消費者金融クレディアへの再生債権の届けは大変
本日のろじゃあサンのブログを見て、暫くして、これは大変ではないかと思いました。株式会社クレディアは、静岡市に本社がある消費者金融等金融サービスの会社です。クレディアは、9月14日に東京地裁に民事再生の申し立てを行い、9月21日に民事再生手続開始決定がなされました。関連の静岡新聞の記事とクレディアのプレスリリースを掲げておきます。
SBS動画ニュース 民事再生法適用を申請 クレディア
静岡新聞 9月22日 生手続き開始決定 クレディア、支援企業探しへ
9月14日プレスリリース 民事再生手続開始の申立てに関するお知らせ
9月21日プレスリリース 民事再生手続開始決定のお知らせ
原因は、グレーゾーン金利の返還に伴う損失と会計基準変更による経営悪化でしょうが、もしかしたら、弱者切り捨てに向かう恐れがあると思ってしまったので、少し書いてみます。
1) 再生債権の届出期限11月26日
9月21日のプレスリリースに再生債権の届出が11月26日までと書いてあります。再生債権の届けとは、民事再生法94条に次のように規定されています。
第94条 再生手続に参加しようとする再生債権者は、第34条第1項の規定により定められた再生債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、各債権について、その内容及び原因、約定劣後再生債権であるときはその旨、議決権の額その他最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならない。
再生債権とならなかったら、再生計画に基づく弁済を受けられないと思うからです。
通常の会社であれば、一般の債権者は受取手形や売掛金を有している債権者であり、受取手形のコピーや売買契約と受け渡しを行った証明を付ければ債権として立証することが出来ます。ところが、グレーゾーン金利の過払い金利に対する返還請求権については、過去の消費者金融の契約書、元利返済実績、過払い金額を算出する計算書を示して届出をせねばならず、過去に返済のための新規借入を行ったりして相当複雑な場合もあるのではないかと思います。
私も、消費者金融で借入をしたことがないので分からないのですが、そもそもそういった書類が消費者金融の方から、どのような形で渡されるのか、返済は自動引き落としなのか、また借りた方の人は例えば書類を保管していなかったり、何年も前のことなら、どこに行ったか、捨ててしまったかも知れないという方も多いのではと思うのです。
参考に静岡新聞の記事を一つ掲げておきます。
静岡新聞 9月19日 週末にクレディア利用者向け無料相談 県司法書士会
実際の借入においては、手数料や保証料を徴収されていたり、おそらく自分自信で再生債権の届出を行うのは大変で、弁護士・司法書士に依頼しないと大半の人は困難ではないかと思います。しかも、期限は11月26日であり、2月と少ししかありません。
2) グレーゾーン金利とは
2006年12月13日に「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、利息制限法を超える金利による貸付は行政処分の対象となったのですが、この部分については2009年7月頃からの施行と理解します。つまり、利息制限法の上限金利を超えていても、現状罰則はないと思います。(上限金利を超える金利がグレーゾーン金利であります。)
では、何故との疑問になりますが、現在消費者金融をおそっているのは、「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」ではなく、[平成18 年10 月13 日付の日本公認会計士協会による「消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い」]であり、グレーゾーン金利に対して全額引当金を計上しないと監査済み財務諸表が作成できないからです。
クレディアの9月14日のプレスリリースにあるとおり、クレディアは209億円の利息返還損失引当金を債務に計上しています。しかし、これは引当金であり、実は法的な債務ではありません。誰も、法的な債務として認識していないと言えるのではと思います。「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高、かつ、その金額を合理的に見積った残高」です。グレーゾーン金利の返還額を再生債権として届出を行った場合、多分認められるとは思うのですが、考えれば認められる保証はないのだと思ってしまったのです。
3) まさか銀行が得をするのでは?
クレディアの債務金額は758億円で、そのうち利息返還損失引当金が209億円。従い、残額は549億円になりますが、金融機関などからの借入金511億円ですから、93%が金融機関等です。この内訳について、参考までに、2007年3月末の有価証券報告書を見てみると短期・長期借入金合計が565億円で、そのうち359億円が地方銀行です。
このSBS動画ニュース によれば静岡県内の地方銀行の合計は静岡銀行、清水銀行、静岡中央銀行、スルガ銀行を合わせて90億円でしょうか。
もしグレーゾーン金利について再生債権として届出がなされた金額が小さかったり、否認される金額が多かったなら、金融機関等は全額弁済を受けられる可能性があります。実は、クレディアは債務超過ではありません。2007年6月末で株主資本が連結で139億円あります。利息返還損失引当金の209億円は、届出があったとしても、この金額にならない可能性もあります。
銀行がグレーゾーン金利についての再生債権の届出をコントロール出来るわけはないので、銀行が仕組んだわけではないでしょうが、不思議な思いがした民事再生手続開始決定であります。
この直前のエントリーがニコスでした。消費者金融は、これから、どのようになるのでしょうか?
| 固定リンク
コメント