« 2007年6月 | トップページ | 2007年8月 »

2007年7月28日 (土)

株価・為替・金利の動向

この記事から、始めます。

日経 7月28日 米国株、大幅続落――ダウ208ドル安で2カ月半ぶり安値 信用リスク懸念

日経 7月28日 NY円、続伸――118円55―65銭で終了

米国株が安値になりつつなるのか、ダウ平均のチャートを見てみますと、以下の通りです。(Yahoo Chart)

Dow27jul2007

この7月中頃までは、極めて順調に続伸を続けていた感じです。7月中旬に何があったかというと、一番上の日経記事に「信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した信用リスクへの警戒感が引き続き市場心理を冷やしており」とありますが、サブプライムローンのニュースが出たのが丁度7月の中でした。(参考Nikkei Net FXマーケットウオッチ 市場にまん延するドルへの不信感  今井雅人 nikkei Net FXマーケットウオッチ サブプライムローンの呪縛 今井雅人

なお、ドル/円為替を見てみると、次の通りです。(こちらも、Yahoo Chartです。なお、期間は1年間の動きで上のダウ平均は6ヶ月間のチャートですから、少しチャートの横軸が異なっています。)

Uyen26jul2007

ドル/円為替は6月の中旬に124円近くまでなって、それからは円高に向かっています。

これから、どのようになるか誰も先の相場は分からないのですが、最近6ヶ月間の日経平均の動きです。

Nikkei2252007727

この7月の動きは、米国株の動きと似通っている気がします。

日本の経済の現状は、自動車等の好調な輸出により好景気・株高となっていると考えられます。米国の景気が後退しても自動車産業の中では、日本メーカはシェアを伸ばしていく可能性はありますが、販売台数や売上高は景気の影響を受けるはずです。それと、現在の輸出の好調は円安為替による利益があると思います。為替レートが円高に振れた時、おそらく下請け企業に相当なしわ寄せが行くのではと私は思うのです。

それと、円キャリートレードです。円キャリートレードで円資金により外貨資産に投資をしていた場合、円高はモロ損失です。機関投資家で円キャリートレードをしている連中は、相場を見て直ぐに反対トレードを行って、ポジションを下げ、あるいは逆ポジションに持って行きます。このあたりは、すさまじいし、キチガイみたいな動きをすると表現をしておきます。

何故、逆トレードをするかというと、キャンセルが容易ではないからです。従い、新しく逆のポジションを作るのです。即ち、円資金でドルに投資をしていた場合は、ドルを借り入れて、円に投資をするのです。同額の逆トレードをすると何もしていないことと同じです。むしろ、手数料分だけ持ち出して損をします。しかし、相場の動きは手数料などよりはるかに大きいのです。でも、これを普通の素人の投資家は簡単にはできません。もしかしたら、指をくわえて見ているだけの形になるかも知れません。おすすめは、場合によっては自分で決断して、手数料が大きくてもキャンセルをすることとと思います。

ここに来て、私が感じたことは、相場が大きく動く可能性があるのではと思ったのです。勿論、動かないかも知れません。おすすめは、警戒感を強くすることです。それに、明日参議院選挙ですが、この結果も、可能性としては、大きく相場を動かす震源になりうるのではとも思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年7月23日 (月)

原子力発電所の安全性

本日、日本政府はIAEAの査察を受け入れると表明しました。

日経 7月23日 塩崎官房長官、IAEA調査受け入れ正式表明
Reuter Jul 23, 2007 Japan ready to accept IAEA inspectors after quake

その前には、産経 7月21日 刈羽原発へのIAEA受け入れ、当面見送り のような報道もありましたが、日経 7月22日 IAEA早期受け入れを・新潟県が国に要望 のように新潟県の要望もあり、受け入れたものと思いますが、原子力発電所の安全性に関連して少し書いてみます。

1) IAEA

ホームページはここにあり、本年3月末現在144ヶ国がメンバー・カントリーで、そのリストはここにあります。(日本は1957年の設立からのメンバーです。)なお、Nikkei Biz経済新語辞典のIAEAがここにあります。

日経 7月18日 IAEA、北朝鮮の原子炉停止を確認・AP通信日経 7月13日 イランとIAEA、重水炉の査察開始で合意のようにIAEAは北朝鮮やイランの原子力関連でも活動を行っています。

2) 原子力発電所は安全か?

絶対的安全は、どのような場合でもないものと思います。相対的な安全であり、リスクが低いということは存在すると思います。しかし、リスクが低く、安全であると考えてよいのかは、リスク評価を行って初めて言えるし、全てについてリスク評価を実施し、安全宣言を行うことも大変な作業であるし、まして未知の世界がある以上は、絶対安全とは言えないと思います。

人が利用していくには、安全性について何らかの評価をして、対策が必要であるなら、対策を実施して利用することです。正確な評価をしないで安全神話で利用することは許されないはずです。

例えば、今回の柏崎刈羽原子力発電所についても、全く違った評価が可能であると思います。

(a) 一つは、危険であり慎重にとする考え方で以下のようなことと思います。
想定した揺れを上回る地震が発電所を襲った。変圧器絶縁油が火災を起こしたが、消火に長時間を要した。放射能を含んだ水が外部に漏れた。運良く、大事故となっていないだけであり、危険である。

(b) もう一つの安全だと考える評価は、次のようなことかと思います。
原子炉を始め高放射能レベルの部分については、安全に保護された。発電所の社員も地震後第一にすべきは、高放射能部分の安全確認であり、変圧器火災については、大事に至らないと判断がついたのであれば、優先順位に従った保安を確保すべきであり、問題はなかったし、信頼性が実証された。

(a)も(b)も両方とも私が書いたのですが、(a)も(b)も決定打はありません。むしろ双方とも誤りがあるのではと思いますし、正確な評価が必要です。

3) 正しい評価の必要性

次の文書を是非ご覧ください。

平成16年11月26日付け内閣参質161第7号 参議院議員近藤正道君提出新潟県中越地震と原子力発電所に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

3年近く前に新潟県中越地震に関して柏崎刈羽原子力発電所の安全性に関し、当時の総理大臣小泉純一郎から参議院議長扇千景に対して出された答弁書です。いくつかのブログで言及されていますが、この答弁書には、「地表に現れた活断層のみならず、敷地及び敷地周辺の地質、過去に発生した地震、地表に現れていない活断層等に関する詳細な調査の結果を踏まえ、敷地の直下又は近傍に、マグニチュード六・五を超え、敷地に大きな影響を及ぼす可能性がある地震の震源となり得るような活断層がないことを確認しており、マグニチュード六・五以上の規模の地震が発生した場合であっても地表に断層が現れないことがあることをもって、耐震設計審査において想定しているマグニチュード六・五という直下地震の規模を見直すことが必要となるとは考えていない。」と書かれています。

言い過ぎであると思うのですが、揚げ足を取ることではなく、正しい評価を行って訂正をして欲しいと思います。日本の原子力は、神話で推進派が押し切ってきた面があると思うからです。

この日経 7月19日 「政府、IAEA勧告を無視」志位氏が原発防火体制で批判という記事についても、真相を知りたいと思います。国民の知らないところで、もみ消しているのだとすると恐ろしいからで、どのようないきさつで、どうなっているか知りたいと思います。

4) 原子力

原子力の利用を無視して人類の今後の発展を継続できるほど甘くはないと私は思っています。例えば、次のグラフはIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)のプレゼンにあったグラフですが、上のグラフは北半球における過去1千年の温度変化です。下のグラフは、地球上の過去1千年のCO2濃度です。1900年を過ぎて20世紀に入ったとたんに共に急激に上昇しているのが分かります。これで特定できるわけではありませんが、可能性を示しています。

Temperaturevsco2

石油価格は上昇しています。私は、原子力を放棄できるほど安易な時代ではないと思います。原子力を安全に使いこないしていかなければならない時代であると思います。原子力は、決して簡単ではない。目に見えません。原子力を利用するなら、現在のところ発電に利用するのが、一番安全であり有効であると思います。

神話に基づかない、データに基づく安全を確保すべきであると思います。そのためには、多くの人間が検証すべきであり、日本政府、政府機関、電力会社のみならずIAEAも参加してデータに基づく安全確保を実施することは意義深いことと私は思います。そして、その報告書は絶対公開すべきです。

5) 世界の発展と安全

エネルギー問題は、日本のみの問題ではありません。例えば、世界の大生産・消費国中国もエネルギー供給問題を持っているし、中国に続くインドもそうです。そして、中国にもインドにも原子力発電所があります。多くの国が、やがて原子力発電所を持つことと思います。北朝鮮も現在の黒鉛炉原子力発電所は休止するでしょうが、軽水炉原子力発電所をその代わりに持つと思います。この仮定は良くないのですが、万一放射能漏れが朝鮮半島で起こったら、日本に放射能が飛んでくるのではと思います。放射能は、国境に関係ありません。そもそも、物理や化学は人為的な国境にとらわれません。

原子力は、国際的な取り組みが必要であると私は思います。日本がリードして、なんて、大げさでなくていいから、少なくとも日本も積極的に国際的な取り組みに参加して欲しいと思います。私は、IAEAとの今回の取り組みもそんな中の一環になって欲しいし、北朝鮮やイランの件に関してもIAEAの中に入って取り組めないものかと思います。

最後に、原子力と核兵器は極めて近いと思っています。原子力神話を唱えた人は、平和利用は核兵器と全く違うと言っていたように思うのですが、私はほぼ同じであり、だからこそ、今の日本も原子力発電所の燃料再処理とよんでいるプルトニウムに関してIAEAの査察を受け入れ、厳しい管理をしていると思っています。原子力発電が広まることは、それだけ核拡散につながり易いことである。従い、IAEAの管理体制をしっかりしないと核戦争の危機が強まると思います。広島・長崎を思うとき、原子力発電についても同時に考えるべきと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

税と年金

あと1週間で参議院選の投票日となりました。そこで、私なりに、税と年金について書いてみたいと思います。

1) 住宅借入金に関する特別控除

サラリーマンの人は、6月分の給与支払いから、普通徴収で自分で納付される方は6月の納付より、住民税の金額が変わりました。多くの人にとっては増税で、給与所得のみの場合に収入が約1500万円以上の人については減税でした。しかし、これこれの総務省のパンフレットを読むと、所得税と合計すると同じだと言うことです。

総務省の計算は、平成18年には受けることができていた定率減税(所得税で10%(最大125,000円)と住民税で7.5%(最大20,000円))の廃止を無視して計算しています。総務省は、地方への税源移譲の説明にとどめ、全体の税構造の議論は別との考えで余り触れておられないものと思いますが。

話をわかりやすくするために地方税は増税、所得税は減税と呼ぶこととして書き進めます。(厳密には、約1500万円以上収入がある給与所得者は地方税減税で所得税増税となりますが)総務省のパンフレットから「夫婦+子供2人の場合」をそのままコピーしたのが次の表です。

Photo_16

住宅を購入した際には、ほとんどの人は住宅借入金に対する所得税の特別控除を使っておられるはずです。この特別控除は申請すると借入金の年末全高の1%が10年間毎年控除されます。(制度が微妙に年により異なります。)即ち、2000万円の借入金があれば、20万円所得税が安くなるわけで、上の表の場合に当てはめると、給与収入が500万円の場合は、119,000円の方が小さいので、所得税は納付する必要がなく、700万円の人の場合は、200,000円安くなると63,000円の納付(実際には源泉徴収)で済むわけです。

そこで、表の右のように所得税減税が実施されたので、700万円の人も所得税がゼロとなるのは良いのですが、税のマイナスがないことから、500万円の人についても所得税が119,00円から59,500円に減税となったので、減税幅59,500円については、損をしてしましまいます。

このため、現在住宅借入金に対する所得税の特別控除を受けている人は(平成18年までに居住をしている人に限り)、住民税から所得税ではみ出た部分の控除を受けられます。但し、来年3月に市町村の税の窓口に、確定申告を提出する必要があります。なお、税務署に所得税の確定申告を提出する人は市町村に二重に提出する必要はなく、年末調整により所得税の確定申告を提出しない人だけです。(条文は地方税法附則5条の4です。)

なお、平成19年以降居住する人は、また扱いが異なります。こちらは、本年3月改正の租税特別措置法41条です。その内容は、1%の控除を6年目まで、7年目~10年目まで0.5%の控除を受けるか、あるいは0.6%の控除を10年目まで、11年目~15年目まで0.4%の控除を受けるかの選択です。

2) 本当に増税・減税同額か

住民税の課税所得の計算と所得税の課税所得の計算が少しだけ異なります。例えば、配偶者控除、扶養控除、基礎控除等が住民税の方が金額が小さいのです。このため、地方税法37条、314条の6で調整されるのですが、保険料控除や寄付金控除は、調整されないため、これらが関係すると少しだけ住民税の増税が大きくなります。

他に大きくなる場合があります。こちらは世田谷区の国民健康保険料です。所得割額が介護保険料込みの場合は、住民税額の1.51倍ですから、負担は大変です。

3) 年金

ある人に「選挙が終わったら、金利は上がりますね。」と言ったら、その人は「消費税も上がりますよ。」と言いました。その可能性もあるのではと思いました。

そこで、どうせ訳の分からないうちに消費税が上がるのなら、基礎年金を全て消費税でまかなうことにし、国民年金保険料を徴収しないこととした方が簡単ではないかと思ったのです。年金の信頼が失われつつあるのでは、もしかしたら一部失われているのではと思いました。本来、年金は皆が喜んで掛け金を払い込む制度であるはずです。なぜなら、掛け金以上の年金が戻ってくるからです。即ち、税金がつぎ込まれて、通常の資金運用とは異なった形になるからです。ところが信用されていない。

基礎年金の掛金の納付者を7千万人とし、月14,000円払うとすると年間約12兆円弱となります。平成19年度の消費税歳入予算は(1%は地方消費税なので、4%の計算で)10.6兆円です。ほぼ基礎年金に見合うのではと思います。消費税が上がることは、悲しいのですが、国民年金保険料を払わなくてもよく、厚生年金保険料も安くなるなら、私はそれでよいのではないか。保険料の徴収よりも消費税の徴収の方が、徴収コストも安いと思います。

社会保険庁を悪者にして、つぎはぎの年金を維持して良いことがあるのだろうかと思います。一方、国の年金は重要です。全て、民間制度となってしまったら、自分で保険会社に掛け金を払ったりして年金を受領することも可能であるし、企業年金もなくなるわけではないでしょうが、格差拡大そのもののような気がします。民間制度のみではない、社会として維持していくべき年金制度があると思います。

基礎年金保険料を税でまなうとして、全てを消費税としなくても良いわけで、例えば、高額所得者の税率を高くすることも可能と思います。現在は、1800万円以上の課税所得があれば、最高税率が適用されるのであり、これを例えば、1億円以上の人についてはもっと払ってもらっても良いのではと。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2007年7月19日 (木)

ブルドックソースvsスティール・パートナーズの高裁決定文

東京高等裁判所の決定文が裁判所のWebに掲載されました。

まずは、裁判所のWebに掲載されたことの報告です。ゆっくり読んでみたいと思います。そして、7月15日のエントリー スティール・パートナーズに対する東京高裁の決定に追加して記載することを考えてみます。

事件番号 平成19(ラ)917 東京高等裁判所 第15民事部 平成19年7月9日 決定 株主総会決議禁止等仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
----- 同 上 (全文) pdf ------

本日、村上ファンド事件の裁判において東京地裁は、証券取引法違反で村上世彰被告に懲役2年、追徴金11億4900万円、罰金300万円とほぼ検察の求刑に近い判決を出したと報じられました。こちらの方も、様々な問題を含んでおり、判決文を十分に読む必要があると思います。とりあえず村上ファンド事件については日経の記事をあげておきます。

日経 7月19日 村上被告に懲役2年、追徴金11億円・プロの犯罪重視

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月18日 (水)

外交交渉 西山事件 

いよいよ米国と北朝鮮の外交交渉が開始され、これから事態は進展していくことと思います。

日経 7月17日 6カ国協議、米朝首席代表が協議開始

米国は、核を北朝鮮に放棄させることを目指して交渉するのでしょう。一方、北朝鮮の交渉における武器は核でしょうから、北朝鮮にとって核を放棄するからには、それなりのものを得ないと簡単に妥協できない。背景として、キム・ジョンイルが力がある間に解決したいと米国も思っていると私は思うのです。キム・ジョンイルに力が無くなったとき、解決の方策が困難になるとしたら。核兵器が北朝鮮からテロリストに渡るリスクは、どうか?そのリスクを考えた場合、何としても米国は交渉を纏め上げたい。纏め上げる方向に持って行きたい。最終的には、核保有を限定的に認めることもあり得るのではないか。そんな密約もあり得るのではないかと私は思ってしまいます。

密約という言葉で思い浮かべるのは、やはり「西山事件」と呼ばれている事件です。この事件をふりかえって少し書いてみます。

1) 事件の概要

事件そのものについては、Webで検索をすれば、沢山でてきます。しかし、これだけは読んでくださいというのが、北海道新聞の2006年2月8日の往住嘉文氏の次の記事です。

北海道新聞 2006年2月8日 1971年 沖縄返還協定 「米との密約あった」 佐藤首相判断で400万ドル肩代わり 外務省元局長が認める

私が解説するのも変な話かも知れませんが、なぜ有名になったのかは、1972年(昭和47年)3月27日の衆議院予算委員会で当時社会党(現在民主党)の横路孝弘氏が、1971年5月28日付の愛知外務大臣から在米国牛場大使宛の電信原稿を取り上げて、政府による密約の追求を行ったからです。

この1972年(昭和47年)3月27日の衆議院予算委員会の議事録はここにあります。横路孝弘氏の追求は、議事録の一番最後の散会直前の部分にあります。当時の内閣の顔ぶれをみるととてもおもしろいですね。よく言えば、日本を背負ってたった人たちで、悪く言えば権力の追求者がそろっています。佐藤榮作首相、福田赳夫外務大臣、田中角榮通商産業大臣、竹下登内閣官房長官がいます。

北海道新聞の記事に記載ある、吉野文六氏も外務省アメリカ局長として、この予算委員会に出席しています。それだけではなく、有能な役人です。散会直前に次の発言を行ったことから、横路孝弘氏から電信原稿のコピーを入手しました。そうなると、機密文書であったから、文書の番号や決済欄の印影により、どの部署から漏洩したかが判明したのです。

あとでもう一回、横路先生にその文書を一応見せていただきまして、調べましてあしたお答えいたします。

漏洩ルートが判明しました。漏洩ルートは外務省の事務官蓮見喜久子氏から毎日新聞記者西山太吉氏へ、そして西山太吉氏から横路孝弘氏へでした。しかし、次に政府は、外務省機密漏洩事件へとすり替えを計り、見事に機密漏洩事件へのすり替えに成功しました。そして、蓮見喜久子氏と西山太吉氏のスキャンダルも加えることができたのです。

この機密漏洩事件は西山太吉氏が最高裁まで争ったので、Webからも最高裁判決文が入手できます。次のサイトです。

事件番号 昭和51(あ)1581 昭和53年05月31日 最高裁判所第一小法廷 棄却決定
[全文はこちら(pdf)]

2) 事件から学ぶべきことは

私は、多くあると思います。そんな中で、思いつくところを書くと。

1.外交とは密約が多くある

沖縄返還交渉で言えば、(返還という言葉も不適切かも知れませんが)サンフランシスコ平和条約の第3条が次の文章です。アンダーライン部分は、日本語では、「このような提案が行われ且つ可決されるまで」とされているようですが、英語で読むと、私には提案をするのは米国であり、それに合意するのは国連であり、国連の合意がある間は、と読んでしまうのです。即ち、米国が沖縄の行政権、立法権、司法権を持つことについて、日本が、その返還を迫ることについて弱い立場にある。

Japan will concur in any proposal of the United States to the United Nations to place under its trusteeship system, with the United States as the sole administering authority, Nansei Shoto south of 29deg. north latitude (including the Ryukyu Islands and the Daito Islands), Nanpo Shoto south of Sofu Gan (including the Bonin Islands, Rosario Island and the Volcano Islands) and Parece Vela and Marcus Island. Pending the making of such a proposal and affirmative action thereon, the United States will have the right to exercise all and any powers of administration, legislation and jurisdiction over the territory and inhabitants of these islands, including their territorial waters.

その中での交渉だったのですから、佐藤内閣、政府は苦労をしただろうと思います。当時の沖縄には確実に核兵器が存在したと思われます。日本政府にとって核抜き返還は絶対条件であったでしょうから、米軍用地地主に支払う復元補償費4百万ドルを負担することは、全体から考えれば、塵のようなものだっただろうと思います。政府の従来の説明と異なるが交渉の経緯から、4百万ドルが理由で交渉難航等するわけにはいかず、説明と異なることから、結果として国民をだますことになるがヤムを得ないと判断したのでしょう。(実際には、北海道新聞の記事が書いているように、他にもたくさんあったようです。)

私には当然のことと思えるのです。だから、琉球大の我部政明教授らによる米国の情報公開での調査等が意味があるし、歴史を明らかにしていく必要があると思います。ちなみに、日本政府は今でも、電文原稿が本物であることは認めるが、米国に対する密約はないとの姿勢のようです。

密約とは、何かですが、矛盾する複数の約束をすることでしょうか。そうであれば、多いのではないかと思ってしまうし、だからこそ成立していることもあるのではと。

2.政治家は信頼できない

断言してしまうと問題がありすぎるし、正確ではないと思います。一方で、完全に信頼できるなんてことは、人間である以上はあり得ないのかも知れません。

信頼できないのは、佐藤首相以下政府側の政治家もそうでしょうが、本件では横路孝弘氏もそうです。西山太吉氏は横路孝弘氏に何と言って渡したのだろうと想像すると、おそらく極秘文書だから、そのままでは使用しないでくれと言ったのではないかと思うのです。横路孝弘氏は、名声と票を考えれば迫力を持って政府に迫りたい。その結果、コピーを持ち、それを読み上げた。

勿論、私の想像が多く入っています。しかし、西山太吉氏が横路孝弘氏にコピーを渡したことは、政治の世界を甘く見すぎたのではと思ってしまいます。外務省詰めの毎日新聞記者団のキャップとして、沖縄返還問題の取材にあたっていた西山太吉氏が、そのことを知らないわけはなかった。次に報道のことを書きますが、報道も取材源との関係で思ったように書けずにいて、魔に落ちた形だろうと思いますが。

3. 報道の姿

1971年5月28日以降1972年3月27日までの間の毎日新聞を調べれば、西山太吉氏が毎日新聞にどの様な記事を書いたかが分かるはずですが、私もできていません。多分、書いておられると思いますが、どちらにせよ新聞記者は新聞記事で勝負をすべきです。取材源は、絶対に守るべきです。でも、そんなわかりきったことが何故できなかったのか?この事件の一つの大きな解明すべきことであると思います。西山太吉氏が、このことについて今後何かを語るかどうかも分かりません。

日本の報道機関は、政府発表等に頼りすぎている。記者が自ら取材をして、情報を収集して記事を書くことが少なすぎると思います。記者の取材した結果と、政府発表が異なっている場合は、報道機関は政府発表を記事として採用すると思うのです。そんな体質が、西山太吉氏を野党の横路孝弘氏による国会予算委員会における質問へと追い込んでいったのではと思います。でも、取材源の秘匿という記者の生命を守れなかった。

でも現状を見た場合、私のブログの最初に関西テレビ「あるある納豆事件」があります。その前にも、毎日新聞「大淀病院事件」があります。この2つを同列にすると、怒られそうですが、私からすれば報道記者があまりにもレベルが低すぎる。何故勉強しないのかと思います。報道は早さより正確さがずっと重要だと思います。

少なくとも報道がしっかりして欲しい。しっかりした報道が社会をよくしていくはずだと思うし、報道がだめな場合は、とんでもない社会になる。大本営発表のみを報道していた大東亜戦争の時代は、もう引きずっていないと思うのですが。

4.公務員

蓮見喜久子氏は国家公務員法109条[左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。]12号[第100条第1項又は第2項の規定に違反して秘密を漏らした者]により懲役6月、執行猶予1年の有罪で、西山太吉氏は国家公務員法111条[第109条****第12号****に掲げる行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし又はそのほう助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する。]懲役4月、執行猶予1年の有罪でした。

どれほどの罪であったのだろうかと思うのです。米国にとっては、何でもない事項のはずです。日本が隠してくれと要請したから、秘密事項にした。それだけと思います。佐藤政権にとっては困った情報でした。でも、わざわざ刑事罰に問わなければならない罪とはどうしても私には思えません。情報入手に当たり、恐喝等刑法に触れることがあれば別ですが、刑法には問われていません。

むしろ、憲法15条2項[すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。]や国家公務員法96条1項[すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。]と規定されている国家公務員の義務を考えた場合、政府のトップの意に反しても正しいと信じるところがあれば、国家公務員は、そうすべきであると私は考えます。

上の最高裁決定文は西山太吉氏の裁判に関するものでありますので、公務員の義務を直接争ったものではないが、そのような観点が裁判所の決定文の中に全く感じられません。社会が必要とする最も大切なものとの観点が欠如した倫理観で、表面の起訴事実のみで判断しているように私には感じられます。

5.蓮見喜久子事件

この人については、ほとんどの場合、実名が出てきてないのですが、本当は蓮見喜久子事件と呼んだ方がふさわしいと思います。最大の名誉・名声を受けるべき人と思うからです。蓮見喜久子氏がいなかったら、北海道新聞の記事もなかった。今の、私たちはもっと暗闇にいた可能性があると思います。

外交におけるこんな駆け引きを国民は知らなかったのではと思うのです。政治家の言葉の真実はどこにあるか。役人の体質とは何か。私は、それぞれの善悪を論じるつもりはありません。事実を事実として認識することの大切さです。その上で、正しい判断をすることが大切なのだと思います。

蓮見喜久子氏は、検察でも裁判でも起訴事実を、そのまま認めたように聞いています。すごい人物であったと思います。内部情報を出したいときに、どのようにして出すかは、最も大変です。失敗する可能性も考えて、実行しなければいけないし。歴史に残る事項だったら、そんな簡単ではないし、権力者を相手に、自らの生活が変わってしまうことまで、覚悟して実行したのですから。相手が、権力者であったから、裁判では勝利よりも執行猶予を取ることにした。

歴史に事件を残し、名を残し、学ぶべき多くのことを残す。ほんの短い間であったかも知れませんが、もしかしたら蓮見喜久子氏はその当時政府のトップであった佐藤榮作氏より深く歴史に刻み込まれたのではと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月16日 (月)

厚生年金における配偶者

年金については、種々の話題になっていますが、こんな話はどう思われますか?

報道としては、次の3月9日の読売新聞の記事です。

読売 3月9日 近親婚の女性に遺族年金受給資格

この事件は、新聞記事だけでは、何がどうかよく分からず、やはり判決文を読む必要があります。判決文は、次です。

平成19年03月08日 事件番号平成17(行ヒ)354 遺族厚生年金不支給処分取消請求事件 最高裁判所第一小法廷判決

1) 遺族厚生年金とは

厚生年金の被保険者又は被保険者であつた者の死亡当時その者によって生計を維持していた配偶者、子に支払われる厚生年金です。そして、厚生年金保険法第3条第2項には次のように規定されています。

この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

暖かい法律だと思いますし、事情のある場合は、それを汲むことも大切だと思います。

2) 本事件の経緯

判決文にあるのですが、A氏は結婚し妻に長女が生まれたが、その頃から妻は統合失調症(どのような病気か私もよく分からないのですが)となり、妻は実家に帰ってしまいました。A氏は離婚を決意し、協議を重ねたが、妻の精神状態が原因で協議も困難であり、妻の両親は離婚後に妻の妹と結婚することを望んだ。

A氏は親と同居しており、夜勤もある勤務の都合上長女の世話はA氏の両親が行っていたが、農業で多忙であり、十分な世話はできず、長女は離乳食なども余り食べることができず、栄養失調気味であり、その衣類の洗濯も十分に行われていなかった。

A氏の兄の長女が、春休み、夏休みなどの長期の休みには、A氏の両親である祖父母の手伝いをするため実家を訪れ、その際に長女のおしめを替えて洗濯するなど、長女の面倒を見た。長女も、親族の中で最もこの兄の長女になついていった。

A氏の父親は兄の長女と結婚することを提案し、兄の長女にも父親が説得し、兄の長女はA氏の長女に同情して結婚を承諾した。妻との協議離婚も成立し、兄の長女との結婚に当たっては、妻の時と同じ親族が媒酌人を務めた。

兄の長女と結婚したことについて証明願いを町長宛に提出し、証明するとの町長の記名押印を得た。A氏を世帯主とする健康保険証には、実質的に妻となった兄の長女の名前も記載され、源泉徴収票にも配偶者控除の対象として記載されていた。

二人の間には、二人の子供も生まれ、A氏の収入から生活費を支出し、事実上の妻となった兄の長女が家事を担当し、5人で円満な家族生活を送った。約42年間にわたり夫婦としての生活を送り、A氏は死亡した。葬式の際も、A氏の妻として挨拶を行い、共同生活を始めた当初から終始、事実上の妻としての役割を果たしてきた。

平成13年10月19日付けで、遺族厚生年金の裁定を請求したところ、10月31日付けで「遺族の範囲に該当しないため。(近親婚にあたり、内縁の妻として認められないため。)」との理由により不支給処分を受けた。

3) 最高裁判決

横尾和子裁判官を除く全員一致ということで、次のように述べています。どのように思われますか?

我が国では、かつて、農業後継者の確保等の要請から親族間の結婚が少なからず行われていたことは公知の事実であり、前記事実関係によれば、上告人(A氏の事実上の妻)の周囲でも、前記のような地域的特性から親族間の結婚が比較的多く行われるとともに、おじと姪との間の内縁も散見されたというのであって、そのような関係が地域社会や親族内において抵抗感なく受け容れられている例も存在したことがうかがわれるのである。このような社会的、時代的背景の下に形成された三親等の傍系血族間の内縁関係については、それが形成されるに至った経緯、周囲や地域社会の受け止め方、共同生活期間の長短、子の有無、夫婦生活の安定性等に照らし、反倫理性、反公益性が婚姻法秩序維持等の観点から問題とする必要がない程度に著しく低いと認められる場合には、上記近親者間における婚姻を禁止すべき公益的要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという法の目的を優先させるべき特段の事情があるものというべきである。したがって、このような事情が認められる場合、その内縁関係が民法により婚姻が禁止される近親者間におけるものであるという一事をもって遺族厚生年金の受給権を否定することは許されず、上記内縁関係の当事者は法3条2項にいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に該当すると解するのが相当である。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2007年7月15日 (日)

スティール・パートナーズに対する東京高裁の決定

東京高裁の決定文が公表された段階でエントリーを書こうと思っていたました。しかし、経済産業省の北畑隆生事務次官が13日の記者会見で、スティール・パートナーズを「濫用的買収者」と認定した東京高裁の決定を「画期的だ」と評価したと報道(日経記事 ここ)があったことから、私もまだ決定文を読んでいないのですが、ブルドックソースvsスティール・パートナーズに関する東京高裁決定に関連することと等を書くこととしました。

1) スティール・パートナーズは濫用的買収者か?

Toshiさんのブログ(7月11日 スティールは「乱用的」or「濫用的」?)や(7月14日 「濫用的買収者」って何だろう?)は東京高裁の決定文を読んだ上で書いておられるます。Toshiさんのブログによれば、東京高裁はスティール・パートナーズを濫用的買収者とし、「信義誠実の原則により・・・権利の濫用と認められる」とか「信義則上、濫用者と認められる」等の記載があるとのことです。

問題は濫用的買収者と判断したの基準ですが、決定文を読んで書いておられる他のブログを見ても明確な基準を示さなかったと私は感じています。その場合、裁判所の判断としては体を成していないと私は考えます。日本は法治国家であり、三権分立の国であると信じていました。法の解釈は政府が行うものではなく、裁判所が行うものである。裁判所は、法のどの部分の解釈により、あるいは商慣習等の慣習により判断するのであれば、それがどの様な慣習であるのかを説明した上で、決定を下すべきである。

トンデモ判決・決定ではないかと思っています。従い、決定文を読んだ上で、批判を書きたかったのですが、経産省馬鹿役人が輪を掛けたトンデモ発言をしたようで、黙ってはいられなくなった次第です。日本は、政府が法・裁判を取り仕切るような三権分立がない国家社会主義の国ではないはずです。「スティール・パートナーズが、これこれの発言をしているから従業員や取引先、消費者などとの関係を無視している。」と具体的事実をあげて発言したのなら、分かりますが、多分高裁決定のみでの発言と思うからです。

なお、東京高裁決定に関しては、NHKの報道は酷いと思いました。ろじゃあさんのブログ(7月10日 遅ればせながらブルドックの件:東京高裁抗告棄却)には、NHK速報版は「ひたすらみずからの利益のみを追求する乱用的買収者」と書いていたとのことです。修飾語がずいぶんついた上に濫用者が乱用者となっており、意味が違ってきます。

投資を含め広い意味で商取引は自由が原則です。しかし、自由のみではなく一定のルールや禁止事項があります。例えば、使用禁止食品添加物、独禁法に触れる不公正取引、ミートホープ牛肉への混入、JFE商事建材販売鋼材ニセ証明等してはならないことはたくさんあります。これらは、普通に考えれば多くの人が判断できることです。東京高裁の判断は、基準が明確になっていないように思え、基準が明確になっていないなら誰も判断ができず裁判所の独断になるからおかしいのです。

Toshiさんは、「会社法だけの問題ではなくて、民事訴訟法とか、要件事実論など、裁判制度の根幹に関わる問題点も内包している」と書いておられますが、私もそんな気がして、決定文を読まなくてはと考えています。

2) スティール・パートナーズの税金とブルドックソースの税金

一般の株主については、ブルドックソースの1株が4株に分割されたことと同じで、課税はなし。売却時に株式の売却益があれば課税と思います。(1株あたりの取得価額を購入時の1/4にします。)

スティール・パートナーズの税金はややこしいのですが、スティール・パートナーズとして投資をしているのは日本法人ではなく、非居住者もしくは外国法人であると思います。(有価証券報告書からするとGrand Caymanと思います。)そうであれば、非居住者もしくは外国法人の場合、株式売買益は、所得税法161条または法人税法138条の国内源泉所得に含まれず、課税されないと私は思います。

スティール・パートナーズは一般株主と異なり23億円の支払いをブルドックソースから受領します。この支払いは、何であるかですが、私は株主資本(資本金と剰余金)の払い戻しであると考えます。即ち、株式や新株予約権の売買ではない。

具体的には、2007年3月末のブルドックソースの株主資本は173億円ですが、このうち資本金は10億円、資本剰余金が26億円、利益剰余金が141億円です。自己株式が3億円あるため、これを減額して173億円です。スティール・パートナーズの保有株式を10.5%であるとすると資本金と資本剰余金の合計36億円の10.5%の3/4が資本金と資本剰余金の払い戻しで3億円弱が資本金と資本剰余金の払い戻しであり、払戻総額が23億円とするなら20億円が利益剰余金からの支払いであり、利益の配当と全く同じです。税法上は剰余金の配当として行われるわけではないので、「みなし」という言葉がつきますが。

20億円が見なし配当であれば、20%の4億円を税としてスティール・パートナーズは支払う(実際には源泉徴収)ことになります。一方、ブルドックソースですが、資本の払い戻しであれば、当然損金不算入です。23億円を特別損失として計上しようが関係ありません。財務諸表上どのように扱うかは、企業の考え方で異なる場合があると思います。しかし、税は不公平であってはならないのです。もし、ブルドックソースに損金算入を認めたならば株主との間で変な取引を繰り返して税金逃れをしてしまう悪徳がはびこると思います。

でも、どうしてこんな変な方法をブルドックソースの経営者は選んだのでしょうか?2/3の株主が支持してくれるなら、何も怖くなかったはずです。スティール・パートナーズのTOBなんて無視しておけば良かったのです。23億円も支払う必要は全くなかったのですから。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月14日 (土)

加ト吉のこれから

加ト吉が7月11日付で東京証券取引所と大阪証券取引所に「改善報告書」を提出しました。同一文章と思いますので、東京証券取引所に提出したを「改善報告書」をここにリンクを張っておきます。

上記の「報告書」は、東京証券取引所から「改善報告書」提出請求が6月27日にあったから(加ト吉の説明がここにあります。)ですが、このブログでは5月2日にエントリー 加ト吉循環取引に思うを書いたことから、加ト吉の改善報告書について少し書いてみます。

1) 基本的には5月2日のエントリーと変化なし

読んで、そう思いました。むしろ、5月2日からは2ヶ月以上も経過しているのであり、本当は改善があって良いはずが、ないと感じました。その間には、北海道加ト吉のミートホープの挽肉使用の牛肉コロッケ事件が明るみに出たり、むしろ消費者他関係者の見方はより厳しくなってきていると思っており、それを受けて、抜本的解決を掲げたかと思いましたが、残念ながら読めませんでした。

もう少し、具体的に次に書いていきます。

2) 加ト吉得意の帳合取引は継続

まさかと思いましたが、継続でした。調合取引とは名称からして変であると加ト吉循環取引に思うで書きましたが、次の図(改善報告書からのコピー)ような商社の取引です。

Katokitijunnkan

図の右の部分で加ト吉からりアーバンフーズへの販売について、サイト100日、2%→1.2%と書いてあります。私は、加ト吉がこんなビジネスをしなければならない理由が思いつかないのです。ビジネスとは、自社の存在価値があるから成立するはずです。中には、あまりなくても、過去の取引の経緯等から成立している場合もあるでしょうが、その様なビジネスはやがて無くなります。成立する場合として、相手から利用されている場合があります。

私だったら即刻中止するビジネスですが、「改善報告書」の10ページは次のように述べていました。

帳合取引の許容基準の厳格化
次の基準を逸脱する帳合取引は禁止します。

甘いと思います。だから、循環取引もミートホープ牛肉コロッケも全ては生じるべきして生じたと思います。冷凍食品等の主力商品に専念すべきと思います。

3) 加ト吉は無管理会社

次のような事項が「改善報告書」に書いてあります。

-帳合取引が実質上無管理状態で行われていたこと。
-帳合取引にとどまらず、取引に伴う債権債務や在庫増減についても表面的な管理に終始し、定期的な事後チェック
機能が働かなかったこと。
-管理機能を発揮するのに必要な業務システムと管理部門の陣容が脆弱であったこと。
-内部牽制による緊張感をもった運営が可能な組織体制となっていなかったこと。

管理体制がなかったと言っています。これでは、会社としての体を成していないと言えるでしょう。想像以上に重体であると思いました。自力再建は不可能ではないかと。何故なら、管理体制とはルールを作るだけではだめで、それを運用していく力が必要である。ところが、運用していく力は、上だけ変えてもだめで、組織そのものなんですが、無理におもえてしまいます。

4) 加ト吉のこれから

上記のような否定的なことばかり、言っていても始まらないですが、少なくとも加ト吉には他社に負けない冷凍食品を持っているのであり、その強みにより、どこまで再建できるかだと思います。そして不必要な部門を整理し、管理できる体制の会社にすべきと思います。

加ト吉のことを書いたのですが、本当は多くの会社が学ぶべきことがあると思います。リストラが企業の生きる道であるとして、リストラを懸命に進めてきた会社は多く、管理部門が一番リストラ対象になったと思います。管理を薄くすることは、リスクを高めることです。一方で、JSOXという声を聞いたら、金を使っても何とかしなくては考える経営者も沢山おられると思います。管理体制を整備する場合に、表面的な規則やマニュアルやITの整備にお金を使う。そうではなく、管理をする人材を育てることが一番の強みと思います。時間も金もかかります。しかし、とても大事なことと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 4日 (水)

ブルドックソースの買収防衛策

6月29日のエントリーブルドックソースの第1戦勝利において、「(webのどこかにあれば、教えてください。)」と書きましたことから、決定文がこの裁判所のWeb (pdf file)に掲載されていることを、ろじゃあさんブログで書いておられました。まだ、私も読めておらず、とりあえずその報告です。(このところ、ブログ更新を行うことすら、なかなかできておりません。)

1) 報道・ブログ関連

本日の次の日経NBOnlineに谷川博氏の書かれた記事がありました。

NBONline 7月4日 投資の自由は、侵されないのか ブルドック対スティールの係争が投げかける問題

私もブルドックソースが上場会社でないなら、名指しで特定の株主に株式保有制限を設けることについて、何ら問題はないと思うのです。しかし、上場会社の場合は、一般投資家が自由に株式売買を行えることを会社が保証することから上場会社となっているのであり、その制限を設けることが上場会社許されるかとの疑問はぬぐい去れないものがあります。このあたりは、会社法の問題ではなく、上場基準の問題であり、東証等の証券取引所の上場基準や金融証券取引法の問題として考えるべきであろうと思いますが。

つぎに、磯崎哲也さんのisologueです。

isologue July 4, 2007 ブルドックの買収防衛策の感想 - 「番犬にならないブルドック」

磯崎さんらしい分析をされておられますが、最後に結んでおられる次の文章です。これ、その通りであると私も思います。

自己資本が厚かったり、キャッシュや遊休資産がたんまりあったりする会社ばかりが買収をかけられるのであればいいですが、誰の目にもすごい技術はあるが、キャッシュも自己資本もないような会社は、今回のブルドックのような気前のいい防衛策を導入できませんので。

ブルドックソースはスティール・パートナーズに23億円を支払います。そして、そのお金は、ブルドックソースのお金です。私が、もしブルドックソースに勤めていたとしたら、せめてその何分の一かでもボーナスとして私に払ってくれないだろうかと思ったかも知れません。

2) 勝利者は誰か?

ブルドックソースは勝利者なのでしょうか?23億円の支払いを提案したブルドックソースの経営者は、提案通りに推移しており、勝利者であるのでしょうが、従業員や株主あるいはソースの消費者等関係者にとって、この結果が良かったのかは、単純ではないと思います。

一方、スティール・パートナーズは敗者でしょうか?この読売ウィークリーにある表には、スティール・パートナーズのブルドックソースの株式取得資金は18.2億円であったと記載されています。この読売ウィークリーが書かれた2007年4月1日直前のブルドックソースの株価による時価が27.3億円でした。スティール・パートナーズは、23億円を取得するわけですが、取得した株式も保有しているわけで、仮に新株予約権の大量発行によりブルドックソース株価が権利落ちをして1/4になるとしてもスティール・パートナーズは保有株を売却すれば約8億円を得るわけです。合計31億円です。そうすると、4月1日時点と比べて4億円ほど投資利益が増加したこととなります。もし、権利落ちの幅が小さければ、その分さらに投資利益は増加します。都合、13億円以上の投資利益をスティール・パートナーズはブルドックソース株式のディールで得ることになります。

スティール・パートナーズにとっては、株式売買と買収防衛策に関する法廷闘争を持ち込み、株主総会決議の意義や、プロキシー・ファイト(株主総会委任状争奪合戦)を関係者に再認識させ、日本の証券市場をスティール・パートナーズや外資ファンドにとって投資対象として価値あるものに変身させることに少しではあるが、成功しつつあるのかも知れないと思います。

日本の証券市場の変身は、実は重要なことと思います。改めてエントリーを起こしたいと思っていますが、円キャリートレードにより現在の円安為替レートが支えられている面があります。なぜ円キャリートレードになるのかは、円金利の低さ等様々な要因がありますが、日本に投資魅力がないこともあげられます。本当に日本に投資魅力があるなら、わざわざ為替リスクのある海外に投資する必要はないのですから。日本の証券市場を魅力ある市場にすること。その上で、ルールは最も重要なものです。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

« 2007年6月 | トップページ | 2007年8月 »