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2007年6月29日 (金)

ブルドックソースの第1戦勝利

報道されているとおり、スティール・パートナーズによるブルドックソースの新株予約権発行差し止め仮処分の申し立てが、昨日(28日)東京地裁より却下する決定が出されました。東京地裁の決定文を私も読めていない(webのどこかにあれば、教えてください。)のですが、少し書いてみます。なお、ブルドックソースの発表文は以下であります。

ブルドックソース平成19年6月28日付け「新株予約権発行差止めの仮処分命令の申立て却下に関するお知らせ」(PDF)

1) 3分の2多数決決議の重み

株式会社は多額の資金を資本金として調達することを容易とするため、出資者(株主)の全員一致ではなく、多数決主義としています。通常の事項は、議決権数の過半数が出席し、その出席過半数の賛成(出席しての棄権は反対と同じになります。)で決定しますが、合併その他重要事項は議決権数の過半数が出席し、その出席議決権の2/3以上の賛成で決定します。この2/3以上の多数決の議決を特別決議と呼びます。蛇足になりますが、特殊なケースとして議決権数の過半数の出席による総議決権の2/3以上の賛成という場合もあります。(会社法309条に定められており、第2項に特別決議を必要とする場合が規定されていますが、条文の番号のみが書いてあるので、大変です。)

定款の変更は会社法309条2項11号により、3分の2多数決の特別決議であり、特別決議があれば、ほとんど何でも可能(法に触れることは当然だめ)です。その意味では、特別決議を昨日の地裁決定は重く受けた止めたと理解します。

スティール・パートナーズは、実質的に新株予約権を受領せず、金銭を受領することになるが、その金銭の額もスティール・パートナーズの最初のTOB価格と同一としたことで、経済的な不利益をスティール・パートナーズに与えていないと地裁は判断したと理解します。

2) 報道、ブログ

日本の報道は、今回の決定を当然視した内容であったと思います。その中で、日経をあげておきます。

日経 6月29日 ブルドック、買収防衛策を容認・東京地裁

次にReuterと、厳密に言えば報道機関ではないのかも知れませんがBloombergには、”In today's ruling, a copy of which was obtained by Bloomberg News”と書いてあり、決定文をよんで書いていることから、Bloombergをあげておきます。

Reuter  Jun 28, 2007  Bull-Dog wins court case vs Steel Partners
Bloomberg June 28 Steel Partners Loses in Bid to Stop Bull-Dog Defense (Update3)

そして、ブログとして葉玉さんのブログ(決定文を読んで書いておられるのではと感じるのですが)とToshiさんのブログをあげておきます。Toshiさんのブログには、コメントもあります。

葉玉さんのブログ ブルドック東京地裁決定
Toshiさんのブログ 東京地裁、ブルドック防衛策発動を認容(速報版)

3) これから

スティール・パートナーズは即時抗告を行ったようですが、おそらく今回の東京地裁の決定は変わらないように私は感じます。ところで、ブルドックソースvsスティール・パートナーズについては、スティール・パートナーズのTOB時期とブルドックソースの定時株主総会がうまい具合にちょうど良いタイミングとなったからこそ、株主総会による特別決議が可能であったと思うのですが、そうでない場合にこの方法を使う場合は、臨時株主総会を開催するのだろうか?臨時株主総会で特別決議ができるほど株主の賛成が取得できるのであろうかと思いました。

それと、TOBによらず市場で1/3以上株を買い占められたら、結局はこの方法は無理であると思いました。

最も、重要なことは取締役、取締役会は株主、従業員、取引先等関係者の多くの支持・支援を得られるるような経営を行っていることであり、そのような経営を行っている限りは恐れることは何もないというのが基本であると思います。

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2007年6月27日 (水)

慰安婦問題の日米での報道

まずは、日本の報道として朝日と読売の記事をあげます。

朝日 6月27日 塩崎官房長官はコメントせず 従軍慰安婦決議
読売 6月27日 「慰安婦」決議案、政府は静観の構え…一部議員に強い反発

次に、米国における報道ですが、昨日のNY Timesは上院外交委員会における決議の記事あり、本日のNY Timesは塩崎長官のコメントせずとのコメントから始まる記事でしたが、両方の記事ともReuterの報道をそのまま掲載しており、Reuterは登録なしで誰でも読めると理解することから、Reuterの記事をあげます。

Jun 26, 2007 House panel calls for Japan sex slave apology
Jun 27, 2007 Japan says U.S. sex slave resolution won't harm ties

26日の記事は、39対2の賛成多数で決議されたという内容であり、日本で報道されている内容とほぼ同じと思うのですが、これを受けての塩崎官房長官の話は、「"Japan-U.S. ties are unshakable. That will not change in the future," Chief Cabinet Secretary Yasuhisa Shiozaki told a news conference.」と報道されています。平成5年8月4日 河野談話のように「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」と、すんなりと発言することができないのだろうかと思ってしまいます。塩崎官房長官の発言は相手に理解を求める発言ではなく、Jun 27の報道になるだろうと思います。

もう一つNY Timesにこの関連の記事がありましたので、その記事は「続きを読む」に入れておきました。この記事で、一番私の気を引いたのが、最後の文章の「President Bush,( in an attempt to help Mr. Abe overcome this issue,) said he accepted his apology.」で、括弧は私が勝手にくくりましたが、これを読んだ人は、安倍総理は慰安婦問題について謝罪を行ったと解釈していると考えます。ブッシュ大統領が嘘をついているか、安倍総理が嘘をついたか二つに一つとなるのではと思います。

それと、上のJune 27の記事ですが、最後の部分の「Signs of progress in getting North Korea to scrap its nuclear arms program have put pressure on Japan to change its stern stance towards Pyongyang.

But Abe has said Tokyo would not provide aid to the North without progress in a dispute over Japanese citizens kidnapped decades ago by Pyongyang's agents.」と言う部分です。

米国は、北朝鮮の核兵器放棄に真剣に取り組んでいると思います。ブッシュ政権にとって、イラクでの名誉ある撤退は希望薄であり、北朝鮮の核兵器放棄が最後の外交勝利だと思います。日本が今のままでいたら、世界から取り残されてしまうのではと思います。日本政府がすべきことは世界各国の信用を得ることであるはず。でも、日本は民主主義の国だから、世界各国の信用が得られる政府を選ぶことは国民がしなければならないことでした。

参議院選て大事ですね。

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2007年6月26日 (火)

大淀病院に対する民事訴訟の弁論始まる

昨日25日、奈良県大淀町立大淀病院で出産時に意識不明となり、19の病院に転院を断られた後に死亡した高崎実香さんの夫晋輔さん他が大淀町と担当医に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が大阪地裁(大島真一裁判長)で開かれました。

奈良新聞 6月26日 遺族は責任を転嫁-町が争う姿勢【大淀の妊婦死亡訴訟】
朝日関西ニュース 6月25日 病院側「産科医療全体の問題」と反論 奈良妊婦死亡訴訟
NHK奈良の報道については、Dr.Iさんがブログで紹介されておられます。

訴訟を提起したのは、日経ネット関西 5月24日 夫ら遺族、担当医を賠償提訴──奈良、受け入れ拒否続き妊婦死亡での通り、5月23日であったようです。

このブログでは、5月2日のエントリー大淀病院事件の現状についてを書きましたが、その関連もありアップデートいたします。

1) 報道も落ち着いてきたのかな

この事件は、2006年10月17日の毎日新聞の報道が発端であったのですが、私が探した限りでは今回の裁判についての報道は毎日新聞の関連では見あたりませんでした。

一方で、落ち着いてきたのかなと感じるのは、産経(奈良)には次の6月15日の記事もあったからです。

周産期医療施設の整備遅れ 県のずさん対応浮き彫り

また、読売(関西発)6月25日には、次のように、奈良県内に就職を希望する医師などを病院に紹介するために4月から導入した「ドクターバンク」制度の登録者が、開始から2か月以上たっても1人もいないことを報道しています。

奈良県ドクターバンク登録ゼロ、面談行かない怠慢も

完璧になれないのは、報道のみならず、全てでしょうが、多面的な面から取材をすることを望みます。

2) 医師ブログ

ブログを開設されておられる多数の医師の方は、大淀病院の産科医師を支持されておられます。私も、medさんのブログ 勤務医 開業つれづれ日記 6月26日 「我々は大淀病院産科医師を支持します」 産科医支持のブログに沢山の医師ブログのリンクが張られているのに驚きました。

3) 責任者

亡くなられた高崎実香さんおよび夫晋輔さん他ご遺族のお気持ちは察します。しかし、病院と医師に賠償責任はないと考えます。医師は、転送が最善と判断して転送を行うために全力を尽くしたと理解します。もし、CTを撮ろうとしたなら、転送がさらに遅れた可能性もあると思います。深夜の転送は、簡単ではないはずです。

そこで、もう一つこれも医師ブログ(medさんのブログのリンクにも入っています。)ですが、この方は米国で働いておられます。

Tai-chanのブログ マイアミの青い空 産科支援体制は大丈夫?

Tai-chanの文章を引用しますと。

遺族のお気持ちを考えますと、もっと早く搬送されていれば、、、という事情は十分理解できます。早く搬送されていて、結果はどうだったか?は分かりませんが、今回の事件で周産期の脳神経外科によるバックアップ体制が一番重要なこれからの問題であるように思います。

もしアメリカで同様の事件が起こった場合、アメリカの弁護士は医師ではなく医療行政、つまり県、厚生労働省を相手にするでしょう。今回、医師と町が被告というのが不可解です。

Tai-chanの言うとおりと思います。

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ブルドッグソースの買収防衛策に思う

24日の株主総会で、ブルドックソースの新株予約権無償割当てに関する事項が2/3以上の賛成により承認され、日経 6月24日 ブルドック株主総会、買収防衛策を可決・スティールに対抗のように買収防衛策が可決されたと報道がありました。このブログにおいても少し書いてみます。

なお、ブルドックソースの新株予約権無償割当てに関する6月24日の発表文はここ(pdf)にあります。

1) 株式投資

「貯蓄より投資」という言葉があります。日本では、一般個人の資金運用において貯蓄の割合が高く、株式投資等の割合が低く、正常な経済発展には投資の割合を現在よりは大きくし貯蓄と投資のバランスを少し変えた方がよいとの考えです。ところで、株式投資を行うに当たっては、上場株式に投資することになるわけで、その理由は、証券市場で自己の判断により直ちに売却して現金化できるからです。この現金化とは、誰かが、その株式を購入しており、その購入代金が自分に払われたことです。

即ち、株式の譲渡が自由であるからこそ、株式を保有しても、簡単に現金化できると言えます。さて、ブルドックソースの今回の新株予約権無償割当ては、TOBを行っているスティール・パートナーズについては無償割り当てを行うと同時に、その新株予約権をブルドックソースが23億円強で買い戻すわけで、会社の都合で株主を選択して良いのだろうかであります。勿論、株主が企業に対して好ましくないことを働いたのであれば、あるいは働くことが合理的によそうされるのであれば、話は変わると思いますが。

上場会社は、公開会社であり株式の譲渡に取締役会等の承認を必要とする非公開会社ではないから、新株予約権についても固有名詞による名指しで、権利行使を制限することが許されるのであろうかと疑問を持ってしまいます。だからこそ、取締役会の決議ではなく、株主総会の2/3多数決の特別決議を行ったのでしょうが、どのようになるのでしょうか?

2) スティール・パートナーズ

読売ウィークリー4月1日号はスティール・パートナーズをスティール・パートナーズの正体として解説しています。スティール・パートナーズ自信も、TOBの開始公告で「本公開買付けに基づく買付けは、あくまでも、証券売買による利益を得ることを目的としてするものであります。」と述べており、スティール・パートナーズのTOBの目的は株式売買益であると思います。そこで、前に戻るわけですが、株式売買益を得ようとTOBを行う株主は冷遇されるとなれば、これで良いのだろうかと思ってしまうのです。

もし、スティール・パートナーズでなかったとして、今回の買収防衛策なるものが、承認されたのであろうかと思うのです。外資のハゲタカファンド・・・・と、イメージのみで反応しているのだとしたら、間違った方向に進まないかと心配です。

3) 敵対的買収

マスコミは、敵対的買収という言葉が好きなようで、私は、この言葉は好きではありません。経営者が有能で、善人でと、そんな単純に思えないからです。他人をけ落として出世街道を上ってこられた方も中にはおられるはずです。無意識のうちに、そうなってしまった人や、出世するたびに取り巻きがイエスマンが多くなり正常な判断ができなくなってしまう人もいるとの話があります。敵対的買収とは、取締役会が言っていることです。従い、この言葉にごまかされてはいけないと思います。

敵対的でない友好的買収を考えてみればよいのですが、友好的買収はインサイダー取引と紙一重とも言えます。MBO(Management Buy Out)なんて、友好的買収の典型でありますが、問題がないわけではありません。MBOを行い、不採算部門を閉鎖し、優良部門を高値売却なんてこともMBOだったら効率よくできてしまいます。

Bausch & Lombが36.7億ドルでWarburg PincusというPrivate Equityにより買収という話があります。この買収について、取締役会は賛成していることから、友好的買収であるのですが、買収の結果CEOのRonald L. Zarellaは、40百万ドル(今なら50億円でしょうか)のgolden parachute(役員退職慰労金とでも言えばよいのでしょうか)を受け取るというのです。このブログにありました。その他記事はREUTER等にもあります。

話を元に戻せば、ブルドックソースとスティール・パートナーズのTOBに関してはまだ法廷闘争が残っており、今後も楽しませてくれると思います。

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2007年6月23日 (土)

沖縄の慰霊の日

本日は、沖縄の慰霊の日で安倍首相も沖縄県糸満市の平和祈念公園で開かれた沖縄県全戦没者追悼式に出席されました。参考に日経記事は次です。

日経 6月23日 沖縄「慰霊の日」、平和の誓い新た・50回目の追悼式

沖縄は、太平洋戦争で唯一戦場となった日本の国土であり、戦場の悲惨さは沖縄だけではなく、戦場となったアジアの各地やヨーロッパもそうであったのでしょうが、日本人が残していかなければならない歴史の一つに戦場となった沖縄のことがあると思います。

そう考えたときに浮かぶのが、文部科学省による教科書検定での「日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正」です。6月22日に沖縄県議会は全会一致「教科書検定に関する意見書」を採択しました。この意見書はここにあります。

与野党関係なしの全会一致なんて、沖縄の人々の熱い思いを感じます。もともと、平和な島だった。ここに(財)日本学術協力財団による沖縄戦関連資料閲覧室があります。昭和19年3月に大本営直轄の第32軍(陸軍・沖縄守備軍)が創設され、沖縄へ本格的に軍隊がやってきた。次々と土地を収用し飛行場を建設し、その建設に男の島民を防衛隊として招集し、大人男子を全員招集した後には、中学生や女学生もかり出して、さらには国民勤労動員令を公布して沖縄県の15歳から45歳までの男女を「根こそぎ」動員した。

悪魔の軍隊としか私には思えない。目的は、沖縄の人々のためではなく、本土防衛のための捨て石であったとしか思えない。そんな戦争であったにもかかわらず、日本軍の関与を否定する文部科学省は、日本軍と同じような頭脳と精神構造を持ち合わせておられると思える。

さて、沖縄県議会の「教科書検定に対する意見書」に対する政府の反応は、

(1) 琉球新報 6月23日
教科書検定 撤回は困難と首相認識示す

(2) 沖縄タイムス 6月23日
文科省、撤回を困難視 要請県議団「誠意感じられぬ」

であり、なぜかかたくなに態度を変えていないようです。

最後に、6月23日の朝日新聞の記事を紹介しておきます。
62年前に見た集団自決の現場 「軍曹が命じた」

平和を維持するための最も重要なことは、歴史をありのままに見つめ、学ぶべきことを学ぶことと思います。

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2007年6月18日 (月)

ブログの更新

5月26日にエントリーを書いて以後、ネット環境に恵まれていない場所に来ており、ブログ更新ができずにいることをお詫びします。その間の一番驚いたニュースは松岡農水大臣の自殺でした。亡くなった人を批判することは、良くないでしょうが、どんな仕事であれ、自殺するまで自分を追い込んで仕事をするものではないと私は思います。どんな場合でも、なにがしかの余裕か、隙か、何でも良いからバッファーを持っていなければいけないと思います。

その意味で、政治家も自分をぎりぎりまで追い込んで仕事をすべきではない。余裕がなければ冷静な判断をし、正しい考え方をすることができないと思います。もしかしたら、あの方は、追い込まれた状態だったから、「ナントカ還元水」なんて仰っていたのでしょうか?

今週中には、ブログ更新が適度な余裕を持ってできる状態になると思います。更新できなかった期間中にも、本ブログを訪問頂いた方々に感謝申し上げます。

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