TBS『みのもんたの朝ズバッ!』における不二家不適切報道
放送倫理検証委員会のTBSの『みのもんたの朝ズバッ!』での不二家報道に関しての報告書が8月6日に出されました。報告書は、以下にありますが、TBSのニュース番組に対する批判であり、TBSの報道は不適切すぎると感じました。以下に感じたことを書いてみます。
2007(平成19)年8月6日放送倫理検証委員会決定 第1号 TBS『みのもんたの朝ズバッ!』不二家関連の2番組に関する見解 (pdf)
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1) TBSの不適切なニュース報道
一番感じることが、不十分な取材による不適切な報道です。TBSは、放送した1月22日の夜に不二家から、「事実と異なった内容」である旨の指摘・抗議を受けたが、適切な調査を行わなかった。不二家とも真摯な話し合いは行わず、週刊誌、新聞等が『朝ズバッ!』の不二家報道に捏造の疑いがある旨、3月下旬にいっせいに報道した。この結果、TBSは4月13日、総務省に対して、番組に、同番組の「誤解を招きかねなかった表現」があると表明した。
どのような点が、不適切な報道であったかですが。
a) 取材源が伝聞として言ったことを事実として報道した。
不二家平塚工場で10年ほど前から数年間働いていたという女性がTBSに対して、「賞味期限切れのチョコレートを溶かし、製造し直していた」等の情報を提供したのですが、最終的にTBSも「『出荷されたチョコレートが工場にもどる』は証言者の伝聞」であり、事実であるという確証を得たものではない。」と認めています。
証言にない「チョコレートと牛乳を混ぜ合わせ」という表現をTBSは捏造した。(この部分に関する報告書の記載は以下の通りです。)
Yディレクターはその際、A通報者に電話し、賞味期限切れチョコレートを溶かし、再利用する工程について質問した。このときのA通報者は家庭内の都合で十分に受け答えする時間的余裕がなく、「ミルク」「粉」などと一言、二言言ったあとで、Yディレクターの「牛乳みたいなものですか」という問いに、「そんな感じです」と曖昧に答えただけで、電話を切らざるを得なかった。なお、取材テープには「牛乳」「ミルク」等の言葉は記録されていない。
b)当事者不二家に対する取材不足
本当は、不二家に対する綿密な取材が第一のはずですが、TBSは全くしていないと感じます。例えば、不二家は1月22日の放送に対して以下のことを口頭と文書で伝えたのです。私には、不二家が真実を述べていると感じます。簡単に判明する事項もあると思います。しかし、TBSは取材をしない。
(1)賞味期限の切れたチョコレートは平塚工場にもどってくることはなく、工場とは別の場所にある物流倉庫にもどし、廃棄処分をしている。よって、再処理して商品化することはない。
(2)チョコレート包装紙には賞味期限の印字はあるが、(A通報者の言うような)製造日の印字はしていない。
(3)賞味期限切れチョコレートが工場に返品されることはない(ので、開封して再利用することはない)。
(4)チョコレート製造には(司会者がフリップで示したような)牛乳を加える工程はない。
2) 司会者・コメンテーターの不適切な発言
1月22日の放送で、内部告発に対する不二家側の反応として、「確認が取れていない」とのコメントも紹介したものの、みのもんた司会者がこの内部告発者の発言内容をイラスト化した3枚のフリップ(表紙を含めると4枚)を示しながら、「賞味期限切れチョコを開封」「そのチョコに牛乳などを加えて混ぜる」「新製品として再出荷」などと解説し、「これはもう、何をかいわんや」「経営自体がちょっとおかしいんじゃないかと思います」等々と強い口調で語りながら、スタジオにいる3名のコメンテーターに発言を求め、コメンテーターらも「作る人間がこういうふうに腐って変わってくると、まあひどいことになるんだなと思いますよ」などと、それぞれに不二家に対する不信を語り、そのコーナーを終えた。
翌日の1月23日(火)の「朝ズバッ!」において、不二家の新社長就任のニュースを伝えたなかで、「古くなったチョコレートを集めてきて、それを溶かして、新しい製品に平気で作り替える会社は、もうはっきり言って、廃業してもらいたい」とみのもんたが言い、また1月31日(水)の同番組でも、不二家に「異物混入の苦情が年間1693件あった」とのニュースを紹介したなかで、「異物じゃなくて汚物だね、こうなると」などと語っているとのことです。
3) 訂正をしないTBS
報告書は、不二家への「擦り寄り」「恭順」であると表現しています。4月18日に「ミルキーがもどってきた! 不二家再生へ本格スタート」と題した約6分間のコーナーを「朝ズバッ!」で放送しました。このなかでは、撤回や訂正や謝罪を行なわず、そのかわり「スタジオのお菓子は全部不二家にしますから」とみのもんたが発言したと報告書にあります。
4月18日の放送では、証言者の不二家勤務は10年以上前であることを初めて明らかにしたが、「TBSは、法律家が証言者に面談するなどして調査した結果、やらせや捏造に類する疑いはないとの報告を受けている」旨のナレーションを最後に入れました。
問題がありすぎると思います。
- 証言されていない「牛乳を混ぜる。」と報道して、捏造ではないのでしょうか?
- 報道は、単独の証言によらず種々の取材を通した情報によるべきはず
悲しいのは、放送倫理検証委員会の報告書が出てもTBSは態度を変えていません。次のTSBニュースと会社の報告をご覧下さい。
8月6日 TBSニュース
8月6日 TBS総務局 広報IRセンター 発表文
4) TBSの前科
TBSは、大変な前科があることを思い出します。オーム真理教事件で坂本弁護士一家3人が1989年11月4日に殺害されました。坂本弁護士は、1989年5月ころから、教団の出家信者の親から子供を脱会させることについて相談を受けたことがきっかけとなってオーム真理教からの脱会に尽力するようになっていきました。
1989年10月26日TBSは坂本弁護士とのインタビューを録画しました。その当日、オーム真理教はそれを知り、早川、上祐、青山らがTBSを訪れ、抗議した結果、TBSは翌27日の放映中止しました。そして1月少し後の11月4日の殺害となりました。
1995年3月22日オーム真理教に一斉強制捜査が入り、1995年9月6日と10日に無念の遺体発見となりました。日本テレビは、1995年10月19日にTBSがインタビューを録画をオーム真理教に見せたことを、報道しました。TBSはその後も否定し続けたのでした。しかし、1996年3月25日についにTBSは、ついに事実を認めます。その直後の3月28日のTBS社長室長の衆議院法務委員会における参考人としての発言を続きを読むに入れました。
日弁連会長の1996年4月22日の「TBS問題(放送倫理)に関する声明」がここにありますが、「TBSの前記対応は、報道機関としての責務を放棄したものであり、極めて遺憾である。」との言葉に全く同感を覚えます。
人間としての良心を持ち合わせていないのが、TBSでしょうか?国会で、「社内の組織管理体制につきましても、速やかに具体的対策を立案し・・」と嘘を述べ、今も捏造はなかったと自慢する。悲しいことと思います。
1996年3月28日衆議院法務委員会におけるTBS取締役社長室長大川参考人の発言
三月十九日、当法務委員会の場で私どもの社内調査の結果を御報告申し上げましたが、その後、新たな事実が判明いたしました。TBS社員がオウム真理教の幹部三人に、坂本弁護士のインタビューテープを見せていたのであります。前回、当委員会に御報告した内容は誤りということであります。まことに申しわけございません。訂正させていただくとともに、おわび申し上げます。
また、審議御多忙の中で、このような訂正の機会を与えてくださり、ありがとうございます。委員長、そして委員の皆様方の御高配に深く感謝いたします。
また、亡くなられた坂本さん御一家、御遺族の方々に、この場をかりておわび申し上げます。
取材に御協力いただきながら、テープをオウム側に見せてしまったという事実は、報道機関として決してしてはならないことであります。TBSを信頼して取材に応じていただきながら、信頼関係を裏切ったわけであります。本当に申しわけございません。
前回、当委員会で御報告申し上げた際に、委員の皆様から貴重な御指摘をいただきました。これを受けて、さらに資料の収集など社内調査を進めてまいりました。その結果、新たな事実が判明したわけでございますが、この間の経緯について御報告させていただきます。
まず、前回御報告した調査結果でございますが、これは、ビデオを見せた事実は出てこなかったというものでございました。その結果が、わずか一週間で百八十度変わってしまったわけであります。私どもの調査に不備があったことは、率直に認めざるを得ません。
このように結論が変わった最大の理由は、いわゆる早川メモの詳細がわかったためであります。その内容を私どもが入手いたしましたのは、先週の土曜日、三月二十三日のことであります。
この早川メモについてでありますが、私どもも以前より、このメモが存在すること、メモの中に坂本弁護士がオウムの不当性を指摘している記載があることは把握しておりました。そして、このメモの詳細を知ることが真相解明につながると判断して、その詳細を知るための努力も重ねておりました。
しかし、前回の御質疑の時点では、私どもが知っておりましたのは、先ほど申し上げた早川メモの概要にとどまっており、関係者からの事情聴取もその概要に基づいて行われていたというのが実情でございました。
しかし、二十三日にその早川メモの詳細を入手いたしました。そして、最初に行いましたのは、メモの内容と社内に保管されていた坂本弁護士のインタビューのビデオの内容を照合することでありましたが、これがほぼ一致したわけでございます。
話の内容ばかりでなく、テーマの順序、論理の展開、細かい言葉遣いまで、メモとインタビューの流れとがほぼ一致しておりました。テープを見なければこのようなメモをつくることは不可能であります。また、このメモの中に、オウム被害者の会の永岡弘行会長とサンデー毎日の牧太郎編集長に対するインタビューの内容も含まれておりました。こうしたことから、私どもは、早川被告がビデオを見たことは間違いないと判断するに至ったわけであります。
また、このメモとビデオの照合作業と並行して、二十三日から、早川メモを示しながら改めて関係者に対する事情聴取も行いました。その作業は現在も続いております。
この中で、当時オウム幹部との応対に当たった
担当プロデューサーが、オウム幹部三人と自分でビデオを見たと思う、重大な判断ミスで申し開きの言葉はありません、申しわけない気持ちでいっぱいですと、ビデオを見せたことを認める発言を行いました。先週末、二十三日夜のことでございました。
こうした結果を受けまして、今週の月曜、二十五日に、社長磯崎洋三が緊急に記者会見を行い、調査結果並びに社内処分を発表したというのがこの間の経緯でございます。
この緊急調査結果の発表以降も調査は継続しております。その中で少しずつ新たな事実も出てきております。坂本さんのインタビューテープがあることをだれがオウム側に伝えたのかという点では、解雇された担当プロデューサーが、富士宮での水中修行を取材した際に、水中修行は坂本さんのインタビューとあわせて放送すると自分が言ったと思う、このように新しい証言を行っております。
また、きのうの早川被告の公判で、当時の関係者の供述調書の内容が明らかにされました。その中には、関係者が私どもの調査に対して説明した内容とかけ離れたものもございました。樗然とする思いでありましたが、これにつきましてもさらに調査を続け、国民の皆様方に納得のいく説明ができますよう、あらゆる作業を行っていく決意であります。
もどかしい思いも多々ございますが、少しずつではあっても、みずからの手で誠実に解明を進めてまいる所存であります。何とぞ御理解を賜りたいと思います。
調査チームでは、新たに第三者の特別調査人を委嘱することといたしました。これにつきましては、元最高裁判事の佐藤庄市郎先生に内諾をいただいております。これによりまして、今後の調査における客観性、透明性を確保してまいりたいと考えております。
私どものオウム取材活動につきましては、現在さまざまな報道がなされております。その中には、実態のない風聞といったものも含まれておりますが、私どもは外部からの御指摘に対しては真摯にそれを受けとめ、問題点を検証して、反省すべき点は反省し、正すべきは正すという姿勢を貫いてまいる所存でございます。重ねて委員の皆様方の御理解をいただきたく、お願い申し上げます。
次に、私どもが行いました処分について御報告いたします。
当該プロデューサーを解雇処分にしたほか、この上司に当たる番組プロデューサーについては、管理責任を問い、部長から副部長に降格させました。私も常務取締役から取締役へ降格処分を受けております。
社長磯崎洋三は、今回の事態についてその責任の重大性を深刻に受けとめています。磯崎を初め常勤取締役全員が減俸、また今回の調査を担当した社員六名については謎責処分にいたしております。
この処分は緊急発表という形で行いました。繰り返しになりますが、調査は続行中であります。事実関係の詳細が明らかになった段階で、必要な処分はためらうことなく行う考えであります。
これから私どもが行わなくてはならないことは、何よりも報道機関としての信頼を回復することであります。これにつきましては、当委員会でも委員の皆様からさまざまな形で御指摘をいただきました。例えば、ジャーナリストとしての基本姿勢はどうあるべきなのか、取材のモラルをどう確立するのか、取材で取得した情報の管理をどうやって徹底させていくか、通報、通知はどうあるべきか、ワイドショーを含む生情報番組のあり方など、これを機会に総点検してまいりたいと考えております。
また、さきにオウム報道特別委員会を設置したことを御報告いたしましたが、この委員会も既に連日活動を続けております。これに加え、社内の放送倫理委員会も広範な問題についての検討を進めております。さらに、社内の組織管理体制につきましても、速やかに具体的対策を立案し、綱紀の粛正を図っていきたいと考えております。
さきの当委員会での私の発言が事実と食い違うものでありました。その結果、各方面に多大な御迷惑をおかけいたしました。ここに深く反省するとともに、重ねて深くおわびを申し上げます。
亡くなった坂本さん御一家、坂本さんの御両親様、そして大山さん御夫妻を初め御遺族の皆様に衷心より、心から重ねておわびを申し上げます。
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