政府(内閣府)の税制調査会が11月20日に「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」と題した報告書を提出しました。報道が、答申なる言葉を使用しているため、私もエントリータイトルは答申としました。なお、報道としては、次の読売と時事通信を上げておきます。なぜなら、委員名簿がここにありますが、報道関係者として両社の人が入っているからです。
読売11月20日 政府税調答申、3年ぶりに消費税率引き上げの必要性指摘
時事通信11月20日 消費税上げの必要性明記=証券優遇、道路財源焦点に-来年度税制改正
なお、11月20日の「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」と題した報告書とは、これです。
1) 消費税の増税
消費税や付加価値税は良くない税であるという理論があります。理由は、逆進性です。即ち、税の機能である所得の再販分に、消費税は役に立たないからです。市場経済社会において、所得の再配分は重要です。何故なら、市場経済において一方で、勝者と敗者が存在するわけで、極端な勝者と負けがこんでいる弱者と税負担が、同一であるより、勝者が税負担が大きいことで、社会がスムースに動くはずです。革命を狙うなら、別ですが。
消費税があらゆる人と企業に課税されるから平等であると考えている方もおられるのではと思いますが、企業(個人でも事業に係わる部分)は、消費税を負担していません。即ち、売り上げに対して消費税を売り先から徴収しており、この消費税を税務署に納付しますが、その際、仕入れに係わる消費税を控除するからです。
結局負担をするのは、消費者だけです。だから、消費税を増税することと所得税を増税することは、効果は同じだと言って良いのです。むしろ、金持ちは消費税の方が、負担金額が小さくて済みます。5%消費税を増税したなら、貧困層は5%支出が増加し(一部の家賃のような非課税部分を除き)5%税負担が増加します。金持ちは、貯蓄やら投資やらに回す部分があるので、それらの部分は非課税です。即ち、貧しい人は収入=消費ですが、金持ちは収入>消費ですから、消費税の値上げは結構毛だらけ猫灰だらけであります。
実は、一度消費税増税賛成のようなことをこのブログで書いたことがあります。この7月23日のエントリー 税と年金です。但し、これは、基礎年金保険料を全額税負担とすることが、前提です。つまり、月14,000円ですから、夫婦二人だったから、年間336千円になります。年間672万円消費する世帯は、丁度ブレークイーブンです。これより所得の少ない人は、助かります。そして、徴収費用も安くて済みます。税務署が徴収してくれますから。多分、生活保護費用も少なくなります。所得比例部分は、従来通りの制度を継続すればよいのです。3号被保険者の基礎年金ただ乗りも解消できます。
ところが、報告書(5ページの上の方)は、「基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げについては、平成21 年度までに、税制の抜本的な改革によって安定的な財源を確保した上で実施することが、法律ですでに定められており、速やかに対応を図る必要がある。」と、増税が先行しています。だから、読売や自治通信のような記事になるのでしょうが、日経の記事は微妙にニュアンスが異なっていました。
日経11月20日 「消費税、社会保障財源の中核に」・政府税調答申 ですが、「税率引き上げの時期や幅については触れなかった。」と書いています。
2) 所得税増税
報告書(11ページの上の方)に「所得税の納税者の大部分に5%又は10%という低い税率が適用される構造となっている。」と書いてあります。エ~と思いました。低所得者の地方税を増税して10%にした結果でしょうと私は言いたいのです。税源移譲とか言って、地方税を増税して、その分所得税を減税した。今度は、その結果の所得税の税率を低いという。この委員の人たちって資格あるのかと思いました。
最高税率については、「検討をする必要がある。」と言って、ぼやかしました。現在、所得が18百万円を超えたら40%で頭打ちです。5千万円以上の人には、50%程度を5千万円を超えた分だけ払ってもらえたらと思うのですが。もし、1億円の課税所得があれば、5百万円増加するだけです。私だったら、仮に1億円も所得があれば、5百万円は喜んで払います。
「低所得者は税を払っていない。」との論調に違和感を感じるのですが、年金や健康保険については、低所得者は大変です。所得税のことを論じる場合は、年金、健康保険、消費税、住民税を含めて論じないと誤ります。現在累進構造は唯一所得税で、国民年金は人頭税方式で、年金と健康保険は所得が一定以上は頭打ちですから、金持ちの負担が少ないのが日本です。社会全体を、合理的な負担割合で支えられるから税であるのに、政府税調は違って方向を模索しているように思えます。
3) 法人税
報告書は、減税をにおわせており驚きました。国民が負担する消費税は増税で、法人税は減税というのは、国民を馬鹿にしているのではという気がするのです。最終的には個人のレベルに降りてくるのであり、中間の法人段階で課税しても意味がないとの理論はあるのですが、法人を悪用して税を逃れる道を作ってはならないのです。
「ドイツにおいては、自国で稼得した利益を外国へ移し、自国の課税所得を小さくする動きに対応する等の観点から、法人税率の引下げが予定されている。」と書いています。しかし、これほど誤解をまねく書き方はないはずです。日本の法人税において、日本の法人所得を低くして、その分外国での所得を大きくできるかですが、確かに悪いことをすれば可能です。しかし、そのために、租税特別措置法66条の4や66条の5があるのであり、法人税法55条が存在します。
例えば、外国の会社から高く仕入れる、あるいは、外国の会社から高利率で金を借りる。そして、日本の会社の損金を多くし、税率の低い外国の会社の所得を多くして、全体で税を節約するという形です。1つめ、税務リスクがあります。2つめ、外国の会社が自分のコントロール下でないなら、リスク一杯です。3つめ、最終的には日本に持ってこなくては意味がないのですが、これが簡単ではない。
山田洋行のように裏金で持ってくる方法はありますが、あれは、賄賂だから、税や経費は無視した取引であったと思います。
企業活動を活発にする方法は、税ではありません。何故なら、法人税は利益が出たときに、納付する税であるから、税率で企業の足を引っ張る割合は小さいのです。むしろ、企業は税を安くするより、有能な人材が豊富に存在する国を望みます。
4) 相続税
最後の砦である相続税は、正しく守って欲しい。元の水準近くに最高税率を上げて欲しい。そして、中小企業の相続税を低くするなんて、とんでもないことをしないことです。相続税の基礎控除が最低でも6千万円あるわけで、2人の相続人があれば7千万円です。通常の財産の範囲だったら、相続税を払わなくて済むはずです。濡れ手に粟で、巨額財産を相続するなら、相続税を支払いましょう。所詮、相続財産より相続税の方が金額が小さいのですから。
企業を馬鹿息子に継がせるなら、ファンドに売却した方が、社会のためになると思います。利口な子息なら、きちんと相続税を納付して、事業を継続し、従業員や社会のために働いてくれるはずです。
5) 政府税調
政府(内閣府)が選んだ委員ですから、政府をつくっている自民・公明の考え方を代弁したように思えます。こんな税なら、払いたくないと思わせることを沢山書いていると思いました。私の払いたい税、社会のための税、そのような税制を作ってくれる政府を作り上げていきたいと思います。
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