたことがことがあり、加ト吉は4月24日にこの発表(pdf)により「外部調査委員会調査報告書の要旨」を添付して報告を行い、この報告の中で、加藤 義和代表取締役会長兼社長、加藤 義清代表取締役副社長及び高須 稔取締役の3人の4月24日付け退任と金森 哲治代表取締役副社長の代表取締役社長への就任を発表しました。この発表に関する読売新聞の記事は以下です。

読売 4月25日 加ト吉、売上高水増し984億円…社長辞任

3月27日にエントリーを書いた件であり、少し思うことを書いてみます。なお、加ト吉社の報告を「声明」と略し、外部調査委員会調査報告書の要旨を「要旨」と略すこととします。

1) ワンマン経営、同族経営の弊害

この言葉は、加ト吉社「声明」から取りました。実体をよく表していると思います。「要旨」は、会社名を全てA、B、C、D、Eとアルファベットのみで表現していることと個人名も乙としています。但し、乙が取締役を退任した高須 稔であることは、簡単に判明します。

高須 稔は、昭和14年生まれで、昭和36年に22歳で加ト吉に入社し、35歳で取締役に就任しました。加ト吉が冷凍設備を持ち企業活動を開始したのが昭和32年ですから、高須 稔は、その4年後に入社し、取締役となった10年後の昭和59年に大阪2部に上場を果たしました。現在68歳ですから、一生涯加ト吉と過ごしているような人生と思います。だから、会社と自分は一体であり加藤 義和元社長は恩人といったような感じだと思います。

高須 稔が架空循環取引の首謀者であったとして、それで問題を終わらせてしまっては、何も学べないと思います。心情的には、会社のためを思い行動したのでしょうが、会社であれば一人がルール違反を犯そうとしても、それを阻止する構造がなくてはなりません。しかし、加ト吉には、そんな体制(ガバナンス)が、なかったことにつきるのだと思います。

日本の会社には、ガバナンスがない会社が多いのかもしれない。会社を昔の藩のように捉えておられる方がおられます。社長が殿様で、会社=お家の存続のためには、殿様の不名誉も家臣が着る必要な場合もあるという感覚です。しかし、ビジネスでは、この体制は不都合です。大商人の家には、番頭がいて、実務については番頭が采配を振るい、実務の経験を積んだ番頭の方が実力も上で、旦那も番頭をリスペクトしなければ商売がうまくいかない。旦那は世襲でも、番頭は世襲ではないから優秀な使用人を番頭に育てていけば良い。そんなのが、商人であっただろうと思います。会社法で営業(営利事業)という言葉が、単に事業という言葉になりました。しかし、会社は武士社会を目指してはならない。商人社会を目指すべきと思います。

夫婦でやっておられる会社があります。旦那さんは社長で第一線に立って頑張っておられるのですが、財布は奥さんがきちっと管理されておられました。すごいガバナンスです。

2) 帳合取引の売上計上見直し、帳合取引の許容基準の厳格化

これも加ト吉の「声明」のなかの「3. 再発防止に向けた経営方針」に掲げられている言葉です。でも、帳合取引って私も聞いたことがありませんでした。このWikiには、

堂島米会所で行われた帳簿上の差金の授受によって決済を行う「帳合米取引」が、世界で最初の商品先物取引と言われる。

と書いてあり、米先物取引の差金決済による取引を帳合取引と言ったようです。現在の言葉に直せば、何のことはない「デリバティブ取引」です。

但し、加ト吉が行った取引が帳合取引であるかというと、私にはそうは思えません。例えば、株式先物取引は差金決済ですが、差金決済は売買の相手が同一もしくは同一と扱えるから差金決済で済ますことができます。仕入れと販売の相手が異なっている場合、差金決済で済ますことはできません。加ト吉調査報告書は、全て帳合取引と述べており、調査報告書の信憑性を疑ってしまうのですが、最も加ト吉調査報告書が全ての真実を述べる義務もないわけで、株主でもない私が、これ以上発言することは差し控えるべきかも知れません。しかし、もう少し続けます。

「要旨」のなかのC社は判明しています。岡谷鋼機であり、この4月26日付けプレスリリース 当社に関する一部報道(冷凍加工食品の循環取引)について(pdf)を行っています。このなかで、D社は、加ト吉およびその子会社加ト吉水産が合計で33%の出資と書いてあります。従い、「要旨」の「D 社からC 社へ対象商品が買い戻されていた事実が判明し、循環取引であることが判明。」と書いてあることより、岡谷鋼機プレスリリース「当社の見解は、商流の起点はD社であり、D社と(株)加ト吉の商流の中に、当社が参加していたと認識しております。」の方が信憑性があるように私には思えます。

帳合取引が差額決済であれば、通常の商品売買取引では行われない決済です。仮に営業部や購買部がそのようなことをしたとしても会社の経理部等でばれてしまうはずです。これを架空取引と置き換えても同じはずです。ところが、「声明」は「売上計上見直し、許容基準の厳格化」と言っています。やはり、甘すぎるのではないかと思う次第です。

3) 今後

日興コーディアルは、予想と異なり上場廃止になりませんでした。加ト吉の上場廃止の可能性は、日興と比べれば極めて小規模であることから上場廃止の可能性は低いのかも知れません。もし、上場廃止が決定すれば、ファンドが安値で手に入れるかも知れないと思います。日本食の冷凍食品事業なんて安く手に入ればおもしろいかも知れません。

なお、加ト吉は「声明」にあるような150億円程度の損失ではなく、来期以降への影響を含めるともっと大きな金額の損失になると思います。但し、一方で、何のための架空取引であったかというと親会社による赤字関係会社救済ではなかったかと思うのです。少し前までは、中国で安く製造・調達し日本で販売すれば利益がでた。今は、中国の需要が増加した結果、日本で販売して利益がでるほどの仕入れを行うことが容易ではないと思います。加ト吉以上に加ト吉と取引をしている中小食品業者の方がもっと大変だと思います。

加ト吉循環取引とは、様々な広がりを持っていると思いました。

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大淀病院事件の現状について

大淀病院事件について、次の報道がありました。(NHKは、リンクが切れるのが早いので、続きを読むに入れておきます。)

読売ー関西4月29日 奈良・妊婦死亡の診療情報がネット流出
NHKー奈良5月1日 大淀町の妊婦死亡で提訴へ

売れない経営コンサルタントのブログで大淀病院事件については、何回も書いたことから、今回の報道に関連して少し書いてみます。なお、過去に書いたエントリーは、

12月22日ー大淀病院の産科は来年3月末で閉鎖
10月27日-真実の報道-大淀病院事
10月23日-続続々 大淀病院事件
10月20日-大淀病院事件の続き
10月21日-大淀病院事件 (続)
10月20日-奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず

(1) 周産期医療の崩壊

大淀病院で産科は既に閉鎖しており、ここ(pdf file)に外来診療担当表がありますが、婦人科のみとなっています。私は、大淀病院事件を通じて知ったことは、奈良県の周産期医療(お産に関する医療)の崩壊でした。周産期医療の説明は、この東京都福祉保健局少子社会対策部子ども医療課の説明を見ていただいた方が良いと思います。お産は、無事に終わることが勿論多いのですが、医師の助けを必要とする事態が発生することもあります。そんな時に、母子ともに無事でいられるように医療を受けたいものです。大淀病院事件の高崎実香さんが不幸にも亡くなられたのは、最終的に子癇発作が生じてから6時間後に転送先の病院に到着したことと関係が深いと思う。しかし、その原因は大淀病院の産科医ではなく、奈良県地方の周産期医療体制にあったはずです。

(2) 何のための訴訟提起

何を目指して訴訟を提起されるのだろうか?憎しみでしょうか?訴訟を提起して原告が勝訴できるのでしょうか?勝訴できないからこそ、刑法の秘密漏示を持ち出しているのでしょうか?刑法の秘密漏示とは次の条項です。

134条1項 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

高崎実香さんの遺族の石川寛俊弁護士は、ここに略歴がありますが、医療過誤事件や薬害訴訟で患者側の弁護士として戦っておられる弁護士です。しかし、この件については、無理筋がありすぎると感じてしまいます。

ここに毎日放送が2006年11月2日に放送した「産婦人科医療のジレンマ」という番組の紹介がありますが、看護記録が映っています。番組ではカルテと言っていたと思いますが。昨年10月17日に最初の報道がありましたが、当時は患者遺族よりの情報に基づいたものばかりで、医療側の言い分は一切報道されませんでした。

医療側には守秘義務を迫り、患者側は根拠がなくても推測を述べることができ、個人情報に属することも自分の情報であるのでカルテであれ看護記録であれ何でも外部に都合良く切り張りして提出できるのだとしたら、恐ろしいことであると思います。

(3) 周産期医療の崩壊防止

周産期医療の崩壊防止は簡単でないと思います。何故なら、ハコモノではないからです。医師、助産士、看護士がいた上でのハコモノですが、医師を育てるのは容易ではないし、周産期医療を行うことが魅力ある仕事でないと誰が産科医になってくれるのでしょうか?

訴訟を提起されれば医師は直接の医療業務以外の仕事が増えてしまう。勿論、医師が医療上での過失を犯した場合には、仕方がないことであり、また訴訟の提起は誰にも認められた権利であるので他人が止めることはできない。

しかし、本当に向かうべきベクトルは違った所にある気がしてならないのです。

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