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2007年8月30日 (木)

奈良の妊婦救急車で搬送・流産

奈良県から妊婦を救急車で大阪府高槻市内の病院に搬送したが、流産という事態がありました。報道について、何が見えてくるか眺めてみます。

1) 各社報道

各社の報道をあげておきます。

毎日 8月29日13時11分 救急車事故:搬送中の妊婦流産 大阪
朝日 8月29日13時13分 妊婦乗せ、救急車事故 病院決まらず搬送2時間半 大阪
読売 8月29日14時3分 奈良→大阪9か所断られ、妊婦の搬送先決まらず流産
産経 8月29日15:17 奈良の妊婦 救急 9病院受け入れできず 高槻搬送中に事故、流産
NHK 8月29日 19時7分 妊婦流産 受け入れ態勢が不備 (NHKについては、リンク切れが早いので、続きを読むに入れておきました。)

2) 大淀病院と関連づけるべきか

奈良県で周産期医療サービスの体制が整っていないのは、多くの人が知っている事実であり、1)であげた記事では読売以外全て大淀病院事件のことに触れています。

実は、毎日新聞は妊娠20週の36歳の女性となっていますが、他は妊娠3ヶ月の36歳の女性となっています。(NHKは38歳ですが、NHK奈良のニュースは妊娠3ヶ月、36歳でした。)妊娠3ヶ月で腹痛と出血という事態になったなら、流産よりも他の恐ろしい可能性を考えなくてはならないと思います。妊娠3ヶ月で流産というのは、多くの産科医の方は驚かれたと聞いております。

次にこの女性は午前2時44分頃に、橿原市内のスーパーマーケットで買い物中に腹痛と出血となり、スーパーマーケットで救急車に乗せられたとのことです。そのような時間に買い物をせざるを得ない理由があるものと思います。そして、「かかりつけの医師はなく」と書いてあり、月経がなくなっていたが産科医を訪れていなかったと言うことと思います。だから3ヶ月との話が出てくるのではないか。

この事件は、境遇が通常の妊婦さんと少し違うのではないかと思いました。プライバシーを探る意図は全くありませんが、大淀病院事件とは異なった観点から見る必要があるのではと感じました。

NHKのニュースウオッチ9では、大淀病院事件で亡くなった実香さん(当時32)の夫高崎晋輔さんのインタビューまで流していました。事件の表面だけを見て、報道して良いのだろうかと疑問を持ちます。

3) 毎日新聞の記事の変遷

毎日新聞の当初ネット記事のタイトルは違っていました。11時48分にアップされた時は、「病院たらい回し:妊婦衝突事故後に流産 救急搬送中 大阪」というタイトルで病院たらい回しという言葉が入っていました。そして、この時の記事は、妊娠3ヶ月でした。

当初の毎日新聞記事のWeb魚拓がここにあります。

毎日新聞がどのように記事を変えていったか、実はここに変遷を記録された方がおられます。

ネットって面白いですね。一つの事件に関して様々な情報が得られます。

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2007年8月28日 (火)

寄付金を考える

PINEさんのブログで知ったのですが、8月24日大阪高裁で、赤い羽根共同募金などを自治会費に上乗せして強制的に徴収するとした決議は違法だとする判決がありました。朝日と読売の記事を掲げておきます。

朝日 8月25日 募金強制徴収は「違法」、住民が逆転勝訴 大阪高裁
読売 8月24日 募金、自治会費に上乗せ徴収は違法…大阪高裁が逆転判決

寄付とは、寄付行為を行う人が、自分の意志として行うものであり、当然の判決だと思うのですが、一審の大津地裁は強制徴収を認め、原告の請求を棄却していたのです。多分、自治会の総会で決議していたことから、大津地裁は棄却したのでしょうが、自治会の決議の強制力についても私は疑問を持つのですが、寄付金に関して少し書いてみます。

1) 寄付金とは

強制力があっては絶対ならないと思います。見返りがあるかどうかは不明だからです。税は、どこかでなにがしかの見返りが来ているものと思いますが、我々が法として決めたものですから、法に従い強制力が発生して当然です。寄付金は、強制力とは関係なしに、我々が自分の良心に従い拠出するものです。良心は、他人から一切の干渉を受けるものであってはならないと思います。寄付金に対する見返りは、出した人の心に返ってくるものと思うのです。

社会政策は本来政府が実施すべきものと考えますが、政府が万全であるはずがなく、個人の考えと一致するものでもなく、個人が自分の考えで自分のしたいことを実行するのは当然のことと思います。今後の日本社会の発展に寄付金はとても重要だと思います。

2) 税法上の寄付金控除

このニュースで気になったのが、自治会・町内会で寄付金を支出したら寄付金控除が受けられないではないかとの点です。ニュースによれば、赤い羽根共同募金や地元学校への寄付金です。赤い羽根共同募金は、各都道府県にある社会福祉法人の共同募金会が実施しており、地元学校への寄付も市町村への寄付であれば寄付金控除の対象となります。但し、寄付金控除を受けるためには、領収書が必要であり、自治会・町内会で寄付をする場合は、寄付を拠出した個人宛の領収書が発行されないから、寄付金控除は受けられなくなるのではと思ったのです。

なお、寄付金控除とは、所得税法第78条の規定であり、その第1項は次の通りです。

居住者が、各年において、特定寄付金を支出した場合において、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超えるときは、その超える金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

  その年中に支出した特定寄付金の額の合計額(当該合計額がその者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の四十に相当する金額を超える場合には、当該百分の四十に相当する金額)

  五千円

即ち、寄付金の年間支出額が所得の40%以内であれば、(寄付金額-5千円)が所得金額から減算されることとなり、年間の寄付金合計が10万円の場合は、9.5万円X税率ですから20%の税率であれば1.9万円所得税が安くなります。得をしたように思えますが、ボランティア活動をしたために10万円収入が少なくなったとしたら、収入減少に対しては税がかかってこないのであり、ボランティア活動の代わりに現金を支出したと考えれば、寄付金控除は当然のことと思います。

所得税法には特定寄付金と書いてあるのですが、それは次のような相手先に対する寄付金です。

  • 国又は地方公共団体に対する寄付金
  • 財務大臣が指定したもの(赤い羽根共同募金等が該当し、昭和40年大蔵省(現財務省)告示第154号第4号による財務大臣の承認を受けた寄附金であると理解します。)
  • 特定公益増進法人に対する寄付金(ここにそのリストが探せます。例えば、日本ユニセフ協会は、ここに入っています。)
  • 認定NPO法人に対する寄付金(関係する税法には、租税特別措置法41条の19と66条の11の2があります。)
  • 3) 地方税では

    7月23日のエントリー 税と年金で所得税と地方税で本当に減税・増税同額であるのかと疑問を書いたのですが、地方税増税でまたごまかされてしまったようです。地方税の所得控除は、地方税34条1項5号の4に規定されており、次の条文です。

    前年中に次に掲げる寄附金を支出し、その支出した寄附金の額の合計額(当該合計額が前年の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の100分の25に相当する金額を超える場合には、当該100分の25に相当する金額)が十万円を超える所得割の納税義務者 その超える金額

     都道府県、市町村又は特別区に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)

     社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第113条第2項 に規定する共同募金会(その主たる事務所を当該所得割の納税義務者に係る賦課期日現在における住所所在の道府県内に有するものに限る。)に対する寄附金又は日本赤十字社に対する寄附金(当該所得割の納税義務者に係る賦課期日現在における住所所在の道府県内に事務所を有する日本赤十字社の支部において収納されたものに限る。)で、政令で定めるもの

    10万円を越えなければならず、上限も所得の25%であり、しかも寄付金支出する相手先は市町村と赤い羽根共同募金だけであり、悲しくなってしまいます。豊かな社会を実現する勇気をそぐのが今の政治なのかなと思ってしまいます。地方税も寄付金支出に対して税を戻すのが当然の話だと私は思います。

    4) 蛇足

    ボランティア活動が盛んで、皆が自ら様々な活動に参加し、寄付金を拠出して豊かな社会を、これからは作っていくと思っていました。しかし、世の中はそんなに甘くはないと思わされましたが、本日の朝日 8月28日 「将来不安、3時間しか眠れず」 ネットカフェ難民朝日 8月28日 ネットカフェ難民5400人 4分の1が20代 厚労省を見ました。ネットカフェ難民って増えているようですね。「セーフティーネットの拡充」とか「美しい国」とか言った人がいましたが、ネットカフェ難民のことだったんだとやっと分かりました。

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    2007年8月26日 (日)

    米住宅ローン会社をめぐる動き

    NIKKEI NETでは、次のような記事がありました。

    Nikkei Net 8月23日 米住宅ローン会社、破綻・解雇相次ぐ

    このような中で、興味を持ったのが次に記事の住宅ローン会社Countrywideに関する関連です。

    Nikkei Net8月24日 カントリーワイドCEO、「住宅減速で米景気後退に」

    何に興味をそそられたかは、この記事では余り書かれていませんが、Bank of Americaによる20億ドル(約2300億円)の出資に対して発行される優先株です。

    1) 優先株の内容

    それぞれCountrywideの8月22日プレスリリースBank of Americaの8月22日プレスリリースがありますが、このEDGARにあったForm 8-Kが私の見た範囲では一番詳しいものでした。

    Form 8-Kを読むと次の様なことが書いてあります。

  • 無議決権の優先株20億ドルは、年4回優先配当として各回3625万ドル(年率で7.25%)の配当が支払われる。
  • 優先配当は累積式であり、配当がなかった場合は、次回の配当に繰越し、次回と合計される。
  • 6回以上無配当が継続した場合には、Bank of America(またはその権利譲受人)は、取締役2名の選任権を配当が2回連続となるまで保有する。(Countrywideは委員会設置会社で、10人の取締役が存在します。
  • Countrywideが万一破産、倒産等により清算となった場合には、Bank of Americaは普通株式及びその他の種類株式に優先して清算配当および財産分与を受ける。
  • 優先株は、18ドルを1株として普通株に転換可能(転換価格調整条項あり。)。転換した場合、転換後18ヶ月間はその株式を子会社等を除き譲渡できない。
  • 上記に加え、Bank of AmericaにとってはCountrywideを子会社化に向けて動くことが他社(CITI他の大手米銀)より優位に立ったと言えます。このWall Street Journal 8月24日によれば、CountrywideのChief Executive OfficerであるAngelo Moziloは、「企業結合の計画はないが、住宅ローンについての提携を進めていくことにはなる。(Mr. Mozilo said in an interview late Wednesday that the two companies had no plan to merge but would pursue possible collaboration in the mortgage business.)」と語っています。

    2) 優先株による会社再建

    興味をそそられたのは、優先株による会社再建です。日本で、同じことをやるとどうなるのだろうかと思いました。大手銀行の政府による支援は優先株で行いましたが、民間再建スポンサーが表れた場合、旧株主の株については減資消却なり(取得条件付き株式にするような手法も含め)を行って、新規スポンサーが新しい株主になり新しい取締役を任命してとなるのだろうなと思いました。

    勿論、そんな王道的な方法も勿論あって良いのですが、優先株をうまく使って再建なんてことも取り得るのではないかと思いました。

    3) Countrywide株価

    次のYahoo株価チャートを見ると、20ドル強の感じでこれから推移していくのでしょうか?よくは分かりませんが、相当な金額のキャッシュが会社に入ったわけで、簡単に破綻に至ることはないと思います。

    Cfcstockchart0708

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    2007年8月17日 (金)

    日本国憲法

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    今年の終戦の日は過ぎ去りました。戦争で亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、戦争の結果得られた平和と人権を大切に守っていくことが重要と再認識いたします。

    日本国憲法の改正案は、1946(昭和21)年6月25日に帝国議会に上程され、約4か月にわたる両議院の審議を経て、10月6日衆議院において可決され、その後、枢密院に再諮詢され、10月29日可決後、天皇による上奏裁可を経て、11月3日「日本国憲法」として公布されました。そして、その施行日が公布から6ヶ月目の1947年5月3日の憲法記念日です。(ちなみに、公布の官報号外がこれです。)

    日本国憲法の草案はGHQが作成し、1946年2月13日に日本政府に提示したのですが、この1946年2月13日GHQ草案から、日本人がどのように現在の日本国憲法を作成していったかのかを見るために以下の比較表を作成しました。GHQ草案は、当初の文語体訳であり、なれていないと読みつらい面もありますが、当時の人たちはこの文章で議論をしたはずです。

    これを見ると第9条もGHQ草案から少し変わっていることが分かります。また、GHQ草案になかった11条、17条、30条、40条等の追加が見受けられます。また、一院制であったGHQ草案の国会を、二院制に自主的に変更しています。出来れば、ゆっくりと読んでみてください。戦争からの復興と将来の日本を見据えて当時の人たちが日本国憲法をどのように作っていったのか、なんとなく分かる気が私にはしました。

    1946年2月13日GHQ草案は、この国会図書館のサイトにありました。

    日本国憲法 1946年2月13日GHQ草案
    前文 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。  日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。  われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。  日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。 前文 我等日本国人民ハ、国民議会ニ於ケル正当ニ選挙セラレタル我等ノ代表者ヲ通シテ行動シ、我等自身及我等ノ子孫ノ為ニ諸国民トノ平和的協力及此ノ国全土ニ及フ自由ノ祝福ノ成果ヲ確保スヘク決心シ、且政府ノ行為ニ依リ再ヒ戦争ノ恐威ニ訪レラレサルヘク決意シ、茲ニ人民ノ意思ノ主権ヲ宣言シ、国政ハ其ノ権能ハ人民ヨリ承ケ其ノ権力ハ人民ノ代表者ニ依リ行使セラレ而シテ其ノ利益ハ人民ニ依リ享有セラルトノ普遍的原則ノ上ニ立ツ此ノ憲法ヲ制定確立ス、而シテ我等ハ此ノ憲法ト抵触スル一切ノ憲法、命令、法律及詔勅ヲ排斥及廃止ス我等ハ永世ニ亘リ平和ヲ希求シ且今ヤ人類ヲ揺リ動カシツツアル人間関係支配ノ高貴ナル理念ヲ満全ニ自覚シテ、我等ノ安全及生存ヲ維持スル為世界ノ平和愛好諸国民ノ正義ト信義トニ依倚センコトニ意ヲ固メタリ、我等ハ平和ノ維持並ニ横暴、奴隷、圧制及無慈悲ヲ永遠ニ地上ヨリ追放スルコトヲ主義方針トスル国際社会内ニ名誉ノ地位ヲ占メンコトヲ欲求ス、我等ハ万国民等シク恐怖ト欠乏ニ虐ケラルル憂ナク平和ノ裏ニ生存スル権利ヲ有スルコトヲ承認シ且之ヲ表白ス我等ハ如何ナル国民モ単ニ自己ニ対シテノミ責任ヲ有スルニアラスシテ政治道徳ノ法則ハ普遍的ナリト信ス、而シテ斯ノ如キ法則ヲ遵奉スルコトハ自己ノ主権ヲ維持シ他国民トノ主権ニ基ク関係ヲ正義付ケントスル諸国民ノ義務ナリト信ス我等日本国人民ハ此等ノ尊貴ナル主義及目的ヲ我等ノ国民的名誉、決意及総力ニ懸ケテ誓フモノナリ
    第一章 天皇 第一章 皇帝
    第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 第一条 皇帝ハ国家ノ象徴ニシテ又人民ノ統一ノ象徴タルヘシ彼ハ其ノ地位ヲ人民ノ主権意思ヨリ承ケ之ヲ他ノ如何ナル源泉ヨリモ承ケス
    第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 第二条 皇位ノ継承ハ世襲ニシテ国会ノ制定スル皇室典範ニ依ルヘシ
    第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 第三条 国事ニ関スル皇帝ノ一切ノ行為ニハ内閣ノ輔弼及協賛ヲ要ス而シテ内閣ハ之カ責任ヲ負フヘシ
    皇帝ハ此ノ憲法ノ規定スル国家ノ機能ヲノミ行フヘシ彼ハ政治上ノ権限ヲ有セス又之ヲ把握シ又ハ賦与セラルルコト無カルヘシ皇帝ハ其ノ機能ヲ法律ノ定ムル所ニ従ヒ委任スルコトヲ得
    第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
    ② 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
    第五条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。 第四条 国会ノ制定スル皇室典範ノ規定ニ従ヒ摂政ヲ置クトキハ皇帝ノ責務ハ摂政之ヲ皇帝ノ名ニ於テ行フヘシ而シテ此ノ憲法ニ定ムル所ノ皇帝ノ機能ニ対スル制限ハ摂政ニ対シ等シク適用セラルヘシ
    第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
    ② 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
    第五条 皇帝ハ国会ノ指名スル者ヲ総理大臣ニ任命ス
    第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
      一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
      二 国会を召集すること。
      三 衆議院を解散すること。
      四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
      五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
      六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
      七 栄典を授与すること。
      八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
      九 外国の大使及び公使を接受すること。
      十 儀式を行ふこと。
    第六条 皇帝ハ内閣ノ輔弼及協賛ニ依リテノミ行動シ人民ニ代リテ国家ノ左ノ機能ヲ行フヘシ即国会ノ制定スル一切ノ法律、一切ノ内閣命令、此ノ憲法ノ一切ノ改正並ニ一切ノ条約及国際規約ニ皇璽を欽シテ之ヲ公布ス
    国会ヲ召集ス
    国会ヲ解散ス
    総選挙ヲ命ス
    国務大臣、大使及其ノ他国家ノ官吏ニシテ法律ノ規定ニ依リ其ノ任命又ハ嘱託及辞職又ハ免職カ此ノ方法ニテ公証セラルヘキモノノ任命又ハ嘱託及辞職又ハ免職ヲ公証ス
    大赦、恩赦、減刑、執行猶予及復権ヲ公証ス
    栄誉ヲ授与ス
    外国ノ大使及公使ヲ受ク
    適当ナル式典ヲ執行ス
    第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。 第七条 国会ノ許諾ナクシテハ皇位ニ金銭又ハ其ノ他ノ財産ヲ授与スルコトヲ得ス又皇位ハ何等ノ支出ヲ為スコトヲ得ス
    第二章 戦争の放棄 第二章 戦争ノ廃棄
    第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
    ② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
    第八条 国民ノ一主権トシテノ戦争ハ之ヲ廃止ス他ノ国民トノ紛争解決ノ手段トシテノ武力ノ威嚇又ハ使用ハ永久ニ之ヲ廃棄ス
    陸軍、海軍、空軍又ハ其ノ他ノ戦力ハ決シテ許諾セラルルコト無カルヘク又交戦状態ノ権利ハ決シテ国家ニ授与セラルルコト無カルヘシ
    第三章 国民の権利及び義務 第三章 人民ノ権利及義務
    第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
    第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 第九条 日本国ノ人民ハ何等ノ干渉ヲ受クルコト無ク一切ノ基本的人権ヲ享有スル権利ヲ有ス
    第十条 此ノ憲法ニ依リ日本国ノ人民ニ保障セラルル基本的人権ハ人類ノ自由タラントスル積年ノ闘争ノ結果ナリ時ト経験ノ坩堝ノ中ニ於テ永続性ニ対スル厳酷ナル試練ニ克ク耐ヘタルモノニシテ永世不可侵トシテ現在及将来ノ人民ニ神聖ナル委託ヲ以テ賦与セラルルモノナリ
    第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。 第十一条 此ノ憲法ニ依リ宣言セラルル自由、権利及機会ハ人民ノ不断ノ監視ニ依リ確保セラルルモノニシテ人民ハ其ノ濫用ヲ防キ常ニ之ヲ共同ノ福祉ノ為ニ行使スル義務ヲ有ス
    第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 第十二条 日本国ノ封建制度ハ終止スヘシ一切ノ日本人ハ其ノ人類タルコトニ依リ個人トシテ尊敬セラルヘシ一般ノ福祉ノ限度内ニ於テ生命、自由及幸福探求ニ対スル其ノ権利ハ一切ノ法律及一切ノ政治的行為ノ至上考慮タルヘシ
    第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

    ② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

    ③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

    第十三条 一切ノ自然人ハ法律上平等ナリ政治的、経済的又ハ社会的関係ニ於テ人種、信条、性別、社会的身分、階級又ハ国籍起源ノ如何ニ依リ如何ナル差別的待遇モ許容又ハ黙認セラルルコト無カルヘシ
    爾今以後何人モ貴族タルノ故ヲ以テ国又ハ地方ノ如何ナル政治的権力ヲモ有スルコト無カルヘシ
    皇族ヲ除クノ外貴族ノ権利ハ現存ノ者ノ生存中ヲ限リ之ヲ廃止ス
    栄誉、勲章又ハ其ノ他ノ優遇ノ授与ニハ何等ノ特権モ附随セサルヘシ又右ノ授与ハ現ニ之ヲ有スル又ハ将来之ヲ受クル個人ノ生存中ヲ限リ其ノ効力ヲ失フヘシ
    第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
    ② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
    ③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
    ④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
    第十四条 人民ハ其ノ政府及皇位ノ終局的決定者ナリ彼等ハ其ノ公務員ヲ選定及罷免スル不可譲ノ権利ヲ有ス
    一切ノ公務員ハ全社会ノ奴僕ニシテ如何ナル団体ノ奴僕ニモアラス
    有ラユル選挙ニ於テ投票ノ秘密ハ不可侵ニ保タルヘシ選挙人ハ其ノ選択ニ関シ公的ニモ私的ニモ責ヲ問ハルルコト無カルヘシ
    第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。 第十五条 何人モ損害ノ救済、公務員ノ罷免及法律、命令又ハ規則ノ制定、廃止又ハ改正ニ関シ平穏ニ請願ヲ為ス権利ヲ有ス又何人モ右ノ如キ請願ヲ主唱シタルコトノ為ニ如何ナル差別的待遇ヲモ受クルコト無カルヘシ
    第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
    第十六条 外国人ハ平等ニ法律ノ保護ヲ受クル権利ヲ有ス
    第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。 第十七条 何人モ奴隷、農奴又ハ如何ナル種類ノ奴隷役務ニ服セシメラルルコト無カルヘシ犯罪ノ為ノ処罰ヲ除クノ外本人ノ意思ニ反スル服役ハ之ヲ禁ス
    第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 第十八条 思想及良心ノ自由ハ不可侵タルヘシ
    第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
    ② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
    ③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
    第十九条 宗教ノ自由ハ何人ニモ保障セラル如何ナル宗教団体モ国家ヨリ特別ノ特権ヲ受クルコト無カルヘク又政治上ノ権限ヲ行使スルコト無カルヘシ
    何人モ宗教的ノ行為、祝典、式典又ハ行事ニ参加スルコトヲ強制セラレサルヘシ
    国家及其ノ機関ハ宗教教育又ハ其ノ他如何ナル宗教的活動ヲモ為スヘカラス
    第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
    ② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
    第二十条 集会、言論及定期刊行物並ニ其ノ他一切ノ表現形式ノ自由ヲ保障ス検閲ハ之ヲ禁シ通信手段ノ秘密ハ之ヲ犯ス可カラス
    第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
    ② 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
    第二十一条 結社、運動及住居選定ノ自由ハ一般ノ福祉ト抵触セサル範囲内ニ於テ何人ニモ之ヲ保障ス
    何人モ外国ニ移住シ又ハ国籍ヲ変更スル自由ヲ有ス
    第二十三条 学問の自由は、これを保障する。 第二十二条 学究上ノ自由及職業ノ選択ハ之ヲ保障ス
    第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

    ② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

    第二十三条 家族ハ人類社会ノ基底ニシテ其ノ伝統ハ善カレ悪シカレ国民ニ滲透ス婚姻ハ男女両性ノ法律上及社会上ノ争フ可カラサル平等ノ上ニ存シ両親ノ強要ノ代リニ相互同意ノ上ニ基礎ツケラレ且男性支配ノ代リニ協力ニ依リ維持セラルヘシ此等ノ原則ニ反スル諸法律ハ廃止セラレ配偶ノ選択、財産権、相続、住所ノ選定、離婚並ニ婚姻及家族ニ関スル其ノ他ノ事項ヲ個人ノ威厳及両性ノ本質ニ立脚スル他ノ法律ヲ以テ之ニ代フヘシ
    第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
    ② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
    第二十四条 有ラユル生活範囲ニ於テ法律ハ社会的福祉、自由、正義及民主主義ノ向上発展ノ為ニ立案セラルヘシ
    自由、普遍的且強制的ナル教育ヲ設立スヘシ
    児童ノ私利的酷使ハ之ヲ禁止スヘシ
    公共衛生ヲ改善スヘシ
    社会的安寧ヲ計ルヘシ
    労働条件、賃銀及勤務時間ノ規準ヲ定ムヘシ
    第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
    ② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
    第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
    ② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
    ③ 児童は、これを酷使してはならない。
    第二十五条 何人モ働ク権利ヲ有ス
    第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。 第二十六条 労働者カ団結、商議及集団行為ヲ為ス権利ハ之ヲ保障ス
    第二十九条

    財産権は、これを侵してはならない。

    ② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

    ③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

    第二十七条 財産ヲ所有スル権利ハ不可侵ナリ然レトモ財産権ハ公共ノ福祉ニ従ヒ法律ニ依リ定義セラルヘシ
    第二十八条 土地及一切ノ天然資源ノ究極的所有権ハ人民ノ集団的代表者トシテノ国家ニ帰属ス
    国家ハ土地又ハ其ノ他ノ天然資源ヲ其ノ保存、開発、利用又ハ管理ヲ確保又ハ改善スル為ニ公正ナル補償ヲ払ヒテ収用スルコトヲ得
    第二十九条 財産ヲ所有スル者ハ義務ヲ負フ其ノ使用ハ公共ノ利益ノ為タルヘシ国家ハ公正ナル補償ヲ払ヒテ私有財産ヲ公共ノ利益ノ為ニ収用スルコトヲ得
    第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
    第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 第三十二条 何人モ国会ノ定ムル手続ニ依ルニアラサレハ其ノ生命若ハ自由ヲ奪ハレ又ハ刑罰ヲ科セラルルコト無カルヘシ又何人モ裁判所ニ上訴ヲ提起スル権利ヲ奪ハルコト無カルヘシ
    第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
    第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 第三十条 何人モ裁判所ノ当該官吏カ発給シ訴追ノ理由タル犯罪ヲ明示セル逮捕状ニ依ルニアラスシテ逮捕セラルルコト無カルヘシ但シ犯罪ノ実行中ニ逮捕セラルル場合ハ此ノ限ニ存ラス
    第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。 第三十一条 何人モ訴追ノ趣旨ヲ直チニ告ケラルルコト無ク又ハ直チニ弁護人ヲ依頼スル特権ヲ与ヘラルルコト無クシテ逮捕又ハ拘留セラレサルヘシ何人モ監禁セラルルコト無カルヘシ何人モ適当ナル理由無クシテ拘留セラレサルヘシ要求アルトキハ右理由ハ公開廷ニテ本人及其ノ弁護人ノ面前ニ於テ直チニ開示セラルヘシ
    第三十五条

    何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
    ② 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

    第三十三条 人民カ其ノ身体、家庭、書類及所持品ニ対シ侵入、捜索及押収ヨリ保障セラルル権利ハ相当ノ理由ニ基キテノミ発給セラレ殊ニ捜索セラルヘキ場所及拘禁又ハ押収セラルヘキ人又ハ物ヲ表示セル司法逮捕状ニ依ルニアラスシテ害セラルルコト無カルヘシ
    各捜索又ハ拘禁若ハ押収ハ裁判所ノ当該官吏ノ発給セル格別ノ逮捕状ニ依リ行ハルヘシ
    第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。 第三十四条 公務員ニ依ル拷問ハ絶対ニ之ヲ禁ス
    第三十五条 過大ナル保釈金ヲ要求スヘカラス又残虐若ハ異常ナル刑罰ヲ科スヘカラス
    第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
    ② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
    ③ 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
    第三十六条 一切ノ刑事訴訟事件ニ於テ被告人ハ公平ナル裁判所ノ迅速ナル公判ヲ受クル権利ヲ享有スヘシ
    刑事被告人ハ一切ノ証人ヲ反対訊問スル有ラユル機会ヲ与ヘラルヘク又自己ノ為ノ証人ヲ公費ヲ以テ獲得スル強制的手続ニ対スル権利ヲ有スヘシ
    被告人ハ常ニ資格アル弁護人ヲ依頼シ得ヘク若シ自己ノ努力ニ依リ弁護人ヲ得ル能ハサルトキハ政府ニ依リ弁護人ヲ附添セラルヘシ
    第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
    ② 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
    ③ 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
    第三十八条 何人モ自己ニ不利益ナル証言ヲ為スコトヲ強要セラレサルヘシ
    自白ハ強制、拷問若ハ脅迫ノ下ニ為サレ又ハ長期ニ亘ル逮捕若ハ拘留ノ後ニ為サレタルトキハ証拠トシテ許容セラレサルヘシ
    何人モ其ノ為ニ不利益ナル唯一ノ証拠カ其ノ自白ナル場合ニハ有罪ト決定又ハ処罰セラレサルヘシ
    第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。 第三十九条 何人モ実行ノ時ニ於テ合法ナリシ行為ニ因リ刑罰ヲ科セラルルコト無カルヘシ
    第三十七条 何人モ管轄権有ル裁判所ニ依ルニアラサレハ有罪ト宣言セラルルコト無カルヘシ
    何人モ同一ノ犯罪ニ因リ再度厄ニ遭フコト無カルヘシ
    第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
    第四章 国会 第四章 国会
    第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。 第四十条 国会ハ国家ノ権力ノ最高ノ機関ニシテ国家ノ唯一ノ法律制定機関タルヘシ
    第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。 第四十一条 国会ハ三百人ヨリ少カラス五百人ヲ超エサル選挙セラレタル議員ヨリ成ル単一ノ院ヲ以テ構成ス
    第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
    ② 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
    第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。 第四十二条 選挙人及国会議員候補者ノ資格ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ而シテ右資格ヲ定ムルニ当リテハ性別、人種、信条、皮膚色又ハ社会上ノ身分ニ因リ何等ノ差別ヲ為スヲ得ス
    第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。 第四十五条 国会議員ノ任期ハ四年トス然レトモ此ノ憲法ノ規定スル国会解散ニ因リ満期以前ニ終了スルコトヲ得
    第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
    第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。 第四十六条 選挙、任命及投票ノ方法ハ法律ニ依リ之ヲ定ムヘシ
    第四十八条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
    第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。 第四十三条 国会議員ハ国庫ヨリ法律ノ定ムル適当ノ報酬ヲ受クヘシ
    第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。 第四十四条 国会議員ハ法律ノ規定スル場合ヲ除クノ外如何ナル場合ニ於テモ国会ノ議事ニ出席中又ハ之ニ出席スル為ノ往復ノ途中ニ於テ逮捕セラルルコト無カルヘク又国会ニ於ケル演説、討論又ハ投票ニ因リ国会以外ニ於テ法律上ノ責ヲ問ハルルコト無カルヘシ
    第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
    第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。 第四十七条 国会ハ少クトモ毎年一囘之ヲ召集スヘシ
    第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない 第四十八条 内閣ハ臨時議会ヲ召集スルコトヲ得国会議員ノ二割ヨリ少カラサル者ノ請願アリタルトキハ之ヲ召集スルコトヲ要ス
    第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
    ② 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
    ③ 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
    第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。 第四十九条 国会ハ選挙及議員ノ資格ノ唯一ノ裁決者タルヘシ当選ノ証明ヲ有スルモ其ノ効力ニ疑アル者ノ当選ヲ拒否セントスルトキハ出席議員ノ多数決ニ依ルヲ要ス
    第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
    ② 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
    第五十条 議事ヲ行フニ必要ナル定足数ハ議員全員ノ三分ノ一ヨリ少カラサル数トス此ノ憲法ニ規定スル場合ヲ除クノ外国会ノ行為ハ凡ヘテ出席議員ノ多数決ニ依ルヘシ可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
    第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
    ② 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
    ③ 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
    第五十三条 国会ノ議事ハ之ヲ公開スヘク秘密会議ハ之ヲ開クコトヲ得ス国会ハ其ノ議事ノ記録ヲ保存シ且発表スヘク一般公衆ハ此ノ記録ヲ入手シ得ヘシ出席議員二割ノ要求アルトキハ議題ニ対スル各議員ノ賛否ヲ議事録ニ記載スヘシ
    第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
    ② 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
    第五十一条 国会ハ議長及其ノ他役員ヲ選定スヘシ国会ハ議事規則ヲ定メ並ニ議員ヲ無秩序ナル行動ニ因リ処罰及除名スルコトヲ得議員除名ノ動議有リタル場合ニ之ヲ実行セントスルトキハ出席議員ノ三分ノ二ヨリ少カラサル者ノ賛成ヲ要ス
    第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
    ② 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
    ③ 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
    ④ 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
    第五十二条 法律ハ法律案ニ依ルニアラサレハ之ヲ議決スルコトヲ得ス
    第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
    ② 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
    第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
    第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。 第五十四条 国会ハ調査ヲ行ヒ証人ノ出頭及証言供述並ニ記録ノ提出ヲ強制シ且之ニ応セサル者ヲ処罰スル権限ヲ有スヘシ
    第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。 第五十六条 総理大臣及国務大臣ハ国会ニ議席ヲ有スルト否トヲ問ハス何時ニテモ法律案ヲ提出シ討論スル目的ヲ以テ出席スルコトヲ得質問ニ答弁スルコトヲ要求セラレタルトキハ出席スヘシ
    第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
    ② 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
    第五十八条 国会ハ忌避訴訟ノ被告タル司法官ヲ裁判スル為議員中ヨリ弾劾裁判所ヲ構成スヘシ
    第五章 内閣 第五章 内閣
    第六十五条 行政権は、内閣に属する。 第六十条 行政権ハ内閣ニ帰属ス
    第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
    ② 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
    ③ 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
    第六十一条 内閣ハ其ノ首長タル総理大臣及国会ニ依リ授権セラルル其ノ他ノ国務大臣ヲ以テ構成ス
    内閣ハ行政権ノ執行ニ当リ国会ニ対シ集団的ニ責任ヲ負フ
    第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
    ② 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
    第五十五条 国会ハ出席議員ノ多数決ヲ以テ総理大臣ヲ指定スヘシ総理大臣ノ指定ハ国会ノ他ノ一切ノ事務ニ優先シテ行ハルヘシ
    国会ハ諸般ノ国務大臣ヲ設定スヘシ
    第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
    ② 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
    第六十二条 総理大臣ハ国会ノ輔弼及協賛ヲ以テ国務大臣ヲ任命スヘシ
    総理大臣ハ個々ノ国務大臣ヲ任意ニ罷免スルコトヲ得
    第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。 第五十七条 内閣ハ国会カ全議員ノ多数決ヲ以テ不信任案ノ決議ヲ通過シタル後又ハ信任案ヲ通過セサリシ後十日以内ニ辞職シ又ハ国会ニ解散を命スヘシ国会カ解散ヲ命セラレタルトキハ解散ノ日ヨリ三十日ヨリ少カラス四十日ヲ超エサル期間内ニ特別選挙ヲ行フヘシ新タニ選挙セラレタル国会ハ選挙ノ日ヨリ三十日以内ニ之ヲ召集スヘシ
    第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。 第六十三条 総理大臣欠員ト為リタルトキ又ハ新国会ヲ召集スルトキハ内閣ハ総辞職ヲ為スヘク新総理大臣指名セラルヘシ
    右指名アルマテハ内閣ハ其ノ責務ヲ行フヘシ
    第七十一条 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
    第七十二条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。 第六十四条 総理大臣ハ内閣ニ代リテ法律案ヲ提出シ一般国務及外交関係ヲ国会ニ報告シ並ニ行政府ノ各部及各支部ノ指揮及監督ヲ行フ
    第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
      一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
      二 外交関係を処理すること。
      三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
      四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
      五 予算を作成して国会に提出すること。
      六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
      七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
    第六十五条 内閣ハ他ノ行政的責任ノホカ
    法律ヲ忠実ニ執行シ国務ヲ管理スヘシ
    外交関係ヲ処理スヘシ
    公共ノ利益ト認ムル条約、国際規約及協定ヲ事前ノ授権又ハ事後ノ追認ニ依ル国会ノ協賛ヲ以テ締結スヘシ
    国会ノ定ムル規準ニ従ヒ内政事務ヲ処理スヘシ
    年次予算ヲ作成シテ之ヲ国会ニ提出スヘシ
    此ノ憲法及法律ノ規定ヲ実行スル為命令及規則ヲ発スヘシ然レトモ右命令又ハ規則ハ刑罰規定ヲ包含スヘカラス
    大赦、恩赦、減刑、執行猶予及復権ヲ賦与スヘシ
    第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。 第六十六条 一切ノ国会制定法及行政命令ハ当該国務大臣之ニ署名シ総理大臣之ニ副署スヘシ
    第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。 第六十七条 内閣大臣ハ総理大臣ノ承諾無クシテ在任中訴追セラルルコト無カルヘシ然レトモ此ノ理由ニ因リ如何ナル訴権モ害セラルルコトナシ
    第六章 司法 第六章 司法
    第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
    ② 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
    ③ すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
    第六十八条 強力ニシテ独立ナル司法府ハ人民ノ権利ノ堡塁ニシテ全司法権ハ最高法院及国会ノ随時設置スル下級裁判所ニ帰属ス
    特別裁判所ハ之ヲ設置スヘカラス又行政府ノ如何ナル機関又ハ支部ニモ最終的司法権ヲ賦与スヘカラス
    判事ハ凡ヘテ其ノ良心ノ行使ニ於テ独立タルヘク此ノ憲法及其レニ基キ制定セラルル法律ニノミ拘束セラルヘシ
    第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
    ② 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
    ③ 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
    第六十九条 最高法院ハ規則制定権ヲ有シ其レニ依リ訴訟手続規則、弁護士ノ資格、裁判所ノ内部規律、司法行政並ニ司法権ノ自由ナル行使ニ関係アル其ノ他ノ事項ヲ定ム検事ハ裁判所ノ職員ニシテ裁判所ノ規則制定権ニ服スヘシ最高法院ハ下級裁判所ノ規則ヲ制定スル権限ヲ下級裁判所ニ委任スルコトヲ得
    第七十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。 第七十条 判事ハ公開ノ弾劾ニ依リテノミ罷免スルコトヲ得行政機関又ハ支部ニ依リ懲戒処分ニ附セラルルコト無カルヘシ
    第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
    ② 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
    ③ 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
    ④ 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
    ⑤ 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
    ⑥ 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
    第七十一条 最高法院ハ首席判事及国会ノ定ムル員数ノ普通判事ヲ以テ構成ス右判事ハ凡ヘテ内閣ニ依リ任命セラレ不都合ノ所為無キ限リ満七十歳ニ到ルマテ其ノ職ヲ免セラルルコト無カルヘシ但シ右任命ハ凡ヘテ任命後最初ノ総選挙ニ於テ、爾後ハ次ノ先位確認後十暦年経過直後行ハルル総選挙ニ於テ、審査セラルヘシ若シ選挙民カ判事ノ罷免ヲ多数決ヲ以テ議決シタルトキハ右判事ノ職ハ欠員ト為ルヘシ右ノ如キ判事ハ凡ヘテ定期ニ適当ノ報酬ヲ受クヘシ報酬ハ任期中減額セラルルコト無カルヘシ
    第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
    ② 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
    第七十二条 下級裁判所ノ判事ハ各欠員ニ付最高法院ノ指名スル少クトモ二人以上ノ候補者ノ氏名ヲ包含スル表ノ中ヨリ内閣之ヲ任命スヘシ右判事ハ凡ヘテ十年ノ任期ヲ有スヘク再任ノ特権ヲ有シ定期ニ適当ノ報酬ヲ受クヘシ報酬ハ任期中減額セラルルコト無カルヘシ判事ハ満七十歳ニ達シタルトキハ退職スヘシ
    第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。 第七十三条

    最高法院ハ最終裁判所ナリ法律、命令、規則又ハ官憲ノ行為ノ憲法上合法ナリヤ否ヤノ決定カ問題ト為リタルトキハ憲法第三章ニ基ク又ハ関聯スル有ラユル場合ニ於テハ最高法院ノ判決ヲ以テ最終トス法律、命令、規則又ハ官憲ノ行為ノ憲法上合法ナリヤ否ヤノ決定カ問題ト為リタル其ノ他ノ有ラユル場合ニ於テ国会最高法院ノ判決ヲ再審スルコトヲ得
    再審ニ附スルコトヲ得ル最高法院ノ判決ハ国会議員全員ノ三分ノ二ノ賛成ヲ以テノミ之ヲ破棄スルコトヲ得国会ハ最高法院ノ判決ノ再審ニ関スル手続規則ヲ制定スヘシ

    第七十四条 外国ノ大使、公使及領事館ニ関係アル一切ノ事件ニ於テハ最高法院専属的原始管轄ヲ有ス
    第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
    ② 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
    第七十五条 裁判ハ公開廷ニ於テ行ヒ判決ハ公然言ヒ渡スヘシ然レトモ裁判所カ公開ヲ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ害有リト全員一致ヲ以テ決スルトキハ非公開ニテ裁判ヲ行フコトヲ得但シ政治的犯罪、定期刊行物ノ犯罪及此ノ憲法第三章ノ確保スル人民ノ権利カ問題ト為レル場合ニ於ケル裁判ハ例外ナク公開セラルヘシ
    第七章 財政 第七章 財政
    第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。 第七十六条 租税ヲ徴シ、金銭ヲ借入レ、賃金ヲ使用シ並ニ硬貨及通貨ヲ発行シ及其ノ価格ヲ規整スル権限ハ国会ヲ通シテ行使セラルヘシ
    第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 第七十七条 国会ノ行為ニ依リ又ハ国会ノ定ムル条件ニ依ルニアラサレハ新タニ租税ヲ課シ又ハ現行ノ租税ヲ変更スルコトヲ得ス
    此ノ憲法発布ノ時ニ於テ効力ヲ有スル一切ノ租税ハ現行ノ規則カ国会ニ依リ変更セラルルマテ引キ続キ現行ノ規則ニ従ヒ徴集セラルヘシ
    第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。 第七十六条 租税ヲ徴シ、金銭ヲ借入レ、賃金ヲ使用シ並ニ硬貨及通貨ヲ発行シ及其ノ価格ヲ規整スル権限ハ国会ヲ通シテ行使セラルヘシ
    第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。 第七十九条 内閣ハ一切ノ支出計画並ニ歳入及借入予想ヲ含ム次期会計年度ノ全財政計画ヲ示ス年次予算ヲ作成シ之ヲ国会ニ提出スヘシ
    第八十条 国会ハ予算ノ項目ヲ不承認、減額、増額若ハ却下シ又ハ新タナル項目ヲ追加スルコトヲ得
    国会ハ如何ナル会計年度ニ於テモ借入金額ヲ含ム同年度ノ予想歳入ヲ超過スル金銭ヲ支出スヘカラス
    第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
    ② すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
    第八十一条 予期セサル予算ノ不足ニ備フル為ニ内閣ノ直接監督ノ下ニ支出スヘキ予備費ヲ設クルコトヲ許スコトヲ得
    内閣ハ予備費ヲ以テスル一切ノ支出ニ関シ内閣ニ対シ責任ヲ負フヘシ
    第七十八条 充当スヘキ特別予算無クシテ契約ヲ締結スヘカラス又国会ノ承認ヲ得ルニアラサレハ国家ノ資産ヲ貸与スヘカラス
    第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。 第八十二条 世襲財産ヲ除クノ外皇室ノ一切ノ財産ハ国民ニ帰属スヘシ一切ノ皇室財産ヨリスル収入ハ国庫ニ納入スヘシ而シテ法律ノ規定スル皇室ノ手当及費用ハ国会ニ依リ年次予算ニ於テ支弁セラルヘシ
    第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 第八十三条 公共ノ金銭又ハ財産ハ如何ナル宗教制度、宗教団体若ハ社団ノ使用、利益若ハ支持ノ為又ハ国家ノ管理ニ服ササル如何ナル慈善、教育若ハ博愛ノ為ニモ、充当セラルルコト無カルヘシ
    第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
    ② 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
    第八十四条 会計検査院ハ毎年国家ノ一切ノ支出及歳入ノ最終的会計検査ヲ為シ内閣ハ次年度中ニ之ヲ国会ニ提出スヘシ
    会計検査院ノ組織及権限ハ国会之ヲ定ムヘシ
    第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。 第八十五条 内閣ハ定期ニ且少クトモ毎年財政状態ヲ国会及人民ニ報告スヘシ
    第八章 地方自治 第八章 地方政治
    第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。 第八十七条 首都地方、市及町ノ住民ハ彼等ノ財産、事務及政治ヲ処理シ並ニ国会ノ制定スル法律ノ範囲内ニ於テ彼等自身ノ憲章ヲ作成スル権利ヲ奪ハルルコト無カルヘシ
    第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
    ② 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
    第八十六条 府県知事、市長、町長、徴税権ヲ有スル其ノ他ノ一切ノ下級自治体及法人、府県及地方議会並ニ国会ノ定ムル其ノ他ノ府県及地方役員ハ夫レ夫レ其ノ社会内ニ於テ直接普遍選挙ニ依リ選挙セラルヘシ
    第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。 第八十七条 首都地方、市及町ノ住民ハ彼等ノ財産、事務及政治ヲ処理シ並ニ国会ノ制定スル法律ノ範囲内ニ於テ彼等自身ノ憲章ヲ作成スル権利ヲ奪ハルルコト無カルヘシ
    第九十五条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。 第八十八条 国会ハ一般法律ノ適用セラレ得ル首都地方、市又ハ町ニ適用セラルヘキ地方的又ハ特別ノ法律ヲ通過スヘカラス但シ右社会ノ選挙民ノ大多数ノ受諾ヲ条件トスルトキハ此ノ限ニ在ラス
    第九章 改正 第九章 改正
    第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
    ② 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
    第八十九条 此ノ憲法ノ改正ハ議員全員ノ三分ノ二ノ賛成ヲ以テ国会之ヲ発議シ人民ニ提出シテ承認ヲ求ムヘシ人民ノ承認ハ国会ノ指定スル選挙ニ於テ賛成投票ノ多数決ヲ以テ之ヲ為スヘシ右ノ承認ヲ経タル改正ハ直ニ此ノ憲法ノ要素トシテ人民ノ名ニ於テ皇帝之ヲ公布スヘシ
    第十章 最高法規 第十章 至上法
    第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 第十条 此ノ憲法ニ依リ日本国ノ人民ニ保障セラルル基本的人権ハ人類ノ自由タラントスル積年ノ闘争ノ結果ナリ時ト経験ノ坩堝ノ中ニ於テ永続性ニ対スル厳酷ナル試練ニ克ク耐ヘタルモノニシテ永世不可侵トシテ現在及将来ノ人民ニ神聖ナル委託ヲ以テ賦与セラルルモノナリ
    第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
    ② 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
    第九十条 此ノ憲法並ニ之ニ基キ制定セラルル法律及条約ハ国民ノ至上法ニシテ其ノ規定ニ反スル公ノ法律若ハ命令及詔勅若ハ其ノ他ノ政府ノ行為又ハ其ノ部分ハ法律上ノ効力ヲ有セサルヘシ
    第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 第九十一条 皇帝皇位ニ即キタルトキ並ニ摂政、国務大臣、国会議員、司法府員及其ノ他ノ一切ノ公務員其ノ官職ニ就キタルトキハ、此ノ憲法ヲ尊重擁護スル義務ヲ負フ
    此ノ憲法ノ効力発生スル時ニ於テ官職ニ在ル一切ノ公務員ハ右ト同様ノ義務ヲ負フヘク其ノ後任者ノ選挙又ハ任命セラルルマテ官職ニ止マルヘシ
    第十一章 補則 第十一章 承認
    第百条 この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する。
    ② この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。
    第五十九条 国会ハ此ノ憲法ノ規定ヲ施行スル為必要ニシテ適当ナル一切ノ法律ヲ制定スヘシ
    第百一条 この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。
    第百二条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。
    第百三条 この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。
    第九十二条 此ノ憲法ハ国会カ出席議員三分ノ二ノ氏名点呼ニ依リ承認セラレタル時ニ於テ確立スヘシ
    国会ノ承認ヲ得タルトキハ皇帝ハ此ノ憲法カ国民ノ至上法トシテ確立セラレタル旨ヲ人民ノ名ニ於テ直ニ宣布スヘシ

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    2007年8月13日 (月)

    TBS『みのもんたの朝ズバッ!』における不二家不適切報道

    放送倫理検証委員会のTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』での不二家報道に関しての報告書が8月6日に出されました。報告書は、以下にありますが、TBSのニュース番組に対する批判であり、TBSの報道は不適切すぎると感じました。以下に感じたことを書いてみます。

    2007(平成19)年8月6日放送倫理検証委員会決定 第1号 TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家関連の2番組に関する見解 (pdf)
    ----(同上 html)-------

    1) TBSの不適切なニュース報道

    一番感じることが、不十分な取材による不適切な報道です。TBSは、放送した1月22日の夜に不二家から、「事実と異なった内容」である旨の指摘・抗議を受けたが、適切な調査を行わなかった。不二家とも真摯な話し合いは行わず、週刊誌、新聞等が『朝ズバッ!』の不二家報道に捏造の疑いがある旨、3月下旬にいっせいに報道した。この結果、TBSは4月13日、総務省に対して、番組に、同番組の「誤解を招きかねなかった表現」があると表明した。

    どのような点が、不適切な報道であったかですが。

    a) 取材源が伝聞として言ったことを事実として報道した。

    不二家平塚工場で10年ほど前から数年間働いていたという女性がTBSに対して、「賞味期限切れのチョコレートを溶かし、製造し直していた」等の情報を提供したのですが、最終的にTBSも「『出荷されたチョコレートが工場にもどる』は証言者の伝聞」であり、事実であるという確証を得たものではない。」と認めています。

    証言にない「チョコレートと牛乳を混ぜ合わせ」という表現をTBSは捏造した。(この部分に関する報告書の記載は以下の通りです。)

    Yディレクターはその際、A通報者に電話し、賞味期限切れチョコレートを溶かし、再利用する工程について質問した。このときのA通報者は家庭内の都合で十分に受け答えする時間的余裕がなく、「ミルク」「粉」などと一言、二言言ったあとで、Yディレクターの「牛乳みたいなものですか」という問いに、「そんな感じです」と曖昧に答えただけで、電話を切らざるを得なかった。なお、取材テープには「牛乳」「ミルク」等の言葉は記録されていない。

    b)当事者不二家に対する取材不足

    本当は、不二家に対する綿密な取材が第一のはずですが、TBSは全くしていないと感じます。例えば、不二家は1月22日の放送に対して以下のことを口頭と文書で伝えたのです。私には、不二家が真実を述べていると感じます。簡単に判明する事項もあると思います。しかし、TBSは取材をしない。

    (1)賞味期限の切れたチョコレートは平塚工場にもどってくることはなく、工場とは別の場所にある物流倉庫にもどし、廃棄処分をしている。よって、再処理して商品化することはない。
    (2)チョコレート包装紙には賞味期限の印字はあるが、(A通報者の言うような)製造日の印字はしていない。
    (3)賞味期限切れチョコレートが工場に返品されることはない(ので、開封して再利用することはない)。
    (4)チョコレート製造には(司会者がフリップで示したような)牛乳を加える工程はない。

    2) 司会者・コメンテーターの不適切な発言

    1月22日の放送で、内部告発に対する不二家側の反応として、「確認が取れていない」とのコメントも紹介したものの、みのもんた司会者がこの内部告発者の発言内容をイラスト化した3枚のフリップ(表紙を含めると4枚)を示しながら、「賞味期限切れチョコを開封」「そのチョコに牛乳などを加えて混ぜる」「新製品として再出荷」などと解説し、「これはもう、何をかいわんや」「経営自体がちょっとおかしいんじゃないかと思います」等々と強い口調で語りながら、スタジオにいる3名のコメンテーターに発言を求め、コメンテーターらも「作る人間がこういうふうに腐って変わってくると、まあひどいことになるんだなと思いますよ」などと、それぞれに不二家に対する不信を語り、そのコーナーを終えた。

    翌日の1月23日(火)の「朝ズバッ!」において、不二家の新社長就任のニュースを伝えたなかで、「古くなったチョコレートを集めてきて、それを溶かして、新しい製品に平気で作り替える会社は、もうはっきり言って、廃業してもらいたい」とみのもんたが言い、また1月31日(水)の同番組でも、不二家に「異物混入の苦情が年間1693件あった」とのニュースを紹介したなかで、「異物じゃなくて汚物だね、こうなると」などと語っているとのことです。

    3) 訂正をしないTBS

    報告書は、不二家への「擦り寄り」「恭順」であると表現しています。4月18日に「ミルキーがもどってきた! 不二家再生へ本格スタート」と題した約6分間のコーナーを「朝ズバッ!」で放送しました。このなかでは、撤回や訂正や謝罪を行なわず、そのかわり「スタジオのお菓子は全部不二家にしますから」とみのもんたが発言したと報告書にあります。

    4月18日の放送では、証言者の不二家勤務は10年以上前であることを初めて明らかにしたが、「TBSは、法律家が証言者に面談するなどして調査した結果、やらせや捏造に類する疑いはないとの報告を受けている」旨のナレーションを最後に入れました。

    問題がありすぎると思います。

    - 証言されていない「牛乳を混ぜる。」と報道して、捏造ではないのでしょうか?
    - 報道は、単独の証言によらず種々の取材を通した情報によるべきはず

    悲しいのは、放送倫理検証委員会の報告書が出てもTBSは態度を変えていません。次のTSBニュースと会社の報告をご覧下さい。

    8月6日 TBSニュース
    8月6日 TBS総務局 広報IRセンター  発表文

    4) TBSの前科

    TBSは、大変な前科があることを思い出します。オーム真理教事件で坂本弁護士一家3人が1989年11月4日に殺害されました。坂本弁護士は、1989年5月ころから、教団の出家信者の親から子供を脱会させることについて相談を受けたことがきっかけとなってオーム真理教からの脱会に尽力するようになっていきました。

    1989年10月26日TBSは坂本弁護士とのインタビューを録画しました。その当日、オーム真理教はそれを知り、早川、上祐、青山らがTBSを訪れ、抗議した結果、TBSは翌27日の放映中止しました。そして1月少し後の11月4日の殺害となりました。

    1995年3月22日オーム真理教に一斉強制捜査が入り、1995年9月6日と10日に無念の遺体発見となりました。日本テレビは、1995年10月19日にTBSがインタビューを録画をオーム真理教に見せたことを、報道しました。TBSはその後も否定し続けたのでした。しかし、1996年3月25日についにTBSは、ついに事実を認めます。その直後の3月28日のTBS社長室長の衆議院法務委員会における参考人としての発言を続きを読むに入れました。

    日弁連会長の1996年4月22日の「TBS問題(放送倫理)に関する声明」がここにありますが、「TBSの前記対応は、報道機関としての責務を放棄したものであり、極めて遺憾である。」との言葉に全く同感を覚えます。

    人間としての良心を持ち合わせていないのが、TBSでしょうか?国会で、「社内の組織管理体制につきましても、速やかに具体的対策を立案し・・」と嘘を述べ、今も捏造はなかったと自慢する。悲しいことと思います。

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    2007年8月 9日 (木)

    ブルドックソースは、これでよかったのか

    ブルドックソースのスティール・パートナーズに対する買収防衛策に対して最高裁判所の決定が8月7日に出され、ブルドックソースの新株予約権の無償発行とスティール・パートナーズからの396円での同時買い戻しが適法であると確定しました。

    最高裁の決定文がWebに掲載されたのは、今回極めて短期間であり、最高裁に敬意を表します。下記に東京高裁、東京地裁の決定文もあわせリンクを紹介しておきます。

    8月7日 最高裁判所第二小法廷 決定文
    7月9日 東京高等裁判所 決定文
    6月28日 東京地方裁判所 決定文

    私が今までに本件について書いていたエントリーは次のものです。

    7月15日 スティール・パートナーズに対する東京高裁の決定
    7月 4日 ブルドックソースの買収防衛策
    6月29日 ブルドックソースの第1戦勝利
    6月26日 ブルドッグソースの買収防衛策に思う

    最高裁決定文に関しては、他のブログでも多く書かれており、私は経営コンサルタントとしてブルドックソースの買収防衛策について、どう思うかを書いてみます。

    1) ブルドックソースの買収防衛策は正しかったのか

    「正しい」か「間違い」であったかは、簡単ではありません。「法的に、問題はない。」と言い切れます。しかし、法的に問題がなければ、それで正しかったと言えるのかは、検討を要します。例えば、薄型テレビを30万円で購入した。でも、別の店で全く同じ品物を25万円で売っていた。また、更に別の店では店頭に展示をしてあったことを理由に20万円で売ると言ってくれた。どの選択が正しいのでしょうか?法的には全て適法です。企業であれば、A社、B社、C社いずれから購入するのが、最も正しいのでしょうか?価格のみならず品質や、将来性、その他の面での協力度等あり、単純ではないはずです。

    私が、一連のニュースの中で一番驚いたのが、このブルドックソースの平成20年3月期第1四半期報告書です。その中での、次の一文です。

    3)特別損失の発生
    平成19年8月7日開催の取締役会決議に基づき、①非適格者から取得した自己新株予約権の消却による自己新株予約権消却損及び②財務アドバイザー報酬・弁護士費用等の係争費用を合わせ約28億円の特別損失が見込まれます。

    スティール・パートナーズからの新株予約権購入金額が21億円ですから、7億円が財務アドバイザー報酬・弁護士費用等となるわけです。アドバイザーに対する報酬が7億ですから、すごい金額ですが、ブルドックソースの2007年3月期連結ベースの営業利益9億円、経常利益10億円、税引後純利益7億円、期末従業員数366人と比較しても巨大な金額となります。

    ブルドックソースは、スティール・パートナーズへの支払いのため、短期借入れ8.5億円、長期借入れ8億円の合計16.5億円の借入をしました。返済が必要な資金です。年間純利益額が7億円であれば、2.4年分です。年間配当総額を約4億円と発表しており、配当後の繰越利益剰余金で考えれば5.5年相当です。但し、これは既に借入を実施した16.5億円をベースとした計算であり、28億円で考えれば、4年間と9.3年間になるのであり、これ以上の出費は無理があると思う次第です。

    2) 28億円の出費は必要であったのか

    ブルドックソースの買収防衛費用は28億円であったのです。その結果として、何が得られたのでしょうか?スティール・パートナーズは、この8月8日付のスティール・パートナーズの発表にあるようにTOB価格を1,700円からその四分の一の一株当り425円に引下げました。当然このスティール・パートナーズのTOB価格引き下げも合法的であり、一方TOBの買い取り資金としてブルドックソースから21億円を受領したのであり、普通に考えれば馬鹿なゲームをしているとしか思えないと感じます。

    最高裁は、「議決権総数の約83.4%の賛成を得て可決された」という事実とその手続きに瑕疵がなかったことを重く見てスティール・パートナーズの抗告を棄却した一番の理由と私は決定文を読んでいます。一方、83.4%の賛成があるのであれば、株主はTOBに応じるはずがなく、経営者である取締役は自らの主張を株主にスティール・パートナーズのTOBに応じないように訴えることが本筋であると思います。

    ブルドックソース取締役会は株主総会における2/3多数決の特別決議として提案したのであり、むしろ、このことの方が、変であると感じてしまいます。2/3が賛成するのであれば、最大1/3の株主しかTOBに応じないのであり、株主に対して取締役・取締役会の主張を記載した書面を株主総会の案内と同時に送付し、株主総会においても、スティール・パートナーズのTOBに対する取締役・取締役会の考え方や今後の経営方針を説明するのが本来の姿と思います。そうすれば、28億円の無駄使いをしなくても良かったのではと思います。

    もし、私が経営コンサルタントを引き受けているとするなら、タダではありませんが、7億円もの報酬は必要ありません。株主に対する誠実な説明を勧めていたと思います。そして、言ったでしょう。「スティール・パートナーズなど恐れずに会社経営に邁進しなさい。株主、従業員、ユーザー、取引先のために会社業務に正しいことを行っていれば何も怖くはありません。」と。

    3) 今後のリスク

    「法廷闘争には勝ったが、ビジネスには負けた。」というようなことも、現実には生じます。スティール・パートナーズとのことも、これで終わったわけではなく、新しいステージに移っただけと思います。

    例えば、スティール・パートナーズから21億円で買い戻した新株予約権の償却です。この8月7日付ブルドックソース発表 特別損失の計上および業績予想の修正に関するお知らせでは、「関連費用の合計額として約28億円を見込んでおり」と記載していますが、業績予想では連結ベースでの年間純利益減少額14.8億円です。これは、税効果を見込んだことからと思いますが、そうであれば新株予約権の償却費についても税効果が入っている計算と思います。

    新株予約権の償却とは、何であるかですが。無償で発行して、21億円の価値をブルドックソースが付けました。そして、21億円を払って入手したら、今度は無価値だと言ってゼロにする、即ち償却を行いました。無茶苦茶勝手ですよね。勿論、ブルドックソースの考え方によれば、それなりの理論・理屈はあるわけで、そこまで否定するつもりはありません。しかし、税の観点ではそんな勝手なことは許されて良いはずがありません。税は、公平に徴収しなくてはいけません。税に不公平があれば、それを逆手にとって、「どうして俺はダメなのだ!」と言う輩が出てくるはずです。税は、税法が公平であるのみならず施行・徴収も公平でなくてはならないのです。

    そう考えると、同じ物をある時は21億円だとし、ある時は0円であるとして、21億円の損失相当の8億円税を安くしろと言うのが通るのでしょうか?認めて良いのでしょうか?私は、税務署は21億円の損金扱いが可能であるなんて言っていないと想像します。

    4) アドバイザーの使い方

    アドバイザーの使い方を間違うととんでもないことになってしまいます。TOBだから証券業者や弁護士に任せておけばうまくやってくれるはずだと思ったら大変な間違いです。弁護士は法について調査し、アドバイスをすることはできます。でも、ビジネスについてとなると、ビジネスとは全分野を見渡して判断を必要とすることから無理があります。まして、細かく言えば、法という分野だけで見ても一つのことについて様々な見方ができます。そして、どれをとっても、リスクゼロではないのです。大きいか小さいかはあります。確率もあります。

    そんなことを思いつつ、ブルドックソースの取締役名簿を眺めてみました。すると取締役で何とか担当となっていないのは代表取締役の池田章子氏のみです。連結でも従業員数366人の会社ですから、経営に専念する取締役をおきたくない気持ちは解りますが、それなら8人もの取締役は不要と思います。代表取締役が営業担当であり、セールスのことと理解しますが、2007年3月期連結販売一般管理費81億円のうち32億円が販売促進費です。業界の特殊性があるので、細部の議論はしませんが、これで会社としてのガバナンスを、どのようにして確保していたのですかと疑問を抱きます。

    私の想像ですが、だからスティール・パートナーズは狙ったのだと思いました。なお、誤解を避けるために一言追加をさせて下さい。弁護士、アドバイザーに対する報酬7億円が高すぎると言っているのではありません。依頼された仕事をしたのですから、それなりの報酬を得るのが当然だと思います。高い・安いは仕事量のその中を知らないのでコメントすることが出来ません。ブルドックソースの従業員の中(例えば、法務部)に外部アドバイザーの起用の仕方に経験豊富な方がおられれば、ずっと安い金額で済ませること出来たはずと言いたいのです。もし、社内にいないのであれば、信頼しておられる弁護士や会計士に相談されてビジネスアドバイザーの起用を考えるの良いと思います。場合によっては、私が引き受けることも可能かも知れません。

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